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柔道競技(PDF:629KB)
第2章 各競技種目 ⅩⅣ 柔道競技
ⅩⅣ 柔 道 競 技
1 平成26年度中体連大会の総括
(1)第53回長野県中学校総合体育大会
長野県柔道連盟、各地区の専門委員、顧問の先生方、東信地区の生徒役員のお力添えを頂き、大きなけが
や問題等もなく、無事終えることができた。
男子団体戦の決勝は、丘中学校が東御東部中学校を3-2で下し、2連覇を飾った。女子団体戦の決勝は、
やはり丘中学校が東御東部中学校を1-1内容で下し、7連覇を飾った。
男女個人戦は、有力選手が順当に勝ち上がった中で、各階級ともベスト8からは力が拮抗し、大変見応え
のある好試合であった。また、多くの階級において県ジュニア強化指定選手として強化してきた選手が勝ち
上がり、力を発揮することができた。
暑い中の大会であったが、熱中症等で体調を崩す生徒がなく、今まで頑張って練習してきた成果を十分に
出し切ることのできる大会になった。また、選手、監督、コーチ、応援も全てマナーよく実施できているの
で、今後も継続していきたい。
(2)第34回北信越中学校総合競技大会
新潟県長岡市総合体育館で行われた。新潟県の専門委員の先生方、顧問の先生方、生徒役員の運営が大変
素晴らしかった。
男子団体戦は、丘中学校と東御東部中学校が出場した。両校とも積極的な試合運びをし、力を出し切った。
東御東部中学校は2回戦で惜敗となったが、丘中学校は、厳しい試合を勝ち上がり、決勝戦へと駒を進め、
決勝戦においては、石川県内灘中学校と戦い1対4で惜しくも敗れたが、準優勝という素晴らしい結果を残す
ことができた。
女子団体戦は、丘中学校と東御東部中学校が出場した。両校とも、県代表として精一杯戦うことができた。
丘中学校は初戦に富山県小杉中学校と戦い0対3で敗れた。東御東部中学校は初戦に石川県笠間中学校と戦
い0対1で惜敗した。技術面による差はなく、体格面での差が勝敗を決した。
また、男女個人戦では、全国大会出場選手が勝ち上がった。男子は、優勝3名、準優勝1名、3位が3名、
女子は、優勝1名、準優勝2名、3位4名であった。男女とも、県勢の健闘が光り、強化が成果として実って
きていることが実感できた。来年度以降も、引き続き強化に取り組んでいきたい。
(3)全国中学校体育大会
団体戦では、
男女ともに丘中学校が出場した。
男子は予選リーグを2勝0敗で決勝トーナメントへ進出し、
決勝1回戦では、広島県熊野東中学校に惜しくも敗れベスト8への進出はならなかった。女子は予選リーグ
を1勝1分で惜しくも決勝トーナメントへ進出することはできなかった。
個人戦では、北信越大会の上位者が多く、上位進出への期待が高まった。その中でも、60kg級の半戸君
(丘中学校)は、積極的な試合運びで勝ち上がり準優勝の素晴らしい結果を残すことができた。また、5位
にも男子 73kg 級百瀬君(丘中学校)
、ベスト 16 に女子 70kg超級山田さん(丸子北中学校)が入る等、健
闘を見せてくれた。
男女団体戦・個人戦に出場した選手全員が、本県の代表として全力で戦うことができた。例年、大舞台に
よる緊張からコンディション作りが思うようにいかなかい選手が多く、
初戦敗退者が多かったが、
今年度は、
大舞台においても実力が発揮できるよう強化練習会時に指導してきたことが結果につながったと考える。
2 今後の取り組むべき課題
県柔道連盟のお力添え頂いて各地区の新人戦終了後、県中学校男女柔道選手ジュニア特別強化事業として
「強化指定選手選考会・県中学校新人柔道団体優勝大会」を開催している。男女団体戦の上位入賞チーム、
