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東京都医薬品情報 - 東京都健康安全研究センター
東京都医薬品情報 № 4 3 5 平成22年12月号 海外医薬情報から‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2 財団法人 日本医薬情報センター 安全性情報 1 Levodopa と経腸栄養剤の相互作用:悪性症候群様症状が生じ ICU 滞在が延長し た 1 症例の報告 2 Infliximab 誘発の毛孔性扁平苔癬:1 症例の初めての報告 3 発作性夜間血色素尿症における Eculizumab 投与後の溶血性貧血:1 症例(高令 者)の報告 4 Varenicline に関連して報告された他人への攻撃/暴力的思考および行動:26 症例の報告 海外医薬情報2010年11月号から 財団法人 日本医薬情報センター 安 全 性 情 報 1 Levodopa と経腸栄養剤の相互作用:悪性症候群様症状が生じ ICU 滞在が延長した 1 症 例の報告 Bonnici A.(Universite de Montreal, Montereal/Canada) ,ほか Ann. Pharmacother. 44(9)1504-1507/(2010.9) 【概要】ICU に入院したパーキンソン病(PD)を有する多発外傷患者において,経腸栄養と levodopa の相互作用が悪性症候群様症状(NMLS)をもたらしたと思われるまれな症例の報 告。 【症例】患者(男,63 才,150.7kg,175cm,BMI 46)は病的に肥満した,PD と 2 型糖尿病 を有する,多発外傷患者で,手術後 ICU に入院した。day 5 に経腸栄養(Osmolite 1 Cal) を経鼻胃管チューブにより,標準体重(IBW)に基づいてタンパク質 0.88g/kg/日として 投与した。入院期間中,PD 薬の pramipexole,entacapone,および即時放出型 levodopa/ carbidopa 100mg/25mg(1.5 錠 1 日 4 回)を粉砕後,約 30mL の水道水に溶かして経鼻胃 管チューブにより投与した。より良好な血糖コントロールを得るために,day 8 に経腸栄養 を Resource Diabetic に変更し,IBW に基づいてタンパク質 1.8g/kg/日を投与したとこ ろ,その後 24 時間にわたり,患者の精神状態が悪化した。高熱(40.5℃),白血球増加症, 血清 CK 上昇(480~1801 units/L),および急性腎障害を発生した。NMLS が疑われ,levodopa の吸収減少によるものと思われた。経腸栄養のタンパク質増量が levodopa の吸収を妨げて いると仮定した。NMLS の可能性に対して bromocriptine 5mg 1 日 3 回を経鼻胃管チューブ から投与した。Resource Diabetic を中止し,タンパク質摂取量を 1g/kg/日に減量する ために Novasource Renal に変更した。PD 薬は患者の通常用量で継続した。24 時間以内に, 患者の精神状態は改善し,体温および CK 値が下降,腎機能が改善し始めた。day 18 に諸検 査値はベースライン値に回復した。 【結論】Naranjo probability scale および Horn Drug Interaction Probability Scale に 基づいて,本症例における levodopa と経腸栄養の間に発生した薬物-栄養素相互作用の可 能性は probable とされた。医療従事者は,PD 患者における NMLS 発生を避けるために, levodopa と経腸栄養剤のタンパク質含量との間の相互作用について認識すべきである。 参照文献 15 levodopa(INN)/carbidopa(INN) ,elemental-diet,Resource Diabetic:enteral nutrition, protein,pramipexole(INN),entacapone(INN) ,相互作用 「JAPIC Pharma Report 海外医薬情報」速報 No.749 掲載 抄録番号 201050787 2 <参考> levodopa(INN)/carbidopa(INN) ,カルコーパ配合錠 L(共和薬品工業株式会社)、パー キストン配合錠 L(小林化工株式会社)、ドパコール錠(ダイト株式会社)、ネオドパストン 配合錠L(第一三共株式会社) 、メネシット配合錠(MSD株式会社)、レプリントン錠(辰 巳化学株式会社) pramipexole(INN) ,ビ・シフロール錠(日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社) entacapone(INN),コムタン錠(ノバルティスファーマ株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1-(2) 2 Infliximab 誘発の毛孔性扁平苔癬:1 症例の初めての報告 Fernandez-Torres R.