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第35号(2014年3月20日発行)(PDF/1.18MB)

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第35号(2014年3月20日発行)(PDF/1.18MB)
JICA保健医療タスクニュースレター
2014年
マヒドン王子賞
会合報告
「保健だより」第35号
第134回
世界保健機関(WHO)
執行理事会出席報告
人材育成
~セネガル事務所
での取り組み~
タンザニアにて
実施中の5S-KAIZEN
実証研究
2014年3月24日発行
2014年マヒドン王子賞会合報告
~ Transformative Learning for Health Equity ~
マヒドン王子賞会合(Prince Mahidol Award Conference: PMAC)は2007年より国際保
健について議論する場として2007年より毎年開催されています(但し第1回、第2回は
1997年、2002年に開催)。マヒドン王子賞は「タイの現代医学と公衆衛生の父」と称され
るマヒドン王子の生誕100年を記念し1992年に創設され、毎年1月に医学、公衆衛生分
野において功績のあった個人、団体を表彰しています。PMACはこの授賞式にあわせて
開催されており、JICAは2011年より共催機関として参画しています。
PMAC2014は、本年1月27~31日にタイ・パタヤにて開催されました(マヒドン王子記念
財団、WHO、世界銀行、USAID、China Medical Board、ロックフェラー財団、JICA共催)。
本年は保健人材の教育に焦点を当て“Transformative Learning for Health Equity”を
テーマに、世界62か国から543名が集まり、活発な議論がなされました。今回のテーマ
は、The Commission on Health Professionals for the 21st Centuryが発表した
”HEALTH PROFESSIONALS FOR A NEW CENTURY:”
(http://www.healthprofessionals21.org/docs/HealthProfNewCent.pdf) というレポートで
提唱された概念が基になっています。このレポートでは、保健人材を取り巻く環境が人
口構造や疾病構造に与える変化や健康格差の拡大、医学やIT技術の発展、国家間の
人材の移動の増加等により大きく変化している点が指摘されています。それに伴い、保
健人材の在り方や保健人材育成のための仕組みや手法、更には、変化する社会に柔
軟に対応した教育の在り方が求められています。こうした背景を受け、本会議においては、
エビデンスに基づく計画立案、従来より幅広いコンピテンシーが求められる中での人材
育成、保健人材の社会的責任、保健人材の地方における定着や現地のニーズに基づく
サ ー ビ ス 提 供 に 向 け た コ ミ ュ ニ テ ィ と の 協 働 、 IT の 活 用 、 職 種 間 を 超 え た 学 習
(inter/trans-professional learning)及びチーム医療、労働市場の在り方など様々な議
論がなされました。そして、会議最終日には、グローバルレベル、各地域レベルで保健
人材の課題に取り組むネットワーク強化に引き続き努めること、ポストMDGsのアジェン
ダとしてUHC推進の観点からも保健人材を扱うべきとの方向が確認されました。
日本からは、元厚生労働省副大臣の武見敬三参議院議員が、全体会2において基調
講演を行い、日本のUHC推進の紹介と保健人材に関するグローバルな取り組みについ
てご説明されるとともに、保健人材育成に関する政治的リーダーシップの重要性を述べ
られました。また、牛尾光宏厚生労働省審議官が全体会1にパネリストとして登壇され、
継続教育の重要性を強調されました。さらに、論文抄録を査読する技術支援委員会メン
バーとしてPMAC 2014の準備段階から参画した名古屋大学の伴信太郎教授と聖路加看
護大学の田代順子教授が、分科会のスピーカーを務めました。その他にも、日本の大
学からの参加者が多く見られました。
JICAは会議共催機関として、会議運営に携わる国際組織委員会及び事務局への参
加、スピーカー選定や分科会内容策定、東京での準備会合開催など、準備段階から
PMACに協力しています。会議においては、石井羊次郎国際協力客員専門員と小林尚
行人間開発部次長がそれぞれ分科会のモデレーターを務め、保健人材育成のための
パ ー ト ナ ー シ ッ プ に 係 る 分 科 会 で は 杉 下 智 彦 国 際 協 力 専 門 員 が Africa Health
Leadership and Management Networkによるトレーニングプログラムについての説明をし
