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乳 牛 の 群 管 理 施 設

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乳 牛 の 群 管 理 施 設
乳牛の群管理施設
干 場 信 司
(北大農学部)
1.乳牛の群管理とは
ある。それは,酪農家が求める合理化システムが,
「群管理」の具体的な定義を文献上で見つける
乳牛群が持っている能力と,必らずしも適合し
ことはできなかったが,一樹守には, 円固別管理」
てはいなかったためであろう。 1 lJとして,パー
に相対する用語として用いられているようである。
ラーにおける搾乳があげられる。酪農家にとって,
o
r
施設の立場(狭義)からは. けい留型管理方式」
合理的な搾乳を行なうためには,各搾乳牛の搾乳
に相対する用語である「放し飼い型管理方式」と
時間が均一であることが好ましい乙とであり,そ
いう意味で使われている乙とが多し '
0 乙乙では,
のために,乳牛の能力(搾乳性)を育種的に改良
乙の狭義の定義に乙だわる乙となく,
r
多頭飼育
させる必要が生まれてしる。こうした,管理者と
化に伴う,群単位の合理的乳牛管理」という意味
家畜の聞のギャップを埋めるための l方法として,
r
乳牛の群管理施設」を考えてみた
「コンビュータ利用による個体別管理」が近年注
にとらえて,
し
、
。
目を浴びて来ており,有力な手段となりつつある。
乳牛を群として管理することの最終目標は,言
今後,このコンピュータ利用により,個を活かし
うまでもなく,酪農経営における,労働性(働き
ながらの群管理を押し進めると同時に,乳牛の持
易さ)をも含めた利潤の追求であろう。その意味
っている群管理に適した(利用できる)能力の発
で,すべての群管理システムは,最終的な経営収
見に対する努力が,以前にも増して必要になると
支によって評価されなくてはならない D
考える。
群管理の理想的形態は,管理する側(管理者=
2
. ステージ別収容施設の必要性
酪農家)の有益性と管理される側(家畜=乳牛)
の有益性とが一致した時に達成されるものと思わ
「乳牛の群管理」は,これまで,主に搾乳牛群
れる。即ち,酪農家の合理的・省力的管理法が乳
に関して検討されて来たように思われる。乙こで
牛に快適さをもたらし,ひいては,生産性をも高
は,酪農家に飼われている乳牛の全ステージを対
める,という形態が最も理想的であろうロ乙れは,
象とすることにより「乳牛の群管理システム」を
部分的ながら,実際にも達成されている。十分に
考えてみたい。
練って設計されたフリーストール・パーンにおい
乳牛のステージを以下(表 1)のように分けて
ては,酪農家にとって省力となるばかりではなし
みた。乙こで用いた各ステージの名称は,必らず
乳牛にとっても行動の自由が得られ,ストレスの
表 1 ステージ別乳牛群
減少につながっている。しかし,乙れまでのほと
んどの群管理技術は,酪農家側の合理化,省力化
の要求を乳牛側へ強要する(少し強い言葉ではあ
進めるという形で実現化されて来たと言えそう τ
、
北海道家畜管理研究会報,第四号, 1
1
3
3, 1
9
8
4
-11-
乾乳牛
な間害要因にならない範囲で管理の合理化を押し
哨乳牛
るが)という形,あるいは,乳牛にとって決定的
しも一般的とは言えないが,区別の都合上,表 1
若 雌 牛 は jレーメンの発達を促すべく,粗飼料を
のように呼ぶとととする。また,若牛の各ステー
主体とした飼料を,また,搾乳牛は最大限の乾物
ジを区別する月令も,おおよその目安,あるいは,
摂取量を与える飼料をそれぞれ必要としている。分
目標の値と考えていただきたい。
娩・乾乳牛についても,同様に,必要とする飼料
乳牛のステージ別収容施設の必要性については,
の内容および量がそれぞれ異なっている。以上に
堂腰 C1983,1984) により, I
牛舎防?離飼養シ
述べた,疾病に対する抵抗力および要求する飼料
スデム」として提案されているが,ことでは,家
のステージによる相違が,ステージ別収容施設を
畜(乳牛)側および管理者(酪農家)側の夫々の
必要とする家畜側からの理由であると考える o
立場から,改めて整理してみる。
表 2 生時から 6ヶ月令までの子牛の
まず,乳牛側からのステージ別収容施設の必要
月(週)令別死へい率 ωenny)
性については.I感染病に対する抵抗力,お止び,必
要とする飼料の 2つの,点から考える。乳牛(特に
月(週)令
死へい痢猪)
乙対する抵抗力がステージ毎に大
若牛〕の感染病 i
1週間未満
4
.
7
きく異なる乙とは,良く知られていることである O
1週間一 1ヶ月
4
.
7
中でも,日甫乳牛の 寵患率の高さについては,欧米
7
月 -3ヶ月
1-
1
.8
において,数多くの報告がなされている。 Jenny
3ヶ月一 6ヶ月
1
.3
ら(1981)
は
, South Carolina の DHIに
(小計)
t
4
0戸の酪農家に対する調査の中で,
属している 1
出産時
6ヶ月令までの子牛の死へい率を表 2のように示
(合計)
1
2
.
5
6
.
6
19.
1
している D 出産時の死へい(死産・奇形など)を
除くと, 6ヶ月令までに 1
2
.
