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4.3MB - ニチアス

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4.3MB - ニチアス
2013年 1号 No. 360
目 次
【巻頭言】
◆建材特集号発刊にあたって ……………………………………………………………………………………………… 1
取締役執行役員 建材事業本部長 武井 俊之
【News】
Ⓡ
◆エコラックス の製造技術で
平成 24 年度資源循環技術・システム表彰「経済産業省産業技術環境局長賞」を受賞しました …………………2
【特別企画】
◆建築物の安全・省エネ・快適性に貢献するニチアスの建材 ………………………………………………………… 4
【解説】
◆省エネルギー基準の変遷と今後の法制化の動き ……………………………………………………………………… 6
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課 遠山 仁
内容) わが国では地球温暖化問題への対応を図るため,温室効果ガス削減対策の一環として省エネ法が改正され,住宅の断
熱化などの需要はますます高まるものと考えられます。ここではこれまでの省エネ基準の変遷と今後の法制化の動き
について解説します。
【製品紹介】
Ⓡ
Ⓡ
◆住宅用ロックウール断熱材「ホームマット 」
「ホームマット NEO」………………………………………………10
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
Ⓡ
◆けい酸カルシウム板 TOMBO No.6458「エコラックス 」……………………………………………………………13
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
Ⓡ
◆化粧けい酸カルシウム板 TOMBO No.6462「アスラックス 」シリーズ …………………………………………15
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
Ⓡ
◆巻き付け耐火被覆材 TOMBO No.5520「マキベエ 」…………………………………………………………………18
建材事業本部 技術開発部 建材工法開発課
Ⓡ
◆芯材付繊維積層煙突ライニング材 TOMBO No.6491「カポスタック スーパー」
耐熱性ゾノトライト系煙突ライニング材 TOMBO No.6496「セラスタック 」……………………………………23
Ⓡ
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
◆ニチアスのフリーアクセスフロアシステム ……………………………………………………………………………26
建材事業本部 技術開発部 建材工法開発課
Ⓡ
Ⓡ
◆免震構造の耐火材 TOMBO No.5540「メンシンガード 」TOMBO No.5550「メンシンメジ 」…………………31
建材事業本部 技術開発部 建材工法開発課
Ⓡ
◆折板屋根用断熱材 TOMBO No.4513「スーパーフェルトン Ⅱ,Ⅲ」 ……………………………………………35
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
※本誌に記載された製品名はニチアス㈱の登録商標または商標です。TOMBO はニチアス㈱の登録商標です。
送り先ご住所の変更,送付の停止などにつきましては,下に記載の連絡先までご連絡ください。
なおその際は,宛て名シールに記載されている 7 桁のコードを必ずお知らせくださいますよう,お願いいたします。
〈連絡先および本誌に関するお問い合わせ先〉
ニチアス株式会社 経営企画部広報課
TEL :03-3433-7244
E-mail:[email protected]
FAX :03-3438-0600
本誌の内容は当社のホームページでもご紹介しております。
当社ホームページでは,
1999 年 1 号から最新号までの内容をご覧
いただけます。
http://www.nichias.co.jp/
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈巻頭言〉
建材特集号発刊にあたって
取締役執行役員 建材事業本部長 武
井俊之
新年明けましておめでとうございます。
わが国のエネルギーを取り巻く状況は,原発事故を契機とした電力の供給不安,燃料コスト上昇に
伴う電気料金の値上げ,クリーンエネルギーで原発分を代替できるのかなど,さまざまな問題をかか
えております。
そんな中,政府は地球環境問題の解決は人類共通の課題であるとの認識のもと,持続可能な低炭素
社会の早期の実現化を推進しています。その一環として,住まいの快適性の向上や化石燃料への依存
度の低減を推進するため,住宅・建築物分野においては,従来の冷暖房エネルギーの効率化による省
エネだけでなく,設備も含めた一次エネルギー消費量の削減を目指して,2020年をめどに住宅向け省
エネルギー基準の強化と義務化を行っていくことになっています。これに伴い,住宅の断熱性能強化
の動きが加速し,大手ハウスメーカーでは既に次世代省エネルギー基準を上回るレベルに対応した住
宅の供給を開始しています。この動きは主要な新設住宅市場である一般在来住宅にも広がっていくも
のと考え,弊社は本年 10月に月間生産能力3000トンを有するロックウール新工場を千葉県君津市に
稼動させます。
また,弊社は環境に配慮した製品を開発し,エコマーク認定を受けた製品への切り替えを進めてい
くことで,環境負荷低減にも貢献しております。これに関しましては,社団法人産業環境管理協会主
催の平成24年度資源循環技術・システム表彰におきまして,エコラックスの開発技術を紹介した「廃
棄物・副産物を有効活用した内装建材(けい酸カルシウム板)の開発」で「経済産業省産業技術環境
局長賞」を受賞しました。これからも,弊社は環境に優しい製品を供給することで,持続可能な社会
の発展に貢献してまいる所存です。
今号は,
《建材特集》といたしました。省エネルギー政策に対応する住宅断熱材や環境に配慮した
内装材をはじめ,ビルや住宅などを陰で支える弊社建材製品を紹介させていただきます。
読者の皆さまの本年のご健勝をお祈り申し上げますとともに,ニチアス技術時報のご愛読と,弊社
製品の一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
─ ─
1
ニチアス技術時報 2013 No. 1
ニチアス技術時報 2013 No. 1
「廃棄物・副産物を有効活用した内装建材
(けい酸カルシウム板)の開発」
経済産業省
産業技術
環境局長賞
ニチアス株式会社 建材事業本部
(東京都)
住宅やビルなどの各種建築物の内壁、天井材として使用されるけい酸カルシウム板は、従来、その原料の多
くが天然資源であった。受賞者は、廃棄物・副産物の有効利用促進、天然資源の使用削減を目的として、廃棄
弊社は2012年11月29日,機械振興会館ホールにて,社団法人産業環境管理協会主催の「平成24年度
資源循環技術・システム表彰」において「経済産業省産業技術環境局長賞」を受賞しました。
物・副産物を主原料とするけい酸カルシウム板の開発を行い、その普及を図っている。
火力発電所から発生する排煙脱硫石膏(排煙の脱硫工程で副成される石膏)と製紙工場で発生する廃棄物・
副産物を使用し、これらの使用量が原料全体の50%以上かつ従来製品と同等の性能を有するリサイクル製品
の開発に成功した。
今回の受賞は,廃棄物・副産物を主原料とするけい酸カルシウム板「エコラックス®」の開発を行い,
その普及を図ったことが,循環型社会の構築に大きく貢献したとして,評価されたものです。
本リサイクル製品は、けい酸カルシウム板としてエコマーク認定を取得し、
さらに、
けい酸カルシウム板の性能が規定されるJIS規格(JIS A 5430)の「け
い酸カルシウム板(0.8FK)
」に規定される基準を満たしている。
受賞者は当該製品に関して、平成21年3月末に天然資源製品の製品販売を終
了し、リサイクル製品を販売している。
JIS A 5430 0.8FKリサ
リサイクル
イクル製品
製品
規格値
従来品
0.6以上0.9未満
10.0以上
0.8
12.7
0.8
12.8
0.15 以下
0.10
0.10
0.18以下
0.16
0.16
密度(g/cm3)
曲げ強度(N/mm2)
吸水による長さ変化率
(60℃乾燥→飽水)
〈タテ〉
(%)
2012年11月29日
「平成24年度資源循環技術・システム表彰」表彰式にて
熱伝導率(W/m・K)
難燃性一級又は
発熱性一級
難燃性又は発熱性
45000
45000
40000
40000
35000
35000
数量
(ton)
項目
数量(ton)
次ページに社団法人産業環境管理協会資源リサイクル促進センター発行の小冊子より当該記事を
掲載いたします。
発熱性一級 発熱性一級
30000
30000
25000
25000
20000
20000
15000
15000
10000
10000
5000
5000
00
平成 21 年度
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 22 年度
生産量
生産量
平成 23 年度
平成 23 年度
廃棄物再生利用量
廃棄物再生利用量
リサイクル製品の生産量と再生資源利用量の推移
リサイクル製品の生産量と再生資源利用量の推移
再生原料
(廃棄物)
既存工程(青背景部分)
原料工程
製造工程
けい酸質原料 補強繊維 石灰質原料
積載
抄造機
裁断
撹はん混合
反応工程
表彰式で授与された盾
オートクレープ
(水熱合成)
乾燥機
仕上げ工程
ダブルサイザー
(定寸切断)
検査
製品
図 リサイクル製品の製造工程
経済産業省鈴木産業技術環境局長から賞状を
授与される弊社代表取締役専務 米澤靖男
出展:社団法人産業環境管理協会 資源リサイクル促進センター
─ ─
2
─ ─
3
ニチアス技術時報 2013 No. 1
ニチアス技術時報 2013 No. 1
建築物の安全・省エネ・快適性に貢献するニチアスの建材
住宅用ロックウール断熱材
ニチアスは「断つ・保つ」の技術で開発した不燃・耐火・断熱機能を備え,加えて環境に配慮した製品・
施工システムを提供することで,より安全で,より快適な建物の創造に寄与するとともに,地球の明る
い未来に貢献します。
フリーアクセス
フロアシステム
詳細は
P26 ∼
不燃内装材
Ⓡ
エコラックス
インテリジェントビルなどのオフィスの
二重床構造に使用されるフリーアクセス
フロアです。優れた歩行感と耐久性を発
揮します。
詳細は
P13 ∼
ビル,工場,住宅,マンション,病院など
