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日本下水道新聞(平成 27 年 11 月~12 月) 連載記事 政省令改正談義

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日本下水道新聞(平成 27 年 11 月~12 月) 連載記事 政省令改正談義
日本下水道新聞(平成 27 年 11 月~12 月)
連載記事
政省令改正談義とその逸脱
(法改正 7 月施行関係・地方分権等対応 10 月施行関係・法改正 11 月施行関係)
-国土交通省 藤川眞行 下水道管理指導室長に聞く-
-国土交通省の藤川下水道管理指導室長には、先般(日本下水道新聞平成 27 年
6 月~7 月)、
『法改正談義とその逸脱』というタイトルで、本年の下水道法・日
本下水道事業団法・水防法の改正について、主に法制的なお話に重点を置いて、
詳しくお聞きしました。
今回は、法改正に伴う政省令の改正(7 月 19 日施行関係と 11 月 19 日施行関
係)、と地方分権対応等を踏まえた政省令の改正(10 月 21 日施行関係)につい
て、前回と同様、主に法制的なお話に重点を置いて、ざっくばらんに、脱線も結
構ですので、お話を頂けると幸いです。-
下水道法・日本下水道事業団法・水防法の改正については、歴史を含めて、法
制的なエッセンスの部分は前回の連載記事で概ねお話ししていますので、それ
より細かい政省令レベルでは話がテクニカルになり、どれほど現場実務をやっ
ておられる方の参考になるかなという思いはあります。ただ、
「神は細部に宿る」
ではないのですが、法制的に重要な話が法律レベルにはなかなか表れず、政省令
レベル、或いは施行通知レベルで表れてくることもあろうかと思います。どこま
で意味のある話になるか分かりませんが、できるだけテクニカルでない、法的な
意味合いについて、お話したいと思います。
なお、前回と同様、ここでの話は、ざっくばらんなお話をということでありま
すので、私の話のうち、見解にわたる部分は、私の属する組織ではなく、私個人
のものであると理解して頂ければと存じます。
-まず、7 月 19 日に施行された法改正等に伴い改正された政省令について、う
かがいます。法改正と直接関係はありませんが、この時改正された省令改正では
流域別下水道整備総合計画制度の抜本的な見直しに関連した内容が含まれてい
ます。それについて、お話しください。-
法改正と直接関係はありませんが、流域別下水道整備総合計画制度(以下では
1
「流総計画制度」といいます。)の抜本的見直しを法令に位置づける重要な話で
すので、その話を先にしましょう。
今般の下水道法改正・日本下水道事業団法改正・水防法改正の中には、水質保
全に直接関係する事項は含まれていませんが、平成 26 年 7 月の新下水道ビジョ
ンや、本年 2 月の社会資本整備審議会答申(「新しい時代の下水道政策のあり方
について」)等を踏まえ、併行して、流総計画制度の抜本的な見直しが行われて
います。
下水道法における水質保全に関する制度としては、大きく言って、最低限の水
質基準である排水基準を達成するための制度である除害施設の設置等の制度
(BOD 等の処理場における最低限の処理を含む。)と、より望ましい水質基準で
ある水質環境基準を達成するための制度である流総計画制度があると言ってい
いと思います。
前者の制度については、昭和 33 年の下水道法制定当初から、一般法(「公共用
水域の水質の保全に関する法律」
・
「工場排水等の規制に関する法律」)の制定に
数ヶ月先立つ形で、特別法としての枠組みが導入された上で、昭和 45 年改正で、
新たに制定された一般法である水質汚濁防止法の特別法としての枠組みが整備
されました。そして、昭和 51 年改正で水質汚濁防止法に準じて直罰制度が導入
される等、制度の完備・成熟を見ています。このあたりについては、先般の『法
改正談義とその逸脱』の中でお話ししましたので、説明は省略したいと思います。
他方、後者の制度については、昭和 30 年代後半以降の公害問題の進行を踏ま
え、昭和 42 年に公害対策基本法が制定され、その中(第 9 条)で、政府は、大
気汚染・水質汚濁・騒音について、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で
維持されることが望ましい環境基準を定めることとされたことに端を発するも
のです。実際に、水質環境基準が閣議決定されたのは、昭和 45 年 4 月ですが、
その年の臨時国会(いわゆる公害国会。11 月~12 月)で審議・可決された昭和
45 年の下水道法改正において、上記の水質汚濁防止法の特別法としての枠組み
の整備等と併せて、この望ましい水質環境基準を達成に向けた制度である流総
計画制度が創設されました。
この流総計画制度は、都道府県知事が、最低限の排水基準だけでなく、より望
ましい水質環境基準を達成するための下水道の長期計画(概ね 20~30 年間)を
策定する制度で、個々の事業計画の審査に当たって流総計画との適合性が確認