5
%もの子牛が死んで
次に,管理者(酪農家)側からのステージ別収
おり,そのうちの 7
5労は 1ヶ月未満であった。離
容施設の必要性について,個体別管理の必要性,
乳後,子牛はじだいに感染病に対する抵抗力を強め
および,管理作業上の差異の 2つの点から考える口
てゆくが,
Menzi (1983)
や Bickert(983)
Jenny ら(1981) は,前出の調査の中で,
2
"
'
-3ヶ月
生まれた子牛と母牛とが分離されるまでの期間と
以上月令の離れた子牛同士を同ーのペンに入れて
子牛の死へい率との関係,と言う興味ある調査を
はならない,としている D その理由として,
行なって,表 3に示した結果を得ている。乙れに
AndersonC1979,1983) は,疾病の感染が,
よると,早期に分離した方がより低い死へい率を
月令の大きい慢性的な保菌牛(すでに治ゆしてい
示していた。乙の理由として Jennyは,酪農家
ても)から,免疫性をあまり持っていない若令牛
が母牛の持っている子牛を面倒見る能力を高く評
へ向って行なわれるためであるとしている D また,
価し過ぎているからであろうと考え,母牛から早
分娩牛は,最も疾病に対する抵抗力が少ない(ほ
期に分離して,人間の手により,確実にまた,注
とんど免疫性を持っていなしつ子牛と同居するわ
意深く管理することによって,死へい率を低下さ
けであるから,その収容施設は搾乳牛群と隔離さ
せることができるのであろうと述べているー乙れ
れていなくてはならない CAnderson. 1983;
は,他の多くの報告(例えば. :
MWPS , 1983
Holmes , 1
983)。 一方,必要とする飼料の
;Milne, 1983) にも見られるように,晴乳
点から見てみると,日甫乳牛は液状飼料を,育成・
期において,いかに 1頭ずつの子牛に対する注意
は,離乳後の子牛を群飼する際には,
-12-
Bickert (19
8
3
) は,離乳後から 3
.
5
深い管理が必要であるかをよく表わしている。つ
即ち,
まり,日甫乳牛および分娩牛は,その他のステージ
ヶ月令までは 5
"
'
6頭の群にすべきとし, MWPS
と異なり,どうしても個体別管理を必要とするス
(
19
8
3
)は 6ヶ月令まで
テージの牛であると言える。また,育成牛は,個
erson (19
8
3
)は 6ヶ月令まで 7頭以下の群に
体別管理から群管理への移行期にある牛であり,
5--8頭,また, And-
すべきであると述べている。
他のステージの牛とは異なった管理を必要とする。
表 3 母子分離までの時間と子牛の死へい率 (Jenny)
分離までの
対象
死
0-1週
間 農家数
時
午
一
』三
~
1週一 1ヶ月
防)
1ヶ月 -6ヶ月
0-6ヶ月
SE※ Ave
SE
Ave
SE
Ave
SE
2
.
7
0
.
9
4
1
.5
0
.
5
7
1
.0
0
.
4
2
5
.
2
1
.
02
3
5
3
.
6
0
.
7
5
3
.7
0
.
71
2
.
0
0
.
4
2
9
.
3
1
.5
2
1
3
2
4
3
2
4
.
4
0
.
6
8
3
.
8
0
.
6
7
2
.
5
0
.
5
4
1
0
.
7
1
.2
3
25-48
2
4
8
.1
1
.7
4
6
.
4
1
.6
5
6
.
0
1
.6
5
2
0
.
5
3
.
5
2
)4
8
3
5
4
.
4
0
.
6
3
6
.
4
1
.5
3
3
.
5
0
.
8
4
1
4.
4
1
.5
8
(hr
)
(戸)
Ave
2-6
1
3
7-12
※標準誤差
ステージ別にそれぞれ異なった管理,即ち,病気
管理作業上のステージ別差異については,管理
作業を以下の 5項目に分類して考えてみる。
の発見と治療,除角,発情発見,種付,分娩看護,
1.給飼(含・給水)
その他を必要とする。環境管理については,前述
2
. ふん尿処理
したステージ別の疾病に対する抵抗力の相違とも
3
. 健康管理
大きく関係しており,また,それぞれのステージ
4
. 環境管理(自然環境)
に対して適合した自然環境(特に空気環境)に関
5
.搾乳
しては,施設構造自体を大きく左右するものであ
群管理を前提とするならば,給飼については,
るため,次節で詳しく述ペる乙ととする。最後の
自動化がどのステージに対して可能であるかとい
管理作業項目である搾乳は,言うまでもなく,搾
う問題になる。晴乳牛と分娩牛については,個体
乳牛のみに必要とされる管理である o 乙のように,
別管理を必要とするため,自動化は不可能であろ
各ステージ別に管理作業は異なっている。
以上の乙とから,家畜側から考えてみても,管
う。育成牛も 1群当りの頭数が少ない乙とから,
完全なる自動化は無理であろう。その他のステー
理者側から考えてみても,ステージ別に乳牛を収
ジの牛に対しては,かなりの自動化が可能であり,
容する施設が必要である乙とがうなずけるものと
最近注目を浴びている,コンビュータ制御は濃厚
考える。飼育頭数が増加するに従がい,このステ
飼料自動給与装置を利用すれば,個体別対応をも
ージ別収容施設の必要性は,より明瞭になるもの
行ないながら自動化をする乙とが可能である。ふ
と思われる。
ん尿処理については,個体別管理を必要とする噛
3
. 畜舎の空気環境の重要性
乳牛・分娩牛を除けば,処理方式上,特に大きな
環境管理からのステージ別収容施設を考える前
差異はないものと思われる。健康管理に関しては,
1EA
つリ
y
2つの環境管理法によって大別され
に,畜舎の自然環境の基本事項について考えてみ
ある。次に,
たい。表 4に,畜舎の自然環境要素の分類を示す口
た空気環境の各要素群は,それぞれ,どのような
この分類表は,以前に筆者ら(1980)が提案した
環境として総称され得るかを考える。筆者らは,
ものを,今回,多少修正して作成したものである o
「断熱・補助熱」という環境管理法と結びつく環
表中の(1)から(1D
までに掲げた自然環境の各要素は,
換気とその方
境 と し て 「 熱 的 環 境 J.また. I
これまで,物理・生物-化学という学問分野か
式」と結びつく環境として「衛生的環境」と総
らのみ分類される乙とが多かった。さらに,各要
称してみた。これらをより平易な言葉で表現する
素は,多くの場合,個々に独立させて検討されて
ならば,前者を「寒さ・暖かさ J,また,後者を
来たように思われる。しかし,このような牛舎の
「空気の新鮮さ」と表わせるものと考える o しか
自然環境に対するアプローチでは,酪農家が実際
し,表 4からもわかるように,環境管理法とこの
に実行し得る環境管理(制御・改善〉法と結びつ