ました。また、保健人材のライフサイクルに焦点を当てた分科会では藤田則子専門家
(カンボジア・医療技術者育成システム強化プロジェクト)より、保健人材の質を確保す
る観点からJICAの看護師資格制度づくりの貢献について紹介が行われました。この他、
独立行政法人国際医療研究センター(NCGM)との共催で、看護職の継続教育に焦点を
当てたサイドイベントが実施されました。 同イベントは、東南アジア諸国におけるJICAプ
ロジェクトのカウンターパートを中心に看護職の制度整備、資格・登録、看護教育に関
する課題を共有する機会となっており、PMACの機会を捉え2011年から継続してワーク
ショップが開催されています。3回目となる今回は会議事務局のRapporteurとしてJICA
本部からも2名が参加しました。本会議最終日には、PMAC国際組織委員会の共同議
長である小寺清理事が保健人材育成に貢献した人物を表彰するSpecial Award for
Outstanding Health Professional Educators授与者として登壇しました。
(続く)
Vol.35 1/4
第134回世界保健機関(WHO)執行理事会 出席報告
(続き)
保健人材はUHC達成に向けた取り組みを推進する主体となる重要な存在です。
2006年のWHOレポートで保健人材の危機が発表されて以降、国際的にはGlobal
Health Workforce Alliance(GHWA)発足など様々な取り組みが行われてきました。
これまでの保健人材に係る議論では、必要数の充足、適正配置等の問題がハイライ
トされてきましたが、今回のPMACでは、保健人材の労働マーケットの問題やパー
フォーマンスの向上等従来より更に幅広い議論が行われたのが特徴と言えます。
JICAはPMAC共催を通じて、国際保健に係る最新の動向や議論に参画し、JICAが
持つ現場の経験を活かしたインプットも行ってきています。JICAが援助実施機関として、
国際的な議論で形成される概念の具現化に向けて、実践に基づく考え方を提示するこ
とは大きな意義があると言えるでしょう。他方で、新しい課題に対して開発途上国の現
状を踏まえどのように事業化していくかというチャレンジも出てくることでしょう。
普段の事業実施のなかで、このような国際保健の議論を踏まえ、JICAとしてどのよう
な発信をし、そして新しい国際潮流の中でどのように事業として内在化していくのか、
と言う課題に対し、JICA事業に携わる者として認識を高めることが求められているの
ではないかと思われます。
来年1月にはPMAC2015が開催されます。テーマは、”GLOBAL HEALTH POST
2015: ACCELERATING EQUITY”で、国際保健に係る幅広い議論が行われる予定です。
JICAも共催予定であり、4月に東京で行われる準備会合に向け既に動き出しています。
WHO執行理事会(WHO Executive Board、以下EB)が1月20日から25日にWHO本部
(ジュネーブ)にて開催されました。EBは6つのWHO地域から選出された34か国の執行
理事国(任期3年)が任命する保健分野の専門的知識を有する執行理事により構成され、
毎年5月に開催される世界保健総会(WHA)の議題を決定し、WHAから委任された任務
を遂行しています。今回は理事国から約200名、その他加盟国約70か国、国際機関及
び市民社会組織からの参加がありました。
日本は2013年より執行理事国となり、尾身茂厚生労働省国際参与が執行理事として
出席した他、厚生労働省、国立国際医療研究センター、JICAより参加しました。
会議では、65議題が検討され、技術議題は13議題についての決議が採択されました。
一部の決議の概要は以下のとおりですが、5月のWHAにおいて、各国からの意見を踏
まえ決議がなされる予定です。
■2015年以降の結核予防に関しては、2035年までに結核死亡の95%、結核発生の90%
削減を掲げ、2020年からは5年おきの目標設定も加える予定。
■2013年11月の第3回保健人材グローバル・フォーラム(保健だより第34号参照)にて
採択されたレシフェ政策宣言に盛り込まれたコミットメント実施を加盟国に促す内容の決
議を採択。
また、本EBにおいて日本が加盟している西太平洋地域事務局
のDr. Shin Young-soo地域事務局長が再選され、2014年2月から5
か年の2期目にあたることが正式決定しました。
本EBにおける議題の事務局文書、決議内容、出席者リスト等に
ついては以下のサイトに公開されています。
http://apps.who.int/gb/e/e_eb134.html
(保健第四課 籠田 綾)
JICAからEBへの出席は今回が初めてでした。国際場裏におけ
る最新の議論や意思決定のプロセスの把握は、案件実施や国際
会議運営の際に非常に役立つものと思われます。またEBはWHA
