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自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解

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自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
―面白さの評価に焦点を当てて―
李 熙 馥* 楳 本 泰 亮** 滝 吉 美知香*** 横 田 晋 務**** 永 瀬 開**** 松 﨑 泰**** 菅 原 愛 理***** 田 中 真 理******
要約
本研究は,McGhee(1979)の不適合性ユーモア発達段階に基づいたユーモア課題を用いて,自閉
症スペクトラム障害(ASD)者がどのようなユーモア課題に面白さを感じ,どのような事象に注目
し,面白さを評価するのかについて,典型発達(TD)者と比較検討を行った。結果,非言語的な要素
に概念的不適合が含まれるユーモア課題において,ASD 者の方が TD 者より多く面白いと回答し
た。ASD 者は TD 者とは異なるユニークな概念的不適合さに注目し,面白さを評価していること,
演者の表情や動き,音などが伴う具体的な状況において面白さを感じやすいこと,TD 者が内容と
ともに作り手の意図や演者の演じ方などを総合的に評価していた反面,ASD 者は内容のみに注目
する傾向があること,さらに ASD 者は社会的に望ましくない物事を言葉に表出したことに面白さ
を感じていることが考えられた。
キーワード:自閉症スペクトラム障害 ユーモア 理解 ユーモア発達段階 評価
Ⅰ.問題と目的
近年,ユーモアやその身体表出である笑いは,免疫力の向上(吉野,2003)やネガティブな感情か
らの解放(上野,2003)など,医学分野や心理学分野において,その効果が注目を集めている。学校
教育現場においても,教師と子ども間での新たなコミュニケーションの手段として,ユーモアを授
業に取り入れ,お互いの心理的距離を縮めようとする試み(矢島,2011)もなされつつある。Martin
教育学研究科 博士研究員
株式会社 KDDI
***
岩手大学教育学部 准教授
****
教育学研究科 博士課程後期
*****
教育学研究科 博士課程前期
******
教育学研究科 教授
*
**
― ―
165
自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
(2007)は,笑いやユーモアの心理学的機能を,以下の 3 つに分類している。1 つ目は,ユーモアを通
して感じる愉悦のポジティブな感情は,認知的・社会的な側面における能力を増大させる働きがあ
る点である。例えば,ネガティブな感情を経験している場合と比べて,ポジティブな感情を経験し
ている人の認知は,より柔軟になり,創造的な問題解決ができるようになることや,援助や寛大さ
といったより高次なレベルの向社会的行動が生じるようになるという。2 つ目は,ユーモアに伴う
ポジティブな感情は,不安,抑うつ,怒りなどのネガティブな感情と置き換わり,精神的健康に貢献
する重要な役割がある点である。人生におけるストレスや逆境をユーモアを通して再評価すること
ができるのである。これらの 2 つの心理学的機能は,ユーモアによるポジティブな感情を感じる個
人内におけるメリットであるといえる。それに対し,次に示す 3 つ目のユーモアの心理学的機能は,
個人内に留まらず,他者との関係におけるメリットである。Martin(2007)は,3 つ目の機能として,
対人コミュニケーションを促進する手段の一つとして,ユーモアが他者に様々なメッセージを伝え
るために用いられる役割について述べている。例えば,ユーモアを使用することで,相手から笑顔
を引き出し,好意を得ることができる効果があることや,真面目に伝えるよりユーモアを交えるこ
とで自分の意図をより受け入れられやすくすることである。筆者らは,この 3 つ目の対人コミュニ
ケーションを促進する手段として,他者との関係を築き,円滑に維持するための役割を果たすユー
モアに注目したい。
上述した 3 つ目のユーモアの機能に注目すると,ユーモアが対人関係支援において有効であるこ
とが示唆される。対人関係を構築し,維持する能力は,社会的相互作用における質的障害を有する
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder,以下 ASD)
(APA,2013)者 1 において重要
な課題である。上述したように,ユーモアが対人コミュニケーションの様式の一つであり,他者と
の関係をより円滑にする役割があるのであれば,ASD 者の社会的相互作用における質的障害に関
する特性や支援を考えるうえで新たな視点に成り得ると考えられる。
本研究では,ユーモアを「滑稽な,あるいは馬鹿げた不適合な考えや事象や状況を発見し,面白い
と思う心的経験」
(McGhee,
1979)
と定義する。McGhee(1979)は,この定義に基づき,不適合性ユー
モアを感じる発達段階を明らかにしている。第 1 段階は,対象に対する不適合行為である。物など
の対象との遊びの文脈においてユーモアを初めて経験する段階であり,生後 2 歳頃からみられる。
例えば,木の葉を受話器のように耳にあて,話しかけるふりをすることに面白さを感じる段階であ
り,ふり遊びとも関連している。第 2 段階は,対象および事象の不適合なラベル付けである。就学
前までの子どもにおいてみられるユーモアであり,対象や事象に正しくない名称をつけて楽しむも
のである。例えば,
犬を猫だとラベル付けをして楽しむ行為が,これに当たる。この段階の子どもは,
言語表現だけで不適合性を作り出し,笑いを引き起こす特徴があり,子どもの言語や抽象能力の発
達が大きく関連する。第 3 段階は,概念的不適合であり,ある概念のどれか一つまたはそれ以上の
側面が歪曲される時に生じるユーモアである。例えば,自転車の車輪が丸ではなく四角である絵を
見たときや,男の子に対して「君は女の子でしょ」と言うことにユーモアを感じる。最後の第 4 段階
は,意味の多重性であり,言葉の両義性による面白さを感じる段階である。例えば,「猿が去る」の
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ように,「さ・る」という同音の言葉の中に「猿」と「去る」の異なる意味を表す言葉が存在するとい
う理解に基づいて面白さを感じる。7 歳以降から言葉の両義性を検出できるようになると,この段
階のユーモアを感じるようになり,成人期まで持続される。
ASD 者を対象としたユーモアに関する研究は,1990 年後半からみられはじめ,PsycINFO デー
タ ベ ー ス に よ る と,わ ず か 22 件 で あ る( キ ー ワ ー ド:Pervasive Developmental Disorder/or/
Autism/or/Aspergers syndrome/and/Humor)
。そのうち,McGhee(1979)の不適合性ユーモア
発達段階と関連した ASD 者のユーモア特性について検討した先行研究について概観すると,ASD
者は主に第 3 段階である概念的不適合と第 4 段階の意味の多重性に関連するユーモアを楽しむこと
が指摘されている。Van Bourgondien and Mesibov(1987)は,SST グループに参加している高機
能自閉性障害者 9 名(CA18 ~ 37,FIQ71 〜 101,VIQ73 〜 107)を対象に,ジョークタイムにおい
てみられたジョークを,McGhee(1979)の不適合性ユーモア発達段階に基づいて分類した。その