総称した環境とは,必らずしも,
けることは難かしい白そ乙で,農家が実行し得る
3
)
放射熱から(
6
)
空気の
していない。熱的環境は, (
a
)
断熱と補助熱,および, (
b
)
換気
環境管理法が, (
5
)
湿度から日
流れまでに関係し,衛生的環境は, (
とその方式,の 2つに大別できる乙とに注目して
その他のガス・臭気成分まで、の各要素と結び、つい
分類を試みた。なお,その際,自然環境要素の中
ているロつまり,熱的環境(寒さ・暖かさ)の代
似1
)音およ0(2
)
照度は,今問題としているステー
表的な要素である「温度」は, I
換気とその方式」
3
)か
ジ別収容施設とは直接関係してこないため. (
によって大きく影響を受けるわけであるが,衛生
ら日までの牛舎の空気に関与している環境(乙れ
的環境(空気の新鮮さ)に関与する要素ではない。
を,乙乙では,空気環境と呼ぶ)要素のみを対象
しかし,空気の新鮮さを得るためには,現実的に
2つの環境管理法が空気環境の各
は,換気を行なうしか方法がないわけであり,結
とする。さて,
1対 1の対応は
I
温度」にまで影響を及ぼす乙とにな
要素と,どのように結び、ついているかを考えてみ
果的には,
る。まず,断熱・補助熱は, (
3
)
放射熱, (
4
)
温度お
ってしまう。乙の乙とが,以下に述べる,
)
湿度と深く関係しており,また換気とその
よ
と
J
i
(5
テージにおいて,熱的環境と衛生的環境のどちら
4
)
温度から日その他のガス・臭気成分ま
方式は, (
を優先させるべきか」としづ環境管理上の問題を
での 8つの環境要素に結びついている o (
4
)
温度・
生じさせている。
I
各ス
(
5
)
湿度は両環境管理法により管理され得る要素で
表 4 畜舎の自然環境要素の分類
備考
環境管理
ヨ
日
包
防
照明・遮光
断熱・補助熱
ヲ
二
乙
匂
環境管理からの分類
環境要素
ヨ日
包ニ
1)
静かさ (音環境) (
2
) 照
明るさ (光環境) (
度
毅L
'
;
3
) 放
寒さ・暖かさ
射
4
) 温
(熱的環境) (
度
(
5
) 湿
度
ヌ~
物理的環境
(
6
) 空 気 の 流 れ
(
7
) 粉
環
学問分野からの分類
(
8
) 微
換気とその方式
空気の新鮮さ
(
9
) 炭
(衛生的環境) (
1
0 ア
境
じ
ん
物
、
力
酸
ス
ンモニア
生
[
1
) その他のガス・臭気成分
4EEA
A斗 A
、
生物的環境
化学的環境
以上,畜舎の自然環境,とりわけ,空気環境に
ことは,若令の子牛ほど,強調されるべきであろ
つ
。
ついて,その基本的な分類法を述ぺて来た 0' 次医,
環境管理の面から何故ステージ別収容施設が必要
搾乳牛については,必要とする空気環境が若牛
となるかについて考えてみる。表 5は,各ステー
とは異なっている。乙れは,搾乳牛が乳生産を行
ジ別の乳牛が必要とする空気環境について整理し
なっている乙と,および,病気(感染性疾患)に
たもの7
である D まず,若牛について見てみると,
対する免疫性が若牛に比べてはるかに強いことに
前節でも述べたように,月令の低い牛程感染病に対
起因していると思われるロつまり,最低限の衛生
する抵抗力は弱く,従って,乙の時期の牛は可能
的環境さえ保障してやれば,あとは,適温環境を
な限り新鮮な空気のもとで飼われる必要がある o
与えるための施設投資と,それによって得られる
子牛の寒さに対する影響については,乙れまで,
低温環境下に比べた飼料効率の改善とのバランス
適温域が 1
3
.
Cから 2
5
.
Cであると言われて来たが,
の問題になると考える。
0
.
Cの間にあるとする
近年,臨界温度は 5"Cから 1
乾乳牛については,若牛と搾乳牛との中間的な
報告 CWebst
er ら 1978)もなされて来た。ま
位置にあると考え,若雌牛や搾乳牛が必要として
た,曽根ら(19
82)は,北海道立新得畜産試験場
いる空気環境のどちらにでも適応し得るものと言
において行なわれた 1978年から 1981 年まで
えよう。
の,カーフハッチを用いた子牛の育成試験の結果,
分娩牛は,最も外的悪環境に対して弱い出産直
北海道十勝地方の冬期においても,子牛は人工乳摂
後の子牛と同居しているわけであるので,熱的環
取量が保温舎飼区に比べ40~ぢ前後多かったものの,
境も衛生的環境も可能な限り充足させる必要があ
発育には大きな差はなかったとしている。杉原ら
ると考える o
(
19
8
1
)も,ほぼ同様の報告をしている。また,
表 5 各ステージにおいて必要
とされる空気環境
Holmes ら(1.
9
8
3
)は
, Wisconsin大学で行
なわれた試験の結果,コールド・タイプの施設
(熱:熱的環境,衛生:衛生的環境)
ステージ
(カーフハッチや自然換気方式の哨育舎)で飼わ
れた子牛の方が,ウオーム・タイプの施設(断熱
衛生に重点
・加温・強制換気方式の日甫育舎)よりも,疾病の
育成牛
問題が少なしまた,死へい率も少ない傾向を示
若雌牛
乙れは,低温環境の方が温暖
乾乳牛
b した,と報告した
D
必要とする空気環境
な環境よりも優れているという乙とを意味してい
熱に重点
搾乳牛
ー一ー一一一一一一一ー一一一一一ーー一一一一一一一一ー一一一ーー
るわけではなく,
Milne (
19
83)が述べている
分娩牛
熱
+
衛生
ように,子牛の育成にとっては,新鮮な空気の方
4
. ステージ別収容施設の実例
が,暖かい温度よりもより重要である,というこ
とを意味しているものと考えるべきであろう。ま
(
1) 若牛収容施設
た,以上の報告は,密閉した牛舎において,子牛
若牛の収容施設を図 lのように整理した。以下
に適合した空気の新鮮さを得ることが如何に難か
にそれぞれの施設について説明する。
しいかをも物語っていると言える。以上の乙とよ
カーフハッチは, 1970年代前半に,米国北西部
り,若牛に対しては,熱的環境よりも,衛生的環
を中心として普及し出した晴育牛用の施設で,我
境を優先させて考えるべきであると考える。この
国には,米国ミネソタ大の
Bates 教授によ
41i
RU
って,
1
9
7
7年に紹介された。典型的なカーフハ
生的環境については,筆者ら(1980
, 1981)の
ッチを図 2に示す。カーヲハッチの熱的および衛
=
円
~
牛
円
」
│←カーフハッチ (
C
) →ト
成
牛
若
日
甫
報告がある。
雌
牛
。
一
L コールド・スラット床→│
カーフハッチ (
C
)→ト
若雌牛舎 (d'W'~1
!
l
│←コ一川・タイプ
→ │ 一 一 一 → ←一一一一ーしフリーストーノレ
日甫育牛舎 (
C
)1
:
:
下
若雌牛舎 (
C
)
i
!