の議題決定のため関係各国で意見調整を行ういわばWHAの前哨
戦との位置づけであり、地域による関心事項の違いや先進国と途
上国間の意見の相違を垣間見るよい機会となりました。本年5月
日本代表席で
の第67回WHAでは、EBにおける検討を踏まえて議論がどのように
発表準備をする筆者
展開するか、注視していきたいです。
(保健第一課 岡本 真澄)
Vol.35 2/4
人材育成 ~セネ ガル事務所での取り組み~
セネガル事務所では母子保健及び保健システム強化に資する協力をセネガルに行う
一方、セネガルの人的・物的リソースを活用し、セネガルと同様の課題を抱える域内の
仏語圏アフリカ諸国にその経験・成果を共有するための協力も行っています。この広域
支援では、主に本邦研修の帰国研修員に対する活動支援と、第三国研修による現任
教育を通じて、「人材育成」にフォーカスしています。
今回は、本邦研修帰国研修員活動支援として実施している「5S-KAIZEN-TQMによる
保健医療サービスの質向上」帰国研修員への支援と、国立保健社会開発学校
(ENDSS)を実施機関とした第三国研修「仏語圏アフリカ看護師・助産師教員の能力強
化」をご紹介します。
まず、本邦研修「5S-KAIZEN-TQMによる保健医療サービスの質向上」の帰国研修員
への支援としては、保健省・国家質プログラム長や病院管理協会会長を始めとするセ
ネガル人帰国研修員をC/Pとして、同省病院局が管轄する全35病院に5Sを導入する研
修を実施する一方で、これらのC/Pが5S-KAIZEN-TQMアプローチを他国へ普及するプ
ロセスの側面支援も行っています。例えば病院管理協会会長は、自身が教鞭をとる病
院管理者養成学校において「5S-KAIZEN-TQMによる保健医療サービスの質向上」を
教育プログラムに統合し、セネガル人学生及び周辺国からの留学生を「5S-KAIZENTQM」の視点を持った病院管理者に育成していると語っています。また、2014年4月にブ
ルキナファソで開催予定の第10回インド洋・カリブ海地域アフリカ病院ネットワーク
(RESHAOC)においても、C/Pは「5S-KAIZEN-TQM」が保健医療サービスの質向上に与
える様々な効果について発表することを検討しています。
「5S-KAIZEN-TQM」アプローチの最初のステップを構成する「5S(整理、整頓、清掃、
清潔、しつけ)」は、職場環境の改善に即効性のある活動であり、セネガル保健省内で
は既にその有効性が認識されています。セネガルで実施されている技プロ「母子保健
サービス改善(PRESSMN)」フェーズ1及びフェーズ2、「タンバクンダ州・ケドゥグ州保健
システムマネジメント強化(PARSS)」や、医療機材管理者の能力強化を目指す第三国
研修にも、セネガル側の発意により主要なコンポーネントとして組み込まれています。
今後はパラメディカル人材養成校であるENDSSにおいてもこの5S手法を紹介していけ
ればと、C/Pと話し合っています。
ENDSSは、2001年度から5年間実施された「保健人材開発促進プロジェクト(PADRHS)」
のC/P機関の一つで、セネガルにおけるJICAの人材育成の拠点とも言える機関です。こ
のプロジェクトを通じて、看護師・助産師養成課程の教員の能力強化が行われた他、
2004年の無償資金協力にて多目的実習棟も整備されたことから、これらの人的・物的リ
ソースを活かして、2008年度から第三国研修「仏語圏アフリカ看護師・助産師教員の能
力強化フェーズ1」を5年間実施し、9か国の仏語圏アフリカ諸国(ベナン、マリ、ブルキナ
ファソ、ニジェール、トーゴ、コートジボワール、ギニア、セネガル、コンゴ民主共和国
(RDC))から、延べ106人の教員が研修に参加しました。2013年度からはフェーズ2が始
まり、対象国には上記9か国に加えて、母子保健分野のプロジェクトを展開中のブルンジ
とジブチ、そして看護師・助産師を養成する国立公衆衛生学校への支援が検討されてい
るモーリタニアが加わっており、さらなる相乗効果が期待されます。
この第三国研修のもう一つの特長として、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の専門機
関・西アフリカ保健機構(WAHO)との連携が挙げられます。フェーズ1の立ち上げ段階に
行った域内のニーズ調査に基づき、WAHOが2010年に策定した、看護師・助産師養成課
程のためのECOWAS統一カリキュラム(特にコンピテンシーアプローチ)と整合した研修
プログラムを編成してきました。そうすることで、第三国研修を受講した教員がその後、
WAHOが各地で支援する研修において、第三国研修で作成したモジュールや教材を用
いて講師として活躍することが可能となり、研修成果がECOWAS域内に広く普及していく
仕掛けとなると同時に、WAHOにとっても域内での養成課程の統一化を促進できるという
