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富 山 県 氷 見 市

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富 山 県 氷 見 市
case.5
富
山
県
氷
見
市
R E S A S を 使 った 分 析 例
1 人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
P74
2 安 定した 雇 用 創 出 に 向 けた 産 業 構 造 分 析
P84
Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved.
氷 見市の概要
富山県の北西部、能登半島の基部に位置する人口49,742人の市。
ひみ寒ぶりなどの
全国的に有名な海の幸をはじめとした食資源のほか、歴史的資源や温泉などの観光
資源も有している。
氷見市は、
富山県の北西部、
能登半島の基部に位置している。
日本海側有数
■国内における位置
の氷見漁港には、
全国的に有名な
「ひみ寒ぶり」
や
「マグロ」
「
、氷見いわし」
など、
氷見市
ほかにも、
氷見牛や氷見米、
地酒、
ワインなど、
豊富な食資源に恵まれている。
石川県
石川県
富山県
長野県
四季を通じて豊富な種類の魚が水揚げされ、
氷見漁港場外市場
「ひみ番屋街」
には、
新鮮な海の幸を堪能しに年間約115万人の観光客が訪れる1。
魚介類の
岐阜県
また、日本で初めて発見された洞窟住居跡「大境洞窟」や、万葉の歌人
大伴家持ゆかりの史跡などの歴史的資源、
「能登半島国定公園・氷見温泉郷」
高岡市
などの、
観光資源にも恵まれている。
射水市
富山市
■ひみ寒ぶり
1 資料:富山県観光・地域振興局観光課「平成26年富山県観光客入込数(推計)」
■主要データ
面
積 ※1
230.56㎢
世 帯 数 ※2
17,686世帯
人
口
※2
49,742人
事業所数
※4
2,395
人口密度
※3
215.74人/㎢
従業者数
※5
18,314人
出典/※1 平成27年全国都道府県市区町村別面積調 ※2 住民基本台帳人口(平成28年2月1日現在)
※3 上記記載の
「人口÷面積」
にて算出 ※4 平成26年経済センサス-基礎調査
(事業内容等不詳を含まず)
※5 平成26年経済センサス-基礎調査(男女別の不詳を含む)
RESAS活用の背景/活用状況
「氷見市人口ビジョン」及び「氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」策定の際の
基 礎データとして、R E S A Sを積 極 的に活 用している。また、戦 略 策 定 後は、施 策
実施に向けた産業構造の把握等にも活用している。
氷見市では、
「市民と一緒に政策をつくり上げていく地域づくり」
を理念として、各年代に向けたワークショップ2や「市民要望
システム3」の導入などを通じ、市民と協働した政策づくりを実現するという、全国的にも類を見ない試みを行っている。
「氷見市
人口ビジョン」及び「氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定に当たり、市長政策・都市経営戦略部において、RESASが
積極的に活用された。
「氷見市人口ビジョン」
では、市民の希望をかなえ、持続可能な社会を実現するため、独自の推計によって
「ライフステージ
ごとの人口移動」を作成し、それぞれのライフステージごとの人口減少対策の方向性を定めた「15の観点」を設定した。
この
推計はRESASで提供されたデータをもとに各種統計調査等を組み合わせて算出したものであり、
「氷見市まち・ひと・しごと創生
総合戦略」
のコアとなっている。
また、
「氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」
の策定に当たっては、
「対話と共創」
をキーワードに、
約4ヶ月の間に、
約1,500人
との対話を行い、約2,000件のつぶやきを集め、様々な視点やアイデアを活かしている。
「氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定後は、
「安定した雇用を創出する」
という基本目標を具体的に実施していく
ことを目的に、産業構造の把握等にRESASを活用している。
2 市民と行政が協働して考える
「新市庁舎デザインワークショップ」
、
市内21地区で開催される
「市長のまちづくりふれあいトーク」
、
理工系学生が
“地方の社会課題”
を
抽出・議論・提案する
「リ・コクリエーションキャンプ」
などを行っている。
3 市ホームページにて市民の要望と市の対応状況を
「見える化」
することで、
市民参加と協働のまちづくりを推進している。
72
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R E S A S の 分 析 に よって 得 られ た 内 容
R E S A Sの人口移 動 分 析をきっかけに、ライフステージの変 化に伴う人口移 動に
応じて人口減少対策を立案していくことの重要性を認識し、戦略策定に取り入れ
ていくことができた。
RESASを活用したことで、
ライフイベントごとに発生する人口移動に着目し、
それぞれに対応する人口減少対策を
立案していくことの重要性を認識し、戦略策定に取り入れていくことができた。
