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ロシアの投資環境とリスク

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ロシアの投資環境とリスク
ロシアの
ロシアの投資環境と
投資環境とリスク
~ロシア側
ロシア側の見方
2006 年 6 月
ジェトロ海外調査部
ジェトロ海外調査部
はじめに
ロシアへの外国投資が増加傾向にある。直接投資は過去数年、40 億ドル前後で推移してきたが、
2003 年以降上昇に転じ、2004 年、2005 年とも前年比約 39%の増加、2005 年には 131 億ドルに
達した。2003 年と言えば、石油大手ユコスの社長が脱税・横領容疑で逮捕された年で、その翌年
末には同社の主要生産子会社が競売を通じて国有石油会社ロスネフチの傘下となったが、そうし
た国内外を騒がせた一連の事件が進行する中で、対内投資が拡大していったことになる。
翻って、日本はと言うと、昨年、今年と自動車メーカーのロシアにおける生産計画が発表され、
新たな展開が見え始めたが、対露投資は欧米諸国と比べ活発とは言えない状況が続いていた。ま
た、販売市場としてのロシアの魅力が増すなか、モスクワにおける拠点の形態も、これまでは販
売会社(現地法人)でなく、駐在員事務所が主流であった。
ロシアのビジネス環境については、制度の未整備・不徹底、手続きの煩雑さ、情報収集の困難
など、日本企業から否定的な声がしばしば聞かれる。さらに、上述のユコス事件以来の追徴課税
問題や中央集権化の動きは、新たな「リスク」として諸外国に懸念を引き起こした。こうした情
勢の下、ロシアへのコミットメントの拡大に躊躇する企業もみられる。
日本を含め外国で語られるこうした問題について、ロシア側ではどのような捉え方をしている
のか。ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所の機関誌『世界経済と国際関係』のセルゲ
イ・チェバノフ経済部長は、ロシアが政治的にも経済的にも発展段階にある現在、新規参入企業
がそれらの問題を投資リスクとして過剰に反応すべきではないと言う。
ロシアは体制転換後、わずか 15 年。広大な領土を有する国でもある。WTO 加盟も視野に入れ
た改革が進められているが、一朝一夕で制度が整えられ、末端にまでそれが浸透する訳ではない。
そうした現地事情への冷静な見方と正しい理解なくして、漫然とチャンスを見過ごしたり、逆に、
他の国と同じ考え方をもって性急に参入することこそ対露ビジネス最大のリスクかもしれない。
なお、本報告書は、ジェトロ・ウィーンがチェバノフ氏に委託し、とりまとめたもので、分析
は同氏の見解を反映したものである。
平成 18 年 6 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外調査部 ロシア NIS 課
1
目 次
要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
1.ロシアにおける
ロシアにおける投資環境
における投資環境の
投資環境の概観・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
概観・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2.課税問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
課税問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3.中央政府の
中央政府の権限強化の
権限強化の動き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
4.エネルギー部門
エネルギー部門の
部門の再国有化と
再国有化と公的独占が
公的独占がビジネスに
ビジネスに与える影響
える影響・・・・
影響・・・・・
・・・・・9
公的独占・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
公的独占・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
5.特別な
特別な制限が
制限が外資ビジネス
外資ビジネスに
ビジネスに与える影響
える影響(
影響(参入障壁)
参入障壁)・・・・・・・・1
・・・・・・・・11
規格・
規格・ラベリング要求
ラベリング要求について
要求について・・・・・・・・・・・・・・・・・
について・・・・・・・・・・・・・・・・・1
・・・・・・・・・・・・・・・・・12
6.原料バブル
原料バブルと
バブルと第 2 の金融危機の
金融危機の可能性について
可能性について・・・・・・・・・・・
について・・・・・・・・・・・1
・・・・・・・・・・・14
補遺:
補遺:ロシアにおける
ロシアにおける企業設立
における企業設立について
企業設立について・・・・・・・・・・・・・・・・
について・・・・・・・・・・・・・・・・1
・・・・・・・・・・・・・・・・16
コラム:
コラム:ロシアと
ロシアとウクライナの
ウクライナの国民性およ
国民性および
および現地ビジネス
現地ビジネス慣行
ビジネス慣行・・・・・・
慣行・・・・・・2
・・・・・・23
2
要旨
現時点で日本の投資家がロシアにおいて遭遇する可能性のある政治的リスクには、以下の点が
あげられよう。
・ 強力かつ増大しつつある国家の影響。これは、「国家主導型資本主義」を選択した国特有の
長期的なリスクとして捉えるべきものである。投資家は、その点を考慮して自らの事業計画
を合わせていくか、あるいはロシアにおける投資を控えることになる。
・ 行政の不透明さ。この問題は、国が直接経済活動に関与する一方、外国企業も含めた民間と
協力していく方針を示していることから、徐々に改善していくとみられる。
・ なお、中央集権化という形で進行している中央政府と地方政府間の権限配分上の変化は、日
本の投資家にとって必ずしもマイナスを意味しない。相対的に、地方政府により恣意的傾向、
汚職といった側面が強くみられるからである。
また、経済的リスクには以下のようなものが含まれる。
・ ロシアの国家独占企業体との競合。大企業は協力体制および合弁プロジェクトの確立により、
中小企業は独占事業体の利害分野の範囲外で事業を行うことにより、そうしたリスクは回避
可能である。
・ 中央政府当局が撲滅に努めているものの、依然としてはびこる汚職。
・ 緩やかにではあるものの、ロシア国内における生産コストの上昇は避けられない。電力、燃
料、熱、輸送、原材料および労働力などのコストは、次第に欧州レベルに近づいていくであ
ろう。
・ 銀行システムにおける流動性危機の可能性。現地の銀行システムは先進国諸国と比較すると、
未だ発展が遅れている。
高い経済成長、経常黒字と外貨準備の増大、対外債務の返済、通貨の安定など、力強いマクロ
経済の実績にもかかわらず、多くの外国投資家はロシアの投資環境を魅力的で利益をもたらすも
のと見てはいない。その主な原因は、経済問題に対する政府の干渉の強化、および非民主的と評
価される数々の行政手法にある。実際、ロシアの発展モデルは、国家の指導的役割に基礎を置い
ているが、これは先進国においてもはや一般的なものではないことから、対ロシア投資への大き
なリスクと受け止められている。
他方、このモデルは、現在の発展段階において適当であり、結果的に外国投資に対する肯定的な
効果、とりわけ地に足のついた長期的投資にとって重要な経済的・社会的安定性を保証する可能
性も含んでいるとの見方もある。例えば、ロシアの行政手続きと政策における不透明さに対して
は、上述のような中央集権的傾向が状況の改善に貢献している面がある。なぜなら、そうした不
透明性の一因は、異なるレベルにある当局間の責任分担上の混乱にあったからである。また、国
家プログラム「電子ロシア」の下、政府の諸活動・計画は各政府機関のウェブサイトを通じ、ロ
シア語だけでなく一部英語でも開示されるようになってきている。
税制の曖昧さ、また、時として恣意的な地方税務当局の行動は、しばしば外国のマスメディア
の中で議論の的になっている。しかし、多くの場合、税務検査官が問題としているのは、ロシア
企業か外国企業かを問わず、1990 年台および 2000 年台初頭まで存在した税制の不完全さの下で
3
