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アジアにおける自動車部品各社の動向
企業情報データベースシリーズ 活用事例紹介 第 12 回 アジアにおける自動車部品各社の動向 城西国際大学 経営情報学部 客員教授 株式会社プロネクサス主任研究員 岡東 務 株式会社プロネクサス データベース事業部 アジアにおける自動車部品各社の動向 城西国際大学経営情報学部客員教授 株式会社プロネクサス主任研究員 岡東務 はじめに 日本の自動車メーカー各社は新興国、特にアジアへの進出を加速させている。完成車の 輸出だけにとどまらず、現地での生産拠点や開発拠点の新設や増強に取り組んでいる。現 地仕様の自動車を作り、販売するという戦略である。こうした動きに触発された形で完成 車メーカーに自動車部品を納入してきた自動車部品メーカー各社も対応を迫られている。 国内にとどまるか、あるいは完成車メーカーとともに海外に進出するかの大きな岐路に立 たされている。国内にとどまった場合、重要の先細りは避けられないため、今後の大きな 流れとしては何らかの形での海外進出が避けては通れないと思われる。そうした場合、単 独進出に踏み切るのかあるいは現地の企業との合弁形式による進出も選択肢としてあり得 る。本稿はプロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」を使い、アジア各国 地域の自動車部品メーカーを検索したものである。eol AsiaOne の自動車部品の業種分類 (FACTSET)には 2 種類がある。1 つは製造業-自動車部品:OEM、もう 1 つは耐久消費財自動車部品である。製造業-自動車部品:OEM によると、対象地域の主な自動車部品メーカー は 222 社(このうち上位 100 社ランキングを作成)が該当した。もう 1 つの耐久消費財-自 動車部品で検索すると、66 社(重複上場と単独決算を除き 55 社のランキングを作成)があ ることがわかった。日本の自動車部品メーカー各社にとって、アジア各地域の企業との競 争が激化すると同時に協調の動きが本格化していくと考えられる。アジア各地域の主な自 動車部品メーカーの現状とその横顔を紹介することにしたい。 1 日本の自動車部品メーカーの出荷額 本稿の主要テーマであるアジア地域の自動車部品メーカーの動向をみる前に、予備知識 として、日本の自動車部品メーカーの現状を概観しておこう。 日本自動車部品工業会[2011 他]によると、日本の主要な部品メーカーは 10 年前に 400 社 を超えていたが、最近では 338 社と約 20%減っている。また 2000 年度から 2010 年度までの 自動車部品の出荷額の推移は、図表 1 のとおりである。それによると、我が国の自動車部 品の出荷額は 2007 年度まではほぼ右肩上がりに順調に増えてきた。ピークだった 2007 年 度は 20 兆 9164 億円に達した。しかし 2008 年度にはリーマンショックによる自動車生産の 急激な落ち込みによる影響から、前年度比 14.4%減となり、3 年前の水準にまで逆戻りをし てしまった。2009 年度もさらに落ち込み、前年度比 6.9%減と 2 年連続のマイナス成長を余 儀なくされた。2010 年度になって 3 年ぶりに前年度比 6.8%増に転じた。 図表 1 によると、総出荷額のうち、大半は四輪車向けである。ちなみに 2010 年度の総出 1 荷額の 98.3%が四輪車向けだった。一方、総出額に占める海外向けの比率(輸出比率)は直 近期で 18.6%と 10 年前の 11.5%から 7.1 ㌽も上昇している。輸出比率の推移を注意深くみ ると、毎年ほぼ着実に上昇している。自動車部品の需要が内需から輸出への流れが徐々に 進んでいるのが確認できる。 図表 1 自動車部品出荷額 総出荷額(うち四輪) (単位:100 万円、 %) 年度 会社数 海外(輸出比率) 総出荷額増減率 2000(平成 12) 429 13,686,377(13,245,124) 1,567,986(11.5) 103.4 2001(同 13) 414 13,552,401(13,109,073) 1,632,021(12.0) 99.0 2002(同 14) 408 14,383,817(13,944,102) 1,927,954(13.4) 106.1 2003(同 15) 403 15,228,011(14,792,088) 2,125,814(14.0) 105.9 2004(同 16) 405 16,013,939(15,582,234) 2,356,769(14.7) 105.2 2005(同 17) 394 17,565,033(17,070,766) 2,726,104(15.5) 109.7 2006(同 18) 392 19,002,664(18,490,388) 2,997,527(15.8) 108.2 2007(同 19) 386 20,916,462(20,411,156) 3,359,626(16.1) 110.1 2008(同 20) 361 17,901,376(17,488,474) 2,655,614(14.8) 85.6 2009(同 21) 363 16,657,435(16,391,347) 2,820,518(16.9) 93.1 2010(同 22) 338 17,789,938(17,484,444) 3,308,416(18.6) 106.8 資料:日本自動車備品工業会『自動車部品出荷動向調査結果』平成 12 年度から同 22 年度。 ここまでは自動車部品を出荷額でとらえてきたが、出荷額は実に様々な部品群から構成 されている。日本自動車部品工業会の分類では、①エンジン部品、②電装品・電子部品、③ 照明・計器など電気・電子部品、④駆動・伝導及び操縦装置部品、⑤懸架・制動装置部品、 ⑥車体部品、⑦用品、⑧情報関連部品―の 8 種類からなる。図表 2 は 8 種類の部品群を構 成する主要な部品と平成 22 年度の出荷額をまとめたものである。 