「氷見市人口ビジョン」の策定に当たっては、RESASの人口移動のデータをもとに独自の人口推計を作成し、
氷見市における
「ライフステージごとの人口移動」を把握することができた。それぞれのライフステージに対応
して設定された「15の観点」に基づいた人口減少対策は、
「 氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本目標
に盛り込まれている。
また、
「 氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」内の「安定した雇用を創出する」
という基本目標を実施するに
当たり、地域経済循環の分析を行った。
これにより、氷見市では地域外からの所得に依存し、かつ資金循環率が
低いことが分かった。
また、地域経済を活性化する施策として、漁業を中心とした農林水産業と食料品産業の
連携が有効であることが示唆された。今後は、総合戦略の中で、
「日本の食文化をリードする」
ことを掲げており、
食文化×女性の感性による新産業創出を進め、6次産業化の加速と女性が就きたい仕事の創出を支援していく。
R ESAS
の
活用風 景
■氷見市役所
■RESAS活用検討会の様子
■RESASデータをもとに産業施策を検討する様子
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R E S A S を 使 った 分 析 例
1
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
●活用の背景
氷見市では人口ビジョンの策定に当たり、
将来の数値目標を定めるだけでなく、
人口の社会増減とライフ
イベントとの関係に着目してその増減数と理由を把握し、
それぞれの状況に対応する具体的な施策を策定
することが必要であるとして、
独自の調査、
推計を行うこととした。
調査、
推計を進めるに当たり、
RESAS内の
人口移動データ等を活用した。
●分析内容
第5-1-1図は、氷見市の人口推計を示したものである。
これを見ると、国立社会保障・人口問題研究所
(社人研)
の推計では、
2060年の人口は21,867人と、
現在の半分以下になることが分かる。
第5-1-2図は、富山県内の自治体における、人口の自然増減と社会増減の影響度を示したものである。
これを見ると、氷見市は富山県の自治体の中でも社会増減の影響を強く受ける傾向にあることが分かり、
人口の維持には社会流出の緩和が必要であると考えられる。
第5-1-3図は、2014年の氷見市の人口を、15年前の同一年代の人口4と比較した割合を示したもので
ある。
これを見ると、
22歳の就職期で割合が低くなり始め、
30歳前後で6割程度となっていることが分かる。
この結果から、
就職を機に流出した人口が、
氷見市に戻ってきていないことが推察される。
第5-1-4図は、2005年から2010年にかけての氷見市の人口移動を性別年代別に示したものである。
これを見ると、進学や就職で市外に転出した人口が、20代後半で氷見市内に戻っていないことが分かる。
また、
その傾向は女性において特に顕著で、
30代でも結婚や住居選択等を要因とする転出増加が見られる。
これは出生数低下の一因となっていると考えられ、社会減少が自然減少を招く負のスパイラルが生じて
いると考えられる。
第5-1-5図は、氷見市の生産年齢人口の昼夜間比率を示したものである。
これを見ると、男性の生産
年齢人口の約半数程度が他市町村に通勤・通学していることが分かる。
また、女性は男性に比べると他市
町村通勤・通学者の割合が低い。
「従業も通学もしていない者を除いた割合」においても、同様の傾向が
見られる。
この結果及び第5-1-4図の女性が市外へ流出している状況から考えると、
「 氷見市以外で
働いている女性、
もしくはその世帯は、結婚や住居購入等の理由で他地域へ転居する」
ことが推察される。
以上の分析等をもとに、氷見市ではライフステージごとの人口移動について分析している。
第5-1-6図は、RESASの人口移動データと各種統計調査等により、氷見市の中学生が卒業後、
ライフ
ステージごとに、
どこに居住・通勤通学をするか、独自の推計を示したものである。
これを見ると、
「2060年
には氷見市の人口は現在の半分以下になる」
という推計について、中学卒業時を起点に、
その後の進学、
就職、転居等でどのような人口移動が起こり、一世代のサイクルを経た後に、氷見市で生まれる子どもが
どの程度まで減少するのか、具体的な過程が分かる。
独自推計によると、
氷見市で卒業した中学生450人は、
そのうち180人が氷見市内の高校へ、
残り270人が
氷見市外の高校などへ進学する。
高校を卒業後、
40人は氷見市内で就職し、
170人は氷見市に住みながら
4 28歳であれば15年前の13歳。
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R E S A S を 使 った 分 析 例
1
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
市外の大学などへ進学し、240人は氷見市を出て市外に住み、市外の大学などへ通うことになる。更に
大学卒業後、155人は氷見市に住みながら氷見市で働き、125人は氷見に住みながら市外に就職などを
する。
この時点で、中学を卒業した450人のうち、氷見市内に残ったのは280人で、残り170人はそのまま
市外で就職などをして、氷見には戻らない。
