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資料1(PDF:745KB)
資料1
「ひょうご経済・雇用活性化プログラム(平成 23∼25 年度)」の充実に関する提言(案)
【提言1】
最近の経済・雇用情勢に対応したプログラム充実方策
<目次>
1.最近の経済・雇用情勢と今後の見込み ··································· 1
(1)概況 ······························································· 1
(2)主要経済指標等 ····················································· 1
(3)今後の見込み(全国・関西の経済成長) ································ 8
2.平成 24 年度の主な課題と対応∼プログラム重点充実方策 ·················· 9
(1)各地域の持続的成長を牽引する基幹産業(域外需要産業)の強化 ········· 9
(2)地域の個性と魅力を活かす地域資源型産業、観光・誘客型産業の振興 ··· 18
(3)域内経済循環を促進する産業構造の構築 ····························· 22
(4)地域人材力の強化と雇用の安定・確保 ······························· 24
(5)地域経済の発展基盤の形成 ········································· 29
提言1
最近の経済・雇用情勢に対応したプログラム充実方策
1.最近の経済・雇用情勢と今後の見込み
(1)概況
兵庫経済は、リーマンショック後の厳しい状況のなかで、平成 21 年度から全体として
緩やかに回復してきたが、平成 23 年度は、3月の東日本大震災による全国的な生産の落
ち込み、8月以降の超円高の進行・長期化、さらには欧州を中心とした海外経済の減速
等を背景に、持ち直しの動きが減速している。特に、23 年後半は海外経済の減少やタイ
洪水被害のため輸出の伸びが鈍化し、東日本大震災後急速に回復した生産も、横ばいな
がら一部で減少している。
県内の個人消費にも、一部回復の兆しがあるものの、百貨店やスーパー、家電販売な
どで弱い動きが見られる。消費者物価は下げ止まりつつあるが、デフレ脱却にはいたら
ず、賃金水準も横ばいで推移している。さらに、雇用状況は緩やかに改善しているが、
有効求人倍率は 0.6 倍程度と低い水準にあるなど厳しい状況が継続している。
(2)主要経済指標等
①
GDP(実質)
H23 年 7-9 月期の県内GDP(実質・原数値)は 5.3 兆円で、前年同期比 0.4%の減
と2期連続の減少となった。H22 年 1-3 月期から外需に支えられ、プラス成長を続け
てきたが、震災によるサプライチェーン障害の影響で輸出額が減少するとともに、原
油等資源価格高騰により輸入額が増加したこと等からマイナス成長となった。
また、全国GDP(実質・原数値)は 127.4 兆円で、前年同期比 0.7%の減であっ
た。震災後の落込みからの回復に伴い公的支出、民間消費や住宅投資等が増加したが、
電力供給を補うための天然ガスの調達増から輸入増となったこと等から3期連続のマ
イナスとなった。
【四半期別GDP(実質)増減率】
県・実質
(%)
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
-2.0
-4.0
-6.0
県・名目
-8.0
国・実質
-10.0
-12.0
H20.7.9
10-12
H21. 1-3
4-6
7-9
10-12
H22. 1-3
②
4-6
7-9
10-12
H23. 1-3
4-6
7-9
景況
企業短期経済観測調査(日銀短観、12 月調査)では、県内企業の景況感は震災後の
H23 年 6 月に悪化したものの、改善傾向で推移している。
企業規模別では大企業が2期連続のプラスとなった。中小企業も改善傾向が見られ
る。業種別では、世界的な景気低迷を背景に電気機械や業務用機械が悪化した一方、
- 1 -
震災の落ち込みから復調した自動車関連が改善している。先行き(H24 年 3 月)につい
ては、中堅企業の横ばいを除き悪化を予測している。
(県内企業企業景況感)
区 分
全 産 業
製 造 業
非製造業
うち大 企 業
うち中堅企業
うち中小企業
現状(良い−悪い)構成比(%)
H22.12月
▲ 16
▲ 8
▲ 24
▲ 3
▲ 8
▲ 26
H23.3月
▲ 11
▲ 2
▲ 20
3
▲ 7
▲ 20
H24.3月(予測)
6月
9月
12月
▲ 20
▲ 15
▲ 13
▲ 18
▲ 14
▲ 8
▲ 5
▲ 12
▲ 25
▲ 22
▲ 20
▲ 27
▲ 3
1
1
▲ 4
▲ 15
▲ 12
▲ 15
▲ 15
▲ 30
▲ 24
▲ 18
▲ 29
(資料)県内企業短期経済観測調査
③
生産活動
鉱工業生産指数は、前年比では概ね増加を続ける一方で、その伸び率は縮小するな
ど、全体として横ばい圏内で推移している。しかし足元では、欧州景気の停滞等の影
響で鉄鋼や電子部品で減産が見られるなど、弱い動きが見られる。
最近(H23 年 12 月∼H24 年 1 月)の企業ヒアリング等によると、たとえば鉄鋼では、
中国の経済成長の減速や欧州等の景気低迷を背景に、電機や自動車向け需要が低下し
ていることから生産は減少している。電子部品では、スマートフォンや太陽光発電と
いった一部製品向けの需要が高まっているものの、世界的な景気低迷によりパソコン
等の需要が低迷し、引き続き生産が減少している。一般機械では繊維機械などがアジ
ア方面中心に順調に売上げを伸ばすなど全体として概ね持ち直している。
目
項
20年度 21年度 22年度 H23.8月 9月
鉱工業生産指数
県 96.8
86.6
96.5
97.9
94.9
H17=100
(▲9.6) (▲10.6) (11.4) (3.4) (▲0.5)
(前年度比増減率%)
<−>
<−>
<−> <▲1.7> <▲3.1>
<前月比増減率%> 国 94.9
86.2
94.0
93.6
90.5
(▲12.3) (▲9.2)
(9.0) (0.4) (▲3.3)
<−>
<−>
<−>
<0.6> <▲3.3>
(注)月次は季節調整値、対前年度比較は原数値による比較。
10月
11月
12月
97.2
96.3
97.2
(2.0) (3.0) (▲1.4)
<2.4> <▲0.9> <0.8>
92.5
90.0
93.6
(0.1) (▲4.2) (▲4.1)
<2.2> <▲2.7> <4.0>
(資料)鉱工業指数
④
輸出
輸出金額(神戸港)は、アジアを中心に増加が続くものの、H23 年 4 月以来、前年
比増加率の伸びが縮小し、持ち直しの動きが鈍化している。H23 年 12 月は船舶などが
増加したものの、台湾、中国、韓国向けの科学光学機器、プラスチックなどが減少し、
前年同月比 2.8%減の 4,689 億円となった。
目
項
神戸港輸出額:億円
(前年度比増減率%)
全国輸出額:億円
(前年度比増減率%)
神戸港輸入額:億円
(前年度比増減率%)
全国輸入額:億円
(前年度比増減率%)
20年度
55,876
(▲10.9)
711,456
(▲16.4)
29,173
(▲2.9)
719,104
(▲4.1)
21年度
22年度 H23.9月
10月
11月
12月
44,137
53,094
4,576
4,476
4,184
4,689
(▲21.0)
(20.3)
(3.3) (▲2.8)
(2.2) (▲2.8)
590,079 677,917
59,767
55,075
51,966
56,241
(▲17.1)
(14.9)
(2.3) (▲3.8) (▲4.5) (▲8.0)
22,500
24,671
2,183
2,252
2,344
2,148
(▲22.9)
(9.6)
(9.3)
(27.1)
(17.5)
(4.7)
538,209 624,100
56,806
57,893
58,842
58,297
(▲25.2)
(16.0)
(12.1)
(17.9)
(11.4)
(8.1)
(資料)神戸港貿易概況、貿易統計
- 2 -
⑤ 設備投資
日銀短観(12月調査)では、全産業の設備投資H23年度見込みは前年度比11.6%増で、
当初の計画から6.8ポイントの上方修正となった。企業規模別では大企業と中小企業がプ
ラスで、業種別でも製造業、非製造業ともプラスとなった。
(設備投資計画)
区
A
分
H20
8.6
3.8
24.0
51.1
6.3
16.5
全 産 業
大企業
中堅企業
中小企業
うち製造業
うち非製造業
H21
▲
▲
▲
▲
▲
▲
対前年度比増減率(%)
B
C=A-B
H23
※参考
開差
(見込み)
H23計画
▲ 7.0
11.6
4.8
6.8
▲ 12.4
16.3
7.2
9.1
42.0 ▲ 12.6
▲ 6.8
▲ 5.8
▲ 11.6
9.4
▲ 1.0
10.4
▲ 10.0
12.7
10.7
2.0
2.3
7.9
▲ 11.6
19.5
(資料)県内企業短期経済観測調査
H22
19.4
13.2
41.3
52.5
21.2
13.2
※3月調査における値
⑥ 工場立地
工場立地動向調査(経済産業省)によると、県内におけるH23年上期の工場立地件数は、
27件(前年同期:20件)、立地面積では33ha(前年同期:18ha)であった。立地件数は
全国1位で、H14年以降、継続的に全国4位以内に位置している。
リーマン・ショック以降の世界的な景気後退を背景に立地件数は減少傾向にあったが、
H22年下期からは増加に転じ、震災や円高の影響が心配された本年上期についても増加を
維持している。ただし、リーマンショック前の水準までには至っていない。
業種別では金属製造業(5件)、食料品製造業(4件)の立地が堅調である。
項
目
21年上期 21年下期 22年上期 22年下期 23年上期
県
33
21
20
24
27
工場立地件数:件
(▲45.0) (▲50.0) (▲39.4)
(14.3)
(35.0)
(対前年同期比増減率%) 国
428
439
352
434
403
