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日本大学理工学部機械工学科 吉田研究室の見学

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日本大学理工学部機械工学科 吉田研究室の見学
日本大学理工学部機械工学科
吉田研究室の見学
近藤 亘(東京都市大学 機械工学科)
1.はじめに
実験は燃焼室を模した燃焼容器内で行っていますが,将来的
日本大学 理工学部 機械工学科,吉田研究室を訪問させて
にはエンジンの燃焼に応用するそうです.
頂きました.日本大学 理工学部は駿河台キャンパスと船橋
キャンパスの 2 つに分かれています.駿河台キャンパスは東
京都千代田区神田駿河台にあり教室やカフェテラスのある
1 号館はガラス張りでスタイリッシュな建物となっています.
また学校の近くには電気部品を多く扱う秋葉原,楽器屋,ス
ポーツ用品店,古本屋などが立ち並ぶ神田神保町があります.
船橋校舎は千葉県船橋市にあり,船橋日大前駅より学校内に
入ると,左側にテクノプレース 15 と呼ばれる実験棟が見えて
きます.ここでは,旋盤等の工作機械があり学生が実験や実
習を行っています.その先に交通総合試験路と呼ばれる全長
図 1 高電圧放電によるプラズマジェットの様子
618m幅 30mのとても広い直線路があります.ここでは,様々
な車両の走行実験が行われているそうです.他にも,風洞実
験棟,内燃機関実験棟,大型構造物試験棟といった実験設備
がたくさんありました.
2.研究室紹介
エンジンは 100 年以上前に実用化されたものであり,現在
でも基本的な燃焼メカニズムは変化しておりません.しかし,
近年の地球温暖化問題や省エネルギの観点からエンジンの環
境性能向上のため燃焼技術も日々進歩しています.吉田研究
室では主にエンジンの新しい燃焼法について研究しています.
見学では研究室,実験施設,機器を見せて下さり研究内容に
ついて紹介して頂きました.
3.プラズマジェット
図 2 実験結果シュリーレン法可視化画像
はじめに紹介して頂いたのはプラズマジェット (高電圧放
縦軸:時間 横軸:左から メタノール,
n-ヘプタン,イソオクタン,ドデカンでの燃焼過程
電)を用いた拡散燃焼方式についての研究です.プラズマジェ
ットとは,燃料に対して 10kV~20kV の高圧放電を行う事で燃
料をプラズマ化させ,燃料噴射させる技術です.このプラズ
マジェットを行う事で燃料噴射と同時に拡散燃焼を誘発し,
急速な拡散燃焼,高圧縮化が可能となります.これによって,
ディーゼル機関の NOX,PM 等の有害排ガス成分を低減できると
考えられています.この研究を進める事で,プラズマジェッ
トは多種燃料を同一条件で燃焼する事が出来る事が分かった
そうです.現在はイグナイタ形状による燃焼圧力と拡散燃焼
過程を評価し燃焼方式への影響を明らかにしています.
図 3 実験に使用しているイグナイタ
1
4.回生機構付エアモータの開発
ではこの木質廃棄物を溶剤と混合させて,液化反応させてで
また駿河台キャンパスでは回生機構付エアモータについて
きたセルロース液化燃料(Cellulosic Liquefaction Fuel 以
も研究していました.エアモータとは空気圧縮機サイクルを
下CLF)の実用化に関する研究を行っています.研究を進める
圧縮空気によって逆作動させることで出力を得る機関です.
事で,CLFは圧縮着火機関において単体では圧縮着火せず,ま
また,減速時にはエアモータを空気圧縮機として作動させ制
た軽油と混合しないという事が明らかになりました.そこで,
動エネルギを回生することが可能です.エアモータは地球温
ココナッツオイルメチルエステル(Coconut oil Methyl Ester
暖化問題となっている CO2 等の有害ガスを一切排出せず,さら
以下CME)を混合し,機関へ供給しています.さらに,実験に
に電気モータに対し同等の出力を得る場合でも数倍軽量にで
おいてはCLFの分留温度範囲と各CLF分留のCMEの質量割合を
きると言われています.
変化させ,過渡運転時のエンジン出力,排ガス成分を測定す
る事で燃焼特性への影響を明らかにしています.
図 6 バイオマス燃料
図 4 エアモータ外観図
図 7 は実験で使用しているエンジンです.諸言は空冷 4 サイ
昨年,実際エアモータの設計,製作,自転車への搭載を行
クル単気筒直噴式ディーゼルエンジン機関であり,総排気量
ったそうです.今後は出力及び回生について測定を行い,よ
211[cc] 圧縮比 19.9:1 で燃料噴射時期は 14[deg. BTDC] で固
り性能の高いエアモータの開発を行います.
定しているそうです.実験にも立ち会わせて頂きましたが,
研究用バイオマス燃料は数量に限りがありエンジン実験を行
う際は燃料消費量を最小限に抑えるため,実験中の学生の動
きに無駄がなく限られた時間で多くのデータを取れるよう努
力していました.
図 5 エアモータを搭載した自転車
5.バイオマス燃料
図 7 実験で使用しているエンジン
別の日に船橋キャンパスにあるエンジン実験施設も見せて
謝辞
頂きました.ここでは,バイオマス燃料がディーゼル機関の
今回の見学にあたり,日本大学の小澤雄哉様をはじめ吉田研
性能に及ぼす影響についての研究をしています.バイオマス
燃料とは,穀物や木質系廃棄物などの生物資源を原料として
究室の院生,学生,吉田教授には大変お世話になりました.
製造される燃料です.その中でも木質系排出物は国内では年
お忙しい中,大変貴重な時間を使って取材を快く引き受けて,
間4000万[m3]が廃棄されており,この未利用バイオマスを有効
なお且つ多くの質問にも答えて頂きありがとうございました.
に利用するための数多くの研究がされています.吉田研究室
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