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MRI ECONOMIC REVIEW
2016 年 11 月 8 日
株式会社三菱総合研究所
政策・経済研究センター
坂本 貴志
サブサハラアフリカ経済のポテンシャルと課題
-2030 年には地域全体の経済規模が日本に並ぶ可能性も-
ポイント

政情の安定などを前提にすれば、サブサハラアフリカの一人当たり GDP は 3,000 ドルまで伸張

2030 年のサブサハラアフリカの経済規模は 5 兆ドル弱と、日本に比肩する経済規模に
(1)はじめに
2016 年 8 月 27~28 日、第 6 回アフリカ開発会議(TICAD VI)がケニアの首都ナイロビで開催された。
同会議において、日本政府はインフラ投資や人材育成に関する協力を表明し、日本企業も投資案件など
を含む覚書に署名、官民で総額 300 億ドル規模の投資を行うことが宣言された(ナイロビ宣言)。
アフリカは豊富な資源や巨大な人口などポテンシャルを秘める一方で、質の高い人材の不足や不安定
な社会構造といった多くの課題がある。本稿では、アルジェリアやエジプトなど比較的所得水準が高い
北アフリカを除く、サハラ砂漠以南のサブサハラアフリカ経済について、その構造や近年の経済動向な
どを概観した上で、今後のアフリカの所得水準や経済規模を試算する。
(2)アフリカ経済の動向
―――――――――――――――――――
図表 1
人口増加を追い風に経済は拡大
アフリカの人口は増加の一途をたどる
アフリカの人口予測
サブサハラアフリカ地域(以下、単に「アフリカ」と
百万
14
いう。)の人口は急拡大を続けている。国連の統計によ
れば、1980 年のアフリカの人口は 3.7 億人(世界人口に
占める割合は 8.4%)であったが、2015 年には 9.6 億人
(同 13.1%)まで増加した(図表 1)
。アフリカの人口増
加は今後も続く見込みであり、2030 年には 14 億人(同
(10億人)
(%)
世界の人口(左軸)
12
世界に占めるアフリカの人口の割合(右軸)
25
10
20
8
15
6
16.4%)
、2050 年には 21 億人(同 21.8%)となり、2050
4
年には 5 人に 1 人はアフリカ人になると予想されている。
2
10
5
0
0
1950
1965
1980
1995
出所:国連「世界人口推計」
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
1
30
アフリカの人口(左軸)
2010
2025
2040
2055
2070
人口の急速な増加に伴い、経済規模も拡大している。
2000 年に 3,000 億ドル半ばであった GDP は、2014 年に
―――――――――――――――――――
図表 2
はおよそ 5 倍の 1 兆 8,000 億ドルまで増加している(図
GDP は 2000 年から 5 倍に増加
アフリカの GDP の推移
表 2)
。アフリカ経済の構成国も、大きく変化した。2000
2,400
(10億ドル)
年には南アフリカがアフリカ経済の 3 分の 1 強を占め
ていたが、2014 年時点では、2000 年代に原油価格の上
南アフリカ
ナイジェリア
アンゴラ
エチオピア
ケニア
スーダン
タンザニア
その他
サブサハラ合計
1697
1,800
1536
昇を背景に急成長を遂げたナイジェリアがアフリカ経
済最大の国となっている。その他、アンゴラやエチオ
1358
1180
1,200
869
世界に占める GDP の割合でみても、アフリカのプレ
け、2000 年には 1.1%まで低下した。しかしながら、2000
年台半ばにはナイジェリアなど資源国を中心に成長を
遂げ、2015 年時点で対世界の GDP の比率は 2.0%にま
で回復している(図表 3)
。
83
615
り、経済の発展に広がりがみられる。
後、頻発する内戦や不安定な政情のもとで低成長を続
138 138
111 125
735
89
419 467 522 574
73
65
374
52
37
257 325 270
218
165
492
600
はアフリカの対世界 GDP 比率は 2.5%であったが、その
1109
1010
ピア、ケニア、スーダンなどの経済規模も高まってお
ゼンスは低いながらも徐々に高まっている。1980 年に
1768
1605
368 353 385
24
18 126
95
15
0