│←ウォーム・タイプ
→卜一一一一→ ←一一一一一十ポーノレタイプ
日 甫 育 牛 舎 仰1l
'
;
i
若雌牛舎 (
C
l
連鎖式固定ハッチ (Cl ーラ/←ーカウンタヶスロープ若雌特C~I
図 1 若牛用収容施設
(C :コーノレド・タイプ,
w:ゥオーム・タイプ)
, 1
9
8
0
)
図 2 典型的な力一フハッチ (Bates ら
図 3 コールド・タイプ晴育牛舎 (Bickert,1
9
8
3
)
p
o
コーノレド・タイプ日甫育牛舎およびウォーム・タ
1
0
0ド
ノ
レ
, コーノレド・タイプが 4
0
0 ドj,
レ ウォー
イプ噌育牛舎は,カーフハッチと共に,寒冷地に
5
0 ドルであると述べている。コー
ム・タイプが 8
おいて用いられている哨育用施設である。 Milne
ルド・タイプおよびウォーム・タイプの実例を図
(
19
83)は,いずれの施設であっても,
空気,
1)新鮮な
3および図 4にそれぞれ示す。
2
)
乾いた敷料, .
3
河子き届いた管理, 4)スト
スーパーカーハッチは,獣医学者である And-
レスからの解放,の 4項目を充足させてやりさえ
erson と農業工学者である Batesとの共同研
すれば,健康な子牛を育てることができる,とし
究の中から生まれた育成牛 (2"'6ヶ月令)のた
ている。しかし,建設費用は大きく異なり,カナ
めの施設である。乙れは,十分なる空気の衛生的
ダにおいて,それぞれ l頭当り,カーフハッチが
環境を保証すると共に,
y
;
jTRUSSES
8頭以下の小さな群で飼う
・ゆ"ゆ開時間町
z
'
・
O
'o/c
SEE OETA
T
I
倒
I~' AS
円i
A
L
TFELT
23~' A5P禍LT S
HIN<礼 E
『イロ花RIO符凡.Y'MXlO
[
;
.
;
1
-118.蹴 出
1
ダ凡刊以)() SOFFIT
1
1
'・6
'
」
。
配同・。
「日∞(I}I
I
M
l
z
ム0
.
1~~,ア?-2
"Ander
son,1
9
8
0
)
図 4 ウォーム・タイプ時育牛舎 (Bates &
i
ウ
1EA
乙とにより,その後の群飼に慣らすという目的を
次のステージで収容されるべき施設として,図 7
も持っているロ Anderson と Bat
esが最初に
に示すような,コーノレド・スラット床若雌牛舎を
作ったスーパーカーハッチと,北海道立林産試験
設計した。乙れは,自然換気方式で,全面スラッ
場(19
8
3
)による設計図を,それぞれ図 5および
トの床構造であり,ストールは全くない。糞尿は
地下貯溜槽に直接落下するようになっている。ス
図 6に示す。
寒冷地における若雌牛のための施設としては,
ーノぞーカーフハッチから移って来た子牛群は,最
コーノレド・スラット床若雌牛舎, フリーストーノレ
初,ベニヤ製の高い隔柵でf
'
士切られ,他の月令の
若雌牛舎,ポーノレタイフ。若雌牛舎などがあげられ
高い牛群との接触をできるだけ防ぐようにしてい
るo Bates ら(19
8
4
)は,カーフハッチ・スー
る。給飼も,徹底した省力化がなされている。ま
ノマーカーフハッチにおいて育てられて来た子牛が,
た,図 8は,フリーストーノレ若雌牛舎の 1例 (M
図 5 スーパー力一フハッチの第 1号施設
上:米国ミネソタ州,ミネソタヴアレイ牧場のスーパーカーフハッチ
s教授,
下:子牛の治療用に柵が取り付けられている。右端が Bate
外で治療しているのが Anderson 教授。
-]8-
司
.
,
.
司...
6同】
"
1 1 1 1
力一フハッチ
(北海道木質材料需要拡大、
協議会,
1
9
8
3
6
l
且
"
r--r
--'--r
一一寸ーーー「一
図 6 林産試タイプスーパー
止LL~ ~ ~ ~ ~ ~
l
出回
6
.
3
図-
図
-6.9
立厨図(後面)
林産誌 Pイプ.屋根たるき形式
6
.
1
0
立国図(側面)
t
t
産
試 Fイプ.屋恨たるさ形式
6
.
1
1
小 屋 伏 図
林産試 Pイプ,屋 t
Jlたるさ形式
立国図(前而)
林産試タイプ,トラス形式
小 屋 伏 図
林産試タイプ.トラス形式
図ー
「一一一一一一一一一一一一三組L一一一一一一一一一一一ー
00
"
"
"
"
H
O
O
「一一9
一一
一一 r
一一一
一一寸
一
一一寸一一ー
一
一
一寸
h ーーー且
抱
一一」一一-~一一一一----"--一一三二三国
n8
I
"
'
。
ト4
t
90()
図
-6.4
I
切
図-
立而図(後国)
林産試タイプ.トラス形式
s
歪~コ
E量
!
_
;
!
型
?
_
_
_
_
_
_
_
,
l-_!笠~_J
図
6
.
