...

別添1-1(PDF形式:697KB)

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

別添1-1(PDF形式:697KB)
(別添1)
東海第二発電所
原子炉隔離時冷却系タービン排気ライン逆止弁
損傷に伴う運転上の制限逸脱について
平成20年8月14日
日本原子力発電株式会社
本資料には、日本原子力発電株式会社またはその他の企業
の秘密情報を含んでおります。当社の許可なく本資料の複製
物を作成すること、本資料の内容を本来の目的以外に使用す
ること、または第三者に開示、公開する等の行為を禁止しま
す。 2008.8. 日本原子力発電株式会社
目 次
1.件 名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.事象発生日時・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.事象発生の原子炉施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.事象発生前の運転状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.発生の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.点検調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.1 格納容器圧力低下に係る原因調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 格納容器に繋がる系統の漏えい点検・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) サンプリング系からの漏えい点検・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 漏えい箇所の特定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.2 当該弁開放結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.3 当該弁の仕様及び点検履歴調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 当該弁の仕様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 当該弁の点検履歴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.原因調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.1 製品不良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 寸法不良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 材料不良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 製造不良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.2 設計不良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 強度不良 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.3 使用環境要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 配管振動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 疲労・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ⅰ)破面観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ⅱ) 運転履歴調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ⅲ)疲労評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 腐食・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.4 メンテナンス不良 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 点検計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 点検内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 補修実績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4) 保守管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.5 弁体シャフト付け根部のひび割れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 外観および破面観察の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 弁体シャフト付け根部の補修実績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8.推定原因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8.1 設備面・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 弁体への繰り返し荷重の発生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) き裂の発生・進展・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1
