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川勝 望

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川勝 望
日本天文学会早川幸男基金応募申請書
2002 年 9 月 10 日締切り分
申請者氏名
連絡先住所
所属機関
職あるいは学年 (年齢)
電子メイル
電話番号 (FAX 番号)
渡航目的
講演・観測・研究題目
渡航先 (期間)
渡航確認資料 (要 2 部) 航空運賃
その他の交通費
領収書コピー
他からの援助
早川基金採択歴
日本天文学会での発表
査読論文 (印刷中を含む)
他の添付資料 (要 5 部)
川勝 望 (Kawakatu Nozomu : 会員番号 3966)
〒 305-8577 茨城県つくば市天王台 1 ー 1 ー 1 筑波大学計算
物理学研究センター
筑波大学計算物理学研究センター宇宙物理研究室
D2(2002 年 9 月 3 日現在 25 才)
[email protected]
0298-53-6481 (FAX: 0298-53-6489)
国際研究集会でのポスター発表
A Scenario for the Coevolution of an Elliptical Galaxy and
a QSO
アメリカ (2002 年 10 月 19 日∼10 月 26 日)
会議のプログラム
83000 円 (トラベルサロン見積もり)
成田までのバス代 5080 円, Los Angeles 空港から会場まで
のタクシー代 40 ドル(片道)
11 月 1 日頃送付予定
滞在費は自費
なし
3 回 (うち筆頭発表者のもの 3 回)
1 編 (うち筆頭著者のもの 1 編)
関連論文1編のコピー
以上、間違いありません。2002 年 9 月 10 日締切り分の日本天文学会早川幸男基金に応
募致します。
2002 年 9 月 3 日
申請者氏名 (自筆署名)
(学生・院生の場合には、本申請に関して指導教官の了解をもらい、以下に自筆署名を
頂いてください。)
川勝 望を日本天文学会早川幸男基金申請者として推薦致します。
指導教官:所属・職・氏名 (自筆署名)
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渡航の主旨とその学問的意義
渡航の主旨
私は、2002 年 10 月にアメリカのパサデナで開催される研究会「Carnegie Observatories
Centennial Symposium I: Coevolution of black holes and galaxies」に参加し、
「A Scenario
for the Coevolution of an Elliptical Galaxy and a QSO」というタイトルでポスター発表
を行う。今回発表する内容は、「輻射流体力学的アプローチにより、銀河中心のブラック
ホールとその母銀河との共進化モデルを構築することで、クェーサーの初期段階に母銀
河光度が支配的で、中心核が活発に成長している天体(Proto-QSO)の物理的性質を予言
し、観測との比較から Proto-QSO が電波銀河である可能性を初めて指摘した」、という主
旨のものである。この研究は私が所属する筑波大学の梅村 雅之教授と専修大学の森 正夫
講師との共同研究である。
学術的意義
近年、銀河中心の高精度観測から、銀河中心には普遍的に巨大ブラックホールが存在
し、かつ巨大ブラックホールの質量が銀河の spheroidal 成分の星の質量の 10−3 倍程度で
あることが明らかになってきた。加えて、クェーサーの母銀河の大部分が楕円銀河であ
ることも分かってきた。これらの観測結果は、巨大ブラックホール形成、楕円銀河形成、
クェーサー形成が相互に関係していることを示唆している。ところで、宇宙初期の構造形
成段階に全ての天体は角運動量を獲得するため、巨大ブラックホールを形成するには物質
から角運動量を取り除くことが必要不可欠である。これらの事実を踏まえると、巨大ブ
ラックホールを形成するには、球状分布の系において有効に角運動量を輸送するメカニ
ズムが要求される。乱流粘性や非軸対称重力不安定は、円盤形状の系においてのみ有効
に働く角運動量輸送メカニズムなので、この要求を満足することはできない。それに対
して、我々はこの問題を克服する「輻射抵抗モデル」を提案した。「輻射抵抗モデル」が
効果的に働くのは、系内の輻射を有効に利用できる光学的に厚いときであり、輻射と強く
相互作用するダストの存在が重要となる。そこで、私は銀河の非一様な星間物質に対し、
spheroidal 成分内の全ての星からの輻射の寄与をダストによる吸収も考慮して 6 次元輻射
流体方程式を解いた。結果として、星間物質の非一様性を考慮すると、星形成活動の活発
な光学的に厚い銀河の spheroidal 成分内において、輻射抵抗は有効に働くことを明らか
にした。さらに、このモデルはブラックホール質量と銀河の spheroidal 成分の星の質量と
の比例関係を自然に説明し、その比例定数は基本的に水素からヘリウムへの核融合エネ
ルギーの変換効率 (=0.007) で決まることも分かった (Kawakatu & Umemura 2002:添付
