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ヘルスケア施設の供給促進と 不動産証券化手法の活用

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ヘルスケア施設の供給促進と 不動産証券化手法の活用
ヘルスケア施設の供給促進と
不動産証券化手法の活用
国土交通省 土地・建設産業局
不動産市場整備課 小林 靖
平成25年7月
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
目
次
1.ヘルスケア施設の供給状況と今後の見込み
2.ヘルスケア施設の証券化の現況
3.ヘルスケアリート活用に向けた環境整備
施策の方向性
1.ヘルスケア施設の供給には、将来的な資
金需要が見込まれ、リート(特に、ヘルス
ケアリート)を活用
2.リート商品を多様化し、不動産市場へ民
間資金を取り込む
1.ヘルスケア施設の供給状況と今後の見込み
①高齢者人口の増加
○総人口が減少する一方で、東京圏の高齢者数は、将来に向けて著しく増加。
増加数(率)は、他の地域と比べても著しく高い。
高齢者(65歳以上)人口の推計(2010年→2040年)
埼玉県
147万人→220万人
東京都
268万人→412万人
神奈川県
183万人→292万人
増加数
増加率
東京圏
約388万人
53.0%
名古屋圏
約90万人
36.8%
関西圏
約138万人
32.7%
その他
約303万人
19.6%
※ 「東京圏」 は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
「名古屋圏」 は 愛知県、三重県、岐阜県
「関西圏」 は 大阪府、京都府、兵庫県、奈良県
千葉県
134万人→196万人
(注)2010年 全国の総人口 約1億2,806万人
約2,000万人減少
(出所) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」
2040年 全国の総人口 約1億728万人
1
1.ヘルスケア施設の供給状況と今後の見込み
②ヘルスケア施設の供給状況
○サービス付き高齢者向け住宅は、平成23年10月に登録開始。平成25年1月時点で、2,922件、
93,911戸が登録。また有料老人ホームは、平成24年には7,563施設、入居定員315,678人まで
拡大。
○今後の急速な高齢者人口増加に対して医療・介護の基本政策は、病院の平均在院日数を短縮化し、
ベッド数は削減の方向。介護施設は、増加させるものの必要数を抑制し、在宅介護への移行を積極的に
行っていく方針。すなわち、「医療」から「介護」へ、介護も「施設」から「住宅」へという動き。
有料老人ホーム数の推移
入居定員(左軸)
施設数(右軸)
350,000
8,000
315,678
7,563
7,000
300,000
6,244
271,286
250,000
235,526
200,000
124,610
100,000
2,846
95,454
72,666
55,448
30,792
25,463
15,742
155
0
4,000
3,569
155,612
150,000
5,000
4,373
183,295
50,000
5,232
208,827
6,000
2,104
3,000
2,000
1,418
980
1,000
662
246
288
0
H1 H5 H10 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24
(注)
○日本では、高齢者人口に対する高齢者向け住まいの割合が欧米に比べて低い水準にとどまることから、高齢者の居住の安定を確保するため、一定の登録基準を満たす
高齢者向けの住宅を、「サービス付き高齢者向け住宅」として登録する国土交通省・厚生労働省の共管制度が創設され、平成23年10月20日に登録が開始された。政府の
「住生活基本計画」(平成23年3月)においては、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を、2020年に3~5%とする目標が掲げられている。
○ヘルスケア施設のオペレータ数は毎年400社程度新規参入しており、総数は4600社を超えている(KPMGヘルスケアジャパン調べ)
2
1.ヘルスケア施設の供給状況と今後の見込み
③介護サービスの提供方法の違い
サービス付き高齢者向け住宅
住宅型有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
医療
外部サービス(単独施設・併設施設)