1
1
1
2
2
2
2
3
3
3
3
4
4
4
4
4
5
5
5
5
5
5
5
6
7
7
7
7
8
8
8
9
9
9
9
10
10
10
10
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
(3) 最終破断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8.2 管理面・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 点検計画への運転経験未反映・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9.脱落した部品の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9.1 脱落した部品の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9.2 脱落した部品の流出範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9.3 脱落した部品の探索・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9.4 脱落した部品が流出した場合の影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 配管およびスパージャへの衝突影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) スパージャのフレッティング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) スパージャの機能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4) タービン排気隔離弁E51−F068への影響・・・・・・・・・・・・・・・
(5) ECCSおよびRCICへの影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10.対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10.1 設備面・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 当該弁の復旧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 当該弁の恒久対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10.2 管理面・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10.3 水平展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
10
10
10
11
11
11
12
12
12
12
12
13
13
13
13
13
14
14
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
1.件 名
東海第二発電所
原子炉隔離時冷却系タービン排気ライン逆止弁損傷に伴う運転上の制限逸脱
について
2.事象発生日時
平成20年8月7日 17時00分(原子炉施設の故障により、運転上の制限
を逸脱したとき)
3.事象発生の原子炉施設
原子炉冷却系統設備 原子炉隔離時冷却系タービン排気ライン逆止弁
4.事象発生前の運転状況
原子炉熱出力約3290MW(定格熱出力一定運転中)
5.発生の状況
東海第二発電所は、定格熱出力一定運転にて第23回定期検査時の調整運転中
のところ、8月4日9時22分から13時19分にて原子炉隔離時冷却系(以下、
「RCIC」という。)の定期試験を実施した。その後、同日20時50分頃、
原子炉格納容器(以下、「格納容器」という。)の圧力が低下傾向にあることを確
認した。
このため「運転管理業務運用取扱書」に従い、圧力低下の原因調査を実施した
結果、格納容器に封入している窒素ガスがRCICタービン排気ラインから漏え
いしている可能性が高いと判断した。これにより8月5日20時05分、保安規
定第74条(予防保全を目的とした点検・保修を実施する場合)に基づきRCI
Cを運転上の制限外へ移行した上で排気ラインの隔離弁(E51−F068。以
下、「隔離弁」という。)を閉止したところ、圧力低下は止まった。
漏えいは、RCICタービン排気ラインに設置されている逆止弁(E51−F
040。以下、「当該弁」という。)のシートリークによるものと考え、弁外部か
らのハンマリング(打振)、RCIC試運転による弁座の当たり改善を試みたが、
当該弁のシートリーク状況に変化は見られなかった。
このため当該弁の分解点検を実施したところ、8月7日12時00分頃、弁体
を駆動させるための機構部であるアームから弁体が脱落していることを確認し
た。