その後、30歳頃には、氷見市内に残った280人のうち、25人が
結婚・子育てを機に、
職場の近くに引っ越すなど氷見市外へと転居する。
40歳を過ぎる頃には、
雇用や家庭が
安定して移動が少なくなる。更に時を経て、75歳頃には氷見市在住者は215人に、85歳頃には160人に
まで減少する。
この間、支援や介護が必要な人の割合は、約1割から約6割へと増えている。
また、30歳頃に
氷見市内に住んでいる280人のうち半数の140人が女性と仮定すると、氷見市の合計特殊出生率は
1.375であることから、
生まれる子どもの数は190人となり、
一世代を経た後の子どもは、
450人から190人
と、
半分以下に減ってしまうことになる。
氷見市では、
このような人口の流れを把握した上で、
市民の希望をかなえ、
持続可能な社会にするための
施策のポイントとして
「15の観点」
を設定した。
それぞれのライフステージにおいて想定される人口流出の
要因を可視化し、
「しごと」、
「ひとの流れ」、
「結婚」、
「出産」、
「子育て」、
「安心な暮らし」
に分類して人口減少
対策を掲げている。
第5-1-7図は、2060年の氷見市の人口ピラミッド及び年間社会純増減数の推移を示したものである。
これを見ると、
社人研の推計では2060年には逆三角形のピラミッドとなることが分かる。
この人口構成では
地域社会の持続可能性は低くなるため、
氷見市では、
寸胴型の人口ピラミッドの形成を目標としている6。
● 得 ら れ た 結 論・今 後 の 展 開
担当者からは、
「RESASを活用して人口動態の分析を行ったことで、
ライフステージの変化、
とりわけ進学
時の人口流出が大きく、
その後、
雇用がないために氷見市内に戻ってこられないという課題が明確になった。
また、
RESASの人口移動分析をきっかけに、
ライフステージの変化に伴う人口移動に応じて人口減少対策を
立案していくことの重要性を認識し、
戦略策定に取り入れていくことができた。
」
との発言があった。
氷見市の
人口ビジョン策定に当たっては、
RESASの性別年代別人口移動分析によって社会増減のポイントを把握し、
更に各種統計調査を加えて分析を発展させることで、
ライフイベントに伴う人口移動の流れと、
ライフステージ
に応じた人口減少対策を考えることができるようになった。
これは「氷見市15の観点」
として、人口目標の
策定の上で核をなしているほか、
「氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」
にも盛り込まれている。
また、氷見市では、
「氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」
を市民と共有し、人口構造や「15の観点」
の
理解を促しながら、市民が氷見市の未来に向き合い、
ともに考え、
自ら行動する
「おらっちゃ創生(MY地方
創生)」の推進に取り組んでいる。
この実施においては、
「 対話と共創」をキーワードに市民のつぶやきを
集めるとともに、仮説検証や現状分析の材料として、RESASの分析を活用していく方針である。
5 合計特殊出生率を30代までの女性の出生率と仮定している。
6 具体的には15の観点に基づく人口減少対策により、150人の社会純増を目指している。
詳細は
「氷見市人口ビジョンのポイント」
を参照
http://www.city.himi.toyama.jp/ct/other000014300/kamishibai01.pdf
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1
R E S A S を 使 った 分 析 例
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
■(第5-1-1図)人口マップ 将来人口推計 総人口推計
[富山県氷見市] 再編加工
氷見市の人口シミュレーション推計
社人研推計準拠 :全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計
日本創成会議推計 :全国の総移動数が、平成22年から平成27年の推計値と概ね同水準でそれ以降も推移すると仮定した推計
(日本創成会議推計準拠)
シミュレーション①:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーション
シミュレーション②:合計特殊出生率が人口置換水準
(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)
まで上昇し、
かつ人口移動が均衡したとした
(移動がゼロとなった)
場合のシミュレーション
55,000
単位:人
50,000
社人研推計
日本創成会議推計
シミュレーション①
シミュレーション②
45,000
シミュ①
+人口移動無し
40,000
シミュレーション②
3 3 ,4 2 7 人
35,000
社人研推計
+出生率上昇
30,000
日本創成会議推計
3 0 ,7 2 5 人
シミュレーション①
2 7 ,0 1 2 人
25,000
社人研推計
2 1 ,8 6 7人
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
2055
国立社会保障・人口問題
研究所(社人研)
の推計で
は 、2 0 6 0 年 の 人 口 は
21,867人と、現在の半
20,000
2010
Poi n t !