起こった、あるいはそれを逆手に取ろうとしたものである。従って、今後、ロシア市場に参入す
る日本の投資家が、追徴課税の問題に遭遇する可能性は低いとみられる。税制は全般的に合理化
と負担軽減の傾向にある。
国際的な格付け機関がロシアの格付けを引き上げるなか、同国への外国投資は直接投資・証券
投資とも拡大している。また、ロシアに進出済みの外国企業で、同国のビジネス環境を前向きに
評価しているところは多い。
ロシアでのビジネス機会が広がる中で、全体としては、上述のとおり投資家に対するリスクは
徐々に小さくなる方向にある。また、政治的・経済的・社会的な投資環境は、ロシア特有の状況、
あるいは欠点はあるものの、より安定し予測可能なものになってきている。2007 年末に予定され
ている下院選挙、2008 年春の大統領選挙を経ても、ロシアの情勢に大きな変化は見込まれないで
あろう。
4
1. ロシアにおける投資環境の概観
ロシアの人口は 1 億 4,300 万人(2005 年)。旧ソ連最大の経済規模を持ち IMF の購買力平価ベ
ースのデータによれば、2005 年におけるロシアの GDP は 1 兆 5,800 億ドル相当(世界第 10 位)、
国民一人当りは 1 万 1,000 ドル(同 62 位)であった。また、世界有数の炭化水素燃料生産国で
あり輸出国である。
ロシアの現政権は、同国の国際的な地位、あるいは少なくとも地域における主要国としての役
割の回復を追求している。そのため、中央集権化を通じた国家の整理統合、政府と産業界との関
係の再構築、経済における強力な国有部門の設立(特にこの国の「天賦の優位性」の上に成り立
つ産業において)に向けた努力がなされている。もちろん、そうした発展モデルはいわゆるワシ
ントン・コンセンサスによって確立された民主的な自由市場の処方箋に完全に適合するものでは
なく、一部の外国の政治家やビジネスマンを苛立たせている。しかし、ロシアには、「国家主導
型資本主義」とも言うべき(アングロ・サクソン系諸国ではあまり見られない)道を選択する権利
はある。そして、中国の経験が示すとおり、そうした経済システムの下でも「ゲームのルール」
を受け入れる外国投資家は成功を収めることもできる。
ロシアの投資環境は、その良好なマクロ経済の実績と中期的見通しにもかかわらず、外国人に
必ずしも十分に利益をもたらすものではなく、むしろ悪化しているとさえ言われている。恣意的
とも見える税務行政や政府による経済への干渉など、ロシア政治システムにおける非民主的な傾
向への懸念も広がっている。多くの国際的なマスメディアや外国の政治家(ロシアの民主派も含
めて)が、国内および対外政策上の重要問題に関するプーチン大統領の統治を批判している。1)
そうした中、ロシアのビジネス環境と投資の展望に対してはるかに楽観的な投資家やアナリス
トもいる。ロシアへの外国投資は、直接投資・ポートフォリオ投資とも着実に増加しており、大
方の予測やいくつかの国際企業が表明している計画によれば、今後もさらに拡大していくと思わ
れる。国際格付会社のスタンダード・アンド・プアーズやムーディーズ、フィッチによるロシアの
格付けは近年引き上げられており、既に投資適格となっている。また、その他のアナリストの評
価も、ロシアのビジネス環境に対する見方はポジティブなものとなっている。
例えば、米国の経営コンサルティング会社 A.T.カーニーが世界的な企業の経営者に毎年行って
いる外国直接投資の信頼度調査(直近の結果は 2005 年 12 月に発表)によると、ロシアは投資対
象として最も魅力的な国の第 6 位に挙げられている(前年は 11 位)。また、1 年前に比べて見通
しが改善した国の 5 位にもランクインしている。2)
同様に、米国の調査会社コンドル・アドバイザーズは、ロシアにおける投資リスクは低いと結
論付けている(http://www.condoradvisers.com/ViewReport.php?ReportID=163)。この評価は、
いわゆる「ユコス事件」の継続を巡る不安と、ロシア当局による反ビジネス的行動の拡大に懸念
が高まるなか、2005 年 2 月に発表されたものである。実際、そうした懸念にもかかわらず、
UNCTAD(国連貿易開発会議)の統計によれば、近年、ロシアの外国直接投資受け入れ額は急
速に伸びている(2003 年:80 億ドル、2004 年:125 億ドル、2005 年:261 億ドル)。3)
1
)他方、ロシア国内では、そうした批判は(政府当局者だけでなく、独立した専門家や一般大衆からも)偏った
ものと認識されるようになってきている。例えば、最近のガス供給価格を巡る同国とウクライナの論争に関す
る国際マスメディアの報道振りと一部の政治家の発言はしばしば、具体性を欠き、反ロシア的姿勢に基づく一
5
種のヒステリーと映った。
2)また、投資家の約 3 分の 1 が東欧を R&D 活動の対象国とみなしており、その中ではポーランドとロシアが上
位に来ている。
3)UNCTAD/PRESS/2006/002、2006 年 1 月 23 日付。2005 年は推計値。
2. 課税問題
課税に関わる法制度の不安定さと曖昧さ、並びに税務当局によるしばしば恣意的とも見える法
令の適用は、投資家にとって頭痛の種であろう。とはいえ、そうした問題は結果的に管理可能な
場合も多く、過剰に反応すべきではない。
ロシアの税システムは次第に成熟し、より安定した、分かりやすいものとなりつつあり、税負
担も全般的に小さくなってきている(表参照)。税務査察官との摩擦は、主に 1990 年台ならび
に 2000 年台初めに旧税制の不備を背景に生じており、今後、ロシア市場進出を考えている日本
の投資家がメディアを賑わせている類の問題に遭遇する可能性は低いと考えられる。
新興市場の主要税率(%)
法人税
個人所得税
付加価値税
*13
ロシア
24
13
18*
ポーランド
19
19~40
22
~15%への引き下げを検討中。
チェコ
24
12~32
19
インド
40
0~30
12.5
中国
33
5~45
17
ロシアは 1990 年台を通じ、税務行政の失策と非効率に対して、IMF や世銀といった国際機関
の専門家から批判を浴びてきた。徴税率の低さは、1998 年に発生した金融危機の理由の一つにも
数えられる。その後、税務当局は体制を強化、企業による過去の税制濫用の調査に乗り出してい
る。その結果、長期にわたる行政上の混乱(2 期に及んだエリツィン大統領の体制下で汚職体質
が社会の隅々にまではびこった)の恩恵を享受してきた納税者は、税務当局の追及を意識しなけ
ればならなくなった。近年、ロシアで事業を行う内外企業に数多くの遡及請求がなされている。
素直に請求に応じ全額を支払う企業もあれば、遡及請求は行き過ぎとして、企業が訴訟を行うケ
ースも出てきている。
石油業界では TNK-BP、シブネフチ、ルクオイル、また、通信分野でもヴィンペルコム、MTS
といった大手企業が訴訟で追徴課税額の減額を勝ち取っている。例えば TNK-BP は、2001 年度
に対する 5 億 6,000 万ドルの遡及請求額を 2 億 4,500 万ドルに減額させた。この他、多くの訴訟
が進行中である。
2005 年 8 月、プーチン大統領は公然と、ビジネス社会に対する「課税テロ」の終焉を関係当局
に求めた。これはロシアの官僚制度を通じて次第に機能し始めているように思われる。伝えられ
るところによれば、税務当局ならびに財務省は、税務査察官の攻撃的な姿勢の背景にあったとみ
られる地域ごとの「徴税割り当て」を廃止したとされる。一部の企業は何度となく調査され、問
題の解決のため頻繁に裁判所に足を運ばなければならなかったが、徴税方針の変更で、徴税官の
行き過ぎは抑えられることになろう。
現地の株式市場は活況を呈しているが、その背景には、巨額の遡及請求の沈静化と徴税手法の
6
明確化により、投資家へのリスクが縮小しているとの見方もあると思われる。2005 年下半期以降、
ロシアの株式市場 RTS の平均株価は反騰、かつて広範な政治的リスクの思惑からロシアへの投
資に背を向けていた多くのファンドが参入し、資本形成が急速に進んでいる。2003 年末にユコス
のホドルコフスキー前社長が逮捕された後、市況は一気に不安定化したものの、その後のユコス
事件の進展と、それに続く他社への追徴課税を巡るネガティブな報道のなかで、株価は総じて高
値で推移している。それを見る限り、ビジネス界の信頼を大きく揺さぶっていた過剰な課税圧力
の問題は過去のものとなった感すらある。
ロシアで活動している地場および外国企業がロシアの税務行政をどのように受け止めているか