脱落の原因は弁体とアームとを連結している弁体ネジ部が破断したことによ
るものであり、復旧には工場での修理が必要となることが確認されたため、RC
ICの機能が維持できていないと判断し、保安規定第73条(運転上の制限を満
足しない場合)に基づき同日17時00分にRCICの運転上の制限逸脱を宣言
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
1
した。
なお、主排気筒モニタ及びモニタリングポストの指示に変化はなく、本事象に
伴う環境への影響はなかった。また、格納容器から漏えいした窒素ガスは、原子
炉建屋内に流出したものと考えられるが、原子炉建屋内にあるエリアモニタの指
示に変化はなく、影響は無視できるものと考えられる。
[添付資料−1∼5]
6.点検調査
6.1 格納容器圧力低下に係る原因調査
8月4日20時50分頃、格納容器の圧力低下を確認したことから、「運転
管理業務運用取扱書」に従い、圧力低下の原因調査に着手した。この結果、圧
力低下はRCIC定期試験後から始まっていることが確認できた。また、静的
機器である格納容器本体が、兆候無しにこのような突発的な圧力低下をもたら
す損傷を起こすとは考え難いことから、本圧力低下はRCICに関連する機器
に起因する可能性が高いと推定されたが、確認できる範囲で漏えいの有無につ
いて現場確認を行った。
[添付資料−6]
(1) 格納容器に繋がる系統の漏えい点検
格納容器に繋がる系統(貫通部)および計装系で系統隔離を実施せずにア
クセス可能な部分について漏えい点検を実施した結果、漏えいは発見されな
かった。
なお、格納容器に繋がる水系統については、サプレッションプール水位に
有意な低下が見られないことから、今回の圧力低下の原因とはならないもの
と判断した。
(2) サンプリング系からの漏えい点検
格納容器内のガス分析のために格納容器外に取り出している格納容器内
核分裂生成物モニタ(以下、「FPM」という。
)および格納容器内酸素濃度
サンプリング装置(以下、「O2アナライザ」という。
)を隔離し、格納容器
圧力を監視した結果、圧力変動に有意な変化が生じないことを確認した。
以上の調査結果から、格納容器に繋がる各系統の貫通部(RCICタービン
排気ラインを除く)、計装系およびサンプリング系からの漏えいはなく、圧力
低下の原因は、RCICタービン排気ラインであると推定された。このため、
8月5日20時05分、保安規定第74条(予防保全を目的とした点検・保修
を実施する場合)に基づきRCICを運転上の制限外へ移行した上で隔離弁を
閉止した。この後、漏えい確認のため隔離していたFPMおよびO2アナライ
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
2
ザを通気状態に復旧すると共に、格納容器への窒素ガス封入操作を停止した。
この状態で、格納容器圧力がほぼ安定していることを確認した。
この結果から、格納容器圧力低下の原因は、隔離弁の上流側(RCICター
ビン側)にあると判断した。
[添付資料−7]
(3) 漏えい箇所の特定
他プラントのトラブル事例から、漏えい箇所は隔離弁の上流に設置されて
いる当該弁のシートリークによるものと考え、隔離弁と当該弁との弁間漏え
い試験を実施したが、圧力が維持できないことが確認された。この結果、漏
えい箇所は当該弁であると特定できた。
原因は、当該弁のシートリークまたは弁座の当たりが一時的にずれている
可能性があるものと考え、弁外部からのハンマリング(打振)、RCIC運
転による弁座の当たり改善を試みたが、状況に変化は見られなかった。
6.2 当該弁開放結果
当該弁のシート着座状態が正常でないことを確認したため、当該弁を開放し
たところ、以下のとおりの状況であった。
・弁体がアームから外れ、弁箱内に落下していた。
・弁体とアームを連結する弁体ネジ部(弁体との一体成形)が破断していた。
・破断し脱落した部品(弁体ネジ部、ナット、割りピンおよび座金)は弁内部
には残留していなかった。
・弁体をアームに連結するための弁体シャフト部(弁体との一体成形)根元に、
全周にわたるひび割れが見られた。
・弁体のその他の部分、アーム、弁箱、弁ふたに外観上、有意な損傷は認めら
れなかった。
・弁体、弁座のシート面については浸透探傷試験を実施したが、有意な欠陥指
示模様は見られなかった。
[添付資料−8]
6.3 当該弁の仕様および点検履歴調査
(1) 当該弁の仕様
型式…スイング式逆止弁、口径…350A
材質…弁箱 SCPH2(高温高圧用炭素鋼鋳鋼品)
弁体 SCPH2(高温高圧用炭素鋼鋳鋼品)
ネジ部 SCPH2(弁体と一体鋳造成形)
、M42
アーム SCPH2(高温高圧用炭素鋼鋳鋼品)
ナット S35C(機械構造用炭素鋼鋼材)
、M42
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
3
割りピン SUS410(ステンレス鋼棒)
座金 SS41(一般構造用圧延鋼材)
(2) 当該弁の点検履歴
当該弁については、平成16年に10定検毎に分解点検を行うことを点検
計画で定めた。
それ以前は、弁間漏えい試験の結果により分解点検要否の判断を行ってお
り、平成13年の第18回定期検査においては、分解点検およびシート面の
修理を実施した。その際、弁体ネジ部の詳細点検は実施していない。
その後、平成19年にメーカより当該弁のシートリーク対応として、ター
ビン排気管スパージャ取替および当該弁の分解点検または取替の提案を受
けたことから、第24回定期検査(平成21年)に実施することを平成20
年2月に点検計画へ反映した。
[添付資料−9]
7.原因調査
弁体とアームを連結するネジ部の破断が確認されたことから、その要因につい