の内壁,天井に使用されるけい酸カルシ
ウム製の不燃内装材です。
けい酸カルシウム板として初となる「エ
コマーク」認定を取得しています。
詳細は
P10 ∼
Ⓡ
ホームマット NEO
屋根・天井・壁の断
熱材として使用され
る次世代省エネ基準
対応の住宅用断熱材
です。室内外からの
熱の出入りを制御し,
建物のエネルギーロ
スを抑えます。
のき天材
Ⓡ
エコラックス のき
のき天
屋根の軒裏に使用さ
れる「エコマーク」を
取得したけい酸カル
シウム板です。火災
のときに延焼しやす
い住宅の“のき”の部
分を火から守る不燃
材料です。
化粧けい酸カルシウム板
Ⓡ
詳細は
アスラックス シリーズ P15 ∼
Ⓡ
※写真はニチアスシグマフロア です。
煙突用ライニング材
Ⓡ
住宅,ビル,工場などの内壁に使用される
けい酸カルシウム製の化粧板です。
不燃性,耐水性,耐汚染性,寸法安定性に
優れ,厨房,洗面所,トイレの水周りから
クリーンルームまで,さまざまな用途に
使われています。
詳細は
カポスタック スーパー P23 ∼
ビルの自家発電装置や給湯用・暖房用ボ
イラーの排気用の煙突に使用される内面
ライニング層と断熱層からなる円筒状の
煙突用ライニング材です。耐久性,耐熱性
に優れた製品です。
巻き付け耐火被覆材
免震装置耐火被覆材
Ⓡ
メンシンガード
詳細は
P31 ∼
地震時の建築物の揺れを低減させる免震
低
低減させる免震
装置の積層ゴム部分を火災から守る耐火
災
災から守る耐火
被覆材です。
─ ─
4
Ⓡ
マキベエ
詳細は
P18 ∼
鉄骨構造のビルの梁や柱に使用される耐
熱ロックウールを採用した巻き付けタイ
プの耐火被覆材です。環境対応,安定した
品質と施工性に優れた製品です。
折板屋根用断熱材
Ⓡ
スーパーフェルトン Ⅱ・Ⅲ
スーパーフェル
折板屋根に使用され
折板屋根に使用される不燃
性ガラス繊維の断熱
性ガラス繊維の断熱材です。
折板屋根構造として
折板屋根構造として耐火認
定,単体で不燃認定
単体で不燃認定を取得し
ており,耐火・断熱・吸音・
耐火・断熱
防露に優れ内装制限
防露に優れ内装制限を受け
る場所にも使用でき
る場所にも使用できます。
─ ─
5
詳細は
P35 ∼
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈解説〉
省エネルギー基準の変遷と今後の法制化の動き
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課 遠 山 仁
1. はじめに
受け,1979 年に「エネルギーの使用の合理化に
地球規模の温暖化問題への対応を図るため,
関する法律(以下,
「省エネ法」
)
」が制定・施行
わが国では,京都議定書の採択以降,温室効果
されました。
ガスの削減対策として,産業,運輸,家庭部門
省エネ法は,建築物の省エネ対策としてすべ
などでさまざまな対策が講じられてきました。
ての建築主に対し,構造の断熱化などの措置を
これらを受けて 2008 年 5 月,エネルギーの使
「努力義務」として課しており,改正の度に,例
用の合理化に関する法律(以下,「省エネ法」と
えば届出措置の義務化などを必要とする建物対
略す)が改正されました。住宅分野では,大規
象範囲を拡大してきています。改正の概要は以
2
模建築物(床面積 2000m 以上の住宅)を対象と
下のとおりです。
した省エネ措置の届出義務化や,年間 150 戸以
■ 2006 年省エネ法改正の概要
上の建売住宅を供給する事業者に対する,一定
大規模な住宅・建築物(2000m2 以上)を建築し
の省エネ基準のクリア要求(トップランナー基
ようとする者(特定建築主等)に対し,省エネの
準)などの対策が講じられています。
取り組みに関する届出を提出する義務等を課す。
また,「長期優良住宅普及促進法」の施行や金
■ 2008 年省エネ法改正の概要
利優遇制度「フラット 35S」,そして住宅エコポ
1)大規模な住宅・建築物に係る担保措置の強
イント制度など省エネ基準を平成 11 年基準(次
化(指示,公表に加えて命令を導入):床
世代省エネ基準)とした住宅に対する支援制度
面積 2000㎡以上の主として共同住宅の建築
も開始されました。
主が対象
さらに 2010(平成 22)年 6 月には,「低炭素
2)一定の中小規模の住宅・建築物も届出義務等
社会に向けた住まいと住まい方推進会議」が国
の対象に追加:床面積 300m2 以上 2000m2
土交通省,経済産業省,環境省の合同で設置され,
未満の住宅の建築主が対象
今後の省エネ・CO2 削減対策についての検討が
3)住宅を建築し販売する事業者に対し,住宅
行われています。
の省エネ性能向上を促す措置を導入:年間
本稿では,これまでの省エネ基準の変遷と今
150 戸以上の戸建建売住宅を供給する事業
後の法制化の動きについてご説明します。
主が対象(住宅事業建築主の判断基準「トッ
プランナー基準」
)
2.省エネ法と省エネ基準
4)住宅・建築物の省エネ性能の表示等を推進:
すべての住宅が対象
2.1 省エネ法について
1970 年代に石油危機による深刻な経済影響を
─ ─
6
ニチアス技術時報 2013 No. 1
9.0
【2006 年】
全ての住宅の建築主
に対して努力義務
【2008 年】
全ての住宅の建築主
に対して努力義務
全ての住宅の建築主
に対して努力義務
住宅事業建築主の報
告(年間 150 戸以上
の建売戸建住宅を供
給している事業主)
300 以上 2000 ㎡未
満の住宅に届出義務
※2010 年 4 月から
(中 小 規 模 な 住 宅・
建築物)
等級 3 新省エネ基準
7.0
級級 4 次世代省エネ基準
6.0
5.2
5.0
4.6
4.7
4.0
4.2
4.0
2.8
3.0
3.7
3.3
2.7
2.7
2.4
2.0 1.8
2.7
1.9
1.0
0.0
2000㎡以上の住宅
に届出義務(大規模
な住宅・建築物)
8.1
8.3
等級 2 旧省エネ基準
8.0
熱損失係数(Q 値) W/( ㎡・k)
【1979 年】
2000㎡以上の住宅
に届出義務(大規模
な住宅・建築物)
1.6
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
地域区分
熱損失係数(Q 値)
室内外の温度差1℃の時に住まい全体から1時間に床面積1㎡当たりに
逃げてゆく熱量
図 1 省エネ法改正の概要
図 2 省エネ基準の変化と熱損失係数
2.2 省エネ基準について
が規定または見直され,住宅の断熱性能基準の
省エネ法に対応して住宅の性能水準等を詳細
強化が図られてきました(図 2)
。特に次世代省
に定めた建築主に対する大臣の告示が,住宅の
エネ基準では大幅な断熱性能基準の強化が図ら
省エネルギー基準(以下,
「省エネ基準」と略す)
れ,住宅の省エネ措置に資する多様な手法を公
となります。省エネ基準は 1980(昭和 55)年に
平に評価するとともに,地域の気候条件の特性
制定され,省エネ法の改正に連動して 1992(平
にきめ細かく配慮したものとなるように基準全
成 4)年基準および 1999(平成 11)年基準に改正・
体を合理化・詳細化したものとなっています。
強化されています(表 1)
。
また,1999 年には「住宅の品質確保の促進等
一部の省エネ基準には通称があります。1980
に関する法律」が制定され,関連して「日本住
年に制定された基準(告示)は「旧省エネ基準(昭
宅性能表示基準」という大臣の告示が定められ
和 55 年基準)
」と呼ばれ,1992 年に改正された
ました。この告示において「省エネ対策等級」
基準は「新省エネ基準(平成 4 年基準)
」
,1999
が示されています。「省エネ基準」と「省エネ
年に改正された基準は「次世代省エネ基準(平
対策等級」の関係はおおむね表 2 のようになり
成 11 年基準)」と呼ばれています。
ます。
これらの基準では,熱損失係数の判断基準値
表1 省エネ法と省エネ基準の経緯
省エネ法
住宅の省エネ基準
1979年 制定
1980(昭和55)年
1993年 改正
1992(平成4)年
住宅の省エネ基準の制定「旧省エネ基準:等級2」※
住宅の省エネ基準改正「新省エネ基準:等級3」※
・各構造の断熱性能の強化
・Ⅰ地域での気密住宅の適用
1999(平成11)年
住宅の省エネ基準の全面改正「次世代省エネ基準:等級4」※
・躯体断熱性能の強化
・全地域を対象に気密住宅を前提
・計画換気,暖房設備等に関する規定の追加
2001(平成13)年
一部改正
2006年 改正
2006(平成18)年
一部改正
2008年 改正
2009(平成21)年
一部改正
1997年 改正
※「 」内は通称,住宅性能表示方法基準省エネ等級で該当する等級を示す
─ ─
7
ニチアス技術時報 2013 No. 1
表 2 省エネ基準と省エネ対策等級の関係
表案が示されました。
省エネ対策等級
この工程表案では,まずは 2015 年度以降に床
旧省エネ基準(昭和55年基準)
等級2
面積 2000m2 以上の建物へ省エネ基準を義務付け
新省エネ基準(平成4年基準)
等級3
て い き,2017 年 度 以 降 に は 2000m2 未 満 300m2
次世代省エネ基準(平成11年基準)
等級4
以上の中規模の建物への義務付ける内容となっ
告示の名称
ています。そして一般住宅である 300㎡未満の小
規模建築物への義務付けは 2019 年度以降になる
3.今後の法制化の動き
予定です。
国は住宅エコポイントや長期優良住宅,フラッ
義務化に向けた基準については,平成 11 年に
ト 35S など,この数年現行の省エネ基準である
策定された「次世代省エネ基準」と呼ばれてい
次世代省エネ基準に適合した住宅に対し,優遇
る基準から 13 年ぶりに改訂され 2013 年 4 月から
措置を相次いで導入し,適合率の向上を図って
運用される予定です。
きています。
具体的には,建物の外皮性能に加えて,設備
これにより,省エネ基準普及率は急激に高ま
や太陽光発電によるエネルギー削減量も加味し
りましたが,国土交通省の推計によると,2011
た住宅全体の一次消費エネルギー量を削減する
年度上半期における次世代省エネ基準の適合率
ことを求める基準となる予定です。
は 5 ∼ 6 割程度であり,まだ 4 ∼ 5 割の住宅は
国土交通省では,省エネ性能の向上に向けた
次世代省エネ基準に適合していない状況です。
取り組みとして,新たな省エネ基準より一次エ
そのため,国は省エネ基準を義務化し,住宅
ネルギー消費量を−10%レベルとした「低炭素
の省エネ対策を底上げする方針を出しています。
住宅」やより高いレベルの基準として,一次エ
2010 年 6 月に経済産業省,国土交通省,環境省
ネルギー消費量を正味ゼロにする「ゼロ・エネ
が共同で「低炭素社会に向けた住まいと住まい
ルギーハウス(ZEH)
