...

大 腿 深 動脈 特 に 貫通 動 脈及 び 大腿 背 側 の 動 脈 分 布 につ

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

大 腿 深 動脈 特 に 貫通 動 脈及 び 大腿 背 側 の 動 脈 分 布 につ
611.
137.
8
大 腿 深 動 脈 特 に 貫 通 動 脈 及 び 大腿 背 側 の
動 脈 分 布 につ い て
岡山大学医学部第2解 剖学教室(主 任:大 内 弘教授)
加
緒
藤
宣
博
〔昭和37年11月7日
受稿〕
筋 との 間,即 ち短 内転 筋 の 表面 をや や斜 め に下 行 し,
言
下 部 で は 内転筋 の停 止 に近 ず く.こ の 間, 1∼3枝
大 腿 深 動 脈(A.
profunda
femoris),貫 通 動 脈
(Aa. perforantes)並 び に 大 腿 骨 栄 養 動 脈(Aa.
nutriciae femoris)に
つ い ての 研究 は,発 生 学 的 な
面,比 較解 剖 学 的 な面,更
程 度 の 貫通 動 脈及 び屡 々直 接 に大 腿 骨栄 養 動 脈 を分
枝 す る.長 内転 筋 の上 縁 に達 す る附近 で は この筋,薄
筋及 び大 内転 筋 に枝 を 与 え る.多 くの場 合 終 枝 は更
には 破 格 につ い てな ど幾
に 長 内転筋 と大 内転 筋 と の間 に入 つ て 下行 し,こ の
多 の 先 人 の 業 績 が あ る.先 づ 発 生 学的 な 函 で は
両 筋へ の 枝及 び 下部 の 貫通 動 脈,又 屡 々直 接 に大 腿
Hochstetter1), Leboucq2), Zuckerkand13)な
骨 栄養 動 脈 を分 枝 す る.最 終 枝 は大 内転筋 に入 つ て
ど下 肢
動 脈幹 発生 の 研 究 に始 ま りSenior4)-7)に至 りそ の全
終 るこ と もあ るが通 例 最 後 の貫 通動 脈 とな る.な お,
貌 が解 明 され,比 校解 剖学 的な 面 で はPopowsky8),
こ こで貫 通動 脈 と呼 ぶの は,一 般 に記 載 され て い る
Bluntschli9)10), Hochstetter1),塚 口11)な どの 業 績 が
如 く,内 転筋 の停 止腱 膜 を通 例 骨 に接 して貫 き後 方
挙げ られ る.然 し乍 ら大 腿 深動 脈の 分 枝,特 に貫通
に出 る もの の みを 云 うの は勿 論で あ る.併 しこの 他
動 脈に つ いて の 研 究 は英 国 解 剖 学会 の 第9回 調 査報
に大 内転 筋 に入 る筋枝 の 中に は一 部,あ るい は大 部
告(Parsons 190012))に取 り あ げ られ て い るだ けで あ
分 これ を貫 い て大 腿 背側 に分布 す る もの が あ る.こ
つて,そ の定 義 や 筋枝 の記 載 に つ いて は甚だ 曖 昧な
れ は大 腿骨 よ りはか な り離 れ て存 し,所 謂 貫通 動 脈
点が多 々あ る様 に思 われ る.著 者 は これ らを詳 細 に
とは全 く異 な る もの で あ るが,時 に混 同 され てい る
肉眼 的に観 察 して 新 ら しい知 見 を 得 たの で 報告 す る.
な お,大 腿 骨 栄 養動 脈 につ い て は稿 を改 め て報告
す る.
ことが あ る ので 注意 を 要 す る. Parsonsの
報告 で は
か か る動 脈が 真 の貫 通 動 脈を 代償 す る場 合が あ る こ
とを考 慮 して,こ れ を 貫 通動 脈 に含 め て い るが,こ
れ は正 しくな い.著 者 は便宜 上 これを 「内側 貫通 枝 」
材 料 と 方 法
と呼 んで 区別 す る こと にす る,又,貫
使 用 した材 料 は岡 山 大学 医 学 部 の1958∼1960年
度系統 解 剖実 習 に於 け る 日本 人成 人屍69体,
(左側63,右 側62)を
125側
用 い た.屍 体 は すべ て,大 腿
動脈 よ り10%ホ ルマ リン液注 入 後70%ア ル コー ル槽
中に保 存 され た もので あ る.
方 法 は,大 腿 動 脈 の 分 岐状 態並 び に大腿 深 動 脈 の
起始 よ り末 梢 に 至 る まで 出来 得 る限 り詳細 に剖 出記
録 し,更 に末 梢 部 は30%青 色 エ ナ メ ルを注 入 後,大
腿骨 を残 して 筋 ・神 経 ・血 管 な どを 一 つ の ブ ロ ック
と して取 り出 し,必 要 に応 じて拡 大 顕 微鏡 を用 い て
通動 脈 は筋 の
間,又 は表 面 を通 る時 に小枝 を これ に与 え,又 第I
貫 通 動脈 は 大 内転 筋 を貫 く際 に筋 に枝 を与 え るの が
普 通 で あ る.本 論 文 で は これ らはすべ て 考慮 の外 に
おい た.