2060
出典:RESAS
分以下になる。
■(第5-1-2図)人口マップ 将来人口推計 自然増減と社会増減の影響度(将来)
[富山県氷見市]
Poi n t !
氷見市は富山県の自治体
の中でも社会増減の影響
を強く受ける傾向にある。
人口の維持には社会流出
の緩和が必要であると考
えられる。
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R E S A S を 使 った 分 析 例
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
■(第5-1-3図)15年前と比較した同年代の人口割合(氷見市)
出典:
「平成11年富山県の人口」及び「平成26年富山県の人口」
をとやま統計ワールド経由で取得
Poi n t !
2014年の氷見市の人口
を、15年前の同一年代の
人口と比較すると、22歳
の就職期で割合が低くな
り始め、30歳前後で6割
程度となっている。就職を
機に流出した人口が、氷
見市に戻ってきていない
ことが推察される。
氷 見市
の
■唐島祭
風景
■定置網漁
■氷見漁港場外市場「ひみ番屋街」
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人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
R E S A S を 使 った 分 析 例
■(第5-1-4図)人口マップ 人口の社会増減 年齢階級別純移動数の時系列分析
[富山県氷見市] 再編加工
150
99
100
50
0
男性
進学時に流出した数が戻らない。
特に女性が戻らない
女性
46
24
22
12
5
-5
-1
-4
-34
-54
-50
-74
-100
-150
0
-2
-14
-3
12
21
8
19
18
9
-19
-5
-28
-13
-19
-51
-58
結婚や住居選択で
流出していると考えられる
-193
-250
19
-30
-170
-200
10
-257
進学や就職等で市外に
流出すると推察される
-300
-324
-350
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
44 →45 49
49 →50 54
54 →55 59
59 →60 64
64 →65 69
69 →70 74
74 →75 79
79 →80 84
84 →85 89
89 →90
歳
39 →40 44
歳
35
歳
歳
34 →35 39
24 →25 29
歳
歳
30
20
19 →20 24
歳
歳
25 29 →30 34
15
9 →10 14
歳
14 →15 19
5
4 →5 9
歳
歳
10
0
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
Poi n t !
進学や就職で市外に転出した人口が、20代後半で氷見市内に戻っていない。
女性において特に顕著で、30代でも結婚や住居選択等を要因とする転出増加が見られる。
78
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R E S A S を 使 った 分 析 例
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
■(第5-1-5図)氷見市の昼夜間人口比率(年齢別グラフ)
[夜間人口に占める他市区町村で従業・通学者割合]
出典:平成22年国勢調査
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
男性
女性
0.0%
[上記の分母から従業も通学もしていない者を除いた割合]
出典:平成22年国勢調査
60.0%
50.0%
40.0%
Poi n t !