て要因分析に基づき工場および現地にて詳細点検を行った。
7.1 製品不良
製品不良については、寸法不良、材料不良および製造不良が考えられること
から、以下の調査を行った。
(1) 寸法不良
寸法調査記録シートに従い、各部位の寸法を判定基準と比較した結果、製
品の寸法不良と考えられるような値は確認されなかった。
なお、流出して現物が確認できなかったナット、座金、弁体ネジ部、割り
ピンは寸法を測定できなかった。
[添付資料−10 別紙−1]
(2) 材料不良
弁体のミルシートを確認した結果、設計どおりの材料(SCPH2 高温
高圧用炭素鋼鋳鋼品)であり、化学成分、機械的性質ともにJIS規格を満
足していることを確認した。
また、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)により破面の化学成分を
分析した結果、炭素、酸素、鉄が検出され、ニッケル、クロムが検出されて
いないことから、当該材料は炭素鋼であることが確認された。なお、酸素成
分が多く、表面にはマクロ観察においても鉄酸化物(錆)が見られた。
[添付資料−10 別紙‐2,3]
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
4
(3) 製造不良
弁体、アーム等主要部品の寸法記録についてはメーカでの保管期限が5年
間であるため確認できなかったが、製品記録(耐圧、漏えい、主要寸法、作
動)については各判定基準、目標値等を満足していた。また、放射線透過試
験結果が残されており、内部欠陥のないことが確認できた。当該弁の弁体製
作当時の熱処理状況について、弁体のQCチェック手順の確認を行った結果、
手順に問題のなかったことを確認した。
[添付資料−10 別紙‐4]
7.2 設計不良
(1) 強度不良
通常の弁開閉動作の際に生じる、弁体ネジ部に発生する曲げ荷重(約3,
530N)を評価した結果、降伏応力を発生する荷重(約7,090N)以
下であり、強度上問題がないことを確認した。
[添付資料−10 別紙‐5]
7.3 使用環境要因
後述する破面観察の結果から、疲労割れに特有のストライエーション状の模
様が確認されたことから、振動、繰り返し荷重、腐食の観点で調査を実施した。
(1) 配管振動
配管振動が弁体ネジ部に伝播するか弁構造図により確認した。その結果、
アームと弁体は固定されておらず、ギャップが介在することから、配管振動
が直接弁体ネジ部に伝播しないことを確認した。
[添付資料−10 別紙‐6]
(2) 疲労
ⅰ)破面観察
破面マクロ観察の結果、大きく分けて赤茶色部、黒色部、灰色部、茶褐
色部の4つの領域が存在していることが分かった。
① 赤茶色部
・ネジ山の谷の部分全周に分布している。
・2箇所に弁体脱落の際できたと思われる打こん状の部位が見られる。
② 黒色部と灰色部
・黒色部と灰色部はほぼ、全周にわたって分布している。
・黒色部外周の一部には、内面に向かった線状の模様が見られる。
・黒色部と灰色部境界がはっきりしている。
③ 茶褐色部
・表面には山と谷の部分が一様に観察される。
・楕円状が二段に組み合わさって形成されており、外輪部と内輪部を比
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
5
較すると内輪部の突起の方が高い段となっている。
以上の破面マクロ観察の結果から、以下の通り考察された。
・茶褐色部表面には比較的、新しい酸化被膜が見られ、また、延性破断
的な様相を呈していることから、最終的な破断により形成されたと考
えられる。
・黒色部および灰色部は、破面形成後比較的長時間にわたり湿潤な雰囲
気に接していたことによる変色と考えられる。
・赤茶色の部分はネジの谷部分であり、比較的長時間にわたり湿潤な雰
囲気に接していたことにより生じた変色と考えられる。
折損した弁体ネジ部について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観
察した結果は次のとおりである。
・マクロ観察にて灰色に見えた部分のほぼ全周にわたり、疲労破面に特
有のストライエーション状模様が観察された。
・マクロ観察にて黒色に見えた部分の一部に、応力集中部に特徴的なラ
チェットマークが外周から内面に向けて観察された。また、一部に酸
化被膜と思われる付着物が確認された。
・マクロ観察にて茶褐色に見えた部分のほぼ全面に、延性破面に特有の
ディンプル模様が確認された。
[添付資料−10 別紙‐2]
ⅱ) 運転履歴調査
破面観察の結果、疲労破面に特有なストライエーション状模様が確認さ
れたため、運転履歴から弁体ネジ部に繰り返し荷重のかかる運転が行われ
ていたかを確認した。
当該弁については、運転員への聞き取り調査によって、RCIC定期試
験時のタービン低速回転時やRCICタービン無負荷単体試験時の排気
蒸気量が少ない時(以下、「タービン低速回転時」という。
)において、従
来から約2秒間隔で開閉音が繰り返されていたことが確認された。
今回のRCIC定期試験時のデータから、タービン起動時の低速回転時
において、約2秒周期でタービン回転速度が一定の振幅で変動することが
確認されている。このタービン回転速度の変動原因は、タービン排気のサ
プレッションプール水中における蒸気凝縮状態変化による背圧変動で生
じるものと考えられる。
これらの状況から、当該弁の開閉が繰り返されると考えた場合、発電所
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
6
運転開始からのRCICタービン累積運転時間約642時間に対し、低速
回転で運転した時間の累積は概ね61時間と推定され、当該弁の総動作回
数は約110,000回となる。
