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實野孝久 - 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
I LE O S AK A レーザー光学素子の損傷研究と最近の進歩 -EXA レーザーに向けて- 大阪大学 レーザーエネルギー学研究センター 實野 孝久、本越 伸二、藤本 靖 「大型レーザーを用いた新しい科学研究」意見交換会 2010.12.16. TKP東京駅日本橋ビジネスセンター 1 報告内容 1.レーザー損傷研究の歴史 I LE O S AK A 2.LFEX レーザーの光学素子 3.真空圧縮器の汚染問題と損傷測定の課題 4.EXAレーザーに向けた検討 5.まとめ 2 I LE O S AK A レーザー損傷とは レーザー照射による損傷形状の違い I LE O S AK A SiO2 TiO2 Single shot 17 J/cm2 10Hz shot 14 J/cm2 Single shot 8 J/cm2 10Hz shot 0.8 J/cm2 4 損傷耐力評価レーザー装置 I LE O S AK A 5 ピコ秒損傷測定系 I LE O S AK A 6 損傷閾値の定義 I LE O S AK A Sites which damaged [%] 100 A: 最小損傷エネルギー値と最 大非損傷エネルギー値との平 均値 B: 最小損傷エネルギー値 50 C:確率分布より求めた最大非損 傷エネルギー値 C B A 0 Irradiation fluence 7 基板欠陥に対する電界集中 I LE O S AK A 屈折率n きれいな表面 E0 Ea きれいな裏面 Eb ホール欠陥 Ec 円筒状溝 Ed クラック 石英ガラス(n=1.46)の場合 E0 : Ea : Eb : Ec : Ed = 1 : 1.18 : 1.22 : 1.36 : 2.13 N. Bloembergen, Appl. Opt., 12, 661 (1973). 8 多層膜コート損傷閾値パルス幅依存性 I LE O S AK A 波長1.064μm M.Mero et al., Physical Review B 71, 115109 (2005) 9 金コート、金回折格子パルス幅依存性 I LE O S AK A 10 レーザー損傷機構の研究 [Functional Damage (FDT)の概念] ショットごとのサイトの様子 照射フルエンス 1st. 42.4J/cm2 Av. 43.5J/cm2 I LE O S AK A 500μm DT:28.2 J/cm2 照射前 1ショット後 5ショット後 10ショット後 20ショット後 3ショット後 4ショット後 1st. 48.9J/cm2 Av. 48.6J/cm2 照射前 1ショット後 2ショット後 誘電体蒸着膜のレーザー損傷 多重ショットによる成長 イオンアシストが可能な複合蒸着装置 薄膜中にできる核が 吸収を持たないよう な構造欠陥 膜欠陥による損傷 膜損傷による損傷 Ref. R. J. Tench et al., SPIE2114, 415 60 .0 4 0 .0 b -4 照射フルエンス[J/cm2] 照射フルエンス[J/cm2] DT: 損傷発生強度 FDT: 損傷拡大強度 300μm 3 0 .0 FDT=33.0J/cm2 照射前 損傷発生 2 0 .0 DT=16.5J/cm2 1 0 .0 N-on-1照射 0 .0 0 5 10 15 2 0 25 3 0 シ ョット数 35 損傷拡大 40 45 a -3 50 .0 FDT=43.2J/cm2 40 .0 照射前 30 .0 DT=28.2J/cm2 20 .0 10 .0 N-on-1照射 0 .0 50 300μm 0 5 10 15 損傷発生 損傷拡大 20 25 30 ショ ッ ト 数 35 40 45 50 損傷耐力向上における顕著な成果 低強度レーザーによるアニール効果 従来のレーザーアニール I LE O S AK A 必要照射強度:DTの80~90%以上 厳重な管理下でスキャン照射が必要 YAG: 3ω 2倍程度までのDT向上 掃引 照射 基板加熱用レーザーの併用 基板加熱用パルス CO2レーザー 基板 温 度 時間 YAG: 3ω 基板温度を上げることでDTの20%以下の レーザー強度で処理が可能 熱硫酸処理(化学処理)による画期的高耐力化 従来の高耐力化法 I LE O S AK A フッ酸による処理は時間に対する依存性が厳しく、やり過ぎると 表面荒さが増加し、DTは低下する。 新しい高耐力化法 不純物を選択的に除去する硫酸を使用することで、基板表面には 影響を与えない。イオンミリングを超える改善を実現。 内部損傷 と同程度 まで向上 (3ω) 化学プロセス後における石英基板表面のレーザー損傷閾値測定 -濃硫酸の温度依存性― 昨年の報告 2 I LE O S AK A 温度範囲 -150 ℃ ~ 200 ℃ 評価レーザー Nd:YAGレーザー レーザー波長 1064 nm / 355 nm パルス幅 4ns 評価方法 N-on-1 スポットサイズ ガウス分布平均 (1/e2) 2010. 2 . 