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ふれあい47号PDF版
JA北海道厚生連 札幌厚生病院広報誌 fu . re . a . i 47 VOL. 2012年7月発行 がん医療最前線 放射線治療装置リニアック わずか数分の照射でがんの根本治癒を目指す がん患者さんのQOLを重視する リハビリテーションを提供 部門紹介:4C 病棟 発行:北海道厚生農業協同組合連合会 札幌厚生病院広報誌編集委員会 札幌市中央区北3条東8丁目 TEL 011‐261‐5331 FAX 011‐271‐5320 http://www.dou-kouseiren.com/byouin/sapporo/ 制作:有限会社 慶文社 〒060‐0033 がん医療最前線① がん診療連携拠点病院として 月 に 放射線 治 療 装 置﹁ リ ニア ッ ク﹂を 新機 種に わずか数分の照射でがんの根本治癒を目指す 年 更新。放射線を使ったがん治療に 飛躍的な進歩を続け、注目を集めている放射線治療 の特徴は、がんを切らずに根本治癒を目指せること でいる放射線治療専門医や診療放射線技師が、高精 年以上取り組ん です。がんが発生した臓器の機能や形態を保つこと 度治療を提供しています。 療効果を得ることができます。当院では、2012 ができるだけでなく、副作用の大幅な軽減と高い治 1 20 2 2012 年 1 月から稼動して いる放射線治療装置リニア ック・シナジー(Elekta 社) 放射線治療装置リニアック 放射線治療 って選択的に多方向から照射を集中させる 高精度照射を行うことができます。正常細 胞への線量をできる限り低減し、副作用を 高齢者や体力のない患者さんでも治療を受けることができる 最低限に抑えることを可能にしています。 専 門 医による高 精 度の 治療計画と高い信頼性 治療を始めるにあたっては、放射線治療 専門医がどこに何回どのくらいの放射線量 がんが存在する臓器の機能や形態を残したまま 根本治療を目指すことができる 放射線治療が 臓器温存を可能にする 手術、 化学 ︵抗がん剤︶ 現在のがん治療は、 療法、放射線治療が三大治療として確立さ れています。 日本では外科治療が優先されることが多 いですが、放射線治療技術の飛躍的な進歩 れるようになったことや臓器温存により治 を立てますが、放射線治療装置リニアック とともに、外科手術と同等の生存率が得ら 療後のQOL︵生活の質 ︶ Quality of Life 低下が少ないことから﹁身体にやさしいが が搭載する画像ガイド下放射線治療の機能 は、治療計画時のCT画像と三次元画像を 重 ね 合 わ せ、 正 確 な 位 置 に 照 射 で き ま す。 さらに、治療寝台には自動位置補正機能が あり、高精度治療を安心して実施できます。 照射時間はわずか数分で苦痛もありませ ん。がんの種類や大きさ、治療内容などに 応じた必要線量を、がん組織に数週間にわ たって分割照射します。 手術や化学療法と併用しながら行われる ことも多く、当院でも良好な治療成績を得 ています。 今後、放射線治療の対象となる患者さん が増加するといわれています。当院では安 全に治療が遂行できるスキルと体制を整え ています。 外来通院でも治療を受けることができる を照射するのかといった高精度の治療計画 ん治療﹂として注目を集めています。 放射線治療が目指すのは、がんが発生し ている臓器の機能、形態を温存しながらの 根本治癒です。 腫瘍の形状に合わせた 照射で副作用を軽減 放射線治療が得意としているのは、頭頸 部がん、食道がん、子宮頸がん、前立腺が ん、皮膚がんなどですが、全身どの部位で も治療が可能です。進行がんや転移がんで も、照射でがんを縮小させ、痛みを緩和さ せることができます。 治療効果を最大限に引き出すには、必要 な線量をがん細胞のみに正確に照射する必 3 要がありますが、当院が導入した放射線治 療装置リニアックは、がん組織の輪郭に沿 放射線治療のメリット 放射線治療の手順(外部照射の場合) す。その程度には個人差があり、治療後数 カ月が経過してから症状が出ることもあり ます。放射線で頭髪が抜けるという誤解が ありますが、頭皮に照射しない限り脱毛す ることはありません。 板で照射 画 像 ガ イ ド 下 放 射 線 治 療(IGRT:Image Guided 治療計画時にはコンピュータでシミュレーションを行 Radiation Therapy)は、あらかじめ撮影した腫瘍と い、腫瘍の輪郭に合わせてリーフという遮 臓器のCT画像に治療体位で撮影した三次元の CT 画 範囲を調整します。