な お,第II貫 通 動 脈 以下 の貫 通 動 脈 は通 例骨 に接
して 腱膜 を貫 くので,こ の部 は腱 弓 状 をな して い る
こ とが 多 い.又,第II以
下 の 貫通 動 脈 は大 内転 筋 を
貫 くと直 ち に大 腿二 頭 筋短 頭 に枝 を 与 え乍 ら,こ れ
を貫 い て 外側 広 筋 に入 り,そ の 他 に枝 を もた な い場
合 が多 い.そ の為,短 頭 と大 内転筋 との間 を 骨 に達
追跡 した.
す る迄 分 け て行 か な けれ ば全 く見 えな い の が普 通 で
所 見 と 考 察
1.大
腿 深 動 脈 の分 枝(図1)
大腿 深 動 脈 は恥骨 筋 の表 面,次 い で これ と長 内転
あ る.
842
加
藤
宣
博
調 べ た 限 り で は 未 だ な い 様 で あ る.そ
類 を 調 べ て 見 た の で あ る が,そ
あ る.即
BNA,
ち,主
と し て ドイ ツ,日
INAの
tertia)に
命 名(A.
従 つ て3本
Morris,
Sieglbauer,
Lubosch,
dock,
perforans
子).
Sappey,
Last,
Bardeleben,
Henleは,通
が 時 に2-4本
PNAで
Anson-Mad-
Gardnerの
教科 書
通動脈を区別す
常3本
い こ と が あ る と し,岡
Gegenbaur
Callander,
Lockhart,
Pern-
Oertel, Schultze-
な ど 英 ・米 で は 一 般 に 第1-第4貫
る事 が 多 い.
secunda,
Spalteholz,
Braus,
Cunningham,
Grant,
prima,
Sobotta,
Gardner,
Hafferl,
平 沢,金
本 の 教 科書 で は
と して い る も の が 多 い(Gray,
Rauber-Kopsch,
kopf,
こで 諸 教科 書
の記 載 は 全 く区 々で
だ が不 定 で 更 に多
嶋 の 教 科 書 で は,普
通3本
の こ と も あ る と述 べ て い る.な
は 単 にAa.
perforantesと
な つ た .こ
だ
お,
れ は
恐 ら く数 が 不 定 で あ る こ と を 考 慮 した も の と 思 わ れ
る.
さ て,著
者 の 調 査 した 結 果 は 表1に
不 定 で あ る.し
目 立 つ て い る.即
占 め,
示 す様 に甚 だ
か も 従 来 の 記 載 よ り も数 の 多 い 事 が
ち4本
又 は5本
の場 合 が 大多 数 を
6本 の 場 合 も亦 少 な くな い.平
均 す る と4.66
本 に な る.勿
論 こ の 中 に は か な り細 い も の も含 ま れ
て い る し,又
大 腿 深 動 脈 か ら共 通 幹 を な し て 起 り,
内 転 筋 の 停 止 腱 膜 を 貫 く 前 に2-4分
ら れ る.従
Fig. 1. The perforating
muscles.
C. f. m.:
Medial
Pect., Long.,
muscles
SM,
IM:
arteries
and the
Min.,
は1幹
をな
と数 え る様 に すれ ば 多少 従 来 の 記載 と
か し細 い も の と
artery
言 つ て も厳 密 な 一 線 を 画 す る こ と は 不 可 能 で あ り,
Mag.: Adductor
又1幹
Muscular branches
to the adductor
gnus that give off the superior
medial perforating
branches
and
ma
inferior
I: Ist
perforating
artery,
which enters behind
the pectineus,
pierces the adductor brevis (1)
and the adductor minimus (2) and appears be
tween the adductor
magnus.
す も の を1本
合 う様 に な る こ と が 考 え られ る.し
circumflex
Brev.,
adductor
す る もの も見
つ て 細 い 枝 を 無 視 し た り,又
minimus
and the adductor
II: IInd
perforating
artery,
which pierces the
adductor brevis and the adductor magnus, in
the interspace
between the pectineus and the
adductor longus.
III:
IIIrd perforating
arteries,
which descend
behind the adductor longus
adductor magnus.
and
pierce
the
を な す と 云 つ て も 後 述 の 如 く,全
を 異 に す る2本
に 分 れ て 到 底 これ を1本
と の 出 来 な い 場 合 が 少 な く な い.従
は 不 可 能 で あ つ て,大
通 動 脈 の 数,定 義 及 び 分 岐
a)貫
通 動 脈 の数
貫 通 動 脈 の数 に 関 して 特 に 研究 した 報告 は著 者 の
に数 え る こ
つ て か か る整 理
内転 筋 を 貫 く 位 置 で そ の 数 を
大 小 も ら さ ず 機 械 的 に 数 え る他 は な か つ た.