○「サービス付き高齢者向け住宅」「住宅型有料老人ホーム」では、必要に応じて、入居者自身が外部のサービ
ス事業者と契約して、介護保険サービスの提供を受ける。
○「介護付有料老人ホーム」では、ホーム事業者が提供する介護保険サービスをホーム内で受けられる。
3
2.ヘルスケア施設の証券化の現況
①ヘルスケア施設証券化の事例
主要ヘルスケア施設の種類と証券化の概況
主に運営している法人
施 設 名
フィットネスセンター
特 徴 等
室内運動施設・プール等で健康増進のための運動を行うもの
その他
社会福祉
株式会社 医療法人
地方公共
法人
団体等
証券化の
事例
◎
○
○
サービス付き高齢者向け住宅 バリアフリー構造で、安否確認等のサービスが付いた高齢者向け賃貸住宅
◎
○
○
○
○
有料老人ホーム
食事、介護、家事、健康管理のいずれかのサービスを提供する高齢者向け施設
◎
○
○
○
○
養護老人ホーム
精神等に障害があり、生活が困難な低所得者等が入居
◎
◎
×
軽費老人ホーム(A型、B型)
低所得や親族関係等の制約から自治体助成を受けて入居
◎
◎
×
ケアハウス
比較的介護度が軽い人を対象とした軽費老人ホーム(C型)
○
○
◎
◎
×
グループホーム
認知症対応型共同生活介護(居宅施設)
◎
○
◎
○
×
小規模多機能型居宅介護
「通い・泊り・訪問」サービスを24時間提供する地域密着型(居宅施設)
◎
○
○
○
○
介護老人保健施設
在宅復帰を目指して介護・機能訓練等を提供する施設。略称「老健」
◎
○
○
○
介護老人福祉施設
一般的には特別養護老人ホーム(特養)と呼ばれる
◎
○
×
病院
一般的な中小規模の民間病院、地域中核病院等
◎
○
◎
○
医療モール
医療モール(診療所等がテナントとして複合施設に入居するもの)
◎
○
○
○
(注)◎印は、主に運営している法人のなかでも、特に数が多いことを示す
出所:公開情報等から中井生活経済研究所作成
4
2.ヘルスケア施設の証券化の現況
②不動産証券化の類型
<Jリート>
一般事業法人と同様に解散しない(長期保有)
<特定目的会社(TMK)>
事業終了後に解散
投資法人
融資
借入
投資
実物不動産
収益
投資法人債
実物不動産
信託受益権
利子等
購入
特定目的会社
機関投資家
特定目的借入
収益
出資
実物不動産
信託受益権
投資家
特定出資
資産運用の委託
信託受益権化
された不動産
資産運用会社
事業終了後に解散
ノンリコース
ローン
収益
融資
*一定の重要事項についての資産流動化計画の変更
には、関係者全員の事前承諾が必要。
<不動産特定共同事業>
信託銀行等
*信託銀行による受託審
査がある。
事業終了後に解散
不動産特定共同事業者
金融機関
利子等
他業
(不動産事業など)
出資
匿名組合出資
信託
投資家
配当
特定資産管理処分受託者
信託受益権
信託受益権化
された不動産
機関投資家等
(既存スキーム)
合同会社
投資
利子等
出資
機関投資家等
特定資産の管理処分の委託
*以下の場合は、投資法人が行うことができる「不動産の取得」(投資信託及び投資法人に関する法律第193
条第1項第3号)に含まれない。
・投資法人が自ら宅地の造成や建物の建築を行う場合(投資信託及び投資法人に関する法律施行令第116条)
・一定期間テナントの退去が必要になる大規模修繕・改修工事等の請負契約の注文者になる場合で、キャッシュ
フローの変動がポートフォリオ全体に過大な影響を与える場合(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針)
<GK-TK>
特定社債
優先出資
配当
信託受益権化
された不動産
利子等
購入
実物不動産
利子等
投資口
融資
投資
機関投資家他
資本金
投資家
借入
配当
実物不動産
利子等
出資
匿名組合出資
収益
投資運用業務の委託/
投資助言業務の委託
投資運用会社/
投資助言会社
融資
投資
金融機関
投資家
配当
実物不動産
*1億円以上の資本金要件や業務管理者の設置要件がある。
5
2.ヘルスケア施設の証券化の現況
③リートのスキーム
運用、管理
物件管理
資産保管
資産運用
物件管理業務受託会社
資産保管会社
(信託銀行等)
資産運用会社
賃借契約等に
関する事務等
不動産管理
業務委託
オペレータ
介護事業者等
資産運用
委託
金融機関
銀行等
REIT(投資法人)
不動産の使用
不動産賃借
資産保管
委託
投資家(広義)
融資
建物賃貸借
契約
賃料
融資等
不動産(土地・建
物)または信託受
益権
元利金
投資
投資口
賃貸借契約
利用権等
賃料、利用料等
施設利用者
介護施設入居者
配当
投
融
資
に
よ
る
資
金
供
給
投資家
機関投資家等
(投資証券の売買)
一般投資家
不動産の保有
高齢者施設入居者