375 417 397 366 350
9
61
82
60
229 258 272 299 287 296
136 122 115 175
0
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
出所:CEIC
―――――――――――――――――――
図表 3
アフリカの世界に占める GDP は 2%まで上昇
途上国における各地域の対世界 GDP 比率の推移
22
(%)
20
アジア
欧州
中南米
中東
サブサハラアフリカ
18
16
14
12
10
リーマンショック後は緩慢な成長が続く
8
6
ただし、他地域と比較してみると、必ずしもアフリ
カ経済が顕著に成長しているわけではない。新興国を
4
2
0
含めた途上国経済では、特にアジアで成長が著しく、
アフリカを上回るペースで拡大している(図表 3、4)。
アフリカの一人当たり GDP に比較的近いインドやベト
ナム1の成長率をみると、リーマンショック以降(2009
~2014 年)
の実質 GDP 成長率はそれぞれ年平均+7.3%、
+5.9%、労働生産性上昇率は同+6.0%、+4.8%と高い成
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
注:各地域における途上国の GDP の合計
出所: IMF
―――――――――――――――――――
図表 4
アジアは 2000 年代に急速に伸張
途上国の GDP の推移
30
(兆ドル)
中東
中南米
長を持続している。
25
一方、リーマンショック以降のアフリカの実質 GDP
成長率は年平均+4.6%、生産性上昇率が同+1.9%と、イ
欧州
アジア
サブサハラアフリカ
20
15
ンドやベトナムを下回る成長が続いている。アフリカ
は、中東や中南米経済と同様に資源への依存度が高い
10
ため、リーマンショック後の資源価格の下落が経済に
5
大きな影響を及ぼしている。
0
1980
1985
1990
1995
2000
2005
出所:Bloomberg より三菱総合研究所作成
1
インドとベトナムの一人当たり GDP は、2015 年においてそれぞれ 1,600 ドル、2,088 ドル。
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
2
2010
2015
多くの国は、資源に過度に依存
アフリカ経済はどの程度資源に依存しているのか。
輸出に占める資源品目の割合をアフリカ各国で比較
すると、多くの国で原油や貴金属の占めるシェアが高
く、資源への依存度の高さがうかがえる(図表 5)
。
―――――――――――――――――――
図表 5
原油や貴金属の占める割合が多い
輸出に占める資源関連項目の割合
100
90
ただし、一口に資源依存度が高いとは言っても、各
国の実態は多様である。アフリカ最大の経済を誇るナ
イジェリアは鉱物性燃料の輸出比率が 9 割弱にものぼ
り、原油をはじめとする鉱物性燃料への依存度が極め
て高い。その他、スーダンやコートジボワールなど多
きいが、自動車など工業製品の輸出も行われており、
比較的バランスの取れた構成となっている。
エチオピアやケニアなど資源への依存度が低い国
もある。これらの国では、外国からの技術や資本の受
輸出に占める資源の割合
69.0
66.0
1.6
0.1
12.3
50
40
貴金属
鉱物性燃料
60
49.4
44.0
87.6
30
20
42.6
18.4
28.9
53.7
8.7
3.1
1.7
10.7
0
ナ
イ
ジ
ェ
リ
ア
10.4
14.9
10
南
ア
フ
リ
カ
4.2
6.4
2.3
ガ
ー
ナ
エ
チ
オ
ピ
ア
タ
ン
ザ
ニ
ア
3.9
ス
ー
ダ
ン
ケ
ニ
ヤ
4.8
36.7
10.7
24.7
23.8
コ
ー
ト
ジ
ボ
ワ
ー
ル
注:統計が取得可能な国のうち、経済規模が大きい国を比較
出所:UN comtrade
―――――――――――――――――――
図表 6
2000 年代中盤に原油価格は高騰
資源価格の推移
600
(2000年=100)
(2000年=100)
原油
け入れが進み、主力産業である農業などの生産性が向
500
上しており、非資源国にもかかわらず堅調な経済発展
400
を続けている。
鉱石・セメント等
70
南アフリカやタンザニア、ガーナなどでは、金や希
となっている。南アフリカは、貴金属の輸出金額も大
87.7
80
くの国が鉱物性燃料を輸出している。
少金属(レアメタル)などの貴金属が主力の輸出品目