2 レーザー学会学術講演会第30回年次大会 14 I LE O S AK A LFEXレーザーの開発とそれに伴う 光学技術の進展 15 FIREX I LE O S AK A レーザー増幅器部 各ビーム2枚の可変形ミラーを設置、大型可変形鏡とビーム結合を計画 Main Rod amplifier amplifier Compressor Focusing optics Front end (existing) OPCPA Rod amplifier 3.2 kJ / 2 ns Timing adjuster Fast phase adjuster Deformable mirror 2.5 kJ /1-10 ps Deformable mirror (in beam phase correction)(beam-to-beam phase locking) 16 Optical layout of rear-end system I LE O S AK A (Two grating design) Top view of compressor LFEX圧縮・集光チェンバー I LE O S AK A Incident beam 2 Grating Beam hit area Incident beam 1 集光チェンバー Segment grating holder array 圧縮チェンバー LFEXレーザーにおける技術課題と解決策 基板の熱膨張による 溝密度変化 石英基板が必要 大型誘電体回折格子 大型ミラーシステム 低応力コートが必要 合成石英のコスト高 イオンアシストコートの使用 大型コート装置へのIADの導入 大型合成溶融 石英材の開発 組み合わせ回折格子の使用 I LE O S AK A 組み合わせ実験 T6, GMII 組み合わせ精度測定法の開発 露光エラーによる 溝密度誤差 溝密度精度の高い 新露光法の採用 石英基板の 温度制御 2分割格子による 溝密度の自動補正 91cm大型高精度回折格子の開発 高輝度集光 可変形鏡による波面補正 4ビーム位相合成の必要性 複数枚可変形鏡の導入 課題 解決策 高速実時間位相計測 Tip-Tilt-Piston鏡による高速制御 高エネルギーパルス圧縮における課題 1. これまでない大きな回折格子が必要 (91 x 42 cm) 2. 短パルスで高い耐力が必要(3 J/cm2 at 1 ps) 3. 回折格子溝密度の高い再現性が必要 (0.05 ppm) 4. 高い集光性を得るために回折格子の組み合わせ精度が必要 5. 大型光学素子の製造に置ける課題 基板の熱的安定性(熱膨張) 真空中での膜応力 6. 大型回折格子の組み合わせ技術 7. ビーム結合のための位相誤差補正法の開発 I LE O S AK A 石英コートで膜応力が大きくなる理由 I LE O S AK A Fused silica material is selected for small thermal expansion. Coating stress on low expansion substrate is a serious problem for large scale optical components. BK-7 or Pyrex glass Silica and Low Exp. glass Low tensile stress High tensile stress Coating temperature Room temperature 21 Aging effect of coating stress after manufacturing I LE O S AK A 22 Shape of Mirrors and gratings I LE O S AK A 23 Wave-f ront of large mirror Just af t er assembled Af t er cell adjust ment I LE O S AK A Def ormat ion due t o t he cell st ress Photograph of assembled mirror for LFEX 24 I LE O S AK A 25 Scanning Beam Interference Lithography (MIT) I LE O S AK A 26 91 cm size dielectric multi-layer diffraction grating on fused silica substrate ILE OSAKA Institute of Laser Engineering (Osaka University), Plymouth Grating Lab., Space Nanotech Lab. (MIT), Okamoto opt. work I LE O S AK A Size: 91 x 42 x 9 cm Groove density: 1740 line/mm ± 0.05 ppm Diffraction efficiency: >95% Wavefront error: </3 at 632 nm Substrate: Synthetic fused silica Coating: Ion Assisted Deposition (IAD) 2 Laser damage threshold: 3 J/cm (at 1ps, 1m wavelength on witness) Ruling method: Scanning Beam Interferometer (SBI) Groove structure Performance of PGL grating (most recent result) 0th order is complimentary: 