(▲48.1) (▲45.5) (▲17.8) (▲1.1)
(14.5)
【地域別立地動向】
地
域
神 戸
阪神北
阪神南
東播磨
北播磨
中播磨
西播磨
但 馬
丹 波
淡 路
合 計
件 数(件)
22年
23年
(1∼6月)
(1∼6月)
2
5
0
0
2
5
2
4
3
4
2
3
2
2
1
1
4
2
2
1
20
27
面 積(ha)
22年
23年
増 減
増 減
(1∼6月)
(1∼6月)
3
2.8
12.5
9.7
0
0
0
0
3
0.5
2.3
1.8
2
0.5
0.7
0.2
1
3.5
3.1
▲0.4
1
3.5
5.2
1.7
0
1.4
2.9
1.5
0
0.9
0.6
▲0.3
▲2
4.0
0.9
▲3.1
▲1
0.8
5.1
4.3
7
17.9
33.2
15.3
(資料)平成23年上期工場立地動向調査
- 3 -
⑦ 企業倒産状況
H23年12月の企業倒産件数は、47件(対前年同月比9.6%減)、負債総額は66億円(対
前年同月比16.8%減)となり、中小企業金融円滑化法などの資金繰り支援策の下支え効
果が続く中で、H22年12月以降、概ね前年比で減少している。原因別では「不況型倒産(販
売不振+赤字累積+売掛金回収難)」が全体の85.1%で、分類別では「個人企業」の倒産が多い。
項
目
企業倒産件数:件
県
(対前年度比増減率%)
企業倒産負債総額:億円 県
(対前年度比増減率%)
20年度
21年度
742
713
(▲1.5) (▲3.9)
2,474
1,547
(36.0) (▲37.5)
22年度 H23.9月
10月
11月
12月
718
56
56
53
47
(0.7) (▲1.8) (▲24.3) (▲27.4) (▲9.6)
1,501
55
55
40
66
(▲3.0) (▲59.1) (▲56.2) (▲82.5) (▲16.8)
(資料)東京商工リサーチ神戸支店資料
平成23年12月企業倒産原因別分類
件数
構成比(%) 負債総額(百万円) 構成比(%)
放漫経営
2
4.3
45
0.7
過小資本
1
2.1
10
0.2
他社倒産の余波
4
8.5
1,137
17.2
既往のシワ寄せ
3
6.4
127
1.9
信用性低下
0
0.0
0
0.0
販売不振
37
78.7
5,310
80.1
売掛金回収難
0
0.0
0
0.0
在庫状態の悪化
0
0.0
0
0.0
設備投資過大
0
0.0
0
0.0
その他
0
0.0
0
0.0
合 計
47
100.0
6,629
100.0
(資料)東京商工リサーチ神戸支店資料
⑧
雇用・所得
ア 有効求人倍率
H23 年 12 月の有効求人倍率(季節調整済値)は 0.62 倍(全国:0.71 倍)と、低
い水準でありながら持ち直しの動きが見られる。有効求人数も H22 年 1 月以降、
増加傾向にある。
最近の傾向として、震災復興で需要が高まっている建設躯体工事業で高い求人
倍率となっている。また、医師、薬剤師、保健師、看護師など専門性の高い職業
や生活関連サービス業も、引き続き有効求人倍率が高い。なお、一般事務、会計
事務、営業・販売関連事務といった一般職は、低い状態が続いている。
項
目
有効求人倍率:倍
有効求人数:人
<対前月比増減率%>
有効求職者数:人
<対前月比増減率%>
20年度 21年度 22年度 H23.9月 10月
11月
12月
0.70
0.44
0.53
0.61
0.60
0.61
0.62
0.77
0.45
0.56
0.66
0.67
0.69
0.71
65,343 51,465 58,548 63,110 62,430 62,323 63,883
−
−
−
<1.9> <▲1.1> <▲0.2>
<2.5>
県 93,617 116,715 110,999 102,663 103,233 102,473 102,481
−
−
−
<▲0.5>
<0.6> <▲0.7>
<0.0>
(資料)一般職業紹介状況
※月次は季調値
(新規学卒者を除く)
県
国
県
- 4 -
(倍)
(人)
有効求人倍率、有効求人数の推移
0.8
70,000
0.7
60,000
0.6
50,000
0.5
40,000
0.4
30,000
0.3
20,000
0.2
有効求人数 県
有効求人倍率 県
有効求人倍率 全国
0.1
0.0 H21
8月
H22
2月
11月
10,000
5月
8月
11月
地域別有効求人倍率(原数値、単位:倍)
20年度
21年度
22年度
全県
0.70
0.44
0.53
神戸
0.72
0.49
0.54
阪神
0.57
0.36
0.41
東播磨
0.67
0.38
0.47
西播磨
0.87
0.50
0.71
但馬
0.75
0.50
0.56
丹波
0.66
0.46
0.59
淡路
0.70
0.62
0.70
注)年度数値は月平均。学卒は除く。
0
H23
2月
5月
9月
0.63
0.60
0.51
0.62
0.83
0.74
0.73
0.91
8月
11月
10月
11月
12月
0.65
0.68
0.69
0.62
0.67
0.66
0.53
0.56
0.56
0.63
0.62
0.64
0.83
0.84
0.86
0.75
0.87
0.95
0.75
0.84
0.93
0.90
1.01
1.10
(資料)一般職業紹介状況
(倍) 職業別有効求人倍率(兵庫県)
7.00
6.57
6.00
5.81
5.00
4.00
3.52
3.28
2.98
3.00
2.71
2.38
2.00
2.20 2.11
2.01 1.92
1.70 1.67
1.53 1.52 1.50 1.45 1.40
1.00
一 般 事 務 の職 業
そ の他 の労 務 の職 業
事 務 的 職 業 ︵平 均 ︶
関 連 職 業 ︵平 均 ︶
そ の 他 の 製 造 ・製 作 の 職 業
T
(資料)兵庫労働局資料
会 計 事 務 の職 業
I
営 業 ・販 売 関 連 事 務 の 職 業
情報処理技術者
生 産 工 程 ・労 務 の 職 業 ︵平 均 ︶
そ の他 の専 門 的 職 業
運 搬 労 務 の職 業
商 品 販 売 の職 業
販 売 の 職 業 ︵平 均 ︶
機 械 ・電 気 技 術 者
食 料 品 製 造 の職 業
運 輸 ・通 信 の 職 業 ︵平 均 ︶
- 5 -
金 属 加 工 の職 業
注1)H23.12 月の状況。常用計、原数値を使用。
注2)有効求人数 500 人以上の職業を抜粋。
自 動 車 運 転 の職 業
そ の他 の保 健 医 療 の職 業
飲 食 物 調 理 の職 業
建 築 ・土 木 ・測 量 技 術 者
土 木 の職 業
サ ー ビ ス の 職 業 ︵平 均 ︶
専 門 的 ・技 術 的 職 業 ︵平 均 ︶
建 設 の職 業
生 活 衛 生 サー ビ スの職 業
社 会 福 祉 専 門 の職 業
販 売 類 似 の職 業
接 客 ・給 仕 の 職 業
福 祉 関 連 職 業 の う ち 介 護 関 係 ︵平 均 ︶
家 庭 生 活 支 援 サー ビ スの職 業
福 祉 関 連 職 業 ︵平 均 ︶
医療技術者
保 安 の 職 業 ︵平 均 ︶
医 師 、歯 科 医 師 、獣 医 師 、薬 剤 師
保 健 師 、助 産 師 、看 護 師
建 設 躯 体 工 事 の職 業
0.00
1.21 1.17 1.13 1.07
1.01 0.88
0.74 0.68 0.60 0.60 0.58
0.52 0.50 0.36 0.34
0.32 0.30 0.21 0.17
イ
失業率
H23 年 7-9 月期の完全失業率は 4.0%と前年同期から 1.2 ポイント改善し、低下
傾向にある。
項
目
完全失業率:%
県
国
完全失業者:千人
就業者:千人
県
労働力人口:千人
20年
21年
22年
22年
23年
(年間) (年間) (年間) 7-9月 10-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
4.1
5.2
5.4
5.2
5.0
5.2
4.9
4.0
4.0
5.1
5.1
5.1
4.8
4.7
4.7
4.4
4.3
114
144
145
140
134
137
131 106
2,651 2,611 2,557 2,550 2,527 2,517 2,561 2,541
2,765 2,755 2,702 2,661 2,661 2,654 2,692 2,648
(資料)労働力調査
ウ
現金給与総額
H23年11月の現金給与総額は、前年度並みの263,005円と、ほぼ横ばいで推移して
いる。
項
目
現金給与総額:円
20年平均 21年平均 22年平均 H23.8月
県 311,763 295,067 296,581 252,717
(対前年度比増減率%)
(▲3.4) (▲4.7)
(0.5) (▲0.5)
国 328,990 315,311 317,321 274,041
(▲1.1) (▲3.3)
(0.6) (▲0.4)
9月
10月
11月
250,328 251,806 263,005
(0.1)
(0.0) (▲0.5)
266,958 268,628 278,256
(▲0.4)
(0.0) (▲0.2)
(資料)毎月勤労統計調査
⑨
消費
ア 小売、乗用車等
H23 年 11 月の大型小売店販売額は前年同月比 3.5%減、コンビニエンスストア
販売額(近畿)は前年同月比 9.4%増となった。また、乗用車の販売台数は、12
月に前年同月比 23.4%増となった。22 年のエコカー補助金制度終了に伴う落ち込
みの反動が主な要因ではあるが、震災により大きな影響を受けていた販売が回復
しつつある状況も要因の一つである。
なお、12 月の消費者態度指数(全国一般世帯・季節調整値)は 38.9 で、震災
直後に最低の数値(33.1)となった 4 月を底に復調基調が続いているが、大型小
売店販売額が伸び悩むなど、個人消費は持ち直しつつあるが弱い動きとなってい
る。
項
目
大型小売店販売額
:億円
(対前年度比増減率%)
22年度 H23.8月
9月
10月
11月
12月
9,101
730
684
734
748
(▲1.5) (▲3.6) (▲3.8) (▲2.0) (▲3.5)
国
195,776
15,575
14,728
16,057