されることを通じて、最終的には、水質環境基準の達成が可能となる下水道の整
備を目指すものです。昭和 45 年改正で、このような水質環境基準に向けた法的
仕組みを導入したことは、より良好な水環境の形成という政策体系の中におい
て、下水道整備を明確に位置づけたものとして高く評価されるべきものでしょ
う。
2
これまで、流総計画制度に基づき、下水道の整備エリアの拡大と高度処理の実
施率の向上が図られ、河川を中心に水質環境基準の達成率が大きく向上してき
ましたが、なお依然として、東京湾をはじめとした閉鎖性水域では高度処理の遅
れ等により、赤潮等が発生し、生態系への悪影響が生じていることはご案内のと
おりです。
今回の省令改正では、今般の流総計画制度の抜本見直しの一環として、流総計
画に、これまでの概ね 20 年~30 年間の長期計画に加え、概ね 10 年間の中期的
な整備方針を明記することとしましたが、これは、長期計画と現状とをしっかり
評価して、長期計画の達成に向けた中期のアクションプランを策定するもので
あり、かつ、対策の内容も従来の全面的な改築だけでなく、運転条件の見直し、
簡易設備(凝集剤添加設備等)の設置等、段階的な対応も含むものです。
法令的な対応は、法律改正の必要がなく、省令改正で対応したものですが、昭
和 45 年度に創設された流総計画制度の実効性を大きく向上させるものとして、
法律改正と同様の重みを持つものであると思います。
ぜひとも、流総計画の対象となる管理者におかれては、財政制約という厳しい
環境にあることは承知していますが、水質環境基準の達成に向け、新たな流総計
画制度に基づき、実効性のある取組を着実に講じて頂きたいものです。
あと、流総計画制度の抜本的見直しについては、他にも様々な盛りだくさんの
取組がありますが、ここは主に法制的な話をする場ということですので、割愛さ
せて頂こうと思います。
-法改正の 7 月施行分については、主なものとして、雨水貯留施設に関する制
度の創設、日本下水道事業団(JS)の権限代行制度の創設、熱交換器の設置に
係る規制緩和、水防法への内水対策の位置づけ等がありますが、まず、雨水貯留
施設に関する制度の創設に関連する政省令改正で、何かお話し頂くことはあり
ますか。-
法制的に面白い話がどこまであるのか若干疑問もありますが、ご質問ですの
で、順に、お話ししていきます。
浸水被害対策区域で民間の雨水貯留施設の所有者等と公共下水道管理者が管
理協定を締結して、公共下水道管理者が当該施設について一定の管理を行うこ
とができるようにするとともに、所有者等が替わっても、協定の効力が維持され
ること(承継効)とした協定制度についてですが、政令上の主な話として、まず、
対象となる雨水貯留施設の規模をどう設定するかということがあり、原則とし
て 100 ㎥以上としています。
これは、「浸水被害の防止を図るため有用なもの」(下水道法第 25 条の 3 第 1
3
項)という法律の要件を具体化したものですが、具体的には、雨水貯留施設の民
間設置・公共管理について、民間の所有者等の自らの浸水安全度を上げることを
超えた公共性があり、公共下水道管理者に過度な負担を与えないといった観点
から必要な規模を検討の上、設定したものです。一般的に、政省令を作成するに
当たっては、法律で委任を受けた範囲で、合理的な説明ができる規定ぶりとする
ことに大きな労力を費やすわけですが、ここでも、そのような検討を経て、設定
が行われたということになります。
また、こちらの方が多少おもしろい論点かも知れませんが、政令上、管理協定
の有効期間をどの程度に設定するかという話があります。結論として、管理協定
の有効期間は、下限を 5 年、上限を 50 年として設定しました。これだけでは、
何の意味があるのか分からないと思いますが、実は、他の各種法令にある有効期
間が想定されるような管理協定制度、-例えば、津波法の指定避難施設に係る管
理協定制度とか、景観法の景観重要建造物等に係る管理協定制度とか、都市再生
特別措置法の備蓄倉庫に係る管理協定制度とか、都市緑地法の緑地に係る管理
協定制度など-、ですが、有効期間は、どれも下限は 5 年、上限は 20 年となっ
ています。確か、これら制度の一番初めは平成 13 年の都市緑地法改正の管理協
定制度だと思われるので、後のものはみんなそれに習ってやっていたというこ
とでしょうか。
しかし、このように全てが同じだと、憲法上の財政権への制約から上限の 20
年を超えることはできないのではないかという意見もあり得るわけですが、や
はり、再開発に伴ってビルの地下に作られる大規模な雨水貯留施設等について
は、場合によっては、官民双方のサイドで、施設の耐用年数である概ね 50 年く
らいまでは、所有者が替わっても効力を維持したいというニーズがあることも
考えられます。なんとか前例を破れないかということになります。
そもそも、一番初めに導入した都市緑地法の緑地に係る管理協定の上限 20 年
の趣旨ですが、若干推測も含みますが、民法(第 604 条)で一般的に賃貸借契約
の期間の上限が 20 年とされていることを踏まえたものらしいのです。しかし、