30.0%
男性の生産年齢人口の約半数
20.0%
10.0%
程度が他市町村に通勤・通学し
ている。
男性
女性は男性に比べると他市町
女性
村通勤・通学者の割合が低い。
0.0%
「従業も通学もしていない者を
除いた割合」においても、同様
の傾向が見られる。
79
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R E S A S を 使 った 分 析 例
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
■(第5-1-6図)氷見市の
「ライフステージごとの人口移動」
※450人
(平成23年度∼平成26年度に氷見市内の中学校を卒業する一学年当たり人数)
を基準とした人口移動のおおよその推計 出典:氷見市人口ビジョン
他の地域
氷見市
氷見市
住居
他の地域
他の地域
氷見市
通勤・通学
450
190人の
0
歳
氷見市の中学生
450人が卒業!
子ども
450
氷見市に住みながら
270人は
市外の高校などへ!
270
180人は
氷見高校へ!
15
歳
180
中学を
卒業
18
歳ごろ
240人は
市外の大学などへ!
高校を
卒業
氷見市に住みながら
240
170人は
市外の大学などへ!
170
40人は
氷見市で就職!
40
22
歳ごろ
大学を
卒業
170人は
市外で働く!
155人は
氷見市で働く!
氷見市に住みながら
170
125人は
市外で働く!
125
155
30
歳ごろ
195
100
155
40
歳ごろ
255
記載
省略
215
160
65
歳ごろ
75
歳ごろ
85
歳ごろ
※ 氷見市教育委員会資料
(平成23年度∼平成26年度の中学校卒業生の進路)
、
RESAS
『富山県氷見市 年齢階級別純移動数の時系列分析』
、
S55∼H22年国勢調査、
とやま統計ワールド経由で
取得した「平成11年富山県の人口」及び「平成26年富山県の人口」、H25∼H27ハローワーク氷見の資料、RESAS経由で取得した『人口動態調査』、公益財団法人 生命保健文化
センター資料(元データは厚生労働省「介護給付費実態調査月報(平成26年7月)」総務省「人口推計月報(平成26年7月)」)、国立社会保障・人口問題研究所の氷見市の生残率、住民
基本台帳のH26出生数をベースとしてヒアリング等を踏まえて推計を実施。数値については、一桁目を5か0とするレベルでの整理を実施。
80
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1
R E S A S を 使 った 分 析 例
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
希望をかなえ、持続可能な社会にするための
「氷見市15の観点」
出典:氷見市人口ビジョン
Uターン
I・Jターン
他の地域
氷見市
氷見市
住居
氷見市
他の地域
他の地域
他の地域
氷見市
通勤・通学
他の地域
他の地域
450
190人の
0
歳
15
子ども
450
XXX
15
1 -2
歳
270
180
13
1
14
240
18
歳ごろ
1
高校を
卒業
XXX
1
40
170
22
3
2
中学を
卒業
歳ごろ
大学を
卒業
9 10
170
125
155
XXX
30
4
195
11
6
6
100
155
40
歳ごろ
7
255
記載
省略
XXX
歳ごろ
215
65
歳ごろ
9 10
12
XXX
75
歳ごろ
8
160
85
歳ごろ
※ 氷見市教育委員会資料
(平成23年度∼平成26年度の中学校卒業生の進路)
、
RESAS
『富山県氷見市 年齢階級別純移動数の時系列分析』
、
S55∼H22年国勢調査、
とやま統計ワールド経由で
取得した「平成11年富山県の人口」及び「平成26年富山県の人口」、H25∼H27ハローワーク氷見の資料、RESAS経由で取得した『人口動態調査』、公益財団法人 生命保健文化
センター資料(元データは厚生労働省「介護給付費実態調査月報(平成26年7月)」総務省「人口推計月報(平成26年7月)」)、国立社会保障・人口問題研究所の氷見市の生残率、住民
基本台帳のH26出生数をベースとしてヒアリング等を踏まえて推計を実施。数値については、一桁目を5か0とするレベルでの整理を実施。
81
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1
R E S A S を 使 った 分 析 例
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
ライフステージに応じた人口減少対策を考える
「氷見市15の観点」
出典:氷見市人口ビジョン
氷 見 市 15 の 観 点
1
【しごと】
氷 見 市 に高 卒 新 卒 者 が 就きた い 仕 事 を 増 や す