」などを新たな誘導水準と
方推進会議」を設置し,2012 年 4 月の第 4 回目
して位置付けています(図 3)
。
の会議では,省エネ基準の義務化に向けた工程
「低炭素住宅」については 2012 年 12 月までに
より高いレベルの
基準
標準−100%レベル
(ゼロ・エネルギー住宅)
[補助制度などにより支援]
②性能向上の誘導
見直し
見直し [住宅ローン減税や容積緩和などにより支援]
(認定状況を踏まえ,必要に応じ水準を見直し)
誘導基準
①ベースとなる基準
の確保
新築住宅において
5∼6 割程度と推計
標準−10%レベル
(認定低炭素住宅・建築物:H24年時点の標準−10%)
(トップランナー基準:H20年時点の標準−10%)
省エネルギー
基準
標準レベル
規模に応じて段階的に義務化
(標準(H11)外皮+標準設備)
[中小工務店向けに省エネ施工技術向上のための講習を実施]
※H11基準に対し,
(省エネ基準の達成状況などを踏まえ,水準を検証)
設備機器の性能向上に
より15∼25%程度
共通指標
省エネルギー水準が向上
(一次エネルギー消費量)
図3 省エネ性能の向上に向けた取り組みのイメージ
─ ─
8
100%
ニチアス技術時報 2013 No. 1
認定制度が開始する予定であり,住宅ローン減
税の最大控除額が引き上げられるなどの優遇措
4.おわりに
置が検討されています。また ZEH に関する支援
わが国の省エネ基準の変遷と今後の法制化の
策としては,国土交通省と経済産業省が 2012 年
動きについてご説明いたしました。本稿によって
度から補助制度をスタートさせています。
住宅分野における,国による省エネルギー対策
国土交通省は「住宅のゼロ・エネルギー化推
へのご理解の一助にしていただければ幸いです。
進事業」として中小工務店を対象に 1 戸当たり
165 万円を上限として補助を実施しています。さ
らに経済産業省は,「ネット・ゼロ・エネルギー・
ハウス支援事業」として,ゼロ・エネルギー住
参考文献
1) 住宅の省エネルギー基準の解説(㈶建築環境・省エネル
ギー機構)
2) 「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」資料
宅に関する先進的な提案を募集し,採択事業者
(経済産業省,国土交通省、環境省)
には 350 万円を上限として補助を行っています。
これらの補助制度に加え,前述した「低炭素
社会に向けた住まいと住まい方推進会議」では,
筆者紹介
省エネ基準の義務化とともに,2020 年までに標
準的な新築住宅で ZEH を実現し,2030 年までに
新築住宅の平均で ZEH を実現することを目標と
しており,今後,住まいの省エネ対策が一気に
加速することが予測されます。
─ ─
9
遠山 仁
建材事業本部
技術開発部 建材製品開発課
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
住宅用ロックウール断熱材
®
®
「ホームマット 」
「ホームマット NEO」
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
1. はじめに
ロックウールは水をはじき,水分を吸いに
1970 年代に 2 度にわたる石油危機に直面し,
くい特性を持っているので,結露にも心配が
深刻な経済的影響を受けたわが国は,産業・運輸・
少ない丈夫な素材です。また無機質の断熱材
家庭部門などで,総合的な省エネルギー対策を
なので,長期間使用しても腐食したり風化し
進めてきました。
たりすることはありません。
住宅分野に関しても,エネルギー使用量の削
減を目的とした国の支援策などが実施され,省
3.製品概要
エネルギー住宅の普及が進んでいますが,さら
ホームマット® はマット状に成形したロック
なる温室効果ガスの排出削減のための取り組み
ウールの周囲を防湿用ポリエチレンフィルムお
が必要な状況です。
よび有孔ポリエチレンフィルムで 6 面被覆した
このような状況の中,今後ますます重要となっ
製品です(図 1)
。
ていくと思われる住宅用ロックウール断熱材
また,ホームマット® NEO は「次世代省エネ
ホームマット® と次世代省エネルギー基準に対応
ルギー基準」で求められる JIS A 6930 と同等の
®
したホームマット NEO についてご紹介します。
防湿性能を有した防湿用ポリエチレンフィルム
2.ロックウールの特長
ホームマット® とホームマット® NEO の基材で
ポリエチレンフィルム
(表面)
あるロックウールには,以下の特長があります。
取付け用耳
①省エネ性
優れた断熱性能が求められる次世代省エネ
ルギー基準に対応できます。
②耐火,耐熱性
6 面シール
有孔ポリエチレンフィルム
(側面・裏面)
700℃で加熱しても形状を保持します。万一
の火災が発生しても延焼や類焼に強く,耐熱
温度は住宅用断熱材の中でトップです。
③防音性
ロックウールは繊維系断熱材の中でも密度
55mm
75mm
90mm
が高いため遮音性能に優れます。
100mm
④耐水,耐久性
図 1 ホームマット外観
─ ─
10
ニチアス技術時報 2013 No. 1
表 1 ホームマットの製品寸法
を使用しております。従って壁・屋根に施工し
た場合は,別張り防湿フィルムの施工が不要な製
(尺モジュール)
寸法 mm
品です(図 2,3,4)
。
®
厚さ
®
ホームマット ,ホームマット NEO の製品寸
幅
395
55
法は表 1,2 となります。
425
395
75
425
395
90
防湿フィルム
425
395
100
425
入数(枚)
長さ
1360
21[約4坪]
1360
15[約2.9坪]
1360
13[約2.5坪]
1360
11[約2.1坪]
(メーターモジュール)
寸法 mm
フィルム耳
透明フィルム
(側面・裏面)
入数(枚)
厚さ
幅
長さ
55
470
1360
19[約4坪]
75
470
1360
14[約2.9坪]
90
470
1360
12[約2.5坪]
100
470
1360
10[約2.1坪]
表 2 ホームマットNEO の製品寸法
105mm
(尺モジュール)
寸法 mm
90mm
厚さ
図 2 ホームマットNEO外観
幅
395
90
穴あきポリエチレンフィルム
ロックウール
425
395
105
室外側
425
入数(枚)
長さ
1360
13[約2.5坪]
1360
10[約1.9坪]
4.用 途
付属防湿フィルム
(JIS A 6930 同等)
室内側
木造住宅の外壁,天井,屋根の充填断熱に使
耳幅 30mm 以上
用されます。
図 3 ホームマット NEO 構造断面図
5.性 能
ホームマット®,ホームマット® NEO の性能
は表 3,4 のとおりです。
また JIS A 9521「住宅用人造鉱物繊維断熱材」
適合製品です。
表3 ホームマットの特性
図 4 ホームマットNEO 施工写真
─ ─
11
厚さ mm
55
75
90
100
熱抵抗 m2・K/W
1.4
2.0
2.3
2.6
ホルムアルデヒド放散速度
μg/m2h
5以下(F☆☆☆☆)
不燃認定番号
NM-3387
ニチアス技術時報 2013 No. 1
表 7 トレードオフ仕様 開口部の性能を強化する場合
【木造軸組・枠組工法(Ⅲ∼Ⅵ地域)
】
表 4 ホームマットNEOの特性
厚さ mm
2
熱抵抗 m ・K/W
90
105
2.4
2.8
防湿面の透過湿気抵抗
m2・s・Pa/ng
82×10−3以上
ホルムアルデヒド放散速度
μg/m2h
5以下(F☆☆☆☆)
不燃認定番号
NM-3471
部位
開口部
Ⅲ地域
Ⅳ地域
Ⅴ地域
Ⅵ地域
熱貫
流率
2.91W/m2・K
以下
4.07W/m2・K
以下
4.65W/m2・K
以下
建具
仕様
Ⅰ,Ⅱ
地域基準
Ⅲ地域基準
Ⅳ,Ⅴ
地域基準
熱抵抗値:2.3
屋根
ホームマットNEO
90
mm
熱抵抗値:2.0
天井
ホームマットNEO
90
mm
or ホームマット
75
mm
熱抵抗値:2.2(2.3)
6.次世代省エネルギー基準(等級 4)
適合仕様
壁
床
次世代省エネルギー基準に適合するホーム
マット®,ホームマット® NEO の部位別の組み
合わせをご紹介します。一般推奨仕様を表 5 に,
ホームマットNEO
外気に接する床
熱抵抗値:3.3(3.1)
その他の床
熱抵抗値:2.2(2.0)
90
mm
( )内は枠組壁工法の熱抵抗値
*天井施工はホームマットNEOをご使用の場合でも,野縁の室内側に防湿フィルム(JIS
A 6930に適合)の施工が必要となります。(Ⅲ地域以南で,内装下地面材の端部に木
下地がくるように野縁を組めば,防湿気密シートの施工は省略することができます。)
トレードオフ仕様を表 6,7 に,また表 5 ∼ 7 に
記載されている地域区分を図 5 に示します。
表5 一般推奨仕様【木造軸組・枠組工法(Ⅱ∼Ⅵ地域)】
部位
Ⅱ地域
Ⅲ地域
Ⅳ地域
Ⅴ地域
Ⅵ地域
熱抵抗値:4.6
屋根
ホームマットNEO
90
mm
+
90
mm
熱抵抗値:4.0
天井
ホームマット
100
mm
+
55
mm
熱抵抗値:2.2(2.3)
壁
床
ホームマットNEO
90
mm
外気に
接する床
熱抵抗値:
5.2(4.2)
熱抵抗値:3.3(3.1)
その他の床
熱抵抗値:
3.3(3.1)
熱抵抗値:2.2(2.0)
( )内は枠組壁工法の熱抵抗値
*天井施工は野縁の室内側に防湿フィルム(JIS A 6930に適合)の施工が必要と
なります。
図 5 次世代省エネルギー基準地域区分
表 6 トレードオフ仕様 外壁の熱抵抗を増やす場合
【木造軸組工法(Ⅱ∼Ⅵ地域)
】
部位
Ⅱ地域
Ⅲ地域
Ⅳ地域
Ⅴ地域
7.おわりに
Ⅵ地域
近年,住宅の高断熱化は省エネルギーや健康
熱抵抗値:2.8
屋根
ホームマットNEO
105
mm
面からも関心が高くなってきております。また,
熱抵抗値:2.6
天井
ホームマットNEO
105
mm
政府は 2020 年に省エネルギー化を義務付ける方
or ホームマット
100
mm
向で取り組みを進めており,今後ますます増え
熱抵抗値:2.8
壁
床
ホームマットNEO
ると思われる省エネルギー住宅の断熱材にホー
105
mm
ムマット®,ホームマット® NEO をご採用いた
外気に
接する床
熱抵抗値:
5.2
熱抵抗値:3.3
だければ幸いです。
その他の床
熱抵抗値:
3.3
熱抵抗値:2.2
なお,本製品に関するお問合せは,建材事業
*天井施工はホームマットNEOをご使用の場合でも,野縁の室内側に防湿フィ
ルム(JIS A 6930に適合)の施工が必要となります。(Ⅲ地域以南で,内装下
地面材の端部に木下地がくるように野縁を組めば,防湿気密シートの施工は省
略することができます。
)
本部 技術開発部 建材製品開発課(TEL:03
− 3433 − 7256)までお願いいたします。