今回の雨水貯留施設は基本的に建物の一部として作られるものであり、建物賃
貸借については、現在の借地借家法(第 29 条第 2 項)で民法第 604 条の規定が
適用除外されていますので、上限 20 年の縛りに拘束される必要はないのではな
いかと言えそうです。それに加えて、先ほど言ったように、場合によっては、官
民双方で 50 年くらいまでの期間を設定するニーズがあるということですから、
これまでの前例を破り、上限 50 年で適当であろうということになりました。
まぁ、法形式論の要素が強い話ではありますが、実質論としては、制度設計に
当たっては、できるだけ現場で使いやすい制度となるように難しくとも知恵を
出していく必要があるという事例の一つとして理解して頂ければと思います。
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ちなみに、これは余談になりますが、そもそも民法で賃貸借契約の上限が 20
年とされていることにもいろいろあるわけです。なんで、契約自由の原則、-契
約は、基本的には当事者間の合意に任せ、法律等による国家の介入は必要最小限
の場合だけ行う-、なのに、賃貸借契約の契約期間みたいな話で国家が介入する
のか、疑問を持つと夜も眠れませんね(笑)。
調べてみると、この規定は明治時代の民法の起草まで遡るもので、民法の起草
というと、日本史で出てくる梅謙次郎、富井政章、穂積陳重の3人が小田原の伊
藤博文の別荘なんかに合宿などして一生懸命作ったという話なのですが、この
規定部分の解説はあまりなくて、3人の中で断突優秀だった梅謙次郎が書いた
ものくらいなのではないでしょうか。それも、梅さんらしくなく、いまいちクリ
ア・カットなものでない(笑)。
ただ、これには後日談があって、この前の通常国会に民法の大改正案が提出さ
れて、-この法案は下水道法改正みたいに成立はしていないわけですが-、その
中で、この民法の賃貸借契約の上限を 50 年に改める案になっていて、期せずし
てうちのと同じになっています。趣旨は、ゴルフ場の敷地の賃貸借、プラントの
リース契約等のニーズを踏まえたもののようですが、要は、ニーズに応じた政策
判断の要素が強い話ということですね。
話を元に戻しまして、さらに、下水道法令の話ではないのですが、管理協定に
ついては当該建物等の流通に関する取扱いの話があります。具体的には、宅地建
物取引業法上、宅地建物取引業者は、建物等の購入者等に対して、契約前に重要
事項を説明しなければならないこととされていますが(重要事項説明制度)、今
般の改正政令で、宅地建物取引業法施行令を改正し、重要事項に管理協定に係る
事項を加えることとしました。これは、場合によっては、管理協定により所有者
等の側に、一定の義務や負担が生じることもあり得るため、建物の購入者等に不
測の損害がないようにするためのものです。
あと、雨水貯留施設に関する制度としては、管理協定制度に加え、浸水被害対
策区域の浸水被害の防止を図るため、排水設備について条例で貯留浸透機能を
備えることを義務づける制度も創設されましたが、政令改正で、建築基準法施行
令も改正し、建築確認の対象に、この義務づけ規定を追加することとしました。
建築確認段階で審査を受けることで、この制度の実効性がより高まることにな
ります。
-法改正の 7 月施行分のうち、日本下水道事業団(JS)の権限代行制度の創設
に関連する政省令改正で、何かお話し頂くことはありますか。-
法改正で、地方公共団体からの要請があり、JSが下水道管理者に代わって、
5
終末処理場等や一定の管渠の建設に関する工事を自ら行うことが適当であると
認められる場合には、JSが行うことができるとされたところですが(日本下水
道事業団法第 30 条第 1 項)、具体的に代行できる下水道法の権限等については、
政令で規定することになっています(第 30 条第 2 項)。
政令改正では、代行工事を行うに当たって必要となる下水道法の管理者権限
を具体的に列記するとともに(日本下水道事業団法施行令第 5 条第 1 項)、下水
道管理者に影響が大きいものについては、事前の同意や事後の通知を行うこと
としました(令第 5 条第 3・4 項)。なお、事業計画の策定権限等の管理全般に影
響を与える権限については、引き続き、管理者に残す必要があるため、権限代行
の対象とはなっていません。ただし、事業計画の変更等については、権限代行者
であるJSに与える影響が大きいことから、法律上、事前にJSの意見を聴かな
ければならないこととされています(法第 31 条)。
【令第 5 条第 1 項に列記された下水道法上の管理者権限】
①兼用工作物の工事施行命令(公共・流域・都下)
②承認工事等の承認(公共・流域・都下)
③兼用工作物の費用負担の協議(公共・流域・都下)
④公共下水道に係る一定の施設・物件の設置に対する許可等
⑤流域下水道に係る一定の施設・物件の設置を可能とする共用暗渠の協議
⑥都市下水路に係る一定の施設・物件の設置に対する許可
⑦他人の土地への立入り・一時使用(公共・流域・都下)
⑧上記に係る損失補償(公共・流域・都下)