資料)。この研究成果から、
「輻射抵抗モデル」は角運動量輸送問題を解決し、かつ巨大ブ
ラックホールの質量と銀河の spheroidal 成分の星の質量との間の比例関係を定量的に説
明しうる” 物理的なモデル” であることが示された。
さて近年、銀河中心のブラックホールと母銀河との共進化に関する研究は理論 · 観測と
もに非常に活発な分野の1つである。しかし、その共進化の物理過程についてはほとんど
明らかになっていない。そこで、私はこの問題を物理的に考えるために、まずクェーサー
の母銀河である楕円銀河を考え、その進化として銀河を構成する星の光度進化だけでな
く、星の金属量生成や星間物質のリサイクリングによる星形成を考慮した化学進化モデル
を用いた。次に、この化学進化モデルに、銀河中心核と銀河の spheroidal 成分とを物理的
に関連づけた前述の「輻射抵抗モデル」をカップルさせた「共進化モデル」を構築した。
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このモデルを用いて得られた最も重要な結果として、中心核光度の卓越したクェーサーの
前段階に母銀河光度が中心核光度より卓越する天体(Proto-QSO)の存在を初めて指摘し
た。また、このクェーサー初期段階(Proto-QSO)の物理的的特徴と観測との比較から、
この段階は電波銀河に対応する可能性が高いことを示した。現在までのところ、このタイ
プのクェーサーは観測されていないが、今後観測されれば、我々の提案するシナリオをサ
ポートする重要な証拠となり得る。このような点からこの研究会に参加し、特にこの分野
の観測を手掛けている研究者に対して、我々の提案するシナリオを宣伝する意義は大き
い。また、今回の研究会は、参加者、発表者共、希望者に対して大幅に制限されている。
その中で、私のポスター発表が認められたことからもこの研究の重要性や注目度が高いこ
とが判る。このことからも今回の研究会で発表する必要性は高いと言える。
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申請者の役割及び貢献度
私はこの研究において、非一様星間物質中での 3 次元輻射輸送に銀河の化学進化を考慮
した理論モデルの構築、数値シミュレーション、結果のまとめ、および観測結果との比較
を行った。共著者には研究指導と議論や論文の校正を行って頂いた。具体的に私が果たし
た役割は以下のようなものである。
銀河中心のブラックホールと母銀河の共進化モデルの構築
この研究の主目的は、ブラックホール成長と母銀河の進化との間の物理的関係を明ら
かにすることである。そのために、私はこれまでの研究成果である銀河中心核と銀河の
spheroidal 成分とを物理的に関係づけた「輻射抵抗モデル」に現実的な銀河の化学進化モ
デルを結び付けた「共進化モデル」を構築した。このモデルを用いて、銀河中心のブラッ
クホールとその母銀河との時間に依存した関係を調べた。また、ブラックホールが活発に
成長しているクェーサー初期段階(Proto-QSO)の存在を示し、Proto-QSO の物理状態
についても解析した。
観測との直接的な比較
前述の共進化モデルから得られた観測可能な物理量と最近の観測結果とを直接比較する
ことで、クェーサー初期段階(Proto-QSO)が電波銀河である可能性を指摘した。
これらの研究成果を私が中心となって論文にまとめ、現在 Astrophysical Journal に投
稿中である。このように、この研究に関して私は中心的な立場にあり、必要不可欠な存在
だと言える。
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今回の渡航に関する抱負あるいは成果
今回の渡航は、我々が提案する「銀河中心核と母銀河との共進化シナリオ」に対する国
際的な認知度を高め、最終的にはこのシナリオに基づいて得られた理論予言を足掛かりに
して、将来的な観測計画に対して提案することを目的としている。この目的を実現するた
めには、この研究に対して中心的な立場にいる私が、今回の研究会のようにこの分野の最
先端で研究している方が多数集う研究会に参加し、研究発表を行うことは必要不可欠であ
る。これが今回の渡航を希望する最大の理由である。
3
この研究会で様々な研究者と議論することで、我々の提案するシナリオに対する意見を
貰ったり、この分野における最新の研究状況を知ることができる。最終的には、このよう
な経験をもとにシナリオの拡張や修正を行い、宇宙論的タイムスケールでの銀河中心核と
母銀河との共進化過程を解明することが私の抱負である。
また、このような研究会で発表し、国際的舞台を数多く経験することは将来における
研究者としての活動にもたいへん重要なことだと思われるので、今回の渡航を強く希望
する。
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申請者業績リスト
< 発表論文 >
1. N.Kawakatu, & M.Umemura「The Radiation Drag Driven Mass Accretion in Clumpy