─ ─
12
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
けい酸カルシウム板
®
TOMBO No.6458「エコラックス 」
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
1. はじめに
弊社の建材用けい酸カルシウム板の製造は
1958 年(昭和 33 年)に始まりました。第二次世
界大戦後の経済成長にともなう建設ラッシュの
中,建築基準法など建設物に関する法律が整備さ
れ,建築材料にも防火性能が求められるようにな
りました。そして日本の高度経済成長に呼応する
ように,防火性能を有した弊社のけい酸カルシウ
ム板は数多くの建物の内装材として採用されま
した。
その後,21 世紀に入ると地球温暖化などの環
図 1 エコラックス外観
境問題が社会に大きくクローズアップされるよ
うになりました。
「環境配慮(エコ)」をコンセ
ス ® は原材料として,火力発電所や製紙工場な
プトに持続可能な社会の実現のために,バージン
どから排出される廃棄物を 50%以上使用してお
原料の使用を抑え,リサイクル原料をできるだ
り,けい酸カルシウム板としては業界初となる
け多く使用したけい酸カルシウム板の開発を行
エコマーク認定を取得しました。
ってきました。
2.2 JIS 認証取得
その結果,2009 年 2 月に,内装建材用けい酸
エコラックス ® は,前述のとおり火力発電所
カルシウム板として初のエコマークの認定を取
や製紙工場などから排出される廃棄物を原料に
®
得したエコラックス を発売し,広く採用いた
使用していますが,弊社の配合技術とオートク
だいております(図 1)
。本稿ではこのエコラッ
レーブでの高温高圧蒸気養生により,強く安定
®
した結晶構造を形成し,強度や物性値を確保し
クス について紹介いたします。
ています。これにより,JIS A 5430(繊維強化セ
2.製品概要
メント板)に規定する 0.8 けい酸カルシウム板
タイプ 2(0.8FK)の認証を取得しています。
2.1 エコマーク認定取得
エコマーク認定は,生産から廃棄にわたる製
品のライフサイクル全体を通して環境への負荷が
3.特 長
少なく,環境保全に役立つと認められた商品に
エコラックス ® には以下のような特長があり
つけられる環境ラベルの一つです。エコラック
ます。
─ ─
13
ニチアス技術時報 2013 No. 1
3.1 不燃認定を取得しています
エコラックス ® は再生材料を使用しているた
め,新たに不燃認定 NM-1217(平板,エンボス)
,
NM-2988(貫通板)を取得しました。貫通板の
不燃認定は,単独での認定ではなく貫通板 + 裏
打材での認定となります。裏打材とは平成 12 年
建設省告示 1400 号に例示された不燃材料のう
ち,既に化粧を施されたものおよび鉄鋼,アル
ミニウム,金属板を除くものを使用することが
条件となります。
3.2 寸法安定性,耐水性に優れています
図 2 エコラックス店舗天井での施工例
エコラックス ® は高温高圧蒸気養生を行うオー
トクレーブ処理によって,基材中に安定したけ
い酸カルシウム結晶を形成しているため,寸法
5.性 能
安定性に優れ,軽量であるにも関わらず,高い
エコラックス ® の代表的性能は表 1 のとおり
強度があります。また,耐水性にも優れています。
です。
3.3 加工性・施工性に優れています
表 1 エコラックスの代表的性能
ボードカッターやカッターナイフで簡単に切
N/mm
0.8
12.7
0.10
3
テープルなどで容易に留め付けが可能です。ま
た,かさ密度が 0.8g/cm3 と大変軽量であるため
施工性に優れます。
g/cm
吸水による長さ変化率
〈タテ〉%
(60℃乾燥→飽水)
かさ密度 曲げ強度
断することが可能です。ワンタッチネジ,釘,ス
2
熱伝導率
W/
(m・K)
0.16
※平板 6mm 品の 910 × 1820 の標準物性となります
※上記数値は実測値であり,保証値ではありません
4.用 途
エコラックス ® は次のような用途に用いるこ
6.おわりに
とができます。
エコラックス ® は再生材料を用いたけい酸カ
①ビル,店舗,病院,工場,一般住宅,マンション
ルシウム板です。持続可能な社会の実現のため
など各種建物の内装(天井,壁)(図 2)
に地球資源の節約に貢献しています。
②厨房,給湯室,トイレなど水廻りの天井,壁
このエコラックス ® を幅広く知っていただく
③駐車場の天井
とともに,これからも時代のニーズに応えられ
④耐火および準耐火間仕切壁
る製品として新しい歴史を築いていきたいと思
※④の仕様につきましては,別途弊社までお問い合わせ
います。
なお,本製品に関するお問い合わせは,建材
ください。
事業本部 技術開発部 建材製品開発課(TEL:
03 − 3433 − 7256)までお願いいたします。
─ ─
14
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
化粧けい酸カルシウム板
®
TOMBO No.6462「アスラックス 」シリーズ
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
2.2 標準寸法
1.はじめに
アスラックス® 200 およびアスラックス® 600E
の標準寸法は表 1 のとおりです。
病院,工場,ビル,公共建築物などにおいては,
さまざまな化粧板が内装壁材として使用されて
表1 アスラックス 200・600Eの標準寸法
います。近年では,傷がつきにくいことや汚れ
(単位:mm)
が落ちやすいことが化粧板への要望として高
厚さ
幅
6
910
長さ
1820
まってきております。弊社では,その要望に応
える製品として,高い硬度と耐汚染洗浄性,耐
2420
2730
薬品性に優れた塗膜面を持つ化粧けい酸カルシ
ウム板アスラックス® を販売しています。
幅広いバリエーションで多様な建築ニーズに対
2.3 塗装色
応したハイスタンダードな化粧けい酸カルシウム
標準色として,ライトベージュ,スキンベー
®
板のアスラックス 200 と,軽量で扱いやすく工
ジュ,グリーンベージュ,ライトグレー,ホワ
®
場などの内壁や天井に適したアスラックス 600E
イト,アイボリー,ホワイトアイボリーの 7 色
のラインアップがあります。以下に詳細を説明
を用意しております(図 1)。その他に受注生産
します。
品として準標準色 22 色を用意しております。
2.製品概要
3.特 長
2.1 製品仕様
アスラックス® には以下のような特長がありま
アスラックス® 200 は,基材に強度と寸法安定性
に優れたけい酸カルシウム板(かさ密度 1.0g/cm )
す。
3.1 耐水性・耐薬品性に優れ,衝撃にも強い
を使用し,表面に紫外線硬化型ポリエステル樹
表面は特殊樹脂(UV コート+ウレタン系塗料)
脂塗装を施した後,機能性樹脂塗料で仕上げた
による仕上げで,耐水性・耐薬品性に優れます。
化粧板です。
また,基材にけい酸カルシウム板を使用してい
3
®
アスラックス 600E は基材に,けい酸カルシ
るため衝撃にも強く,厳しい状況下でも使用で
ウム板として初めてエコマークを取得したエコ
きます。
®
3
ラックス (かさ密度 0.8g/cm )を使用し,アス
3.2 寸法安定性に優れ,高性能を長年維持
®
ラックス 200 と同様の塗装を施した軽量タイプ
基材にけい酸カルシウム板を使用しているた
の化粧けい酸カルシウム板です。
め,吸水時や温湿度の環境変化に対して安定し
た性能を保ちます。
─ ─
15
ニチアス技術時報 2013 No. 1
標 準 色
ライトベージュ(201・601E)
スキンベージュ(202・602E)
グリーンベージュ(203・603E)
ホワイト(209・609E)
アイボリー(224・624E)
ホワイトアイボリー(229・629E)
ライトグレー(204・604E)
図1 カラーバリエーション
3.3 加工が容易
高い強度を有していますが,ドリルなどを用
いた穴あけ加工も簡単にできます。
3.4 メンテナンスが容易
サンディングを施しているため表面平滑性が
高く,多少の汚れは容易に拭き取れます。
3.5 内装制限にも対応可能な不燃材料
シリーズ全種が不燃材料として国土交通大臣
認定を取得していますので,内装制限を受ける
場所にも使用できます。
3.6 豊富な高機能シリーズ
図 2 キッチンでのアスラックス施工例
アスラックス® 200 は標準タイプのほかに,性
能を保ちつつ,さらに特殊な機能を付加した 3 タ
・洗面所・トイレ,給湯室,厨房・キッチンなど
イプを用意しています。
®
室内の水廻りの仕上げ壁(図 2)
3.6.1 帯電防止タイプ:アスラックス 200T
静電気による微粒子の付着を抑えるため,ク
リーンルームに適しています。
※浴室の壁には使用しないでください。
5.性 能
3.6.2 高耐候性タイプ:アスラックス® 200F
耐候性が高く,光沢を長期間保つので,紫外
5.1 基材標準物性
線殺菌を行う場所に適しています。
アスラックス® の基材標準物性は表 2 のとおり
3.6.3 抗菌タイプ:アスラックス® 200K
です。
大腸菌,MRSA などに対し菌の繁殖を抑制す
るため,食品工場や手術室に適しています。
表 2 アスラックス基材標準物性
4.用 途
製品
200
600E
かさ密度
0.9 以上 1.1 以下
0.7 以上 0.9 未満
曲げ強度〈タテ〉
14.7 以上
10.0 以上
吸水寸法変化率
%
0.15 以下
0.15 以下
項目
アスラックス® は次のような用途に用いること
ができます。
・病院,老人ホーム,工場,研究施設の内装およ
びクリーンルーム
─ ─
16
g/cm3
N/mm2
ニチアス技術時報 2013 No. 1
表3 アスラックス塗膜物性
製品
200
600E
試験方法/要旨
耐水性
合格
合格
社内試験規格(準拠規格:JAS 特殊合板 浸水 F 試験)
裏面はり合わせ片を常温水中に 168 時間浸漬→ 60℃× 2 時間乾燥→割れ,ふくれ,
はがれ,著しい変色が生じないこと。
耐磨耗性
合格
合格
JAS 特殊合板 耐磨耗 C 試験:化粧面に総重量 1000g の軟質磨耗輪を乗せ回転させ
る。化粧面が 50% 磨耗したときの回転数(磨耗値),
磨耗減量(磨耗量)を読み取る。
磨耗値が 200 以上,磨耗量が 0.1g 以下であること。
耐汚染性
合格
合格
退色
合格
合格
ないこと。
耐酸性
合格
合格
JAS 特殊合板 耐酸試験:5% 酢酸水溶液滴下→時計皿被覆 6 時間放置→水洗い→室
内 24 時間放置→割れ,ふくれ,はがれ,著しい変色,軟化が生じないこと。
耐アルカリ性
合格
合格
JAS 特殊合板 耐アルカリ試験:1% 炭酸ナトリウム液滴下→時計皿被覆 6 時間放