⑨許可・承認への条件付与(公共・流域・都下)
⑩監督処分(公共・流域・都下)
⑪上記に係る損失補償(公共・流域・都下)
⑫国等の特例(公共・流域・都下)
【令第 5 条第 3・4 項に規定された同意・通知】
同意:上記の②、④、⑤、⑥、⑨、⑫
通知:上記の②、④。⑤、⑥、⑨、⑩、⑫
以上は、下水道法上の管理者権限ですが、他の各種法令において、地方公共団
体に対して、その性格を踏まえ、特別の権限を付与したり、或いは、特別の手続
を取ることを認めている場合があり、JSも代行工事を行うに当たって本来の
管理者である地方公共団体と同様の扱いとすることが必要となる場合がありま
す。
6
これまでも、JSの建設受託業務について、政令上、対象となる法令の規定を
列記して、JSを地方公共団体とみなす規定をおいていたところですが(令旧第
5 条)、今般の改正政令で、そのみなす規定に代行工事を行うに当たって必要と
なる対象法令の規定を追加しました(令新第 7 条)。
この中には、例えば、行政代執行法の諸規定が含まれており、権限代行につき
一定の公権力の行使が可能となったJSが、行政命令の実効性を確保する上で
不可欠な行政代執行法上の権限を行使できるように措置しています。ちなみに、
あまり想定はされませんが、代行工事を行うに当たって、土地収用が必要となる
場合については、JSが土地収用法上の起業者として土地収用法の規定が適用
されるものと考えられます。なお、土地収用法上の起業者となるためには、事業
を施行する法律上の権限を有していることが必要とされ、単なる事業の受託者
等は起業者になり得ないとされています。
-法改正の 7 月施行分のうち、熱交換器の設置に係る規制緩和に関連する政省
令改正で、何かお話し頂くことはありますか。-
熱交換器の設置に係る規制緩和については、ほぼ法律で制度の枠組みが書か
れているので、そんなに大きな話はありませんが、熱交換器を設置できる者を、
法律で規定している「熱供給事業法の熱供給事業者」に加え、政令でどのような
ものまで認めるかという話があります。
法律上は、典型的な例として熱供給事業者を明示しているのですが、熱供給事
業とは、一般の需要に応じて一定の熱供給を行う事業ですが、使用する設備の能
力が 21 ギガジュール以上、-21 ギガジュールというと、
家庭用のエアコンで 2,
500 台分の能力-、ですので、非常に大きな事業者となります。
今後の再生可能エネルギーの普及促進を考えれば、比較的小規模な事業者に
も設置を認める必要がありますが、他方、熱交換器は管渠内に設置するのであり、
設置・管理について下水道事業への支障が生じず、かつ、事業がしっかり成り立
つことにも留意する必要があります。
このようなことから、政令では、管理者が「適正かつ確実な計画を有する者」、
「必要な経理的基礎及び技術的能力を有する者」と認める者に設置を認めると
いう必要最小限の基準を定めることとし、具体的な判断は、管理者が地域の特性
等を踏まえ行うことができるようにしました。
このあたりは細かな話と思われがちですが、こういう具体的な基準の設定に
ついては、制度がちゃんとワークするか否かの分かれ目になる場合もあり、バラ
ンスの取れた基準を作ることは非常に重要なことですね。市町村の現場にいた
経験も踏まえると、一般論としては、必要最小限のルールは決めるものの、細か
7
な判断は現場が裁量を持って行えるように仕組むことがポイントではないかな
と思います。
-法改正の 7 月施行分のうち、水防法への内水対策の位置づけに関しては、省
令以下のものであり、大きな話はないかと思いますが、関連して、国土交通省組
織令が改正されていますね。そのあたりについて、何かお話し頂くことはありま
すか。-
そこまでよく気づかれました。内水対策に係る水防法の改正に関連して、国土
交通省組織令が改正されています。
国の組織については、法令でその基本的枠組みが規定されることになってい
るのですが、国土交通省について言えば、国土交通省全体の所掌事務は国土交通
省設置法で、局、部、課等の所掌事務は国土交通省組織令、室、官等の所掌事務
は国土交通省組織規則で決まっています。
組織関係の法令における所掌事務の規定ぶりは、組織の機動的な運用を図る
必要性も踏まえ、一定程度抽象的に決まっているため、法律等の改正で新たな事
務が発生する場合でも、基本的に、これまでの所掌事務で読める場合には改正の
必要がありません。現在の所掌事務で読めない場合にのみ、必要な改正を行うこ
とになります。
内水浸水に係る浸水想定やハザードマップの作成等のソフト対策については、
当然のことながら、これまでも下水道部で行ってきておりますが、法令上の事務
としてあえて組織令で規定しなければならない場合には、特定都市河川浸水被
害対策法の施行事務(都市浸水想定区域に関すること)のように、下水道部の流
域管理官の所掌事務として規定されていたところです。
今回の水防法改正では、水防法に内水浸水に係る制度(雨水出水浸水想定区域
等)が創設されることになったことから、組織令において、雨水出水浸水想定区
域に関することが、下水道部及び流域管理官の所掌事務として明記されること