線量を当てたい部分にだけ照射す 像を重ね合わせ、誤差を検出し、見やすい色彩で画像 ることで、副作用を軽減し、治療効果を高めることが 表示し、自動で治療寝台の位置を補正できます。 できます。 放射線治療専門医が診察を行い、放射線治 療の適応や治療方法の選択を行い、治療方 法や副作用などを患者さんに説明します。 CT画像をもとに放射線の最適な照射方法 を決定し、線量計算を行い、患者さんに合 分前後で、照射してい わせた高精度の治療計画を立てます。 回の治療時間は ます。 人位の割合で、照射された場所︵皮 深刻な副作用はほとんどありませんが、 人に 10 ※治療回数は治療部位や病状により異なり の出現を確認するための診察も行います。 伴うことはありません。治療効果や副作用 安静にしている間に終わり、熱感や痛みを る時間はわずか数分です。治療寝台の上で 10 膚・臓器︶に炎症が発生することがありま 1 3 次元治療計画装置を使った 治療計画モニター画面 リニアックを使った 三次元画像による位置照合 1 察 診 治療計画 療 治 術後の定期診察 1 2 3 4 4 乳がんの放射線治療例 縮小手術と20 回の照射(5 週間)で 乳房を温存することができた 乳がんの治療計画モニター画面 乳がんは、かつて乳房とその下の筋肉を根こそぎ切り取る手術方法 が主流でした。しかし、今は、わずかに腫瘍の周辺だけを切除し、 手術後に乳房全体に放射線治療を行う乳房温存療法が主流です。 放射線治療室 スタッフ 放射線治療のチーム医療体制 (左から)花山美帆(看護師) 、秦野敦史副技師長(放射線技師)、鈴木 恵士郎主任部長(放射線治療専門医) 、鈴木隆主任(放射線技師)、津 元崇弘(放射線技師) 、星由紀子(看護師) 放射線治療実績 5 年 年間延べ治療患者数 月平均 備 考 2008 358 29.8 2009 328 27.3 2010 264 22.0 2011 (121) 17.3 (1∼7月)※8月∼12月リニアック更新工事 2012 (188) 37.6 (1∼5月) がん医療最前線② e f i L f o y t i l a u Q ︶を高めています。 病室のベッドでの 理学療法 身体機能の低下を認めた患者さんの回 復を目的に、関節を動かしたり、筋力 を維持する運動などを行います。リハ ビリテーションスタッフは、がんの症 状や治療についても知識を学び、患者 さんの心身の状態を理解し、会話によ るコミュニケーションを深めて精神面 のサポートも行います。 するリハビリテーションが、がんの患者さんの回復力やQOL︵生活の質 リテーション﹂です。合併症や障害を予防したり、治療後の回復を早めたり 指 せ る も の に な り ま し た。 そ ん な 中、 注 目 さ れ て い る の が﹁ が ん の リ ハ ビ 近年の医療技術の進歩によって、 ﹁不治の病﹂だったがんは、 ﹁根本治癒﹂を目 がん患者さんのQOLを重視する リハビリテーションを提供 がん診療連携拠点病院として 当院でも、厚労省の指定を受けたがん ることが分かってきました。 疫力を高め、社会や家庭への復帰を早め 提供することが、患者さんの回復力・免 ところが近年になって、患者さんの病 期に応じたリハビリテーションを適切に ませんでした。 減に関しては積極的な対応が行われてい ていましたが、障害や合併症の予防・軽 復を目指すリハビリテーションは行われ り得る状態にあります。今まで、機能回 呼吸障害などさまざまな身体障害が起こ がんの患者さんは、その治療過程にお いて、運動麻痺、摂食・嚥下障害、浮腫、 がん患者さんの 回復力・免疫力を高める 理学療法士 7 人と助手 1 人の計 8 人のスタッフが患者さんの リハビリテーションを担当しています 後列左から:小川基、菊池秀也、亀谷善弘、伊藤大輔 前列左から:小南由衣、奥山礼子(助手)、高橋舞、本間有夏 6 制定された﹁がん対策基本法﹂に基づき、 診療連携拠点病院として、2006年に 情報共有とコミュニケーション ベースにあるのは 医師・看護師・リハビリテーションスタ がんのリハビリテーションは、がん治 療と平行して行われることがほとんどで ッフなどの多職種がチームを組み、がん 磨 き、 ﹁がん患者さんのリハビリテーシ す。医師、看護師、リハビリテーション 医療に関わる専門職として知識や技術を ョンや心理・身体面 に深く関わるケア﹂ 回カンファレンスな スタッフが、毎週 どを通じて十分にコミュニケーションを 図り、情報を共有しながらリハビリテー ションを継続的に展開します。 スタッフが患者さんやご家族とのコミ ュニケーションを深め、身体的・精神的 な状態を十分に理解することが、がんリ ハビリテーションのベースになっていま 当院では、すべてのがん患者さんに﹁が んと診断された時点から緩和期まで継続 す。 