[添付資料−10 別紙‐8,10]
ⅲ)疲労評価
疲労評価の結果、開閉動作に伴う衝突により弁体ネジ部に発生する繰り
返しピーク応力は231MPaと推定され、その許容繰り返し数は約15,
000回と評価された。
一方、運転履歴調査から、発電所運転開始からこれまでの当該弁の総動
作回数は前述のとおり約110,000回(応力繰り返し回数としては2
倍の約220,000回)であると算定されており、当該弁体ネジ部が疲
労破壊する可能性は否定できない。
また、当該破面に観察された最終破面の面積から推定した繰り返し応力
に基づいて疲労き裂進展評価を行った。その結果、概ね平成2年頃から疲
労き裂が発生して、これが約 18年かけて進展し、今回の破断に進展した
ものと推定された。
なお、後述の「10.1 (1) 当該弁の復旧」に示すとおり、弁体交換前後
で、鋳造品から鍛造品へと材料が変わるが、疲労評価は材料変更によらず、
フェライト系材料として同様の疲労評価になる。
[添付資料−10 別紙‐7]
(3) 腐 食
破面には鉄酸化物の存在が認められたが、腐食による損傷は見られなかっ
た。
[添付資料−10 別紙‐2]
7.4 メンテナンス不良
(1) 点検計画
一般的に弁の点検は、これまでの運転保守経験、メーカからの推奨等に
基づき点検頻度、点検内容を定めて実施している。
当該弁の点検計画は、平成16年に当該弁が安全重要度クラス3機器で
あることを考慮して、それまでの保修経験から10定検毎と定めたが、次
回の分解点検の時期は明確に定めなかった。
それ以前は弁間漏えい試験の結果により分解点検要否の判断を行ってお
り、至近の実績では、平成13年の第18回定期検査において、隔離弁の
健全性確認のために実施した弁間漏えい試験で社内管理値を超える漏えい
が確認されたことから、当該弁の弁体を取り外して分解点検およびシート
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
7
面の修理を実施した。
その後、平成19年にメーカより当該弁のシートリーク対応として、タ
ービン排気管のスパージャ取替および衝撃緩和とシート性向上を目的とし
た当該弁の取替について提案を受けたことから、第24回定期検査(平成
21年)で分解点検または取替を行うこととし、平成20年2月に点検計
画に実施時期を定めた。取替については、分解点検で対応することも視野
に入れた検討を行うことで、最終的な決定事項とはなっていなかった。
また、このメーカからの提案の際に、平成7年にも、当該弁の繰り返し
開閉動作緩和のためにRCICタービン排気スパージャの取替を提案して
いたとの説明があった。
(2) 点検内容
点検内容は、平成16年に点検計画を策定した時に、これまでの保修経験
から弁の機能劣化に着目した主要部品(弁体、弁座、弁棒)の目視検査、非
破壊検査を行うことを点検計画に定めた。ただし、RCICタービン低速回
転時に当該弁が開閉動作を繰り返していることに対応した点検内容に関して
は、開閉動作はシート部の劣化に影響のある事象と考えていたことから、シ
ート部の非破壊検査で対応できると判断し、今回の損傷部である弁体ネジ部
については、特別な点検内容を定めていなかった。この点検内容の考え方は、
平成19年のメーカ提案を受けた後も変わるものではなかった。
(3) 補修実績
第18回定期検査(平成13年)に当該弁の弁体を取り外してシート面の
補修を実施した。当時の点検記録を確認した結果、シート面補修の溶接記録
やシート当たり面の状態確認、弁体復旧記録が残されているが、今回の事象
の原因となるような所見は確認されなかった。
(4) 保守管理
① 建設当初は、当該系統におけるタービン排気が低流量域においては蒸気
凝縮事象により背圧が変動することは想定されていなかったため、設計
上、当該事象を配慮していなかった。その後、運転経験および国内プラ
ントの不具合経験を踏まえ、RCICタービン低速回転時において当該
系統に蒸気凝縮が繰り返し発生することが平成7年に分かったが、当該
弁について疲労を想定した保守管理の見直しはなされていなかった。平
成19年のメーカ提案を受けて、東海第二発電所においても第24回定
期検査にて蒸気凝縮による圧力変動抑制のためスパージャを取替える計
画とした。また、衝撃緩和とシート性向上のため当該弁の分解点検また
は取替を計画した。
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
8
② RCICタービン低速回転時に当該弁が開閉動作を繰り返しているこ
とについては運転経験として知っていた。この運転経験を踏まえて、当
該弁の点検計画(弁の機能劣化に着目した主要部品の目視検査、非破壊
検査)に対して、疲労を想定した点検内容の見直しが検討されなかった。
[添付資料−10 別紙‐9]
7.5
弁体シャフト付け根部のひび割れ
弁体シャフト付け根部に全周にわたってひび割れが確認されたが、断面・
破面観察を行った結果、弁体ネジ部折損原因とは直接関連しないと考えられ
る。
(1) 外観および破面観察の結果
・弁体シャフト付け根部には補修溶接が行われており、ひび割れはこの補修
溶接下端(母材との境界部)を起点とし、45度下方向に直線的に進展し
ており、約3∼4mmの深さとなっていた。
・破面は強固な酸化スケールで覆われていることから、破面形成時期からか
なりの時間が経過しているものと推定される。
・したがって、このひび割れは、弁体シャフト付け根部への応力集中による
応力振幅の増大と、溶接による引張残留応力による疲労強度の低下が重畳
して発生・進展したが、き裂先端が応力集中や残留応力の影響範囲の外ま
で進展したところで、停留したものと推定される。
(2) 弁体シャフト付け根部の補修実績