1
スーパーカーブハ田ソチ概観図
(林産試タイプ. トラス形式)
6
.7
図-
平
l
而 凶
'*産試タイプ.屋 t
lt.こるさ形式
呈三旦l
~I ",
合
“
。
ロ
門
E
内
」ー些~!-ーム一一 I主.!!L__ L一一.....!.w一一一L--l主主!_____j
図
-6.2
平 副 図
(H産試タイプ,トラス形式)
己盟A
図
-6.5
6
.8
図-
立
1
(
J
j 凶(前 1
(
J
j
)
t産試タイプ,世 t
lたるさ形式
図-
図 7(
a
) 外 観
壁面に十分な入気窓が取り付けら
れている。
図 7(
b
)
牛を収容する前の内部の状態
床全面がスラットになっている。
自然換気による空気の動きをスム
ースにするため,屋根裏には母屋
等の突起物がないようにしてある。
2
5侃幅のオープ
棟部は連続開放 (
ンリッジ〕
c
) 牛が収容されている状態
図 7(
スーノマーカーフハッチから移って
来た 8頭のグループは,最初, 1
つのペンを板により 2分した場所
に収容される。乙の隔柵としての
板は,より月令を経た牛からの接
触による疾病感染を防止するため
に設けられた。また牛舎内の両壁
5
c
mの通路が設けられ
側には,約7
ており,牛の移動や管理者による
牛の観察,換気窓の調節だけでは
なく,治療や人工授精にも利用さ
れている。
図 7 コールド・スラット床若雄牛舎(米国.ミネソタ州,ミネソタヴアレイ牧場)
-20-
, 3ヶ月令から分娩までの若牛
W PS, 1983)で
模においても用いる乙とのできる施設であろう。
および乾乳牛をも収容するように設計されている。
この例として,北海道立林産試験場マ開発した P
乙れらの施設は,非常に大規模(搾乳牛 2
0
0頭以
Tノ¥ウス (北海道木質材料需要拡大協議会, 1
9
8
3
)
上)な酪農家において用いられる施設であるが,
の実用化第 1号を図 9に示す。
ポールタイプ若雌牛舎は,北海道の一般的経営規
また,
Collins ら(1983)は,比較的温暖な
図 8 フリーストール若雌牛舎 (MWPS
自
1
1
│I I I I I I I
給飼通路
1
9
8
3)
i
ロお司
i
i
i
「
li×l
.
r
:~ト I/寸------_ ,
,
,
-
,
庄r
運動場
l
図9.2 立 面 図 ( 正 面 , 側 面 )
図 -9
.
1
平
面
図
h」
主
∞
1B
1駅 焔
∞
-
1以X】
36
IOHα1
計
図 -9
.
3 矩
民J
~
図
図 9 若雌用 PTハウス(十勝・中紙牧場一北海道
木質材料需要拡大協議会,
1
9
8
3
)
円ノム
地域においては,図 1
0に示すような,連鎖式固定
びその他の条件により異ならざるを得ないと思わ
ハッチ(日甫育・育成牛用)および,図 1
1に示した,
れる。最も大切な乙とは,施設の形ではなく, 2
カウンタースロープ若雌牛舎が,有効であると述
節・ 3節で述べた基本的な考え方に基ずいて施設
1
9
81)によ
べており,北海道において!も,大町 (
が作られ,管理される乙とであろうと思われる D
り,乙の寒地向改良型が肉牛用施設として考案さ
Ainsli
e ら(19
8
1
)が,適切な子牛の管理は,
れた(図 1
2
)。
収容施設のタイプよりもより重要であると述べて
,
以上,若牛収容施設の実例を述べて来たが,そ
いることも忘れてはならないであろう D
の構造や形態は,それぞれの地域の気象条件およ
図1
0 連鎖式固定ハッチ (
C
o
l
li
n
s
4
I
~7m
f
t-息所は i
古来に面する。
仕切り柵又は壁は.通常
3.6m毎に設ける。コンクリ
ート床は,集糞通路に向
かい, 1
2分の lの勾配を
つける。暖かい季節には,
)
!
¥
上
i
H
l
tの換気窓は開けて
おく。 離乳後の子牛には,
通常数料法入れない。
~7m
I
~4m
1:
集糞通路の │絵飼所 i,
.8- 1集茸通路に
│
幅
広
, 1
12
.
7
moゲイト│向かい,1
2分
│
J
t回転,休│の 1の
句E
を
│息所の前面を│つける 2 幅;
t
1間二清掃中 1 1
.5
m
-2
.
4m
│
l
t牛を悶ヒ込│のものが作ら
1め
る
。
1れ
ている。
I
I
図1
1 カウンタースロープ若雌牛舎 (Collinsら
, 1
9
8
3ー畜産の研究,
Vol. 3
8
.N
.
o5 (1984) より転写)
-22-
(
2
) 搾乳牛舎
コンピュータ制御付濃厚飼料自動給与装置(以下,
搾乳牛舎は,最も高度に群管理が要求される施
CCFと呼ぶ)に関する,米国における興味深い
設であると言える o 搾乳牛舎における群管理施設
アンケート調査 CSmithら
, 1
983)の結果を紹
については, 2節で分類した 5つの管理作業項目
0
月から
介する。乙のアンケート調査は, 1982年 1
に従がって,それぞれの施設の現在問題となって
1983年 1月にかけて,全米各地の 2
7
0戸の CCF
いる点等につき述べてゆく。
利用農家を対象として行なわれた。対象農家 l戸
a
) 給飼施設
6
頭 (24-3
0
0頭)でi
当りの平均搾乳牛頭数は 9
95%がフリーストーノレ・パーンを用い, 88%はパ
給飼の自動化は,粗飼料のコンベアによる自動
給与という形で従来より行なわれて来たが,近年
ーラ搾乳を行なっており,そのうちの 5
4
労は C C
群飼の省力効果を損なわず、に飼養効率を高めよう
Fによる給飼とは別に,パーラ内で穀物飼料を給
1981
) から,コンプリート
与していた心マーラ内給飼農家) 0 30%以上の農家
とする目的(鈴木,
フィード方式や,濃厚飼料自動給与装置が採用さ
は CCFをフリーストール牛舎内に設置していた D
れはじめており,注目を浴びている。乙こでは,
表 6は
, C CF利用農家の利用状況および施設費
夏期入射
南東
除糞
通路
飼槽
水
牛床
図1
2 積積寒冷地向カウンタースロープ若雌牛舎(大町 J 1
9
8
1
)
表 6 CCF利用農家 2
7
0戸の利用状況および施設費
(Smithら)
質
問
項
パーラ給飼農家
目
ノマーラ給い飼農して
いな
家
搾乳牛中の CCF利用の割合(労)
87
90
CCF1台当りの搾乳牛数(頭)
24
21
137
124
6
.1
7
.