金融庁等
投資等に関する法規制、監督等
格付機関、その他専門家
格付、レポート等
6
2.ヘルスケア施設の証券化の現況
④リートの現況
○アメリカやシンガポールには、ヘルスケア施設の不動産部分を専門に長期保有する投資法人、いわゆるヘル
スケアリートが数多く存在し、その賃貸収益を広く投資家に分配し、その市場規模は拡大している。
※米国では11銘柄が上場し、時価総額の合計は、約799億ドル(約7.5兆円)。(2013年3月28日現在)
○我が国には、このようなヘルスケアリートは存在しない。
ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化手法の活用及び安定利用の確保に関する検討委員会の設置
(平成24年10月~平成25年3月)
Jリート
物流・倉庫
7%
ホテル 底地
3% 2%
USリート
その他
1%
森林 インフラ
6%
5%
産業施設
4%
倉庫
6%
商業施設
18%
住宅
18%
オフィス
51%
オフィス
10%
ヘルスケア
14%
ホテル・リゾート
6%
分散型
8%
商業施設/
オフィス混合型
2%
商業・小売
25%
住宅
14%
・ARES提供資料及びNAREIT REITWatchを基に国土交通省作成
・J-REITは用途別投資比率(時点2013/3/末)、US-REITは用途別銘柄の時価総額比率(時点2013/3/28)
7
2.ヘルスケア施設の証券化の現況
⑤米国ヘルスケアリートの推移
(単位:10億ドル)
80
16.0%
70
14.0%
60
50
ヘルスケアリート時価総額
全リートに占めるシェア
エクイティリートに占めるシェア
12.0%
10.0%
40
8.0%
30
6.0%
20
4.0%
10
2.0%
0
0.0%
(注)各年12月末の数値(2012年については11月末の数値を使用)
出所: NAREIT 「REIT Watch」 をもとに中井生活経済研究所作成
8
2.ヘルスケア施設の証券化の現況
⑥Jリートのヘルスケア施設への投資状況
投資法人名
物件名
アドバンス・レジデンス
ライフ&シニアハウス港北2
ボンセジュール千歳船橋
ボンセジュール四つ木
ボンセジュール日野
インヴィンシブル
ボンセジュール武蔵新城
ボンセジュール小牧
ボンセジュール秦野渋沢
ボンセジュール伊丹
オリックス不動産
グッドタイムリビング新浦安
ケネディクス・レジデンシャル ニチイホームたまプラーザ
日本ビルファンド
四谷メディカルビル
野村不動産オフィスファンド セコムメディカルビル
所在地 神奈川県横浜市
東京都世田谷区
東京都葛飾区
東京都日野市
神奈川県川崎市
愛知県小牧市
神奈川県秦野市
兵庫県伊丹市
千葉県浦安市
神奈川県川崎市
東京都新宿区
東京都千代田区
賃貸可能 取得価格
建築時期
戸数
(百万円)
78
42
62
56
46
123
100
62
74
底地のみ
合 計 (ヘルスケア施設)
J-REIT全体
J-REIT全体に占めるヘルスケア施設の比率
1,670
685
652
574
486
1,050
681
480
1,550
960
8,800
11,500
2003年
1988年
1989年
1990年
1985年
1991年
1991年
1989年
2006年
1992年
2004年
2005年
用途
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム
メディカルモール、治験専門医療機関等
都市型有床クリニック
29,088
9,294,498
0.31%
出所:各REITポートフォリオ資料から中井生活経済研究所作成(2013年1月25日調査)
9
3.ヘルスケアリート活用に向けた環境整備
①「ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化手法の活用及び
安定利用の確保に関する検討委員会」取りまとめ 2013年3月
ヘルスケアリートの方向性
提供するヘルスケア・サービスの質が高い水準にあり、同時に施設が安定的に収益を上げていることな
ど、利用者と投資家との立場には共通点も多く、利用者と投資家の双方から高い評価を得ることがヘルス
ケアリートの活用において重要。
○普及啓発の実施:
ヘルスケアリートの仕組みやメリット等をわかりやすく説明する取組みが必要
○リートが留意すべき事項:
(1) オペレータの事業運営のモニタリング体制の拡充
(2) 賃貸借契約における解除・解約等の合理的な条件設定
(3) リートによる適切なデューディリジェンスと情報開示の実施
○オペレータの外部評価の充実:
ヘルスケアリートが創設されていく中で、オペレータ評価の蓄積や評価の仕組み等の確立等が有効
○ヘルスケア施設を核とした地域活性化