(Complejo Hospitalario Universitario A Coruna/Spain) ,ほか Ann. Pharmacother. 44(9)1501-1503/(2010.9) 【概要】長年にわたる難治性乾癬に対して infliximab(以下 IFX)療法を開始して 11 ヵ月 後に毛孔性扁平苔癬を発現した 1 症例の報告。TNF-α阻害剤で治療された患者における苔 癬様反応は,特有な典型的乾癬から古典的な扁平苔癬まで臨床的に非常に多様であるが, 抗-TNF 剤誘発の毛孔性扁平苔癬はこれまでに報告されていない。 【症例】患者(男,37 才)は 20 年以上治療抵抗性の尋常性乾癬を有した。psoralen+UVA 光線療法,methotrexate,acitretin による治療が行われていた。最近,cyclosporine に より治療されており,呼吸器感染症発症から 1 週間後,cyclosporine を中止した。その 48 時間後,乾癬の発生により入院した。cyclosporine を 5mg/kg/日で再開すると,乾癬の 発生は直ちにコントロールされ,紅皮症および発熱は消退したが,体表面の 22%に乾癬が 存続した。3 ヵ月後,IFX 療法を開始し,8 週ごとに 5mg/kg を投与し,良好な反応が得ら れた。cyclosporine は漸減・中止した。IFX 療法を開始して 7 ヵ月後,乾癬の発生と呼吸 器感染を生じた。低用量 methotrexate(5mg/週)を追加し,IFX の注入頻度を 7 週ごとに した。新しいレジメンにて満足する反応が得られたが,4 ヵ月後(IFX 療法開始から 11 ヵ 月後) ,毛包性角化性丘疹膿疱,毛包周囲紅斑,落屑が発現し,頭皮の前頭部と頭頂部およ び眉毛の進行性脱毛を生じ,それらは IFX の注入後に悪化した。頭頂部病変の皮膚生検を 行い,臨床的および組織病理所見は,毛孔性扁平苔癬の診断に合致すると考えられた。経 口 deflazacort 35mg/日による治療を開始し,3 週間ごとに漸減・中止した結果,頭皮お よび眉毛の病変に軽度反応が示された。乾癬のコントロールが適切であること,他の皮膚 症状発現がないこと,苔癬様病変の進行を欠くことにより,IFX 療法を続行した。 【結論】Naranjo probability scale により,本症例における IFX と毛孔性扁平苔癬の関連 は probable とされた。抗 TNF 剤は,急速に効能拡大しながら,多くのリウマチ疾患,消化 器疾患,皮膚疾患に使用されつつあるので,臨床診療の頻度が増すにつれて苔癬様皮疹お よび他の皮膚毒性が認められる可能性があると予想される。 3 参照文献 16 infliximab(INN) 「JAPIC Pharma Report 海外医薬情報」速報 No.749 掲載 抄録番号 201050786 <参考> infliximab(INN),レミケード点滴静注用(田辺三菱製薬株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1-(1) 3 発作性夜間血色素尿症における Eculizumab 投与後の溶血性貧血:1 症例(高令者)の 報告 Berzuini A.(Ospedale Alessandro Manzoni,Lecco/Italy) ,ほか N. Engl. J. Med. 363(10)993-994/(2010.9.2) 【概要】Eculizumab 投与後に溶血性貧血が生じた 1 症例(高令者)の報告。 【症例】患者(男,68 才)は,2008 年に重度無力症のため受診し,溶血と再発性高色素性 尿の徴候とともに大赤血球性貧血が明らかだった。白血球に CD55 および CD59 の発現を欠 くことから発作性夜間血色素尿症(PNH)と診断した。輸血,低用量 glucocorticoids (prednisone) ,erythropoietin,鉄,葉酸を含む支持療法を行ったが,18 ヵ月後,ヘモグ ロビン値が次第に低下し,頭痛および腹痛が認められた。eculizumab による治療を開始し, prednisone は漸減・中止した。血液学的検査値および QOL が急速かつ明らかに改善した。2 ヵ月後,溶血の徴候が再び出現し,直接抗グロブリンテスト(DAT) (C3d 分画)陽性の新た な所見がみられた。