が、アーンスト&ヤング(E&Y)による調査で明らかにされている(2005 年 5 月に実施、同年
10 月に発表)。この調査は、小売、自動車、エネルギー、通信、金融等の大企業 60 社が対象と
したものである。
これによれば、投資家は税務行政の手法に大きな関心を払う一方、税率への関心は低く、むし
ろ、税率を含む現行の税制に満足しているようだ。しかし、こうしたプラスの評価も地元の税務
当局の「不手際」によって相殺され、損なわれている。
税に関わる主なトラブルは、付加価値税の還付(税務当局の対応は「いやいや」あるいは緩慢
である)、税務当局による課税対象規定の過度に厳格な解釈(特に法人税に関して、税務査察官
はしばしば控除対象支出の「経済的妥当性」の証拠提出を企業に要求する)、持株会社の移転価
格税制に関連したもの、あるいは、納税者の苦情処理の非効率性を巡って生じている。現在の税
務行政がビジネス界から「平均以下」と評価されているのも無理はない。
なお、当該調査では、外国人の方が現地の税務行政の不備に対して敏感であるという結果が示
されている(回答した外国企業の 65%がマイナスの評価をしているのに対し、国内企業において
は 47%に留まっている)。ただ、上記の税務問題も、ロシアへの潜在的な外国投資(とりわけ直
接投資)の流入を妨げるほどの要素ではないし、状況が極めて悲観的という訳でもない。
調査対象企業によれば、それらの大半(80%)は過去 3 年間に税務当局との問題を抱え、その
ほとんど(92%)が訴訟に持ち込まれた。しかし、多くのケース(90%)で企業側が勝訴し、税
務当局は過剰な要求を取り下げたという結果は注目に値する。
回答者は、税法制ならびにそれに関わる問題の知識に関して、税務当局よりも裁判所の方を評
価している。一部の特殊なケースを除いて税論争に係わる審問は総じて効果があり、判事は解決
能力を示していると、E&Y のパートナーで CIS 地域の税務問題責任者のメドヴェージェフ氏は
述べている。
上記の調査結果とデータをも活用し、フラトコフ首相が座長を務める外国投資諮問評議会で、
投資家側はロシアの税制とその運用に関して以下のような改善要求を行った。
-税金還付に必要な手続きは簡素化されるべきである。
-税務問題に関する電話ならびに E メールによる支援サービスが納税者に対して提供されるべき
である。
-納税者の苦情に対する対応は、単に形式的なものであるべきではない。
-付加価値税還付手続きに関する実践的なルールが確立されるべきである。
-税務報告規則は簡素化され、ロシア会計規則法に則ったものとするべきである。また、税務監
査の回数は減らされるべきである。
これらの勧告に従って、ロシアの経済政策立案当局は税率の引き下げのみならず、一層の合理
7
化と簡素化を図り、納税者と税務当局の異なった解釈を生む税法上の曖昧さを解消し、バランス
のとれた税務行政の追求により国内の投資環境を向上させることを目指すべきである。
3. 中央政府の権限強化の動き
外国投資受入国において、政治的・社会的安定性の重要性は言うまでもない。そうした視点
に立てば、国家行政システムにおける権力集中の傾向は、ロシアが政治的にも経済的にも発展段
階にある現在、必ずしも潜在的な投資家へのリスクの増大を意味するものではないと捉えること
ができる。
プーチン大統領は 2000 年の就任後間もなく、行政改革の方針を打ち出した。それは、中央政
府の権限強化と「垂直統合的な権力」(すなわち、権力の階層構造)の形成を含み、1990 年台に
はびこった政治的・行政的混乱の克服を目指したものだ。連邦政府に対する地方当局の責任範囲
の設定など、今日までに達成された改革もある。世論調査によれば、ロシア国民の大半は新しい
連邦制度のモデルを支持している。そうした方向性は、国家管理のためだけでなく、国民の日常
生活およびビジネスにとっても意味があると捉えられているのだ。これまでのところ、中央集権
化の動きは非民主的であるとする批判にもかかわらず、将来の日本の投資家にとっても、概ね前
向きな成果が得られているといえよう。
ロシアはもはや解体の危機に直面してはいない。事実、新たな権力のヒエラルキーにより、前
政権と比べ統制の状況についても透明性が高められた。ロシアの現状を肯定的に評価している国
際的な機関や専門家も多い。
例えば、米国の調査会社コンドル・アドバイザーズは、ロシアにおける中央集権化は政治的あ
るいは社会的環境を不安定化させるものではなく、むしろ、政治的・社会的リスクが信頼できる
管理の下に置かれることを意味しているとしている。
また、2005 年 10 月半ばにモスクワで開かれたロシア‐米国投資シンポジウムにおいて、世銀
グループの多数国間投資保証機関 MIGA のジェラルド・ウェスト長官は、過去 2 年間のロシアに
おける状況が他のいかなる新興国市場よりも急速に改善していると指摘した。また、マクロ経済
は長期投資にとって好ましいものであるとしている。
同様に、エルミタージュ・キャピタル・マネージメント投資ファンド(HCM)のウィリアム・ブ
ラウダー会長も、経済分野におけるロシア当局の行動を擁護する発言をしている(HCM は既に
ロシア国内で 36 億ドルの外国投資資金を運用している)。2005 年末の CNBC テレビ・ネットワ
ークのインタビューで、同会長は国家の安全保障と経済の安定上、プーチン大統領の行動は理に
かなったものであると評した。
他方、国際的な投資家は依然として、ロシアにおける行政および政策の不透明さに対して苦情
を述べるだけの理由を持ち合わせている。ただし、中央集権化の動きには状況の改善に貢献して
いる側面もある。不透明性は、主に異なるレベルにあるロシア当局間の責任分担上の混乱が招い
てきたと考えられるからだ。
複数の調査によれば、地方当局の政治的あるいは経済的な強い影響力は、中国を始めとする移
行経済大国に典型的な特徴で、地域内の重要な経済活動が厳しく管理されている場合がある。特
にロシアにおいては、ビジネスにおける垂直的構造と相まって、しばしば自給自足型経済が地域
に見られ、外国投資家にとって参入障壁となりうる。かつての連邦政府と地方政府間の権力配分
8
のアンバランスが見直されることで、「行政上の境界」が取り払われ、地域経済の分割化が解消
することにもつながる。結果として、地域間の競争を伴う適度な規模を持った市場が生まれ、外
国企業にとってより好ましい状況となろう。
4. エネルギー部門の再国有化と公的独占がビジネスに与える影響
ロシアは現在、エネルギー部門の大規模な再編成のプロセスにある。
その中心をなす石油生産部門は 1990 年台初め、ほとんどが私有化された。恒久的な赤字を抱
え民間投資家の関心を惹くことのなかった残された国有石油会社は「ロスネフチ」に統合された。
最近までロスネフチは比較的脆弱な企業であり、私有化に成功した業界大手に太刀打ちできなか
った。ロスネフチは 2004 年、(明らかにプーチン政権の肝いりで、)国内市場におけるシェア
の拡大と世界クラスのエネルギー企業への転換に向け動き始めた。また、ロシアの天然ガス独占
企業であるガスプロムは、石油部門の強化と関連資産の取得に関する戦略を明らかにした。
こうした動きは、社長が脱税容疑で懲役刑を言い渡され、滞納分を支払うため所有する企業資
産の主要部分の売却を余儀なくされたユコス事件とともに進行した。国内外のビジネス界および
世論の大きな関心を引き起こしたこの事件は、政治的動機に根ざし、国家最高権力に対して露骨
に不忠の意を表すオリガルヒへの抑圧であると一般に受け止められた。ユコス事件をロシアにお
ける全面的な反ビジネス・キャンペーンの始まりとする懸念さえ見られたが、それは杞憂のよう
である。
いずれにせよ、ロシアのエネルギー部門において進行中の展開は、それがどのように国内のビ
ジネス・投資環境に影響するのか、多くの疑問を現実に引き起こしている。現在の状況は、ロシ
アにおけるエネルギー部門の再国有化の動きであり、これは外国投資に対する一つのリスク要因
として捉えられている。ロシアの巨大なエネルギーのポテンシャルと、世界のエネルギー供給に
おけるこの国の役割の増大を考えれば、国際的な投資家や専門家がロシアに高い関心を払い、ま
た、懸念を抱くことも理解できるところだ。
しかしながら、そうした見方に多くの誇張や単純化のし過ぎがあることも事実である。問題は
複雑だ。外国投資家の利益に関しても、肯定的、否定的の両方の見方があるだろうが、将来の日
本の投資家に対して深刻な、直接のリスクとはならないと思われる。一定の制限を伴いながらも