置→水洗い→室内 24 時間放置→割れ,ふくれ,はがれ,著しい変色,軟化が生じ
ないこと。
耐シンナー性
合格
合格
JAS 特殊合板 耐シンナー試験:ラッカーシンナー滴下→時計皿被覆 6 時間放置→
水洗い→室内 24 時間放置→割れ,ふくれ,はがれ,著しい変色,軟化が生じないこと。
密着性
合格
合格
社内試験規格(準拠規格:JIS K 5400)
カッターナイフで 2mm 角の碁盤目状を 100 個つくりセロテープを貼り,引きはが
した時,碁盤目の残存数が 95 個以上あること。
硬度
2H 以上
HB 以上
項目
JAS 特殊合板 耐汚染 A 試験
青インキ,黒インキ,赤クレヨン 4 時間放置→溶剤,洗剤で拭き取り,色が残ら
ないこと。
JIS K 5400:カーボンマーク 200 時間照射→割れ,ふくれ,はがれ,変色が生じ
社内試験規格(準拠規格:JIS K 5400)
塗装膜用鉛筆引っかき試験機
※上記性能値は弊社にて測定した実測値であり,規格値ではありません。
④テープとテープの間に接着剤を塗布し,両面
5.2 塗膜物性
®
テープの離型紙を剥がした後,圧着します。
アスラックス の塗膜物性は表 3 のとおりです。
⑤貼り付け後,24 時間以上静置,養生します。
6.施工方法
7.おわりに
施工は以下の手順で実施ください。
①下張り板を取り付ける。なお,下張り板はエコ
アスラックス® はその製品特性および施工の容
ラックス ® 8mm 以上または石こうボード 9.5mm
易さから高い評価を受けています。今後ともお
以上とします。
客さまのニーズに応えた製品を開発していきた
®
②アスラックス 裏面の油分,ホコリなどの汚れ
いと存じます。
なお,本製品に関するお問い合わせは,建材
を取り除きます。
®
事業本部 技術開発部 建材製品開発課(TEL:
③アスラックス 裏面の所定の位置に両面テープ
03 − 3433 − 7256)までお願いいたします。
を貼り付け,よく押えます。
─ ─
17
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
巻き付け耐火被覆材
®
TOMBO No.5520「マキベエ 」
建材事業本部 技術開発部 建材工法開発課
1.はじめに
耐熱ロックウール
(耐火・断熱性)
社会全体がエコロジカルな取り組みに注力す
る中,建材分野でも,建物を支える確かな品質と
着色不織布
(意匠性・防じん性)
性能はもちろん,より環境にやさしく,クリーン
な製品の選択が求められています。
マキベエ ® は,弊社が開発した巻き付け耐火被
覆材です。その薄さ・軽さとシンプルな施工性で,
図 2 マキベエ構成概略図
従来工法では難しかった用途への対応を実現し,
さらに製造に要するエネルギー量が少なく,施
工時・施工後の発じん量が少ないエコ・フレン
ドリーな思想をトータルに貫いた製品です。
2.製品概要・仕様
マキベエ ® は,天然鉱石とスラグを高温で溶融
した融液を遠心力で繊維化・集綿した耐熱ロック
ウールと,その表面に着色不織布を接着した 2 層
構造の材料です。図 1 に外観を,図 2 に構成概
図 3 マキベエ施工状況
略図を,図 3 に施工状況を,表 1 に製品仕様を
示します。
表 1 製品仕様
厚さ
mm
かさ密度
㎏/m3
標準寸法 mm
(幅
[働き幅]
×長さ)
20
80~120
925[915]
×10000
40
80~120
925[915]
×6000
65
90~130
925[895]
×3000
3.特 長
図1 マキベエ外観
3.1 工期短縮に貢献します
従来の吹き付け耐火被覆工事では,発じんが
─ ─
18
ニチアス技術時報 2013 No. 1
多く養生が必要なため,他の職種との並行作業
固定ピンの本数は表 2 に示します。また,図 5
が行えませんでした。巻き付け耐火被覆工法は
に固定ピン外観,図 6 に施工状況を示します。
施工時の発じんが少なく,養生が必要でないた
め,他の職種との並行作業が可能となり工期短
縮が図れます。
3.2 安定した品質を確保します
従来の吹き付け耐火被覆工法では,厚み,かさ
密度などの品質を確保するため作業者に熟練技
術が求められました。巻き付け耐火被覆工法では,
図 4 溶接機
工場で生産されたマキベエ® を現場で施工するた
図 5 固定ピン外観
め厚み,かさ密度などの品質確保が容易です。
3.3 振動に強い耐火被覆材です
表2 標準固定ピン本数(主要構造部)
巻き付け耐火被覆工法は,専用固定ピンを電
気溶接にて取り付けるため,鉄骨に確実に固定
できます。さらに,マキベエ ® は柔軟であるた
め,地震時などの振動や層間変位に起因する脱
厚さ mm
上フランジ固定ピン本数
20,40
4本/915mm[働き幅]
65
5本/895mm[働き幅]
※耐火認定によっては本数が増える場合があります。
落,破損のリスクを低減できます。
3.4 施工後の発じんがほとんどありません
表面に不織布を施してあるため,施工後の発
じんも少なく,リターンダクトを採用している
ビルなどに最適です。
3.5 環境に優しい建材です
マキベエ ® は薄くて軽量なので,1m3 当たり
の製造エネルギーが抑えられています。また,
原料の約 60%に再生材料の鉄鋼スラグを使用し
ており,耐火被覆材料の中では環境負荷が低い
材料です。
図 6 施工状況
4.施工方法
4.1 溶接機のセット
4.4 検査
専用溶接機を電源に接続し,アースを設置し
目地部や取り合い部に隙間がないことを確認
ます。その後,鉄骨に試し打ちし,確実に溶接
します。
できることを確認します。図 4 に溶接機を示し
4.5 納まり例
ます。
マキベエ® の納まり例を図 7 ∼ 11 に示します。
4.2 材料の寸法取り・切断
4.5.1 梁の納まり例
施工する鉄骨の周長を測定し,貼り付ける材
料の必要寸法を算出します。カッターナイフな
どで,必要な寸法に切断します。
4.3 材料の固定
固定ピン
材料を所定の位置に合わせて固定ピンを突き
300程度
─ ─
19
50程度
固定ピン
マキベエ
刺し,固定ピンが鉄骨に当ったことを確認した
後,スタッド溶接し鉄骨に巻き付けます。標準
300程度
図7 一般部納まり例
ニチアス技術時報 2013 No. 1
5.性 能
壁パネル
(ALC、
ECPなど)
300程度
固定ピン
300程度
5.1 耐火性能
300程度
50程度
50程度
固定ピン
梁柱などの耐火認定を取得しています。耐火
認定の詳細は,鉄骨寸法や工法により異なりま
マキベエ
すのでお問い合せください。
ビス固定(ワッシャー押さえ)
(PC、
ECPは接着ピン固定)
ビス固定(ワッシャー押さえ)
(PC、
ECPは接着ピン固定)
5.2 材料認定
マキベエ ® の材料認定は表 3 のとおりです。
図 8 壁パネルとの複合耐火納まり例
表 3 材料認定
200程度 200程度 200程度 200程度
固定ピン
50程度
認定番号 NM-0855
放散等級 F☆☆☆☆
50程度
固定ピン
マキベエ
不燃認定
ホルムアルデヒド放散等級
5.3 熱伝導率(λ)
300程度
※ELVシャフトなどの場合
300程度
300程度
50程度
50程度
熱伝導率は,JIS A 1412(熱絶縁体の熱伝導率
および熱抵抗の測定方法)に規定する平板直接法
図 9 直貼り仕様の納まり例
により測定し,代表的な結果は以下のとおりです。
温度 20℃の場合
4.5.2 柱の納まり例
λ= 0.0344 W/
(m・K){0.0287 kcal/
(m・h・℃)
}
50程度
5.4 発じん性
300程度
マキベエ® と耐熱ロックウールの発じん試験を
エア・エロージョン試験(粉じん飛散防止処理
剤の標準試験方法)に準じ行いました。代表値
300程度
マキベエ
を表 4 に示します。マキベエ ® は表面に不織布
を貼ってあるため発じんが抑えられています。
50程度
表4 マキベエと耐熱ロックウールの発じん比較
50程度
50程度
300程度
固定ピン
マキベエ
固定ピン
図 10 一般独立柱納まり例
種類
繊維数濃度平均値(f/L)
マキベエ
0.15
耐熱ロックウール
2.85
※試験体を温度 20℃,湿度 60%の試験室に 1 週間以上静置した後,試験
を行いました。
ビス固定
(ワッシャー押さえ)
(PC、
ECPは接着ピン固定)
マキベエ
マキベエ
50程度 300程度
壁パネル(ALC、
ECPなど)
300程度
300程度 50程度
ビス固定
(ワッシャー押さえ)
(PC、
ECPは接着ピン固定)
6.副資材
6.1 デッキコマ詰め材
合成デッキと梁の間に生じる空隙は,その大
きさに合わせ,台形状に加工したマキベエ ® を充
填します。図 12 にデッキコマ詰め材を図 13 に
コマ詰め材の充填状況を示します。
6.2 マキベエ ® スリーブ
鉄骨梁の貫通孔部への耐火被覆にはマキベエ®
スリーブを使用します。
マキベエ ® スリーブは,耐火被覆と同厚みのマ
図 11 壁パネル複合耐火納まり例
キベエ ® を円筒状にし,その内側をスパイラルダ
─ ─
20
ニチアス技術時報 2013 No. 1
クトまたは折り曲げ鋼鈑にて補強したスリーブ材
です。図 14 に詳細を,図 15 に施工状況を示し
7.マキベエ ® 薄肉化工法
ます。
鉄骨梁貫通孔部のマキベエ ® 厚さが,鉄骨梁の
耐火被覆に必要な厚さよりも薄く施工できる工
上辺
法です。この工法は耐火 2,3 時間梁の認定を取
高さ
得しております。図 16 に薄肉化工法構造概略図
を示します。
厚み
下辺
床
中空部2層目
被覆材
鉄骨梁
図 12 デッキコマ詰め材
ウェブ部、
中空部1層目被覆材
コマ詰め材充填
断面図
立面図
図16 薄肉化工法構造概略図
7.1 耐火認定概要
表 5 に薄肉化工法の耐火認定概要を示します。
図 13 コマ詰め材充填状況
表 5 薄肉化工法の耐火認定概要
振れ止め材
固定ピン
マキベエ
固定ピン
振れ止め材 受け金具
項目
認定番号
マキベエ
鉄骨サイズ
内部芯材
受け金具
内部芯材
スペーサー
(エコラックス)
(単位:mm)
耐火2時間
耐火3時間
FP120BM-0306
FP180BM-0307
H-300×200×12×25以上
梁耐火被覆厚さ
40
65
中空部1層目耐火
被覆厚さ
20
20*
中空部2層目耐火
被覆厚さ
20
40
*セラミックファイバー 25mm を 20mm に圧縮
図 14 マキベエスリーブ詳細
7.2 特 長
・従来工法より,設備配管の有効径を大きくでき
ます。
・鉄骨にあける貫通孔径を小さくすることも可能
なため,鉄骨梁成を低くでき材料の低減も期待
できます。
8.おわりに
巻き付け耐火被覆材マキベエ ® は,柔軟性に富
み,建築物のさまざまなシチュエーションに合
わせて使える弊社独自のテクノロジーが生んだ
図 15 マキベエスリーブ施工状況
─ ─
21