1.39% I LE O S AK A Diffraction Efficiency 98.2% ダイアモンド型双方向入射圧縮器 (with large element gratings) I LE O S AK A 1セグメント回折格子の振り角度による時間間隔特性 I L E O S AK A ストリークカメラ Time FFP ストレッチャー調整 I L E O S AK A SH相関波形 1.18psec SHG‐FROG 遅延掃引80fs/step 6パルス積算/step 測定レンジ:5fs~50psec 注) ・FROG位相は未解析(自己相関波形のみ解析) ・Gaussian スペクトルを仮定 I LE O S AK A I LE O S AK A I LE O S AK A LFEXパルス圧縮器の汚染問題と、付随して 判明した損傷測定の課題 34 We had a serious mirror contaminations of optics in the compression chamber. I LE O S AK A Mirrors are all IAD coated. Fogging are seen 3 days after recovered to air. Normal e-bam coating did not fogged. Damage threshold was drop 1/2~1/3. Microscope image of damage site I LE O S AK A Damage site on new sample ~20 J/cm2 at 1ns, 1064 nm Damage site on contaminated sample ~10 J/cm2 at 1ns, 1064 nm 油汚染はLFEX圧縮器固有の問題ではなく、 PW, GM-IIでもほとんど同じ汚染が見られた。 鏡が曇ったのはLFEXではIADコートを使用したため。 LFEX圧縮器に入れた蒸着ミラーは曇らない。 GM-IIに入れたIAD膜は曇った。 鏡が曇るのは大気に戻して2日ほどの間。 ミラー層に吸着した油が空気で押し出されてくる。 汚染物質 フタル酸エステル(DBP) 炭化水素(パラフィン)系オイル I LE O S AK A 汚染物質の成分分析 I LE O S AK A • チャンバー内部のコールドト ラップ(ポリコールド)に吸着さ れた油状の汚染物質を採取し、 成分分析を行った • IRスペクトル、GC/MSスペクト ルより、フタル酸エステル(主 にDBP)、C22~C26の直鎖脂肪 族炭化水素、分岐を有する脂 肪族炭化水素の存在が推定さ れた 汚染源は? I LE O S AK A パラフィンオイルは機械加工油が壁に残留 していたと考えられる。 DBPは外壁面(鉄のサポート)用の塗料に 含まれており、空気中に50μg/m3存在し、 換気でパラフィンオイルに吸着された2次 汚染と考えている。 ミラーの曇るメカニズム I LE O S AK A ・チェンバー内のミラーが、真空中では曇らず、大気戻し後3日くらいで 最も曇る事から、そのメカニズムを検討している。 ・最近チェンバー内に置いて排気したサンプルミラーは曇っていなかったが、 過湿雰囲気に置くと曇り、大気に戻すと曇りが減尐した。大気中で残留する 曇りが汚染であると言える。 ・ミラー中の汚染が水分で押し出され 表面に出てくる可能性がある。 レーザー損傷閾値と油汚染 I LE O S AK A 汚染したサンプルミラーの損傷耐力は汚染前の 1/2〜1/3に低下した。(nsパルス) 汚染前 汚染後(アルコール混合液洗浄) しかしデータをまとめると5〜15J/cm2にまとまり、 これが汚染の影響と考えられる。 1-on-1 N-on-1 1-on-1 N-on-1(1st) N-on-1(2nd) DTOK42 41 15 >49 39 DTOK71 22 14 39 >44 これに対してpsでは、汚染サンプルではプラズマ の発生が見られるが、損傷閾値は汚染前と変わ らないという結果となった。 AV Fluence (J/cm 2) ps レーザーによるダメージ閾値測定 7 I LE O S AK A 6 ミラー/油汚染前 5 ミラー1/油汚染後 ミラー2/油汚染後 ミラー3/油汚染後 4 ミラー4/油汚染後 ミラー5/油汚染後 0 3 グレーチング1/油汚染前 グレーチング2/油汚染前 グレーチング3/油汚染前 グレーチング4/油汚染後 2 グレーチング5/油汚染後 1 0 サンプルの種別/状態 最近の汚染についての進捗 I LE O S AK A これまで、真空排気の度に回折格子の溝が油で埋まり、回折効率が 著しく低下していたが、最近の排気では曇らなくなった。 反射鏡の曇りも大幅に減尐しており、汚染が枯渇してきたと言える。 汚染原因の現時点での推論 圧縮・集光チェンバーの内壁面の仕上げ加工が粗かったため、油分が残 留しており、それが大量のケーブルなどに2次汚染し、なかなか減らな かったと推定。DBPは外壁塗装から空気を介して侵入したと推定している。 