男女個人戦3位入賞者及び優秀選手をジュニア強化指定選手とし、次年度の北信越大会ならびに全国中学校
柔道大会での上位入賞を目指し、強化練習・強化遠征を行っている。
第2章 各競技種目 ⅩⅣ 柔道競技
強化練習会は、1月~5月及び8月に実施しており、柔道競技の普及と発展のため、強化選手以外の選手
の参加も認めることにより、選手達が切磋琢磨しながら練習を行っている。
また、高体連にもお力添えを頂き、高校生と一緒に練習をしたり、高校生から技術指導をしてもらったり
している。
これらのジュニア強化指定選手制度は、
北信越大会と全国大会の結果から見ても、
成果が表れているので、
引き続き、現在の強化体制を継続していきながら、今年度以上の結果を出せるようにしていきたい。
一方、各地区における部員数の減尐については深刻な問題となっている。今後の柔道競技の普及について
専門部で対策を講じる必要があると考える。
さらには、中学校の運動部活動においては強化より先立つものは安全であり、安全な運営や環境づくりを
選手、
顧問に提供することを第一と考え、
中体連専門委員が医師等の協力を得ながら講習会等を実施する等、
安全指導及び安全対策を図ってまいりたい。
3 技術指導について
(1)はじめに
現在、本県中学校において柔道部として位置付き、各種大会に参加している学校や選手の数は減尐傾向に
ある。反面、各地区尐年柔道クラブや道場に所属し、各種大会に参加している選手は増加傾向にあり、競技
力においても向上している。
また、部活動における柔道部員への指導については、全日本柔道連盟による公認指導者資格制度がスター
トしたことにより、指導者資格を有しない教員(特例措置あり)は、指導が難しくなってきている。
このような現状の中、柔道指導全般については、
「柔道の基本指導」 (財団法人 全日本柔道連盟)
また、授業における柔道指導については、中学校武道必修化に向けて発行・制作された
「柔道 授業づくり教本~中学校武道必修化のために~」 (財団法人 全日本柔道連盟)
「柔道学習指導の手引き+DVD」 (県教育委員会スポーツ課)
「柔道学習指導の手引き 続編~けがをさせない指導法~+DVD」 (県教育委員会スポーツ課)
「DVD 柔道指導のための映像参考資料」 (文部科学省)
等があり、各校に配布され活用されている。さらに、市販されている指導書や映像資料も数多く、これらの
資料は部活動における柔道指導においても十分に活用できるものであり、本指導実践例においてもこれらの
指導書や映像資料を活用したいと考える。
(2)指導実践例
※参考資料 「柔道学習指導の手引き+DVD」 (県教育委員会スポーツ課)
「柔道学習指導の手引き 続編~けがをさせない指導法~+DVD」(県教育委員会スポーツ課)
① 柔道着の着方について
<柔道学習指導の手引き p46 p59>
<付属 DVD 1 柔道着の着方a 2 柔道着の着方b
44 試合1 柔道着の着方>
② 礼法について
礼法の意味…「礼は、社会生活を円滑にする一つの方法である。」
<柔道学習指導の手引き p48~49 p59~60>
<付属 DVD
5 座礼a 6 座礼b 7 立礼a 8 立礼b 13 正座の仕方>
③ 基本動作について
基本動作の習得は、さまざまな指導場面で繰り返し確認することが重要である。
<柔道学習指導の手引き p48 p56>
<付属 DVD
9 組み方
10 手だけで
35 進退動作a 歩み足
36 進退動作b 継ぎ足
37 体さばき・崩し 1
38 体さばき・崩し 2>
<柔道学習指導の手引き 続編 ~けがをさせない指導法~
p5 >
<付属 DVD 1 組み方 6 正しい技の受け方>
第2章 各競技種目 ⅩⅣ 柔道競技
④ 受け身について