になりました。
-以上で、法改正の 7 月施行分の話を終わりにして、時間の経過からすると地
方分権等対応の 10 月の政省令改正の話になりますが、それは最後にお聞きする
として、同じく法改正の関係で 11 月施行分の話に移りたいと思います。法改正
の 11 月施行分については、主なものとして、維持・修繕基準の創設、事業計画
の見直し、雨水公共下水道制度の創設がありますが、まず、維持・修繕基準の創
設に関連する政省令改正で、何かお話し頂くことはありますか。-
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公共下水道と流域下水道の維持・修繕基準については、法律で位置づけが行わ
れていますが、具体的な内容は政省令で規定することになっているため、政省令
の話が即、具体的な中味の話となります。
まず、具体的な条文を見た方がいいと思いますが、政令(第 5 条の 12 第 1 項)
では、
「 一 公共下水道又は流域下水道(以下この条において「公共下水道等」と
いう。)の構造又は維持若しくは修繕の状況、公共下水道等に流入する
下水の量又は水質、公共下水道等の存する地域の気象の状況その他の状
況(以下この項において「公共下水道等の構造等」という。)を勘案し
て、適切な時期に、公共下水道等の巡視を行い、及び清掃、しゆんせつ
その他の公共下水道等の機能を維持するために必要な措置を講ずるこ
と。
二 公共下水道等の点検は、公共下水道等の構造等を勘案して、適切な時
期に、目視その他適切な方法により行うこと。
三 前号の点検は、下水の貯留その他の原因により腐食するおそれが大き
いものとして国土交通省令で定める排水施設にあつては、五年に一回以
上の適切な頻度で行うこと。
四 第二号の点検その他の方法により公共下水道等の損傷、腐食その他の
劣化その他の異状があることを把握したときは、公共下水道等の効率的
な維持及び修繕が図られるよう、必要な措置を講ずること。
五 災害の発生時において、公共下水道等の構造等を勘案して、速やか
に、公共下水道等の巡視を行い、損傷その他の異状があることを把握し
たときは、可搬式排水ポンプ(排水施設から下水があふれ出るおそれが
ある場合に、当該排水施設から下水を排出するための可搬式のポンプを
いう。)又は仮設消毒池(水処理施設において下水を処理することがで
きなくなるおそれがある場合に、当該下水を流入させ、その消毒を行う
ための仮設の池をいう。)の設置その他の公共下水道等の機能を維持す
るために必要な応急措置を講ずること。」
となっており、省令(第4条の4第1項)では、
「
令第五条の十二第一項第三号に規定する国土交通省令で定める排水施
きよ
設は、暗渠である構造の部分を有する排水施設(次に掲げる箇所及びその
周辺に限る。)であって、コンクリートその他腐食しやすい材料で造られ
ているもの(腐食を防止する措置が講ぜられているものを除く。)とす
る。
一
下水の流路の勾配が著しく変化する箇所又は下水の流路の高低差が著
9
しい箇所
二
ふせこし
伏越室の壁その他多量の硫化水素の発生により腐食のおそれが大きい
箇所」
となっています。
政令の1号、2 号、4 号はある意味常識的なことだと思われますが、3 号では、
具体的に省令で規定した腐食のおそれが大きい暗渠の箇所・その周辺について、
5年に1回以上の頻度で点検を行うこととしています。
1年間で管渠に起因する道路陥没は概ね 4,000 件程度であり、そのうち、大
きな事故の恐れが高い本管での件数は約 3 割の概ね 1,000 件程度で、中でも、
腐食を原因とするものが深刻と言われています。このため、政令では、特に、腐
食のおそれが高い箇所については具体的な点検の頻度等の基準を明記すること
として、できるだけ道路陥没による被害等を予防していこうとしました。
政令の 5 号は、
『法律改正談義とその逸脱』で若干詳細に述べましたが、法改
正で、他の公物管理法の維持・修繕基準にはない規定として、下水道の維持・修
繕基準には「災害の発生時において公共下水道の機能を維持するための応急措
置の実施に関する基準を含む」(第 7 条の 2。流域下水道にも準用)と規定され
たことを受けた特色のある規定です。
規定内容は、東日本大震災の経験も踏まえ、災害の発生時において、可搬式排
水ポンプ、仮設消毒池の設置等の下水道機能を維持するための応急措置を講じ
るというものですが、当然の帰結として、事前に、下水道事業の業務継続計画の
策定や、所要の資機材等の調達又は円滑な調達のための災害支援協定等の締結
なども行っておく必要があります。
ご案内のとおり、法改正で、法律上(第 7 条の 2 第 1 項。流域下水道にも準
用)、公共下水道管理者、流域下水道管理者には、
「下水道を良好な状態に保つよ
うに維持し、修繕」することが新たに法的な義務となりました。
各管理者におかれましては、安全・安心な下水道システムの確立、災害時にお
ける業務継続体制の確保に向けて、予算措置を含め適切な対応を行って頂きま
すようお願い申し上げます。
-法改正の 11 月施行分のうち、事業計画の見直しに関連する政省令改正で、何