図表 2 主要な自動車部品名と出荷金額 部品名 エンジン部品 電装品・電子部品 (単位:100 万円) 主な部品名(カッコ内は平成22年度の出荷金額) 触媒装置(144,396)、ディーゼル用燃料噴射装置(133,046)、ラジエ ータ(127,217) 電子部品及びセンサー類(274,936)、ブレーキ関係電子装置 (206,410)、エンジン制御装置(196,768) 照明・計器など電気・ ワイヤー・ハーネス(950,249)、前照灯(206,628)、スピード・メーター 電子部品 類(193,124) 駆動・伝導及び操縦 自動トランスミッション(1,268,887)、トランスミッション用部品(385,004)、 装置部品 ステアリング・シャフト、チューブ及びリンク機構部品(242,674) 2 懸架・制動装置部品 ディスク・ブレーキ装置(223,202)、サスペンション・ストラッド (92,502)、ショック・アブソーバ(87,506) シート及びシートスプリング(807,780)、乗用車用プレス部品 車体部品 (482,478)、エアバッグモジュール及附属品(204,668)、ドアハンドル 及びロック(153,035) 用品 冷房装置(484,946)、カーステレオ(293,588)、暖房装置(113,964) 情報関連部品 ナビゲーションシステム及関連部品(584,739)、ETC(26,451) 合計 17,789,938 資料: 日本自動車備品工業会『自動車部品出荷動向調査結果』平成 12 年度 図表 3 は 8 つの自動車部品群の構成比を表したものである。図表 3 を構成比が大きい順 にみると、車体部品(22%)、駆動・伝導及び操作装置部品(21%)、エンジン部品(15%) が上位 3 つの部品群となっている。 図表 3 品目別自動車部品出荷額(構成比):平成22年度 3 2 アジア地域の自動車部品メーカー (1)製造業-自動車部品:OEM による分類 eol AsiaOne の製造業-自動車部品:OEM による分類によると、2011 年のアジア地域にお ける主要な部品メーカーの売上高ランキングは、図表 4 のようになった。表 4 では対象企 業のうち上位 100 社を掲載している。データの制約上、企業名が英文表記なっているが、 売上高は円貨換算(単位 100 万円)で表示している。 図表 4 アジア地域の自動車部品メーカー(製造業-自動車部品:OEM)単位:100 万円 順位 企業名 国 売上高 業種 1 SAIC Motor Corporation Limited 中国 5,292,781 機械、機器 2 DENSO CORPORATION 日本 3,131,460 輸送用機器 3 AISIN SEIKI CO.,LTD. 日本 2,257,436 輸送用機器 4 TOYOTA INDUSTRIES CORPORATION 日本 1,479,839 輸送用機器 5 Toyota Auto Body Co.,Ltd. 日本 1,462,633 輸送用機器 6 TOYOTA BOSHOKU CORPORATION 日本 983,727 輸送用機器 7 CALSONIC KANSEI CORPORATION 日本 748,249 輸送用機器 8 HUAYU Automotive Systems Company Limited 中国 636,622 機械、機器 9 The Yokohama Rubber Company,Limited 日本 519,742 ゴム製品 10 TOYODA GOSEI CO.,LTD. 日本 516,982 輸送用機器 11 NISSAN SHATAI CO.,LTD. 日本 505,997 輸送用機器 12 Kanto Auto Works, Ltd. 日本 504,127 輸送用機器 13 The Yokohama Rubber Company,Limited 日本 465,133 ゴム製品 14 NHK SPRING CO.,LTD. 日本 456,198 金属製品 15 KOITO MANUFACTURING CO.,LTD. 日本 428,977 電気機器 16 Hyundai Wia Corp. 韓国 423,683 製造業 17 Takata Corporation 日本 390,876 輸送用機器 18 FUTABA INDUSTRIAL CO.,LTD. 日本 373,458 輸送用機器 19 Anhui Jianghuai Automobile Co., Ltd. 中国 370,951 機械、機器 20 UMW Holdings Berhad MAL 327,669 貿易製品 21 TOKAI RIKA CO.,LTD. 日本 327,622 輸送用機器 22 KAYABA INDUSTRY CO.,LTD. 日本 320,082 輸送用機器 23 Toyo Tire & Rubber Co.,Ltd. 日本 294,092 ゴム製品 24 KEIHIN CORPORATION 日本 278,490 輸送用機器 25 NGK SPARK PLUG CO.,LTD. 日本 269,232 ガ・土製品 26 Stanley Electric Co.,Ltd. 日本 248,081 電気機器 27 SHOWA CORPORATION 日本 233,381 輸送用機器 4 28 Halla Climate Control Corp. 韓国 219,515 製造業 29 UNIPRES CORPORATION 日本 219,032 輸送用機器 30 TACHI-S CO.,LTD. 日本 218,805 輸送用機器 31 AKEBONO BRAKE INDUSTRY CO.,LTD. 日本 216,574 輸送用機器 32 SANDEN CORPORATION 日本 216,539 機械 33 MITSUBA Corporation 日本 208,162 電気機器 34 EXEDY Corporation 日本 196,451 輸送用機器 35 YUTAKA GIKEN CO.,LTD. 日本 179,417 輸送用機器 36 Clarion Co.,Ltd. 日本 178,318 電気機器 37 NIPPON SEIKI CO.,LTD. 日本 167,276 輸送用機器 38 NISSIN KOGYO CO.,LTD. 日本 164,733 輸送用機器 39 Fangda Special Steel Technology Co., Ltd. 