結果,第 3 段階である概念的不適合のジョークが一番多くみられ,続いて第 4 段階である意味の多重
性のユーモアも表出されたことを明らかにした。James and Tager-Flusberg(2001)においても,
自閉症児(CA3:4 ~ 7:7,IQ61 ~ 108)6 名とダウン症候群児(CA3:3 ~ 6:9,IQ46 ~ 65)6 名の
日常会話においてみられたユーモア表出について検討した結果,第3段階である概念的不適合のユー
モアが多くみられた。これらの先行研究では,
およそ3歳から37歳までの ASD 者を対象としており,
上記の結果からすると,ASD 者は発達段階にかかわらず,概念的不適合のユーモアを楽しむこと
が示唆される。その他にも,ASD 者は典型発達者(以下,TD 者)と比べて,あるストーリーにおい
てユーモアのある結末を選ぶより,ストーリーの流れに合う正しくてまっすぐな結論を選ぶことが
多いこと(Emerich, Creaghead, Grether, Murray, & Grasha,2003)や,ダジャレやジョークの表出
において新表現を好むこと(Werth, Perkins, & Boucher,2001)が報告されている。これらの結果
から,ASD 者は TD 者とは異なる,ユーモアを感じるユニークな,いわゆる「ツボ」があることが
考えられる。
しかし,これらの先行研究に対し,以下の 2 点の問題点が指摘できる。1 つ目は,以上の先行研究
は欧米における知見であり,ユーモアは文化的な背景が与える影響が大きいことから,本邦におけ
る ASD 者のユーモア特性に関する知見を蓄積していく必要がある。2 つ目は,ASD 者はどのよう
にユーモアを理解し(ユーモア理解)
,面白いと感じるのかについてより詳細な検討が必要である点
があげられる。Van Bourgondien and Mesibov(1987)や James and Tager-Flusberg(2001)の先
行研究は,自発的に出されたユーモアに関連する発言を,McGhee(1979)の不適合性ユーモア発達
段階に沿って分類し,第 3 段階の概念的不適合によるユーモアを好むと結論づけている。概念的不
適合によるユーモアは,およそ 3 歳から就学前の子どもが主に楽しむものであり,他のユーモア発
達段階に比べて,長い間楽しまれるものである。McGhee(1979)の説明によると,第 2 段階の対象
への不適切なラベリングから移行する初期の第 3 段階では,自転車の車輪が丸ではなく四角である,
という対象の外観のような非言語的な要素に対する不適合さに面白さを感じる。そして第 4 段階の
意味の多重性によるユーモア段階に移行する直前の第 3 段階では,男の子に対して「君は女の子だ」
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自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
のように,言語的なやりとりに含まれる不適合さにもユーモアを感じるようになる。つまり,第 3
段階では他の段階より,非言語的な要素から言語的なやりとりまで多様な内容や事象によるユーモ
アが楽しまれることが考えられる。しかし,今までの先行研究では ASD 者が概念的不適合による
ユーモアを楽しむことは指摘されていても,特にどのような概念的不適合によるユーモアに面白さ
を感じるのか,さらには,なぜそこに面白さを感じるのかに関しては明らかにされていない。また,
Van Bourgodien and Mesibov(1987)では,第 4 段階の意味の多重性によるユーモアも ASD 者が楽
しむと指摘されながらも,なぜ面白さを感じるのかに関する評価はされていない。ASD 者が楽し
むとされる,
概念的不適合によるユーモアをより詳細に分類するとともに,意味の多重性によるユー
モアについても,なぜ面白かったのかに関するユーモア評価から分析することを通して,ASD 者
のユーモア理解に関する新たな知見を蓄積することができると考えられる。
以上の問題意識のもと,本研究では,McGhee(1979)の不適合性ユーモア発達段階のうち,第 3
段階の概念的不適合によるユーモアと,第 4 段階の意味の多重性によるユーモアに基づいた課題を
用いて,ASD 者がユーモアをどのように理解し(ユーモア理解),楽しむのかについて,どこが面
白かったのか,なぜ面白かったのかの理由(ユーモア評価)をとらえることを通して検討する。概念
的不適合によるユーモアは,上述したように非言語的な要素から言語的なやりとりまで,不適合さ
を感じる内容や事象が多様であることから,本研究では概念的不適合によるユーモア課題を,第 3
段階の初期にみられる演者の表情やリズミカルな動きなどの非言語的な要素に不適合さが含まれる
課題と,第 3 段階の後期にみられる言語的やりとりの中から概念的不適合さが見出される課題に分
類して用いる。第 4 段階の意味の多重性によるユーモアは,同音異義の言葉のやりとりの中から生
じるものに関する課題を用いる。これらのユーモア課題は,ASD 者における想像力の弱さ(Wing,
1996)
の特性を配慮し,ある状況を想像する認知的負荷を軽減し,より楽しむことができる動画課題
を用いる。
本研究において用いるユーモアの定義からすると,不適合性ユーモア課題において,面白さを感
じるためには,不適合に関する理解が前提になると考えられる。つまり,不適合に関する理解と不
適合性ユーモア課題における面白さの有無とは関連があると考えられる。したがって,本研究では
ASD 者の不適合に関する理解と,ユーモア課題における面白さの有無や評価との関連について検
討を行うこととする。
本研究の仮説は,
以下の2つである。1つ目は,
ASD 者は TD 者と比べて,概念的不適合によるユー
モア課題により面白さを感じるであろう。2 つ目は,ASD 者と TD 者において不適合に関する理解
ができる者は,ユーモア課題においてより面白さを感じるであろう。
Ⅱ.方法
1.対象:中学 1 年~中学 3 年の ASD 者(IQ76-110)13 名と,中学 1 年・2 年の TD 者 20 名,計 33 名で
ある。そのうち,意味の多重性によるユーモア課題においては,データに欠損があったため,TD
者 1 名を分析対象から除外した。ASD 者は発達相談機関を通して募集を行い,TD 者は S 市の中学
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校を通して研究協力の募集を行った。ASD 者と TD 者の募集にあたり,保護者に研究の目的や方
法について口頭および文章にて説明を行い,協力の同意を得た。対象者本人にも研究の方法につい
て説明をし,協力の同意を得た。なお,研究結果は個人が特定されない形で統計処理されることに
ついて保護者に伝え,対象者には途中でやめても不利益は生じないことを事前に伝えた。
2.課題
1)
不適合に関する理解:田中ビネー知能検査Ⅴの課題のうち,13歳級である話の不合理課題(以下,
不合理課題)
を実施した。
2)
ユーモア課題
①非言語的な要素に不適合さが含まれる概念的不適合によるユーモア課題(以下,非言語的不適
合ユーモア課題)
:演者の表情や声,リズミカルな動きなどを伴い,演者(演者 2)がある役に成りきっ
て演じながら(例えば,おばあちゃん役になるなど)
,概念が歪曲された発言を行うことで,非言語
的な要素から不適合さが感じられるものであり,かつ日常的によくユーモアとして用いられる内容
をネタとした課題である(2 分 17 秒)
(Table 1)
。
Table 1 非言語的不適合ユーモア課題の内容
ネタ
演者
演者 1
1
2
3
演者 2
そんなわけないだろ!