0
17
.
9
18
.
2
成牛(搾乳+乾乳) 1頭当りの施設費(ドノレ)
3
) 145
3
) 167
CCF利用牛 1頭当りの施設費(ドル)
3
) 201
3
) 229
CCF1台による 1日当りの給飼量 (K9)
1日 1頭当りの穀物飼料の給飼料 (K9)
飼料の粗たんぱく質(労)
円ノム
っυ
である o また,表 7は
, CCF使用前後の産乳量
7
. 他のステージ用施設の処理方式
の変化を示しており,表 8は CCFに対する農家
8
. 牛に対する影響(事故・蹄病等)
の評価である。 CCFは,また,高水分穀物飼料
9
. ふん尿の利用方法
2
9
ぢの農
の給与にも利用されているようである。 8
乙こでは,床構造と蹄病についての若干の文献
家は DHIAに属しており,飼料給与量の調節は,
1982)は,異なった床構造
を紹介する。 Blom (
約半数の農家で DHIAから毎月得られる乳量に
(コンクリート床とスラット床)において,ホノレ
基づいて月毎に行なっていた。減価償却に要する
スタイン種とジャージ一種の搾乳牛が蹄病(祉問
5
.
6ヶ月と予想されていた。
期間は,平均で 1
3に
腐乱と蹄底腐乱)にかかる頻度を調査し,図 1
Smithは,最後に,飼料代は,乳生産費の 5
0
.
.
.
.
示した結果を得ている。乙れによると,ジャージ
60%を占めているため,飼料代の管理および飼料
一種においては差は見られなかったものの,ホル
利用率の改善は利益を増すための最大で唯一の方
スタイン種では,コンクリート床の方がスラット
法であると述べている口
床よりも蹄病の発生頻度は高かった。また,表 9
b
) ふん尿処理
は
, )レース・ノてーンとスタンチョン・パーンにお
搾乳牛舎のふん尿処理方式は,次のような各点
いて蹄病の比較を行なったもので,ノレース・パー
ンはコンクリート床とスラット床の 2種について
を考慮して決定されなければならない。
1
. 畜舎のタイプ(コールド,ウォーム)
調べている。これによると. )レース・パーンの方が
2
. 労働力
明らかに蹄病発生の頻度が高い乙とがわかる。
3
. 資金
Blomは
, 乙の理由として.)レース・パーンでは蹄
4, 敷料の入手
部が常時ふん尿の中に置かれるためであるとして
5
. 耕地面積
いる。また,乙の調査では,コンクリート床とス
6
. 周囲の環境(市街地からの距離等)
ラット床には差が表われなかった。
thら
〕
表 7 CC F利用前後の産乳量の変化 (Smi
。
{
g
.
/cow.day)
CCF利用前
CCF利用後
21
.1
23
.1
パー ラ給飼していない農家
2O
.6
21
.9
全
20
.
9
22
.
5
マーラ給飼農家
農 家
smith ら
〕
表 8 CCFに対する農家の評価 (
(
%
)
非常に満足
満
足
不満足
個体識別
67
29
4
信頼性
50
44
6
ティーラーのサービス
63
31
6
プログラムのし易さ
87
12
出力データの有用性
61
37
-24-
2
Bates (
19
75)は,フリーストール・パーン
管理だけでは,十分な健康管理は期待できなくな
(コンクリート床,スラット床にかかわらず)に
るであろう。その意味で,米国における DHIサ
おける蹄病の治療法として,パーラの牛の通路に
ービスは,注目に値する。天間(19
82)によると,
硫鵬同溶液の液槽を設け,搾乳時に必らず牛が蹄
DH 1 CDairy Herd Improvement) サー
を浸すようにすることを推奨しているロ水に対す
ピスは,酪農家の経営分析や組飼料分析・牛乳分
る硫酸銅の重量比は,通常は 1/50
で十分である
析のみならず,種付・妊娠・乾乳・分娩・乳房炎
1/20とし
などの管理にも利用されており,さらには,更新
が,蹄病発生の頻度が高い場合には,
てもよいと述べている o
牛の決定にまでおよんでいる,と言う。我国にお
c
) 健康管理
いても,十勝地方において,その試みがなされて
小頭数の搾乳牛の健康管理であるならば,酪農
はいるが,未だ実現には至っていなし、。群管理が
家が個々の牛を注意深く観察することにより行な
粗放管理にならないようにするためには, D H1
い得るが,群管理をしなくてはならない頭数規模
サービスに見られるような,組織的なコンピュー
になると,個体別健康管理は非常に困難となる o
タ一利用が,今後,必須条件になるものと思われ
小頭数の時可能であった酪農家の目とカンによる
る
。
/
/
コンクリート
/
スラット
ジャージー (
1)
/世間腐乱/蹄底腐乱/世間腐乱/蹄底腐乱/
図1
3 床構造と蹄病 (Blom ら
,
1
9
8
2
)
表 9 収容方式および床構造と蹄病発生率 (B10m ら)
(
%
)
距
重症
目
リ
ノレース・ノてーン
スラット床
コンクリート床
スタンチョン・ノてーン
後
間
腐
中程度
吉L
蹄
軽症
重症
底
腐
中程度
古L
軽症
目
リ
後
目
リ
後
目
リ
後
目I
J
後
目
リ
後
。
。
6
7
2
4
2
5
3
1
7
1
0
2
7
1
2
1
8
1
1
1
2
2
2
2
5
2
1
8
6
2
2
1
2
1
5
o
0
5
1
1
1
9
3
1
8
5
1
3
1
発前:前肢,後:後肢
-25-
d
) 環境管理
気・断熱方式の決定は, 3節でも述べたように,
環境管理の大枠を決める,換気・断熱方式につ
最終的には,施設投資と飼料効率のバランスによ
いて考えてみる。米国・北部においては,乙れま
る乙とになる D 但し, Warm Housing におけ
で牛舎の換気・断熱方式をウォーム・ハウジング
る夏期の環境は Cold Housingよりも,涼しさ
(Warm Housing)とコールド・ハウジング
の点で劣る乙とが多く,しかも,換気扇運転のた
(Cold Hous
i
n
g
) とに分類して来た(干場,
めの電気代も無視できないロ従って, Cold Ba-
1982)。 これらは,牛舎内の温度が冬期聞にほ
rn, Modified Environment Barnの利
ぼ外気温と等しくなる (Cold)か,または,一定
用を,冬期間の低温下における作業性をも考え合
な適温環境である (Warm) かによって分けられ
わせて検討する必要があるであろう D 夫々の実例
ていた。実際の換気・断熱方式で言えば, Cold
4,図 1
5,図 1
6に示す。
を,図 1
Housingは自然換気方式と言うことができ,
e
)搾 乳
Worm Housing は,断熱(加温)強制換気方
式と言えるであろう。、しかし,最近,
群管理搾乳牛舎ではパーラは不可欠な施設であ
Cold,
るが,非常に高価であり,その選定には熟慮を要
Warm の他に Modified Environment と
す。ここでは,若干の文献を紹介し,その助けと
いう分類がなされるようになって来ているo (MWPS, したい。
1983)。これは,断熱自然、換気方式と呼ぶ乙とが
Bickert (
19
8
3
)は. 1人で 1日 1
頭平
均2
7
kg生産する牛 100頭を搾乳する場合を想定し,
でき,冬期における牛舎内気温が外気温より高く
4頭複列, 6頭複列, 8頭複列のへリングボーン
(0'
C以上)なるように設計される。札幌市篠路
式パーラを用いた場合のそれぞれの必要時聞を計
の伊藤牧場の搾乳牛舎も乙のタイプに属する d換
算した。(表 1
0
) 。乙れによると, 4頭複列に比べ
4
・
,
,
'
10
図1
4 コールド・スラッティド・フリーストール・パーン
(Cold Slatted Free S
t
a
l
l Barn-MWPS)
ρhu
n〆U
図1
5 ウォーム・スラッティド・フリーストール・パーン
(Warm S
l
a
t
t
e
dF
r
e
e S
t
a
l
l Barn-MWPS)
│位
図1
6 断熱自然換気牛舎一札幌市・伊藤牧場
(
M
o
d
i
f
i
e
dE
n
v
ironment Barn一堂腰・五十部)
2
7-
て
,
6頭複列で搾る乙とにより, 1日 2時間の節
(
3
) 分娩牛収容施設
000 ド
ノ
レ
約ができるが,それに要する費用は 25,
Bates (
1983) は,分娩牛収容施設について
から 30,
000 ド
ノ
レ (625万円から 750万円)で
以下のように述べている D 乙の施設は,免疫性を
ある o 8頭複列にすると,さらに,
ほとんど持たない牛が同居するため,搾乳牛群や
1日3