地域包括ケアを念頭においたまちづくり等、地域活性化に資する取組みやこうした取組みへのヘルス
ケアリートによる投資への期待
10
3.ヘルスケアリート活用に向けた環境整備
②ヘルスケアリート関係者の懸念
○利用者、オペレータ、投資家それぞれの立場毎に、懸念事項が存在している。
・投資法人から契約解除や賃料値上げ
を要求されるのではないか。
有料老人ホーム・高齢者向け住宅等
・オペレータが十分な情報開示を
してくれないのではないか。
・オペレータや施設の評価が難しい。
・同業他社に内部情報を開示される
のではないか。
・リスクに応じた収益を得ることが
できないのではないか。
売却
不動産の使用
オペレータ
不動産の保有
賃料
投融資
REIT(投資法人)
配当等
投融資による資金供給
投資家
(銀行、機関投資家等)
利用料等
・オペレータから賃料や利用料
を引き上げられるのではない
か。
施設の利用
利用者
11
3.ヘルスケアリート活用に向けた環境整備
③政府の方針
経済財政運営と改革の基本方針について
平成25年6月14日 閣議決定
第2章 強い日本、強い経済、豊かで安全・安心な生活の実現
1.「日本再興戦略」の基本設計
(1) 生産性の向上を生む科学技術イノベーションなどの基盤強化(日本産業再興プラン)
④ 成長を促進する金融、公的・準公的資金の運用等
企業投資やリスクファイナンスを通じて新たな成長が生まれるよう、金融面の環境整備をすることが重要
4. 地域・農林水産業・中小企業等の再生なくして、日本の再生なし
(1) 特色を活かした地域づくり
(都市再生・まちづくり、地域活性化等)
民間の知恵や資金を活かした都市再生や公共交通の活性化を、不動産証券化等の手法を活用しつつ、
多用な支援策を通じて推進する。
日本再興戦略-JAPAN is BACK平成25年6月14日 閣議決定
第Ⅱ. 3つのアクションプラン
二.戦略市場創造プラン
テーマ1:国民の「健康寿命」の延伸
③病気やけがをしても、良質な医療・介護へのアクセスにより、早く社会に復帰できる社会
Ⅱ)解決の方向性と戦略分野(市場・産業)及び当面の主要施策
○ 安心して歩いて暮らせるまちづくり
①
民間資金の活用を図るため、ヘルスケアリートの活用に向け、高齢者向け住宅等の取
得・運用に関するガイドラインの整備、普及啓発等(来年度中)
※「健康・医療戦略」(平成25年6月14日大臣申合せ)2.(2)②ウにも同様の記述あり。
12
3.ヘルスケアリート活用に向けた環境整備
④今後の取り組み
① リートの活用に向け、高齢者向け住宅等の取
得・運用に関するガイドラインの検討・整備
○リートが高齢者向け住宅等を取得・運用
する際の留意点等について整理
○高齢者向け住宅の取得等に関するモデル
事例の紹介
② 地域の公益的施設・PREに係る
リート活用のあり方検討
○地域包括ケアやコンパクトシティに資
する高齢者向け住宅等の地域公益的
施設や、地方公共団体所有の公的不
動産(PRE)に係るリートの活用方策の
検討
○リートによる高齢者向け住宅等の適切な取得・運用の推進
○高齢者向け住宅等の公益的施設の整備促進
○リート商品の多様化、不動産投資市場の拡大
○不動産証券化に関する理解の促進
○政府の取り組み
第31回国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評価部会 「不動産鑑定評価基準等の改正骨子(案)」を取りまとめ
(平成25年6月24日開催)
ショッピングセンターやホテル、医療・福祉施設等の事業用不動産に関して、収益性を適切に把握して評価する方法や留意点等の規
定を追加。
○関連団体の取り組み
(1)公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会 ヘルスケア関連施設評価検討ワーキンググループ
「高齢者住宅・施設、病院の不動産鑑定評価」(平成25年3月公表)
(2)一般社団法人不動産証券化協会
「ヘルスケア施設供給促進のためのREITの活用に関する実務者検討委員会」 (第1回:平成25年7月29日)
13
3 .ヘルスケアリート活用に向けた環境整備
⑤地域包括ケアとサービス付き高齢者向け住宅等の供給
○ 地域包括ケアへの参画は、地域内連携によって利用者確保につながり、経営
の安定につながる。さらには、利用者が受けられるサービスの質の向上も期
待される。
○ ヘルスケアリートが投資対象を選定するに当たって、こうしたマーケティング戦
略を理解し、施設を供給していけば、当該施設の運営を通じて地域の活性化に
資する可能性がある。
出典:厚生労働省HP
14
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