(%)
天然ガス
2016年1月以降
金
銅
300
200
過去の成長は資源価格高騰によるところが大きい
100
資源価格の高騰は、過去、アフリカ経済にどのよう
0
2000
な経路で影響を与えてきたのか。
2004
2008
2012
2016/1/1
2016/5/1
出所:Bloomberg
1990 年代、資源価格は低位で推移していたものの、
2000 年以降は、中国をはじめアジア新興国で資源需要
が急拡大し、資源価格が軒並み高騰した(図表 6)
。
資源価格上昇による交易条件の改善は、①政府歳入
の増加に伴う政府支出の拡大、②購買力向上に伴う輸
入増加と家計消費の増加、などを通じて資源国の経済
―――――――――――――――――――
図表 7
2000 年代中盤、輸入や政府支出が増加
ナイジェリアの実質 GDP 成長率
30
(前年比、中央3ヵ年移動平均、%)
輸出
政府消費
家計消費
25
20
固定資本形成
輸入
実質GDP成長率
15
10
規模の拡大に貢献してきた。
5
実際に、アフリカ最大の経済規模を誇るナイジェリ
アの実質 GDP 成長率の推移をみると、2000 年代中盤
には政府消費が増加し、輸入のマイナス寄与も拡大
(輸入が増加)した。ナイジェリア経済は、リーマン
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
3
0
-5
-10
-15
-20
2002
2004
出所:Bloomberg
2006
2008
2010
2012
2014
ショック以降成長率が鈍化しており、過去の成長は資源価格の高騰によるところが大きい(図表 7)
。
資源の影響を除けば生産性の伸びは低い
―――――――――――――――――――
図表 8
資源価格の高騰がアフリカ経済に及ぼした影響は
大きい。実際に、経済全体に占める原油が生み出す付
加価値の割合と成長率の関係をみると、原油価格が高
騰した 2004 年から 2008 年までの間
(原油価格高騰期)
は、原油依存度2が高い国ほど高い成長を実現している
(図表 8)
。
2000 年代中盤には成長率と原油依存度は比例
実質 GDP 成長率と原油依存度の関係
(年平均成長率、%)
20
2004年-2008年
18
2008年-2012年
16
14
12
10
8
一方、
2010 年から 2014 年にかけての相関をみると、
むしろ資源国において急速な成長の反動から成長率
6
4
2
0
が落ち込んでいる様子がみてとれる。
-2
0
原油価格の上昇はアフリカ経済をどの程度押し上
10
20
30
40
50
60
(GDPに占める原油比率、%)
げてきたのか。原油が生み出す付加価値割合と成長率
出所:OECD、IMF より三菱総合研究所作成
の関係から試算すると、原油価格高騰期の成長率のう
―――――――――――――――――――
図表 9
ち年平均+1.4%分の成長率の押し上げがあったと推計
される(図表 9)。これを除けば、2000 年以降のアフ
リカの労働生産性上昇率はおおむね+2%程度の成長を
生産性上昇率は概ね+2%前後
年代区分ごとの成長率の推移
(年平均、%)
10
2000年代中頃の原油価格急騰の寄与
生産性上昇率
人口成長率
実質GDP成長率
4.9
続けていたことがわかる。
1990 年代の低成長時代と比較すれば、アフリカ経済
5
6.2
1.4
4.6
2.2
2.1
1.9
2.6
2.7
2.7
2000-2003年
2004-2008年
2010年-2014年
の成長速度が上昇していることは確かである。しかし
2.1
ながら、+2%程度の生産性上昇率は、アジア途上国と
比較すると十分な伸びではなく、資源に頼らない自立
2.7
0
-0.6
的な経済発展は十分に実現できていない。
-5
1990-1999年
出所:三菱総合研究所作成
(3)2030 年のアフリカ経済の予測
―――――――――――――――――――
図表 10
成長の基盤は脆弱
今後、アフリカの産業が高度化し、自立的な経済成
長を実現することはできるのか。ここでは、都市機能
都市化率は未だ低い水準にとどまる
都市化率と一人当たり GDP(2014 年)
(都市化率、%)
90
80
の向上やインフラの整備など、産業の基礎となる要素
70
について現状の課題を確認する。
60
コートジボワール
ガーナ
南アフリカ
ナイジェリア
50
アフリカでは、農作物や鉱物性燃料など一次産品の
40
生産が経済の大きなウエイトを占めているが、製造業
