...

サン・ミニアート市(PDF:838KB)

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

サン・ミニアート市(PDF:838KB)
地方都市の再生
サン・ミニアート(イタリア共和国)
スローシティ協会副会長都市
サ ン ・ ミ ニ ア ー ト 市
Comune di San Miniato
~スローシティ活動の取組~
概

要
人口約 28,000 人のイタリアでも屈指の白トリュフの生産地で、中世には交通要路として
繁栄

旧市街の歴史的景観や田園風景の保護、学校給食を利用した地産地消の推進など、スロ
ーシティ活動を積極的に展開
丘の上の旧市街の街並みと旧市街からみた市内の様子
説 明 者

ヴィットリオ・ガッバニーニ氏 サン・ミニアート市長
Mr.Vittorio Gabbanini

チアラ・ロッシ氏 サン・ミニアート市副市長、スローシティ協会副会長
Ms.Chiara Rossi

アヌンツィアーティ氏 サン・ミニアート市都市計画・生産活動部門責任者
Mr. Annunziati

カルロ・アイアグリ氏 サン・ミニアート市内農家
Mr.Carlo Agliardi
説 明 内 容
①サン・ミニアート市の概況(サン・ミニアート市長)
私は、サン・ミニアートを、他の都市の見本となるような街にしたいと考えている。一つの
街のモデルとしてイタリアだけではなく海外にも向けてアピールすることを計画しており、現
- 1 -
地方都市の再生
サン・ミニアート(イタリア共和国)
在、この街の紹介パンフレットを作成しているところである。
サン・ミニアート市は、人口約 28,000 人で、
歴史や白トリュフ、美しい自然や田園の景観で有
名な観光都市だが、経済活動も活発で、なめし革
の産業集積地でもある。そこで、例えば、なめし
革でつくった靴の中に先ほどのパンフレットを
一緒に入れて、街を宣伝することも考えている。
私の目標は、地元の農産物を育む田園や自然の景
観、それと産業部門とをうまく共存させていくこ
とにある。
ガッバニーニ市長の説明の様子
また、ノルマーレ大学というイタリアで唯一の
エリート大学で、厳しい入学試験を経て文系・理
系各 30 名のみが入学できる大学がピサにあるが、その分校が市内にある。現在、約 90 人の学
生が市内で入学試験前の勉強をしており、そんな優秀な頭脳が滞在する街でもある。
さらに、聖地の一つであり、イエス・キリストが生まれたというイスラエルのベツレヘム市
と姉妹提携を行っている数尐ない都市ということもあり、平和都市としての面もある。
②スローシティ活動
スローシティ協会は、1999 年 10 月にスローフ
ード運動に賛同する市長の会議が開催された際
に、赤ワインで有名な、フィレンツェの南にある
グレーヴェ・イン・キャンティ市のパオロ・サト
ゥルニーニ市長が提唱して設立されたものであ
る。その際に中心となったのが、スローフード協
会の発端となった町でもある北イタリアのブラ
市、提唱者のキャンティ市、中部のオルビエト市、
南イタリアのポジターノ市の4市の市長である。
このスローシティ構想は、イタリア以外の国から
も賛同を得ており、ドイツ、スペイン、ポルトガル、イギリス、ベルギー、ポーランド、ノル
ウェー、オーストラリア、ニュージーランドの
都市が参加している。イタリアからは 100 以上
の都市が参加し、トスカーナ州からは 14 の都
市が参加している。
この国際ネットワークのメリットは、年に2
回会合を行い、スローシティが目的とする環境
保護や、景観保存、文化的、芸術的な文化財の
保存といったようなことについての情報交換
ができることにある。
市役所での説明聴取・質疑応答の様子
「スローシティ」であるためには、よく生き
- 2 -
地方都市の再生
サン・ミニアート(イタリア共和国)
る、よく住むという意味の「ブオン・ビーデレ」に値するかどうかを様々な角度から検証する
こととなる。具体的には、スローシティ憲章というものを策定し、ネットワークに参加するた
めの条件を定めている。多くの条件があるが、大きくは、環境に対する政策、インフラ政策、
都市計画に関する技術、地域の産物の利用促進、観光客へのもてなし、住民の意識に分けるこ
とができる。これらの条件に適合しているかどう
かについて、定期的に協会の現地調査があるとと
もに、加盟都市は、毎年年次報告を提出しなけれ
ばならないことになっている。
また、この活動には、5万人を超す都市は参加
できないことになっている。その理由は、小さな
街の方が、地元の採れたての野菜などによる食材
の質の高さ、地元の風土や季候等に応じた料理な
ど、食生活が充実していること、地域住民の関わ
りの濃さ等に基づく子どもや高齢者に対する配
ロッシ副市長の説明の様子
慮など、様々な点でケアが行き届いていることな
ど、大きな都市よりも生活の質が高いという傾向があり、スローシティ活動を進める土壌が整
っていることにある。また、そのような強みを活かして小さな街の活性化を図ろうとする趣旨
もある。
③サン・ミニアート市における環境・景観対策
