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平成21年度第2回官民連携(市場化テスト)
平成21年度第2回官民連携(市場化テスト)事例研究会 議事概要 日 時:平成 21 年 11 月 12 日(木)15 時~17 時 30 分 場 所:(財)地域総合整備財団 1階会議室(東京都千代田区平河町 2-5-6) 出席委員: 居軒 正史 大阪府総務部行政改革課 総括主査 ◎小川 登美夫 財団法人地域総合整備財団 常務理事 河 幹夫 神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部社会福祉学科 教授 坂田 道夫 足立区 新都市構想推進室 室長 清水 洋一郎 株式会社ジェイコム 代表取締役常務 美原 融 三井物産戦略研究所 プロジェクト・エンジニアリング室 室長 【議事次第】 1.開会 2.議事 (1)第 1 回研究会におけるご意見の確認 (2)事例研究 (3)市場化テストに係る論点の検討 (4)先行事例ヒアリングの実施内容等の確認 (5)その他意見交換 3.閉会 【議事概要】 1.開 会 *大阪府居軒委員紹介 2.議 事 (小川委員長) ○ 最初に、前回の研究会における意見の確認について、事務局から説明をお願いしたい。 (事務局) ○ 前回の研究会における意見を、資料1としてとりまとめ、頂いたご意見を大きく 6 つに 分類した。 ○ 論点1として、様々な阻害要因が挙げられる。業務の狭さ、手間の煩雑さなどを検討す べきだという意見をいただいた。これについては、今後の意見も踏まえ、一定の整理を して報告書に盛り込むこととしたい。 ○ 論点 2 として、様々な官民連携手法、つまり市場化テスト、PFI、指定管理者などの整 理が必要ではという意見があった。これについてはヒアリング等も踏まえて整理し、第 3 回研究会で意見を頂きたいと考えている。 ○ 論点 3 として、市場化テストの推進に資するような参考事例を収集すべきという意見が あった。他方で先行事例として適切な事例がないのではないか、という意見もあった。 そこで、市場化テストの導入に積極的な大阪府に本日プレゼンいただく。また、このほ かにもヒアリング先を設定したいが、ヒアリング先については各委員からもご意見を頂 きたいと考えている。 ○ 論点 4 として、対象事業の選定方法である。これについては、足立区における対象事業 の考え方や、民間事業者の視点からは業務をパッケージ化して出して欲しいなどの意見 をいただいた。 ○ 論点 5 としては業務の切り出し方である。これについては、公権力の行使に関する議論 や、受ける側の民間にとり、どういうかたまりで出すことが便利であるのか、といった ところを整理する必要がある。その他にもいくつかご意見を頂戴したので最後にまとめ て記載している。これらの扱いについては、調査の内容を一定程度に絞り込むため、今 後の課題という扱いにして整理させていただいた。 ○ 次に、本日最初の議事として、報告書の原案について、ご意見があればいただきたい。 なお、報告書原案に対しては、次回以降報告書原案や最終案検討確定の段階でもご意見 を頂く予定である。 (小川委員長) ○ 論点1の一番下のところに、自治体が非常に安い人件費で臨時職員や非常勤職員などを 雇用しているという指摘がある。足立区は 2,000 人の臨時職員・非常勤職員がいるとい うことだが、これは東京だけの特殊な事情なのだろうか。公務員の定員管理調査では、 定員に入らないのだろうか。総務省が厳しく定員管理をしているから、定数外職員が増 えているということであろうか。これ以外でも現状では臨時職員が激増していると思う が、こうした問題の現状把握はないのであろうか。 (美原委員) ○ これまでは臨時職員を使い、今度はそれを民間にしようという。何のことはない、単に 臨時職員から民間委託にスイッチしているだけである。10 年くらいこういった傾向が 続いていると思う。 (清水委員) ○ レイバー部門はレイバー部門で、管理部門は管理部門で切り分けておかなければいけな い。もちろん民間でもレイバー部門というのはあるので、レイバー部門をそのまま受け ても良い。ただ、その代わり管理部門についてきちんとコストを積み、能力のある人間 を準備しておけば良い。レイバー部門だけで何でも出来るかといえばそれは無理であり、 全体のパフォーマンスというか構成を考える必要がある。 ○ 結局は業務の分け方の問題である。ある程度管理部門も含めた形で業務を切り分けて出 さなければならない。行政が管理部門までカバーすべく頑張っているというのは、それ はそれである程度意味はあると思うが。 (美原委員) ○ レイバー部門だけを切り出されて入札に出されても、もはや人件費の叩き合いにしかな らない。これではダメで、業務を包括的に出さなければならない。 (坂田委員) ○ 民間事業者ということになると公権力の行使はできないということになるが、非常勤職 員であればある程度グレーゾーンであっても公権力の行使に近いことをやらせてしま っているという事実はある。これは全国的に起こっている現象である。 (小川委員長) ○ 民間に出すより非常勤職員を利用するほうが利便性が高いということか。 (坂田委員) ○ その通り。 非常勤職員の状況についていえば、 30 台後半から 40 歳くらいの女性が多く、 主婦をやっていて、学歴も非常に高い。ところが、こうした人たちは、一度労働市場を 退出してしまうとスーパーのレジ打ちくらいしか求人需要がない。それに加えて、第二 の仕事ということで、それほど給料は要らないという事情もあり、役所に来る。 ○ こうした非常勤職員は、有能であるにもかかわらず、年額 200 万くらいしか払っていな い。また、昇給も全くない。そこで荒川区では、非常勤職員の処遇を改善するため、昇 給を行おうとしたのだが、地方公務員法違反だとして東京都からストップをかけられた。 非常勤職員の任用期間は最長一年間であるため、次年度に昇給するというのはおかしい という指摘であった。 (小川委員長) ○ 一年ごとの契約でも、業務の経験年数に応じて給料を上げるということはありえるので はないか。 (坂田委員) ○ それが可能ということになると、非常勤職員の利便性が益々高まり、市場化テストから は遠ざかってしまう。 (清水委員) ○ 民間の場合は、行政からの委託金額は決まっていても、全体の原資の中でプールして、 徐々に人件費を上げていくなど、きちんと評価をしている。評価をしないとやる気も出 ないので、そこは民間がバッファーになりやっている ○ 坂田委員が言うように、公共サービスに来る人は非常に優秀である。例えばパスポート センターなどでは非常に優秀で高学歴で、やる気もある方に来てもらえる。勤務時間も フレキシブルに対応してくれるし、大変有難い。一つの労働市場である。 (河委員) ○ 労働条件が安定している大企業や、国家公務員法、 ・地方公務員法が適用される世界と、 それ以外の世界とがアンバランスとなっている。 (小川委員長) ○ ワーキングプアの問題は二つあり、給料が低いということと、民間だと派遣切りという ことで不安定雇用になってしまうということである。 ○ これに対して、臨時職員の場合には、雇用が一定程度安定しているという特徴があり、 いわば全く新しい労働市場となっている。このため、普通の企業よりも安い賃金である のに非常に優れた人たちが集まるということになっているのではないか。労働市場への 供給が多く、労働条件はなかなか改善しない。このため、かえって問題の根が深くなっ てしまうのではないか。彼らは賃金は低くとも、それ以外の労働条件への不安はあまり ないのだろう。臨時職員はどのくらいまで契約が続くのか。 (坂田委員) ○ 臨時職員の任期は、本来は 1 年である。しかし、現実には更新が繰り返され、5 年、10 年と延びてしまっている。 (小川委員長) ○ スキルがあれば 5 年間くらいは安定的に契約が続いてしまう。民間の派遣会社に登録す るよりも良いということになってくる。 (坂田委員) ○ 行政の立場からすると、ワーキングプアを作り出すことは良くないといいながら、実際 にはワーキングプアを発生させている。また、女性の雇用問題についても、いわゆる M 字カーブというものは良くないといいながら、実際には M 字カーブが生じてしまって いる。これはほとんどの自治体でそうである。 (河委員) ○ 隠れているが実は大きな問題だと思うこととして、昔はいわゆる 3K労働のような仕事 は時間給が高く、身分が不安定な仕事や人の嫌がる仕事と時間給とは反比例していたの だが、しかし今はその構造が消えてしまい、身分が不安定であったり人が嫌がるような 仕事であるのに時間給も低くなってしまっているということがあるように思う。 ○ 市場化テストの対象事業は、どちらかといえば単純労働よりもホワイトカラーを想定し たものである。ところが、市場化テストの議論では、前述のような労働問題が、意識的 にか、無意識的にかはともかく、混ざってしまっている。 (小川委員長) ○ 市場化テストは官か民かを決める手法であるが、その前提として、官のほうが人件費が 高いという前提があったのだろう。 (河委員) ○ いや、官のほうが人件費が高いというような前提があったわけではない。もちろん、事 実上の背景としては、公務員の方が人件費が高いという状況も考慮されていたかもしれ ないが。 (小川委員長) ○ 前提ではなく背景ということかもしれないが、しかしこのような背景があるものだから、 何のために市場化テストをやるのかという問題が生じてしまう。自己矛盾に陥っている といえるかもしれない。 (河委員) ○ 今の委員長の話を広げて説明すれば、単純労働やブルーカラー労働みたいなものはどち らかといえば想定外にある。ところが、こうしたいろいろなものをごちゃ混ぜにしてし まうと、議論がわかりにくくなる。正規雇用・非正規雇用の問題も、管理職や有能な人 材を使いたいか単純労働者を使いたいかという問題と捉えることもできるかもしれな い。しかし、賃金やワーキングプアみたいな問題を持ち出してくると議論が違ってくる と思う。 (清水委員) ○ バリューフォーマネー(VFM)の議論の中に格差を入れてはいけない、という考え方 はあり得ると思う。単に民間が安い賃金で働かせることが VFM かといえば、それは違 うはずである。民間が知恵を出し、様々な工夫をすることが VFM の達成に繋がるのだ と考えれば、ワーキングプアとは違う話である。従って、この研究会でワーキングプア の話にあまりこだわりすぎるのは良くないと思う。 (小川委員長) ○ VFM をはるかに下回る状況で非正規職員を使っているというところに問題があるのか もしれない。 ○ 次の議題に移りたい。大阪府の居軒委員より、大阪府の取組についてプレゼンテーショ ンを行っていただきたい。 (居軒委員) ○ 別添資料 5 を見ていただきたい。大阪版市場化テストの新たな対象業務の一覧であり、 9 月 24 日に知事会見で公表したこれが最新の資料である。 ○ 本編資料の1ページ目であるが、大阪府で市場化テストの検討を開始したのは、平成 16 年 9 月のときであり、太田前知事のときに PPP 改革の一つとして取り上げている。 17 年 6 月には大阪府の市場化テストのガイドラインを策定している。その後、18 年 7 月には公共サービス改革法が成立したが、大阪府で「大阪版市場化テスト実施」として 踏み切ったのが 19 年 4 月である。この間、市場化テストの取り組みが進まなかった期 間があった。 ○ 対象業務を決め、官民比較をし、その後、民間開放の可否の決定をして、民がよければ 事業者の選定を行う。こうしたプロセスに外部の視点を入れることが市場化であると大 阪府では考えている。では、外部の視点の反映とはどういうことかというと、それは三 点から成り立つものと考えている。具体的には、有識者5人で構成する「大阪版市場化 テスト監理委員会」を原則として公開で実施し、コスト、人員、業務内容などの徹底し た情報開示を行い、民間との対話を行っていく。これが大阪版市場化テストにおいて重 要なことだと考えている。 ○ 具体的な作業プロセスであるが、まずは庁内で対象事業を選定することから始めた。対 象事業選定には大阪版市場化テスト監理委員会が関与した。ただし、どのような考え方 に基づき対象事業を決めてきたかというと、第一弾の対象事業選定では、明確なロジッ クをもとに方程式を解いて対象事業が決まったというわけではない。第一弾における選 定ロジックは、ある意味で後付のロジックである。 ○ 対象事業選定第一弾のときは、各部局に対象事業を出してもらおうとしたが、結果的に は全く出てこなかった。各部局に提案を出させようとしても対象事業が出てくるわけが ないというのは、どこの自治体であってもおそらく同様だと思う。 ○ こうした中、我々は事務事業評価というものも行っていたので、これを用いながら対象 事業を決めていこうとした。さらに、経済団体などとも協議をしたりしながらいろいろ と試行錯誤をし、検討業務・分野の考え方として一定の視点を整理している。 ○ この視点というのは次のとおりである。まず、民のノウハウを反映できるような包括的 業務か、他の自治体において実績がある業務や要望の強い分野であるかがいわば縦軸で ある。このほか、もう片方には担当部局の検討とあるが、実際には検討というより抵抗 というのが正しいかもしれない。そのような状況の中、当時は担当部局に営業のように 日参していたが、完全に無視されるような状態もあった。 ○ こうした中で対象事業として整理したのが、職員研修、自動車税事務所における催告事 務、高等職業技術専門校のテクノ講座、建設業許可申請受付等業務である。 ○ このうち、建設業許可申請等受付等業務のように、 「許可」という公権力行使を直接想 起する業務は、必ず民間委託を拒絶されるように思う。それゆえ、かえってこれが成功 すれば市場化テスト対象事業のリーディングケースとなるのだという強い思いがあっ た。 ○ これらの対象事業のうち、高等職業学校のテクノ講座以外の3業務は官民比較の結果を 踏まえ外部委託を行った。高等職業技術専門校の講座については、厚労省からは民間委 託は認められないという見解が出されていたが、法特例措置の要望ということで内閣府 に提案を行った。内閣府からは平成 19 年度中に対応ということで、迅速な対応をして いただいたが、それでもなお現時点では検討中という状態にある。 ○ 大阪版市場化テストの次の展開を考える時に思ったことは、担当部局に日参して対象事 業を決めるということはもはや無理であるということである。そこで、対象事業選定に あたり、民間から意見を募ろうと考えた。折しも橋下知事の当選の時期であったが、こ こで対象業務の選定にパラダイム転換が生じた。 ○ そのパラダイム転換というのは、対象業務決定の前に P6 の①~③が加わるというもの であり、対象事業の選定の前に全業務を対象とした提案募集を実施した。実は、第一弾 の対象業務選定の議論の際にも、民間から意見を聞いてもらえないかという要望があっ た。また、庁内から対象事業を選定していくのはもはや限界という感もあった。 ○ 大阪府は、平成 13 年度には職員が 1 万 5 千人いたが、平成 19 年度には 1 万人に減少 した。この減少を実現するための大きな手法は外部化(委託)であった。人員削減を行 った委託だけでも 140 業務にのぼっていた。庁内担当部局からは、もはや骨と皮だけの 状態であるのに更にどこをやれというのか、といわれるような状況が第一弾の対象事業 選定の際の状況であった。 ○ P7 に掲載されているものが新たな提案募集の経緯である。P8 の通り、全業務を対象に 提案募集を行った。対象事業の検討には一定程度時間も必要であろうということで、3 ヶ月の時間をとった。募集方法としては、HP 上で説明会を開催することを告知し、全 ての部局の主な事業に関する情報を開示し、約 1,800 の事務事業の概要を人件費ととも に開示した。 ○ この段階における開示情報は比較的に薄いものであったが、全ての事業について詳細な 業務分析を行うことは困難であるので、まずは民間から質問を受け付け、更に情報を開 示するという手法をとった。その結果、民間からは 106 件の提案が寄せられた。 ○ さらに、全ての民間提案について、その概要と提案に対する考え方を整理し、公表した (別添資料1) 。これら民間からの提案に対して担当部局からは1件も積極的な回答が 出てこなかったが、監理委員会で並行して検討を行うこととし、担当部局の考え方如何 にとらわれず市場化テスト対象業務の位置づけの可否について審査を行った。 ○ その結果、12 業務まで絞込みを行った(P11) 。これは提案件数ベースでは 106 件から 12 件に絞込み、ここから公開で監理委員会において検討した。ここまでが、府の全業 務を対象に提案募集を行い対象業務の絞り込みを行ったものである。 ○ ここからさらに業務分析を実施して、各対象業務の市場化テストで官民比較を実施する 範囲の絞込みを行った。業務を大項目、中項目、さらに小項目に分解し、小項目のそれ ぞれについて作業内容発生回数、処理者などの観点から、かなりの分量にわたる分析を 行った。一件当たりの処理時間というものも調査分析し、いわゆる ABC 分析を簡略化 して実施した。 ○ 別添資料 3 が、情報開示シートであり、ここで対象業務の範囲と対象業務外の切り分け を行っている。網がけがコア業務、白が市場化テストの対象となるであろう業務を意味 する。もちろん実際にはグレーゾーンがあるが、それはさておき、白と黒の考え方を所 管部局に伝え、所管部局で整理をしてもらった。所管部局の意見にそのまま従うとグレ ーゾーンが限りなく大きくなる。なぜかというと担当セクションは対象外の業務、周辺 業務をひとくくりで整理してしまうためである。 ○ ここで我々は、白か黒かの議論を公開の監理委員会で議論することとした。非常にたく さんの傍聴者に来ていただいて、そこまでやるかというくらいまで議論してもらったが、 この結果、白の領域がかなり広くなった。 ○ 実は、ここでは公権力の行使かどうかという切り分けは比較的に簡単である。検討が難 しいのは、公権力の行使が関係ない業務であった。例えば図書館などは公権力の行使と は直接関係ないこともあり、これまでも官房系の改革議論の対象となってきたが、図書 館側の立論は、長年の専門的知識があるから民間には出せないという主張であった。そ こで、図書館についても図書館の専門性とは何かということを論点として公開で議論を した。監理委員会では、司書の専門性と主張するレファレンスサービスについて、イン ターネットの普及や大規模書店の検索サービス等で情況が大きく変化しているのでは ないかという反論がなされ、結局、多くの部分を民間に出せるという整理になった。 ○ 業務分析シートには、業務の対象範囲、業務実施体制などが記載されている。このよう なデータがなぜ出せたかというと、業務分析をしているからで、コストについても、減 価償却費は含まないものの、可能な限りフルコストに近い数字で出している。 ○ また、担当部局自身の改革案があるのであれば、それも示してもらい、官民比較の際に 留意すべき事項として提示するようにしている。ここからいよいよ官民比較ということ になるのであるが、本日は対象業務の選定を中心に説明をすることになっているため、 本日の説明はここまでとさせていただく。 ○ なお、情報開示の姿勢であるが、民間事業者から市場化テストの対象事業を提案してい ただくことを考慮すれば、民間事業者へのわかりやすさや民間事業者とのコミュニケー ションの促進という点が重要と考える。なお、民間事業者とは、1 事業あたり 1 時間ほ ど、合計 50 時間ほど対話を行った。 (小川委員長) ○ 実際の入札に当たっては、所管部局も入札に参加できるのか。 (居軒委員) ○ 官側が実際に入札に参加するという意味での官民競争入札は行っていない。官側が継続 するか民間委託を行うかは入札の前段階において決める。 (小川委員長) ○ ということは、市場化テストとは少し異なる仕組みということか。 (居軒委員) ○ 従来の業務に関する情報開示を実施したうえ、民間からの提案を募集する。そのうえで 監理委員会で官民比較を実施し、民間開放するか否かを決定する。 (小川委員長) ○ 民間開放という決定をした理由はコストの点が最大の理由か。 (居軒委員) ○ コスト面だけが理由ではない。税務の場合、業務量には繁閑が生じるが、行政が直営で 実施する場合、どうしても繁忙期に対応した人員数を配置してしまう。これに対し、民 間が実施する場合には業務の繁閑に柔軟に対応して人員を配置することが可能である。 もう一つは、府税事務所は全部で 10 箇所あるのだが、この業務には、拠点ごとに実施 しなければならない業務もあれば、各拠点の業務を集約化することで効率化が図れる面 もある。こうしたものを民間のノウハウにより提案してもらう。 ○ また、業務の質を高めることも狙っている。例えば、府税事務所には窓口業務もあるが、 役所の窓口業務というのは必ずしもウエルカムな雰囲気ではない。そこへ民間を導入す ることにより、業務の質が高まることも狙えるだろう。 (美原委員) ○ 民間事業者に提案を求め、官民比較を実施し、民間開放するかどうかを決定したうえで、 改めて民間事業者による入札を実施するというのは、プロセスに着目する限りでは手間 がかかるようにも思える。このような手続としたのは、現場の不安感を和らげるためか。 ○ 事業者の提案を出してもらってすぐに官民競争を行うということもありえるのではな いか。 (居軒委員) ○ 官民競争入札においては、情報遮断の方法や、仕様書はどこが作成するのかなど、現所 管部局が関与しなければならない面もあり、実務上難しい問題も残されている。こうし たことから現在のような方法を採用している。現在の手法がベストであるとは考えてい ないが、前述のような様々な課題があるなかで、とりあえず現実的な手法として実施し ているものである。 (小川委員長) ○ 仕事の現状のやり方を見直すという作業が先にないと、仮に民間に出そうとしても、き ちんとした形で出せないように思える。詳しく分析をしてみないといけない。 (居軒委員) ○ ご指摘の通りであり、市場化テストを実施するということで初めてきちんとした形で現 状分析が実施されたところもある。そうすると無駄な部分も見えてくる。市場化テスト の対象業務となることは今まで「見えなかった業務内容に光を当てること」でもある。 やはり、きちんと光を当ててみるということが重要であり、そのこと自体が市場化テス トの効果の一つであると思われる。 (小川委員長) ○ だから、結果的に民間開放をしないという結論になったとしても、このプロセスを通じ て業務の見直しという改革がかなり進むということも期待できる。 (美原委員) ○ BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を行政が自ら行って、効率化したう えで民間に出すということだと思う。しかし全ての自治体が大阪府のように優秀な職員 ばかり揃っているとはいえない。そうした自治体では、BPR の仕組みを民間に提案さ せるという方法もあるのではないか。 (居軒委員) ○ 大阪の全業務が BPR できているわけではない。担当部局は、今の業務がベストである と言うので、やはり現況と比較せざるを得ない。 (美原委員) ○ 業務を分析し再構築するというのは民間的な手法であるが、業務分析と再構築があまり にきれいに行われてしまうと、今度は逆にどこを改善するかという問題が出てくる。つ まり、よほど業務量が多かったり、業務が複雑であったりするのでなければ、民間とし てはもはや改善提案の余地がなくなってしまい、あとは単純業務の積み重ねとなり付加 価値が付けられなくなってしまう。民間としては、大阪府がこれだと面白いなと思うよ うな提案をしなければならないのだが、これでは却ってハードルが高くなってしまうと いう恐れもあると思う。 (清水委員) ○ どちらもあるだろう。私からすると、官民がいつも正面から勝負をするかというと、理 論的にはそれもあるだろうが、現実にはそればかりではないだろうという気持ちもある。 どこかに不公平も残るであろうし、また理想としては、BPR をしっかりやった後で民 間がそれを超えるような新しい斬新な提案ができればいいのだが、たしかオーストラリ アでも官民競争ばかりがいいという結果にはならなかったかと思う。官民競争をやって も決していい結果にはならないかもしれないし、遺恨も残るし、役所側の現場もやる気 になっているのに負けてしまったら首というのでは、現場は大変である。 (居軒委員) ○ どの業務でもそうであるが、既に一部受託している民間事業者というものがある。そこ に市場化テストを行うということになると、この民間事業者が受託している業務につい て市場化テストの提案を行うというような状況も出てくる。こうした場合、民間事業者 としては、我々が手を上げたことを秘密にして欲しいという要望が極めて強く、非常に 情報管理に気を使う必要がある。 (清水委員) ○ その通りだと思う。