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太陽電波II型バーストのスペクトル 微細構造の統計的出現特性
太陽電波II型バースト 太陽電波II型バーストのスペクトル 微細構造の統計的出現特性 柏木 啓良、三澤 浩昭、土屋史紀、小原隆博 (東北大学 惑星プラズマ・大気研究センター) 増田 智 (名古屋大学 宇宙地球環境研究所) 岩井 一正 (情報通信研究機構) フレアオンセット Fig.1 左:太陽電波バーストの分類 右:ダイナミック スペクトルの観測例(credit:NICT) •コロナ衝撃波に伴って発生 ゆっくりとした負の周波数ドリフト •基底波と高調波の2バンド構造がしばしばみられる [kHz] •特性周波数 ~プラズマ放射: 1 既知のスペクトル微細構造:Herringbone構造 2 スペクトル微細構造のNew type?: 先行研究 メイン構造 Herringbone 40(MHz) backbone 80(MHz) Fig.3 左:AMATERASで観測されたII型バースト 右:左図の□部分の拡大図 (Sato[2014]) 60(s) 先行研究(Sato+[2014]) Fig.2 herringbone構造の典型例 (Miteva & Mann[2007]) •Herringboneの出現率は全II型バースト中の2割程度 •衝撃波で加速された電子ビームの挙動を反映した構造 •個々のドリフトレート:10MHz/s~数10MHz/s →0.05c~0.5c(定常コロナ密度モデルを仮定) (Cairns & Robinson[1987]、Mann & Klassen[2005]) 3 • 初同定: II型バーストのメイン・ドリフト構造を埋め尽くす成分として同定 • 特徴: 継続時間 ~数100msecの線状スペクトル構造の群発 • 未解決: 解析例はこの1例のみ → II型バーストにおける一般性? 4 本研究の目的 Herringbone構造とスペクトル微細構造 背景: 50(MHz) •メイン・ドリフト構造内部にスペクトル微細構造を伴うII型バーストの検出 例は、2010年11月12日の現象の1例のみ •スペクトル微細構造を伴うII型バーストの出現特性や、発生過程・領域 は未解明 80(MHz) 20(s) Fig.4 (左):herringbone構造(fig.2と同じ) (右):メイン・ドリフト構造内部 に確認されたスペクトル微細構造(fig.3と同じ) 目的: •類似点: 微細構造の正負の周波数ドリフトの存在 •相違点 1: 周波数ドリフトの始点 2: 出現する周波数ドリフトの周期性 3: 想定される電子ビームの速度(周波数ドリフト率) 1. II型バーストのスペクトル微細構造の普遍性の検証 2. スペクトル微細構造を伴うII型バーストの発生過程・領域の考察 5 観測装置 6 結果: II型バースト出現一覧 IPRT/AMATERAS • 解析対象期間: 2010年10月~2014年9月 ・・・高時間, 高周波数分解能を有する太陽 • 検出されたII型バースト: 13例(CME関連イベント: 10例) 電波望遠鏡 表2 II型バースト出現に関連する現象 [Iwai et al., 2012] 表.1 AMATERASの仕様 時間分解能 10(ms) 周波数分解能 61(kHz) 周波数帯 100~500(MHz) 偏波 右旋・左旋 2010/11/12 2011/8/4 2011/9/6 2013/10/28 2013/11/2 2013/11/7 2013/11/8 2014/1/8 2014/4/25 2014/6/9 2014/8/22 2014/9/24 2014/9/28 Fig.5 IPRT/AMATERASの概観 7 発生時刻(UT) start/end 1:37:32/1:39:27 3:54:10/3:55:30 1:45:34/1:48:44 1:59:59/2:00:49 4:46:26/4:49:56 3:40:43/3:45:13 4:25:10/4:26:50 3:47:43/3:52:53 0:22:29/0:26:29 ‐1:53:02/‐1:56:42 0:7:20/0:11:12 ‐1:3:12/‐1:9:22 2:44:46/2:49:11 フレアクラス (発生領域) C4.6(S25E02) M9.3(N16W38) M5.3(N13W07) X1.0(N04W66) C8.2(S23W04) M2.3(S14E28) x1.1(S14W15) M3.6(N11W81) X1.3(S14W89) C5.2(S13E89) C6.6(N07E32) M2.3(S13E33) M5.1(S13W23) CME 速度 (km/s) 245 1315 782 695 828 373 643 456 838 311 (after http://hesperia.gsfc.nasa.gov/hessidata/dbase/hessi_flare_list.txt http://cdaw.gsfc.nasa.gov/CME_list/) 8 結果: II型バーストの発生域伝搬速度の特徴 表3 II型バーストのメイン構造のドリフトレー トと想定される伝搬速度、微細構造の存否 解析項目: • • メイン構造のドリフトレート算出 メイン構造のドリフトレートからNewkirkの密度モデル[ . • ⁄ メイン構造のド 伝搬速度 リフトレート (km/s) (MHz/s) 