中国 162,311 機械、機器 40 AISAN INDUSTRY CO.,LTD. 日本 150,849 輸送用機器 41 PRESS KOGYO CO.,LTD. 日本 147,117 輸送用機器 42 F-TECH INC. 日本 137,706 輸送用機器 43 MUSASHI SEIMITSU INDUSTRY CO.,LTD. 日本 127,026 輸送用機器 44 H-ONE CO.,LTD. 日本 126,362 金属製品 45 HI-LEX CORPORATION 日本 125,098 輸送用機器 46 NIFCO INC. 日本 120,574 化学 47 KASAI KOGYO Co.,Ltd. 日本 119,469 輸送用機器 48 SHIROKI CORPORATION 日本 117,704 輸送用機器 49 F.C.C. CO.,LTD. 日本 117,621 輸送用機器 50 Hubei Energy Group Co., Ltd. 中国 116,950 電気・ガス等 51 AICHI MACHINE INDUSTRY CO.,LTD. 日本 111,055 輸送用機器 52 YOROZU CORPORATION 日本 102,206 輸送用機器 53 Wanxiang Qianchao Co., Ltd. 中国 99,493 機械、機器 54 SL Corporation 韓国 98,936 製造業 55 Hwashin Co., Ltd. 韓国 98,774 製造業 56 ICHIKOH INDUSTRIES, LTD. 日本 92,547 電気機器 57 SHIN-KOBE ELECTRIC MACHINERY CO.,LTD. 日本 92,032 電気機器 58 Fuji Kiko Co.,Ltd. 日本 91,771 輸送用機器 59 NIHON PLAST CO.,LTD. 日本 85,466 輸送用機器 60 Changchun FAWAY Automobile Components Co., 中国 84,983 機械、機器 61 PACIFIC INDUSTRIAL CO.,LTD. 日本 84,631 輸送用機器 62 Imasen Electric Industrial Co.,Ltd. 日本 83,828 輸送用機器 63 T.RAD Co., Ltd. 日本 83,437 輸送用機器 5 64 Xinyi Glass Holdings Limited 香港 83,120 自動車 65 Topre Corporation 日本 80,689 金属製品 66 Sanoh Industrial Co.,Ltd. 日本 79,768 輸送用機器 67 MIKUNI CORPORATION 日本 79,762 輸送用機器 68 Shanghai Jiao Yun Co., Ltd. 中国 79,698 機械、機器 69 TAIHO KOGYO CO.,LTD. 日本 78,656 機械 70 RIKEN CORPORATION 日本 78,224 機械 71 CHUO SPRING CO.,LTD. 日本 76,416 金属製品 72 Liaoning SG Automotive Group Co., Ltd. 中国 76,057 機械、機器 73 Weifu High-Technology Group Co., Ltd. 中国 71,796 機械、機器 74 Weifu High-Technology Group Co., Ltd. 中国 71,796 機械、機器 75 Xingda International Holdings Limited 香港 70,979 工業製品 76 Tianneng Power International Limited 香港 67,686 自動車 77 Jidosha Buhin Kogyo Co.,Ltd. 日本 66,191 輸送用機器 78 DaewonKangup Co., Ltd. 韓国 66,040 製造業 79 Korea Flange Co., Ltd. 韓国 64,449 製造業 80 KINUGAWA RUBBER INDUSTRIAL CO.,LTD. 日本 63,815 輸送用機器 81 Sejong Industial Co., Ltd. 韓国 62,148 製造業 82 UNIVANCE CORPORATION 日本 60,717 輸送用機器 83 Chaowei Power Holdings Limited 香港 60,361 自動車 84 G-TEKT CORPORATION 日本 59,278 金属製品 85 U-SHIN LTD. 日本 58,410 電気機器 86 SL Corporation 韓国 57,863 製造業 87 Chongqing ZongShen Power Machinery Co., Ltd. 中国 56,114 機械、機器 88 TPR CO., LTD. 日本 55,276 機械 89 NISHIKAWA RUBBER CO.,LTD. 日本 52,019 ゴム製品 90 Mitsuboshi Belting Ltd. 日本 50,928 ゴム製品 91 Minth Group Limited 香港 50,156 自動車 92 Fengfan Stock Co., Ltd. 中国 49,601 機械、機器 93 Zhejiang Wanfeng Auto Wheel Co., Ltd. 中国 47,881 機械、機器 94 Nippon Piston Ring Co.,Ltd. 日本 47,411 機械 95 Tong Yang Ind. Co., Ltd. 台湾 46,456 プラスチック 96 I Metal Technology Co.,Ltd. 日本 46,391 輸送用機器 97 Ningbo Huaxiang Electronic Co., Ltd. 中国 44,825 機械、機器 98 GMB CORPORATION 日本 43,967 輸送用機器 99 The Furukawa Battery Co.,Ltd. 日本 43,204 電気機器 6 100 TBK Co., Ltd. 