現に受託している事業者が裏で市場化テストの提案をしていると判 れば、その事業者は切られてしまうだろう。もちろん大阪府がそのようなことをしてい るというわけではないが、一般論として、官民競争という仕組みは構造的にそういう状 況に陥ってしまう恐れをはらむのだと思う。 ○ エモーショナルな部分がかえって BPR の妨げになったり、マイナスとなる側面もある ので、ある意味で大阪府のように事前にきちんと業務情報を整理し開示してあげたほう が進めやすいかも知れない。 (坂田委員) ○ 足立区でやっている議論を紹介したい。確かに、市場化テストに入る前に、業務をどう するか、政策実施主体をどうするかという議論がある。事業仕分けは仕事の中止や実施 主体の変更を根本的に議論するものであるが、足立区では、事業仕分けと市場化テスト、 協働化テスト、行政評価、指定管理者、さらには、足立区では予算制度も各部が予算編 成権を持つという特殊な仕組みを運用しているが、こうした包括予算制度とも関連させ る形で、これらの制度・仕組みを統一的に整理し処理しようと議論を進めている。 ○ 市場化テスト、とりわけ本格的な官民競争はどこも実施できていない。市場化テストば かりではなく、各制度・各手法がきれいにながれるようなスキームを整理し、間口を広 げてやらなければならない。 (居軒委員) ○ 手法としては、市場化テストもあるだろうし、PFI もあるだろう、包括的委託もある。 こうした様々なツールの最初の段階として、まずは民間の意見を聞くというプロセスを きちんと設定していく必要がある。市場化テストという名を使うかどうかは別として、 きちんと民間の意見を反映しつつ進めるようなプロセスを整理してやる必要がある。も ちろん出口は複数あるということになるのだろう。 (河委員) ○ お二人の意見には大賛成である。 ○ また、こうした意見を整理し議論していくことは、役所の人間にしかできない作業であ る。一度、役所を叩くためにどの手法がいいかという方向からの議論ではなく、広い視 野からより良い公共サービスのためのシステム設計ということを、半ば当事者であり、 半ば当事者ではない役所に検討させてみるのがいいのではないかと思う。 .. ○ スコップであったりのみであったり金槌であったりというものは並んでいるのだが、役 所を叩くためという使い方をしようとしてもうまく使いこなせないのではないかと思 う。むしろ、効率的なより良い公共サービスを創出するという広い観点から整理するこ とが必要ではないかと思う。この工具が一番だとか、金槌で叩くと相手が痛がるとか、 そういう観点ではないのではないかと思う。 (坂田委員) ○ 足立区では、公共サービス改革推進条例というものを以前制定した。これを改正し、公 民の協働条例として、先ほど挙げたような様々な手法・制度を一括して整理しようとし ている。一月中にその原案を整理しようとしているところである。 (小川委員長) ○ 大阪府のプレゼンテーションにおいて、官民のコスト比較として、別添資料 3‐1 の 4 ページでは、平成 20 年度 3 月のコストを基準として行うとあるが、行政にとっては厳 しいように思える。 (居軒委員) ○ 厳しいという意味では、この図表でコストの上に記載されている人員もそうである。 ○ 市場化テストの実施にあたっては、対象範囲とコストを確定しなければいけない。とこ ろが、この裏には職員問題というものがある。コストや人員などの分析を実施したのは 春ごろであり、ほぼ一年遡って資料を作成した。ところが、もし市場化テストの結果、 民間が実施することになった場合、既存職員は戻すのか、内部のストレスというのはか なり大きいものがある。 (小川委員長) ○ 官民のハードな競争ではそういう事態が生じるのだろう。そうではなく、ソフトランデ ィングを図ることも可能なのではないか。例えば職員についても、常勤と非常勤を入れ 替えてしまえば大幅にコスト改善が図れるのではないか。 ○ (常勤職員の人件費が)6 億強というコストからすれば、少なくとも一人 800 万近くか かっていることになり、おそらく給料が高すぎる人を集めすぎているのだろう。とすれ ば、この部分を減らします、という提案は、行政側の提案としてもありえるのではない か。 (居軒委員) ○ 官側はコスト削減の提案は出しにくいと思われる。 (美原委員) ○ むしろ、きちんと業務を行え、と言われかねない。 (清水委員) ○ 常勤、非常勤の問題は事業仕分けでもしばしば登場する問題である。ただ、こういう状 況であることも資料として出すから初めて判ることである。こういう分析や計算をする のは非常に大変である。これだけでも大変な成果がある。 (小川委員長) ○ 図書館を例としていえば、レファレンスサービスは民間でもできるのであろうが、たと えば卒論のための資料検索で来ている人には対応できなくなってしまうのかもしれな い。逆に見方を変えれば、そのような案件にも対応している現状があるとすれば、それ は却って十分過ぎる対応なのかもしれない。サービスへの期待レベルをどのあたりに置 くのかが問題である。 ○ ベテラン職員を図書館にそんなに沢山置かなくてもいいのだという指摘は、一面で当た っているのかもしれないが、それを広く捉えると今度は図書館には司書は要らないとい う議論にも行きついてしまうのかもしれない。システムとして、司書の必要性はあるか ないかという議論である。 (居軒委員) ○ 司書のサービスレベルをどこまで持っていくのか、どこで線引きするのかが問題。現状 でも、極端な例では一つのレファレンスサービスに一週間くらいかかって回答するよう なことをやっている。サービスのレベルをどこにおくべきかが問題である。 (清水委員) ○ 大阪府の資料によれば、税務で従前の業務従事者を合計すると全部で 78 人となる。理 屈上はこれを民間に委託することで業務効率が上がるという想定になるのだろうが、契 約書、仕様書の中では、最終的な従事者数はどのように記載されることになるのか、あ るいはパフォーマンスで評価することになるのか。 (居軒委員) ○ この業務を担う民間は、管理者、スーパーバイザーを配置することになるだろう。この ほか、民間としては業務の繁閑にあわせて非常勤のスタッフを投入し、業務従事者数を 変動させることになると思われる。また我々もそのような適宜適切な対応を期待する。 