ニチアス技術時報 2013 No. 1
環境配慮型の乾式耐火被覆材です。
このマキベエ ® を多くの方に知っていただくと
ともに,さらなるご要望に応え,より良い製品
を開発していくため,忌憚のないご意見をいた
だければ幸いです。
なお,本製品に関するお問合せは,建材事業
本部 技術開発部 建材工法開発課(TEL:03
− 3433 − 7256)までお願いいたします。
─ ─
22
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
芯材付繊維積層煙突ライニング材
®
TOMBO No.6491「カポスタック スーパー」
耐熱性ゾノトライト系煙突ライニング材
®
TOMBO No.6496「セラスタック 」
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
スに接する内表面が耐摩耗性,耐水性および耐熱
1.はじめに
性に優れる高強度の内面ライニング層と繊維積層
体の断熱層から成る二重構造の丸型煙突ライニン
弊社は,1964 年以来,建材分野で一般ボイラ
グ材です(図 2)
。
(冷暖房,給湯)やディーゼルエンジン・ガスター
ビンエンジン(発電機)に使用する煙突のライニ
高強度のライニング層が内型枠代わりとなり,
ング材を販売しております。近年,
ビルの発電機,
コンクリートの打設が可能です。
ボイラの排気に関するさまざまな要求が高まり,
弊社はこれに対応する煙突ライニング材カポス
タック ® スーパーおよびセラスタック ® を取り
そろえています。以下にその概要を紹介します。
2.煙突ライニング材の概要
弊社煙突ライニング材は,丸型のカポスタッ
ク ® スーパーと角型のセラスタック ® の 2 種類が
あります。
2.1 構造
2.1.1 カポスタック ® スーパー
カポスタック
®
図 2 カポスタックスーパー
スーパーは,図 1 のように排ガ
2.1.2 セラスタック ®
セラスタック ® は,けい酸カルシウムを主原料
内面ライニング層
断熱層
として耐熱充填材および無機質補強繊維を配合し
てボード状に成形した製品で,角型に組んだもの
を煙突ライニング材として使用します(図 3)
。
設置するスペースに合わせ,水平断面が長方
形の煙突にすることが可能です。また,重ねて
使用することにより断熱性能を上げることがで
きます。
2.2 工法
ビルの構造や設備規模,煙突の設置スペース
に合わせて,それぞれ次のような工法を選択し
図 1 カポスタックスーパー断面図
─ ─
23
ニチアス技術時報 2013 No. 1
②セラスタック®
鉄筋コンクリート壁の煙突区画の内側にセラ
スタック® をアンカーボルトで留め付ける工法
です(図 5)
。
セラスタック
ワッシャ
2t×50 □ or 50φ以上
アンカーボルト
図3 セラスタック
ます。特に丸型のカポスタック ® スーパーは小
鉄筋
型ボイラから大型発電機,角型のセラスタック®
コンクリート
は複数の大型発電機が用いられる発電システム
で使用できます。
図5 セラスタック鉄筋コンクリート造煙突施工図
2.2.1 鉄筋コンクリート造煙突工法の場合
①カポスタック ® スーパー
カポスタック ® スーパーを建て込み後,内型
2.2.2 ユニット(鋼製)煙突工法の場合
枠なしでコンクリートを打設する工法です(図 4)
。
カポスタック ® スーパーまたはセラスタック ®
を鋼材の内側に内貼りしたユニットをあらかじ
め工場で作製し,施工現場で積み上げていく工
法です(図 6,7)
。
カポスタックスーパー
カポスタックスーパー
ジョイント金具
鉄筋
鋼板
接合フランジ
ブラケット
床板
打込コンクリート
図 4 カポスタックスーパー鉄筋コンクリート造
煙突施工図
図 6 カポスタックスーパー鋼製煙突施工図
─ ─
24
ニチアス技術時報 2013 No. 1
よび建物ごとの構造を基に,排気抵抗計算と熱
セラスタック2層
計算を行い決めていきます。
4.おわりに
カポスタック ® スーパーおよびセラスタック ®
は,個別のビルの構造に合わせた煙突の設置ス
ペースおよび設備の排ガス条件(温度,量)に
床板
合わせた煙突サイズの設定が幅広く行える煙突
ライニング材です。
裏面補強プレート
このカポスタック ® スーパーおよびセラス
タック ® を多くの方に知っていただくとともに,
図 7 セラスタックユニット煙突施工図
さらに製品を進化させていくため,忌憚のない
ご意見をいただければ幸いです。
3.寸法・性能
カポスタック
®
なお,本製品に関するお問い合わせは,建材
スーパーおよびセラスタック
®
事業本部 技術開発部 建材製品開発課(TEL:
03 − 3433 − 7256)までお願いいたします。
の寸法・性能を表 1 に示します。
煙突の寸法は,設備の排ガス温度・排気量お
表 1 寸法および性能
項目
カポスタックスーパー
セラスタック
煙突形状
丸型煙突
角型煙突
・一般ボイラ ・コージェネレーションシステム
・ディーゼルエンジン発電機 ・ガスタービン発電機
対象設備
対応する設備の規模
小型ボイラ∼大型発電機
小型ボイラ ∼大型発電機(複数台)
煙突としての内寸法 mm
φ212∼φ1,500
(18種類)
200角∼制限なし
(正方形および長方形で指定サイズでの対応可)
製品標準寸法 mm
内寸法 長さ 厚さ
φ 212∼φ 914 × H900 × t50, 75,100
φ1,014∼φ1,200 × H900 × t65, 75,100
φ1,300∼φ1,500 × H900 × t75,
100
かさ密度 kg/m3
※
安全使用温度
熱伝導率 W(
/ m・K)※
幅 長さ 厚さ
D1,250 × H2,500 × t35,50,70
(重ねての使用可,
35mmは単板での使用不可)
1,200(ライニング層)
200(断熱層)
500
上限排ガス温度:650℃以下
下限排ガス温度:160℃以上(A重油の場合)
180℃以上(B重油の場合)
・ライニング層
0.3(0℃≦θ≦650℃)
・断熱層
0.03+0.00012θ(0℃≦θ≦400℃)
−0.061+0.00034θ(400℃<θ≦650℃)
※実測値であり規格値ではありません
─ ─
25
0.079+0.000049θ(0℃≦θ≦650℃)
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
ニチアスのフリーアクセスフロアシステム
建材事業本部 技術開発部 建材工法開発課
1. はじめに
弊社のフリーアクセスフロアシステムの製品ラ
フリーアクセスフロアとは,電力や通信配線
インアップは表 1 のとおりです。いずれも歩行感
などを収納するために新たな床をスラブ上に形
に優れ,また台車走行を想定したローリングロー
成するもので,二重床とも称されるものです。
ド性能にも優れた製品で,新築向けにもリニュー
基本的な構成材料は,フロアパネルとこれをス
アル向けにも対応できる品揃えとなっています。
ラブから支える支持脚からなります。このパネ
ルを開閉することで床下に自由にアクセスでき
2.製品概要
るのが特徴です。
2.1 ニチアス オメガフロア ®
現在では,新築のオフィスビルでは標準的に
2.1.1 フロアパネル
フリーアクセスフロアが用いられ,また,既存
ニチアス オメガフロア ® は,荷重性能別に一般
ビルでも OA 化,IT 化を目的としたリニューア
事務所の 3000N 対応用(M300A)
,および 5000N
ルが活発に行われており,その一環としてフリー
対応用(HG)の 2 種類のフロアパネルを揃えてい
アクセスフロアが導入されるケースも多くなっ
ます。
ています。
フロアパネルの基材はコンクリートで,これ
表1 フリーアクセスフロアシステム製品一覧
製品名
オメガフロア
シグマフロア
パットフロア
デルタフロア V
用 途
特 長
・床スラブに近い歩行感が ・表面材が豊富に取り揃え ・パネルコーナーロック機 ・ガタつき音の出ない2段
得られます。
られています。
構を採用。床のガタつき
突起ゴムを使用した支持
・ガタつき音の出ない 2 段 ・優れた加工性と高い寸法
がありません。
脚でフロアを支えます。
・無 接 着 工 法 で 施 工 が 速
突起ゴムを使用した支持
安定性を有しています。
脚でフロアを支えます。 ・フロアパネルにおいてエ
く,現状復帰時も床下地
コマーク認定取得
を汚しません。
・フロアパネルにおいてエ
コマーク認定取得
基 材
コンクリート+ラス鉄筋
けい酸カルシウム+鋼板
GRC※+鋼板
けい酸カルシウム+鋼板
高 さ
60∼1000
(カーペットを含む)
50∼1000
(カーペットを含む)
50∼1000
(カーペットを含む)
50
許容集中荷重/
システム重量
(kg/m2)
3000N/48
5000N/58
3000N/36
5000N/39
6000N/43
3000N/49
3000N/21
※ガラス繊維強化セメント
─ ─
26
ニチアス技術時報 2013 No. 1
を鉄筋,およびラスで補強した構成になってお
亜鉛ウィスカ注 1 対策用のメッキも受注生産で対
り,2 辺の中央部に配線取り出し用開口のある
応可能となっています。
PK タイプ,および開口のない 0 タイプがありま
す。また,四隅をロックプレートで締めつけ固
注 1:電気亜鉛めっき部品から発生する導電性を有するヒゲ
状結晶で,コンピューター機器に悪影響を及ぼすとい
定するタイプになっています(図 1)。
われています。
ゼロ
0タイプ
PKタイプ
2.2 ニチアスシグマフロア ®
2.2.1 フロアパネル
ニチアスシグマフロア ® は,荷重性能別に,一
般 事 務 所 の 3000N 対 応 用(M300A)
,5000N 対
応用(M5000A)
,およびコンピュータールーム
図1 オメガフロア標準パネル
用(M600A)の 3 種類があります。
2.1.2 支持脚
フロアパネルはプレス成型後,オートクレーブ
支持脚は仕上がり高さ 60 ∼ 1000mm まで対応
処理したけい酸カルシウム板の裏面に亜鉛メッ
可能です(図 2)。
キ鋼板を接着,補強した構成になっています。
けい酸カルシウム板は火力発電所から排出さ
【標準脚】
れるフライアッシュ(石炭焼却灰)と脱硫石膏
【ボーダー脚】
を 50 ∼ 60%使用しており,当フロアパネルはエ
コマーク認定(第 08123033 号)を取得した地球
環境に優しい製品です。
フロアパネルは 2 辺の中央部に配線取り出し用
開口のある PK タイプ,および開口のない 0 タイ
図2 支持脚
プがあり,また,四隅の固定方法は,固定しない
また,標準脚は台座の上部にクッション材とし
フリータイプと固定するロックタイプの 2 種類が
て二段突起ゴムを使用しているので,歩行時のガ
あります。加えて,0 タイプのフリータイプでは