当該弁の補修実績は第18回定期検査のみであり、このときの補修記録に
は弁体シャフト付け根部の溶接を行った記録はない。従って、弁体シャフト
付け根部の補修溶接は製造時のものと判断できる。(製造時の記録は確認で
きず。)
補修溶接が行われた理由については、製造時の弁体シャフト部加工後の検
査において、弁体材質が鋳鋼であることによる内部欠陥(巣)が検出され、
欠陥除去と肉盛溶接を行ったものと推測される。
(3) 影響評価
弁体シャフト付け根部のひび割れは、以下の理由により、弁体ネジ部の疲
労評価に影響しないものと考える。
・弁体シャフト部の剛性は、き裂の方向が45度であることから弁体と同等
であり、弁体シャフト部は弁体と一体構造物として振舞うと考えられるこ
と。
・弁体シャフト付け根部と弁体ネジ部には等しい曲げ荷重がかかると評価さ
れるが、断面係数の比は3対1であり、ネジ部の方がき裂が進展しやすい
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
9
状態であること。
8.推定原因
前項の調査結果から、今回の原因は以下のとおりと推定される。
8.1 設備面
(1) 弁体への繰り返し荷重の発生
当該弁は、RCICタービン低速回転時に、サプレッションプールに排出
されたタービン排気が蒸気凝縮され背圧が変動することで、弁体が開閉動作
を行う。この動作によりアームがストッパーと衝突を繰り返すことで弁体ネ
ジ部に疲労限を超える応力が発生した。
(2) き裂の発生・進展
この開閉動作は、約2秒の周期で繰り返されることが確認されており、発
電所運転開始から積算すると、約110,000回に達することとなる。こ
の開閉動作による繰り返し応力によって、応力が集中する弁体ネジ部で疲労
き裂が発生・進展した。
(3) 最終破断
き裂の進展により健全な残存部が縮小し、8月4日のRCIC定期試験時
に、アームがストッパーに衝突した際に発生する力により、弁体ネジ部で延
性破壊した。
なお、8月4日のRCIC定期試験後から格納容器圧力低下が見られたこ
とからも、最終破断は8月4日のRCIC定期試験時に発生したと考えられ
る。
[添付資料−6]
8.2 管理面
(1) 点検計画への運転経験未反映
運転経験を踏まえた点検内容の見直し(疲労を想定した点検)が、当該弁
の点検計画に反映されなかったため、疲労き裂の発生を発見することができ
なかった。
9.脱落した部品の評価
弁体ネジ部損傷に伴い脱落した部品については回収できていない。このため、
脱落した部品の流出範囲と系統に与える影響について評価した。
[添付資料−12,13]
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
10
9.1 脱落した部品の概要
脱落した部品は以下のとおりである。
① ナット他組品 質量 約1.3kg
a) ナ ッ ト:材質 S35C、質量 約0.74kg
b) 弁体ネジ部:材質 SCPH2、質量 約0.54kg
c) 割りピン :材質 SUS410、質量 約0.03kg
② 座 金:材質 SS41、質量 約0.18kg
9.2 脱落した部品の流出範囲
当該弁は水平配管部に設置され、下流側約0.3mに隔離弁(E51−F0
68)が設置されており、さらに格納容器貫通部を経て約4.5m下流側に進
んだところで配管が垂直下向きとなり、スパージャと呼ばれる籠状のものが設
置され、下端はサプレッションプール内に水没している。
一方、上流側は水平と垂直の組み合わせ配管が約14m続き、その先でター
ビン排気口へ接続されている。
当該弁はRCICタービン定期試験時に損傷したと考えられることから、脱
落した部品は、タービン排気の蒸気流により当該弁下流に移動し、サプレッシ
ョンプール内に設置されたスパージャに達する可能性が高いと考えられる。
スパージャ内に落下した部品は、寸法上、スパージャ孔を通過できないこと
から、スパージャ内に滞留することになる。
また、ナット他組品が分解していた場合、割りピン(断面は直径約8mmの
半円)はスパージャを通過してサプレッションプール内に流出し得るが、その
場合はプール底面に落下する。非常用炉心冷却系(以下、「ECCS」という。)
およびRCIC作動時にストレーナに吸引されたとしても、ストレーナ(穴径
約2mm及び約3mm)を通過することはない。
仮に、脱落した部品が、RCIC定期試験後に配管水平部に取り残された場
合には、格納容器からRCICタービンの方向に窒素ガスの流れを受けること
になるが、窒素ガス漏えい時の流れは脱落した部品を移動させるほどの力がな
いと評価された。
9.3 脱落した部品の探索
当該弁の開放後、当該弁と上流側・下流側の内部を可能な範囲で目視(直接
目視およびファイバースコープ)により確認したが、脱落した部品は発見され
なかった。
また、当該弁上流側の水平部、ドレンポット底部および下流側の隔離弁から
格納容器外壁までの間について放射線透過撮影による確認を実施したが、脱落
した部品は発見されなかった。
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
11
9.4 脱落した部品が流出した場合の影響評価
上記より、脱落した部品は、タービン排気の蒸気流によって下流側に移動し、
サプレッションプール内にあるスパージャ内へ落下し滞留している可能性が
高い。そのため、以下の影響評価を実施した。
(1) 配管およびスパージャへの衝突影響評価
脱落した部品の内、最大の質量であるナット他組品(約1.3kg)につ
いて、最大流量(RCICタービン定格運転時)によって移動し、エルボ(炭
素鋼)背側またはスパージャ底部(炭素鋼)に衝突したときの運動エネルギ