(それはやがて民間企業にとって明らかで、理解できるものになると思われる)、国有エネルギ
ー関連企業の成長は外国投資家にさらなる機会を提供していくことにもなろう。
プーチン大統領は、2006 年 1 月 31 日に行われた国内外のマスコミに対する恒例の年初記者会
見において、国際エネルギー市場における中心的なプレーヤーとなるべく、ロシアのエネルギー
部門を構築する必要があるとした。これによると、ロシアのエネルギー企業は、a. 巨大な多国籍
石油企業と同等に張り合えるだけの十分な規模を持ち、b. この国の長期的利害と矛盾するような
独自の事業計画を追求するのではなく、政治指導層によって策定された戦略に従わなければなら
ないことになる。4)
ただし、ロシアが国内エネルギー部門の完全な再国有化や独占化を目指しているのではないと
いうことは踏まえておくべきであろう。国家の役割が大きくなっても、エネルギー部門から外国
人が締め出されることにはならない。むしろ、エネルギー関連国有企業の長期発展戦略では、外
国からの大規模な民間投資を、直接投資と証券投資の両方の形で想定している。
9
年末、ガスプロムの株取引が自由化され、外国人のアクセスの余地が広がったが、これは、
2005 年半ばにガスプロムの株主構成が再編成された結果、可能になったものである。現在、ロシ
ア連邦政府はこの世界最大のエネルギー企業の 50%+1 株を所有し、残る半分が自由化されてい
る。一方、ガスプロムの自己資本は 1,000 億ドルから 2,000 億ドルに引き上げられた。
このほか、石油大手ロスネフチの株式公開計画、また、北部欧州ガス・パイプライン敷設計画
の責任者にドイツのシュレーダー前首相を招いたことなどからも、ロシアが外国人の参入機会を
完全に奪うことを意図していないことは明らかである。
ロシアにおける大規模な国有エネルギー部門の形成は、外国直接投資にも間接的に良い影響を
もたらす可能性がある。すなわち、政府にとってこの部門が一つの主要な歳入源となることで、
税負担の引き下げ戦略を進めることも可能となるからである。
2005
4
)一部の産業インサイダーには、ユコスに対する政府の強烈な攻撃は、まず自己資本を膨らませ、次いで会社の
全資産を国際石油メジャーのいずれかに売却しようとした経営計画への対抗措置との見方もある。もしこうし
たことがあれば、ロシアの石油生産に占めるユコスのシェアの大きさを考慮すると、国益の観点からは受け入
れがたいものであった。
公的独占
公的独占の果たす役割に関しては、ロシア経済の移行的性質ゆえに特別な意義を持っている。
一般的な市場経済マニュアルでは、いかなる独占も、とりわけ公的なものにおいてはなおさら、
経済発展に対する深刻な障害を生み出し、消費者に高コストを強いることになるため、独占の廃
止を通じ全ての部門において最大限の競争状態が作られなければならないとされている。これは、
長年にわたって一義的に国家の責任と考えられてきた産業やサービス(郵便など)ですら民営化
された日本や欧州における近年の経済政策の主要部分を占めてきた考え方だ。
しかしながら、ロシアを始めとする CIS 諸国は、市場経済発展過程のごく初期段階にある。こ
れまで、ロシアにおける国有企業は、電力、暖房熱、天然ガス供給ならびにパイプライン輸送、
また鉄道輸送といった重要なインフラ関連サービスの提供で中心的な役割を果たしてきた。この
状況は変わっていくだろうが、一夜にして変わる訳ではない。
政府は、そうした部門の独占の解体に基本的には同意しており、それを戦略的目標として設定
している。さらに、その達成のために、多くの計画が作成されつつある。しかし、克服すべき課
題が非常に大きく、責任も重大で、また微妙な問題が絡んでいることから、政策上の具体的な動
きは緩慢なものとなっている。
近年は、政府と議会の双方で、天然ガス独占企業ガスプロムの分割の可能性が活発に検討され
ている。他方、発電・送電部門の独占解体ならびに再編成に関する戦略的プログラムは既に採択
されている。鉄道部門における改革は進行中であり、それには貨物輸送ならびに旅客輸送事業へ
の民間企業のアクセスも含まれる。
ただし、ロシアにおける公的独占の維持は、投資家にとって深刻なリスクを意味するものでは
なく、プラスの面すら持っている。現時点、ガスプロム(天然ガス)や統一電力機構(電力およ
び暖房熱)といったロシアの独占企業によるサービスは、想定しうる「市場価格」よりも安価で
供給されている。これら独占企業の価格設定は、連邦ならびに地方の反独占監視機関の厳しい管
10
理下に置かれている。
例えば、ガスプロムの国内消費者向け価格は、国外向けよりはるかに安い。2005 年において、
天然ガスの国内供給平均価格は 35.8 ドル/1,000 ㎥であった(これに対し、2006 年のブルガリア
への輸出価格は 230~260 ドル/1,000 ㎥とされる)。なお、国内価格は 2006 年に 11%、2007
年に 8%、2008 年に 7%の引上げが計画されている。独占という地位にもかかわらず、ガスプロ
ムには国内価格を決定する権限がなく、全ての値上げは連邦政府の承認が必要である。国内エネ
ルギー消費者に対する補助的側面のある現状は、ソ連時代の計画経済に由来するものだ。しかし、
国内ガス価格は緩やかに引き上げられつつあり、やがて大半の外国と同等のレベルに近づくこと
になろう。これは、WTO 加盟の前提条件として、EU および米国がロシアに求めた課題の 1 つ
となっている。また、ガスプロムの経営陣にとっても、国内価格の自由化は待ち望むところであ
る。
このように、ロシアの天然ガス、ならびに電力供給の自由化と独占解体が実現するまで、そし
て、天然ガス、電力、暖房熱の国内価格と輸出価格のギャップが存在する限り、ガスプロムと統
一電力機構は、ロシア国民・企業のみならず、直接投資を行う外国企業にもエネルギー・コスト
を節約できる環境を提供していくことになる。これは、今後数年間、隣国のウクライナやポーラ
ンドではなく、ロシアにその製造拠点を設置しようとする日本の投資家にとって大きな利点とな
ろう。
5. 特別な制限が外資ビジネスに与える影響(参入障壁)
世界の多くの国々と同様に、ロシアも特定の産業ならびに活動への外国人の関与に一定の制限
を設けている。よって、制限の存在が日本の投資家にとって危険というよりも、制限部門におけ
る個々の具体的なプロジェクトにおいてリスクがありうるというべきであろう。そうしたリスク
は、当局による決定の予測困難や不透明さにもつながる、今なお残る法令・規則の曖昧さから生
じている。
ロシアにおける基本的な制限リスト(米国のものに比較的類似)は、1998 年の外国投資法で定
められている。外国企業は兵器生産、原子力関連活動、鉄道、海運ならびに河川運輸、マスメデ
ィア部門における 100%の所有権は認められない。
ロシア経済にとって大きな戦略的意味を持つエネルギー部門については、近い将来に大幅な改
革が見込まれている。既に再編成が進行している同部門に外国企業がどの程度投資できるかとい
う点を巡り、過去約 2 年にわたり、若干の混乱が生じてきた。2005 年 4 月、連邦地下資源利用
庁は、石油・天然ガス開発に対する一連の入札手続きを取り止めた。その理由は、当該分野への
外国人のアクセスに関する制度を明確で機能的なものとし、長期的視点でロシア国民と国際投資
家の利害を折り合いがつくものにするための再検討を行うからだとされた。
2005 年 10 月の外国投資評議会においてフラトコフ首相は、まもなく外国投資家に閉ざされる
戦略的な天然資源の基準に関するリストが示されると述べた。他方、トルトネフ天然資源相は、
炭化水素エネルギー生産分野への外国人の参入は、未開発の鉱床で埋蔵量が石油で 1 億 5,000 万
メートル・トン、天然ガスで 1 兆立方メートルを超える場合は 49%までに制限されること、また、
ウラン鉱など兵器開発に使いうる地下資源への外国投資は認められないことを表明した。基準リ
ストは、地下資源に関する法律の改定版で規定されることになるが、陸上の 6 ヵ所の鉱床に外資
11
のアクセスは認めないとの方針が既に示されている。
同様に、国防関連を始め、戦略的性質を持つハイテク企業への外国人のアクセスの制限という
問題がある。現行法では、ロシアの航空宇宙産業企業における外資のシェアは 25%まで、通信部
門の企業では 49%までと規定されている。これに対し、一部の欧米企業は、ロシア当局へのロビ
ー活動を通じて、あるいはロシアの WTO 加盟問題に絡める形で、規制緩和を画策している(こ