1 -2
【ひとの流れ】
他 地 域 からの 氷 見 高 校 入 学 者 を 増 や す
2
【ひとの流れ】
2 0 代 の Uターン を 増 や す
3
【しごと】
氷 見 市 に2 0 代 の 方 が 就きた い 仕 事 を 増 や す
4
【ひとの流れ】
氷 見 市 から他 地 域 に 通 勤 する 方 の 転 居 を 減らす
5
【しごと】
6
【子育て】
子 育ての 魅 力で 氷 見 市 に引っ越 す 方 を 増 や す
7
【ひとの流れ】
定 年 後 の Uターン を 増 や す
8
【安心な暮らし】
長 生 きを する & 健 康 寿 命 を 伸 ば す
9
【ひとの流れ】
2 0 ∼ 4 0 代 の I Jターン を 増 や す
10
【しごと】
2 0 ∼ 4 0 代 の I Jターン 者 が 就 きた い 仕 事 を 増 や す
11
【ひとの流れ】
他 地 域 から氷 見 市 内 に 通 勤 する 方 の 転 居 を 増 や す
12
【ひとの流れ】
定 年 後 の I Jターン を 増 や す
13
【結婚】
婚姻数を増やす
14
【出産】
出生数を増やす
15
【ひとの流れ】
未 就 学 児 の 親 子で 氷 見 市 に引っ越 す 方 を 増 や す
4
の た め に 、氷 見 市 に 子 育 てと 両 立 す る 仕 事 を 増 や す
Poi n t !
「ライフステージごとの人口移動」を把握した上で、市民の希望をかなえ、持続可能な社会にするための
施策のポイントとして
「15の観点」
を設定した。それぞれのライフステージにおいて想定される人口流出の
要因を可視化し、
「しごと」、
「ひとの流れ」、
「結婚」、
「出産」、
「子育て」、
「安心な暮らし」に分類して人口減少
対策を掲げている。
82
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1
R E S A S を 使 った 分 析 例
人 口 ビ ジョン 策 定 の た め の 分 析
■(第5-1-7図)人口ピラミッド 年間社会純増減数の推移
出典:氷見市人口ビジョン
Poi n t !
社人研の推計では、2060年にかけて逆三角形のピラミッドへと推移していく。
この人口構成では地域社会の
持続可能性は低くなる。
氷見市では、
寸胴型の人口ピラミッドの形成を図り、
人口の社会増減目標を設定した。
H im iStatについて
氷見市では、
「 氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」で策定した戦略の達成状況の検証を実施するために、未来志向の
自治体経営システム「HimiStat(氷見版CitiStat7)」の構築準備をしている。
「HimiStat」によって、基本目標の成果指標等の
集計と検証を短期サイクルで行い、
データをもとに、関係者との対話を行い、持続的な改善に取り組むことを目指している。
7 「CitiStat」
とは、成果指標等に関する現状の分析・検証を短期的な周期で行い、持続的な改善を行うシステムである。
83
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R E S A S を 使 った 分 析 例
2
安 定した 雇 用 創 出 に 向 けた 産 業 構 造 分 析
●活用の背景
氷見市では、
進学や就職を機に多くの若者が市外に流出しており、
その後、
流出した若者が戻らないことが人口
減少の大きな課題となっている。
「氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略」
では、
基本目標Ⅰに
「安定した雇用を
創出する」
ということを掲げており、
若者や子育て世代が就きたいと考える魅力的な仕事の創出を目指している。
そこで、
RESASを活用して、
氷見市の現状の産業構造を把握し、
重点的に振興すべき産業の検討を行った。
●分析内容
第5-2-1図は、氷見市の地域経済循環図8を示したものである。
これを見ると、
「分配(所得)」
では地域
外からの流入が多く、
氷見市民は市外に働きに出て所得を得ている割合が高いことが分かる。
また、
「支出」
については地域外への支出が多く、所得が地域内の消費につながらず、地域外へ流出していることが示唆
される。更に、氷見市の地域経済循環率は、富山県内他市町村の中でも低く、地域外からの所得に依存する
構造となっていることが分かる。
第5-2-2図は、氷見市の産業別付加価値額を示したものである。
これを見ると、付加価値額が大きい
産業は、
サービス業、一次金属、卸売・小売業などであることが分かる。
また、農林水産業は、付加価値額は
さほど大きくないが移輸出入額は黒字であり、域外から稼いでいる産業といえる。