サン・ミニアート市は、芸術、歴史、文化に溢れた町だが、美しい景観となめし革工場に代
表される産業部分、生産部分との共存をどうするかということが課題で、それにはやはり高い
レベルの最新技術も必要となる。
この街には、美術館とちょっと変わった二つの博物館、文
字の博物館と数字の博物館があり、ルネッサンス期の芸術作
品も数多くある。また、中世のころにフランスやドイツから
ローマに巡礼に行くためのフランス街道という街道が通っ
ていたという歴史があり、その街道が最近、全国的に評価さ
れている。それらを目的に訪れる観光客も多く、学校の遠足
先やロケ地にもよくなっている。また、グリーン・ツーリズ
ムやショッピング、スポーツ観光で訪れる方も多い。市内に
は、モトクロスの世界大会を開催できるサーキットがあり、
レガッタの国際試合も開催されている。
環境の保護に関しては、電磁波障害に関する監視を行って
おり、例えば、学校の近くには携帯電話の基地局を設置しな
いことなどを定めている。
訪問時には、そこここでモデル撮影
等が行われていました。
景観対策に関しては、中心部の美観を守るため、看板やポスターなどの基準を定め、また、
旧市街や文化的、歴史的価値のある建築物で老朽化しているものをピックアップし、公的資金
で修復する事業も実施している。観光で中心部に流入する車を減らし、歩行者を増やすことも
- 3 -
地方都市の再生
サン・ミニアート(イタリア共和国)
目的として、旧市街の周辺に駐車場を2箇所つくったが、その場所や設備等については、念入
りに検討し、景観に配慮したものとなっている。また、昔、砂を採掘していた場所で、窪地に
なっていたところに水を張り、カヌーの練習ができるような池にしたが、それも景観政策の一
環である。
旧市街のふもとの駐車場(左)と旧市街の入口付近を結ぶエレベータの乗降口(右)
旧市街の街並み
町の周辺には緑地が広がっているが、そこには開発規制をかけているとともに、この周辺の
自然の特徴である丘陵地の景観を保護するため、この丘の稜線に沿ったところでの建築物の新
規建築を禁止している。
市内を流れるアルノ川の水害対策としてつくられた貯水池については、水辺のスポーツなど
で有効活用ができたらとも考えている。
④サン・ミニアート市における地産地消の取組
市では、地域住民に対し、かなり以前から食品の質に関する意識を高めるための取組を進め
ており、そのことは、有機栽培の促進や地元産の商品を活用しながら農村文化を推進すること
にもつながっている。地元の農家は、地域経済や土地の適正保全の面で重要な役割を担ってお
り、また、栄養的にも、見た目にも質の高い食品の供給元となっている。
- 4 -
地方都市の再生
サン・ミニアート(イタリア共和国)
まもなく2年目となるが、地元農家と協働し、有機食品や地元の食品を学校給食に利用する
取組を行っている。市内で生産された旬の有機野菜、例えば、カリフラワー、キャベツ、青菜、
ひよこ豆、レタス、ジャガイモ、ポロネギ、カボチャ、ズッキーニなどや、地鶏の卵、地元産
の小麦を地元の水車でひいた小麦粉でつくったパン。それから、牛肉は地元産で飼育されたも
の、豚肉はトスカーナ産で両者とも市内でと畜されたものを使っている。その他の食品につい
ても、有機栽培のものを使用している。
この取組の結果、給食にトスカーナ州の伝統的な郷土料理を提供することもできるようにな
った。市内に給食センターが1箇所あり、そこで毎日約 1,700 食分がつくられ、市内の全学校
に配られている。
また、生徒や教師、保護者に対し、この取組に参加している農家の農場見学も実施しており、
これらの取組は、保護者からも高く評価されている。
その他にも、自然食品の商店街を運営する計画の策定、地域産物をプロモーションする会社
の設立、「農村のテーブル」という行政と農家が
プロモーション等について定期的に話し合う場
の設定、地域の特産物を使った料理教室の開催、
生徒が世話をする校内菜園の設置などを行って
いる。
このように、地産地消を進めることにより、地
元の生産物を有効に活用することや物流コスト
の削減につながっているとともに、消費者側にと
っても、適正な食事スタイルを追求することの大
市役所での説明聴取・質疑応答の様子
切さ、地域への理解を深めることに貢献している
と考えている。
質

疑
スローシティを進めるに当たっての市民のコンセンサスについて
→ 住民投票を実施したわけではなく、特に各住民の同意を得たというものではない。
行政側で決定したものだが、これまで何年も取組を進める中で、強力な賛同者も現れ
ており、今のところ市民の賛同は得られているものと考えている。
→ 行政の役割は、方針を決定して引っ張っていくことであり、当初は行政が先導しな
がら、住民自らの取組につなげていくことが重要である。

スローシティ協会参加条件における住民の意識について
→ スローシティ活動を行っていることを住民に周知し、認識してもらえているか、活
動への賛同者をどのように広げていくかといったようなことが指標となっている。
- 5 -
Fly UP