れまでのところ成果は見られないが)。例えば、EADS(エアバスの親会社)の子会社ユーロコ
プターは 2003 年、航空機会社における 25%の持ち分上限を定めた 1998 年法の廃止に関するロ
シア政府への働きかけに失敗した後、ロシアのヘリコプター・メーカー2 社と合弁で設立した
Mi-38 ヘリコプター製造会社の 33%の持ち分を売却した。ユーロコプターは、コクピットとアビ
オニクス機器の設計を支援したにもかかわらず、Mi-38 の知的財産権の共有も阻まれた。また、
米ユナイテッド・テクノロジーズは 2003 年、規制に沿う形でロシアの航空機会社 2 社における
持ち分を 25%以下としたが、当然のことながら、これらの投資家には不満がくすぶっている。
戦略的企業への外資参加に関わる政策と法制度の明確化の必要性は、「シーメンス案件」をき
っかけに、ロシア政府の差し迫った課題となった。このドイツのエンジニアリング大手は、ロシ
ア最大のタービン・メーカーであり、潜水艦や弾道ミサイル向け設備も製造するシロヴィエ・マ
シーヌィ(=Power Machines)の過半の持ち分を獲得する意向を示した。プーチン大統領がこ
の取引に対する支持を表明したにもかかわらず、センシティブな産業部門において外国企業の独
占が生まれるからとの理由で入札は連邦反独占局によって取り下げられ、最終的に、シーメンス
は当初の目標を修正し、ターゲットであったロシア企業の 20%の株式取得で合意している。
ロシア政府は現在、戦略部門の企業を特定する、より効果的な規則と手続きの策定を行ってい
る。外国投資評議会の勧告に従って、外国投資家に戦略的部門へのアクセスを許す、あるいは、
安全保障上の利害を脅かすとみなされる案件へのアクセスを禁止する仕組みが作られることにな
る。フラトコフ首相は、何らかの特定の理由なしに当局が制限を導入することはないとしている。
規格・ラベリング要求について
ロシアは、標準化、製品認証およびラベリング要求に関し、欧州を始めとする国際システムへ
の準拠の姿勢を示しているものの、それらとは異なる独自のシステムを持っており、これがしば
しば同国への輸出に対する障壁と看做されている。しかし、若干の追加的コストがかかることを
除けば、そうしたロシア認証などの問題は、大きなリスクには当たらないだろう。
ロシアにおいて、製品に対するラベリング要求は、認証システムである「GOST R」(GOST
はロシア語の 略語で State Standard を、R は Russia を表す)に依拠している。この認証シス
テムは現在、工業エネルギー省傘下の技術規制計量庁(www.gost.ru)によって運用されている。
2004 年半ばの行政改革以前は、ロシア標準化・計量および認証委員会(Gosstandart)が所管し
ていた。同庁は、産業の義務的ならびに任意の認証プログラムの開発および監督を行う。GOST R
の認証は 3 年間有効だが、GOST R マークの使用許可の有効な期間は 1 年間で、毎年の工場査察
により更新される。
技術規制計量庁の報告書によれば、2004 年 12 月 31 日時点、ロシアには 2 万 2,569 の有効な
規格がある(旧ソ連時代に導入された 1 万 9,362 の GOST と、1993 年以降にロシア連邦で導入
された 3,207 の GOST R)。国際的な規範への準拠に関しては、ロシアは ISO、EN、IEC、お
12
よび UN ECE による 1,100 以上の規格を自国の規格として取り入れている(加えて 2,000 以上
の規格が追加要求事項と共に受け入れられている)。また、1,117 の登録認証機関(それらは CIS
諸国の他、欧州、米国、シンガポール、韓国等、外国に本拠を置く約 300 の認証センターを含む)
を持つ。
ロシア市場で販売されるほとんど全ての産業用ならびに一般消費者用の製品は、国の安全、技
術および品質遵守を保証するために GOST R の認証が求められる。他方、ロシアは一部の例外を
除き、国際的に受け入れられている規格や認証を直接認めてはいない。従って、例えば、CE マ
ークは国内の品質証明ラベルの代わりにはならない。また、「消費者の権利保護に関する法」
(1992 年 2 月 7 日)によれば、食品であるか否かに拘わらず、ロシアに輸入され販売される全
ての消費財には、ロシア語による表示が要求される。表示は以下の内容を含まなければならない:
製品名、原産国、製造者名と住所あるいは消費者のためのコンタクト情報、製品の使用方法、
製品の主な特徴および説明、安全上の要求事項、製品の適合認証と認可の情報、必要な場合
は有効期限。
これまでのところ、ロシアで有効な規格は、欧州その他の国際的な規格とは必ずしも調和が取
れていない。これは一部に、この地に特有の気候条件、あるいは歴史的背景(規格の多くはソ連
時代以来見直されていない)に起因している。非常に多くの検証手段が欧州や米国で適用されて
いるものと異なっており、例えば、ロシアにおいて変圧器は零下 40 度の環境で、すなわち欧州
の 2 倍程度寒い条件下で試験されなければならない。また、鋼管については、欧州では 10~20%
のサンプル検査で済むものが、ロシアでは 100%検査が要求される。従って、たとえある製品が
他の国でよく知られ、安全であると認識されていたとしても、供給者もしくは製造者は、それら
がロシアの方法に基づいた要求事項に適合していることを証明しなければならない。
ただし、国際的な認証がある場合は、ロシアでの認可手続きが容易になる場合がある。国際電
気標準会議(IEC)の規格 IECEE(電気装置)および IECQ(電子部品)、あるいは米国保険業
者試験所を始めとする外国の信頼できる機関の試験記録は考慮の対象とされる。例えば、製品あ
るいは装置が ATEX、UL、FM や CSA に従って認証されている場合、ロシアの爆発耐性証明の
取得には追加的なラボ実験は要求されず、書類審査のみで済まされる。
近年、WTO 加盟に備えた動きとして、ロシアは規格設定を合理化し、過剰なラベリング要求
を廃止する努力を払っている。技術的規制に関わる包括的な法律の導入で、状況の改善が期待さ
れている。ロシアの WTO 加盟に向けた法整備の一つとして 2002 年 12 月に採択され、2003 年
半ばに発効した新法の主眼は、規格採用に透明性のあるシステムを確立し、取引される製品に対
する認証プロセスへの要求事項と工程数を大幅に削減することにある。すなわち、現在の GOST
および GOST R に代わる制限リスト(EU の「技術指令」に類似)を 2010 年までに導入するこ
とを目指しているが、2005 年末時点、細則を規定する法案は議会に提出されていない。この再編
プロセスが進むまでは、ロシアで活動する、もしくはロシアに製品を輸出する外国企業の面倒な
状況は続くことになる。5)
5
)通信設備、建設資材・設備、石油・ガス関連設備のメーカーは、製品認可の取得に困難が伴うとしている。例
えば、技術規制計量庁と情報技術通信省(http://www.minsvyaz.ru)の両方の適合試験が求められる通信設備
の認証は、特にコストと時間がかかるとされる。認証プロセスに 12~18 ヵ月の期間を要した挙句、その認証
の有効期間は 3 年間しかなく、製品寿命に満たない場合もある。また、それらの規格の解釈が地方によって異
13
なっているといった問題が生じている。
6. 原料バブルと第 2 の金融危機の可能性について
年台初頭来のロシアの力強いマクロ経済の実績には原料の国際価格の上昇が非常に大き
な役割を果たしているという点から、国内外のアナリストには原料(資源)バブルの危険性を指
摘する者もあるが、それは過剰な見方と思われる。
まず、国内原材料産業に向けたロシア政府の姿勢をみると、進行中ならびに予定されている対
策は、炭化水素エネルギー、金属その他主要産品の生産にかかわる産業を政府の管理下に置こう
とするものである。そうすることで(しばしば、再国有化であり、経済に対する政府の過剰な干
渉であると批判されてはいるが)、エネルギーを始めとする原材料産業の成長を、経済の多様化
と革新的なハイテク部門の促進という国家の戦略目標につなげることも可能である。
ロシアは現在、国際商品(一義的に炭化水素)市場における中心的なプレーヤーの 1 国であり、
上昇基調にある景気循環の直接の享受者となっている。連邦予算のメカニズムと、強化された国
家権力機構を通じ、財政上の利益はロシア経済に還流、再配分されている。
特に、プーチン大統領は 2005 年末、この国の社会的インフラ(教育と科学、健康管理、住宅