第5-2-3図は、
氷見市の産業別移輸出入額を示したものである。
これを見ると、
一次金属、
その他の製造
業、
金属製品、
農林水産業、
電気機械、
繊維で移輸出入額が黒字になっていることが分かる。
一次金属、
金属
製品などは、
本社を域外に持つ企業の工場などであり、
地場産業とはいえないため、
氷見市の特徴である農林
水産業が、
地場産業として育成の可能性があるといえる。
これを見ると、従業者数
第5-2-4図は、氷見市の産業別修正特化係数9を対数変換し示したものである。
では、漁業の修正特化係数が高いことが分かる。
第5-2-5図は、氷見市の産業について、影響力係数・感応度係数を示したものである。
これを見ると、
氷見市の農林水産業は影響力係数・感応度係数ともに低いことが分かる。一方、食料品については、地域
への波及効果の高さを示す影響力係数が1を超えているため、農林水産業(特に漁業)
と食料品で連携
することで、両産業の労働生産性の向上が期待でき、所得も上がり、魅力ある職となる可能性がある。
第5-2-6図は、氷見市内の宿泊業及び飲食店の事業所数を示したものである。
これを見ると、氷見市の
と な み し
宿泊業の事業所数は、近隣の高岡市、砺波市、小矢部市と比較すると多いことが分かる。一方、飲食店の
事業所数は、高岡市と比べると圧倒的に少なく、砺波市をも下回っていることから、氷見市には宿泊客を
呼び込める素地はあるものの、飲食店が少なく、消費が地域内にとどまっていない可能性が示された。
第5-2-7図は、氷見市の観光入込客数と宿泊者数の推移を示したものである。
これを見ると、観光
入込客数は増えているが、宿泊者数は減少傾向にあることが分かる。
8 地域経済循環図とは、
地域のお金の流れを生産
(付加価値額)
、
分配
(所得)
、
支出の三段階で
「見える化」
したものである。
9 ある産業の従業者比率を全国の従業者比率で基準化したものを特化係数という。
例えば2.0であれば、
全国の構成比の2倍の
集積があることを意味する。
しかし、
これには国際交易の存在が反映されていないため、
全国レベルでの自足率を乗じたものを
「修正特化係数」
とする。
これにより地域の基盤産業がより正確に識別される。
係数値が1.0を越える部門
(対数変換した場合は
0を超える部門)
は、
地域にとって純移出がプラスの稼ぐ力のある産業といえる。
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R E S A S を 使 った 分 析 例
2
安 定した 雇 用 創 出 に 向 けた 産 業 構 造 分 析
● 得 ら れ た 結 論・今 後 の 展 開
担当者からは、
「人口ビジョンでも分析はしていたが、RESASの地域経済循環の分析でも、氷見市民が
市外に働きに出ていることが改めて分かった。
また、地域の資金循環率も、富山県の他市町村の中でも
低いことが分かった。」
との発言があり、氷見市では地域外からの所得に依存する構造となっていることが
改めて認識された。
このような状況において、昔から氷見市の強みであった漁業を中心とした農林水産業は、従業者数の
修正特化係数が高いことから今後も成長の余地があり、食料品産業と連携することで、魅力ある職となる
可能性が示された。
また、氷見市は近隣自治体と比較すると宿泊施設は豊富だが飲食店等が少なく、宿泊者数も減少傾向に
あることから、
消費活動を地域内にとどめることができず、
近隣の高岡市などに流出していることが推察された。
今後は、氷見市の強みである農水産物の一次産品を活かした製品開発10、
ブランド化による
「食」
の集積を
図ること11で、地域の飲食店を活性化するとともに、宿泊施設との相乗効果12を創出し、地域経済の活性化
を目指していく。
10「氷見牛ブランド強化支援事業」
など
11「食イベントによる氷見の魅力発信事業」
など
12 観光客への情報提供事業、
「氷見の体験プラン推進事業」
など
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R E S A S を 使 った 分 析 例
安 定し た 雇 用 創 出 に 向 け た 産 業 構 造 分 析
■(第5-2-1図)地域経済循環マップ 地域経済循環図
[富山県氷見市 2010年]
[富山県内市町村 2010年] 再編加工
地域経済循環率(RESASより)
「地域経済循環率」
とは、
生産
(付加価値額)
を分配
(所得)
で除した値であり、
地域経済の自立度を示している。
(値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高い。
)
富山市
1 1 6 .0 %
砺波市
1 0 7 .5 %
魚津市
9 9 .1 %
高岡市
9 8 .6 %
滑川市
Poi n t !
