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屋根雪荷重の制御について
屋根雪荷重の制御について ○川上俊 一 ,伊 東敏幸,苫 米地 司 (北 海道 工業大 学 ) 1 他 (1991)で は直接水 を 氷結 させ る方法 で 測定 近年 ,積 雪 寒冷 地 に膜構造物 や ガ ラ スを用 い し,渡 辺他 (1993)で は フ レー ク状 の水 に水 を たア トリウム な どの大 規模構造 物 の建設 が本格 加 えて氷結 させ る方法 で 測定 して い る。 これ ら 化 され るに伴 い,屋 根上積雪荷 重 の評価方法 の の実験結 果 を比較す ると,凍 着方法 の違 い によ は じめに 確立 が 望 まれ て い る。建築物 の 屋根 上積雪 荷重 って 凍着 力 が大 き く異 な って い る。 このた め本 は,50年 ある いは 100年 に一度 降 り積 もる雪 の 研究 で は,凍 着方法 によ る違 いおよ び既 往 の研 最大積雪 深 が屋上 に積 もると して現 行 で は設計 究結 果 との比 較検討 を行 った 。凍着 力 は写真 1 1)。 しか し,現 実 と して は,屋 根葺 に示 す水平滑 雪装 置 を用 いて以下 に示す 2通 り されて い る 材 の特性 や内部空 間 を生 かすた めに屋根上 に雪 の 凍着方法 に よ る実験 を 行 った 。実験 に用 いた が積 もらな い状態 が望 ま しい。 そのため何 らか 試料概要 およ び実験 シ リーズを 表 1に 示す。 の方法 で屋 根 上積雪 を除去す る ことが必要 とな 1)屋 根葺材 上 で直接水 を氷結 させ る方法 屋根葺材上 で 直接水 を氷結 させ る方法 (凍 着 る。大 規模構 造物 で は,屋 根勾 配 を利用 して滑 雪 させた り,熱 エ ネ ルギ を与 えて融 雪 させた り 方法 A)は ,屋 根葺材 に塩 ビ管 (内 径 31mm,高 して 屋根 雪 を処理す ることが一 般的 である。 し さ30mm)を 設 置 し実験 温 度 に冷却 した後 ,所 定 か し, この場 合屋根葺材 と屋根 雪 との 界面 に働 の水 量 を入 れて 凍着 させ た。 凍着時 間 は -10℃ 2),滑 雪現象 は不 規則 で は 3時 間 , 5℃ で は 5時 間 ,-2℃ で は 8時 間 く凍着力 が大 きいために な発生 とな る。 このため ,滑 雪等 による屋 根 上 と した 。 雪荷重 の低減 が認 め られ な い現状 にあ る。 このよ うな背景 か ら本研究 で は,合 理的 な屋 根上積雪荷 重 の制御方法 を確立す る ことを 目的 に各種屋根葺 材 と雪氷体 との間 に働 く凍着性状 について検討 した。 2 実験方 法 凍着 力 に関 す る既往 の研究例 をみ ると,吉 田 表 試 料 機 要 お よ び実 験 シ リー ズ 凍 着方法 A 料 E D O 試 C 材料 l 写 真 1 水 平 滑 雪 装 置 の概 要 温度 (℃ 試 料概 要 種別 P 高分子 材料 PAC F 属料 機 料 金材 無 材 S Z 凍着 方 法 B -5 -2 -10 ) -2 エステ ル樹脂 光 沢 ) 着 色 亜 鉛 鉄 板 (「 リ ニ -5%ア パ ,ム 合 金 め っ き鋼 板 塗装 溶 融 亜鉛 着 色 亜 鉛 鉄 板 (フ ,素 樹 脂 ) ○ 〇 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ t*^irv1ffi&. ○ ○ ○ 〇 ○ 〇 〇 ○ ○ ○ ○ ○ 〇 ○ ○ ○ 〇 ○ ○ ○ ○ ○ 冷 間 圧 延 ステンレス鋼 板 亜鉛 合 金 板 ‐ ス フロ ト 板力 ラ ス 磨 き板 カ ラ ○ ○ -58- ○ ○ 2)屋 根葺材 上で氷 フロック を凍着 させ る方法 ・ 屋根葺材上 で氷 フ ロック を凍着 させ る方法 (凍 着方法 B)は ,1)と 同様 の塩 ビ管内 に予 め氷 を 1。 