かお話し頂くことはありますか。-
事業計画の見直しについては、法律レベルの大きな話として、これまで、建設
中心の計画であったものを、維持管理に関する事項を加えたということがあり
ますが、事業計画全体の見直しとしては、政省令改正事項だけでなく、施行通知
10
事項を含め様々な総合的な見直しが行われることになりました。
この総合的な見直しについて、若干法的観点から整理すると、
① 建設だけでなく、維持管理を含めた総合的な計画にしたことに加え、
② 建設についても、個々の施設のスペック(配置・構造・能力)に加え、
個々の施設のスペックの前提となる機能向上の目的(整備水準)や改築等
の判断基準も重視したものとしたこと、
③ さらに全体に通じる話ですが、事業計画の裏打ちとなる収支面の見通
し等をこれまでより重視したものとしたこと、
が挙げられます。
これらは、新下水道ビジョン(平成 26 年 7 月)、社会資本整備審議会答申(「新
しい時代の下水道政策のあり方について」。平成 27 年 2 月)で示された、これ
までの事業計画を「総合的なマネジメント計画」にするという基本方針に則して、
その具体化が図られたものであると言っていいでしょう。
しかしながら、ご案内のとおり、新たな事業計画制度については、その仕組み
やマニュアルを作っただけで意味があるものではありません。各管理者が、新た
な事業計画制度を通じて、厳しい財政の状況や執行体制の状況の中にあっても、
今後の下水道事業の中長期的な見通しをしっかり描いて頂くとともに、併せて、
経営の健全化や執行体制の確保に向けた様々な取組を検討の上、着実に実行し
ていって頂いてこそ、制度の見直しが生きてくるものです。
まさに、これからの運用が何よりも大切ということですので、国土交通省とし
ても、制度がしっかりワークするよう現場の方々と連携をとってまいりたいと
思いますので、ぜひとも、各管理者におかれまして、新たな事業計画制度につい
て取組の推進方、お願い申し上げます。
【ご参考】
(経営の健全化に向けた取組の例)
・各種支援制度の整備、個別訪問等による下水道への接続促進
・量水器の設置促進など有収率向上対策の推進
・経営状況を踏まえた下水道使用料の見直し検討
・督促強化等による下水道使用料の徴収対策の推進 など
(執行体制の確保に向けた取組の例)
・維持管理等の広域化・共同化のための方策の協議の場としての(都道府県
等を核とした)協議会の設置
・複数年にわたる包括的な業務発注など PPP/PFI の導入
・複数市町村による維持管理業務等の共同発注、計画の共同策定
11
・日本下水道事業団、都道府県公社等の公的機関による支援
・組織形態等の見直し
・研修等を通じた人材の確保・育成、技術力の継承 など
-法改正の 11 月施行分のうち、雨水公共下水道制度の創設に関連する政省令改
正で、何かお話し頂くことはありますか。-
雨水公共下水道については、法律レベルで枠組みができており、政省令レベル
では、事業計画の手続、計画の記載内容等、事務的なものですので、特段お話し
すべきものはございません。
-以上で、法改正関係の話を終わりにして、最後に、地方分権等対応の 10 月の
政省令改正の話をお聞きしたいと思います。10 月施行分については、資格制度
の見直し、トリクロロエチレンに係る水質基準の強化がありますが、まず、資格
制度の見直しに関連する政省令改正で、何かお話し頂くことはありますか。-
これは、地方公共団体での執行体制の確保が大きな課題となっている中で、本
年 1 月の閣議決定(「平成 26 年の地方からの提案等に関する対応方針」)で、下
水道法の資格制度における実務経験年数の要件について、これまでの状況変化
を踏まえ、本年中に合理化を図る旨規定されたことを踏まえたものです。
下水道法の資格制度については、
『法改正談義とその逸脱』では射程の範囲外
でしたので、少し、その内容や歴史等についてお話ししようと思います。
この制度は、下水道の設計・工事の監督管理・維持管理のうち、一定の業務、
-具体的には、設計・工事の監督管理については、排水施設・処理施設・ポンプ
施設の設置・改築、維持管理については、処理施設・ポンプ施設の維持管理です
が-、これらについては特殊な技術を必要とすることから、当該業務は一定の資
格を有する者しか行ってはならないとしているものです。
先般の『法改正談義とその逸脱』で、下水道法の事業計画制度について、公物
管理法体系の中で、自治事務(例:下水道、都道府県道・市町村道、準用河川)
に対する事前計画の策定・協議を義務づけているのは非常に特殊であることを
述べましたが、この資格制度についても、ダムの管理などを除き、公物管理体系
の中で非常に特殊なものとなっています。これには、対象となっている業務に特
殊な技術を要するということに加え、やはり、事業計画の策定・協議制度の背景
と同様、浸水の防止に加え、公衆衛生の確保、公共用水域の水質保全等、人の生
命、健康に密接に関わるものであることが大前提になっているのであろうと思
います。