演者 1
うちのお母ちゃんばかり,蚊に刺されると
演者 2
「おばあちゃんの血がおいしいんだよ!」
演者 1
そんなわけないだろ!
演者 1
宝くじで 3 億円当たった人がテレビに出てくると
演者 2
演者 1
演者 2
演者 1
演者 1
5
演者 2
演者 1
6
演者 1
演者 2
演者 1
7
田舎から出てきたお袋を原宿につれていくと
「やだ~スカウトされたらどうしよう~」
演者 1
演者 1
4
内 容
演者 2
演者 1
「俺に 100 万くれないかな」
そんなわけないだろ!
真っ黒に日焼けした人に夜中に会うと
「黒すぎて見えなかった」
そんなわけないだろ!
テストで 100 点とってお父さんに見せると
「明日雪降るな~」
そんなわけないだろ!
いつまでもご飯をくちゃくちゃしていると
「口の中でうんちになるわよ!」
ジャージを夏場に衣替えしたら
「どうせ長いの切っただけでしょ!」
そんなわけないだろ!
②言語的やりとりの中に不適合さが含まれる概念的不適合によるユーモア課題(以下,言語的不
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自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
適合ユーモア課題)
:演者同士のやりとりの中に概念が歪曲された発言や場面設定が行われた課題
である(8 分 3 秒)
。演者 1 名のみが登場し,他は声だけが流れる(Table 2)。
Table 2 言語的不適合ユーモア課題の内容
ネタ
1
演者
演者 3
内 容
(飛行機という設定で)
「飛行機に乗るのは久しぶりだな」
声
「JOS 航空,事故多いけど心配するな航空のご利用ありがとうございます」
2
声
「当機は成田空港発,ホノルル行きだと思います」
3
声
機長の電話が鳴り,恋人との話がそのまま流れる。機長,「すみませんでした」と謝る
4
声
一旦切った機長の電話が再び鳴る
5
声
機長の電話でのやりとり「ハワイいかなあかんねんて」
6
声
機長の電話でのやりとり「ハンバーグ食べてんの?」
7
声
機長の電話でのやりとり「一緒に食べるの無理」
8
声
機長の電話でのやりとり「好き,ちゅーき!!」
9
声
電話を切った機長,「ビックリドンキー行き出発いたします」
10
声
機内放送「お降りの際は,ブザーでお知らせください」
11
声
非常用設備に関する案内,肥満体の男性のシートベルトが締まらない
12
声
シートベルトがライオンのバックルである
13
声
救命胴衣がアザラシの浮き輪である
14
声
演者が浮き輪を着用する
15
声
酸素マスクの代わりに「頑張れ」という垂れ幕が出てくる
16
声
飛行中,突然「墜落が考えられます!」
17
声
エアバックの代わりにチューインガムが出てくる
18
声
機内放送「墜落までデンデン太鼓を楽しんでください」
19
声
<ピンポン>とブザーが鳴り,「次,とまります」と放送される
20
演者 3
演者が新聞を読み,「シャズナあらへん」
21
声
機長がハイジャックをするいたずらをする
22
声
機長,「すいませんでした」
23
声
機長,「ただいま富士山を飛んでいます」
24
声
機長,「悲しいお知らせがあります,燃料が底をつきました」
25
声
機長,「アラブの石油王はいませんか」
26
声
機内放送「みなさん,ご心配ください」
27
声
演者,救命胴衣の代わりにアザラシを着用する
28
声
演者が助けを求めると,「うるさい」という垂れ幕が下りる
29
声
機長,「またやってしまいました。墜落します」
30
声
一瞬暗くなり,「ビックリドンキー到着しました」
③意味の多重性によるユーモア課題:ある言葉を同音異義の別な言葉に解釈する状況をネタとし
た課題である(11 分 11 秒)
。演者 2 名がパソコンのメールでやりとりする状況を再現した内容であ
る(Table 3)
。
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
Table 3 意味の多重性によるユーモア課題の内容
ネタ
1
演者
内 容
演者 4
演者 5 にメールを送る(以下,同様)
「渡辺さんの企画書,最高でしたよ。今度かんそうき
かしてください(感想聞かしてください)」
演者 5
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
演者 4 からのメールが届く(以下,同様)
「(略)今度乾燥機貸してください」
演者 5
「休みの日は何してるんですか」
演者 4
「ぱんつくったりしてます(パン作ったりしてます)」
演者 5
「パンツ食ったりしてます」と届く
演者 4
「今度みにきてください(今度見に来てください)」
演者 5
「今度ミニ着てください」と届く
演者 4
「てぶらでかまいません(手ぶらでかまいません)
演者 5
「手ブラでかまいません」と届く
演者 4
「またおあいしましょう(またお会いしましょう)」
演者 5
「股を愛しましょう」と届く
演者 5
「ペットを飼おうと思いますが,何か飼ってますか?」
演者 4
「いぬかってました(犬飼ってました)」
演者 5
「犬狩ってました」と届く
演者 4
「今はねこかいたいです(猫飼いたいです)」
演者 5
「今は猫解体です」と届く
演者 4
「ペットはやめたほうがいいですよ。しんでしまったら ・・・(死んでしまったら ・・・)
演者 5
「(略)新弟子待ったら ・・・」と届く
演者 5
「引っ越した部屋が誰かに覗かれているといってましたが,大丈夫ですか?