ミ コ1。 ック を凍 作成 し,屋 根 葺材上 を水 で 濡 らし氷 フロ 写 it毒「 Ъ 『 司電マ │::彗 醤 百 せ〔 冒ぁピ : SI。 に 2通 りの方 法 によ って 凍着 させた後 に10mm/m !o inの 速度 で荷 重 を加 え剥離 させた。 この剥 離 し た時 の荷重 を 付着面積で除 した値を凍着 力 f/r)と 3 (kg 高 分 子 材 料 :P l O:凍 著 方 法 A した 。 ● :凍 着 方 法 B 温度 (℃ 実験結果 を示す。図 の よ うに,い ず れの 凍着方法 におい て も温度 の増加 に伴 い凍着力 は減少 す る傾 向 を 示す。凍着方法 による差 異 をみ ると,い づれの 温度条件 にお いて も凍着方法 Aの 方 が 凍着 方法 Bよ り も大 きな値 を 示 す。 ここで ,両 者 の比 (A/3)を み る と, -10℃ で 38, -5℃ で 166, -2℃ で 108と な り,-5℃ で は -10℃ の 4倍 以上 図 1 凍 着 力 と 実 験 温 度 との 関係 ︵■ヽ ど ︶ 尺 囀 焉 図 1に 高分子材料 P(着 色亜鉛鉄 板 :ポ リエ ス テ ル樹脂光沢 )の 凍着 力 と実験 温度 との 関係 ) の バ ラツキが み られ る。 金 属材料 :S 次 に,金 属材料 S(冷 間圧延 ステ ンレス鋼板 ) の凍着 力 と実験温度 との 関係 を 図 2に 示す。図 O:凍 着方法 A ● :凍 着方 法 B -2 のよ うに,い づれの 凍着 方法 において も温 度 の 0 (℃ 温度 増加 に伴 い凍着力 は減少 す る傾 向 を 示す。凍着 方法 によ る差 異 をみ ると,い づれの温度条件 に 図 2凛 ) 着 力 と実 験 温 度 と の 関 係 おいて も凍着方法 Aの 方 が 凍着方法 Bよ り も大 ^,0 きな値 を示す 。両者 の比 (A/3)を み ると, 一 ‐ E で 14と な り ピ 10 両者 の差 は温 度 の上昇 に伴 い緩 やか に減少 す る。 同様 に,無 機材料 FG(フ ロー ト板 ガ ラ ス) 10℃ で 33, -5℃ で 20, -2℃ , の 凍着 力 と実験温度 との関係 を 図 3に 示す。図 のよ うに,凍 着 力 の減少 や 凍着方法 による差異 縣 │。 ' 者 102 は,前 述 の材料 と同様 な傾 向を示す。 しか し 無 機材 料 :FG , -5℃ ,-2℃ において 雪氷 体 は,最 大 荷重 に達 し O:凍 着方 法 A た後 に直 ちに剥 離 せ ず ,滑 るよ うに荷重が低下 す るのが 確認 された。 これ は,表 面 が非常 に平 滑 なガ ラ ス表面 にお いて は,雪 氷体 との界面 に 大 きな力 であ る粘性作用 が生 したため と考 える。 両者 の比 (A/3)を み る と, -10℃ で 73, 5 ℃で 252, 2℃ で 17と な り, 5℃ で は -10℃ -59- ● :凍 着 方 法 B ―!2 -10 -8 -6 -4 -2 0 温度 図 3凍 着 力 と実 験 温 度 と の 関 係 (℃ ) 次 に,無 機 材 料 ︵■ヽ ゴ ︶ 代 榊 送 の 3倍 以 上 の パ ラ ツキが み られ る。 