16,373
(▲1.5) (▲1.8) (▲2.4) (▲0.5) (▲1.6)
乗用車販売台数
県
153,093
10,266
15,919
12,228
13,102
11,648
:台
(▲8.6) (▲29.0) (▲2.6)
(26.4)
(23.4)
(23.4)
(対前年度比増減率%)
国 4,175,457 3,880,266 273,277 392,049 320,778 323,659 289,622
(6.8) (▲7.1) (▲26.0) (▲2.1)
(27.5)
(25.1)
(20.8)
コンビニエンスストア販売額 近畿
11,881
12,333
1,201
1,097
1,122
1,078
:億円
(▲1.2)
(3.8)
(8.9) (▲3.5)
(15.3)
(9.4)
(対前年度比増減率%)
国
79,383
82,657
8,099
7,472
7,587
7,314
(▲1.5)
(4.1)
(9.1) (▲1.8)
(16.4)
(10.5)
注)大型小売店の前年度比増減率は、調査対象見直しに伴う修正を施された数値である。
(資料)大型小売店販売状況、新車登録速報・軽自動車新車届出状況、商業販売統計
県
21年度
8,890
(▲4.1)
195,675
(▲5.3)
167,409
(9.6)
- 6 -
県内企業へのヒアリング等によると、円高や世界経済の減速などによる景気の
先行き不安等で消費マインドが低迷している。また、地上波デジタル放送切り替
え後の家電販売不振が続くなど、消費動向には今後も注視が必要との意見が多い。
なお、宝飾品などの高級品や節電関連商品の販売に若干明るい動きも見られるよ
うになった。
また、県内の観光施設、宿泊施設へのヒアリング等によると、国内旅行では、
短距離から中距離旅行をする家族・グループの増加がみられる。一方、外国人観
光客数は前年割れの状態が続いているとのことである。
イ
消費者物価
H24 年 1 月の消費者物価指数(神戸市、速報値)は、3 か月連続で前年を下回り、
99.3(H22=100)となった。費目別に見ると、生鮮果物(+21.4%)、生鮮野菜(+
18.1%)、生鮮魚介(+7.4%)が増加する一方、洋服(▲13.3%)、シャツ・セータ
ー類(▲6.0%)、教養娯楽耐久財(▲3.3%)の物価が下落している。
項
目
消費者物価指数※
21年度 22年度 H23.9月 10月
11月
12月 H24.1月
100.6
99.9
100.1
100.2
99.8
99.7
99.3
(▲1.3) (▲0.7)
(0.1)
(0.0) (▲0.2) (▲0.2) (▲0.1)
国
100.7
99.8
99.9
99.8
99.6
99.6
(▲1.5) (▲0.9)
(0.0) (▲0.1) (▲0.2) (▲0.1)
神戸市
(対前年度比増減率%)
※生鮮食品を除く総合、H22=100
主な費目の物価指数
費
目
たばこ
生鮮果物
他の光熱
ガス代
生鮮魚介
生鮮野菜
他の諸雑費
洋服
教養娯楽用品
シャツ・セーター類
家庭用耐久財
教養娯楽用耐久財
H23.1
126.2
107.4
105.7
100.1
99.5
97.5
104.8
93.8
98.4
95.4
99.1
89.5
(H22=100)
対前年
H24.1 同月比
(%)
126.2
0.0
117.9
9.8
113.5
7.4
109.1
9.0
109.0
9.6
105.6
8.3
104.8
0.0
94.7
1.0
92.9 ▲ 5.6
90.3 ▲ 5.4
88.3 ▲ 10.9
66.3 ▲ 26.0
H24.1は速報値
(資料)消費者物価指数
- 7 -
(3)今後の見込み(全国・関西の経済成長)
国では、平成 23 年度の実質経済成長率については、東日本大震災による生産面等の落
ち込みからのスタートとなったことや、震災後の景気が持ち直しに転じたものの夏以降
の急速な円高の進行、欧州政府債務問題の顕在化等により、前年度比ほぼ横ばいのマイ
ナス 0.1%程度になると見込んでいる(23 年 12 月現在)。
平成 24 年度については、欧州政府債務問題を主因とする世界金融市場の動揺が安定化
し、主要国経済が減速から持ち直しに転じれば、我が国の生産や輸出が改善することや、
本格化する復興需要が期待されることから、2.0%程度の成長を見込んでいる。もっとも、
平成 24 年 1 月現在では対ユーロでの円高がさらに進行するなど、欧州債務危機等による
世界経済の先行きは不透明であることや、中国景気の減速懸念等から、設備投資など国
内での民需も伸びが期待しにくいなど、厳しい見方もある。
一方、関西経済については、全国の影響に加えて、中国などアジア経済の成長の減速
や電力供給の制約に伴う経済活動の不活発化等により、停滞気味となり、平成 24 年度は
概ね 0.4%程度と、国よりも低い伸びにとどまるとする厳しい見方も出されている。
- 8 -
2.平成 24 年度の主な課題と対応∼プログラム重点充実方策
(1)各地域の持続的成長を牽引する基幹産業(域外需要産業)の強化
海外経済の成長・内外経済の一体化と国内経済の成熟化が進展し、大手製造業等の海
外展開が進むなか、経済のグローバル化に対応して成長していく地域基幹産業・企業群
の形成をめざし、県外や海外からの需要を確保する産業を発展させることが重要である。
また、県内中小企業も、優れた技術・製品の開発や質の高いサービスの提供等を一層進
めつつ、海外を見据えた事業展開をしていく必要性が高まっている。
このため、科学技術基盤の形成や地域産学官連携の推進、戦略的な企業誘致、成長す
る世界市場に進出する中小企業への支援を強化する必要がある。
① 科学技術基盤形成、地域産学官連携の推進
京速コンピュータ「京」、X線自由電子レーザー(SACLA)の本格稼働や、関西イノベー
ション国際戦略特区の推進など、新たなイノベーション創出の可能性が増大するなか、
本県科学技術基盤の産業利用の推進を図ることが重要である。
また、アジア新興国等が急速に技術力を高めるなかで、本県産業の基盤であるものづ
くり基盤の一層の充実・強化を果たしていくことが必要である。
【経済産業省「産業構造ビジョン 2010」の戦略五分野による効果】
ア
科学技術基盤の形成、産業利用の推進
SPring-8、X線自由電子レーザー(SACLA)、京速コンピュータ「京」等の科学技術
基盤を活用した地域の産学連携研究開発の推進と産業利用の促進、さらには、「京」
と「SACLA」の一体利用などにより、ひょうごのサイエンス集積の価値を内外に発信
するとともに、「京」を活用した研究を支援するための基金の創設や、「京」を中心
としたスパコンの産業利用の推進などにより、平成 24 年秋に本格稼働する「京」を
中核とした先端技術の研究開発を支援する。
また、国の国際戦略総合特区の指定を受けた「関西イノベーション国際戦略総合
特区」(京都府、大阪府、兵庫県、京都市、大阪市、神戸市での共同申請)を推進し、
本県においては、科学技術基盤を活用した革新的創薬と次世代省エネ材料の開発な
どに取り組んでいく。
- 9 -
イ
ものづくり産業集積のポテンシャル活用・地域産学官連携の推進
阪神地域から播磨地域等に広がる大企業、中堅・中小企業のものづくり産業集積
の技術ポテンシャルを活かし、県内に広く集積するものづくり産業の競争力の強化
を図るため、平成 23 年に「兵庫イノベーション集積協議会」が設立され、大手と中
小など企業間や産学の交流・連携の場としての研究交流会等の実施や、具体的な共
同研究開発・製品開発や、地域産学連携プロジェクトが動き始めている。
今後も、産業集積を活用した大企業との共同製品開発機会の拡充や、環境、ライ
フサイエンス等の分野を中心とした県内中小企業の地域産学官連携の推進等が必要
である。
ウ
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
○ 戦略分野におけるイノベーションの創出
◇ひょうごサイエンス集積の一体感の醸成と知名度の向上(ブランド化)
本県の科学技術集積の内外での認知度を高め、科学技術基盤や企業研究所・
研究人材の誘致等に生かすため、内外への情報発信の取り組みを進める。
◇ひょうご神戸サイエンスクラスターの発展支援
・「京」を活用した研究を支援する基金の創設
京速コンピュータ「京」を活用し、スーパーコンピューティング研究教育
拠点(COE)の形成に向けた研究開発を支援する。
・京速コンピュータ「京」を中心とした産業界のスパコン利用支援
京速コンピュータ「京」の登録機関となる(財)高度情報科学技術研究機構
と連携し、「京」を中核としたスパコンの産業利用を推進する。
◇「関西イノベーション国際戦略総合特区」の推進
「関西イノベーション国際戦略総合特区」
(を推進し、関西が強みを持つ先
端医療・医薬品、電池・エネルギー分野でイノベーションを創出し、世界を
リードする産業クラスターの形成を目指す。
〈兵庫県の取り組み〉
・科学技術基盤を活用した革新的創薬と次世代省エネ材料の開発
SPring-8 やX線自由電子レーザー(SACLA)、京速コンピュータ「京」、
FOCUS スパコン等の先進的な科学技術基盤を活用し、革新的な創薬や次世
代電池材料等の開発を進める。
・シミュレーション技術の人材育成
実践能力の高い研究者・技術者の養成、企業での高度なシミュレーショ
ン技術の導入・利活用を牽引するリーダーの養成に取り組むとともに、
「京」
の戦略的な活用分野である「次世代ものづくり」において、ものづくりの
先端的シミュレーションソフトウエアの利活用人材の育成に取り組む。
・イノベーションを支える物流基盤(港湾)の充実強化
姫路港、尼崎西宮芦屋港及び東播磨港を国際コンテナ戦略港湾阪神港の
連携港湾として位置付け、規制の特例措置や税制上の支援措置等により阪
神港への集荷を進め、阪神港の国際競争力を強化する。
- 10 -
○
地域産学官連携の推進、オープン・イノベーション
・ひょうご産学官連携コーディネーターの活動の促進
大学や研究機関の研究支援人材(コーディネーター)のさらなる連携強化を
図るとともに、企業と研究者のマッチングや競争的資金の獲得支援等に対応す
るためのスキルアップを図る。
・オープン・イノベーション推進事業の実施
オープン・イノベーションに積極的な姿勢を示す大企業と高い技術力を有す