eculizumab に併用して glucocorticoid 療法を初回投与量 75mg/日で 再導入し,満足すべき結果が得られた。 【結論】本報告は,eculizumab を投与中の PNH 患者において,血管内溶血が良好にコント ロールされているにもかかわらず,血管外溶血が発生することがあるエビデンスを提示す る。発症機序として,eculizumab の影響下による赤血球表面への C3 フラグメント蓄積の可 能性が考えられる。 参照文献 2 eculizumab(INN) 「JAPIC Pharma Report 海外医薬情報」速報 No.749 掲載 抄録番号 201050722 <参考> eculizumab(INN),ソリリス点滴静注(アレクシオンファーマ合同会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1-(2) 4 4 Varenicline に関連して報告された他人への攻撃/暴力的思考および行動:26 症例の 報告 Moore T.J.(Inst. for Safe Medication Practices,Horsham/USA),ほか Ann. Pharmacother. 44(9)1389-1394/(2010.9) 【目的】禁煙補助剤 varenicline の市販後調査において他人に対する攻撃/暴力的思考お よび行動が報告されている。これらの共通した特徴を明らかにし,varenicline 投与への関 連の可能性を評価した。 【方法】FDA MedWatch データベースから攻撃/暴力行為または思考の可能性のある有害事 象報告 78 例,承認前臨床試験中に報告された重篤な精神科有害作用 4 例,および MEDLINE の文献検索による 3 例のうち,varenicline に関連した有害事象報告例として 26 例を解析 対象とした。 【結果】26 例における性別は女 20,男 6 例,年令範囲は 21~67 才(平均±SD 年令 41.1± 11.5 才)であり,有害事象の内容は,攻撃 10,身体攻撃行為なしの殺人観念 9,特に殺人 的ではなかった暴力的または攻撃的思考 7 例であった。さらに,3 例が自殺し,4 例は自殺 企図を含んだ。因果関係は,26 例中 18 例が probable,8 例が possible と分類された。報 告された有害事象の共通した特徴は,不可解な/動機のない行為 26/26 例(100%) ,被害 者は近くにいる者 26/26 例(100%) ,投与開始から 1 週間以内に発症 16/18 例(89%), 同様な行動の既往歴なし 24/26 例(92%),投与中止により回復 13/14 例(93%),悪夢・ 睡眠障害 17/26 例(65%),はっきりと述べられた抑制できない怒り 16/26 例(62%), 自分および他人両方への攻撃/暴力 11/26 例(42%)であった。 【結論】明らかな時間的関連,行動の既往歴を欠くこと,およびこれらのイベントの異常 性は,varenicline が攻撃/暴力的思考および行動と関連する科学的エビデンスの蓄積を増 強する。医師および薬剤師が,すべての患者に対して暴力/攻撃的思考を含む,varenicline による精神症状の可能性について確実に知らせるようにすることを勧める。すべての患者 は,これらの症状が発生した場合は速やかに医療提供者に連絡し,varenicline を早急に中 止するよう助言されるべきである。 参照文献 16 varenicline(INN) 「JAPIC Pharma Report 海外医薬情報」速報 No.749 掲載 抄録番号 201050784 <参考> varenicline(INN) ,チャンピックス錠(ファイザー株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1-(2) 5 東京都医薬品情報 №435 (平成22年12月号) 平成22年11月26日編集 平成22年12月発行 編集委員 野口 渡部 長嶺 光川 小竹 内川 工藤 木村 発 俊久(福祉保健局健康安全部薬事監視課長) 浩文(福祉保健局健康安全部食品医薬品情報担当課長) 路子(福祉保健局健康安全部環境保健課課務担当係長) 篤志(福祉保健局健康安全部薬事監視課検定担当係長) 慶子(財団法人東京都保健医療公社大久保病院 薬剤科長) 清次(都立松沢病院 薬剤科長) 尚亨(都立小児総合医療センター薬剤科主任技術員) 賢治(都立広尾病院薬剤科主任技術員) 行 東京都福祉保健局健康安全部健康安全課 郵便番号163-8001 東京都新宿区西新宿2―8―1 電話(ダイヤルイン) 03(5320)4507