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下水道法の歴史を振り返ってみると、そういうこともあり、設計・工事の監督
管理については、昭和 33 年の下水道法の制定当初から資格制度の規定(第 22
条)が入っています。維持管理は入っていなかったわけですが、実は、昭和 32
年 12 月の建設省計画局の下水道法案には入っていますね。この建設省計画局案
は、意外と先見性のある規定や、おもしろい規定が結構入っている案となってい
ます。例えば、
『法改正談義とその逸脱』でも触れましたが、今回の法改正で盛
り込んだ維持・修繕基準の規定が既に入っていたり、はては、民営下水道事業の
規定もあってその際公権力を行使する場合の手順なんかも書いてあったりしま
す。法制定の段階で、維持管理に係る資格制度がどうして落ちたかについてはよ
く分かりませんが、その時点では、下水道事業を新たに始める地方公共団体が維
持管理の実務経験を有する者を確実に確保することが現実問題として難しかっ
たのかも知れません。
資格制度に関する次の法改正は、昭和 45 年改正ですが、ここで、設計・工事
の監督管理に加え、維持管理も対象とされました。昭和 45 年改正では、下水道
法の目的に、
「公共用水域の水質の保全に資すること」が入り、水質保全に関す
る様々な見直しが行われたので、さすがに、処理施設等の重要な施設については
資格制度が必要となったということでしょう。資格制度については、それ以降は、
法律レベルの改正は行われず、当時の規定でずっと現在まで来ています。
具体的な資格要件(学歴・試験等の要件とそれに応じた実務経験年数の要件)
については、昭和 34 年の政令制定で、設計・工事の監督管理に係る要件が規定
され、また、昭和 46 年の政令改正で、維持管理に係る要件が規定されるととも
に、設計・工事の管理監督を含め技術士試験合格者に関する事項が追加されてい
ます。さらに、昭和 50 年の政令改正で、JS の技術検定制度が創設されたことを
受け、当該検定合格者に関する事項が追加されています。
あと、制度の見直しではありませんが、運用面の主な見直しとしては、包括的
民間委託に関連して、平成 16 年 3 月と平成 17 年 3 月に通知が出され、包括的
民間委託については、民間事業者が維持管理に関して実質的な責任を負うので
あれば、民間事業者側に資格者を置けばよい旨の整理が行われています。
それはさておき、今回課題となった実務経験年数の要件の見直しについては、
昭和 50 年の政令改正で、設計のうち実施設計について、処理施設・ポンプ施設
と排水施設の区分を設け、後者の経験年数を半分にしたこと以外、特段の見直し
は行われていません。
先ほど述べたように、下水道の特性を踏まえた公物管理法体系の中では特殊
な規定ですので、実務経験年数の緩和についても合理的な説明が可能な場合で
しかできないわけです。他方、地方公共団体における技術系職員の減少によるゼ
ネラリスト化等に伴い、なかなか下水道だけの実務経験年数を長期間求めるこ
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とが困難になっているという現実はあるわけであり、一部の地方から実務経験
年数の緩和について要望があることには、それなりの背景があるわけです。いず
れにしても、見直しを行うだけの合理性があるか否かが問題となるわけです。
この点、近年、下水道の実務に従事することによってのみ得られる下水道固有
の専門的知見については、各種技術指針・基準類の充実等により、従前と比べ短
い期間で得ることが可能となっているという状況があります。他方、他の施設管
理者や行政部局等との調整といった行政マネジメントの専門的知見については、
大きな状況変化はありません。
このあたりの事情を総合的に検討の上、今回の政省令改正では、下水道固有の
専門的知見については、これまでの概ね半分程度の下水道の経験年数を求める
こととし、また、行政マネジメントの専門的知見については、類似の施設(例:
上水道、工業用水道)でも所要のものが獲得できると考え、下水道と類似の施設
を合わせた経験年数についてこれまでの経験年数を求めることとしました。
いずれにしても、今後の下水道政策にとって最も困難な課題の一つと言って
いい「下水道の持続」のためには、何よりも技術力等を持った「人の確保の持続」
が不可欠です。下水道法の資格制度は、形式的な要件を確認する必要最小限度の
制度ですが、重要なのは、資格制度を形式的に守るというだけでなく、具体的に
人材育成に向けた取組を行い、技術力等を持った人の確保を持続していくこと
であると言っていいでしょう。
各管理者におかれては、地方公共団体全体の行革推進が強く求められている
中で、容易なことではないと思いますが、ぜひとも、
「現在」だけよければよい
のではなく、自分がいなくなった後の「将来」のことも考えて頂いて、今後とも、
関係部局との調整も含めご尽力頂きますようお願い申し上げます。
-次に、トリクロロエチレンに係る排水基準の強化に関連する政令改正で、何か
お話し頂くことはありますか。-