タツキ音を吸収し,きしみや空洞音を軽減させ,
P タイルを一体貼りした仕様もあります(図 4)
。
ソフトで快適な歩行感が得られます。(図 3)
。
加えて,特殊ねじによってパネルをロックす
■標準パネル(フリータイプ)
ることで通常のドライバー,六角レンチでは開
0タイプ
ゼロ
PKタイプ
閉できないようにしたセキュリティシステムや
■標準パネル(ロックタイプ)
ゼロ
0タイプ
PKタイプ
大きい突起
小さい突起
クッション材
(2段突起ゴム)
台座
■Pタイル一体貼りタイプ
ストップボルト
ベース
プレート
図3 標準脚の詳細
図 4 シグマフロアパネル
─ ─
27
ニチアス技術時報 2013 No. 1
2.1.2 支持脚
4 ヶ所の切欠き穴を設けており,パネル 2 枚を合
支持脚は仕上がり高さ 50 ∼ 1000mm まで対応
わせるとφ 16mm の通線用の穴がパネルの 1 辺
可能で,あらゆるニーズに対応できます。
に 2 ヶ所できるようになっています(図 6)。
セキュリティシステム対応のパネルロックタイ
また,支持脚を含めたシステム重量は 21kg/m2
プや,亜鉛ウィスカ対策用メッキも受注生産で
と非常に軽量で建物構造への負担も少なく,リ
対応可能です。
ニューアルに最適な仕様となっています。
2.3 ニチアス パットフロア
®
2.3.1 フロアパネル
ニチアス パットフロア ® は一般事務所の 3000N
対応品(M300A)があります。
フロアパネルは GRC(ガラス繊維強化セメン
ト)基材の裏面に鉄板で補強した構成になって
図 6 デルタフロアV標準パネル
います。
パネルは 2 辺の中央部に配線取り出し用開口
2.4.2 支持脚
のある PK タイプ,および開口の無い 0 タイプ
支持脚は再生ポリプロピレン樹脂を使用して
があり,四隅をロックプレートで締め付け固定
います。パネル 1 枚を 16 の支点で支える特殊な
するタイプになります(図 5)。
構 造 で パ ネ ル と 組 み 合 わ せ る こ と で, 高 さ
50mm でも十分な配線スペースを確保できるこ
とを特長としています(図 7,8)
。
ゼロ
0タイプ
PKタイプ
また,支持脚は,脚を接着しない置き敷き方
式のため簡便で迅速な施工が可能であり,かつ
撤去時にスラブを傷つけないため,リニューア
ルに適した仕様となっています。
図5 パットフロア標準パネル
2.3.2 支持脚
支持脚は,仕上がり高さ 60 ∼ 1000mm まで対
パネル
1/2脚
応可能です。
また,セキュリティシステム対応,およびウィ
標準脚
スカ対策用メッキについても前述 2 品種と同様,
受注生産で対応可能です。
2.4 ニチアス デルタフロア ® V
図7 デルタフロアV支持脚
®
ニチアス デルタフロア V は一般事務所の
ルに最適です。
フロアパネルはニチアスシグマフロアと同じ
構成で,さらにパネル厚さを 14mm と薄く,軽
くしたものです。このフロアパネルもエコマー
ク認定(第 08123034 号)を取得した地球に優し
い製品です。
フロアパネルは 1 枚の対辺に 2 ヶ所ずつ,計
─ ─
28
57
デルタフロア V
14
パネル
床高さ
2.4.1 フロアパネル
カーペット
仕上がり高さ
3000N 対応用で,軽量・薄型なのでリニューア
50
36
25
配線有効高さ
パネル厚の差が出ます
他社パネル
25
仕上がり高さ57mmで設置し,配線有効高さを他社パネルタイプ
の製品と比較した場合(単位:mm)
図 8 配線有効高さ比較
ニチアス技術時報 2013 No. 1
支持脚の表面にはクッション材として二段突
ルタフロア ® V はデルタ V 支持脚で支持)
,φ 50
起ゴムを用いることで,スラブに多少の凹凸が
の荷重子を用いて荷重試験機にて所定荷重時の
あってもガタツキ音が発生しにくい構造となっ
たわみ量と破壊時の最大荷重を計測します(図
ています(図 9)
。
10)
。規格値は表 2 のとおりです。
3.2 衝撃試験・集中荷重試験
パネルをφ 80 の鋼製支持台で 4 点支持し(デ
ルタフロア ® V はデルタ支持脚で支持)
,30kg の
パネル
砂袋(底面φ 220)を所定の高さからパネルの中
央に自由落下させパネルの損傷の有無を確認し
ます。続けて,3.1 項と同様の集中荷重試験を行
い,強度の低下が生じていないことを確認しま
支持脚上部
す(図 11)
。規格値を表 2 に示します。
図 9 支持脚二段突起ゴム
3.3 ローリングロード試験
フロアパネルの中央部を,ウレタン被覆キャ
3.諸物性
スターに所定の荷重を負荷させ,10,000 回走行
3.1 集中荷重試験
後,パネルに損傷が生じているか否かを確認し
パネルをφ 80 の鋼製支持台で 4 点支持し(デ
ます(図 12)
。
代表的な試験結果を表 3 に示します。
パネル中央
パネル辺中央
(オメガ,シグマ,パット各フロア)
(オメガ,シグマ,パット各フロア)
(デルタフロア V)
図10 集中荷重試験
(デルタフロア V)
図 11 衝撃試験
表2 規格値
試験
載荷
(加撃)
位置
中央
集中荷重
試験
辺中央
中央
シグマフロア
パットフロア
M300A
M600A
M5000A
M300A
M300A
デルタ
フロア V
最大荷重
10以上
9以上
12以上
10以上
(0タイプ)
9以上
9以上
6以上
たわみ mm
(所定荷重)
2.0以下
(5kN)
2.0以下
(3kN)
2.0以下
(6kN)
2.0以下
(5kN)
2.0以下
(3kN)
2.0以下
(3kN)
4.0以下
(3kN)
最大荷重
6以上
6以上
12以上
8以上
(0タイプ)
6以上
4.5以上
6以上
たわみ mm
(所定荷重)
−
2.5以下
(3kN)
2.5以下
(6kN)
2.5以下
(5kN)
2.5以下
(3kN)
3.0以下
(3kN)
4.0以下
(3kN)
落下高さ
50
50
90
70
70
50
50
衝撃後の損傷
なし
なし
なし
なし
なし
なし
なし
最大荷重
10以上
9以上
12以上
10以上
9以上
9以上
6以上
kN
kN
cm
衝撃・
集中荷重
試験
オメガフロア
HG
項目
kN
─ ─
29
ニチアス技術時報 2013 No. 1
表3 ローリングロード測定値
載荷位置
中央
オメガフロア
項目
シグマフロア
HG
M300A
M600A
荷重(kN)
3.0
3.0
5.0
10,000回
走行後の損傷
なし
なし
なし
パットフロア
M5000A
M300A
M300A
デルタ
フロア V
5.0
3.0
1.0
2.0
なし
なし
なし
なし
(0タイプ) (0タイプ)
4.おわりに
弊社のフリーアクセスフロアシステムについ
て,その概要を紹介させていただきました。こ
れら製品それぞれの特長を活かし,快適なオフィ
ス創りの手助けにしていただければ幸いです。
(オメガ,シグマ,パット各フロア)
情報・通信システムの飛躍的な進歩に伴い,
(デルタフロア V)
設備・機器,配線方法も進化しています。これ
図 12 ローリングロード試験
からも,これらのニーズに対応できる床材の開
発に努めていく所存です。
なお,本製品に関するお問い合わせは,建材
事業本部 技術開発部 建材工法開発課(TEL:
03 − 3433 − 7256)までお願いいたします。
─ ─
30
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
免震構造の耐火材
®
TOMBO No.5540「メンシンガード 」
TOMBO No.5550「メンシンメジ 」
®
建材事業本部 技術開発部 建材工法開発課
2.2 特長
1.はじめに
メンシンガード ® の特長は以下の通りです。
地震が多く発生する日本において,建築物の耐
2.2.1 意匠性に優れています
震性に対する人々の意識も高くなっております。
表面にガルバリウム鋼板を用いたことにより,
免震構造の建物は一般化し,近年多くの実用事例
従来の耐火材に比べ美しくスマートに仕上がり
が見られるようになりました。また,この免震建
ます。
物に使用される免震装置は,火災の発生の可能
2.2.2 耐衝撃性に優れています
性がある場所に設置することも多く,耐震性能
表面材にガルバリウム鋼鈑を使用しているの
に加え耐火性能も必要となってきております。
で,物が当たった時の衝撃に対しても安全です。
免震構造は建物に設置した免震装置により,
2.2.3 点検が容易です
地震時のエネルギーを吸収して建物の揺れを低
パネル化された耐火材はボルトによる固定の
減させるシステムです。弊社では,免震建築物
ため,簡単に脱着ができ積層ゴムの点検が容易
を火災から守るために以下の製品をラインアッ
に行えます。
プしております。
2.2.4 構造
®
メンシンガード は,免震装置用の耐火被覆
メンシンガード ® の耐火被覆納まり例を図 1
材です。また,メンシンメジ ® は,防火区画に
に,上・下部耐火パネル外観を図 2 に,水平断
設置されるスリット用の耐火目地材です。これ
面図を図 3 に示します。
らの製品を以下にご紹介します。
2.メンシンガード ® について
2.1 製品概要・仕様
メンシンガード ® は,免震建築物の積層ゴム
積層ゴム
パネル芯材
鋼板
の耐火被覆材です。芯材としてけい酸カルシウ
ム板を,また表面材にガルバリウム鋼板を使用
しているサンドイッチ構造のパネルであるため,
軽量で耐衝撃性に優れ,仕上がりもきれいです。
固定ボルト
上部
固定金物
上部耐火
パネル
目地材
下部耐火
パネル
下部
固定金物
メンシンガード ® は,免震層*を駐車場や倉庫と
耐火ガスケット
充填
して有効利用する場合やレトロフィット工法に
おける積層ゴムの耐火被覆材に適しています。
*免震層とは免震建築物において,免震部材を設置している
階層をいいます。
─ ─
31
図 1 耐火被覆納まり例
ニチアス技術時報 2013 No. 1
上・下部耐火パネル
厚さ:50mm
密度:450kg/m 3(パネル芯材)
図 4 メンシンガードの変位追従性能試験
※材質 パネル芯材:けい酸カルシウム板
表裏面鋼板:ガルバリウム鋼鈑
2.4.2 パネル強度試験
図 2 メンシンガード上・下部耐火パネル外観
30kg 砂袋落下試験を行い,衝撃力グレード No.5
(小さいハンマーで打つ衝撃:10kg・m ∼ 30kg・m)
耐火パネル
固定ボルト
相当であることを確認しています(長さ 1,520mm
の場合)
。図 5 にパネル強度試験を示します。
固定金物
図 5 メンシンガードのパネル強度試験
図3 水平断面図
2.5 積層ゴムの点検
2.3 施工方法
積層ゴムの点検は,下部耐火パネルを外すか,
固定金物を積層ゴムのベースプレートに取り
または対面の上下耐火パネルを外すことで簡単
付けます。(別途工事)
に行えます。図 6 に耐火パネル取り外し状況を
①下部耐火パネルを固定ボルトを使用し,固定