演者 4
「きのせいでした(気のせいでした)」
演者 5
「木の精でした」と届く
演者 4
「死んだ親父のいえいでした(遺影でした)」
演者 5
「死んだ親父のイエイでした」と届く
演者 4
「お金に困ってるんでゴルフクラブ買いませんか?」
演者 4
「今月だいぶつかっちゃったんで ・・(大分使っちゃったんで ・・・)」
演者 5
「大仏買っちゃったんで ・・・」と届く
演者 4
「いまならまにあいます(今なら間に合います)」
演者 5
「今奈良マニアいます」と届く
演者 5
(今までの受信者が送信者となり)
「いいたいことはなんですか(言いたいことはなんですか)
演者 4
(今までの送信者が受信者となり)
「いい太鼓とはなんですか」と届き,驚く。
3.手続き
1)不合理課題の実施
①教示:
「これから,あるお話をします。そのお話の中には,変なところがあります。どこが,ど
うして変なのか後で言ってください」
②課題文の提示:
「ある会社で,会議が予定の時間よりずっと遅れて始まりましたが,会議の終わ
りは,やはり夕方にしたいと思って,集まった人たちが時計の針をもどしておきました」
③再教示:
「今のお話の中には,変なところがありましたね。どこが,どうして変なのか言ってく
ださい」
― ―
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自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
2)
ユーモア課題の視聴
3)各課題に関する質問:各課題視聴の後,以下の 2 点について質問した。
①面白さの有無:
「面白かったですか?面白くなかったですか?」と質問した。
②面白さの有無に関する理由(評価)
:
「どういうところがどうして面白かったですか?」あるいは
「どういうところがどうして面白くなかったですか?」と質問した。
4.記録
対象児の様子を,ビデオカメラ 2 台(対象児の表情撮影用,全身撮影用)を用いて撮影し,記録した。
また,各課題の面白さの有無に関する理由回答を,逐語で記録した。
5.分析
1)不合理課題:物理的な不可能さについて言及した回答(例:
「時計の針をどのように操作しても
現実の時間を左右することができない」
)を通過とし,通過の有無について分類した。不合理課題に
おける通過の有無と障害の有無との関連を検討するため,χ 2 検定を用いた。
2)ユーモア課題:3 つのユーモア課題ごとに,面白さの有無と障害の有無との関連を検討するた
めに,χ 2 検定及びフィッシャー直接法による分析を行った。各課題における面白さの有無に関す
る理由に関しては,カテゴリー分類を行った。各カテゴリーに関する言及の有無を示す言及数(例:
「テストのネタが自分にもあるなと思った。自分も言われたことがある」の回答を 1 言及とした)を
求めた。
また,各課題のネタごとにおける面白さの有無に関する理由に関しても,言及数から分類を行い,
どのネタにより注目しているのかについて分析を行った。
Ⅲ.結果
1.不合理課題
田中ビネー知能検査Ⅴによる 13 歳級課題において,TD 者は 12 名が通過した一方,ASD 者は 3
名のみ通過した(Table 4)
。課題通過有無と障害の有無との関連を検討した結果,有意な関連が認
められた(χ 2 ⑴ =4.33, p<.05)
。
2.ユーモア課題
1)非言語的不適合ユーモア課題
⑴面白さの有無と障害の有無との関連:Table 4 に示すように,ASD 者の方が TD 者より,面白
いと回答した者が多かった(p = .0.09,p<.01)
。
⑵面白さの有無と不合理課題の通過有無との関連:Table 4 に示すように,非言語的不適合ユーモ
ア課題における面白さの有無と不合理課題の通過有無との関連を検討した結果,両群において有意
な差はみられなかった(TD p=.67, n.s.;ASD p=1.0 n.s.)。
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
Table 4 非言語的不適合ユーモア課題における面白さの有無と
障害の有無との関連及び不合理課題との関連
対象
ASD 者
TD 者
面白さ
不合理課題
有
通過
3名
3名
不通過
10 名
9名
通過
12 名*
6名
不通過
8名
3名
無
12 名**
9名
0名
1名
6名
5名
1名
11 名
注)* p<. 05 ** p<. 01
⑶面白さの有無に関する理由:面白さの有無に関する理由回答は,Table 5 に示すように,6 つの
カテゴリーに分類された。A. 演者の表情や体の動き,声に注目した評価,B. 自分にも同じ経験が
あるという共感,C. 演者などに対する対象者の嗜好性,D. 演者同士のやりとりに注目した相互性,
E. ネタである内容の発想や組み立てに注目した評価,F. 現実的にあり得ないという概念的不適合,
G. その他,に分類された。
ASD 者は TD 者に比べて,F. 概念的不適合により多く注目し,面白さを評価していた。具体的
な内容をみると(Table 5)
,ネタである発言が比喩的な表現にもかかわらず,その発言がそもそも
現実的にあり得ないことであるという評価をしていた。一方,TD 者は,B. 共感や,E. 発想・組み
立てに ASD 者に比べて多く注目し,面白さを評価していた。B. 共感的な評価を行った TD 者は,
すべて不合理課題を通過した者であった。E. 発想・組み立てに注目した TD 者の中でも,不合理課
題を通過した者がより多かった。また,
ASD 者のうち,調査者の「どこが面白かった?なぜそう思っ
た?」という質問に対し,課題の内容を思い出し,ネタをそのままマネしながら笑う行動が,3 名に
おいてみられた。TD 者の G. その他に関する内容としては,演者に対する評価(「前は面白かったけ
ど,腕が落ちた」
)
がみられた。
さらに,ネタごとにおける面白さの評価について分類した結果,TD 者に比べて ASD 者は,
Table 6 に示す 5 のネタ「テストで 100 点とったら,明日雪降るな」や 6 のネタ「ご飯をいつまでも食
べていたら,口の中でうんちになる」
に注目し,面白さの評価をしていることが示された。
2)言語的不適合ユーモア課題
⑴面白さの有無と障害の有無との関連:面白さの有無と障害の有無との関連を示すため,フィッ
シャー直接法を用いて分析した結果,有意な差は示されなかった(p=.13, n.s.)。ASD 者は全員が面
白いと回答していた。
⑵面白さの有無と不合理課題の通過有無との関連:Table 7 に示すように,言語的不適合ユーモア
課題における面白さの有無と不合理課題における通過有無との関連を検討した結果,TD 者におい
て有意な差はみられなかった(p=1.0, n.s.)