リアチャンバー汚染対策 I LE O S AK A これまでの汚染対策 • ハロゲンランプによる壁面の加熱 ⇒ ほとんど効果なし • 炭酸ガスによる洗浄 ⇒ ほとんど効果なし • 人の手によるチャンバー壁面の洗浄 ⇒ ほとんど効果なし • コールドトラップによるチャンバー内分子の 吸着 ⇒ 効果はあるが、いまだに吸着量は減らず • ターボ分子ポンプ追加 ⇒ 真空度の改善だけでは意味なし 大阪真空 TG3460M シリカゲルを用いた汚染物質の吸着による 損傷閾値改善 I LE O S AK A • 小チャンバーにサンプルミ ラーとシリカゲルを入れ、 真空引きを行う • チャンバー到達真空度 5 x 10-2 Torr • シリカゲル:200 g 170℃、3時間ベーキング I LE O S AK A チャンバー汚染対策(その2) I LE O S AK A • シリカゲルによる汚染物質の吸着 チャンバー内部にシリカゲルを敷き詰め、真空引きを行う – – – – シリカゲル:約25 Kg イオンガンを用いて、シリカゲル表面のダストを除去 約170℃、4時間ベーキング ステンレストレイ(430 x 360 mm)計25枚使用(1F: 20枚、2F: 5枚設置) 1F 2F I LE O S AK A laser Contaminant I LE O S AK A H2O Contaminant PET container Desiccator Coating material is similar to the Silica-gel 従来のDT測定サンプルコンテナー I LE O S AK A 樹脂製で油性の添加物が含まれている。 50 最近の汚染についての進捗 I LE O S AK A 圧縮器内のミラーや回折格子が、大気戻し後3日くらいで曇ることから、 ミラー材質内に吸着されていた油成分が水蒸気で追い出され、表面に 出てくると推定していた。 その原理を用いると、水を含んだ有機溶剤(アルコール)にサンプルを 浸潤し、一定時間放置することで水分によってラー層内から油分を追い出し、 溶剤でそのオイルを溶かせるのではないかと考え、水・アルコール混合液に 汚染したサンプルを6時間漬け、超音波洗浄すると損傷耐力は大幅に向上 した。 しかし、その値は汚染前の測定よりも高く、未汚染のサンプルも本来の DTよりは下がっていたと考えられる。 水-アルコール混合液への浸潤の効果 I LE O S AK A H2O H2O Water Contaminant stays on the surface ILE O S AKA Contaminant Alcohol Simple surface cleaning Contaminant remains inside H2O Contaminant is removed by Alcohol Alcohol + Water Contaminant I LE O S AK A 2010. September I LE O S AK A 2009. December I LE O S AK A EXAレーザーに向けて 56 Future plan: Layout of Gekko-EXA laser I LE O S AK A kJ excitation laser 16kJ laser Booster amplifier Ultra-high intensity laser Compression chamber Broad-band high-energy NOPA I LE O S AK A 58 I LE O S AK A 59 I LE O S AK A 60 表面化学反応による光学薄膜の形成 [原子層堆積法(ALD)] 反応チェンバー 電磁 バルブ システム制御装置 遊星回転機構 基板駆動制御装置 基板駆動装置 I LE O S AK A 蒸着速度制御装置 真空排気装置 基板 膜厚制御装置 膜厚モニター装置 ガス導入装置 蒸着源 電子銃 イオン源 ガス制御装置 イオンアシスト装置 蒸着装置 バルブ 排気装置 従来型成膜装置 原子層成膜装置 長所 1 長い歴史と実績 2 広い自由度 3 広く普及している 長所 1 高い膜厚制御性 2 簡単な装置 3 安価なランニングコスト 4 3次元物体にもコートできる 5 欠陥、不純物が尐ない 6 原子レベルでの混合膜が可能 欠点 1 制御が難しい 2 不純物、欠陥が生じやすい 3 価格が高い 4 メンテナンスが難しい 5 薄い膜圧は困難 6 立体構造物にはコート困難 原料ガス 原料ガス 真空排気制御装置 61 大型基板 電磁 バルブ 欠点 1 成膜速度が遅い 2 酸性排気ガスの発生 3 物質が限定される Al2O3, TiO2, SiO2他 原子層成膜装置 ALDによる製膜結果 ALD膜は高温製膜では結晶化して損傷 耐力が低下する。 I LE O S AK A ALD膜の損傷耐力 の製膜温度依存性 結晶化の防止策 62 I LE O S AK A 63 電界計算(FDTD)ソフトによるシミュレーション I LE O S AK A 64 まとめ I LE O S AK A ・ センターでは長年に亘ってレーザー用光学素子の開発を進めてきた。 ・ 損傷評価についてはロチェスター大学と双璧をなす。 今後フェムト秒評価系を構築する。 ・ LFEXレーザー開発では多くの画期的な大型光学素子が開発できた。 特に高精度回折格子は世界に誇り得る新規性を持つ。 ・ LFEXレーザーは順調に稼働しており、今後4ビーム化して高強度実験 にも使用できる。 ・ LFEX圧縮器の汚染問題は長い時間が掛かったが、原因の解明と 対策がほぼ出来たと言える。また、付随して、損傷評価サンプルの 汚染という新たな課題が見いだされた。 ・ EXAレーザーに向けた広帯域・高耐力・大型光学素子の開発を目指し、 検討を開始した。原子層堆積法などの新しい手法により、世界の 高強度レーザーに貢献できる素子開発を行う。 65