る中小企業がともに参加している「兵庫イノベーション集積協議会」の組織力
を活用し、大企業が必要とする技術・製品ニーズと中小企業が持つ高度な技術
力等のマッチングを行い、中小企業単独ではできなかった技術開発・製品開発
を促進する。
②
本県事業環境の整備、本県立地競争力の強化
欧州景気の停滞やアジア経済成長の減速とともに、原子力発電所の事故を契機とした
電力供給の不安定等により、企業の設備投資意欲は全国的に弱含みであり、本県への企
業立地にも大きな影響を及ぼしている。
こうしたなかで本県の産業活力を維持するには、内外企業にとって魅力ある立地環境
や、効果的な企業誘致方策の推進が必要であり、その充実強化を図っていく必要がある。
ア
本県の立地動向
東日本大震災後、企業においてもリスク分散として、製造拠点やデータセンター
の関西への移転、設置等の動きが見られるとともに、平成 23 年 4 月、5 月には新規
立地の問い合わせが急増した。しかしながら、原子力発電所事故に起因する電力供
給不安により、件数が減少した。
また、平成 23 年 7 月以降は、急激な円高の進行、国内外を視野に入れたリスク分
散への対応等のため、企業の海外展開が加速する傾向が強まっている。
製造拠点の海外移転は全国的な傾向であるが、本県企業は全てを海外生産へとシ
フトさせる動きとはなっておらず、むしろ、
「日本に何を残すか」を模索し、国際的
な最適配置と国内拠点の再編・集約化が進められている状況である。こうしたなか、
本県の産業活力を維持・発展させていくには、本社機能やマザー工場、研究開発拠
点等の積極的な誘致に加えて、既存企業の事業継続性の確保に努めるとともに、科
学技術基盤を活用した研究開発の充実や地域産学官連携の一層の促進などを通じて、
「開発の場」としての本県の立地競争力を高めていくことが重要である。
イ
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇ 円高等による海外移転への対応と立地促進制度を活用した県内再投資の促進
円高等により企業の海外移転が増加するなか、産業集積条例に依る立地促進制
度を活用して県内再投資を促進するとともに、新規進出企業に対する電力対策設
備への補助を引き続き実施する。
- 11 -
③
海外の成長の取り込みを通じた県内企業の活性化
ア
大手企業の海外投資の動向・M&Aの増加
【近年のドル・円レート】
大手製造業の海外生産比率は、震
災前から一貫して上昇傾向となって
115.0
おり、東日本大震災以降も海外投資
105.0
の流れが継続している。また、すで
に海外売上率が 50%を越える県内企
東日本大震災
95.0
業のなかには、さらに海外生産比率
米国債務問題
を上げる事業計画を有している例も
85.0
H22.9 : 84.4円
見られる。
H23.10 : 76.8円
75.0
この背景には、海外経済の成長を
取り込もうとする企業行動が主因と
なっているが、これに加えて、超円高の進行と定着、全国的に懸念が高まる電力不
足が加わり、国内拠点を海外に設置ないし移転する動きも強まっている。
超円高等の直接的な影響としては企業収益の悪化があり、関西では、特に電機関
連を中心とする輸出企業で赤字が目立っている状況である。こうしたなか、今後は、
大手企業が、中核部品を含めて一環生産する拠点を海外に設置する傾向が強まって
いくことも考えられる。
(円/$)
県内製造業の想定為替レート
(日銀短観:3月毎)
折れ線グラフ:
為替レート(月平均)
85.0
84.3 83.4
82.28
1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
H20
【我が国製造業における海外生産比率と
海外売上高比率の推移】
(資料)国際協力銀行「我が国製造業の海外事業
展開に関する調査報告」
(H22.12 月公表)
H21
H22
H23
【我が国製造業の現在の直接投資先と最重要投資先】
(資料)経済産業省「通商白書 2011」
また、日本企業のM&Aについては、円高長期化や欧州債務危機に端を発する世
界的な景気不安による海外企業の株価下落が後押しとなり、2011 年 1-9 月期の日本
企業のM&A金額は前年同期比 24%増加の約 10 兆円となった。このうち海外企業
を対象とするM&Aの規模は、同 1.5 倍増の約4兆円まで膨らんだ。投資先として
は、インド、インドネシア、ベトナム、台湾などの東南アジアを中心にアジア太平
洋地域が急速に増加し、件数ベースでは全体の 55%まで拡大している。
大手企業の海外でのM&Aが中小企業に及ぼす影響として、海外事業展開の拡大
- 12 -
により中小企業にも取引の機会が増加する可能性がある一方、大手企業が取引企業
を見直し、国内企業から現地企業へのシフトを強めることも予想されるため、本県
中小企業への影響を注視する必要がある。
イ
これからの我が国企業の成長方向∼海外で稼ぎ、世界で成長する
国内市場が成熟化し、経済成長の長引く停滞が問題視されているが、日本企業の
積極的な海外展開や徹底的な効率化・コスト削減の推進などにより、日本経済は世
界の中で、緩やかながらも成長を持続している。
【我が国のGDP成長率の推移】
(%)
15.0
4.9
10.0
4.2
4.1
5.0
4.6
4.6
4.4
5.5
(兆ドル)
6.0
5.0
4.4
3.9
4.0
0.0
2.0
-5.0
名目GDP実額(ドル建て)[右目盛り]
実質GDP成長率(円建て)[左目盛り]
名目GDP成長率(円建て)[左目盛り]
名目GDP成長率(ドル建て)[左目盛り]
-10.0
0.0
-15.0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010(年)
(資料)IMF “World Economic Outlook Database, September 2011”
我が国はデフレ経済とともに、「失われた 20 年」とも称される低成長を続けてい
るとされる。しかし、ドル建てで名目 GDP を見ると、特に、リーマンショックのあ
った 2008 年以降、11.5%、3.1%、8.5%と、プラス成長を維持し、米国、英国、ド
イツ、フランスを上回る高い成長率で推移していたことが確認できる。
【各国の名目GDP成長率(ドル建て)の推移】
( %)
30 .0
印
韓
20 .0
中
10 .0
日
米
英
独
仏
0 .0
-10 .0
-20 .0
2001
200 2
20 03
(年)
2 00 4
20 05
200 6
20 07
2 00 8
20 09
2010
(資料)IMF “World Economic Outlook Database, September 2011”
- 13 -
さらに、1人当たりで名目 GDP(ドル建て)を見ると、我が国の水準は長期的に
上昇傾向にある。2010 年では 43,000 ドルと、2007 年に米国と 12,000 ドル以上あっ
た開差が、2010 年には 4,000 ドル程度に縮小し、ドイツ、フランス以上の水準とな
った。以上、我が国は、低成長、マイナス成長が続くが、1人当たりで見ると、他
国と遜色ない成長が続いていることが分かる。
円高が継続するなか、今後の経済成長のかたちは、海外投資を増加させ所得収支
を増加させることで、国民総所得を伸ばしていく方向になると考えられる。
【各国の1人当たり名目GDP(ドル建て)の推移】
(ドル)
50,000
米
日
仏
独
伊
40,000
30,000
韓
20,000
10,000
中
印
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010(年)
(資料)IMF “World Economic Outlook Database, September 2011”
ただし、海外での収益が国内での投資や雇用に十分還流していない点が従前から
指摘されている。今後、海外で得た富を国内に還流させ、設備投資の促進を図ると
ともに、教育への投資や、公正な所得再配分の推進等により内需の増大を図り、生
活の豊かさにつなげていくことが重要である。
【我が国の「再投資収益率」(左)と「内部留保率」(右)
】
- 14 -
ウ
中堅・中小企業の海外進出の動向
県内企業へのアンケート調査(9∼10 月、県実施)では、製造業の半数以上が海
外進出を実施又は検討予定としている。海外進出の理由は、「円高の進行」(8.1%)
よりむしろ「海外市場の拡大」(27.4%)、「国内市場の縮小」(13.6%)が多いことか
ら、仮に継続している円高が今後反転することがあったとしても、海外市場を求め
る傾向に大きな変化は生じないものと考えられる。
【県内企業に対する円高等の影響調査(9∼10 月)結果】
◇
幅広い業種で海外展開を検討
・ 海外進出を実施又は検討予定とする県内企業は、製造業で半数以上。非製造業でも建設、
卸売、情報通信サービス等の企業が海外を志向
・
海外進出の理由は、
「海外市場の拡大」が 27.4%で最多、
「国内市場の縮小」が 13.6%
で、
「円高の進行」は 8.1%
・
海外進出にあたり、「海外市場情報等の提供」「専門家による相談」「進出企業とのコー
ディネート」に関する支援へのニーズが高い
また、企業の海外移転先を地域別に見ると、アジアが8割超となっている。投資
先としては、中国・ASEAN・米国が多く(帝国データバンク景気動向調査 2011 年 7
月)、別の調査結果では、中国を最重視している企業が全体の半数以上、次に ASEAN
で約4分の1に上っている((財)国際経済交流財団調査)。
【海外事業展開において今後拡大する機能】
【我が国からの中間財輸出額の推移(輸出先別)
】
(資料)経済産業省「通商白書 2011」
(資料)ジェトロ海外事業展開調査(2010)
- 15 -
【アジア7カ国のGDP来予測(30 年後)】
2010 年 GDP
(兆ドル)
5.7
1.4
0.7
2040 年 GDP
(兆ドル)
34.5
17.4
5.7
'40 年/'10 年
(倍率)
6.1
12.5
8.1
日本
5.4
7.4
1.4
韓国
タイ
マレーシア
1
0.3
0.2
2.7
1.8
1.4
2.7
5.9
6.8
14.8
17
76.6
97.3
5.2
5.7
中国
インド