ーを計算した。その結果、スパージャ底部に衝突した時のエネルギーの方が
大きく、約136Jとなった。
脱落した部品が衝突する時のエネルギーを、被衝突物の破壊限界エネル
ギー※と比較した。その結果、脱落物の衝突エネルギーは、破壊限界エネル
ギー(エルボ部で約30,000J、スパージャ底部で約720,000J)
に比べて極めて小さいことから、問題とならない。
※:参考文献「飛来物体に対する鋼板の対衝突性」日本機械学会論文集 47 巻 422 号(昭和 56 年)
(2) スパージャのフレッティング
脱落した部品がスパージャ底部に滞留した場合には、スパージャにフレッ
ティングを生じるような高荷重での微小な相対往復すべり運動が生じるこ
とは考えられない。
(3) スパージャの機能
脱落した部品がスパージャ底部に存在している場合、スパージャ底面には
RCICタービン排出蒸気を噴出させるための穴がないこと、スパージャは
水没しており、RCICタービン排出蒸気は、スパージャ設計時の解析によ
るとスパージャ底面から約1m上までしか入り込まないことから、脱落した
部品が底面に滞留していても蒸気凝縮に用いられるスパージャの孔を閉塞
することはなく機能を阻害することはない。
(4) タービン排気隔離弁E51−F068への影響
現在、隔離弁は閉止状態にあるが、通常のストローク位置まで弁体が着座
していることが確認されていることから、ナットが弁箱底部に入り込んでい
ることは考えられない。一方、ワッシャは弁箱底部に入り込む可能性は否定
できないが、その場合は安定した状態であり、弁動作を阻害することは考え
難い。
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
12
(5) ECCSおよびRCICへの影響評価
上述のとおり、ナット他組品が分解していた場合、割りピン(最小断面 約
8mm)はスパージャを通過してサプレッションプールに流出し得るが、そ
の場合はプール底面に落下する。ECCSおよびRCIC作動時にストレー
ナに吸引されたとしても、ストレーナ(穴径約2mm及び約3mm)を通過
することはない。
したがって、ECCSおよびRCICの機能には影響しない。
10.対策
10.1 設備面
(1) 当該弁の復旧
① 弁体については、既設同等の強度が確認された現在のメーカ標準品であ
る鍛造品の新品に交換する。あわせてナット、座金、割りピン等につい
ても既設同等の新品に交換する。
② アームについては工場にて、外観、員数、寸法、非破壊(浸透探傷試験,
磁粉探傷試験)の各検査を実施した。さらに、現地にて受け入れ点検と
して外観、員数の各検査を実施した。弁箱については、外観、寸法、非
破壊(浸透探傷試験)の各検査を実施した。それらの検査結果に異常が
認められなかったことから、再使用する。
[添付資料−10 別紙-1]
[添付資料−14]
なお、当該弁の復旧後、これまでの運転状態と同じ条件での運転が継続す
ることになるため、当該弁の疲労環境も変わることなく継続することとなる。
しかし、当該弁の疲労評価上有意となる弁の開閉回数(約15,000回)
を超えるには、約8時間半の低速回転領域での運転時間を経過しなければ、
疲労損傷に至る可能性は少ない。一年間の低速回転領域での運転時間は、過
去の運転経験から保守的に考えても1時間程度(繰り返し回数にして約2,
000回)であり、次回定期検査まで疲労き裂が発生する可能性は少ない。
(2) 当該弁の恒久対策
① 次回定期検査で、弁体のストッパーへの衝突による衝撃を緩和する目的
で、衝撃緩和機構付きの弁に交換する。また、メーカ推奨や先行プラン
トの保全実績を勘案し点検周期を定め、その最初の分解点検時に、弁体
ネジ部の非破壊検査を行い健全性を確認する。その結果や運転状況を踏
まえて、以降の点検周期および点検内容を見直していく。
② 次回定期検査で、RCICタービン低速回転時にサプレッションプール
内で生じる蒸気凝縮状態の変動を抑制し、当該弁の開閉回数を減らすた
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
13
め、蒸気凝縮性能に優れたスパージャに交換する。
[添付資料−15]
10.2 管理面
(1) 当該弁の点検計画に運転経験を踏まえた点検内容の見直しが反映されなか
ったことから、これまでも保全担当部門が入手した保全情報や運転情報に
基づき点検計画の見直しを行っているが、これに加えて品質マネジメント
システム規程で定められた技術検討の場である「工事等に係る技術検討会」
をより積極的に活用し、定期的に運転情報の報告や検討を行い、これらを
適切に点検計画に反映する。
10.3 水平展開
(1) 水平展開抽出フローにより抽出された逆止弁は、以下の点検を行う。
① 定期試験、運転切替操作などに合わせて開閉動作が繰り返されていない
ことを聴音確認する。開閉動作が繰り返されている場合は、速やかに分
解点検を実施する(疲労評価で適切な時期を定めても良い)。分解点検に
当たっては、疲労に着目した非破壊検査を追加して実施する。
② 開閉動作が繰り返されていない場合は、至近の定期検査で分解点検を行
う。分解点検に当たっては、疲労に着目した非破壊検査を追加して実施
する。
③ 当該弁と構造および使用状態が異なる蒸気系のスイング式逆止弁は、点
検計画に基づいた点検周期で分解点検を行う。また、分解点検に当たっ
ては、疲労に着目した非破壊検査を追加して実施する。
[添付資料−16]
以 上
秘密情報 目的外使用・複製・開示等禁止 2008.8. 日本原子力発電株式会社
14
添 付 資 料 目 次
1.
2.
3.
4.
5.
事象の経緯
原子炉隔離時冷却系系統図
機器配置図
RCICタービン排気ライン逆止弁(E51-F040)概要図
チャート類
