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日本における特別養子縁組の 現状と課題

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日本における特別養子縁組の 現状と課題
日本における特別養子縁組の
現状と課題
後藤絵里
朝日新聞GLOBE
2013年12月15日
日本財団主催「特別養子縁組を考える国際シンポジウム」
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
はじめに:世界の養子縁組事情
「子のための養子縁組 (Child Adoption)」って?
→ 子どもと、血縁関係のない大人が、法や契約によって
実親子同様となり、永続的な家族になること
欧米、北欧では国の児童福祉政策の主軸
→実親が育てられない子どもたちには
パーマネンシーケア(永続的な家庭での養育)が最優先



世界で進む「施設から家庭へ」
ルーマニア:04年に3万人超→12年に9000人
モルドバ:07~12年に6割の施設を閉鎖
ルワンダ:5年で400→22に激減。2014年に全廃予定
(Economistより)
米国では今秋、「Family First Act」が成立。
米国の養子縁組数50,000人、海外縁組は約9000人、
100人近くが国外委託(12年)
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
日本では……
保護を必要とする子どもたちの9割が施設で暮らす
→
「国家レベルの児童虐待」との批判
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
海外の社会的養護の現状
要保護児童の里親(養子縁組含む)委託率
93.5
77
71.7
54.9
50.4 49.5
43.6
日本
韓国
イタリア
ドイツ
フランス
イギリス
アメリカ
12
オースト…
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
日本の社会的養護の現状
児童養護施設 全国589カ所、入所児童数29,399人
→この10年で48カ所増(1.07倍)
乳児院全国130カ所、入所児童年間3000人→殆ど施設へ
→この10年で16カ所増(1.14倍)
里親 委託児童数
4295人(うち養子縁組里親179人)
委託率は13.5%
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
お金でみる社会的養護

国の社会的養護関係予算(13年度予算ベース)
→967億4100万円
(うち入所措置費=907億8800万円)ほとんど施設運営費
6
●措置児童にかかる月額費用(千葉県の場合)
子ども1人あたり
320,000~450,000円
赤ちゃん1人につき
600,000~960,000円
「千葉県における社会的資源のあり方について」より抜粋・2004年度数値
●国から里親に出る里親委託費
子ども1人あたり72,000円もらえる(2人目から半額)
+生活費47,000円+実費(幼稚園代、給食費、医療費など)
養子縁組ではこうした補助は一切なし
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
日本は子どもの養子縁組「小国」
親が育てられない赤ちゃん(年間平均措置約3000人)の
9割が乳児院へ
日本財団の全国児童相談所アンケート調査(2012年度)
4
保護児童
8
乳児院
養育里親
88
養子縁組里親
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
日本の養子縁組件数
ほとんどが成人縁組

特別養子縁組 創設1987年。年間400件程度にとどまる
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
施設を出た子どもたちは……
80
大学など
70
60
専修学校など
50
就職
40
30
その他
20
10
0
施設出身者
全国平均
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
もう一つの悲劇:望まぬ妊娠の先に
産んでも育てられない……
行き場のない女性たちは?
赤ちゃんの「0日死」「0カ月死」死亡率
11か月
月齢不明
4%
4%
7か月
生後1日から
30日死
15%
13%
6か月
生後0か月
9%
52%
3か月
4%
生後0日死
85%
1か月
2か月
9%
5%
(※社会保障審議会児童部会専門委員会資料より抜粋/2012年7月)
心中以外の児童虐待死事例の0才児の月齢
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
捨て子・置き去りの増加 (2012年度)
棄児(親がわからない)
……年間44人(09年度は25人)
置き去り児童(親は判明している)
……年間209人(09年度は55人)
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
なぜ日本で養子縁組が広がらないのか
 施設養護が主流
前例のないことを嫌がる(間違いを犯したくない)。虐待対応で人手不足。実親のカウンセリング
をしないため、実親は選択肢を知らされない
 親権の強さ
実親が何年も児童に面会なくとも、親権者の承諾が取れない限り特別養子縁組委託できない
 家庭養護では里親を推奨
 厚労省の通達指導の不徹底
 血縁へのこだわり。「私」の領域に国は介入しない
「戦後は互助の精神が生きていた。高度成長以降、核家族化が進んで血のつながらない親子
関係はクローゼット化」(湯沢雍彦・御茶ノ水大名誉教授)
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
だれがすき間を埋めてきたのか?
民間団体の活動状況と役割



第2種福祉事業 全国で15団体が届け出
行政の対応しきれない部分をカバー
民間による縁組成立件数は5年で6倍に。
民間団体による縁組件数
縁組件数
127
32
22
42
67
39
06年 07年 08年 9年 10年 11年


熊本・慈恵病院のこうのとりのゆりかご (2006年開始)
「愛知方式」 → 古くから赤ちゃん縁組に取り組む自治体も
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
民間団体の活動
実母の妊娠時からの相談対応/育て親の募集と審査/
母子保護/マッチング/縁組後の裁判手続きフォローなど
基本的に相談受付24時間、全国対応
・縁組にかかる費用
一件当たり数十万~200万円程度。事務所家賃、人件費、交通費、
通信費、家庭訪問費用など。親と子の国籍が異なる「国際」縁組は査
証手続費用、翻訳料なども
・国から民間団体への支援は基本的になし
→海外では民間への事業委託や公的支援は一般的
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
子どもの養子縁組をめぐる課題






民間、行政、医療機関の協働・連携
子の福祉の視点に立つ共通の指針づくり
民間団体のルールづくりと費用負担の問題
自治体の垣根を越えた取り組みの必要
実親へのカウンセリングの徹底「施設に放置」なくせ
市民への啓発、不妊治療患者への養子縁組情報提供
子どもは特定の大人のもとで愛され育つことが最善。
血のつながりだけで親子となるのではない
子どもたちの未来を、社会全体で考えるとき
Goto, Eri The Asahi Shimbun GLOBE
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