インドネシア
主要7カ国計
アジア全体
【我が国製造業が海外市場で有望視する事業分野】
(資料)経済産業省「通商白書 2011」
(資料)アジア開発銀行報告書「ASIA2050」
我が国の産業は、少子高齢化に伴う国内市場の縮小に直面し、成長する新興国市
場や成熟した欧米消費市場の開拓が重要となっており、特に大企業においては、経
済のグローバル化による国際競争の進展に伴い、商品の価格・品質面での競争力強
化のため、世界規模での生産ネットワークの構築が進められている。
これらの生産ネットワークの発展に伴い、取引先企業の海外展開が進み、海外市
場への関与を余儀なくされる中小企業が増加し、複数の企業が共同で海外進出を目
指すなど、単独では難しい中小・零細企業の新たな取り組みも見られる。
本県産業の活力の源泉である中小企業が海外事業展開を進めることは、県内産業
の空洞化をもたらし、雇用機会を減少させるとの指摘がある。しかしながら、中小
製造業においては、取引関係の維持及び経営安定のため海外進出を進めざるを得な
い状況となっている。また、企業の海外進出企業は非進出企業に比べて好業績とな
る傾向が強く、雇用面においても、中長期的には増加させるとの国の調査結果もあ
る。
中小企業は大企業と比較し、進出先の個別具体的な情報を収集しにくいなかで、
自らのリスクで事業を企画・実施しなければならないケースが多い。特に中国等ア
ジア新興国にあっては、公表された各種規制と実務取り扱いとの乖離や、同一都市
でも行政区画によって異なった取り扱いがなされるケースもあり、多くの困難が予
想される。
県内の商工会議所でも、近年の円高を受けて中小企業の海外進出ニーズが強くな
っていることを受け、その支援を始めた例もある。県も、海外の友好・姉妹団体な
どとの交流で培ったネットワークを活用しつつ、県内経済団体等関係機関と連携し、
中小企業が海外事業を展開する際に発生する様々な課題への相談や、現地情報の提
供、専門家の紹介、海外でのコミュニケーション能力に優れた人材育成等の支援に
ついて、強化を図っていく必要がある。
- 16 -
【直接投資開始企業と直接投資非開始企業の労働生産性(中小企業)
】
∼直接投資開始企業は、直接投資非開始企業と比較して直接投資前の労働生産性が高く、
直接投資開始後の労働生産性の伸び率も高い∼
※ 労働生産性=国内の付加価値額/国内の従業員数
(資料)経済産業省「中小企業白書 2010」
【直接投資開始企業と直接投資非開始企業の国内の従業者数(中小企業)
】
∼直接投資開始企業の従業者数は、6∼7 年後には直接投資非開始企業を上回る∼
(資料)経済産業省「中小企業白書 2010」
エ
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
○中小企業の海外展開の支援の強化
◇ひょうご海外事業展開支援プロジェクト事業の推進
〈県内拠点〉ひょうご海外ビジネスセンターの県内企業の海外事業展開にかか
る個別案件の発掘・支援の機能を強化するとともに、県内中小企業を対
象にした、海外事業展開におけるマーケティング、法務、税務、ファイ
ナンス等の知識・ノウハウや現地情報の提供と個別相談を実施する「ひ
ょうご海外事業展開支援セミナー」を開催する。
〈海外拠点〉アジア等新興国地域や現海外事務所において、各地域の市場成熟
度や地域特性を鑑みつつ、県内企業の海外事業展開等にかかる現地専門
家等を活用した支援機能を整備・強化する。
- 17 -
○
・ひょうご国際ビジネスサポートデスク体制の整備・強化
広州、上海、大連、ホーチミンに設置している既存デスクにおい
て、企業の相談支援、現地専門家の紹介、現地経済関係団体との連
携等を進める体制を整備するとともに、新たにインド、インドネシ
ア、タイにデスクを設置する。
・兵庫県香港経済交流事務所の設置
アジア(中国、ASEAN、インド)における、中長期的な地域
間経済連携と現地政府機関等との直接交渉を通じた県内企業の海外
事業展開の支援や輸出促進等を行う中核拠点として兵庫県経済交流
事務所を設置する。
・海外事務所の経済機能の強化
既存の海外事務所における現地専門家の相談・対応等を強化する。
グローバル人材の育成・活用の支援
県内中小企業が海外進出や販路開拓等を進めるうえで必要な、グローバル人
材の育成・活用の促進を図る。
(2)地域の個性と魅力を活かす地域資源型産業、観光・誘客型産業の振興
人口や産業の地域間格差が拡大するなかで、地域産業の振興を図るためには、地域の
産業集積・企業のブランド化の促進や、地域資源などの潜在力を最大限活用した内外か
ら新たな需要と誘客を呼び込むなど、地域の個性や魅力を活かして域外の需要を獲得す
る産業の成長を図ることが必要である。
このうち外客誘致については、東アジア諸国をはじめとした海外からの誘客の促進を
いっそう充実し、東日本大震災の影響で落ち込んだ訪日客の取り込みを進める必要があ
る。また、地域産業については、新製品・新技術の開発、販路開拓等を支援する必要が
ある。
農林水産業については、担い手の育成等従来からの取り組みに加えて、現在課題とな
っているTPP協定交渉の開始など貿易自由化の流れを踏まえ、ブランド戦略など第一
次産業の競争力強化に努める必要がある。
①
外客誘致等の状況
平成 23 年の訪日外客数は、過去最大であった平成 22 年に比べ 27.8%減の約 622 万人
であった。原発問題が足かせとなり、全国レベルで震災前の水準に回復するまでには、
かなりの時間を要する可能性がある。
一方、被災地から離れた北海道、関西、九州への旅行需要は、夏頃から一部回復傾向
となっており、10 月の台湾・香港・中国からの訪日外客数も、震災前の水準まで回復し
てきている。このように、東日本大震災とその後の原発事故の発生を受けて全国的に急
減した外国人観光客は、緩やかながら回復の兆しを見せている。
国内旅行については、平成 23 年夏以降、東日本方面への旅行を計画していた修学旅行
客等国内観光客が増加するなどの状況が見られるほか、県内観光地において前年並みに
回復しつつある。
- 18 -
【訪日外客数の推移】
(単位:千人)
1
2
3
4
5
6
1∼6
7
8
9
10
11
12
1∼12
2010
640
665
710
788
721
677
4,202
879
803
718
727
635
648
8,611
(平成22)
(438)
(514)
(484)
(602)
(537)
(511) (3,086)
(715)
(613)
(498)
(508)
(435)
(506) (6,362)
2011
714
679
353
296
358
433
2,833
561
547
539
616
552
572
6,232
(平成23)
(506)
(506)
(191)
(109)
(184)
(282)
(177)
(397)
(373)
(324)
(404)
11.5%
2.2% -50.3% -62.5% -50.4% -36.1% -32.6% -36.1% -31.9% -24.9% -15.3% -13.1% -11.7% -27.8%
伸率
(15.5% ) ( -1.5% ) ( -60.6% ) ( -81.9% ) ( -65.8% ) ( -44.8% ) ( -42.4% ) ( -44.5% ) ( -39.2% ) ( -35.0% ) ( -20.4% )
※ 平成23年1∼10月は暫定値、11∼12月は推計値
(資料)日本政府刊行局(JNTO)資料
※ ( )内は、総数のうちの観光客数
月
年
訪日外国人旅行者の増加は、国際相互理解の増進、我が国における旅行消費の拡大に
加えて、関連産業の振興や雇用の拡大による地域の活性化など大きな経済効果をもたら
す。
このため、本県においても外国人来訪者の誘客を促進するため、来訪者のニーズと市
場特性に応じたツーリズムのメニュー開発、震災・原発事故による危険イメージの払拭、
受け入れ基盤の整備、海外プロモーションの充実、強化を図っていく必要がある。
その際、例えば、香港・台湾からの観光客はリピーターの割合が高まっており、訪問
先も都市部より地域志向が増えているため、こうしたニーズを上手く取り込み、田舎で
の暮らしなど地方にしかできないことを観光資源として売り出すこと等により、外国人
観光客のすそ野が広げていくことに留意すべきである。また、国内だけでなく、海外で
もプロモーションの方法が大きく変化しており、大々的な広告よりも、ブログなどの口
コミによる効果の方が注目されてきているため、効果的な情報発信については継続して
検討する必要がある。
国内については、本県の魅力を「あいたい兵庫キャンペーン」等を通じて発信してき
たところであるが、平成 24 年 1 月からNHK大河ドラマ「平清盛」の放送が開始され、
また、古事記編纂 1300 年でもあることから、こうした機会をとらえ、本県観光資源のP
Rを一層進めていくことが重要である。
②
地場産業の競争力強化
地域産業は、継続する消費の低迷や海外製品との競争、将来的な内需の縮小等により、
厳しい状況にあり、地域における基幹産業である地域産業集積(産地)の内外市場での
競争力強化を図り、海外を含めた新た市場を獲得していく必要がある。このため、産地
組合・企業等による革新的な技術開発や、デザイン性や機能性に優れた新製品開発、国
内外での販路開拓等、ブランド化を推進する必要がある。
③
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉と本県産業への影響等
関税をほぼ例外なく撤廃し、貿易の自由化を目指す枠組みであるTPP協定について
は、日本も 2011 年 11 月に参加交渉へ加わる意志が表明されたが、TPP協定は国内の
農業・漁業をはじめ、あらゆる産業に対して大きな影響を及ぼす協定であり、参加に反
発する声や、参加を急がず慎重を期するべきとの声も上っている。
マクロ経済への影響に係る試算については、推計主体や参加国数などの条件設定によ
- 19 -
ってまちまちとなっている。例えば、参加国を広範囲に設定し試算した場合は、全国 GDP
が 6.1∼8.0 兆円増加するとの推計があり、これを本県GDP比で単純案分すると、計算
上は 2,300 億円∼3,000 億円の増加となる。また、参加国を9カ国程度と仮定したうえ