0
分短縮
できるが,そのためには 20,
000ドルから 25,
000
他の成牛群から隔離されていなくてはならない。
ド
ノ
レ (500万円から 625万円)をさらに投資しな
もし,搾乳牛群と同一牛舎内に分娩房を設置せざ
くてはならない,と述べている。また,表 1
1は
,
るを得ない場合には,ベニヤ等でミ壁を作って隔離
へリングボーン式パーラにおいて,パーラの大き
し,換気系も別にしてやる必要がある。やむを得
さ (1列当りの頭数)および機械化の度合と 1時
ず換気系を別にできない場合には,牛舎内空気が
間当りの搾乳可能頭数を示している。
分娩牛但iJから搾乳牛側へ流れるようにしなくては
0 1
0
0頭 (1日 1頭当り 2
7
K
;
r
産乳)搾乳に要する時間
表1
(Bickert)
正味搾乳時間
総搾乳時開発
4頭
グ
複
ラ列
(
ウド・ゲート付)
2時間 55分
4時間
6頭自複動離
列脱装置
ゲ
クラウド・
-ト 付)
1時間 50分
3時間
8
(
頭
自
ク
複
動
ラ
離
列
ウ
脱
ド
装
・
置
ケ
ー 卜付)
1時間 30分
2時間 45分
持
準備・牛の移動・清掃を含む
1 ヘリングボーン式パーラにおける機械化の度合および
表1
1~Ij当りの頭数と 1 時間当りの搾乳可能頭数 (Bi ckert)
(頭/時間)
4頭複ヂIj
6頭複列
8頭複列
1
0
頭複列
29-42
50- 66長
64-80発
80-89栄
69- 87長
55一71発
C
34-47
72- 90持
58一74勢
37- 47
C+F
49-65
60- 78
33-46
D
37- 50
54-70
68- 84
D+C
57-73
70- 88
D+C+F 39- 52
1
) C:クラウド・ゲート, F フィード・ゲート, D
2
) 1日 l頭当り産乳量を 1
7
K
;
r2
7
K
;
rとして算出。
88- 97長
機械化
ナシ
92-101持
72- 81
79- 88
83- 92
自動離脱装置
3
) 準備・牛の移動・清掃のための時間は含まれていない。
4
) 全ての場合,パーラへの出入口には電気開閉装置を設置D
5
)
持:2人搾乳,印無しは l人搾乳。
-2
8一
4
ならない口同様の理由から排気用換気扇を分娩
とよし、。図1
7は
,
牛のそばに設けてはならない。完全に隔離された
によって設計された,分娩牛専用施設である。ペ
分娩房では,面積当りの牛からの発熱量が少ない
ンの数は,搾乳牛2
5
頭に対して 1つの割合が好ま
ため,断熱性をより高め,補助熱源を加えてやる
しいとしている。
込
"
9
'
6
"
r
F
9'-6"
「
Anderson と Bates(
19
87)
9
'
ー
亘
"
一
=
ω
l
N
。
ωl・N一
・
-
図1
7 分娩牛舎 (Anderson & Bates , 1
9
8
3)
-2
9
押えた労力の配分が必要であろう。即ち,日甫乳牛
(
4
) 乾乳牛収容施設
乾乳牛は前節でも述べたように,必要とする空
・分娩牛に対しては,可能な限りの細かい管理が
気環境では若雌牛と搾乳牛の中間的な位置にあり,
望まれる。他のステージの牛群に対しては,コン
通常,どちらかのステージの牛群と同居させられ
ビュータの利用等により個体能力を発揮させなが
ることが多い。しかし,頭数規模が大きい場合に
らも,できるだけ(経営収支の許す範囲で)自動
ついて,
Appleman (
1983)は,搾乳牛 2
5
0頭
化の方向へと向う努力が必要であろう。施設とは,
以上の経営においては,乾乳牛を 3群(乾乳促進
理想的な管理を実行可能にするもの,または,実
期,乾乳期,分娩直前期)に,また,
行し易くするものであると考える。
1
0
0頭から
内容が,少なからず,牛舎環境に片寄ってしま
2
5
0頭の経営では 2群(乾乳期,分娩直前期)に
ったとと,および,多くの方が最も興味を持って
分けるべきである,と推奨している D
いると思われる搾乳牛舎における群管理施設につ
5 まとめ
いて,単に外国文献の紹介にとどまってしまった
以上,乳牛の群管理施設について,整理を試み
乙と,をお許し願し、たい。
て来たわけであるが,どのような施設を利用する
にしろ,最終的な評価は,システムとしての経営
なお,群管理を行なっている搾乳牛舎の 1
例と
収支に帰する乙とを忘れてはならないと考える。
して,札幌市篠路町の伊藤牧場に関する資料(1
群管理により省力化するに当っては,ポイン卜を
"
-4)を付す。
10
6
1頭 時
:
! 5~
u
。
.L苦手イ~
r=0.812
ロ ロぜコ~,'軍ロ
0
己 01
ゆ/自分
~ó
」ロ /Z弔,~,'市
47腕
内HM
戸
︼
、
﹃
ー -5
EJ
h
t
A
Y
田 川馴F
‘-jfLM山
ロ
凶
、 JK
、
ヒ
ゲ
/U
時Y
Y
T
i
;
:
r
z
i
7
3
7
。
。
時刻
DATE 02/25/84
-15
-10
ー5
タト気温
資料 1 牛舎内外気温の日変化
(片山ら,
To (
5
O
c)
資料 2 牛舎内外気温の関係
1
9
8
4
)
(片山ら,
1
9
8
4
)
10
qJ
ハU
資料 3 換気特性(五十部ら,
リ
調
定
日
外風速(ロレ/
s
)
風
向
棟風速 π
(レ
/
s
)
1
0
/
1
81
0
/
2
11
0
/2
41
0
/31 1
1
/
0
21
1
/
0
8 1ν14 1
1
/
1
61
1
/
1
81
1
/
2
61
1
/30 1
2
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1
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4
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SE
0
.
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1
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.
8
棟風量 (
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s
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.
5
.
4
5
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.
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.
8
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.
4
入気窓風車n
f
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s
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2
5
.
2
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11
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0
.
2
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.
6
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.
1
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1
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.
6
換気回数(回/時)
1
9
8
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3
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6
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2
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1
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1