日本 41,543 輸送用機器 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 図表 4 のランキングに登場した 100 社の国別分布は次のとおりである。日本は 71 社、中 国 14 社、韓国 8 社、香港 5 社、台湾とマレーシアが各 1 社となった。 (2)耐久消費財-自動車部品による分類 eol AsiaOne の耐久消費財-自動車部品による分類による 2011 年のアジア地域における主 要な部品メーカーの売上高ランキングは、図表 5 のようになった。 図表 5 アジア地域の自動車部品メーカー(耐久消費財―自動車部品) 単位:100 万円 順位 企業名 国 売上高 業種 1 BRIDGESTONE CORPORATION 日本 3,024,355 ゴム製品 2 Sumitomo Rubber Industries, Ltd. 日本 676,903 ゴム製品 3 Hankook Tire Co., Ltd. 韓国 430,063 製造業 4 TS TECH CO.,LTD. 日本 357,489 輸送用機器 5 JVC KENWOOD Corporation 日本 352,672 電気機器 6 Cheng Shin Rubber Ind. Co., Ltd. 台湾 304,879 ゴム製品 7 Double Coin Holdings Ltd. 中国 133,007 石・化・P 8 Aeolus Tyre Co., Ltd. 中国 124,521 石・化・P 9 Kumho Industrial Co., Ltd. 韓国 115,284 建築業 10 Aerospace Communications Holdings Co., 中国 96,312 繊維衣料等 11 Nexen Tire Corporation 韓国 94,771 製造業 12 Guizhou Tyre Co., Ltd. 中国 91,736 石・化・P 13 Feng Tay Enterprises Co., Ltd 台湾 90,114 その他 14 Nexen Tire Corporation 韓国 78,007 製造業 15 Sailun Co., Ltd. 中国 77,780 石・化・P 16 Qingdao Doublestar Co., Ltd. 中国 76,877 石・化・P 17 Kenda Rubber Ind. Co., Ltd. 台湾 70,632 ゴム製品 18 Cheng Shin Rubber Ind. Co., Ltd. 台湾 62,166 ゴム製品 19 GITI Tire Corporation 中国 58,641 石・化・P 20 Lingyun Industrial Corporation Limited 中国 52,176 石・化・P 21 Nankang Rubber Tire Corp., Ltd. 台湾 43,238 ゴム製品 22 Dongah Tire Ind Co., Ltd. 韓国 37,299 製造業 23 Feng Tay Enterprises Co., Ltd 台湾 35,690 その他 24 NICHIRIN CO.,LTD. 日本 33,463 ゴム製品 25 Federal Corp. 台湾 30,103 ゴム製品 7 26 Dongah Tire Ind Co., Ltd. 韓国 25,007 製造業 27 Lion Forest Industries Berhad Mal 24,940 貿易製品 28 Lion Forest Industries PUBLIC COMPANY タイ 24,578 自動車 29 Jiangnan Mould & Plastic Technology Co., 中国 23,910 機械、機器 30 Zhejiang Asia-Pacific Mechanical & electronic 中国 22,533 機械、機器 31 SOFT99corporation 日本 20,884 化学 32 CAR MATE MFG. CO.,LTD. 日本 17,929 輸送用機器 33 Federal Corp. 台湾 17,657 ゴム製品 34 Qingdao Yellow Sea Rubber Co., Ltd. 中国 17,579 石・化・P 35 Daesung Eltec Co., Ltd. 韓国 16,859 製造業 36 Nankang Rubber Tire Corp., Ltd. 台湾 15,842 ゴム製品 37 Kenda Rubber Ind. Co., Ltd. 台湾 15,697 ゴム製品 38 INOUE RUBBER (THAILAND) PUBLIC COMPANY LIMITED タイ 14,913 自動車 39 THAI STORAGE BATTERY PUBLIC COMPANY LIMITED タイ 13,894 自動車 40 Xuchang Yuandong Drive Shaft Co., Ltd. 中国 12,547 機械、機器 41 AUTOWAVE Co.,Ltd. 日本 11,175 小売業 42 GOODYEAR (THAILAND) PUBLIC COMPANY LIMITED タイ 9,945 自動車 43 Privee Turnaround Group Co.,Ltd. 日本 9,800 化学 44 TEITO RUBBER LTD. 日本 8,545 ゴム製品 45 Gordon Auto Body Parts Co., Ltd. 台湾 7,994 電機・機械 46 Sichuan Chengfei Integration Technology Corp. 中国 7,531 機械、機器 47 HWA FONG RUBBER (THAILAND) PUBLIC COMPANY タイ 5,399 自動車 48 EIKEN INDUSTRIES CO.,LTD. 日本 4,766 輸送用機器 49 Fu-Chian Tire Co., Ltd. 台湾 4,641 ゴム製品 50 Jiangsu Yunyi Electric Co., Ltd. 中国 4,465 機械、機器 51 GPA Holdings Berhad Mal 4,282 工業製品 52 SAKURAI LTD. 