建設、農業の 4 つの部門)の大幅な改善を目指した「国家プロジェクト」の開始を宣言した。2006
年度連邦予算では、これらの目的に対し約 1,600 億ルーブル(ほぼ 60 億ドルに相当)が手当て
されている。この国家プロジェクトが実行されれば、社会資本は増大し、また、社会問題と緊張
は緩和され、ひいては外国企業の投資環境の改善にもつながっていこう。
ロシア政府はさらに、応用研究、道路・橋等の重要インフラ、ならびに非原材料関連部門の発
展に取組んでいる。その中心的な考え方は、国の「元手」による支援と官民パートナーシップの
確立によって資本集約的プロジェクトを立ち上げ、支援するというものである。もちろん、この
計画がどれだけ効率的に、首尾良く実現されるか、経過を観察する必要はあるが、そうした戦略
はロシア経済における原料バブルのリスクを小さくすることに寄与するものとみてよいだろう。
もう一つの懸念は、1998 年に起こったロシアの金融危機の記憶だ。これによって多くの日本企
業がロシアへの投資に慎重になったとみられる。幸い、その後、外的要因と政府のポリシー・ミッ
クスの変更により、ロシアの財政状況は劇的に改善してきている。1998 年のロシアの破綻は、そ
れ以前の東アジアにおける危機が引き金になったものの、根本的には僅かな外貨準備と、国際収
支ならびに徴税面の危うさ(IMF の指導の下での外為政策と 1998 年初の炭化水素輸出税の廃止
により助長された)を背景とした、政府の過剰債務(これも IMF の勧告に沿たもの)の必然的
結果であったといえる。6)今や、全てが変わっている。
まず第 1 に、ロシアの「国際収支リスク」は 1990 年台末よりもはるかに低い。ロシア中央銀
行のデータによれば、2005 年に同国は過去最高となる 1,200 億ドルの貿易黒字を記録(2004 年
は 850 億ドル)、経常黒字も 866 億ドル(2004 年は 586 億ドル)に達した。また、ロシアは 2005
年、3 億ドルの民間資本(ネット)を外国から受け入れた。それまで続いていたネットの流出(2004
年の 80 億ドル、2003 年の 19 億ドル、2002 年の 81 億ドル、2001 年の 150 億ドル、2000 年の
248 億ドル)から転じたものである。2005 年は史上始めて、民間資本の流入が流出を上回った年
となった。これは、完全な市場経済原則の遵守と民主政治への評価には幾分疑いが残るにもかか
わらず(2004 年の民間資本のネット流出増大はこれによるもの)、ロシアの将来展望に対する投
2000
14
資家の信頼が回復したことを映したものとみることができよう。
第 2 に、2004 年と 2005 年の前倒し返済によりロシアの対外債務は大幅に減少した。1990 年
台と異なり、2000 年台のロシア政府は新規の外部借入れを全く行わない一方で、巨額の債務を期
日どおりに、また、前倒しで返済している(特に、IMF およびパリ・クラブ債権国に対し)。2005
年を通じて、ロシアは対外債務を 320 億ドル減少させた。現在の状況と傾向からすると、同国は
数年前までは解決できるとは見えなかった対外債務問題を基本的に処理したと言うことができる。
ロシア財務省によると、2006 年初時点の国家対外債務残高は約 800 億ドルである。国家債務の
対 GDP 比は約 30%であり、ロシアの状況は多くの先進工業国よりも良好なものになっている。
第 3 に、ロシア中央銀行における外貨準備高が大幅に増加している。2005 年には 577 億ドル
増加し、2006 年初時点の残高は過去最高の 1,822 億ドルに達した。ロシアの主な輸出産品の国際
価格動向を考慮すると、今後数年間にわたって同国の外貨準備は増加を続けるとみられる。なお、
ロシアは世界第 2 位の金産出国でもある。金の国際価格の上昇(米ドルの安定性に対する懸念を
背景に)は、国際金融上のロシアの立場を強化することにつながる。
第 4 に、近年のロシア財政はかつてないほど安定した状態にある。2005 年の連邦財政黒字は
GDP の 7.5%に達しており、慢性的な財政赤字に苦しみ、その穴埋めを外部からの多額の借入れ
で補っていた 1990 年台とは全く様相が異なっている。現在の財政的安定は、外国貿易からの利
益、着実な内需の伸び、並びに税務行政の改善と徴税率の上昇といった肯定的な要素の組み合わ
せによってもたらされている。
第 5 に、ロシアの財政戦略は、将来避けられない国際商品価格の下落を相殺する措置も含んで
いる。その目的のために、通常の連邦予算の枠外で 2003 年に安定化基金(一種の国内財政引当
金)が創設された。同基金残高は急速に増え続け、2005 年末時点には 1 兆 5,000 億ルーブル(500
億ドル超)という巨額に達している。
以上のことを勘案すると、当面、ロシアのマクロ経済は安定的に推移し、また、1998 年に起き
たような金融危機が再び生じる可能性は小さいと考えられる。
) 年のロシアにおける混乱は、同国に対する直接投資と再投資という長期的戦略を追求した外国企業に
は、深刻な損害を与えなかった。むしろ、ルーブルが 4 分の 1 に急激に切り下げられ、同時に多くのロシア企
業が一時的に急速に弱体化する中で、国内資産は外国人投資家にとって大幅に値下がりした。この状況下で、
ロシアから逃げ出さなかった投資家は、現地での活動を拡大させるチャンスを手にしたことになる。主な損失
は、ハイリスク・ハイリターンのロシア政府国債への大規模な投機によって一攫千金を狙った銀行や企業にお
いて生じた。
6 1998
15
補遺:ロシアにおける企業設立について
1. 概要
外国企業にとって、ロシア国内での事業立ち上げに際しては以下のような選択肢がある。
-駐在員事務所もしくは支店
-株式会社:閉鎖(譲渡制限)型(ロシア語の略語で ZAO)あるいは公開型(同 OAO)
-有限会社(同 OOO)
-パートナーシップ
2002 年以降、ロシアにおいて合法的に活動する企業は、現地の(ロシアにおける公式な所在地
を管轄する)税務当局に登録することが義務付けられている。ロシアにおける企業登録について
は、以下の法令が規定している。
-ロシア連邦における外国投資に関わる連邦法(1998 年)
-民法典(1999 年)
-法人の国家登録に関わる連邦法(2001 年)
-法人の国家登録における執行権力を有する連邦組織に関わる政府決定(2002 年)
特定の産業分野を除いて、外資 100%の企業設立も認められている。1)
支店や駐在員事務所は、ロシア国外に所在する企業の活動支援、代表としての交渉を含む商行
為を行うことができても、独立した法人とはみなされておらず、厳密には自らの行為を通じて利
益を挙げてはならない。だが、支店の設立は、現地におけるビジネス・チャンスを調査するため
の第一段階として有用であろう。例えば、ブリティッシュ・ペトロリアムを始めとする多くの国際
企業は、ロシアでの活動を支店の形態でスタートさせている。なお、支店の認可期間は 1~5 年
となっている。
新しく設立された企業は、現地税務局、国家統計機関および政府予算外基金(年金基金、社会
保障基金、強制医療保険基金)に登録しなければならない。税務当局における法定登録は実働
5 日間でできることになっているが、諸準備や上記の各基金への登録にかかる日数を加味すると、
申請書類がすべて正しく用意されていることを前提として、最低 2 週間を見込む必要がある。外
国投資家は登録された株主資本に対する自らの出資分を、ルーブルもしくは外国通貨で払い込む
ことができる。外貨による支払いは外国の銀行におけるその投資家の口座から直接送金すること
ができるが、ルーブル建ての支払いの場合は特別なルーブル勘定口座を開設しなければならず、
税務当局に対する投資家の登録手続きも含め、企業設立に要する全体の期間が長引くことになる。
法人化されたロシア企業は、設立者(株主)総会(最高統治機関)および執行機関(社長単独、
もしくは社長と取締役会によって代表される)によって運営される。取締役会が創設された場合、
それは経営的機能というよりはむしろ監督的機能を持つ。取締役会のメンバーは、委任権に基づ
くもの以外、その企業を法的に拘束してはならないことになっている。
1
)特定分野については、前項「特別な制限が外資ビジネスに与える影響(参入障壁)」を参照。
16
2. 駐在員事務所
駐在員事務所は一般的に、外国法人を代表するその下部組織であり、商業取引を行わないと理
解されている。しかし、民法典は、「駐在員事務所は異なる地点に所在する法人の独立した下部