NW
NW
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1
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1
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4 16
.
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.
7 11
.8 15
.
4 12
5
.
4
9.
3 62
.
4-11
.8 41
.6
7
.
7
19
11
NW
34
25
24
5
.
0 2
0
.
3
31
24
11
外気温(
'
C
)
8
.
8
8
.
4
9
.
6
7
.
2
9
.
8
-3
.
9
0
.
1
1
.7
牛舎内温度
8
.
4
9
.
9
9
.
9
8
.
4 10
.
6
.
4
0
6
.
7
8
.
2
(
'
C
)
資料 4 作業時間 (
1
9
8
4
.
7
.
1
8)
飼配合料・給与
の
搾乳牛舎
116
(
19
)
22
晴乳
。
ボロ出し
(
0
)
22
搾乳
その他
35
(
6
)
450
(
7
4
)
(
1
)
17
7
(
19
)
(
19
)
(
15
)
43
(
3
7
)
(
10
)
育成・乾乳牛舎
54
(
3
9
)
(
0
)
84
(
6
0
)
(
0
)
カーフノ¥ッチ・
ス
ー
ゾ
切
ー
フ
'
/
'
:
:
.
'
チ
31
(
5
0
)
31
(
5
0
)
(
0
)
言
十
223
(
2
4
)
53
(
6
)
135
(
15
)
分娩牛舎
。
。
言
十
608
(
6
6
)
11
115
(
12
)
2
(
1
)
140
(
15
)
(
0
)
(
0
)
62
(
7
)
493
(
5
3
)
20
(
2
)
(
10
0
)
。
。
。
925
1)飼料生産時間を含まず
2
) 単位:分, ()内は%
参 考 文 献
1
. A
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7
9
. 1
nfluence o
f 1mproved
2
. Anderson,J
Ventilation onHealth o
f Confined Cattle. ]
.A
.V
. M. A
. 1
7
4
(
6
)
:
5
7
7
5
8
0
.
.F
. and D
.W
. Bates. 1
9
8
3
.From Calves t
o Springers i
n Less
3
. Anderson,J
Than 24Months. DairyHousing 1
I
. 2
51-260. ASAE.
oseph,MI 49085.
St
.J
qべU
1i
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. and D
.W
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9
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for Dairy Cows一 A Total Animal Health Care Necessity. Dairy
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I
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2
0
5
2
1,
1 ASAE.
St
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5
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.D
. and D
.1
. Bath. 1
9
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. Facility and Equipment Needs o
f
Dry Cows. DairyH
O
e
l
s
i
n
gI
I
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. Joseph,MI 49085.
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a
t
t
l
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i
versity o
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.W
. and J
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9
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. Insulated Calf Barn with
1n
d
i
v
i
d
u
a
l and Group Pe
f
l
s
. 加← 149, Agricult
u
r
a
l Ext
ension Service,
Universit
yo
fMinnesota,St
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,
l MN.
.F
.Anderson and R
.D
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9
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0
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d
i
n
g and
8
. Bat
e
s
.D
.W
.• J
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9
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s,D
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a
l
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v
i
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. Joseph,MI 49085.
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.凡
1
4
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1
1i
n
s, W
andG
.M. J
o
n
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s
.1
9
8
3
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1
5
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1
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年度農業施設学会大会講演要旨: 7-8
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c
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nI
n
d
i
v
i
d
u
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l Concentrate Feeding Equipment and
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.
円
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