日本 3,948 輸送用機器 53 Cryomax Cooling System Corp. 台湾 3,102 電機・機械 54 Multi-Code Electronics Industries (M) Berhad Mal 2,651 工業製品 55 I Yuan Precision Ind Co., Ltd. 台湾 1,492 電機・機械 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 まず図表 5 の企業 55 社を国別に集計してみると、次のようになる。第 1 位は台湾の 14 社、第 2 位が中国の 14 社、第 3 位が日本の 12 社、第 4 位が韓国の 7 社、第 5 位がタイの 5 社、第 6 位がマレーシアの 3 社という内訳になった。台湾、中国勢が全体の約半数を占め ている。次節でアジア地域の代表的な企業を紹介していきたい。 8 3 自動車部品メーカーの横顔 まず製造業―自動車部品:OEM ベースのランキングに登場した中から代表的と思われる会 社を紹介する。ただし日本企業についての情報は豊富にあるので、除外する。 (1)SAIC Motor Corporation Limited(中国) ランキングの第 1 位は上海汽車集団(SAIC)。ただし同社は自動車部品も製造販売してい るが、売り上げの約 8 割近くは完成車である。同社の概要は次の通り。 図表 6 上海汽車集団(SAIC)の概要 国 中国 企業コード 600104 企業名 SAIC Motor Corporation Limited 企業名(略称) SAIC MOTOR 企業名(現地名) 上海汽车集团股份有限公司 国際証券(ISIN)コード CNE000000TY6 業種(FACTSET) 自動車部品:OEM 業種(中国) 機械、機器 上場市場 上海証券取引所(A 株) 決算月 12 月 事業セグメント 自動車(78.68%),自動車部品ほか(15.92%),貿易(2.53%), 他の収入(1.94%),サービス収入(0.93%) 事業内容 上海汽車集団(SAIC)は自動車と関連部品を製造販売している。 他の活動は資産管理、コンサルテーションサービスの提供、自 社製品や技術の輸出及び機械、部品、原材料、技術の輸入など を含む。 自動車は乗用車、トラックター、2 輪車、トラック、 バスを含む。グループは中国で事業を行っている。会社は 1995 年に設立され、本社は上海にある。 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 SAIC の業績の推移は 6-1 のとおりである。この 2 年間業容が急速に拡大している。ただ し収益力は伴っていないように見受けられる。 図表 6-1 SAIC Motor Corporation の主要な業績指標 (単位:100 万円、%、円) 科目名/年 売上高 営業利益 2007 2008 2009 2010 2011 1,596,609 1,406,725 1,896,044 4,507,041 5,292,781 85,267 -12,883 114,482 411,145 507,575 9 -0.84 -2.42 1.07 6.72 6.89 70,889 8,716 89,508 201,981 246,156 4.47 0.63 4.8 4.54 4.71 10 1 13 18 22 売上高営業利益率 当期純利益 売上高当期純利益率 1 株利益 資料: プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 (2)Hyundai Wia Corp.(韓国) 韓国勢のトップは現代ワイア(Hyundai Wia)である。 図表 7 現代ワイア(Hyundai Wia)の概要 国 韓国 企業コード 011210 企業名 Hyundai Wia Corp. 企業名(略称) Hyundai Wia 企業名(現地名) 현대위아 (주) 国際証券(ISIN)コード KR7011210002 業種(FACTSET) 自動車部品:OEM 業種(韓国) 製造業 上場市場 韓国証券取引所 決算月 12 月 事業セグメント 記載なし 事業内容 Hyundai Wia は、自動車部品の製造販売を行っている。事業領域 は、機械、自動車部品、防衛機器、産業機械、宇宙など。機械事 業はマシンツール、産業ロボット。自動車部品事業はモジュール、 エンジン、部品である。防衛機器事業は、火器と航空部品。産業 機械はプラント、プレスを製造している。会社は 1976 に創立さ れた。本社は Changwon にある。 資料: プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 同社の業績の推移は次のとおりである。データに制約があるが、最近の業績は順調であ る。 図表 7-1 Hyundai Wia Corp.の主要な業績指標 (単位:100 万円、%、円) 科目名/年 売上高 2007 2008 2009 2010 2011 N/A N/A. N/A. 371,250 423,683 10 営業利益 N/A. N/A. N/A. 14,580 21,069 売上高営業利益率 N/A. N/A. N/A. 3.93 4.97 当期純利益 N/A. N/A. N/A. 18,855 31,722 売上高当期純利益率 N/A. N/A. N/A. 5.08 3.72 1 株利益 N/A. N/A. N/A. 426 624 資料: プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 (3)UMW Holdings Berhad(マレーシア) 次にマレーシアの代表的な企業を紹介する。 図表 8 UMW Holdings Berhad(マレーシア)の概要 国 マレーシア 企業コード 4588 企業名 UMW Holdings Berhad 企業名(略称) UMW 国際証券(ISIN)コード MYL4588OO009 業種(FACTSET) 自動車部品:OEM 業種(マレーシア) 貿易製品 上場市場 MAIN 決算月 12 月 事業セグメント 自動車 ( 71.23%),機械、設備及び産業機器( 15.27%),石油及び ガス( 8.15%),自動車部品( 4.92%),その他(0.43%) UMW ホールディングスは乗用車と商用車の組み立てと販売を中 事業内容 心に行っている投資持ち株会社である。