受け身の考え方…「受け身は、柔道を楽しむための基本動作である。」
受け身の指導原理…「受け身指導では、初期段階の安全への配慮が重要である。」
<柔道学習指導の手引き p47 p50~54 p57~58 p60>
<付属 DVD 14 後ろ受け身1 15 後ろ受け身2
16 後ろ受け身3
17 後ろ受け身4
18 後ろ受け身5 19 横転横受け身
20 膝をついた状態からの受け身a
21 膝をついた状態からの受け身b
22 膝をついた状態からの受け身c
23 膝をついた状態からの受け身d
24 体落とし(足を踏み越えて受け身)a
25 体落とし(足を踏み越えて受け身)b 40 左膝をついた状態からの前回り受け身a
41 左膝をついた状態からの前回り受け身b 42 左膝をついた状態からの前回り受け身c
43 右膝をついた状態からの前回り受け身
45 試合2 受け身>
<柔道学習指導の手引き 続編 ~けがをさせない指導法~
p6~10 >
<付属 DVD 2 後ろ受け身
3 前受け身
4 前回り受け身
5 互いに組み、膝をついた状態から横受け身>
⑤ 投げ技について
投げ技とは、「崩し、作りなどの理合いに適った方法で、相手を投げる方法である。」
<柔道学習指導の手引き
p49 p52~55 p63~64 >
<付属 DVD 26 体落としa
27 体落としb
28 後ろさばきからの体落としa
29 後ろさばきからの体落としb
30 後ろさばきからの体落としc
31 後ろさばきからの体落としd
32 大外刈り1
33 大外刈り2
34 大外刈りシーソー
39 投げ技との関連>
<柔道学習指導の手引き 続編 ~けがをさせない指導法~ p11~20 >
<付属 DVD 7 膝車
8 体落とし
9 大外刈り
10 大内刈り
11 小内刈り
12 大腰
13 背負い投げ
14 払い腰
15 内股
16 送り足払い 17 支え釣り込み足>
⑥ 固め技について
押込技は、その技術自体が相手の身体を制するものであるから、固め技の柱となる。
身体のコントロール無しで、絞技を施すと「力技」になったり、怪我の危険性も生じてくる。
特に、発育発達期の中学生には、配慮が必要である。
<柔道学習指導の手引き
p47 p60~62>
<付属 DVD 46 袈裟固め
47 上四方固め
48 抑え技の自由練習a
49 抑え技の自由練習b
50 抑え技の自由練習c
51 抑え技の自由練習d
52 投げ技からの抑え技a
53 投げ技からの抑え技b>
4 安全指導・安全対策について
(1)指導者の責任と安全配慮義務
柔道は、相手との攻防を通して技を磨き、体力を高め、礼法などの伝統的な行動の仕方を身に付けること
ができ、青尐年の健全育成と生涯スポーツとしての役割を果たしている。
一方で、柔道は、相手を投げて、抑え込み、首を絞め、関節を挫く技を用いて攻防を行うので、他の運動
に比べ危険度が高いと考えられている。
したがって、柔道の指導者は、こうした運動特性を把握し、危険を予期し回避することによってケガや事
故防止に万全を期すことが求められている。
また、指導者には事故防止のために果たすべき安全配慮義務があり、違反した場合は、民法上の不法行為
責任を問われることになる。
安全配慮義務には、危険予見義務と危険回避義務がある。危険予見義務は、柔道における危険要因を予知、
予見して安全を確保する義務、危険回避義務は、柔道における危険要因を取り除いたり、要因が重なり合わ
ないようにしたりする等の危険を回避する義務を言う。
第2章 各競技種目 ⅩⅣ 柔道競技
(2)求められる指導者像
柔道の指導者は青尐年の健全育成や生涯スポーツの実現等、柔道を人間教育の一環とした指導をすること