Interstellar Medium : Implication for the Supermassive Black Hole-to-Bulge Relation」:MNRAS 329(2002)572
2. N.Kawakatu, & M.Umemura 「Radiation Hydrodynamical Model for the Supermassive Black Hole Formation」: 2002, Current High-Energy Emission around Black
Holes, eds. C.H.Lee, et al. (Singapore; World Scientific), p324
3. N.Kawakatu, M.Umemura, & M.Mori 「The Growth of a Supermassive Black Hole
and Narrow Line QSO1」: 2002, The 11th Workshop on General Relativity and
Gravitaion, eds. K.Maeda et al. (Institute of Physice), p58
4. N.Kawakatu, M.Umemura, & M.Mori 「Proto-Quasars: Physical States and Observable Properties」, ApJ, submitted (2002)
5. M.Umemura, & N.Kawakatu 「A New Picture of QSO Formation」: 2002, The IAU
8th Asian-Pacific Regional Meeting, eds. S.Ikeuchi et al., in press
6. N.Kawakatu, M.Umemura, & M.Mori 「A Scenario for the Coevolution of an Elliptical Galaxy and a QSO」: 2002, The IAU 8th Asian-Pacific Regional Meeting,
eds. S.Ikeuchi et al., in press
< 学会 · 研究会での発表(全て口頭発表)>
1. 川勝 望、梅村 雅之 「銀河形成期の爆発的星形成による銀河中心核形成」 日本天文
学会春期年会、千葉大、2001 年 3 月
2. 川勝 望、梅村 雅之 「非一様星間物質中での輻射抵抗による質量降着と幾何学的効
果の影響」 日本天文学会秋期年会、イーグレ姫路、2001 年 10 月
3. 川勝 望、梅村 雅之 「輻射流体力学モデルによる QSO-Host relation と NLQSO1」
日本天文学会春期年会、茨城大、2002 年 3 月
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4. 川勝 望、梅村 雅之、森 正夫 「Narrow Line Type I QSO の理論モデル」 計算物理
学センターワークショップ “深宇宙探査のサイエンスを考える”、筑波大、2001 年 9
月
5. 川勝 望、梅村 雅之、森 正夫 「Narrow Line Type I QSO (NLQSO1) の理論モデル」
第 14 回理論天文懇談会シンポジウム、大阪大学コンベンションセンター、2001 年
12 月
< 国際会議での発表(口頭発表)>
1. 川勝 望、梅村 雅之、森 正夫 「The Growth of a Supermassive Black Hole and
Narrow Line QSO1」 The 11th Workshop on General Relativity and Gravitation、
早稲田大学国際会議場、2001 年 1 月
2. 川勝 望、梅村 雅之、森 正夫 「Coevolution of a QSO BH and the Host galaxy
based on Radiation-Hydrodynamical Model」 Black Holes, Gravitational Lens, and
Gamma-Ray Burst、基礎物理学研究所、2002 年 3 月
< 国際会議での発表(ポスター発表)>
1. 川勝 望、梅村 雅之 「Radiation Hydrodynamical Model for the Supermassive Black
Hole Formation」 Current High-Energy Emission around Black Holes, KIAS International Conference Hall, Seoul, Korea, 2001 年 9 月
2. 川勝 望、梅村 雅之、森 正夫「A Scenario for the Coevolution of an Elliptical Galaxy
and a QSO」The IAU 8th Asian-Pacific Regional Meeting, Hitotsubashi Memorial
Holl, Tokyo, Japan, 2002 年 7 月
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