30
やサービス業が発展していくためには、一定程度の人
口密度を有する都市の形成が欠かせない。実際に、一
タンザニア
20
アンゴラ
ケニヤ
10
エチオピア
0
0
2
コンゴ
スーダン
2
4
6
出所:国連「世界都市化率推計」
8
10
12
14
(一人当たりGDP、千ドル)
ここでいう原油依存度は、原油関連製品の総売上から生産にかかる総費用を引いた額が GDP に占める割合をいう。
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
4
人当たり GDP と都市化率の関係を見ると、両者は強
く相関している(図表 10)。
アフリカの都市化率の現状をみると、一部の国を除
―――――――――――――――――――
図表 11
インフラ競争力は改善が進まず
インフラの国際競争力の推移
(指数)
5
いて、いまだ低い水準にとどまっている。自動車産業
が集積し工業化が進んでいる南アフリカでは、所得水
4
準に比して高い都市化率を実現しているが、それ以外
の国で高い都市化率を有するのは、ガーナやコートジ
3
ボワールなど国土が小さい国がほとんどである。ナイ
ジェリアなど広大な国土を有する国では、都市化率は
2
いまだ低く、都市機能は十分に発展していない。
1
産業の高度化のためにはインフラの整備拡充も欠
ナイジェリア
南アフリカ
ケニヤ
ガーナ
エチオピア
インド
ベトナム
インドネシア
2006
2008
2010
2012
2014
出所:世界経済フォーラム
かせない。世界経済フォーラムが公表している国際競
争力指数のインフラ部門をみると、産業が発展してい
る南アフリカや外資の受け入れが進んでいるケニア
では高い水準となっているが、改善が進んでいない国
―――――――――――――――――――
図表 12
半数が 2 ドル以下で生活
一日あたりの消費額の分布
も多い(図表 11)
。水や電力の供給が需要を下回って
300
いるほか、道路や鉄道、航空、港湾などの物流インフ
250
ラのキャパシティ不足や運営能力の低さなど、インフ
ラの未整備が産業高度化のボトルネックとなってい
(100万人)
(%)
78.0
200
82.3
95.7
90.6
89.5中間層
85.4 87.6
100.0
120
100
80
71.5
62.6
150
る。
264
60
49.9
100
40
27.4 216
122
50
11
0
出所:国連、IMF、世界銀行より三菱総合研究所作成
中間層の拡大も十分に進捗していない。
一般に、自動車や家電製品など耐久消費財の普及が
進む所得水準は、3,000 ドル~5,000 ドル程度と言われ
ている。このため、産業の高度化のためには一日当た
りの消費額が 10 ドルを超える中間層の拡大が一つの
41
20$-
18
10$-20$
21
8-9$
5-6$
4-5$
2-3$
3$-4$
1-2$
-1$
30
9$-10$
49
7-8$
41
0
需要面に目を転じてみると、消費活動の中心を担う
―――――――――――――――――――
図表 13
多くの国で汚職がはびこる
汚職度指数
100
(指数)
90
メルクマークとなる。
80
しかしながら、アフリカの所得分布をみると、9 割
70
60
を超える消費者が一日 10 ドル未満で生活している
50
(図表 12)
。約半数の国民が、一日 2 ドル以下で生活
30
を行う貧困世帯であり、耐久消費財への需要が本格的
10
に拡大するには、まだ相当に時間を要するだろう。
40
76
20
44
26
0
ナ
イ
ジ
ェ
リ
ア
南
ア
フ
リ
カ
47
36
ア
ル
ジ
ェ
リ
ア
15
12
16
ア
ン
ゴ
ラ
ス
ー
ダ
ン
リ
ビ
ヤ
25
ケ
ニ
ヤ
ガ
ー
ナ
33
38
エ
チ
オ
ピ
ア
チ
ュ
ニ
ジ
ア
米
国
75
日
本
37
36
38
中
国
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
タ
イ
出所:トランスペアレンシー・インターナショナル
今後も人口増加は続くが、課題は山積
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
20
63
6-7$
中間層の拡大も不十分
86
5
2030 年にかけて、アフリカの所得水準、経済規模は
どの程度になるのか。アフリカ経済のけん引役は今後
右肩上がりで増加する人口成長率だ。人口成長率は緩