が期待されている。しかし、その基盤として確かな安全指導と安全管理が求められている。
これからの指導者像は、柔道の専門的な知識・技能及び指導技術に優れ、柔道に対する情熱を持って青尐
年に対して愛情をもって指導し、事故を未然に防ぐとともに、万が一の場合においても適切に対処できる者
である。
(3)事故要因
柔道における事故の要因は多種多様にわたる一方、諸要因を分類する等し、一般化・パターン化すること
により対策が立てやすくなる。
【事故要因の分類例】
① 柔道の技や運動様式に内在する要因
(ⅰ)相手を投げ、抑え込み、絞め、関節を挫いて制する技そのもの
(ⅱ)その技を用いた攻防一体の運動様式
② 環境に内在する要因
(ⅰ)道場の広さや、畳と床のスプリングの状況
(ⅱ)柔道衣やサポーターなど
(ⅲ)気温、湿度などの自然条件
(ⅳ)道場の歴史や伝統、道場内の人間関係など社会的、人的条件
③ 競技者や指導者自身に内在する要因
(ⅰ)競技者の面から
a. 体力、知識、技能の程度
b. 技の掛け方や受身の行い方等
c. コンディション
d. 性格、情緒、規範意識等
e. 既往歴や健康状態など
(ⅱ)指導者の面から
a. 専門的な知識、技能、指導技術の程度
b. 安全指導、管理の徹底等
(4)柔道における重篤なケガや事故
柔道における大きなケガや重大事故は、投げられた際に後頭部を強打し、脳表面の血管が切れて出血する
急性硬膜下血腫と頭から突っ込み首の骨(頸椎)や頸髄を損傷する場合が多いことに特徴がある。
いずれも四肢の運動麻痺等の重い障害を残したり、時には命を落としたりすることがあるが、その要因の
ほとんどは、無謀な技のかけ方や未熟な受身になる。
① 柔道による重篤な頭部外傷の事故の特徴
(ⅰ)重篤な事故は、中学1年や高校1年等の初心者に多い。
(ⅱ)投げられた際、受身がとれずに後頭部打撲に伴う事故が多い。
(ⅲ)頭部への直接な打撲がなくても、頭部が激しく揺さぶられることにより生じる「加速損傷(かそくそん
しょう)」により、脳静脈断裂(のうじょうみゃくだんれつ)、急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)
を発症することがある。
(ⅳ)頭部への打撲が繰り返されることにより、重篤な損傷になること(セカンドインパクト・シンドローム(SIS))
がある。
(ⅴ)刑事事件、民事事件に発展し、指導者に対する厳しい判決がくだされた事例がある。
第2章 各競技種目 ⅩⅣ 柔道競技
② 重篤な事故(32 件)の発生状況
頭部外傷事故 26 件の技別件数
大内返し
(ⅰ)頭部外傷事故(26 件)の状況
・後頭部の打撲が 16 件で最も多い。
・投げ技では、
「大外刈り」が最も多く、次いで、
「大内刈り」
、
「背負い投げ」の順に多い。
・受け身やブリッジ後に発症する例もある。
不明
小内刈り
小外刈り
大外刈り
払い腰
体落とし
背負い投げ
(ⅱ)頭部打撲における初期症状
・初期症状は、意識障害、頭痛、嘔吐、気分不良等がある。
・経過中においては、全例で意識を消失。
・意識が消失する前に、本人から頭痛、嘔吐、気分不良を
訴える事例がある。指導者は注意を要する。
頭部打撲における初期症状
気分不良
嘔吐
頭痛
(ⅲ)頭部打撲から意識消失までの時間
・頭部打撲から意識消失までの時間は、短時間が半数を占める。
・打撲直後には意識があっても、数十分~数時間後に意識を失う
場合もある。
・2回目に致命的な頭部外傷を起こした事例がある。
* セカンドインパクト・シンドロームの疑い
大内刈り
意識障害
頭部打撲から意識消失までの時間
なし
5分以内
不明
1~
6時間
6~
60分
(5)ケガや事故を防ぐための安全指導・安全対策
① 正しい受身が、脳を護る!