事業は次の事業領域で行 われている。自動車、設備、製造及びエンジニアリング、石油及 びガス、その他。設備機器は産業、建設及び農業分野で使われる 関連部品を含めて広範囲に及ぶ設備を扱っている。製造及びエン ジニアリング部門は自動車部品の製造、組み立て及び販売と潤滑 油のブレンド、パッケージ及び販売などを行っている。石油及び ガスは石油パイプの製造販売及び多種類の石油及びガスの供給 を行う。 その他の事業は保険、旅行、IT、経営及び企業向け 専門サービスである。会社は 1917 年に設立された。本社所在地 はサーアラム(Shah Alam)にある。 資料: プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 11 UMW Holdings の業績はおおむね安定している。 図表 8-1 UMW Holdings Berhad の主要な業績指標 科目名/年 売上高 営業利益 2007 2008 2009 2010 2011 337,023 335,467 280,020 337,675 327,669 21,292 28,205 21,043 31,861 30,820 6.32 8.41 7.26 9.44 9.41 38,380 39,436 27,565 13,878 12,153 4.7 4.43 3.57 4.11 3.71 1,507 1,373 937 1,219 1,040 売上高営業利益率 当期純利益 (単位:100 万円) 売上高当期利益率 1 株利益 資料: プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 (4)Xinyi Glass Holdings Limited(香港) 香港市場に上場している自動車部品の企業のうち、Xinyi Glass Holdings を取り上げる ことにする。 図表 9 Xinyi Glass Holdings の概要 国 香港 企業コード 00868 企業名 Xinyi Glass Holdings Limited 企業名(略称) Xinyi Glass 企業名(現地名) 信義玻璃控股有限公司 国際証券(ISIN)コー KYG9828G1082 ド 業種(FACTSET) 自動車部品:OEM 業種(香港) 自動車 上場市場 香港証券取引所 決算月 12 月 事業セグメント フロートガラス(高級板ガラス)(35.95%) 、自動車用ガラスの 販売 (35.29%)、ガラス製品(14.99%)、建築用ガラスの販売 (13.77%) 事業内容 Xinyi Glass Holdings Ltd.は投資持株会社で、傘下の子会社 が フロートガラス、ソーラーガラス製品、自動車用ガラス製 品、建築用ガラス及び多様な関連製品を製造及び販売してい 12 る。 会社は 1988 年に Yin Yee Lee 氏によって設立された。本 社は香港にある。 資料: プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 業績の推移は図表 9-1 のとおりである。eol AsiaOne のサマリー版の財務データは最大で 以下の項目が掲載されている。これまで損益計算書の項目だけを紹介してきたが、参考ま でに全項目を掲載してみる。 まず売上高は 順調に拡大している。4 年前に比べて倍増している。売上高営業利益率も 比較的高水準にある。一方純資産額は 2011 年末で 844 億 3000 万円、株主資本比率は 55.55% と健全の水準を維持している。さらにキャッシュフローは投資キャッシュフローが営業キ ャッシュフローの水準を大きく上回っている。善意に解釈すれば、投資先行型の高成長志 向ともいえるが、今後営業キャッシュフローの水準をいかにあげていくかが課題の 1 つに なると思われる。 図表 9-1 Xinyi Glass Holdings の主要な業績指標 (単位:100 万円、%、円) 科目名/年 2007 2008 2009 2010 2011 売上高 41,283 46,679 48,010 67,891 83,120 営業利益 10,405 8,984 9,944 19,816 15,332 26.5 19.95 21.19 29.85 18.91 9,643 8,318 9,281 16,431 12,516 28,184 25,040 27,905 49,428 37,594 24.18 18.21 19.54 24.69 15.38 588 490 533 464 348 純資産合計 57,966 51,371 64,903 68,507 84,430 資産合計 76,952 76,046 95,727 115,119 151,985 株主資本比率 75.33 67.55 67.8 59.51 55.55 資本金 2,469 1,975 2,119 3,675 3,647 33 30 36 19 22 営業CF 6,305 13,665 15,806 14,060 12,908 投資CF -20,488 -11,138 -16,303 -23,810 -30,701 財務CF 15,858 -855 1,696 9,581 17,918 売上高営業利益率 経常利益 当期純利益 売上高当期利益率 1 株利益 1 株純資産 13 現金同等物期末残高 4,434 5,099 6,356 5,900 6,266 資料: プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 次に耐久消費財―自動車部品ベースのランキングに登場した企業を紹介しよう。このラ ンキングには、タイヤメーカー、照明機器メーカーなど完成車メーカーとは幅広く取引し ている企業が多いのが特徴である。 (1)Hankook Tire(韓国) ハンクックタイヤ(英語名称:Hankook Tire、韓国語名称:한국타이어(주))は韓国証券 取引所に上場し、タイヤの製造と販売を行っている。タイヤの用途は乗用車、軽トラック から冬用タイヤまで多岐にわたる。