これは、この連載(『政省令談義とその逸脱』)の初めの方で触れましたが、下
水道法が水質汚濁防止法の特別法になっていることと関わる話です。
ご案内のとおり、各公共下水道管理者においては、下水道整備エリアにおいて、
事業場等に対して水質汚濁防止法と同じ水質規制行政を行っているのであり、
水質汚濁防止法と連携を取って、適確に水質規制行政を行っていかなければな
りません。
事業場等の排水基準については、水質汚濁防止法の体系では、
「排水基準を定
める省令」で対象物質等ごとの基準が定められる一方、下水道法の体系では、下
水道法施行令で、対象物質等とその基準が定められる法的な仕組みとなってい
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ます。
今般、トリクロロエチレンの耐容一日摂取量の評価(平成 22 年 9 月。食品安
全委員会)を踏まえた水道水質基準の見直しを受け、水質汚濁防止法の「排水基
準を定める省令」で、トリクロロエチレンに係る排水基準が 0.3 ㎎/Lから 0.1
㎎/Lに改正されることとの整合性を図り、同様の措置を行う下水道法施行令の
改正を行いました(施行日:10 月 21 日)。
下水道の整備率が大きく向上し、下水道エリアが大きく拡大した現在におい
ては、下水道管理者は、有害物質等を排除して、公共用水域の安全・安心を守る
水質規制行政の中において、非常に大きな役割・責務を担っていると言っていい
でしょう。
現在、事業場排水指導指針の見直しの検討も行われていますが、各管理者にお
かれては、事業場等に対する排水指導等の水質規制行政について、引き続きのご
尽力をお願いします。
-『法改正談義とその逸脱』、
『政省令談義とその逸脱』というタイトルで、長期
連載を行ってきましたが、今般の下水道法改正等に関連する法制的なお話の連
載はこれで終わりとなります。最後に、今後の下水道に関する法制度の見直しに
ついて、何かコメントがありましたら、どうぞ。-
先般の『法改正談義とその逸脱』については、手前味噌ながら期せずしておも
しろかったとの声も頂きましたが、さらに、今回の『政省令談義とその逸脱』と
なると、枝葉から幹や木を語ることになるので、どうかと思いつつ、ご依頼です
ので、どうにかこうにか行った次第です。そういうことですので、内容について
はいろいろご宥恕頂ければと思います。なにか、
「お願い行政」が多くなってし
まったきらいがありますが・・・。
それはさておき、最後のご質問ですが、この連載について、タイトルが、
『~
談義とその逸脱』なのに「逸脱」が少ないのではないかと指摘する方もおられま
した(笑)。最後のご質問ということですので、最後は大きく「逸脱」して、あ
くまで個人的な見解ということでお許し頂きたいのですが、少しだけ先の話を
させて頂きます。
当たり前のことですが、法律の制定や改正は、あくまで政策実現の一つのツ
ールですので、新たなツールが必要になってくる状況になるかどうかというこ
とがあろうかと思います。現場の課題と法的ツールがマッチングして世の中が
よくなっていく素材が出てくるかどうか。
その点、今般の法改正でも現下の法体系の相場観の中でできるだけの手当を
しましたが、執行体制が脆弱化する地方公共団体においていかに下水道の機能
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を維持していくかという大きな課題に対して、法的にも様々な制度・仕組みを
検討していく余地は大きいのではないでしょうか。例えば、広域化・共同化の
推進制度、公共法人による権限代行機能の充実、民間の資金・能力の積極的導入
制度など、いろいろな素材があると思います。
また、処理場の資源・エネルギーの拠点化の推進という大きな課題に対しても、例
えば、規制の合理化や緩やかな計画制度等、いろいろな素材があろうかと思います。
あと、これは、飽くまで勝手な思いつきで、かつ、非常に地味なテーマですが、水に溶
けないものなど支障があるものを流さないルール、ディスポーザーのあり方等、家庭
等における下水道の使い方のルールづくりという素材もあるのではないでしょうか。さ
らに、抽象度の高い話になっていきますが、インフラ輸出や技術開発・イノベーション
といった政策課題に対しても、何らかの余地があるのかも知れません。
そして、さらに勝手な話になりますが、ここまで様々な機能が出てきて、人々のイメ
ージも徐々にですが変わってきている下水道について、明治時代からの「下水道法」
という名称のままでよいのか否か・・・。
いろいろ話は尽きませんね。所定の時間も超過しました。いろいろなお話について
は、GKP で私のサイト(http://www.gk-p.jp/gkp2/library-pro.html)を立ち上げてもらい
ましたので、ご関心のある方はそれを見て頂くこととして、ここで、締めにさせて頂きま
す。これまで長時間にわたりお付き合い頂き、ありがとうございました。
-長時間にわたるお話、ありがとうございました。-
(以上)
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