メリットが生まれるのです。こうして構築されてきた協力関係の実績を踏まえ、2014年1月
31日にセネガル事務所はWAHOとMOUを締結しました。
MOU締結後、WAHOとセネガル事務所の間では、WAHO主催「医療機材管理政策策定
会議」(1月)、JICA主催「技プロPARSS経験共有広域セミナー」(2月)、「ENDSS第三国
研修カリキュラム策定ワークショップ」(3月)に双方が招待・出席し合う等、積極的な事業
の交流が始まっています。また、ECOWAS保健省大臣定期総会 (4月11-12日於リベリ
ア)に関するWAHOと諸パートナーとの準備会合への招待状も届いています。
これまでの人材育成に関する広域支援は、現任
教育を通じたものですが、理想は卒前教育への支
援を通じて、応用力と自己学習能力の高い人材を
輩出することです。技プロPRESSMNフェーズ2では、
「安全なお産」に関する現任教育プログラムを
ENDSSの初期教育課程に組み込もうとしています。
今後このセネガルでの経験・成果を域内で共有でき
るような仕組みを検討していきたいと思っています。
PARSS経験共有広域セミナー:
PARSSでの5Sの取組を講義した後、
各国参加者と意見交換する
セネガル国家質プログラム室長(左)
(セネガル事務所 企画調査員 及川 みゆき)
PARSS経験共有セミナー参加者の集合写真
ブルンジ、ベナン、モロッコから日本人専門家も参加
Vol.35 3/4
タンザニアにて実施中の5S-KAIZEN実証研究
途上国の公的保健医療施設では、人材、予算、薬剤の不足、老朽
化した施設や機材など厳しい労環境のため、医療従事者が適切な
働医療サービスを提供することが困難な状況となっています。そして、
これらの状況が医療サービスの質や医療従事者の定着にも影響を
与えています。
途上国の公立病院、特に県病院などの地域医療施設において、医療従事者のモチ
ベーションや職務満足度を改善することは可能でしょうか?5S-KAIZEN-TQM(以下
5S-KAIZEN)の導入が、医療従事者のモチベーションや職務満足度を向上させることは、
これまで経験的に知られていました。しかし、そのエビデンスは確立されていません。
タンザニア国の保健福祉省は2008年より保健医療サービスの質向上アプローチの基
本として5S-KAIZENを導入しています。JICAタンザニア国保健人材開発強化プロジェク
ト(2010-2014)では、活動の一環として、5S-KAIZENの導入、普及、拡大を支援するとと
もに、国立医学研究所と連携し、5S-KAIZENの取り組みが患者満足度や保健人材のモ
チベーションに与える影響を測るオペレーショナルリサーチ(OR)を実施しています。
実施研究のデザイン
JICAタンザニア国保健人材開発強化プロジェクトでは、5S-KAIZEN活動の効果検証
を目的として、県病院を対象としたクラスター・ランダム化比較試験を行いました。キリマ
ンジャロ州とマニャラ州の16の県病院を標本集団とし、5S-KAIZEN活動導入8病院(介
入群)と、未導入8病院(対照群)をランダムに選抜しました。具体的な介入内容は、5SKAIZEN 指導者研修(ToT)、各病院への巡回指導(Consultation Visit)と進捗報告会議
です。介入は、2011年9月より1年間実施し、RCT終了後の2012年9月からは、対照群に
も1年間、同様の介入を行いました。データ収集は、ベースライン(2011年9月)、中間
(2012年2月)、エンドライン(2012年8月)の3時点で実施され、各時点で約1000名の医
療従事者が自記式質問紙調査に回答しました(総計約3000名)。質問紙は、モチベー
ション、職務満足度、5S-KAIZEN実施率、モチベーションの促進要因、阻害要因、定着
意思や属性などに関する質問項目から構成されています。
モチベーション尺度の標準化について
医療従事者のモチベーションについては、すでにケニア(Mbindyo et.al 2009)やタンザ
ニア(Manongi et al, 2006)でも先行研究がありますが、モチベーションを職務満足度と
分けて評定する尺度はありませんでした。そこで本実施研究では、満足度などを形成
概念に含まない「医療従事者モチベーション尺度 Health Worker Motivation scale :
HWM13*」をタンザニア公立病院の文脈に合わせて新たに開発し、標準化を行いました。
尺度の標準化プロセスについての詳細は、「評定尺度の構成法と活用法」(萩原2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaih/28/1/28_7/_pdf を参照ください。
職務満足度尺度は、既存尺度(Macdonald and MacIntyre 1997)
を用いました。
5S-KAIZENの導入が医療従事者のモチベーショや職務満足度を向上させたのか?