中や治療後は、機能障害や能力低下に対 するがん医療﹂を提供できるよう体制を が ん の 診 断 後 の 早 期︵ 手 術、 放 射 線、 化 学 療 法 の 前 か ら ︶ に開始。機能障害はまだない が、その予防を目的とする。 機能障害、能力低下の存在す る患者に対 して、最大 限の機能回 復を図る。 腫瘍が増大・機能障害が進行 しつつある患者さんのセルフ ケアや運動機能を維持改善す ることを試みる。自助具の使 用、動作のコツ、拘縮・筋力 低下など廃用予防も含む。 末期のがん患者に対して、そ の 要 望 を 尊 重 し な が ら、 身 体 的・ 精 神 的・ 社 会 的 に も QOLの高い生活が送れるよ うに援助する。 リンパマッサージ を提供できる体制を整えています。 病期に対応する リハビリテーションの継続 が ん リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン は、 入 院 中 のがんの患者さんを対象に行われていま す。がんの治療前には、今後起こりうる 可能性のある機能障害や能力低下を予防 して最大限の回復を目指すリハビリテー 整え、常にスキルを磨いています。 するための体操や呼吸練習を行い、治療 ションを行います。術後などにリンパ浮 腫が生じた場合は、リンパマッサージが 効果的です。 がんが増大・進行し、今後さらに機能 障害や能力低下が進むことが予想される 場合には、代償動作や自助具の指導も行 います。 患者さんやご家族の希望を尊重しなが ら、 ﹁入院中の生活の質を高めること﹂を 目標に、理学療法、作業療法、言語聴覚 療法などの観点から病期に応じた多種多 様なリハビリテーションを提供します。 7 がんリハビリテーションの病期別目的 がんと診断された時点から 緩和期まで継続する 1 「がんに関する知識を学ぶことで、患者さんと のコミュニケーションを深めることができま す」と小川基理学療法士と菊池秀也理学療法士 床はシャワー・トイレ付き個室 看護を適時に提供 で き ま す ﹂と チ ー えている看護体制 ムで患者さんを支 階に、今年 月 日から開 新館ウイング 設した4C病棟は、病床の大部分が有料個室 を説明します。 境を生かし、一人ひとりの患者さんのニーズ ら、入院中や退院後における不安や疑問、ご に合わせた看護を提供しています。 床のうち 床が個室で、それぞれ 病棟全 にトイレやシャワー、洗面台などが設置され 要望を引き出し、個々人に応じた看護を行う アの中で患者さんやご家族と深く関わりなが ています。居住性に優れてい るだけでなく、 ことを心がけています。 などプライベートを十分に保つことができま す。 デイルームは、カフェをイメージして作ら れた、落ち着く空間です。ナースステーショ ン は、 従 来 の 約 ・ 倍 の 広 さ が あ り、 ス タ ッフの動きや物品の出し入れがスムーズにな りました。 最新治療を学びながら ﹁当病棟に入院され 金 沢 結 美 看 護 科 長 は、 ているのは、主に胃腸と肝臓の疾患の患者さ んです。検査・治療を短期間で受ける患者さ んも多く、入院期間は短くなってい ますが、 するなど、機会あるごとに学んでいます。 師を依頼して最新治療に関する勉強会を開催 消化器科領域の専門医療が行われることが 多いため、病棟スタッフが診療科の医師に講 ご家族や来客の方と気軽に会話を楽しめる ま た、 慢 性 疾 患 を 患 っ て 入 退 院 を 繰 り 返 す患者さんも多いことから、看護師は日常ケ であることが大きな特徴です。個室の療養環 1 患者さんの治療に関する個々の情報は他の病 編 集 後 記 暑さが本格的になる季節とな りましたが、節電が要求され る 厳 し い 夏 と な り そ う で す。 療養環境に少しでも配慮でき るよう努力いたします。︵K︶ 読者の皆さまからの ﹁投稿﹂を お待ちしております 病 院 へ の ご 意 見・ ご 質 問、 病 条東 丁目 院広報誌のご感想などをお寄 せください。 〒060︲0033 札幌市中央区北 札幌厚生病院総務課 011︲261︲5331 2223︶ ︵内線 電話 広報誌編集委員会事務局 8 6 棟と同様に、外来での検査から入院、退院ま 3 43 で を ク リ ニ カ ル パ ス︵ 診 察 ス ケ ジ ュ ー ル 表 ︶ 金沢結美科長 個室の広さは 20.7 ㎡ 35 で管理しているので、どの看護師でも必要な デイルーム ナースステーション 35 5 部 4C 病棟 新館ウイング ■スタッフ 看護師 25 人、看護助手 3 人 4 1 門紹介 ■病床数:43 床 消化器科 38 床、共通 5 床 個室の療養環境を生かした 看護を提供