組織であり、当該法人の利害を代表しこれを保護する。それは銀行口座を開設し、ロシア連邦領
内における業務の促進活動を行う権利を有する」と規定し、そうした商業活動を排除していない。
それ故に駐在員事務所は、ロシアで事業を立ち上げようとする外国企業にしばしば最初に利用さ
れる組織形態となっている。
外国企業の駐在員事務所もしくは支店は、現地の税務当局、社会保険基金およびその他の国家
機関への登録を要する。事業活動の性質によって、その企業がロシア税制の対象となるか決めら
れる。一般的に、課税対象となる活動が行われていなくても、また利益が計上されていなくても、
税務報告書は作成しなければならない。駐在員事務所開設の認可を得るためには、以下の書類を
当局に提出しなければならない。
-申請書
-当該外国企業の設立に関わる書類
-当該外国企業が籍を置く国の商業登録抄本、ないしその登録を証明するその他の書類
-駐在員事務所に関する情報を記した印刷物
-国税支払いのための書類
-ロシア国内における駐在員事務所の所在地を証明する書類
-親会社からの代理委任状
3. 株式会社
公開型株式会社の株式は自由に譲渡可能であるが、閉鎖(譲渡制限)型株式会社の株式譲渡は
制限されており、他の株主が優先買い取り権を有している。株式会社設立に対して要求されてい
る最低資本額は、公開型株式会社で月額最低賃金の 1,000 倍(現在、約 3,700 ドル)、閉鎖(譲
渡制限)型株式会社で月額最低賃金の 100 倍(同 370 ドル)とされている。2)株主の人数は公
開型株式会社には上限がないものの、閉鎖(譲渡制限)型株式会社の場合は 50 人を超えてはな
らない。株式会社は単一株主企業によって設立され、また、所有されてはならない。株式会社の
統治機構は、株主総会と取締役会である。普通株および優先(無議決権)株の発行は認められて
いるものの、無記名株の発行は認められていない。株式は法律上有価証券として扱われているた
め、株式会社は有価証券市場関連規則の適用対象となり、それには株式の発行・売り出し、目論
見書の登録、株式の買い戻しならびに転換、転換社債の発行・売り出し、株主登録の保持、企業
情報開示等に対する法手続きが含まれる。株式会社設立資本の最低 50%は登録が行われた日から
3 ヵ月以内に、発行済み株式の残額は同じく 1 年以内に払い込まれなければならない。会社設立
者は、設立の時点で発行された全ての株式に署名する。この段階での株式の公開売り出し、売却
は許されていない。
2
)「月額最低賃金」は、さまざまな国の料金、手数料の算定に用いられる指標で(現在、100 ルーブル、ドル換
算で約 3.7ドル相当)、労働者に支払われる賃金との関係は無い。
17
4. 有限会社
ロシアの関連法は、有限会社の参加者(設立者)の完全な保護を保証している。例えば、参加
者はいかなる時にも会社を去る権利を有し、その持ち分は買い取られなければならない。また、
買い取りのための資金が会社側に無い場合、有限会社の設立メンバーは、会社定款あるいは会社
設立メンバー全員の合意により、各々の出資規模あるいは価値の如何にかかわらず、仮にそれが
会社を破産に追い込むことになるとしても、補償措置(資産の強制売却等)を要求する権利とそ
れを遂行する義務を有している。
一方、特定の条件下で有限会社のメンバーは、それらの持ち分合計が資本金の最低 10%となる
ような他の(複数の)メンバーの要求に基づき、法廷手続きによって会社から追放されることも
ありうる。有限会社の設立メンバーの数は 50 人を超えてはならない。また、法定最低資本金は
月額最低賃金の 100 倍(約 370 ドル)である。会社登録申請が行われる以前の段階で、会社資本
の最低 50%が払い込まれていなければならず、残額は 1 年以内に支払われなければならない。こ
の手続きには通常、新会社の資本形成のためだけに使用される暫定口座を現地銀行で開設するこ
とが必要である。会社設立が完了し、必要な書類の提出がなされたら、この暫定口座は通常の当
座預金口座に転換される。有限会社の持ち分資本は、法律上有価証券とはみなされない参加権利
によって構成されることから、有限会社は有価証券市場規則の適用対象とはならず、公開売り出
しはできない。また、参加権利の規模や価値が違っても、会社設立者総会における投票権は全て
に対して与えられる。
有限会社設立メンバーは、参加権利の第 3 者への売却申し出に対して優先買い取り権を有する。
また、会社設立文書の中で参加権利の第 3 者への売却を禁じる規定を設けることもできる。
有限会社を設立するためには、以下の書類を現地の税務当局に提出しなければならない。
-申請書
-新会社の定款
-外国企業の定款(有限会社に参加する場合)
-有限会社参加者の公証された旅券コピー
-国税支払いのための書類
-ロシア国内における会社の所在地を証明する書類
5. パートナーシップ
ロシア民法典に基づいて形成されるパートナーシップは、会社とは異なる法的特質を持ってい
る。両者の基本的な違いは、パートナーと株主の責任範囲に関する規則にある。パートナーシッ
プの場合、そのパートナーは組織の負債に対する無限責任を負うが、会社における株主責任は彼
らの出資額が上限となる。無限責任原則に加え、専門的な責任保険システムが整備されていない
という事情から、ロシア人事業家や外国人投資家にとってパートナーシップは、会社の設立に比
べ明らかに好まれない選択肢となっている。なお、パートナーシップに対する税務の取扱いは、
会社と同様である。
現時点における国家登録の手数料は 2,000 ルーブル(約 74 ドル)である。ロシア国内の主要
18
都市において、多くの国際的な、あるいは地元の法律・会計会社が企業設立に対する助言ならび
に支援サービスを提供している(付録の関係機関リスト参照)。
付録:関係機関リスト
Russian Governmental Organizations
Government of The Russian Federation
http://www.government.gov.ru/
Ministry of Internal Affairs
http://www.mvdinform.ru
Federal Migration Service
Ministry of Foreign Affairs
http://www.mid.ru
Ministry of Justice
http://www.minjust.ru
Federal Registration Service
Ministry of Education and Science
http://www.mon.gov.ru
Federal Service for Intellectual Property,
Patents and Trade Marks
P
http://www.fips.ru/
Federal Service for Supervision of Education and Science
http://www.obrnadzor.gov.ru/
Federal Agency for Science and Innovation
http://www.fasi.gov.ru/
Federal Agency for Education
http://www.ed.gov.ru
Ministry of Natural Resources
http://www.mnr.gov.ru
Federal Agency for Water Resources
Federal Agency for Forestry
Federal Service for Supervision of Nature Resources
Federal Agency for Management of Mineral Resources
19
Ministry of Industry and Energy
http://www.minprom.gov.ru
Federal Industrial Agency
http://www.rosprom.gov.ru
Federal Agency for Technique Regulation and Metrology
Federal Energy Agency
Regional Development Ministry
http://www.minregion.ru
Federal Agency of Construction and Housing and Communal Services
http://www.gosstroy.gov.ru
