...

H8 マイコンで計測・制御 教材的開発

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

H8 マイコンで計測・制御 教材的開発
2006 PCカンファレンス 8/3-5 立命館大学衣笠キャンパス
H8 マイコンで計測・制御
教材的開発
滋賀県立水口高等学校 小西 浩之
[email protected]
1.はじめに
(2)リレー:1バイト分の ON/OFF 制御を想定
手軽に入手可能な H8 マイコンキットを汎用インターフェースとし
て活用し、計測センサー・制御アクチュエータ、パソコンユーザインターフ
リレー
1A125VAC、2A30VDC 8個
ドライブ
トランジスター 2SC1472K 8セット
ェースの3点とともに計測・制御システムとしての開発を行
い、物理実験での活用はもちろんのこと、物理的な"
(3)超音波距離計:10cm~3m の距離測定を想定
ものつくりのおもしろさ"を伝える教材としても位
秋月電子の超音波デジタル距離計キットを改造すること
置づけている。今回の発表は具体的な開発状況・ノウ
で、H8 マイコンで必要となる信号を取り出している。
ハウ等を紹介するものである。
このキットは 40kHz の超音波パルスの空中伝搬・反射時
パソコン
計測・制御
H8
をサンプリング間隔 64ms(実測値)で測定可能である。
仕様
RS-232C
汎用インターフェース
独自仕様
計測センサー
制御アクチュエータ
間を利用した距離計で、分解能 1cm、最大 3m 範囲
図1 システム構成図
2.計測センサー・制御アクチュエータについて
アイデアを形にするするために部品を選び、半田づけ
作業で製作を行った。
(1)温度センサー:測定範囲:2℃~100℃を想定
センサー
ナショナルセミコンダクター LM35DZ
出力=10.0×t [mV]
t は摂氏温度℃
精度±1℃
増幅器
ナショナルセミコンダクター LM358N
増幅率 4.19 倍
1チップに独立した2個の増幅器
図3
超音波距離計
3.汎用インターフェースについて
センサー・アクチュエータとパソコンの間でうまく信号伝達がで
きるような、安価で汎用性、再現性の高いインターフェース
と な る よ う 、 入 手 し 易 い 市 販 の H8 マ イ コ ン キ ッ ト
図2 温度センサー
AKI-H8/3048F を活用した。
351
2006 PCカンファレンス 8/3-5 立命館大学衣笠キャンパス
(1)ハードウェア開発について
以下の独自仕様 I/O ポートを設けるため、マザーボード
とコネクタを配線した。
①1バイトパラレル入出力ポート×2(16 ピン)
②A/D コンバータ入力ポート×2(2 ピン)
③D/A コンバータ出力ポート×2(2 ピン)
④DC+5ボルト出力、GND(2 ピン)
(2)ソフトウェア開発について
H8 マイコン制御用ソフトは秋月電子の AKI-H8/3048F 付
属の 3048F 用 C コンパイラを用いて Windows パソコン上で
組込ソフトを開発し、シリアルポート経由で RAM 領域に転
送・実行した。
ここでは、センサーの信号を“うまく ”パソコンに渡す、
パソコンの信号を “うまく ”アクチュエータに渡すことが実
現できるように、H8 マイコンのハードウェアを意識したプログ
図4
ラム開発を行うこととなる。
H8 マイコン汎用インターフェース
なお、H8 マイコン自身でひとつの完結したインテリジェント
端末であることから、自律処理できるプログラムを与え
計測・制御の内容により組込ソフトで汎用性を持たせ
る仕様にするため、モニタ・デバッガソフトをフラッシュ ROM に
ることで、パソコンなしで動作させることも可能である。
焼き込み、これを OS の様に基本ソフトウェアとして活用
自律ロボットやデータロガーとしての応用も考えられる。
することとした。測定したデータを簡単な処理をし、
シリアルポート経由でパソコンに報告することなどが主な用
3.パソコンユーザインターフェースについて
途なので、コンパクトな 4kB の RAM 領域でも計測・制
ユーザが直感的に理解し操作できる使い勝手(“パネ
御ソフトウェアを転送・実行することが可能である。また、
ル”と独自に名付けている)を実装できるように、以
この方法により、フラッシュ ROM の書き換え回数制限も
下のコンセプトの元、ユーザを意識したプログラム開発を行っ
クリアできる。
た。
■AKI-H8/3048F 組込マイコンチップ H8/3048F について
■コンセプト
「Windows 機、MacOS 機、Linux 機のいずれもで操
ルネサステクノロジ社 H8/3048F は、内部バス 16bit の
作できる仕様とする。」
H8/300H 系 CPU をコアに周辺素子を構成したワンチップ
組込型マイクロコンピュータである。128kB-フラッシュ ROM、
①
4kB-RAM、11 組の I/O ポート、2 チャンネルの D/A コンバータ、
REALbasic を開発環境として採用
10bit 分解能 8 チャンネルの A/D コンバータ、2 チャンネルのシルアルイ
Window 版、MacOS 版それぞれの開発環境が市販
ンターフェースの他、ウォッチ・ドッグ・タイマ(WDT)、インテグレーテッ
されており、ソースレベルで互換性が保たれる。またプロ