。
― ―
173
自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
Table 5 非言語的不適合ユーモア課題における面白さの有無に関する理由回答のカテゴリー分類
ASD 者
不合理課題の通過
A. 表情・体の動き
・声
TD 者
不通過
通過
不通過
1
7
4
・モノマネをしていると ・そ ん な ことな い っ て
ころの表情が豊かで面 言っていたのが面白い
白かった
・テンポがよかった
・顔が面白かった
・妙に声がそれっぽかった ・はじめの時の顔とか面
白い
ところが面白かった
0
0
3
B. 共感
―
4
・踊るところとか
0
・結構自分的に,共感っ
ていうか,あったなそう
いうこと,みたいに思っ
て面白かった
―
―
1
1
2
2
・知っている芸人なので ・気持ち悪いこと言って ・好きだからよく覚えて ・TV でも出てくると必ずみ
よかった
た
ます
る<もともと好き?>はい
C. 嗜好性
D. 相互性
E. 発想・組み立て
F. 概念的不適合
0
0
―
0
―
0
―
―
0
0
―
―
3
1
・歌でコントされている ・芸があんまり見てても
のが嫌だ
面白くない
1
1
2
6
・天気予報士でもないの ・おばあちゃんの血はな
に,そ ん な こ と を い う い
なんておかしい
・家庭科の授業でずっと ・ありえないところが面 ・ただそうでしょうみた
・100 点とっても雪降る 噛んでると甘くなるっ 白い
いな 感じ
の は 関 係 な い な っ て ていっていたから,そん
思って面白かった
なことはない
0
G. その他
4
4
4
・昔はテレビに出てた頃
は自分的には面白かった
けど,最近はあんまり出
てなくて(面白くない)
・そんなわけないだろ,
そんな わけないだろ~ ・古い
(歌う)っていうところ
―
注)数字は言及数を示す。―は該当なしを意味する。≪ ≫内は調査者の発言である。
Table 6 非言語的不適合ユーモア課題でのネタごとにおける面白さの有無に関する評価の詳細
1 スカウト
2 蚊にさされる
3 宝くじ
4 日焼け
5 テスト
6 うんち
7 衣替え
ASD 者
2⑴
5⑴
0
10
4⑵
30
10
TD 者
10
3⑵
0
0
1⑴
0
10
注)
( )内は不合理課題を通過した者の言及数を示す。
Table 7 言語的不適合ユーモア課題における面白さの有無と障害
の有無との関連及び不合理課題の通過有無との関連
対象
ASD 者
TD 者
面白さ
不合理課題
有
通過
3名
3名
不通過
10 名
10 名
通過
12 名
9名
不通過
8名
6名
無
13 名
15 名
0名
0名
3名
2名
0名
5名
⑶面白さの有無に関する理由:言語的不適合ユーモア課題における面白さの有無に関する理由回
答は,Table 5 と同様のカテゴリーに分類された(Table 8)
。これらのカテゴリーのうち,ASD 者
― ―
174
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
は TD 者と比べて,F. 概念的不適合に注目した評価を最も多く行った。一方 TD 者は ASD 者と比
べて,E. 発想・組み立てに注目し,面白さの評価も行っていた。E. 発想・組み立てにおける TD 者
の言及数のうち,
不合理課題を通過した TD 者の言及数が多くみられた。ASD 者と TD 者とも F. 概
念的不適合に注目した評価が多くみられたが,TD 者は概念間の不適合さに注目していた反面,
ASD 者は現実的にあり得ない,その状況においてその発言は不適切であるという,状況と発言との
間での不適合さを評価していた。
Table 8 言語的不適合ユーモア課題における面白さの有無に関する理由回答のカテゴリー分類
ASD 者
A. 表情・体の動き
・声
B. 共感
C. 嗜好性
D. 相互性
E. 発想・組み立て
F. 概念的不適合
G, その他
TD 者
不合理課題の通過
不通過
0
3
1
0
通過
不通過
3
1
・機 長 と 会 話 し て い る
・次はビックリドンキーで
・太っている人のベルト
―
シ ー ン,リ ア ク シ ョ ン
す(高い声でマネする)
が締まらなくて面白い
が面白い
0
0
0
0
―
―
―
―
2
2
2
1
・自分には笑いのツボと
・あの人,結構好きなん ・○○(演者)さんはす
・○○(演者)さんはも
い う か,今 の 映 像 に 合
で。家族のお気に入り ごく面白くて結構みて
ともと好き
わなかった
です
るんです
・機長の悪ふざけ。ツッコ
―
ミのところでしばくぞって
1
1
・
(ネタが)予想できた。 ・機長のほとんどが○○
大体飛行機墜落ネタっ (演者)
さんで,
自分とそっ
ていったら浮き輪とか くりな人が悪ふざけって
(出てくる)
いうか,すごい笑える
2
8
・墜落の説明の時に,
デン
デン太鼓で叩きながら待っ ・機 長 が す ご い 悪 ふ ざ
てるっていうのは,
明らかに け。あんなことしたら
ふざけているか,それとも 客から怒られますよね,
乗 客を殺 す 気なのかと 普通に
思って,
笑いました
0
3
―
・うるさい!ってやつ
2
1
・ボケてるのがツッコム ・放送していた人のボケ
ところがすごい
がすっごい上手だった
3
1
・なんか工夫してるなっ
て思った
・途中で急に違うってい
う か,あ ま り 理 解 で き
なかった
4
4
・どなたかアラブの石油
王 と か い ま せ ん か と ・飛行機なのにバスが面
か っ て,い た ら ど う す 白かった
るんだよって感じ
3
5
・JOS に全部当てはまっ ・救命ボートとか面白く
た
なかった
注)数字は言及数を示す。―は該当なしを意味する。
ネタごとにおける面白さの評価について分析した結果,ASD 者は Table 9 に示す 10,21,28 のネ
タにおいて TD 者より多く注目しており,TD 者は 1 のネタに注目していることが示された。10,
21,28 のネタは,具体的な状況が示されたり,音や道具が用いられた場面であった。1 のネタは,英
語表記したある文章の頭文字をとったネタであった。
3)意味の多重性によるユーモア課題
⑴面白さの有無と障害の有無との関連:面白さの有無と障害の有無との関連を示すため,フィッ
シャー直接法を用いて分析した結果,両群の間に有意な差は示されなかった(p = 1.0, n.s.)
。ASD
― ―
175
自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
者は全員が面白さを感じていた(Table 10)
。
⑵面白さの有無と不合理課題の通過有無との関連:Table 10 に示すように,意味の多重性による
ユーモア課題における面白さの有無と話の不合理課題の通過有無との関連を検討した結果,TD 者
において有意な差はみられなかった(p=1.0, n.s.)
。ASD 者は不合理課題の通過有無にかかわらず,
全員が面白いと回答していた。
Table 9 言 語的不適合ユーモア課題でのネタごとにおける面白さの有無に
関する評価の詳細
ネ タ
ASD 者
TD 者
1 JOS(事故多いけど心配するな航空)
0
5⑵
2 ホノルル行きだと思います
0
0
3 すみませんでした
0
2⑵
4 機長の電話が鳴る
0
0
5 ハワイいかなあかんねんて
0
0
6 ハンバーグ食べてんの?