FGに お け る既 往 の 研究 結 果 と本 研 究 の結 果 を 合 わ せ て 図 4に 示 す 。吉 田他 に よ る実 験 結 果 と凍着 方 法 Aは , どち ら も温 度 の 増 加 に 伴 い 凍 着 力 が 減 少 し, 2℃ で は急 激 に 低 下 して い る。 これ に対 して 渡 辺 他 に よ る実験 結 果 と凍 着 方 法 Bは ,ど ち ら も温度 の 増 加 に伴 い 緩 や か に減 少 す る傾 向 が あ る。 この よ うに凍 フ ロ ー ト板 ガ ラ ス る A る B タ タ カ 一カ 一 着 デ着 デ 凍 の凍 の る。 そ の た め 現 実 に発 生 す る屋 根 雪 の 凍着 現象 を 的確 に把 握 し,そ れ に応 した 凍着 方 法 に よ る よ法 よ 法 に方 に方 田 着辺 着 吉 凍渡 凍 〇 ●△ ▲ 着 力 は ,凍 着 方 法 に よ って大 き く異 な る と い え :FC 温度 (℃ 凍 着 力 を 測定 す る必 要 が あ る と考 え る。 4 図 4凍 着 力 と実験 温 度 との 関係 屋 根 上 積 雪 荷 重 の制 御 につ いて 勾 配 屋 根 に お け る屋根 雪 の滑 走運 動 は,屋 根 雪 の位 置 エ ネ ル ギ に よ る 滑走 力 が 滑 走 抵抗 力 を 超 え る と きに開 始 す る。 この運 動 は ,雪 氷 の界 面 状 態 に大 き く左 右 され る。 そ の た め 屋根 雪 を 滑 雪 させ るた め に は ,屋 根雪 に 作 用 す る諸 力 を 把 握 す る必 要 が あ る。 図 5に 示 す 滑 雪 時 に働 く力学 的要 因 を基 に滑 雪 開 始 条 件 を 検 討 す る と次式 とな る。 M :薇 雪諄■ 0:岸 IR勾 配の角度 抵littt Fa:凛 青カ Fcttt"【 │た カ F kf:゛ 鷹 傍工│た 力 FI:「 3`雷 との弓B長 破晰力 F sf:1'''I事 Msinθ >Fa + M・ μ s・ cOs θ+ Ft 図 ここで ガ ラ スの諸抵抗力 は,Fa:426∼ 50426kgf /m2(2∼ -10℃ ),μ s:0235(0℃ の場合 ),Ft i約 0 2kgf/cm2密 度 (02g/cn`)と な る。 5屋 根 雪 の 滑雪 時 に働 く力 学 的要 因 。 1° 。9 実験 で 得 られた よ うに,凍 着 力は他 の滑雪抵 抗力 に比 べ て 極 めて 大 きな値 で あ る ことか ら トリ , 滑雪運動 は凍着力 に支配 され る と考 え る。 その ため屋根雪 を 滑雪 させて 荷重制 御す るには,凍 着力 を 低減す る必 要 があ る。凍着力 は凍着 方法 によ って 異 な ることが ,実 験結 果か ら確認 され て い るた め,凍 着力 を低減す るには屋根雪 の凍 着過程 を 明 らか に しなければな らな い。 図 6に 降雪 時 に発生す る屋根 雪 の 凍着過 程 の 例 を示す。図 の よ うに屋根雪 は,連 続 的に降雪 が繰 り返 され ると屋根面上 に積雪 され る。積雪 した屋根雪 は,外 気温 ,小 屋裏温度 ,お よび 日 射量 な どの外 的要因 の影響 を受 けて屋 根葺材界 内 惑 か ら の魯 屋根面 面 に融解 が生 じる。 この 融解 水 が外 気温 の 低下 -60- 図 6降 雪 時 の 屋 根 雪 の凛着 過 程 ) によ り氷結 して 屋根雪 を 凍着 させ る。 この過程 で 凍着 した屋 根雪 の滑雪 を考 えてみ ると,熱 工 ネ ル ギを供給 す る ことによ り,凍 着 力 を低減す ることが可 能 とな り,屋 根勾配 によ る重 力滑雪 を容易 にす る ことが 可能 で ある。 