で、10 年後の経済効果が年 2.7 兆円になるとの試算もある。
】
【我が国がTPP協定等に参加した場合の経済効果(内閣府・農林水産省試算に基づく推計)
現在
GDP
全
TPP、FTAAP等に参加した場合
GDP
農業産出額
農業関連GDP
国
527 兆円
6.1∼8.0 兆円増
4.1 兆円減
7.1 兆円減
兵庫県
20 兆円
2,300∼
3,000 億円増
700 億円減
1,300 億円減
※
試算の前提は、[TPP4か国、中国、EU27 か国、日本]又は[TPP4か国、EU27 か国、APEC21 か国、日本]での完全自由化で
あり、参加国を広範囲に設定し推計たもの。
※ 100%自由化に伴う、国内農業等支援のための財政措置(所得補償等)の経済的影響は考慮していない
※ 兵庫県の影響額は、構成比からの按分により算出
【主要国・地域のFTAの数とFTA比率】
国
日
本
FTA の数
11
E
U
28
アメリカ
中 国
韓 国
オーストラリア
インド
※
14
9
8
6
14
FTA比率※
16.5%
対域外 29.8%
含域内 76.4%
37.5%
22.0%
36.2%
24.9%
21.6%
主要相手国・地域
ASEAN、メキシコ、チリ、スイス
スイス、ノルウェー、トルコ、アルジェリア、
南アフリカ、メキシコ
NAFTA、中米、オーストラリア、韓国
香港、ASEAN
ASEAN、米国、インド、チリ、EU、ペルー
米国、ASEAN、チリ
ASEAN、韓国
FTA相手国との貿易額が貿易総額に占める割合
(資料)外務省パンフレット
農林水産物の関税が大幅に引き下げられることになれば、安価な輸入品の増加など、
我が国の農林水産業・農山漁村に大きな影響を与えることが懸念されるものの、TPP
協定締結後の農林水産業の振興方策について、国からは明確な道筋が示されておらず、
課題となっている。
世界経済のグローバル化や貿易の自由化の流れのなかで、兵庫県においても国内外の
産地間競争に勝ち残ることができる力強い農林水産業の確立が求められていることから、
農林水産業の担い手が意欲と誇りを持てる環境づくりをめざし、積極的な攻めの農林水
産業を展開していくことが重要である。このため、農林水産業が地域の自然や生物多様
性の保全、地球温暖化の防止などの多面的機能を有し、環境保全に貢献していることに
も鑑み、農業経営の低コスト化、産品のブランド化等による競争力の確保、最先端のI
TC技術やソーシャル・ネットワークを活用した販路開拓や流通の多元化、担い手育成
などにより、都市部も含めた県全体として本県農林水産業の維持・発展を図っていくこ
とが必要である。
このほか、県内の中小企業経営者団体が、会員企業の得意分野と農林水産資源を組み
合わせた新事業の推進を図っている例が見られることから、農商工連携など6次産業化
の取り組みについても充実していくことが求められる。
- 20 -
④
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
○ 内外誘客の推進
◇「あいたい兵庫キャンペーン 2012」の実施
あいたい兵庫ディスティネーションキャンペーン以来培ってきたノウハウやJ
R、県内観光団体等との連携の成果を踏まえ、
「あいたい兵庫キャンペーン 2012」
を実施し、本県の観光の魅力を全国に発信する。
◇清盛・源平関連観光資源の整備・発信
大河ドラマ「平清盛」で本県に注目が集まる絶好の機会に、本県における清盛
観光拠点の整備を行い、観光客受け入れ体制を強化するとともに、県内各地に点
在する清盛関係史跡の周遊性を図るための仕掛けづくりを行う。また、大河ドラ
マ放送中には、マスコミ・旅行会社等へのPR活動を実施する。
◇関西連携海外観光プロモーション
関西広域連合の構成府県知事が中国等を訪問し、関西と中国の関係強化を図る
とともに、現地メディアに対するPR活動を実施すし、関西広域で海外プロモー
ションの充実・強化する。
○
地域産業の強化
◇地場産業新技術・新商品海外展開支援事業
中国や東南アジアなど、地場産品の海外販路開拓を促進するため、海外におけ
るマーケティング調査や海外向け新製品・新技術等の開発、新製品・新技術等の
国際展示会への出展、テスト販売等を支援。
◇地域企業市場開拓支援事業(セレクト型アンテナショップ)
地場産品の新たな市場開拓を行う場として、セレクトショップを活用する
産地企業を支援。
◇兵庫特産品ネット販売強化事業
兵庫県物産協会において実施している県内物産品のインターネット販売の体制
を強化し、新たなチャネルでの市場拡大を図る。
◇首都圏における民間アンテナショップへの支援
首都圏に所在するアンテナショップに対し、県内の特色ある物産を出品すると
ともに、兵庫県の観光情報の発信を行い、首都圏において兵庫県の物産と観光の
PRを図る。
○
国際化に対応した競争力ある農林水産業の推進
◇貿易自由化の流れを踏まえた農業経営の低コスト化、農林水産物のブランド化等
による競争力の強化
・集落営農スクラム事業
互いに協力・連携し、生産量の大ロット化、リレー出荷、加工等による特産
品の生産・販売をめざす集落営農組織の取り組みを支援する。
・神戸ビーフ提供機会の拡大
ホテルとの連携等により、海外からの団体観光客をターゲットとした「神戸
ビーフ」等の提供と輸出を含めた新たな販路開拓を図る。
- 21 -
・兵庫県認証食品の普及拡大
兵庫県認証食品の流通割合向上、認証食品の増加を図るため、認知度向上キ
ャンペーンの実施、認証食品が一堂に会する食のイベントの開催、カルチャー
教室とタイアップした野菜ソムリエ教室等を実施する。
・直売所を核とした「県産県消」運動の展開【新規】
市街地での共同直売フェア、複数の直売所を巡る日帰りバスツアーの企画提
案、直売所を拠点とした産地学習会等の実施を支援する。
◇農林水産業の多様な担い手の確保
・新規参入促進モデルファーム設置事業
農外からの就農希望者等に必要な技術等を効率的に習得してもらう場として、
JAや農業参入企業等が設置する農場の設置を支援し、新たな新規就農者の育
成を図る。
・就農プレ実践ファーム設置事業
基礎研修を受けた就農希望者が、本格就農に先立ち、地域において、自らの
才覚で生産から販売まで農業経営を実践できる「プレ実践ファーム」の設置を
支援する。
(3)域内経済循環を促進する産業構造の構築
人口減少と地域間格差が拡大するとともに、高齢化社会が進展するなか、本県経済活
力を維持するとともに雇用を確保していくには、高齢化・人口減少社会のなかで不可欠
な生活関連サービス(健康、医療、介護、子育て支援)や生活の質的向上に資するサー
ビス(教育、文化、小売商業、飲食業等)など、地域での雇用を創出する産業を伸ばし、
県内各地域における経済循環を促進する必要がある。
このため生活支援サービス業や環境調和型産業などについて、新事業展開、人材確保・
育成などを支援するとともに、地域金融機能の円滑化を通じて地域内再投資の促進を図
る。
①
情報・生活関連サービス産業(介
護・福祉・医療、家事支援など)の
成長・商店街の振興
需要が拡大し雇用吸収力も期待でき
る、介護・福祉・医療、家事支援などの
生活関連サービス産業について、企業や
NPOなどの参入をいっそう進めると
ともに、元気な高齢者や女性の参画促進
を図ることで、生活関連サービス産業の
担い手を、人材と事業主体の両面から充
実させる必要がある。
また、今後高齢化がさらに進むなかで、
【県内サービス業の年間総生産】
7
6
5
4
3
2
1
0
- 22 -
H2
H4
H6
H8
H10
H12
H14
H16
H18
H20
生活関連サービスの提供主体としての小売市場や商店街の重要性が高まっていく。このた
め、空き店舗の活用促進、専門家による商店街やまちの再生プランの策定など、活性化や
再生に向けた取り組みを継続して実施する。
情報サービスについては、
クラウドサービスの進展や、
多機能携帯電話(スマートフォン)、
無線LAN(Wi−Fi)などの普及により、家庭や企業、個人単位での利用環境が変化すると
ともに、ソーシャルメディアの普及など、インターネット活用型サービスが世界的に浸透
してきたなかで、生活関連の多様な場面で、新たなサービス提供のツールとしての可能性
が高まっている。商店街、観光地、飲食業等での販促・情報発信や、農林水産品や中山間
地域の物産など、今まで販売促進が難しかった製品・商品の市場拡大の一助となるとの意
見もある。こうしたことから、新たな情報・生活関連サービスの開発・製品化を進める中
小企業への支援強化も重要である。
○ 平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇生活支援ビジネスへの参入支援
◇介護・福祉分野への元気な高齢者や女性の参画促進
・高齢者生活支援ビジネス離陸応援事業の実施
元気な高齢者による高齢者世帯の家事支援や買い物支援など、高齢者によ
る高齢者生活支援ビジネスを振興するため、新たに起業する団体の立ち上が
りを支援する。
・元気高齢者介護サービス実践支援事業の実施
元気高齢者が介護に関する知識・技術を習得し、介護サービスの現場で活
躍することを支援するため、ホームヘルパー2級取得支援、介護福祉士養成
施設への就学資金貸付等を実施する。
・元気高齢者生きがい就労支援事業の実施
元気高齢者が、長年培った知識、経験、技能を活かし、興味のある新たな
仕事や社会貢献活動に取り組めるように、活動の立ち上げを支援する。
◇情報・サービス新事業創造資金貸付制度の創設
情報通信技術を活用した新規事業や、サービス産業における新たな事業展開
に取り組む中小企業等を支援するため、実用化開発資金貸付制度から、IT関
連、サービス関連枠を分離し、貸付限度額を拡充した、
「情報・サービス新事業
創造資金貸付制度」を創設する。
◇ひょうご商店街・まち再生支援事業等の推進 等
② 中小企業の経営革新・経営基盤強化・新事業等支援
地域経済循環の中核的役割を担う中小企業は、加速する大手製造業の海外展開、原材
料高、アジア新興国等との価格競争による受注価格の引き下げ、人口減少や個人所得の
減少・停滞による内需の縮小と継続するデフレ経済など、困難な課題に直面している。
最近の兵庫県内の倒産件数は減少傾向にあるものの、中小企業の経営は円高や海外経
済の減速等の影響により、当面厳しい状況が続くと予想される。このため、危機的経営