2010/11/12 0.16 190 日付 . ]を用いての伝搬速度推定 メイン構造内部のスペクトル微細構造の存否の検証 Fig.6 メイン構造のドリフトレート算出 2011/8/4 0.26 2011/9/6 0.32 320 430 2013/10/28 0.48 760 2013/11/2 0.54 570 2013/11/7 0.23 230 2013/11/8 0.54 620 2014/1/8 0.24 260 2014/4/25 0.12 170 2014/6/9 0.092 160 2014/8/22 0.41 400 2014/9/24 0.13 170 2014/9/28 0.5 580 Fig.7 メイン構造内部にみられたスペク トル微細構造の例(2013年11月8日) • 13例全てでメイン構造中に微細 構造の存在を確認 II型バーストは、その伝搬速度に 関わらず、スペクトル微細構造を 伴う可能性が高い 9 10 結果: Event study(2013年11月7日) 結果: 微細構造の特徴 ドリフトレート 解析手法 対象:2013年11月7日3:40UT頃に発 生したM2.3クラスフレア •X線強度のピークは、3:40UT頃 •ディスクセンター付近で発生 •CMEを伴ったフレア 1. ある領域(Fig. 上図の破線)を 設け3つの周波数に沿ってラ イトカーブ作成(Fig. 下図). 2. 3つのライトカーブ全てでピー クが検出され, かつ1つの構 造として対応が追える組み合 わせを解析対象とする. 3. ピークの時間経過に伴うず れを微細構造のドリフトとして ドリフトレートを算出. Fig.8 (上)ダイナミックスペクトル拡大図 (下)上図の破線の領域のライトカーブ 11 Fig.9 (上) GOES衛星によ るX線強度のライトカーブ (下)SDO/AIA193Åで観測 された(左)太陽全球図 (右)拡大図 12 結果: Event study(2013年11月7日) 結果: まとめ •2010年10月から2014年9月までの期間にAMATERASで観測された13例のII 型バーストは、出現時のフレアの規模や、CME伝搬速度に関わらず、全て メイン構造内部にスペクトル微細構造を伴っていた。 •2013年11月7日に観測されたII型バーストのメイン構造内部にみられたスペ クトル微細構造のドリフトレートは、400[MHz/s]から30[MHz/s]と幅をもって おり、大小、正負様々な値を示していた。(他のII型バーストも同様の傾向を 示していた。) Fig.11 微細構造のドリフトレート分布図 •ドリフトレート:400(MHz/s)+~30(MHz/s) Fig.10 上:II型バースト全体図 下:ある5秒間の拡大図 大小、正負、様々な値が混在 ~herrigbone構造とは、出現様相、 ドリフトレートが異なる(より変 化が大きい) 13 考察:発生域 1.衝撃波側面での発生の可能性 衝撃波側面での放射の可能性あり •同定されたスペクトル微細構造は、従来より知られているII型バーストの微 細構造であるherrigbone中の微細構造とは、出現様相、微細構造のドリフ トレートの点で異なる、別種の微細構造である。 これまでのII型バーストの先行研究で、CME前面の衝撃波上流の可能性が高いと 示唆されている。(主な理由は、惑星間空間でのその場観測による。) 仮定として、衝撃波上流を電波放射源とし、II型バーストが衝撃波ドリフト加速 (SDA) で出現するとして、微細構造を伴うII型バーストの発生領域とプラズマ環 境について可能性を探った。 14 考察:発生域 2.衝撃波前面での発生の可能性 惑星間空間側 (Schmidt & Cairns[2012]) 惑星間空間側 太陽側 側面 • 衝撃波側面 • プラズマ密度勾配が定常コロナ 密度モデルよりも急である領域 を太陽方向・反太陽方向に電子 ビームが通過 太陽側 Fig.13 衝撃波面の様子(Ganse et al.[2012]) (スペクトル微細構造を伴った) II型バーストの生成が可能? CMEコア Fig.12 MHDシュミレーションと波動成長 の数値計算に基づく衝撃波起源の電波 出現の様相(Schmidt & Cairns[2012]) 15 • 衝撃波前面 • プラズマ密度勾配が急 且つ 密度の濃淡域(衝撃波の波状構 造?)を電子ビームが通過 (スペクトル微細構造を伴った) II型バーストの生成が可能? 16 まとめ 先行研究を含めて、AMATERASで観測された13例のII型バーストを解析した結 果、出現時のフレアの規模や出現位置、CME速度に関わらず、全てのII型バー ストはメイン構造内部にスペクトル微細構造を伴っていた。 スペクトル微細構造は、II型バーストの一般的な構造であることを示唆 メイン構造内部のスペクトル微細構造のドリフトレートは、400[MHz/s]から 30[MHz/s]と幅を持っており、大小、正負様々な値を示した。 herringbone構造とは別種の微細構造であることを示唆 ( 微細構造のドリフトレートは出現時のフレアの規模や出現位置、CME速 度とも関連性は低い) # 衝撃波上流を仮定し、SDA説に基づき衝撃波の側面と前面の2領域で発生の 可能性を考察 • 側面の場合:定常コロナ密度分布よりも密度勾配が急であることが必要 • 前面の場合:定常コロナ密度分布よりも密度勾配が急、かつ、密度の濃淡 域(衝撃波の波状構造?)が存在することが必要 17