やかに伸びを縮小させながらも、2030 年にかけて
+2.4%と高率の伸びを維持すると見込まれる。人口増
―――――――――――――――――――
図表 14
教育水準は低い
アフリカ各国の識字率
100
(%)
90
80
加に伴い、財・サービスの消費やインフラ投資などの
70
需要はさらに高まることが予想される。
50
60
95.3
40
アフリカ経済の産業が高度化し、持続的な成長を実
現するためには、①インフラの整備や都市化の進展の
30
スラム過激派集団ボコ・ハラムによるテロが多発して
いるほか、コンゴやスーダンを始め多くの国で紛争が
起きている。汚職のまん延がビジネスの障害となって
また、教育水準の低さも大きな課題である。エチオ
ピアでは男女平均の初等教育修了率が 53.7%(2014 年)
といまだ半数近くの国民が初等教育を修了していな
い。経済水準の比較的高いナイジェリアでも修了率は
76%にとどまっており、識字率も 54.9%と低い水準に
とどまっている(図表 14)。国民への十分な教育投資
は、産業発展の必要条件であるが、教育水準を向上さ
せ、それを産業の発展につなげるには、長い年月がか
かり、アフリカ経済を巡る課題は山積している。
40.5
39.4
0
南
ア
フ
リ
カ
ナ
イ
ジ
ェ
リ
ア
ア
ン
ゴ
ラ
ケ
ニ
ヤ
ス
ー
ダ
ン
エ
チ
オ
ピ
ア
タ
ン
ザ
ニ
ア
ガ
ー
ナ
出所:Unesco
コ
ン
ゴ
コ
ー
ト
ジ
ボ
ワ
ー
ル
―――――――――――――――――――
図表 15
所得水準は 3000 ドル、GDP は 5 兆ドル弱に
名目 GDP と一人当たり GDP の見通し
6
(兆ドル)
(ドル)
名目GDP(左軸)
いる状況も続いており、先進国からの安定した投資の
呼び込みは依然として厳しい状況にある(図表 13)。
74.4
10
な要素として挙げられる。
礎的条件である。近年においても、ナイジェリアでイ
79.3
72.3
54.8
20
ほか、②政情の安定化、③教育水準の向上などが重要
政治情勢や治安の改善は、経済が安定するための基
75.9
72.3
54.9
一人当たり名目GDP(右軸)
5
7000
6000
4.7
5000
4
3063
3
4000
3000
2
1.7
1
1628
2000
1000
0
0
2005
2010
2015
2020
2025
2030
出所:三菱総合研究所作成
―――――――――――――――――――
図表 16
アジア新興国には遅れをとる
2030 年の一人当たり GDP の予測
GDP は 5 兆ドル弱と、日本に比肩する可能性
25
アフリカ経済は、今後どの程度の成長率を実現でき
(千ドル)
22.5
一人当たりGDP(2015年)
一人当たりGDP(2030年)
14.8
るか。
一人当たりGDPの変化(2015年→2030年)
20
15
14.1
11.3
9.9
原油価格は、シェールオイルの台頭により再び急速
に上昇することは見込みづらい。ただし、中国をはじ
めとする新興国の需要が今後も着実に増加していく
ことから、原油をはじめとする資源の価格は緩やかな
上昇傾向で推移していくだろう。
人口成長率や過去の資源価格上昇による成長率へ
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
6
10
8.2
5.4
5
9.6
8.7
8.0
5.7
ブ
ラ
ジ
ル
中
国
タ
イ
5.0
4.9
3.2
3.1
3.4
2.9
2.1
1.8
1.6
1.6
1.3
1.2
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
フ
ィ
リ
ピ
ン
ベ
ト
ナ
ム
ラ
オ
ス
ア
フ
リ
カ
イ
ン
ド
ミ
ャ
ン
マ
ー
カ
ン
ボ
ジ
ア
0
マ
レ
ー
シ
ア
4.1
出所:三菱総合研究所作成
―――――――――――――――――――
図表 17
の影響を踏まえると、今後のアフリカの労働生産性上昇
率は+1%台後半、実質 GDP 成長率は+4%前後の伸びを
予想する。米国の物価上昇ペースが足元のペースで続く
中国のアフリカとのつながりは深い
アフリカ向け輸出額
と仮定すれば、アフリカのドルベースの名目 GDP は
100
千
(10億ドル)
2015 年の 1.7 兆ドルから 2030 年には 5 兆ドル弱と日本
に比肩する規模にまで増加する。また、一人当たり GDP
は 1,630 ドルから 3,060 ドルとおよそ 2 倍に増加するだ
日本
90
中国