ド・タイマ・ユニット(ITU)、タイミング・パターン・コントローラ(TPC)
フェッショナル版を用いれば Linux も含め OS を越えたクロスコ
などをワンチップ内に備えており、パソコンからシリアルポート
ンパイルが可能である。イベント駆動型のオブジェクト指向プ
経由でソフトウェアを転送することにより、汎用インターフェース
ログラミング環境で主にユーザインターフェースを実装させるプロ
として幅広く活用可能である。
グラミングを行った。
352
2006 PCカンファレンス 8/3-5 立命館大学衣笠キャンパス
図5
図7
REALbasic5.5.4 開発環境
② シリアルポートを活用
4.教材紹介
シリアルポートを使って汎用インターフェースと信号のやりとり
(1)“温度計測パネル”
を行わせる。最近の PC 環境ではシリアルポートが省かれ
2 つの温度センサーからの信号を時間軸にそったデータ
ていることも多いが、USB-シリアルの変換ケーブルで対応
として処理する。
可能である。
想定する活用例:熱平衡実験
発
図6
WindowsXP の COM ポート番号設定
展・応 用:温度による機器制御実習
USB-RS232C 変換ケーブル
左から VS-60R、USB-RSAQ3、REX-USB60、USA-28X
製品名
特徴
サン電子
CDC 対応のため、WindowsXP/2000、
VS-60R
MacOS9.2/9.1、MacOSX ではドライバ
図8 “温度計測パネル”
(2)“ビット制御パネル”
組込が不要
パソコンからの 1 バイト(8 ビット)出力でリレーを駆動し、
I・O データ
Window98SE 以降、MacOS9.04 以降
USB-RSAQ3
(含 MacOSX)対応
ラトックシステム
Windows98SE 以降に対応
想定する活用例:2 進数 16 進数体験
REX-USB60
98/Me 用 COM ポート変更ユーティリティ付属
応
Keyspan
RS-422 ミニ DIN8 ポート 2 基搭載
USA-28X
MacOS8.6 以降(含 MacOSX)対応
周辺機器を制御する。
用・発 展:
“ラジコン制御パネル”
表1 筆者が試した主な変換ケーブル
パソコン側ソフトウェアで RS-232C によるシリアル通信に対応
するには、COM ポートの適切な割り当てがポイントとな
るが、WindowsXP パソコンでは、コントロールパネル「システム」
の「ハードウェア」タブで「デバイスマネージャ」をクリックし、設
定する COM ポートの「詳細設定」を変更することに
図9 “ビット制御パネル”
より対応が可能である。MacOS 系の場合は専用ユーテ
ィリティの付属する KeyspanUSA-28X などが使いやすい。
353
リレーを介して電球等電化製品を ON/OFF 制御する
2006 PCカンファレンス 8/3-5 立命館大学衣笠キャンパス
動くように工夫している。
5.まとめ
開発したシステムは前任校の日野高校在任時の 2000
年 7 月には MacOS 版をすでに開発しており、実際
に物理の授業で活用している。滋賀県総合教育センター
の物理講座や研究紀要「滋賀科学」においても開発
経過をその都度紹介している。
図10 “ラジコン制御パネル”
今回は、現在開発中の教材をほんの少し紹介した
2台のラジコンカーを同時にコンピュータ制御する
が、ネットワーク対応のものも含めさらにアイデアを煮詰め、
日々時間の許す限り、開発を進めているところであ
る。
(3)“超音波運動解析パネル”
「計測センサー・制御アクチュエータ」、「汎用インターフェース」、「パ
超音波が反射し往復する時間から求めた物体まで
の距離を時間軸にそったデータとして処理する。
ソコンユーザインターフェース」を“三位一体”でシステム開発する必
想定する活用例:台車運動、g 測定、単振動
要があるので、たいへんであるかに見えるが、それ
応
ぞれがモジュール化・オブジェクト化できるので、案外スムーズ
用・発 展:ロボット制御、3 次元立体スキャナー
に開発を進めることができている。むしろ、実際に
一番たいへんなのはアイデア出し、コンセプトメーキングである
と言えよう。
「物理」・
「情報」授業担当者として、自分自身が
わくわくできる“ものつくり”を積極的に続け、直
接・間接的にあらゆる機会を使い、生徒にその “わ
くわく感 ”を伝えたいと日々考え行動している。そ
の実践のひとつが今回紹介したシステムである。
参考文献
秋月電子
図11 超音波運動解析パネル
AKI-H8(3048F)開発キットマニュアル
超音波デジタル距離計キットマニュアル
このパネルでは時間軸にそったデータとして物体の位
置をリアルタイムに測定しているので、パソコン側で処理する
アスキーソリューションズ
ことにより「速さ」、「加速度」も算出できる。測定
REALbasic ユーザーズガイド
したデータは CSV ファイル形式で書き出すことができる
REALbasic 言語リファレンス
ので、Excel 等、別ソフトウェアによる分析処理も可能であ
る。
また、記録タイマーによる測定とは異なり、往復運動
も記録可能で、振動現象についても取り扱うことが
できることも特徴である。
なお、測定のイメージを分かりやすくするため、実際
の対象物の動きに合わせてリアルタイムに画面上で物体が
354
Fly UP