Ministry of Agriculture
http://www.mcx.ru
Federal Service for Veterinary and Phytosanitary Supervision
Federal Agency for Fishery
Federal Agency for Agriculture
Ministry of Transport
http://www.mintrans.ru
Ministry of Information Technologies
Technologies and Communications
http://www.minsvyaz.ru
Ministry of Finance
http://www.minfin.ru
Federal Taxation Service
http://www.nalog.ru/english.php?topic=english
Federal Service for Insurance Supervision
http://www1.minfin.ru/insurance/insurance.htm
Federal Service for Fiscal and Budgetary Supervision
http://www1.minfin.ru/fsfbn/fsfbn.htm
Federal Service for Fiscal Monitoring
http://www.kfm.ru/
Federal Treasury(federal service)
http://www.roskazna.ru
Ministry of Trade and Economic Development
http://www.economy.gov.ru
20
Federal Customs Service
http://www.customs.ru/ru/
Federal Agency for Realty Cadastre
http://www.kadastr.ru
Federal Agency for Management of Federal Property
Federal Agency for Special Economic Zones Management
Federal Antimonopoly Service
http://www.fas.gov.ru/
Federal Tariff Service
http://www.fstrf.ru/
Federal Service for State Statistics
http://www.gks.ru/
Bank of Russia (Central Bank)
http://www.cbr.ru/
Business and Commercial Organizations
Chamber of Commerce and Industry
http://www.tpprf.ru
Ernst & Young CIS (offices in Moscow, Saint Petersburg, Ekaterinburg, Novosibirsk,
Yuzhno-Sakhalinsk)
http://www.ey.com/cis (information is available in Japanese language at “Japan desk”)
Deloitte & Touche CIS (offices in Moscow, Saint Petersburg, Yuzhno-Sakhalinsk)
http://www.deloitte.com/dtt
Baker & McKenzie CIS (offices in Moscow, Saint Petersburg)
http://www.bakernet.com/BakerNet/Locations/Europe%20Middle%20East/Offices/Russia/def
ault.htm
Norman DL Associates (Moscow)
www.ndla.ru
VISTA Foreign Business Support (Moscow)
www.vfbs.ru
21
Commersant (Moscow)
http://www.reforms.ru
Others
RussianRussian-Japanese Trade and Investment Promotion Organization
(Russian)http://www.tip-ro-rj.economy.gov.ru
(Japanese)http://www.jp-ru.org/
22
~コラム~
ロシアとウクライナの国民性および現地のビジネス慣行
基本的にロシア人とウクライナ人は、比較的よく似た国民性、文化的アイデンティティー、言
語、ビジネス慣行等で特徴付けられる。そこには共通したスラブ民族であるということ、また共
生ならびに相互関係の長い歴史があり、市場経済への移行期間において同様の問題を抱えてきた
ことなどが背景にある。1)この地域で事業を行う日本の投資家が理解しておくべきビジネス慣行
には、以下のようなものがあげられよう。
-スラブ民族の時間に対する観念は日本人ほど厳格ではない。先方は相手に時間厳守を期待する
一方で、自らが遅れてくることは日常茶飯事。
-現地の郵便は時として信頼性に欠けるため、コンタクトをとるにはファックスか E メールが望
ましい。
-将来のパートナーに対し、訪問前に目的と提案について知らせておくことが慣例。
-署名のない書類はほとんど意味がない。ビジネスの実践においては文書作業が核心となる。
-名刺は不可欠。片面はロシア語もしくはウクライナ語で印刷すること。
-重要な問題は非公式な場で話し合っても構わないが、最終交渉は事務所の中で行うこと。
-個人的かつ非公式な関係の構築が重要である。時として「プライバシー」はあまり尊重されな
い。例えば、会議において腕に手を乗せる、軽く抱擁するなどの身体的なコンタクトは無礼な
行為、ハラスメントではなく、友好的姿勢の表れと受け取られる。
-摩擦が生じた場合には、公式な姿勢で臨むのは避けた方がよい。スラブ人は「人物重視」を旨
としており、より個人的なアプローチが功を奏する場合が多い。
-ビジネス・ネゴにおける安易な妥協は相手が弱みを抱えているからだと解釈される。
また、ロシアとウクライナにおいて、以下はごく当たり前のことである。
-挨拶および辞去に際し、固く手を握って握手すること。
-目線を直接合わせること。
-本題に入る前に、家族や個人的なことについて軽く話をすること。
-若干の感情を表面に出すこと。
その他、注意すべき点として以下の点がある。
-入口(敷居)をまたいだ、あるいはテーブルの上での握手は悪い兆しとみなされる。
-誰かが何かを残して去った時、その本人はまた戻ってくるという迷信がある。
-プレゼントとして贈る花の数は奇数でなければならない。偶数の花は葬式においてのみ。
-冬に握手をする時、紳士は手袋を外す。これは西欧では礼儀からだが、ロシアとウクライナで
は義務である。
-親指と人差し指で○を作る OK サインは無作法とみなされる。
上記のことにかかわらず、一般的に両国とも、優れたコーポレート・ガバナンスやビジネス実
践の理想形からはなお程遠いということができる。いずれも、汚職、贈収賄、えこひいき、契約
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上の義務の軽視といった問題に苛まされている。これらの状況はウクライナの方がより深刻であ
るように思われ、ビジネスを行う上でそうした点も考慮しておくべきである。
1
)ロシアとウクライナは多民族国家であり、多様な国民性があるという点を理解しなければならない。特に両国
の政治エリートや実業界には、ユダヤ系ロシア(ウクライナ)人、アルメニア人やグルジア人の成功者が少な
からず存在する。他方、ロシアにおける小売露天商、特に果実・野菜売りはアゼルバイジャン人が多い。
ロシア人とウクライナ人を単純に比較すると、イギリス人とスコットランド人の区別に似た面がある。ウク
ライナ人は総じてロシア人より勤勉で倹約家(あるいは実践的)であり、目的意識が強いと表現することがで
きる。しかしながら、そうした長所はしばしば、過剰な貪欲さ、自己中心主義、頑迷さ、契約義務に対する抵
抗といった短所につながる(と、少なくともロシア人は一般的に考えている)。
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