80
米国
70
60
50
ろう(図表 15)
。
40
ただし、上述の経済成長を前提とすれば、所得水準が
他の新興国と比べて見劣りする状況に変わりはない(図
表 16)
。現在アフリカと近い所得水準にあるインドは、
アフリカを大きく上回るペースで経済成長を続けてお
り、ASEAN やインドなどのアジア新興国からは大きく
後れを取ることになるだろう。
30
20
10
0
1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013
出所:CEIC
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図表 18
中国はアフリカへの直接投資の比重が高い
中日米の直接投資残高の各国比率(2012 年)
インフラ投資をはじめ、一歩ずつ関係強化を
40
TICAD VI では、日本政府から多くの経済協力が表明
ード面のほか、鉱物性燃料の開発協力や港湾、空港の運
20
日本
米国
15
10
5
ることが期待される。インフラ関連以外にも、理数系教
0
欧
州
北
米
日
本
先進国
出所:Unctad
そ
の
他
先
進
国
東
ア
ジ
ア
東
南
ア
ジ
ア
イ
ン
ド
ブ
ラ
ジ
ル
CIS
おり、アフリカの都市化の進展や産業の高度化に寄与す
技術支援なども予定される。
中国
30
25
員養成や知的財産制度、感染症対策に関する人材育成や
62%
35
された(図表 19)
。火力発電所の建設などインフラのハ
営支援などソフト面での経済協力も多く盛り込まれて
(%)
ア
フ
リ
カ
そ
の
他
新
興
国
新興国
もっとも、アフリカの成長取り込みを巡る競争は激し
さを増している。アフリカ向けの輸出額をみると、中国は他国と比較して飛びぬけて大きい(図表 17)。
2015 年時点で日本からアフリカへの輸出額は約 70 億ドルだが、中国の対アフリカ輸出額は 940 億ドル
にものぼっている。中国、日本、米国の投資戦略を比較しても、先進国への投資が多い日米に対して、
中国は明らかにアフリカなど後発途上国へ先行投資を行う戦略をとっている(図表 18)
。アフリカとの
結びつきという意味では、中国とは圧倒的な差があるのが現状であり、日本政府や企業としては、イン
フラ関連の投資や技術協力など、ハードとソフト両面の協力を通して一歩ずつプレゼンスを高めていく
しかないだろう。
先述のとおり、アフリカの人口は 2030 年には 14 億人と全世界のおよそ 16%まで上昇する。政治情勢
や資源価格の安定を前提とすれば、アフリカの経済規模は 5 兆ドル弱と日本と同程度まで拡大すること
が予想される。輸出先や生産拠点として世界を見渡せば、日本企業にとって、アフリカが将来重要な地
域となる可能性は十分考えられる。日本としては、アフリカの急速な経済発展が難しいことも勘案しな
がらも、中長期的な視点で投資を行うことが求められる。
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図表 19
インフラ投資と人材開発を中心に協力を進める
TICAD Ⅵにおける日本政府とアフリカ各国の主な合意事項
人材開発
インフラ投資等
・経済活動の核となる産業人材を3万人育成
・知的財産制度に関し、1000人の人材育成
・科学技術強化のため、2万人の理数科教員育成
・100億ドルのインフラ投資を実施
・感染症対策のため、専門家等を2万人育成
・発電容量を2000MW増強
・アフリカの平和実現のため、960万人の人材育成と5億 ・地熱分野で約300万世帯の電力需要を賄う
ドルの支援を実施
・民間セクターへ33億ドルの資金供給等を実施
・農民6万人と普及員2500人に稲作技術の普及
・22の企業・団体がアフリカ諸国等と73の覚書を署名
・気候変動・自然災害に関し、4000人の人材育成を含む
18億ドルの支援を実施
出所:外務省資料より抜粋
≪本件に関するお問合せ先≫
株式会社 三菱総合研究所 〒100-8141 東京都千代田区永田町二丁目 10 番 3 号
政策・経済研究センター 坂本貴志
電話:03-6705-6087
FAX:03-5157-2161 E-mail:[email protected]
広報部 吉澤、渋谷口 電話:03-6705-6000 FAX:03-5157-2169 E-mail:[email protected]
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