9 6 .9 %
射水市
9 3 .0 %
黒部市
「分配(所得)」では地域外
9 0 .9 %
上市町
からの流入が多く、
「 支出」
8 1 .4 %
南砺市
7 1 .4 %
につ いては地 域 外 への支
小矢部市
7 1 .0 %
出が多く、所得が地域外へ
7 0 .8 %
流出していることが示唆さ
入善町
氷見市
立山町
舟橋村
朝日町
れる。
6 6 .4 %
また、氷見市の地域経済循
5 8 .2 %
5 6 .8 %
環率は、富山県内他市町村
5 2 .3 %
の中でも低い。
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安 定し た 雇 用 創 出 に 向 け た 産 業 構 造 分 析
■(第5-2-2図)地域経済循環マップ 生産分析 付加価値額(総額) 中分類 移輸出入カラー
[富山県氷見市 2010年]
Poi n t !
氷見市で付加価値額が大きい
産業は、
サービス業、一次金属、
卸売・小売業などである。
また、農林水産業は、付加価値
額はさほど大きくないが移輸出
入額は黒字である。
■(第5-2-3図)地域経済循環マップ 生産分析 移輸出入収支額(産業別)
[富山県氷見市 2010年]
Poi n t !
一次金属、その他の製造業、金
属 製 品 、農 林 水 産 業 、電 気 機
械、繊維で移輸出入額が黒字
になっている。
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R E S A S を 使 った 分 析 例
安 定し た 雇 用 創 出 に 向 け た 産 業 構 造 分 析
■(第5-2-4図)富山県氷見市における雇用チャート
出典:総務省統計局 地域の産業・雇用創造チャート−統計で見る稼ぐ力と雇用力−よりグラフ作成
03漁業
(水産養殖業を除く)
Poi n t !
従業者数の特化(稼ぐ力)
では、
漁業の修正特化係数が高い
ことが分かる。
ただし、付 加 価 値 額 はさほど
高くない。
■(第5-2-5図)地域経済循環マップ 生産分析 影響力・感応度分析(産業別)
[富山県氷見市 2010年]
食料品
特化係数
(影響力係数)
:1.07
特化係数
(感応度係数)
:0.86
Poi n t !
氷見市の農林水産業は影響力
係数・感応度係数ともに低い。
一方、
食料品については、
影響力
農林水産業
特化係数
(影響力係数)
:0.96
特化係数
(感応度係数)
:1.01
係数が1を超えているため、
農林
水産業
(特に漁業)
と食料品で連
携することで、両産業の労働生
産性の向上が期待できる。
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安 定し た 雇 用 創 出 に 向 け た 産 業 構 造 分 析
■(第5-2-6図)
自治体比較マップ 事業所数
※指定の市はすべて富山県
[宿泊業 氷見市、高岡市、砺波市、小矢部市 2012年]
[飲食店 氷見市、高岡市、砺波市、小矢部市 2012年]
〈氷見市〉
〈高岡市〉
〈高岡市〉
〈砺波市〉
〈砺波市〉
〈氷見市〉
〈小矢部市〉
〈小矢部市〉
Poi n t !
氷 見 市 の 宿 泊 業 の 事 業 所 数 は 、近 隣 の 高 岡 市 、砺 波 市 、小 矢 部 市と比 較 すると多 いことが 分 かる。
一方、飲食店の事業所数は、高岡市と比べると圧倒的に少なく、砺波市をも下回っている。
■(第5-2-7図)宿泊分析 観光入込客数と宿泊者数
出典:氷見市の統計
Poi n t !
観光入込客数は増えているが、
宿泊者数は減少傾向にある。
協 力
氷 見 市 市 長 政 策・都 市 経 営 戦 略 部 地 方 創 生と 自 治 へ の 未 来 対 話 推 進 課
076-674-8011
氷 見 市 まちづくり推 進 本 部 商 工 観 光・マーケティング・おもてなしブランド課
076-674-8106
[2016年2月4日 取材]
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