会社の設立は 1941 年 5 月、本社はソウル。業績の推移 をみると、2008 年に売上高が大きく減少したが、営業利益は黒字を維持している。その後 の推移はおおむね順調の部類に入る。 図表 10 ハンクックタイヤの主要な業績指標 (単位:100 万円、%、円) 科目名/年 2007 2008 2009 2010 2011 売上高 427,992 321,251 409,439 421,121 430,063 32,938 15,034 49,354 48,552 38,314 7.70 4.68 12.05 11.53 8.91 37,629 244 57,125 66,307 47,118 4.34 -0.45 6.65 7.53 5.48 125 -10 187 218 162 営業利益 売上高営業利益率 当期純利益 売上高当期純利益率 1 株利益 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 (2)Daesung Eltec Co., Ltd. ダースンエレテック(英語名称:Daesung Eltec、韓国語名称:(주)대성엘텍)は、コ スダック市場に上場する電気製品の製造販売を手掛けている。事業分野は 2 つ に大別できるが、1 つは、カーオーディオ、アンプ、DVD、ナビゲーションなど の製品群である。2 番目は、液晶画面などに組み付ける基板などを製造している モジュール部門である。会社は 1979 年 6 月に設立された。本社はソウル。 業績は 2008 年以降低迷している。自動車不況の影響を受けたのが直接の原因 と考えられるが、その後の回復も芳しくない。 14 図表 11 ダースンエレテックの主要な業績指標 科目名/年 売上高 2007 2008 (単位:100 万円、%、円) 2009 2010 2011 40,711 18,971 19,259 19,967 16,859 423 -769 -293 428 -515 1.04 -4.05 -1.52 2.15 -3.05 502 -1,595 -1,684 33 -1,774 0.48 -4.20 -4.37 0.08 -5.26 10 -45 -30 0 -22 営業利益 売上高営業利益率 当期純利益 売上高当期純利益率 1 株利益 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 (3)Cheng Shin Rubber(台湾) チェンシンゴム(英語名称:Cheng Shin Rubber Ind. Co., Ltd.、中国語名称:正新橡 膠工業股份有限公司)は台湾証券取引所に上場しているタイヤメーカーである。その製品 は、乗用車、2 輪車、自転車、農業用及び産業用タイヤ、自転車用のチューブなどを含む。 会社は 1969 年 12 月に設立された。 図表 12 チェンシンゴムの主要な業績指標 科目名/年 売上高 営業利益 売上高営業利益率 当期純利益 売上高当期純利益率 1 株利益 (単位:100 万円、%、円) 2007 2008 2009 2010 2011 220,792 203,757 243,186 278,335 304,879 26,282 17,945 49,918 33,210 29,518 9.68 8.81 20.53 11.93 11.90 39,336 20,895 79,760 57,814 43,830 9.40 5.16 16.88 10.36 7.16 29 13 46 27 17 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 (4)Double Coin Holdings(中国) ダブル・コイン・ホールディングス(英語名称:Double Coin Holdings Ltd. 中国語名 称:双钱集团股份有限公司)は上海証券取引所(B 株)に上場しているタイヤメーカーであ る。事業セグメントは 89.5%が自動車用タイヤ、10.5%がその他ゴム製品、石けんなどとい う内訳になっている。会社の 1990 年 6 月に設立され、本社は上海にある。業績の推移をみ ると、2008 年に赤字に転落した後、その後の回復の足取りは必ずしも順調とはいえないよ 15 うである。 図表 13 ダブル・コイン・ホールディングスの主要な業績指標 (単位:100 万円、%、円) 科目名/年 売上高 営業利益 売上高営業利益率 当期純利益 売上高当期純利益率 2007 2008 2010 2011 118,246 107,962 99,042 112,078 133,007 3,121 -5,121 3,572 2,432 917 2.77 -3.49 6.32 2,581 -1,953 2,318 3581 2,150 2.20 -1.82 2.35 3.22 1.63 2 -3 2 4 2 1 株利益 2009 2.17 1.04 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 (5)THAI STANLEY ELECTRIC PUBLIC COMPANY LIMITED (タイ) タイの自動車部品メーカーは日系企業を取り上げる。進出時期が 1980 年と比較的早かっ たことがその後の同社の経営基盤の強化につながったと思われる。スタンレー電気が資本 金の 30.4%を所有する同社の持分法適用会社の 1 つである。 図表 14 タイスタンレー電気の概要 国 タイ 企業コード STANLY 企業名 THAI STANLEY ELECTRIC PUBLIC COMPANY LIMITED 企業名(略称) THAI STANLEY ELECTRIC 国際証券(ISIN)コード TH0233010006 業種(FACTSET) 自動車部品 業種(タイ) 自動車 上場市場 SET 決算月 3月 事業セグメント 自動車用バルブ、自動車用照明(100.00%) 事業内容 タイスタンレー電気は自動車用バルブ、照明機器、金型等の 製造販売を行っている。金型等は照明機器の部品を製造する ために製造されている。会社の設立は 1980 年、本社はパトム タニーにある。 