この場合 ,氷 結時 の積雪重量 によ って 凍着力 が変 化す ること が 既往 の研究 つ で 指摘 されて い ることか ら,積 雪重量 による影響 も考 慮 しなければな らな い。 この 凍着 力 の特性 を 明 らか にす るた めには,屋 根葺材表面 に伝 わ る熱伝導性 や 供給 エ ネル ギ量 = : = ■人餞 =Ⅸ “`● 1月 1月 図 , 7 2月 3月 `月 崎● (B〕 ヒ過 程 札 幌 市 に お け る地 上 積 雪 深 の変 イ 外気温 による界面 の温度 変化 な どの屋根葺材 の 凍着性状 を 明確 に しなけれ ばな らな い。 これ ら ζ の ことによ り,凍 着力 の低減 が 意図的 に抑制 さ・ れ ると許容積 雪重量 の範 囲 で滑雪 が 促 され ,設 : ・ 計用屋根上雪 荷重 の低減 を見込 む ことがで きる。 以上 の ことを 考慮 して屋根上雪荷重 を制御す る と以下 の ことが い え る。 ` ガ 札幌市 にお け る積雪深 の変化過程 (積 雪深極 値年第 4位 ,1977121∼ 1978430)を 図 7に 示す。図 のよ うに 3回 に渡 って 1日 30cmを 超 え 1月 ヽ 2月 3月 4月 ■ ra(3) 図 8屋 根 雪 の 積 雪 重量 の 変 化過 程 る積雪 が あ り, 2月 3日 には最大積 雪深 の 125 c口 に達 して い る。 ここで ,図 7に 示 した積雪深 がそのまま屋 根 に積 も った と考 え ると積雪重量 の変化過程 は 図 8と な る。 この積雪状態 を用 い て積雪重量 を 100kg/■ 2で 制御す ると仮定 した場 合図 9と なる。 図 の よ うに制御 荷重 に達 した ら 速 やか に滑雪 させ ,常 に制御荷重以上 に堆 積 さ せない ことに よ り,積 雪 重量 は最大 で も100kg/ m2に 留 ま り,豪 雪時 な どの積雪深 の急増 に対 応 が可 能 とな る。 図 9屋 根雪荷■の制御 この様 に雪 荷重 の制御方 策 を確立 させる こと ため には,屋 根雪 と屋 根葺材 との凍着性状 およ 減 され,建 築物 の耐久性 ,経 済性 が 向上 され る び熱供給 によ る凍着力 の低減状況 を 明 らか に し なければな らな い 。 これ らの条件 を建 物管 理者 と考 え る。 が常 に把握 し,屋 根雪 を 計画的 に制御す ること によ って 屋根 上 雪荷 重 の低減 が 可能 にな る。 5 ま とめ 今後 は,屋 根雪 の凍着過程 お よび供給 エ ネル 本研究 によ り,屋 根雪荷重 を制御す る上 で最 によ り,凍 着 力 および設 計用屋根上雪荷重 が低 も大 きい抵抗 力 で あ る凍着力 について実験 を行 った結 果 ,以 下 の ことが 明 らか とな った 。凍着 ギ量 につ いて 算 出 ,検 討 が 必要 と考 え る。 力 は,雪 氷体 の凍着方法 によって異 な る。屋根 雪 の滑雪 は,凍 着 力 を軽 減す る ことによ って促 進 させ ることが可 能 であ る。凍着力 を軽減す る -61- 1参 考文献 】 同解説 pp 109 1,│ 司他 :各 種屋根■材 と屋根雪 との凛■性状 につ いて 日本雪工学会大会論文報告集 pp ll,1221,"1 3)清 水 増次郎 :氷 点下 にお ける雪 の日根材 へ の付 ■ 日本雪氷学会 を 3■ ,,25'2'Sl"2, 1)日 本建築学会 :建 築物●菫指針 2)苫 米地 =“ ,