0
0
7 一緒に食べるの無理
0
0
8 好き,ちゅーき
1⑴
1(0)
9 ビックリドンキー行き出発します
1(0)
1(0)
10 お降りの際は,ブザーを押してください
4⑴
1(0)
0
2⑴
11 肥満体の男性のシートベルトが締まらない
12 ライオンのバックル
13 アザラシの浮き輪
14 演者が浮き輪を着用する
15 酸素マスクの代わりに「頑張れ」の垂れ幕
16 墜落が考えられます
0
0
4(0)
6⑶
0
0
2(0)
2(0)
0
0
17 エアバックの代わりにチューインガム
2(0)
1⑴
18 墜落までデンデン太鼓を楽しんでください
2⑴
1⑴
19 ピンポン,次とまります
10 と同様
20 演者が新聞を読み,シャズナあらへん
0
0
21 機長のハイジャックのいたずら
6⑴
1⑴
22 すいませんでした~
1⑴
1(0)
23 まだ富士山を飛んでいます
0
0
1(0)
0
0
1(0)
26 ご心配ください
1(0)
2⑵
27 演者,アザラシを着用する
2⑴
0
28 「うるさい」の垂れ幕が下りる
7⑴
3⑵
24 燃料が底を尽きました
25 アラブの石油王はいませんか
29 またやってしまいました。墜落します
30 ビックリドンキー到着
その他
注)
( )内は不合理課題を通過した者の言及数である。
― ―
176
0
3⑶
4⑴
2⑵
7
8
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
Table 10 意味の多重性によるユーモア課題における面白さの有無と
障害の有無との関連及び不合理課題の通過有無との関連
対象
面白さ
不合理課題
ASD 者
TD 者
有
通過
3名
3名
不通過
10 名
10 名
通過
11 名
10 名
不通過
8名
8名
無
13 名
18 名
0名
0名
1名
0名
0名
1名
⑶面白さの評価に関する理由:Table 5 におけるカテゴリーに加え,課題に特化した回答として,
G. 意味の多重性に注目した評価がみられた(Table 11)
。G. 意味の多重性に注目した評価は,ASD
者や TD 者において多くみられた。TD 者においては,ASD 者に比べて演者同士の D. 相互性や,E. ネ
タの発想・組み立てにも注目する回答がみられた。
Table 11 意味の多重性によるユーモア課題における面白さの有無に関連する理由回答のカテゴリー分類
ASD 者
A. 表情・体の動き
・声
不合理課題の通過
0
―
0
B. 共感
C. 嗜好性
D. 相互性
E. 発想・組み立て
―
0
―
1
・○○(演者4)がやったことを
△△(演者5)が真に受けるのが
面白かった。普通はしないのに,
なんで信じてしまうんだろう
0
―
0
F. 概念的不適合
G. 意味の多重性
H, その他
―
2
・変換される前はいつも
通りだと思ったけど,変換
したら変なのが出てきた
0
―
TD 者
不通過
1
不通過
3
・パソコンでメールが送
・転送されてから一瞬止 ・リ ア ク シ ョ ン が 面 白
ら れ て き て,素 で 驚 い
まった
かった
てるんで面白かった
1
0
0
・自分も経験したことあ
る。文字ミスとか,そう
―
―
いう自分が打ちたいやつ
0
0
0
―
―
―
0
2
2
・何か話がちょっとかみ合っ
・かみ違いとか,すごい てなくて,でも漢字とかは
―
ちゃんとなってて,かみ合っ
上手
てるようでかみ合ってない
1
4
1
・実際にありそうなことが, ・よく話がすぐできるな~とい
・なんかとんでもない方
そういう違いとかで面白く うとこ,話がよくああいう風に
向に(もっていく)
表現していて面白かった
流れていくな~というところ
1
1
0
・近くにいるのにメール ・パンツ食ってるってのが,パ
転送しなくても会って ンツは履くものだから,それを
―
食うっていうのが(面白かった)
喋ったら(いいのに)
9
8
4
・ひらがなの変換の後に ・パソコンで打ったのを ・パソコンで漢字に変換
漢 字 が 違 っ て た か ら, 違う意味に通じていて するところの漢字が全
面白かった
(面白かった)
部おかしかった
2
0
1
・一方はひらがなで今度ゴル
フクラブ買ってくるねって言っ
て,もう一方は漢字やカタカナ
―
・ほとんど面白かった
で今度ゴルフクラブかってく
るねって同じことを続けて
いって,それで驚いたりした
注)数字は言及数を示す。―は該当なしを意味する。
― ―
177
通過
2
自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
ネタごとにおける面白さの評価に関しては,Table 12 に示す。ASD 者は TD 者に比べて,6 のネ
タ「犬狩ってます」と 7 のネタ「ネコ解体」のように,社会的に望ましくない内容を含んだネタや,13
のネタ「奈良マニアいます」のように,新奇な言葉が出てきた場面,14 のネタのように今まで間違っ
た変換のメールを受け取った側と,メールを発信した側が転換され,メールを発信した側がはじめ
て驚く場面について,面白さを評価していた。
Table 12 意味の多重性によるユーモア課題でのネタご
とにおける面白さの有無に関する評価の詳細
ネ タ
ASD 者
TD 者
1 乾燥機
2⑴
5⑵
2 パンツ食ってる
4⑵
4⑵
3 ミニ着て
4 手ブラ
0
0
2(0)
1(0)
5 股を愛
0
0
6 犬狩り
4⑴
1(0)
7 猫解体
3(0)
0
8 新弟子
1(0)
0
9 木の精
1(0)
0
10 イエイ
0
2⑴
11 ゴルフクラブ
1(0)
1(0)
12 大仏
4⑵
6⑸
13 奈良マニア
5⑴
1(0)
14 いい太鼓
4⑴
1(0)
注)
( )内は不合理課題を通過した者の言及数である。
Ⅳ.考察
本研究は,McGhee(1979)のユーモア発達段階に基づいたユーモア課題を,ASD 者はどのよう
に理解し,面白さを評価するのかについて,TD 者との比較検討を行った。まず,McGhee(1979)
のユーモア発達段階に基づいたユーモア課題を用いた際,ASD 者は TD 者より,第 3 段階である概
念的不適合によるユーモアを面白いと評価するだろう,という仮説について検討した。概念的不適
合によるユーモアについて,非言語的な要素に不適合さが含まれるユーモア課題と言語的やりとり
の中に不適合さが含まれるユーモア課題を用いた結果,ASD 者は TD 者より非言語的不適合ユー
モア課題を面白いと評価しており,1 つ目の仮説は一部支持された。
ASD 者が非言語的不適合ユーモア課題において TD 者より多く面白いと感じていたことを含め,
ASD 者はどのようなところから面白さについて評価していたのかに関して,以下の 4 点について考
察する。
1 つ目は,ASD 者は TD 者とは異なるユニークな概念的不適合さに注目し,ユーモアを評価して
いたことが考えられる。本研究において用いた非言語的不適合ユーモア課題でみられる概念的不適
― ―
178
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
合さは,現実的にあり得ないことではあるが,発言した人のある意図が含まれた比喩的な表現で,
人々が普段よく耳にするものである。例えば,
「テストで100点とったら,お父さんに ‘ 明日雪降るな ’
と言われた」というネタは,
「明日雪降るな」という言葉には「100 点をとるなんて,珍しいな,普段
は考えられないな」という意図が含まれた比喩的な表現である。これらの表現は,日常においてよ
く使われる内容である点から,TD 者は「自分にもある」
「言われたことある」のように,自分の体験
に重ね合わせた共感的な評価を多くしていたと考えられる。今回用いた非言語的不適合ユーモア課
題は,自分にもそういう経験がある,あるいはよくありそうなことであるという,自分に結び付け
ることによってユーモアを感じる「自己認識的なジョーク」
(Keenan, Gallup & Folk,2003)である
と考えられる。しかし,ASD 者は自分に結びつけることで面白さを感じるのではなく,その表現
をその状況で用いるのは現実的にあり得ないという理解をし,面白さを評価していたと考えられる。
そこには,
ASD 者の2つの特性が関連していると考えられる。まず,字義通りに理解する特性(Wing,
1996)との関連で,ASD 者はネタであるフレーズをそのまま受け取り,その言葉が不適合であると
いう理解をしていたと考えられる。また,自分に関連づけた情報をより記憶する「自己準拠性効果
(Self-Reference)
」がみられない(十一・神尾,2001)など,自己に引きつけて考える自己意識の弱さ
が指摘されており,このような特性が,自分の体験と重ね合わせる共感的な評価をしなかった一つ