我々はそれをトータルで評価させていただく。 (清水委員) ○ とすれば、満足度とか、サービスの所要時間とか、モニタリングでどういう基準を設定 するかが重要になるのではないか。 (居軒委員) ○ 全くその通りであり、最終的にはモニタリングによりチェックすることになる。第一弾 対象業務のモニタリング結果も、この 12 月に監理委員会で公開で議論する。 (清水委員) ○ 民間企業としても、モニタリング結果が悪ければ減額や契約解除があるのだから、緊張 感が与えられる。その緊張感が良いサービスに繋がるのであり、モニタリングは重要だ と考える。 (坂田委員) ○ この研究会の目的は、自治体レベルでどのように市場化テストを普及させるかにあるの だと考える。ところが、自治体は、それぞれの状況が異なる。 ○ 例えば、我々足立区では最も多い時期で 6,000 人を超える職員がいたが、現在では半分 くらいとなっており、民間委託や事業の見直しは一通りやりきってしまっている。こう いうところで市場化テストをしようとすれば、公権力の行使や個人情報、吏員規制とい ったところに踏みこむほかない。一方で、これまであまり委託や業務の見直しなどをや ってきていない自治体では、むしろかなりの領域で民間提案を募り活用することができ るはずである。しかし、他方そのような自治体でも、仮に職員に対して自分たちで市場 化テストをやりましょうと呼びかけたとしたら絶対に手は上がらないことは明白であ る。 ○ 従って、自治体の状況に応じてやり方を変えていくということが重要なのではないかと いう気がする。 ○ また、もう一つの要素として、どれだけ必要に迫られるかという点もあろうかと思う。 (小川委員長) ○ 仮に税務業務を対象事業とするという場合、税体系が固定されていればいいが、税の体 系が変わってしまうと対応が相当大変なのではないか。 (居軒委員) ○ バックオフィスに職員が残るので、制度改革や法令変更にはこの府職員が対応すること になる。逆に市場化テストの対象事業選定にあたり、法令が頻繁に変わってしまうもの については、市場化テストになじみにくいということになってしまう。 ○ 実は、検討対象事業として挙げられた事業でも、居宅サービスは朝令暮改状態であり、 これを対象とすると民間事業者が混乱してしまうというので、居宅サービスの中でその ような影響を受ける部分については切り分けを行い、対象外として整理した。 (河委員) ○ 官民競争における問題の一つとして、去年も出てきた論点であり、またくだらないよう で大事な話として、コスト比較の問題がある。 ○ 官民競争ではコスト比較が難しく、極論すれば神学論争になってしまうので、どこかで 議論を止めなければならない。しかし、どこで止めるかが問題であり、実はそれが市場 化テストの見極めのような気がする。官民の精緻なコスト比較は困難であり、見極めが 必要である。官民が本気で勝負して、精緻で公平な比較をしようとしても、最後のとこ ろで頂上に登りきれないところがあるのだと思う。だから、7 合目で意思決定せざるを 得ない。そこを無理に 10 合目までいくのだといってやり続けるのかどうか。 ○ 日本人は精緻なことが好きなので、精緻にやろうとするとどこまでもやろうとする。価 格の問題が最も問題なのであろうが、どこで割り切るかが問題である。 (美原委員) ○ おそらく数学的な厳密性を確保することは不可能である。PFI の VFM というのもどこ かいい加減だという感がぬぐえない。 (河委員) ○ どこかで止めなければいけない。もちろん止めるというのはいい加減ということではな い。 (美原委員) ○ 合理的にみて、そこそこきちんと比較しているというレベルで相互に納得して、説明責 任が果たせるレベルまででとどめるしかない。 (小川委員長) ○ アウトプットの比較基準がなく、コストだけで比較しているというのはやはり変である。 (清水委員) ○ コストの議論をギリギリやってもおそらく限界がある。すると次に出てくるのは受益者 負担。たとえばパスポートセンターでは技術的にはパスポートを一時間で出せる。する と、もちろん現状ではそのようなことは認められないのだろうが、仮に例えば一時間で パスポートを発行するから 10 万円払えというように、サービスと受益者負担の関係を きちんと整理できればやれることも増えてくる。 ○ 仮に、特急料金を払えば急いでいる人にも対応するということが認められるのであれば、 必要な人にはそれが役に立つ。例えば民間では 24 時間対応もできるし、逆にそれを必 要とする人もいるだろう。だから民間のサービスはいいということになる。それを、お 役所仕事のように、朝の 8 時から夜の 5 時までと限定してしまうのでは、創意工夫の発 揮もできず、どうしようもない。 (小川委員長) ○ それは行政の公平性の原則という問題にも関係する。公平に、誰にも出さない。 (清水委員) ○ お金持ちを優遇するのか、というわけのわからない議論にもなっていく。いずれにせよ、 コスト論は突き詰めるとそういう話にもなっていく。あとは、公権力の話にもどこまで 踏み込めるかによる。 (河委員) ○ 公権力の話もどこまで踏み込めるかが問題である。業務の切り出しをどうするのかとい う議論も、公権力の行使も、肉を削いで骨まで細くしていくのではなく、ばっさりと切 っていくしかない。 ○ 私も、これまで肉を削いでいき公権力の行使を細くしていくという方法論を採ってきた。 もちろんこうした議論をやっていくと、9 割くらいは、公権力の行使といっても単なる 事務ではないか、というところまではたどり着く。しかし、こうしたアプローチでは業 務をバラバラにしていく形になってしまうのであり、かえって業務は細切れになってし まう。だから、公権力の行使に限りなくアプローチするのではなく、公権力の行使をば っさり切れるかどうかということを議論しなければならない。 (坂田委員) ○ 法律とは、大げさに言えば、政府部門と家計部門と企業部門がどういうバランスと役割 で社会を構成するのかということを背景に持つものである。しかし、これらのバランス がどうあるべきかということがはっきりせず、小さな政府か大きな政府かという前提が 判らないなかで市場化テストをやろうとしても、様々な障害にあたってしまう。 (河委員) ○ いや、前提の価値判断はこの法律はしていない。前提の価値判断は国会が行うべきもの であり、立案担当者としてはその価値判断にまで立ち入らなかったからこういう法律に なっている。 (小川委員) ○ 地方団体の事務、特に都道府県の事務というのは、大半が法律に基づく事務である。だ から制度改正が必要なのであり、地方が自由に取り組むことができないという問題が生 じてくる。 ○ 議論を進めたい。次に資料 2,3,4 の説明を事務局にお願いする。 * 資料 2,3,4 の説明 (河委員) ○ 公権力の行使の議論にこだわるわけではないが、国家公務員であったものとしては、今 の国家公務員は、今の法制度、行政法、公権力の行使というものを叩き込まれたものが やっている。行政法学者もそうである。しかし、今の世の中で公権力の行使論を信奉し ているのは行政法学者と公務員くらいである。これが公権力の行使論の一番おかしなと ころだと思う。 ○ この言葉が行政法学者と国家公務員以外の人になぜ伝わらないのか、逆に言えばそうい うものが一般に届かないのに行政法学者や国家公務員がなぜ今でもこの論理を信奉し ているのか、さらにはそれをどうやって直すのか。民間委託、民間開放の推進という議 論は、結局はぐるぐる回ってそこに戻ってしまう。もちろんこの問題は最後は括弧書き にとどめるしかないのかもしれないが、私は、基本はこの問題であり、これが解決しな いと議論は結局完結しないと思う。 ○ この論点の扱いは最後は委員長の判断に任せるが、国家公務員が公権力の行使にこだわ るというのは、私利私欲ではなく、むしろ、学生時代から叩き込まれたものである。戦 後、行政官として、それを知らなければ行政官とは呼べないというような訓練の中でで きてきたものなのである。 (坂田委員) ○ 公共サービス改革法それ自体は、どのような事業を対象事業とするかについては価値中 立的であり、どのような事業を対象とするかを言わないという形になっている。このた め、誰かがこれを対象とするということを決定しないと動かないという仕組みになって いる。 ○ これに対し、足立区では対象事業を例示している。たとえば、ぎりぎりのところ公務員 がやらなければならないという業務を、なるべく少なくした上で例示してある。一部は アメリカの連邦政府が市場化テストをやる時に作ったものである。いずれにせよ、行政 は限定的に業務をやることとし、ここまでは民間が入らないといけないというようにし ている。 ○ 足立区の場合は政策経営部がこのようなものを出しているし、自治体によっては監理委 員会が動くものとしているところもあるようだが、いずれにせよ、全庁的な手続を取ら ないと対象事業は出てこない。 (居軒委員) ○ この対象事業というのは、業務の全部が対象となるものもあれば、この業務の一部が対 象となるというものもあるということか。 (坂田委員) ○ その通りである。 (河委員) ○ 業務を例示してしまうと、ある意味で逃げ道がなくなってしまうという面もある。これ だけ対象事業を例示しても割と庁内が安定しているというのは、行革の歴史が長いから であろう。 (小川委員長) ○ 公権力の行使の前に、そもそも行政とは何かという議論もある。法令でやっていること が行政であるという意識が強いのが国である。市町村はどちらかというと戦後拡大した サービス部門を中心にやってきたから、基本的な発想が政府と逆なのかもしれない。 (河委員) ○ だから、行政とは何なのかという発想が政府と市町村とで違っているのかもしれない。 また、国民とも違うのかもしれない。 (小川委員長) ○ 税金を使うことが行政であるということであれば、実働部隊が民間であってもそれは行 政である。国の役人はほぼ 100%、地方の場合も 80~90%はそうではないというだろ うが。 ○ 指定管理者の場合も、管理料を税金で払えばそれは広い意味での行政である。そこを立 ち入るとまた神学論争に陥ってしまう。 (河委員) ○ 行政という言葉もそうである。行政は公務員がやるものである、公務員とは行政をやる ものであるというような循環論法である。では、公務員がやらなくなれば、今まで公務 員がやっていたような業務もそれは行政ではなくなるのか、という問題が生じてしまう。 (小川委員長) ○ 明治時代などは、民間人が行政区や財産区の区長として行政の一環を担い、税金を使わ ずに自前でやっていた。明治時代に建てられた小学校や郵便局だって民間からの寄付で できたものである。 (河委員) ○ 行政とは、行政法とは、という議論も出てくる。もちろんこの議論も 7 合目くらいまで で止めないと前に進めないのかもしれない。 (小川委員長) ○ 議論の進め方としては、取り敢えず現行政法令に基づく事務の中でどのようなことがで きるのかということも一つのジャンルである。 ○ また、広域自治体と基礎自治体とは役割が違う面もあり、市区町村のサービス業務は既 にかなりの部分まで民間に出してしまっている。 (坂田委員) ○ サービス的な業務はかなり民間に出してしまっている。あとは公権力の行使に当たる業 務しか残っていない。 (河委員) ○ 最後に、補遺ではないが、今のような議論を残しておく必要があるのではないか。議論 を箱に入れておくにしても、その理由を残しておくべきではないか。 (坂田委員) ○ 2・3 年ほど前に、イギリスの行政アウトソーシングの会社が来て、話をしたことがあ る。なぜあのように巨大な会社が育って動いているのか良く判らない。いろいろな壁は 日本と同じようにあったはずなのだが、それをどうやって超えてきて今に至っているの か、という点に興味がある。 (清水委員) ○ 公務員を民間に移転できたからではないか。一部採算割れの部分があるとしても、どん どん公務員を受け入れている。 (美原委員) ○ マネジメントの仕方が違うだけで、働いている人は同じなのだろう。 (河委員) ○ イギリスは、国家と教会が重なっているから、官と民がもともと重なった社会である。 福祉もそうで、福祉はどちらかというと教会がやってきた社会であるから、これを教会 がやろうが国家がやろうが、イギリスの人にとってはあまり関心がない。そういう意味 では、行政法とか行政学というところから始まる日本とイギリスとは基本的に全く違う。 国家と教会が重なっている。 (小川委員長) ○ だから、英米法には行政法というものはない。 (美原委員) ○ 大臣が OK といえばなんでもできてしまう。官と民とで差別がない。 (河委員) ○ たとえばイギリスの医師は全て公務員であるというが、あれは日本でいう公務員と全く 同じかといえば、そうではない。 (清水委員) ○ 究極の目標は、官民の競争それ自体ではない。官民をどういう組み合わせにしたら一番 効率的にできるのかが PPP であろう。その組み合わせの仕方というのは、単なる市場 化テストとか指定管理者だけではない。もうちょっといい官民の組み合わせというのが あるのではないかと思う。 (美原委員) ○ 自分は実は制度論は好きではなく、末端から見るのが好きである。作業をしている現場 の人からすれば、協定やリスク分担などは市場化テストだろうが PFI だろうが指定管理 者だろうが、全く同じである。 ○ ところが、現場にいる人たちは、官も民も全く同じように考えているのに、だんだん上 に行けば上に行くほど制度が分かれてきて、訳がわからなくなる。市町村の現場レベル ではほとんど同じなのであるが、それをどうわかりやすく仕分けするかである。 (坂田委員) ○ 究極のところは官と民との組み合わせはいろいろなパターンがあるのだろうが、どのよ うな場合にどのような組み合わせが最適化か、という問題かと思う。この問題について は、足立区でも来年 1 月までに検討をしていきたいと考えている。 (河委員) ○ 業務のパッケージも、ある程度きちんと大きくしなければまずい。常勤・非常勤という 一人一人の雇われ方と全体の事業の効率性というものが混ざって困るというのは、どこ か議論としておかしいのだと思う。そしてそうした問題が生じてしまうのは、やはり事 業がパッケージになっていないための問題だと思う。業務が細切れに分解され、一人一 人が業務を分担させられて人件費の議論だけに還元され、そしてこちらのほうが安い、 となってしまうのは、どこか議論がおかしい。 (清水委員) ○ 民間では、クリエイティブに物事を提案しようとすると、いくつもの解を作ったうえ、 それらをぶつけることで最適な解が得られるということをする。 ○ もっと根本的に言うと、民間のプレイヤーが少なすぎる。図書館であっても、今は数社 くらいのプレイヤーで競争しているが、あれも限界である。本来はもっと民間のプレイ ヤーを増やして競争しないと行政の効率も上がらないし、民間開放もうまくいかない。 (居軒委員) ○ 市場化テストの推進のために様々な民間企業を訪問し、コミュニケーションをとらせて もらっているのだが、今回、大阪版市場化テストに提案いただいた民間企業の中には、 幹部に市場化テストへの提案の必要性を説明しても理解してもらえなかった、というこ ともお聞きしている。提案していただくことには当然コストがかかるのだが、では提案 の結果どうなるのか、と問われたときに、すぐに契約に結びつくのではなく市場化テス トを実施するのだということが理解をしてもらえない。そういう意味では、もう少し市 場化テストというものが浸透してもらえればと思う。 (小川委員長) ○ 指定管理者などは件数もずいぶん増え、民間事業者も積極的になり、様々な要望が出た りノウハウを積んだりしたようであるのだが。 (河委員) ○ 指定管理者の長所は、業務がパッケージになっていたことである。とりわけ、中の人間 集団がパッケージになっていたというのが最も良かったのだと思う。それを分散してし まうのは良くない。 (坂田委員) ○ 我々も、事業所の市場化テストと事務の市場化テストと分けて考えているのだが、事業 所の市場化テストは実施単位がパッケージとなっていてやりやすい。しかし、事務の場 合には細分化されてしまい、余計に効率性が落ちてしまい、非常にやりにくい。 (居軒委員) ○ パッケージとして出せるような業務はもう既に民間に出してしまっている。だからこそ 市場化テストというオープン系で議論して改革をしていくという手続を導入せざるを 得なかった。出せる部分は全部やってしまった。 (美原委員) ○ ディスインセンティブが働くような仕掛けは良くない。今起こっているのは、例えばア イデアを出す時に細切れのアイデアを出すようなことである。アイデアがすべて出てし まうことを防ぎ、後で自分だけがそのアイデアを出せるようにするため、アイデアを細 切れに出していくというような事態も生じている。 (居軒委員) ○ 大阪府では、そうした事態を防ぐための方策を考えた。市場化テストの提案をいただい たのち、次に本番の入札が待っているとなると、最初の提案では手抜きの内容になって しまうという恐れがある。そこで、最初の提案が優れていたら、本番の入札で最大で5% のインセンティブ(加点)を行うという仕組みを作っている。百点満点で5点分の加点 を行うこととしている。 (河委員) ○ 市場化テストに関する議論は確実に深まっている。抽象論を交わしていた 3 年前や 4 年 前よりも議論の輪郭が明確化してきた。これは大阪府や足立区のように実際に取り組ん でいるところがあることも大きい。 (美原委員) ○ 事業提案検討時に議論するのだが、オファーする時に、人件費相当額が一定レベル以上 となる場合には絶対に参加しない。確実に事業性が悪くなるためだ。機械化、システム 化することで、多少は投資が必要だとしても全体ではそれ以上に効率性が上がり、そし て従事者数をもっと減らせる、ということがなければ無理である。業務の変革、システ ム化ということが入ってくれば大企業としても参入しやすくなる。 (小川委員長) ○ 業務内容の進歩がなければ民間に出す意味がない。単に給与水準の低い人を集めて使う だけでは、コストは下がるが、少しも進歩しない。 ○ 民間委託するときに、システム化みたいなところを評価要素にする方法もあるのかもし れない。 (居軒委員) ○ そういった場合に難しいのは、現状のコストよりも高くなる場合である。質が上がって も評価できるかどうかということである。 (坂田委員) ○ 自治体レベルだと全国 1,700 自治体がほとんど同じようなことをやっている。だから、 一社がどこかでベストプラクティスを確立すれば、他の自治体はそれを聞きに来て全国 に拡大波及していく。そこで、民間事業者には、足立区でいい仕事をすれば他の自治体 にも伝えてやる、という話をしたことがある。 * 資料 5 説明 3.開 会