状況に陥った中小・零細企業経営者の生活維持確保を図るための取り組みについても、
- 23 -
検討する必要がある。
○
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇経営者へのセーフティネット機能の強化による事業整理・再生の促進
ひょうご中小企業出直し応援隊と社会福祉協議会などとの連携を強化し、事
業整理直後の生活不安を解消することにより、企業の再生・整理を促進。
③
域内経済循環の円滑化と域内再投資の促進
中小企業を巡る資金需要について、資金繰り判断は概ねリーマンショック前の水準と
なっているが、未だ資金需要に乏しい状況が続いている。足下の設備投資動向は、中小
企業でプラスに転じているが、金融機関の貸出残高は低調に推移している。
こうしたなか、中小企業の前向きな取り組みを支援しつつ、資金繰りにも配慮して融
資目標額を確保し、資金繰り対策として経営円滑化貸付等の拡充措置を継続するほか、
新規開業貸付の融資対象者拡充等、個別課題への支援策を講じ、地域内の資金循環を促
す円滑な資金供給を促進する必要がある。
また、資金の地産地消を促すため、地域経済を牽引する産業・企業に対する資金供給
方法の充実について、検討を進めていく必要がある。
○
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇中小企業制度融資の拡充(経営円滑化貸付など)
中小企業の前向きな取り組みを支援するとともに、未だ十分に回復したとは
いえない資金繰りにも配慮して、4,500 億円の融資目標額を確保。新規開業貸
付の融資対象者を拡充するほか、資金繰り対策として経営円滑化貸付の融資期
間等を拡充する。個別課題への支援策を講じ、地域内の資金循環を促す円滑な
資金供給を促進する。
・新規開業貸付の融資対象者の拡充
事業開始して間もない中小企業者の資金繰りを支えるため、新規開業貸付
において、開業1年間の通常の事業資金を融資対象に追加。
・設備投資促進貸付緊急特別枠(防災関連、エネルギー関連)の新設【新規】
東日本大震災後の防災意識の高まりや原発停止等に伴う電力不足に対応す
るため、節電関係や再生エネルギーの普及に向けた設備投資を最優遇金利で
支援。
◇地域中小企業への資金供給手法の充実
地域経済を牽引する産業・企業に対して、地域住民等からの資金供給手法を
検討・充実することにより、資金の地産地消を促し、地域内の資金循環を促進
する。
(4)地域人材力の強化と雇用の安定・確保
厳しい雇用情勢が続くなかで、高い地域人材力と安定した雇用就業環境の形成をめざ
し、兵庫の産業を支える人材の育成・確保、雇用のミスマッチの解消に向けた取り組み
を推進する必要がある。
- 24 -
特に、企業や社会のニーズに対応した新規訓練分野を開拓し、職業能力開発を図る等、
地域産業の成長に不可欠な人材の育成を充実させることが重要である。
また、高齢者、女性、障害者等の就業促進に向けた取り組みを推進していくことが重
要である。
①
成長産業・新事業分野等にかかる産業人材力の強化
県内企業を支える産業人材の育成・確保を図るため、産業界、労働団体、行政が連携
して進める兵庫しごとカレッジ推進会議において、新規訓練分野の開拓や効果的な訓練
実施体制の検討を行い、離職者や若年未就職者の早期就職を支援することが必要である。
また、認定訓練支援施策や県立職業能力開発校の施設活用などにより企業在職者訓練
への支援を強化するとともに、平成 25 年 1 月供用開始予定の「ものづくり大学校 もの
づくり体験館」を拠点とした「ものづくり体験事業」により、本県の産業を担う中学生
等を対象に、本格的なものづくり体験の機会を提供し、産業人材の育成に努めていくこ
とが必要である。
- 25 -
2055年
2050年
2045年
2040年
2035年
2030年
2025年
2020年
2015年
2010年
2005年
2000年
1995年
1990年
1985年
1980年
1975年
1970年
1965年
1960年
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇高齢化対応分野やコミュニティ支援分野における職業能力開発の充実
・兵庫しごとカレッジ推進会議の展開
絶えず変化、高度化する産業界のニーズに対応し、職業能力開発を通じて
雇用のミスマッチ分野や今後の成長期待分野に人材を供給するため、新規訓
練分野(高齢化、環境・省エネ、国際化・グローバル化等に対応する分野等)
の開拓や効果的な訓練実施体制の検討を行い、離職者や若年未就職者の早期
就職を支援する。
・離職者等再就職訓練事業の拡充
離転職を余儀なくされた労働者をはじめとする求職者の就労支援のため、
民間教育訓練施設に委託して実施している職業訓練に、労働需要が見込まれ
【兵庫県の総人口の推移予測(2005 年までは実績値)】
る職業分野へ
総人口(実績値)
の再就職促進
総人口(予測値)
(万人)
65歳以上人口比率
559 559 554 543
555
50%
600
に資する訓練
541
540
528
529 512
499 514
491 469 40% 42% 43%
467
500
431
446423 398 40%
(国際ビジネ
391
400 362
38%
30%
33% 35%
ス・貿易、国
300
30% 31%
27%
20%
200
23%
際観光、環境
20%
17%
10%
100
14%
10% 12%
エネルギー
9%
8%
0 5% 6% 6% 7%
0%
等)を拡充し
て実施する。
〈資料:県ビジョン課「兵庫県将来推計人口」〉
・実習・座学連
携養成事業の拡充
フリーター・ニート等の若年者の就業意識の醸成を図るとともに、労働市
場が求める職業能力を習得させるため、座学と企業実習を組み合わせたより
実践的な訓練を行う実習・座学連携養成事業において、新たに雇用機会が期
1955年
○
待される分野(高齢化対応・コミュニティ支援、環境・省エネ対応、国際化・
グローバル化対応等)にコースを拡充して実施する。
◇民間における企業在職者訓練への支援の充実
地域特性に応じたものづくり人材育成、広域的な産業人材育成などを目的と
する団体等(播磨ものづくり技能ネットワーク協議会等)に対する県立職業能
力開発校の施設の優先的開放を制度化するなど、民間における企業在職者訓練
を推進する。
◇ものづくり大学校における体験事業の展開
ものづくり大学校の体験施設(平成 25 年1月供用予定)において、中学生を
対象とした「ものづくり体験学習プログラムによるものづくり体験」、小中学生
等を対象とした「レベルアップ講座」や「テーマ別体験講座」等を実施し、兵
庫のものづくり産業を支える人材力の強化を図る。
◇福祉人材確保対策の推進
◇ふるさと人材確保ネットワーク事業の推進
但馬、丹波、淡路地域以外に、高齢化による労働力人口の減少が懸念される
北播磨・西播磨地域においても、就職を希望する同地域出身者の新規学卒予定
者、U・Iターンを希望者に対する求人情報の提供を充実し、人材の確保と地
域の活性化を図る。
②
安定した雇用・就業の確保と、高齢者・女性・障害者等の就業促進
ア 安定した雇用・就業の確保
有効求人倍率が緩やかに上昇するなど、改善傾向にはあるが引き続き厳しい雇用
情勢であり、平成24年度も的確に対応していく必要がある。このため、「緊急雇用就
業機会創出事業」等による雇用創出に継続して取り組むとともに、新規学卒者等へ
の就業支援や若者しごと倶楽部による若年者の雇用就業支援など、求職者のニーズ
に応じた求人情報の提供や職業相談、キャリアカウンセリング、職業紹介等のきめ
細かな支援を実施することが必要である。
また、中小製造業では人材不足が継続するなど、雇用のミスマッチは依然として
解決されない中で、中小企業の理工系人材の確保を支援するとともに、但馬・丹波・
淡路に加え、北播磨・西播地域等においても、若年者の地元定着やUターン希望者
等の地元回帰を促すことにより、地域企業や新たな地域進出企業の人材確保を支援
していくことが重要である。
○
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇新卒女子学生就職支援事業の実施
新卒女子学生の就職を支援するため、学内でのキャリアセミナーや合同企業
説明会を開催する。
◇ひょうごニート支援ネットワーク強化事業の実施
若者しごと倶楽部におけるニート支援等について、35歳以上の中年層無業
者(中年ニート)も対象とするとともに、アウトリーチ(自宅への訪問支援)
- 26 -
を行う専門家をニート支援ネットワークの構成員に加え、組織の充実強化を図
る等、ネットワークの関係機関の連携を強化する。また、ニート支援施設(若
者しごと倶楽部サテライト・若者サポートステーション)に訪問支援相談員、
広報支援員を配置し、より能動的な就労支援を図る。
イ
高齢者、女性、障害者の就業促進
進展する高齢社会に対応した雇用の推進として、元気な高齢者や社会進出を希望
する女性など多様な人材が本県産業の担い手としてより多く参画することを促進す
ることが必要である。特に、介護・福祉分野における知識習得の支援や生活支援ビ
ジネスでの人材ニーズへの対応が必要である。
特に高齢者については、多様な就業・社会参加ニーズに対応し、高齢者の能力・
経験を活かした就労しやすい就業機会を創出するため、高齢者の生活支援ビジネス
の振興を図ることや、高齢者が長い職業生活の中で身につけた技術・技能・ノウハ
ウ等を県内企業の経営力向上に加え、海外協力等を含めた幅広い分野での活用を図
っていくことが重要である。なお、高齢者が置かれている経済状況には個人、世帯
【女性の年代別労働力率】
によって差異がある
ことに鑑み、シルバ
ー人材センター等既
存の制度についても、
企業とのマッチング
機会の向上を図って
いくことが必要であ
る。
また、将来的に予
想される雇用者の不
(資料)県ビジョン課
足や、個人消費の好
転など内需の拡大にとって、女性の就業を促進することがきわめて重要であり、仕
事と生活のバランス等、女性が働きやすい環境整備を一層進めることが必要である。
さらに、障害者雇用の推進のため、「障害者就職拡大推進事業」等により、障害者
の特性や能力に応じた、職場開拓や職場定着支援を実施する。
○