の要因として考えられる。
ASD 者のユニークな概念的不適合さへの注目は,言語的不適合ユーモア課題においてもみられ
た。例えば,TD 者は,
「飛行機なのにバス(のようにすること)が面白かった」と回答していたよう
に,飛行機の中という概念と,バスの中という概念の間で生じる不適合さに注目していた一方,
ASD 者は,飛行機の中でバスのような状況が起こるという場面設定に入り込み,その状況で機長が
機内放送中に電話をしたり,ハイジャックのいたずらをしたりする発言は,乗客の安全にかかわる
重大な問題になるためあり得ないという理解,その発言はルールや規律の逸脱である,という点か
ら評価していたと考えられる。また,意味の多重性によるユーモア課題では,「隣にいるのにメー
ルを送るのはおかしい」という評価がみられ,演者がネタを披露するために設定した物理的な状況
に関する不適合さに注目し,面白さを評価していたと考えられる。以上のように,ASD 者は TD
者と同様に概念的不適合さに注目していても,TD 者は概念間の不適合さに注目していた一方,
ASD 者は設定された状況に入り込み,その状況と発言との間での不適合さに注目するユニークな
評価をし,ユーモアを理解していることが考えられる。
2 つ目は,ASD 者は演者の声や表情,動き,小道具などの具体的なものを通してより面白さを感
じることが考えられる。同じ概念的不適合によるユーモアでも,ASD 者が特に非言語的不適合ユー
モア課題において TD 者より多く面白いと評価していたのは,演者が声や表情を変え,ある役に成
りきり,演じていたことによる分かりやすさが,面白いという快の感情を引き出したと考えられる。
ASD 者の評価の中,
「妙に声がそれっぽかったのが面白かった」のような回答がみられ,例えばお
ばあちゃんでもないのにおばあちゃんの役を演じる不適合さから,より面白さを感じていた可能性
が考えられる。また,言語的不適合ユーモア課題においても,バスのブザーが鳴る場面や垂れ幕が
― ―
179
自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
下がってくる場面などに面白さを感じており,音や小道具などの具体的なものが用いられる場面に
注目する傾向があると考えられる。それに対し,TD 者は,言語的不適合ユーモア課題において
「JOS」と い う ネ タ に 注 目 し て い た。
「JOS」は,
「 事 故 多 い け ど 心 配 す る な(Jiko Ooikedo
Sinpaisuruna)
」
を英語表記にし,頭文字をとったネタである。TD 者は英語の頭文字を表象し,その
文字に英語表記されたある文章が対応されているというメタ表象能力を利用し,面白さを評価して
いたと考えられる。この点と比較すると,ASD 者において「JOS」ネタへ注目することの少なさや,
具体的なものが用いられる場面に面白さを感じることは,メタ表象能力を利用することの弱さ
(Leslie,1987)
が関連している可能性が考えられる。
3 つ目は,TD 者は 3 つのユーモア課題を通して,ネタの内容だけではなく,作り手の意図やネタ
を組み立てていく過程まで総合的に評価していたのに対し,ASD 者はネタの内容により多く注目
し,面白さを評価していたと考えられる。野村・丸野(2008)は,人がユーモアを感じる際には,内
容だけではなく,演者の演じ方の工夫や,観客が持つ演者への親近感など様々な要因が影響してい
ると述べており,本研究において示された TD 者の評価は,まさに内容とそれ以外の様々な要因を
合わせたものであるといえる。それに対し,ASD 者は作り手の意図や組み立てる過程に注目する
ことが少ないという結果が示され,面白さの評価を行うために注目する側面が両群において異なる
ことが示唆される。作り手の意図やネタの組み立ての過程に注目することは,不合理理解とも関連
していると考えられる。この点については,後述する。
4 つ目として,ASD 者は社会的に望ましくない事象を言葉に表出することで面白さを感じていた
可能性が考えられる。非言語的不適合ユーモア課題においては,
「いつまでもご飯をくちゃくちゃ
していると,‘ 口の中でうんちになるわよ ’ と言われた」というネタや,意味の多重性によるユーモ
ア課題では,
「犬狩ってます」
や「猫解体」
のネタに注目し,面白さを評価していた。これらの内容は,
一般的に汚いもの,よくない行動であり,それに楽しさや面白さを感じることはよくないものとさ
れる。この結果は,
Reddy, Williams, & Vaughan(2002)の結果と相反する。Reddy et al.(2002)は,
3 歳から 5 歳半頃の ASD 者は ‘ 頭に便座を乗せる ’ などの社会的に不適切な行動に対して面白さを
感じないことを指摘している。本研究と Reddy et al.(2002)の結果が異なる要因の 1 つとしては,
対象年齢の違いが考えられる。Reddy et al.(2002)では 3 歳からの幼児期の ASD 者の養育者から
聞き取り調査を行った結果であり,本研究は中学生を対象とした。幼児期の ASD 者と中学生の学
童期の ASD 者の間には,社会的に正しい行動とは何かに関する知識の違いがあると考えられる。
Reddy et al.(2002)での幼児期の ASD 者は便座を頭に乗せる行動について,社会的に望ましくな
い行動である,それをあえてネタにしている面白さに関する認識がなかったのではないだろうか。
本研究における中学生の ASD 者は,うんちや犬狩り,猫解体のように,その言葉を表出することは,
普段よくないことでありながらも,それをネタとして言葉にしているという理解によって,面白さ
を感じていた可能性が考えられる。
次に,不合理課題を通過する者が不適合性ユーモア発達段階に基づいた各ユーモア課題において
より面白さを感じるだろうという仮説について検討した。結果,ユーモア課題における面白さの有
― ―
180
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
無と不合理課題の通過有無との関連は示されず,
仮説は支持されなかった。その要因の一つとして,
両課題の提示のし方の違いがあげられる。不合理課題は,言語教示であった一方,ユーモア課題は,
映像によるものであり,映像による教示が不適合の理解を促した可能性が考えられる。
不合理課題の通過有無と面白さの評価との間では,1 つの関連が示唆された。3 つのユーモア課題
における面白さの有無に関する理由回答のカテゴリー分類の結果から,不合理課題を通過した TD
者の多くは,
発想・組み立てに注目して面白さの評価を行っていた。発想・組み立てに関する評価は,
「実際にありそうなことが面白く表現されていて面白かった(TD 者)
」のように,1 つのユーモア作
品を作り上げるまでの作り手の意図や,組み立て方,演じ方の工夫などに注目した評価であり,内
容に関する認知よりさらに高次の認知,すなわちその内容をネタにした着眼点がすごいという,よ
り上位の認知であるメタ認知能力を働かせる必要があると考えられる。言語教示による不合理課題
においても,教示された状況を思い浮かべ,さらにその状況における不適合な部分について考えな
ければいけないというメタ認知が必要となる。両方においてメタ認知が必要となるという点から,
言語教示による不合理課題における通過と,発想・組み立てに注目することとの間に関連性がみら
れたと考えられる。今後は,不合理課題のような認知能力を問う課題とユーモア課題の提示の仕方
を同様にすることや,メタ認知を含めた認知能力と面白さの評価との関連をより明確にしていくこ
とが必要であろう。
今後の課題としては,以下の 2 点が考えられる。1 つ目は,ASD 者の対人関係の構築や維持を促
進する支援として,さらには ASD 者の心の安定など健康的な精神状態に対する支援として,ユー
モアを取り入れた効果に関する知見を蓄積していくことが必要であると考えられる。ユーモアには,
自分や他者を楽しませる遊戯的ユーモアと,自分や他者を励まし,心を安定させる支援的ユーモア
がある(上野,1992)
。本研究では ASD 者はユーモアをどのように楽しむのかに関する遊戯的ユー
モアに焦点づけ,TD 者とは異なるユーモア理解における「ツボ」があることを明らかにした。この
結果は,ASD 者のユーモア理解における「ツボ」
を,支援者など ASD 者とかかわる側が理解するこ
とを通して,ユーモアを介して ASD 者と面白さを共有し,コミュニケーションの糸口として活用
することが可能であることを示唆する。さらには,支援的ユーモアに焦点づけ,臨床現場において
積極的に取り入れることを通して,ASD 者の健康的な精神状態を保つことを促す効果も期待でき