受身の目的は、体幹部への衝撃緩和になる。特に顎(あご)を引いた正しい受身は、後頭部の直接打撲や
加速損傷による外傷を避けるために重要であり、柔道を行う上で誰もが確実に身に付けなければならない。
要するに、受身は事故防止の基本であり、特に初心者の段階では、繰り返し練習することで正しい動作を
習得する必要がある。
また、受身の練習は初心者だけが行えばよいということではなく、技能レベルに応じた練習が欠かせず、
上達するに伴って強くスピードのある技や予測が難しい連絡や変化する技をかけられることが多くなるので、
どの様な技にも安全に対応できる受身の習得が必要になる。
したがって、受身が十分に習得できていない段階での対外試合等は避けるべきである。
第2章 各競技種目 ⅩⅣ 柔道競技
(ⅰ)受身習得の段階別指導例
段階1:単独で受身ができる
段階2:相手に圧力をかけられて単独で受身ができる
段階3:相手に投げられて受身ができる
段階4:連絡する技で投げられて受身ができる
段階5:自分の技を返されたとき受身ができる
ヘッドキャップ
(ⅱ)防具(安全具)の使用
初歩の段階でヘッドキャップの使用は、安全対策として評
価されているが、あくまで基本は正しい受け身を習得する
ことが大切となる。
② 正しい技を身に付ける!
柔道のケガや事故等の原因が、強引な技の仕掛けや無謀な体勢での防御にあるため、まずは、正しい技を
身に付けるための打込が大切となる。
(ⅰ)打込(うちこみ)
打込は単にかけ数の消化ではなく、1回1回の技を正しい崩しや体捌きを意識しながら行わなければなら
ない。また、受が釣り手だけを掴み、引手を離したのでは、取の練習を阻害するだけでなく、受にとっても
大切な正しい応じ方の練習にならず、危険防止にも役立たないことになる。
(ⅱ)約束練習(やくそくれんしゅう)
打込で身に付けた技を用いて約束練習により攻防の行い方を練習する。約束練習は、技能レベルに応じた
多様なパターン練習であり、安全に乱取ができるために省略することはできない。約束練習を行わずに乱取
に進むと、応じ方が分からずに腰を引いて腕を突っ張る防御に陥りやすくなり、その結果、相手が無理な体
勢から強引に技をかけようとするため、事故を誘因することになりかねない。
(ⅲ)乱取(らんどり)
乱取は、攻撃と防御を表裏一体で行う実践練習で、柔道の中核をなす練習法になる。それだけに多くの練
習時間が割り当てられるため、ケガや事故が多発しやすい。
したがって、打込や約束練習で正しい技を身に付け、安全な掛け方をできるようにした上で、目的や相手
に応じた乱取を行うことが、ケガや事故の防止をする上で大切になる。
特に、自分よりも体力や技能レベルの低い相手を投げる場合は、引き手を離さずに相手が受身をしやすく
投げる配慮が不可欠となる。
【相手に応じた「三様」の乱取例】
○ 技能程度の高い相手の場合・・・腕を突っ張ったり、腰を引いたりしない。
投げられて当然と思い、臆することなく積極的に技をかける。
相手の崩しや体捌き、掛け方や受身の行い方などを学ぶ。
○ 技能程度が同等の相手の場合・・勝負にこだわり過ぎず、しかも最善の技で攻防を尽くす。
○ 技能程度の低い相手の場合・・・相手のレベルに配慮し、技をかけやすくしたり、技を受けてやったり
する等、相手を引き立てる。
正しい崩しや体捌きで技を掛ける等、自ら課題を持って練習する。
【安全面でのポイント(注意点)
】
1 正しく組む。
2 受は、技をしっかり受ける。横向きに受けない。
3 受は、潔く受身をする。手や肘を畳につかない。
4 取は、投げたら相手を支える。引き手を離さない。
5 取は、正しく技をかける。
頭を突っ込まない、同体で倒れない、極端に低い姿勢でかけない、初心者には反対の技をかけない。
第2章 各競技種目 ⅩⅣ 柔道競技