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 16 図表 14-1 THAI STANLEY ELECTRIC の主要な業績指標 (単位:100 万円、%、円) 科目名/年 売上高 2007 2009 2010 2011 26,440 21,977 21,020 24,578 20,945 4,364 2,884 2,976 4,679 1,857 16.5 13.12 14.15 19.04 8.86 11,704 8,965 7,744 11,296 5,058 14.75 13.59 12.28 15.32 8.05 50 39 33 49 22 営業利益 売上高営業利益率 当期純利益 2008 売上高当期純利益率 1 株利益 資料:プロネクサスのアジア企業のデータベース「eol AsiaOne」 4 自動車部品メーカーの今後の対応 今後の我が国の自動車部品メーカーの対応はどのように変化するべきか。丹下英明 [2011]は、特に中国やインドをはじめとする新興国では、小型の低価格車に対するニーズ が拡大中である、としたうえで、大手部品メーカーに限らず、中小の部品メーカーも低コ ストで生産可能な体制を構築し、国際競争に対応しなければならないと指摘している 1 。 そのうえで仮に国内にとどまる場合でも新興国に負けないモノづくりを国内で実現するた めに、①加工方法の転換、生産ラインのコンパクト化、といった従来のからの方法に加え て、③提案力の強化、④既存技術を生かした新製品・新事業への進出などの対策に取り組 む必要があると述べている 2 。 一方、海外進出する場合においても、①負担を軽減した進出形態の検討、②現地生産設 備・中古設備・現地素材の活用、③国内拠点との連携体制の確立、④第 3 国への供給も視 野に、といった取り組みが有効である、指摘している 3。 丹下の主張を一部裏付ける資料もある。日本自動車部品工業会[2012a]によると、同工業 会に所属する会員会社による海外事業の展開状況を調査したところ、2010 年現在ですでに 2,621 社の事業体が海外に進出している。このうち生産法人は 1,645 社と前年に比べて 47 社も増加している。生産法人の地域別分布をみると、アジアの生産法人は 1,068 社と全世 界の 64.9%を占めている。 また 2,621 社の事業体のうち、技術供与件数は 471 件、「現地統括管理」「研究開発」 等のその他は 187 件とそれぞれ 18.0%と 7.1%を占めている。日本の主要な自動車部品メ ーカーは多様な方法で海外進出を果たしていることがわかる。今後はこうした動きがアジ ア市場を中心にさらに進むことが必然的であると考えらえる。 最近の新聞報道によると、トヨタ自動車と日産自動車の大手 2 社の海外展開は一段と加 速する見通しである。トヨタは国内生産台数を年 300 万台の水準を維持するとする一方、 これに伴って生じる余剰生産能力を 50 万台削減する。また 2015 年までに海外での生産能 17 力を 1000 万台に拡大する 4。またトヨタは 2013 年をめどに、小型ハッチバック車「ヤリス」 (日本名ヴィッツ)の北米向け輸出を、国内からフランス拠点に切り替える。円高で採算が 悪化したため、歴史的なユーロ安の続くフランスを輸出拠点として強化する 5。 日産自動車は 2012 年 7 月から神奈川の追浜工場の生産ラインの 1 本を停止し、国内の生 産能力を 15%(年間約 20 万台)削減する。同工場で生産している車種の一部をタイに移管し、 タイからの輸入に切り替える 6。 トヨタ、日産に限らず、完成車メーカーのこうした動きは日本の自動車にとって大きな うねりである。そのうねりは今後も一段と大きくなっていきそうである。 むすび 日本の自動車部品メーカー各社は、完成車メーカーの第一次系列、その下請けの第二次 系列、さらにはその下請けと生産規模の大小や部品の重要度に応じて階層的に位置づけら れてきた。自動車産業の国際化が進むにつれて、自動車部品メーカーの役割も必然的に変 わらざるを得ない状況にある。完成車メーカーの海外移転が進むにつれて、第一次系列の 部品メーカーも海外拠点の拡充を加速している。この結果、第一次系列との取引に活路を 見出してきた第二次系列の部品メーカーの中には、第一次系列の海外移転、国内での発注 量の削減に対応できなくなったため、やむなく廃業に追い込まれる企業も増えている。 その一方で、一定の技術力があり、成長余力のある中堅クラスの自動車部品メーカーは さらに技術とコスト削減につとめながら、海外市場に新たな活躍の場を見出していかざる を得ない。 業界団体である日本自動車部品工業会は会員向けの「海外安全・健康管理サービス」を 2012 年 6 月から始める 7。会員企業がアジアを中心とする新興地域へ展開するなか、家族帯 同での駐在や長期出張の機会が増えることを想定し、駐在員や長期出張者の安全や健康を 守るため、海外病院・安全情報の提供や電話相談、現地での案内などのサービスを提供す るというものである。 自動車完成車メーカーや自動車部品メーカーの海外展開が大小を問わず今後さらに進む と予想されることを象徴する動きである。 注 1 丹下英明[2011]44 頁。 2 同 52 頁。 3 同 55-56 頁。 4 『日本経済新聞』2012 年 6 月 20 日付朝刊、1 頁。 5 『東京新聞』2012 年 6 月 23 日付朝刊、7 頁。 6 『日本経済新聞』2012 年 6 月 21 日付朝刊、1 頁。 7 日本自動車部品工業会「JAPIA 会員向け『海外安全・健康管理サービス』のご案内」 http://www.japia.or.jp/whatnew/japia.html(採録日:2012 年 6 月 18 日) 18 参考文献 丹下英明[2011]「自動車産業の構造変化と部品メーカーの対応―新興国低価格車市場の出 現によるサプライチェーン変化に中小モノづくり企業はどう対応すべきか」『日本政 策金融公庫論集』第 13 号、11 月。 日本自動車部品工業会[2011] 『自動車部品出荷動向調査結果』12 月。 ――[2012a]『海外事業概要調査報告書』1 月。 ――[2012b]『平成 23 年度の自動車部品工業の経営動向』6 月。 19