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇介護・福祉分野における元気な高齢者や女性の知識習得支援
◇高齢者生活支援ビジネス離陸応援事業の実施
元気な高齢者による高齢者世帯の家事支援や買い物支援など、高齢者による
高齢者生活支援ビジネスを振興するため、新たに起業する団体の立ち上がりを
支援する。
◇元気高齢者介護サービス実践支援事業の実施
元気高齢者が介護に関する知識・技術を習得し、介護サービスの現場で活躍
することを支援するため、ホームヘルパー2級取得支援、介護福祉士養成施設
- 27 -
への就学資金貸付等を実施する。
◇元気高齢者生きがい就労支援事業の実施
元気高齢者が、長年培った知識、経験、技能を活かし、興味のある新たな仕
事や社会貢献活動に取り組めるように、活動の立ち上げを支援する。
◇シルバー人材センターのサービス多様化の推進
多様なサービスへ人材を提供するため、研修等により人材の資質向上を図る
とともに、企業に対して高齢者の有効活用の方法、ノウハウ、事例等の情報を
提供し、高齢者の就業機会の開拓と、高齢者にふさわしい仕事のマッチングを
図る、シルバー人材センターの取り組みを支援する。
◇仕事と生活のバランス推進
取組の裾野を拡げるため、各経営者協会・商工会議所・商工会と連携したセ
ミナー等を各地域で開催する。
◇子育て応援協定締結企業との連携強化
兵庫県と企業等が協働して、仕事と子育ての両立支援や子育て家庭への支援
などを進めるため、職域団体や企業と子育て応援協定を締結しているが、それ
ら締結企業の取り組みの事例発表、交流会等を開催し、締結企業との連携強化
を図る。
◇保育サービスの充実
・保育所の整備
待機児童解消プロジェクトを拡大して待機児童がいる全ての市町を対象と
するとともに、市町負担の軽減、保育所分園の整備、賃貸物件等の活用によ
り、施設の整備を推進する。また、保育所の延長保育、幼稚園の預かり保育
の拡充に取り組む。
・認定こども園の整備促進
子ども・子育て新システムの普及啓発に取り組み、認定こども園の整備を
促進する。
・病児・病後児預かりの拡充
ファミリーサポートセンターにおける病後児預かりの要件を緩和するなど、
病児・病後児の保育を推進する。
・放課後児童クラブの開設・拡充
就労等により昼間保護者のいない家庭の児童に安全で健やかな居場所を提
供する放課後児童クラブをニーズのある全校区での開設、拡充を目指す。
◇女性就業いきいき応援事業の実施
出産、育児などの理由により離職した人を対象に、再就業に向けた一歩を踏
み出すための具体的スキルや心構えの習得等を支援するため、女性就業応援キ
ックオフセミナー、再就業応援セミナーに加え、新たに職場復帰プログラムを
実施する。
◇新卒女子学生就職支援事業の実施(再掲)
女性就業率の向上に向けて、新卒女子学生の就職を支援するため、学内での
キャリアセミナーや合同企業説明会を開催する。
- 28 -
◇障害者しごと体験・企業支援事業の実施
障害者しごと体験事業を継続実施するとともに、体験受入事業に対して雇用
及び定着促進のための支援を実施する。また、障害者雇用促進アドバイザーを
配置し、体験を終えた企業を対象に障害者の雇用管理と定着に向けた支援を実
施する。
◇障害者しごと支援員・人材育成事業の推進
障害者の定着支援を強化するため、障害者就労関連の職員の能力アップを図
るとともに、障害者しごと支援員の活動の充実を強化し、活性化を図る。
◇障害者雇用促進のための特例子会社設立等支援事業
障害者雇用を促進するため、特例子会社の設置促進窓口を設置し、ワンスト
ップ支援を実施することで、障害者の就業機会の拡大を図る。
◇障害者就業分野開拓員設置事業
業界団体等と連携して、宿泊施設の清掃等の技能習得訓練やインターンシッ
プを実施し、観光分野における障害者雇用を開拓するとともに、県関係団体等
を通じて新たな就業分野を開拓。
(5)地域経済の発展基盤の形成
地域経済を発展させるには、内外からの人・企業の集積を加速する優れた産業・生活
基盤を充実させる必要がある。このため、産業の立地環境のさらなる整備、外国人をは
じめとした国際的にも豊かな生活環境の向上により、優れた企業が立地し、内外から人
材が集まり居住する地域を形成することが重要である。
また、東日本大震災後に課題となった双眼・多極型の産業構造の構築や、電力供給の
安定のための取り組みについて、中長期的観点から対応していく必要がある。
①
国際交流の促進と多文化共生社会の構築
研究開発や新たな企業立地など、本県産業の活性化には、地域の内外の人、企業、
大学、研究機関等が活動しやすい生活環境や事業環境が整うとともに、世界の各地
域との交通、情報、人材等のネットワーク充実が不可欠である。
特に、地域の産業活力の維持・発展にとって重要なイノベーションの創出には、
研究・開発に適した環境を整えることにより、夢のある若手研究者を内外から集め、
地域ポテンシャルをさらに高める必要がある。それには、研究・開発の成果を産業
に結びつけることができる地域産学官連携の協力体制の強化とともに、国籍を問わ
ず、住む人が幸せを感じることのできるまちづくりを進め、優れた人材の誘致につ
なげることが必要である。こうした取り組みを通じて、本県の基幹産業であるもの
づくり産業を知的集約型産業として伸ばし、国内の他の大都市ではできないイノベ
ーションを創出していくことが求められる。
また、関西イノベーション国際戦略総合特区の推進あたって、イノベーションの
創出が加速する先進地域の形成をめざすには、内外の優れた人材が集結し、さらに
優れた人材の集結を促すような人材集積循環が重要であるが、それには、外国人に
とっても暮らしやすい環境の整備が重要となる。
- 29 -
こうした観点から、平成 24 年度においても、友好・姉妹州省等と経済・文化など
各分野において多彩な国際交流を展開するとともに、外国人県民との相互理解を深
め、外国語による相談・生活情報の提供や、日本語・母語教育の推進など、多文化
共生社会の実現に向けた環境の充実を図ることが必要である。
○
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇友好姉妹州省等との交流の推進
中国・広東省との友好提携 30 周年、仏セーヌ・エ・マルヌ県交流 20 周年及
び独シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州交流 15 周年にあたり、友好訪問団の派
遣等の記念事業を実施し、経済・文化など多岐にわたる分野での交流を促進す
る。
◇日本語教育の充実等、多文化共生社会の実現に向けた環境の充実
②
双眼・多極型の産業構造の構築
企業のグローバルな事業展開が増加するなか、企業が国内で安定して事業活動を
継続できるよう、東日本と西日本でのデュアル型の産業構造の構築や、サプライチ
ェーンの多元化によるリスク分散等を推進し、企業が事業を継続しやすい柔軟で復
元力に富む産業構造の構築に、国全体としての取り組みが求められる。
また、海外での事業展開には、自然災害に加えて、政治リスクや経済社会状況の
激変などのリスクも存在するため、今後、海外に活路を見出そうとする中小企業に
とっては、海外でのリスクマネジメントを導入し、正確な海外情報を収集、対応す
ることが必要である。
また、アジア新興国等が急速に技術力を高めるなか、本県産業活力を維持してい
くには、地域産業にとって重要な工場等の継続的な操業や、マザー工場、研究開発
拠点等の誘致を推進する必要がある。
○
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇県内中小企業に対する海外現地情報の提供・相談機能の拡充
経済成長が著しいアジア新興国等における県内企業の海外事業展開を支援す
るため、海外ビジネス情報の提供、市場開拓等の相談対応等を強化する。
◇産業集積条例の活用による、県内再投資の促進に向けた立地促進
産業集積条例による投資補助等により、県内外の企業の新規立地や県内事業
所における新規事業等への設備投資を促進する。
◇企業、研究機関などのイノベーション拠点の立地推進
新技術・新製品開発の拠点となる企業等の研究所やマザー工場(研究開発型
工場)の県内への立地促進に努める。
②
電力供給不安定への対応
関西は、産業活動や人々の暮らしを支える電力のおよそ半分が原子力で賄われて
おり、平成 23 年度の夏・冬は事業者や県民に対して一定の節電協力が求められ、平
成 24 年夏についても一段と厳しい節電要請がなされると予想される。今後も、省エ
- 30 -
ネルギーの取り組みを一層推進することが求められるとともに、当面の県内企業の
産業活動の安定を図るため、中小企業の防災・エネルギー関連の設備導入を支援す
ることが必要である。
また、長期的には、環境に適合したエネルギーでなければ受け入れられにくい経
済社会へと変化していくことが想定される。このため、県としても、本県が持つ地
理的条件や等を活かし、太陽光、小水力、地熱など再生可能エネルギーの普及促進・
多様なエネルギー源を効率的に組み合わせて活用するなど、新たな電力供給方法の
導入が重要となってくる。
さらに、将来的には、本県企業が強みを有するタービン等、発電関連のものづく
り技術や、県内企業の新たな研究成果等を活用し、自立的で環境負荷が少なく、コ
スト競争力もある電力供給を県内で実現していくことが求められる。
○
平成 24 年度の主な充実方策(※施策充実の内容については、参考資料1参照)
◇防災・エネルギー関連の設備促進
東日本大震災後の防災意識の高まりや原発停止等に伴う電力不足に対応する
ため、節電関係や再生エネルギーの普及に向けた設備投資を支援する。
◇地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入促進
地熱によるバイナリー発電の導入などを検討する。
◇メガソーラー施設などの県内への導入促進
メガソーラー事業への参入を検討する企業の県内への導入を促進する。
◇住民参加型の太陽光発電モデル事業の展開
住民等から出資を募りファンドを組成するなどの方法により、太陽光発電施
設など地域自立型の再生可能エネルギー整備を推進する。
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