示します。
金物に取り付けます。
②下部耐火パネルと同様に上部耐火パネルを取
り付けます。
③耐火パネルと躯体に隙間が生じる場合は,耐
火ガスケットを充填します。
上部耐火パネル
2.4 性能
免震装置の耐火被覆材に必要な性能を以下の
積層ゴム
試験で確認します。
固定金物
2.4.1 変位追従性能試験
強大な地震を想定した変位試験を行い(最大
下部耐火パネル
水平変位 300mm),耐火パネルが積層ゴムの変
位に対して追従することを確認しています。図
4 に変位追従性能試験の様子を示します。
図 6 耐火パネル取り外し状況
─ ─
32
ニチアス技術時報 2013 No. 1
2.6 耐火構造認定
メンシンガード ® は耐火構造認定を表 1 のと
おり取得しています。
メンシンメジ
表 1 国土交通大臣認定取得番号
柱構造
RC造
SRC造
積層ゴム
認定番号
天然ゴム系
FP180CN-0509
高減衰ゴム系
FP180CN-0510
天然ゴム系
FP180CN-0514
高減衰ゴム系
FP180CN-0515
図 9 メンシンメジ施工例
表 2 メンシンメジ製品一般仕様
3.メンシンメジ ® について
スリット幅
厚さ
mm
mm
幅
長さ
mm
タイプ
30
42.5
100
1040
V タイプ
H タイプ
40
52.5
100
1040
V タイプ
H タイプ
50
62.5
100
1040
V タイプ
H タイプ
mm
3.1 製品概要・仕様
メンシンメジ ® は,免震建築物の防火区画目
地用に開発された耐火目地材です。熱橋防止措
置を施した特殊支持金物にロックウールボード
(MG ボード 080)およびセラミックファイバー
(TONBO No.5120 ファインフレックス® 1300 ブ
ランケット #130)を取り付け,ステンレス鋼板
で覆い,このステンレス鋼板を特殊支持金物に
3.2 性能
スポット溶接することで一体化させた防火区画
免震建築物の耐火区画目地材として必要な性
目地材です。図 7 に外観を,図 8 に製品構造を,
能を以下の試験にて確認します。
図 9 に施工例を,表 2 に製品一般仕様を示します。
3.2.1 耐火性能確認試験
財団法人建材試験センターにて耐火性能確認
試験を行い,耐火 1 時間の性能を有しているこ
とを確認しています。
3.2.2 変位追従性能試験
400mm 変位試験を行い,変位前後の異常がな
いことを確認しています。図 10 に変位追従モデ
ルを示します。
図 7 メンシンメジ外観
Vタイプ
Hタイプ
アンカー固定用穴
固定用ピース金物
ステンレス鋼板1mm
加熱膨張材
無機繊維フェルト
(またはMGボード080+
ファインフレックスブランケット)
42.5∼62.5
42.5∼62.5
熱橋防止材
表面材
(ステンレス鋼板0.1mm)
100
100
図8 メンシンメジ製品構造
─ ─
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ニチアス技術時報 2013 No. 1
平常時
地震
発生時
変位追従モデル
復帰
図10 メンシンメジ変位追従モデル
3.3 施工方法
4.おわりに
3.3.1 メンシンメジ ® の設置
免震装置用耐火被覆材メンシンガード ® およ
取付部の汚れなどを取り除いた後,メンシン
び防火区画目地材メンシンメジ ® は,免震建物
メジ ® を圧縮しながら躯体のスリットにハンマー
を火災から守り,建築物にさらなる安全性を付
などを使用しながら押し込みます。
加します。
®
また隣り合うメンシンメジ のステンレス鋼
このメンシンガード ® およびメンシンメジ ®
鈑部同士の目地幅は 10mm 以下になるように調
を多くの方に知っていただくとともに,さらな
整し,設置します。
るご要望に応え,より良い製品を開発していく
3.3.2 アンカーの打ち込み
ため,忌憚のないご意見をいたければ幸いです。
固定用ピース金物に従い,アンカーを打ち込
なお,本製品に関するお問合せは,建材事業
みます。
本部 技術開発部 建材工法開発課(TEL:03
− 3433 − 7256)までお願いいたします。
─ ─
34
ニチアス技術時報 2013 No. 1
〈製品紹介〉
折板屋根用断熱材
®
TOMBO No.4513「スーパーフェルトン Ⅱ,Ⅲ」
建材事業本部 技術開発部 建材製品開発課
1.はじめに
スーパーフェルトン ® Ⅱ,Ⅲはガラス長繊維に
樹脂を含浸したガラスマットであり,金属折板屋
根(以下,
「折板屋根」
)の耐火断熱材です。折
板屋根は,大型,長尺屋根に調和する意匠性,強度,
経済性を備える金属屋根の代表的な屋根工法です。
図 1 スーパーフェルトンⅡ,Ⅲの断面構造
折板屋根は,軽量で施工性もよく,耐震性,耐
風性にも優れ,かつ低コストであることから,大
折板屋根
面積を必要とする工場や倉庫などの屋根に普及
スーパーフェルトン Ⅱ
(厚さ 5mm 以上)
しています。加えて近年では,工場や倉庫など
の作業環境の改善などが求められるようになり,
折板屋根への断熱材の需要は高まっています。
はり
折板屋根に使用する断熱材には発泡ポリエチ
タイトフレーム
レンシートやガラスマットなどがあります。スー
図2 折板屋根のスーパーフェルトンⅡ,Ⅲ施工図
パーフェルトン ® Ⅱ,Ⅲは折板屋根構造として耐
火認定,単体で不燃認定を取得しており,内装
制限を受ける場所にも使用できる材料です。以
表 1 スーパーフェルトンⅡ,Ⅲの特性
下にその製品の概要を紹介します。
製品
厚さ
mm
2.製品概要
スーパーフェルトンⅡ
5
8
幅
スーパーフェルトンⅢ
5
8
指定寸法(500∼1,000)
スーパーフェルトン® Ⅱ,Ⅲは,ガラス長繊維
mm
の積層体の表面を不織布で被覆し,樹脂バイン
m/ ロール
ダーを含浸した,高強度の柔軟性に富むマット
かさ密度
120 + 20, 120 ± 20
−10
140 ± 20
熱伝導率
(平均温度24±2℃)
W/(m・K)
0.037 以下
0.037 以下
耐火認定※
FP030RF-9325
FP030RF-0501,FP030RF-0502,
FP030RF-0633,FP030RF-0925,
FP030RF-0927,FP030RF-1504
不燃認定
NM-2939
NM-2922
長さ
kg/m3
です。断面構造を図 1 に示します。
スーパーフェルトン® Ⅱ,Ⅲは,耐火認定を必
要とする折板屋根の耐火・断熱・吸音・防露な
どの用途として使用され,鋼板との貼り合わせ
後のロールフォーミング性においても優れた製
品です。施工図を図 2 に,特性を表 1 に示します。
50,100
30,60
50,100
30,60
※ ㈳日本金属屋根協会断熱亜鉛鉄板委員会加盟会社の取得認定になります。
─ ─
35
ニチアス技術時報 2013 No. 1
フラットの
鋼板に貼り付け
3.工法について
折板成形
屋根伏せ
スーパーフェルトン ® Ⅱ,Ⅲを折板に貼り付け
る方法として,以下に 2 つの工法を紹介します。
3.1 後貼り工法
折板形状に成形された屋根に現場でスーパー
フェルトン ® Ⅱ,Ⅲを貼りつける工法です。(図
3 参照)
折板成形
貼り付け
屋根伏せ
(貼り付け)
成形完了した折板に,スーパーフェルトンⅡ,
Ⅲを貼り付けます。
(厚物,現場施工用)
図3 後貼り工法
(成形)
3.2 ロールフォーミング工法
図 4 ロールフォーミング工法
成形される前のフラット鋼板にスーパーフェ
ルトン ® Ⅱ,Ⅲを機械貼りする工法です(図 4 参
照)
。一体化した状態で成形機に通し,所定の形
状に成形します。施工の大部分が機械化可能で
5.性 能
あるため,コストメリットがあります。ロール
5.1 引っ張り強さ
フォーミング工法は,鋼板と成型ロールの間を
引っ張り強さの試験方法と規格値は図 5 と表
やわらかい断熱材が通るため,断熱材にかなり
2 のとおりです。
の大きさの引っ張り力・せん断力が加わりますが,
スーパーフェルトン® Ⅱ,Ⅲはほとんどの折板の
形状で,この工法での施工が可能です。
4.特 長
P:引っ張り力
t :試料厚さ
・不燃認定取得品である
・耐火認定取得品(折板屋根構造)である
試験片
(幅 50mm)
を左右に引っ張り,試験破断時の最大荷重
を測定する。
・断熱,保温,吸音性に優れる
・結露水が発生しても保水性が高く,結露水の滴
図 5 引っ張り強さの試験方法
下を防ぐことができる
・加工性が良く,ハサミ,カッターなどで容易に
切断できる
5.2 最大保水率
最大保水率の求め方は次のとおりです。規格
・強度が高く,
ロールフォーミング施工が可能である
・無機繊維で構成されており,腐食しない
値は表 2 のとおりです。
W0…試験片の絶乾時の重量 保水率(%) W1−W0
=
×100
W0
W1…試験片の飽水時の重量
・白色であるため,室内が明るく保てる
─ ─
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ニチアス技術時報 2013 No. 1
1.20
5.3 層間剥離強さ
層間剥離強さは図 6 のように試験片(幅 50mm)
1.00
残響室吸音率
に,長さ方向(長さ 200mm)へ 50mm の切り込
みを入れ,両側を引っ張り,切断時の荷重を測定
します。規格値は表 2 のとおりです。
0.80
スーパーフェルトンⅡ
5mm
スーパーフェルトンⅡ
8mm
スーパーフェルトンⅢ
5mm
0.60
スーパーフェルトンⅢ
8mm
0.40
0.20
0.00
125
250
500
1000
2000
4000
周波数(Hz)
測定機関:独立行政法人 東京都立産業技術センター
P:引っ張り力
図 7 残響室吸音率測定結果
図6 層間剥離強さの試験方法
6.おわりに
表2 性能試験規格値
近年では,㈳日本金属屋根協会断熱亜鉛鉄板
厚さ
5mm
8mm
委員会により,新たな構造による耐火認定の取
引っ張り強さ(N/50mm)
60以上
80以上
得が進められており,今後さらなる展開が期待
最大保水率(%)
500以上
400以上
層間剥離強さ(N/50mm)
8以上
3以上
されます。スーパーフェルトン® Ⅱ,Ⅲは,断熱
材メーカーのみで製造・販売できるものではなく,
貼り施工会社,屋根メーカー,さらに建設会社な
ど,関係各位のご協力があって製品として今日ま
5.4 吸音率
で販売できているものであり,皆さまの惜しみな
JIS A 1409「残響室法吸音率の測定方法」によっ
いご協力があったことにお礼申し上げます。
て測定した吸音率を図 7 に示します。
なお,本製品に関するお問い合わせは建材事
業本部 技術開発部 建材製品開発課(TEL:
03 − 3433 − 7256)までお願いいたします。
─ ─
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