エンドライン時、5S-KAIZEN実施率と職務満足度は、介入群で有意に高かった一方、
モチベーションは、介入群と対照群に統計的な有意差は認められませんでした。両群と
も、中間点からエンドラインにかけ、モチベーションは向上しました。介入群のモチベー
ションは、中間点で有意に低く、エンドラインで対照群に追い付きます。これは、当初、
介入群において病院全体の取組みとして活動が軌道に乗るまでは、「5S-KAIZENの導
入は報酬のない追加労働」と見なす者もあり、モチベーションが低下した可能性があり
ます。しかし、活動が組織化され、参加型での問題解決や業務改善、患者や上司など
からの「賞賛」など非金銭的な報酬を経験し、モチベーションが急激に上昇したと考えら
れます。対照群でモチベーションが向上した原因については、分析中です。
5S-KAIZEN実施率とモチベーションの関係を個票で分析すると、5S-KAIZEN実施率
が高い者ほど、モチベーションが高いことが示されました。モチベーションの高さを説明
する要因として、5S-KAIZEN実施率、年齢が高いこと、チームワークが形成されている
こと、上司とのコミュニケーションが良好であること、などが有意でした。一方、5SKAIZEN活動に取り組んでいても、管理職が自分の職務を評価していないと感じる場合
や、病院の一部部門だけが取り組んでいる場合など、5S-KAIZEN活動に参加する者と
しない者の温度差がある場合には、モチベーションや職務満足度が向上しない場合が
あるようです。
結論として、タンザニア県病院における5S-KAIZENの導入は、医療従事者のモチベー
ションや職務満足度を向上させる傾向が高いが、管理職の力量、院内のチーム体制の
有無、院内全体での取組み方によってインパクトが異なることが明らかになりました。
今後の展開と課題
5S-KAIZEN導入の最終的な目標は「安全で質の高い医療サービスを提供すること」
です。プロジェクトでは、現在、2次データを用いて介入病院における医療サービスの質
に直接関係するパフォーマンス指標を収集し、5S-KAIZEN導入が、サービスの質に与
える影響を分析することを試みようとしています。また、プロジェクトでは、実施研究の
結果をタンザニア保健人材戦略への政策提言として還元する計画です。質問紙は、
5S-KAIZEN進捗のモニタリングのための共通ツールとして更に標準化を進め、5SKAIZEN実施病院が自己管理ツールとして活用しKAIZEN-TQMに役立てることやタンザ
ニア以外の国での応用も目指しています。
(国際協力専門員 萩原 明子)
編集後記
2013年度最終号は、保健人材養成をテーマにお届けしました。いかがでしたでしょうか?
これまでご寄稿いただいた皆さま、またご愛読くださる皆さまにふかく感謝申し上げます。
今後は、季刊誌という特長を生かしつつ、皆さまのご関心にいっそうお応えできますよう、
特定のテーマや課題に関する一歩掘り下げた知見・ナレッジなど、
さらに密度の濃い「保健だより」をお届けできればと思います。
広報タスク一同、皆さまからのご意見・ご感想、現場からの投稿希望等、お待ちしております。
来年度も、どうぞよろしくお願いいたします。
(保健第二課 安孫子 悠)
Vol.35 4/4
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