③ 脳震盪(のうしんとう)を軽視しない
脳震盪で多く見られる症状は、急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)にもあてはまる。
症状には、見当識障害やボーとする等、軽い意識障害と区別がつかない症状や、頭痛、嘔吐等、頭蓋内圧
亢進(ずがいないあつこうしん)/脳ヘルニアを疑う症状も含まれるため、発症直後は、それら重大な外傷を疑う
必要があるので、すみやかに医師に受診し、画像検査(CT又はMRI)を受け、頭部に小出血等、異常がな
いことを確認する必要がある。
【脳震盪への対応】
脳振盪とは、外傷による精神状態の変化である。
症状には「うつろな眼差し」
、
「指示に従えない」
、
「すぐに気が散る」
、
「自分がどこにいるか分から
ない」
、
「行動がおかしい」
、
「うまくしゃべれない」
、
「取り乱している」
、
「意識障害」等が挙げられる。
下記の症状や兆候が一つでも見られた場合は、次の対応が必要になる。
1 その試合または練習に戻ってはならない。
2 一人にせず、経過を観察する。
3 医療機関を受診させる。
4 段階を踏んで 1 週間以上かけて競技に復帰させる。
* 短期間に繰り返して脳震盪を起こした選手において、死亡事故を含む重大事故が多発している。
【セカンドインパクト・シンドローム(SIS)】
1 脳振盪を繰り返すことで重篤な脳損傷が起こること。
2回目に、致命的な脳の腫れが起こる。頭部外傷を繰り返すことで高次脳機能障害を発症。
2 初回の頭部外傷で薄い硬膜下血腫があると、次の外傷が軽くても重大な出血を起こす。
* 頭部外傷後の練習復帰は慎重にすべきであり、頭痛等の自覚症状があれば復帰は控える。医師の
診断・指示をもらうようにする。
④ 練習前の体調チェック
頭痛や嘔気は、頭の中の出血や脳圧亢進で起こる。微小な硬膜下血腫があると、後に軽い打撲でも重い出
血をきたすことがある。重大な事故を未然に防ぐために、頭痛、嘔気、気分不良等を訴えることがあれば、
練習を許可せず、医師への受診を勧める。
⑤ 緊急時の連絡体制
万が一、ケガや事故等が起きた時には、一刻も早い応急処置と関係機関や関係者への通報・連絡が必要に
なる。それら初期行動の遅れが、被害を拡大させたり事態の悪化を招いたりする。
また、その結果、事後処理等でトラブルの原因となることがある。
5 おわりにあたり
~尐年(中学)柔道指導者の心構え~
尐年対象の柔道指導者こそ、未来の柔道を支えることとなる。科学の目と実践力を養うことは指導の基本
といえる。柔道自体の「魅力」が問われる時代になった。
「スポーツの実践の必要性」を明確にしながら、で
きるだけその競技に長く親しませることの指導方法の確立は重要な課題である。
子どもたちの未来に役立つ指導が望まれる。そして、子どもたちの身体は、日々成長を続けている。指導
者は、その年齢に合わせた指導を熟知し、矛盾のない一貫した指導を展開しなければならない。
柔道ルネッサンス運動
江戸末期に現在の神戸市東灘区で生まれた嘉納は、東京大学在学中に柔術を学
び、柔道を作り上げた。
その後は、学習院教頭、東京高等師範学校校長などを歴任し、自身が柔道の基本
理念として唱えた「精力善用」「自他共栄」を掲げる現在の灘中学校・高等学校の設立
にも尽力した。
柔道の父 嘉納治五郎
(1860-1938)
嘉納は柔道における教育的側面を重視して、人間教育としての柔道を強調した。し
かしながら、柔道を世界に普及させていく過程において、「強い柔道」を実戦で証明す
る必要があり、柔道は徐々に当初の目的を逸脱してきたため、近年、「嘉納師範の精
神に帰ろう」という柔道ルネッサンス運動が行われている。
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