・格納容器圧力
・主排気筒モニタ
・モニタリングポスト
・原子炉建屋エリアモニタ
6. 格納容器関連パラメータ
7. 格納容器圧力低下調査結果
・格納容器貫通部点検結果一覧表
・関連系統構成の確認
8. RCICタービン排気ライン逆止弁分解点検結果
9. RCICタービン排気ライン逆止弁の点検履歴及び点検周期の考え方
10. RCICタービン排気ライン逆止弁(E51-F040)の弁体脱落要因分析
・弁体及びアームの寸法測定
・材料調査(EDX分析)及び破面調査(SEM)
・ミルシート調査
・製造時記録
・設計不良による弁体ネジ部損傷の可能性について
・配管振動による弁体ネジ部損傷の可能性について
・疲労き裂発生の可能性について
・疲労き裂進展評価
・弁体シャフト部き裂発生、進展の検討について
・弁体シャフト付け根部の外観観察及び破面調査
・定期試験時・タービン起動時データ/逆止弁動作メカニズム
・第18回定期点検報告書(原子炉隔離時冷却系タービン排気弁点検工事)
・東海第二発電所 点検計画
・RCICタービン排気ライン逆止弁の繰り返し開閉動作による衝突推定回数
11. 事象発生のメカニズム
12. 脱落した部品の探索範囲と探索結果
13. 当該弁から脱落した部品の流出・滞留範囲と影響評価について
14. 現品対策内容について
15. 当該弁の恒久対策
16. RCICタービン排気ライン逆止弁の損傷に関する水平展開フロー
17. 用語説明
15
添付資料―1
事 象 の 経 緯
日 時
平成20年8月4日
9時22分∼13時19分
10時22分∼12時03分
12時25分∼12時46分
20時50分頃
21時10分∼22時20分
平成20年8月5日
0時20分∼5時30分
内 容
RCIC定期試験
RCIC起動
サプレッションプール水抜き
(2.8㎝ → −2.0㎝)
格納容器圧力が低下傾向であることを確認
圧力指示値 8月4日 0時 :3.4kPa
8月4日21時 :2.9kPa
定期試験で動作した機器の現場確認
RCICタービングランド廻り
RCICタービン排気ライン
RCICポンプ用真空ポンプ廻り
2時19分
7時11分∼18時16分
18時21分
18時31分∼19時55分
20時05分
格納容器に繋がる系統の貫通部(系統隔離を実施せ
ずにアクセス可能な部分)の現場確認
FPM隔離
格納容器窒素補給(2.5kPa→2.5kPa)※
O2アナライザ隔離
HPCS及びADS健全性確認試験
RCIC 運転上の制限外へ移行
(保安規定第74条)
20時08分∼8月6日11時17分
20時14分
格納容器窒素補給(2.5kPa→3.0kPa)
RCIC隔離(E51−F068「閉」)
平成20年8月6日
10時11分
10時47分
15時00分
20時00分頃∼22時30分頃
23時38分∼23時41分
O2アナライザ復旧
FPM復旧
格納容器圧力 約3.0kPa
E51−F040∼F068弁間漏えい試験
RCICポンプ起動(作業票)
平成20年8月7日
10時00分頃
12時00分頃
E51−F040開放作業開始
E51−F040弁体がアームから外れ脱落してい
ることを確認
17時00分
RCIC 運転上の制限を満足していないと判断
(保安規定第73条)
※格納容器内に窒素を補給したが圧力上昇は認められなかった。
16
添付資料-2
原子炉隔離時冷却系 系統図
F065
F066
AO
NO
HO 油圧作動弁
MO 電 動 弁
F022
NO
原子炉
圧力容器
AO 空気作動弁
F028
AO
NO 窒素作動弁
主蒸気管
給気ライン
MO
MO
F063
F064
排気ライン
RCICタービン
排気ライン隔離弁
(E51−F068)
F013
MO
F068
ドライウェル
MO
注入弁
F040
RCICタービン
排気ライン逆止弁
(E51−F040)
真空破壊弁
サプレッションプール
スパージャ
MO
F031
復水
貯蔵タンク
S/P 側入口弁
F010
MO
MO
MO
F012
F022
テスト弁
FI
CST 側入口弁
ポンプ
タービン
PI
HO
トリップ&スロットル弁
MO
MO
F059
F095
F045
MO
MO
太線は定期試験時の運転状態を示す
17
18
原子炉建屋地下2階(EL.-4.00)
原子炉建屋地下 1 階 (EL.2.00)
原子炉隔離時冷却系
タービン
原子炉隔離時冷却系
ポンプ/タービン室
タービン排気側配管
(原子炉建屋地下1階へ)
機器配置図
原子炉建屋地下1階(EL.2.00)
原子炉隔離時冷却系
タービン排気ライン
隔離弁(E51-F068)
タービン排気側配管
(原子炉建屋地下2階から)
原子炉隔離時冷却系
タービン排気ライン
逆止弁(E51-F040)
添付資料−3
19
弁座
約 600
(単位:mm)
約 540
計
計
番
圧
温
号
径
式
力
度
弁体
[材質]高温高圧用炭素鋼鋳鋼品(SCPH2)
約 333.4
ストッパー
弁箱
弁蓋
アーム
[材質]高温高圧用炭素鋼鋳鋼品(SCPH2)
弁
口
型
設
設
E51-F040
14B
スイング式逆止弁
10.6㎏/cm2
135℃
原子炉隔離時冷却系 タービン排気ライン逆止弁(E51-F040) 概要図
添付資料−4
添付資料−5−1(1/2)
格納容器圧力
赤:格納容器圧力(kPa)
青:窒素補給流量(m3/h[N])
サプレッションプール水抜き終了(12:46)
サプレッションプール水抜き開始(12:25)
RCIC停止(12:03)
時間の流れ
RCIC起動(定期試験)(10:22)
8月4日
20
添付資料−5−1(2/2)
格納容器圧力
格納容器窒素補給開始(7:11∼ )
赤:格納容器圧力(kPa)
青:窒素補給流量(m3/h[N])
時間の流れ
8月5日
8月4日
21
Fly UP