る。ASD 者の中には,障害特性から起因した言動が性格的な偏り,本人の努力不足,親のしつけの
問題によるものだという誤解を招き,それによる他者からの叱責や非難というネガティブな経験を
することが多く(田中・廣澤・滝吉・山崎,2006)
,不安定な精神状態に陥ることもしばしばみられる。
看護医学分野を中心に,ユーモアを通して自分の問題(看護医学分野では主に病気)に向き合い,と
らえなおし,新たな意味づけを行うことによる効果が多く報告されている(例えば,三宅・横山,
2007)
。例えば,癌など他の臓器に転移する病気に対し,「この子(=癌)は旅行好き(=転移)だ」と
とらえなおし,新たな意味づけをすることを通して患者自身の精神的なストレスが緩和されること
である。この知見からすると,ASD 者が抱える精神的な不安定さの問題に対しても,支援的ユー
モアを取り入れることを通して,ASD 者の心理的な側面にアプローチすることができ,ASD 者の
― ―
181
自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
より健康的な生活を支えることができると考えられる。支援的ユーモアを展開していく際には,ユー
モア内容を自分の体験に重ね合わせることが求められる。本研究で得られたユーモア課題に対する
共感的評価の特性もふまえたうえで,今後,ASD 者における支援的ユーモアを取り入れた実践を
蓄積していくことを通して,ASD 者に対する新たな支援方法としてユーモアの有効性について検
証していく必要があるだろう。
2 つ目は,より社会的な文脈で,他者とともにユーモアを体験する関係における ASD 者の笑いの
特性について注目する必要がある。本研究において「どこが面白かったのか」という質問に対し,
ASD 者は「おばあちゃんの血はうまいんだよ」とネタをそのまま繰り返す回答をしたり,思い出し
笑いをする様子がみられた。笑いは,
他者の注意を引いたり,他者の感情を活性化するためのコミュ
ニケーションの手段でもあり,社会的な行為である(Martin,2007)。Martin and Gray(1996)は,
大学生の男女 40 人を対象とし,他者の笑い声がない場面と比較して他者が笑っている場面でユーモ
ア課題を提示した方が,笑いが生じやすいことを示している。この結果から,他者の笑い声がない
場面では,自分が面白いと感じていても遠慮してしまう可能性が考えられる。本研究では,ユーモ
ア課題視聴後の質問の時は,調査者の笑いは生起しない場面であり,その場面で ASD 者が思い出
し笑いをしていたのは,Martin and Gray(1996)の知見とは異なる。つまり,ASD 者は他者の感
情的状態に関係なく,自分の面白さをそのまま表現していたと考えられる。本研究は ASD 者の個
人に閉じたユーモア理解における特性に焦点づけたが,今後は,ASD 者の面白さの感じ方や評価,
さらには笑いの表出が,他者との開かれた状況ではどのような特性を示すのかに関して,更なる検
討が必要である。他者の存在の有無,さらには他者の異なる反応によって ASD 者のユーモアの感
じ方がどのように異なってくるのかについて着目することを通して,ASD 者がユーモアを楽しむ
特性や,さらには ASD 者の他者への意識や他者の状態に関する理解,他者との関係における振る
舞い方を含む ASD 者における他者理解の特性について更なる知見を提供することができるだろう。
【註】
1 本研究では,乳幼児期から成人期までの ASD の人について,
「ASD 児」を含む意味で使われることが多い「ASD 者」
の表現を用いることとする。「典型発達者」についても同様である。
付記
本研究にご協力いただきました,
対象者および保護者の皆様にお礼申し上げます。なお,本研究は,
科学研究補助金(基盤研究 B 課題番号 23330217 研究代表者:田中真理)の助成を受けた。
引用文献
American Psychiatric Association(2013)Diagnostic and statistical manual of mental disorders: DSM-5.
Washington,D.C.
Emerich, D.M., Creaghead, N.A., Grether, S.M., Murray, D., & Grasha, C.(2003)The comprehension of humorous
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 62 集・第 1 号(2013 年)
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自閉症スペクトラム障害者におけるユーモア理解
Evaluating Amusement to Understand Humor in Individuals
with Autism Spectrum Disorders
Heebok LEE
(Postdoctoral researcher, Graduate School of Education, Tohoku University)
Taisuke UMEMOTO
(KDDI Corporation)
Michika TAKIYOSHI
(Associate professor, Faculty of Education, IWATE University)
Susumu YOKOTA
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
Kai NAGASE
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
Yutaka MATSUZAKI
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
Eri SUGAWARA
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
Mari TANAKA
(Professor, Graduate School of Education, Tohoku University)
Humor that was considered amusing by individuals with Autism Spectrum Disorders(ASD)was
investigated and phenomena they focused as funny were evaluated using humor tasks based on McGhee's
model of humor development. Furthermore, the results were compared with typically developed people
(TD). Results indicated that people with ASD compared to TD, more often responded that humor tasks
with conceptual incongruity in the external appearance were funny. Moreover, individuals with ASD
focused on unique conceptual incongruities, which was different from TD, and evaluate them as funny.
Also, individuals with ASD were interested in scenes with facial expressions and movements of
performers, as well as in sounds, whereas TD evaluated the content, the intentions of the creators, and
the comprehensive performance of the comedians. Furthermore, individuals with ASD tended to pay
attention only to the content and were interested in verbally expressing socially undesirable concepts.
Keywords:Autism Spectrum Disorder, Humor, McGhee's model of humor development
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