貫 通 動 脈 に は 大 腿 動 脈 又 は 膝 窩 動 脈 か ら起 り,大
内 転 筋 の 腱 膜 を 貫 く も の が 屡 々 存 在 し,そ
の経 路 分
布 は 大 腿 深 動 脈 か ら起 る 遠 位 の 貫 通 動 脈 と 全 く一 致
す る.著
者 は こ れ を22側,
で あ る が,膝
を 貫 く1例
17.6%に
み た.通
窩 動 脈 か ら起 り2分
が あ つ た.こ
の 種 の 貫 通 動 脈 は,大
少 な い 例 に比 較 的 多 く見 ら れ る.こ
表3は
る.こ
例1本
して か ら大 内 転 筋
動 脈 の 遠 位 の 貫 通 動 脈 を 代 償 す る の で,後
動 脈 の 数 は 表2に
2.貫
く経 路 分 布
腿深
者の数の
れ を加 え た貫 通
示 す 通 り で あ る.
大 腿 深 動 脈 か ら 直 接 分 岐 す る数 を 示 し て あ
れ が 更 に2-4本
あ る の で 当 然 表1よ
の貫 通 動脈 に分 れ るこ とが
り は 少 な くな る.平
均4.02本
で
大腿深動脈特に貫通動脈及び大腿背側 の動脈分布について
Table
1.
Number
of the perforating
adductor
*
Including
the
Table
2.
so-called
adductor
minimus
arteries,
at the piercing
points
843
on the
magnus*.
.
Number of the perforating
arteries,
at the piercing points on the adductor
magnus, inclusive of the branches of the femoral or popliteal origin.
Table
3.
Number
of the
perforating
the
profunda
arteries,
at
femoris
artery.
the
branching
points
from
表1よ り0.64本 少 ない.即 ち平 均3例 に約2本 の割
内転 筋 を貫 いた の ち小 内転筋 を 貫 くか,又 は後 者 と
合 でか か る形 が存 す る こ とに な るが,実 際 には125
大 内転 筋 と の間 を貫 く.通 常,他 の貫 通 動脈 に比 し
側 中66側 に見 られ た.こ の様 に1幹 を 作 つて 分 れ る
て著 し く発達 し分布 も広 い.時 にそ の上 行枝(1又
枝 の大 部 分 は第1枝 で あ つ て第I貫 通 動脈(I)と
は2本)が
第II貫 通 動 脈(II)に
ことが あ る.こ の 時 はIが2乃
な る場 合 が多 い.以 下 記 載の
便宜 上,大 腿 深動 脈 か らの直 接 枝 を そ の分 岐 の 順 に
従 つて 第1枝,第2枝
… … と呼 ぶ こと に す る.勿 論
この場 合 他 の筋 枝 と栄 養 動脈 は無 視 す る.
b)第I,第II及
至3本 存 在 す る こと
にな る. Iの 欠 除 した例 は見 られ な かつ た.
第II貫 通動 脈(II)は,大
腿 二頭 筋 短 頭 の上 方 乃
至 短頭 起 始 の上1/3の 範 囲 で大 内転筋 を貫 き背 面 に
び 第III貫通 動 脈 の 定 義
出 る もの を 云 う.短 内転 筋 を 貫 い た 後 又 は そ の 下
以 上 述 べ た如 く,貫 通 動脈 の数 及 び 分 岐 は変 異 が
多 く,単 に これ を近 位 の もの か ら第I,第II等
独 立 して小 内転筋 を 正常 よ り上位 で 貫 く
と呼
縁 よ り下 方 で,大 内転 筋(小 内転筋 を除 い た部)を
貫 く.そ の主 枝 は短頭 の上端 を こえ るか,又 は その
ぶ こ とは 勿 論意 味 をな さな い.併 し従 来第1貫 通動
上 部 を貫 い て外 側広 筋 に入 る. IIも時 に2∼3本
脈 と呼 ば れ て い る動 脈 の 経路 及 び分 枝 は非 常 に定型
られ る,又,
的で あ り,又 そ の下 方 に 出現 す る貫 通動 脈 も比 較 的
一定 の 経 路,分 布 を示 す の で,著 者 は これ を そ れ ぞ
場 合 が あ る.こ れ は すべ てIIと 見 な した. IIの 欠 如
れ に第I,第II貫
通 動 脈 と呼ぶ.更 に下 方 に 出現 す
る もの は,数,高
さ及 び太 さ が不 定 で あ るの で,こ
見
Iの 小枝 が分 れて 大 内転 筋 主 部 を貫 く
例 は なか つ た.
第III貫通動 脈(III)は,短
頭 起 始 の下2/3の 高 さ
で 内転 筋 を貫 くもの を総 称 す る.大 内転 筋 の み を貫
れ を一 括 して第III貫通 動 脈 と 呼 ぶ こ とに す る.即 ち
く こと が多 い.数 は最 も不 定 で2又 は3本 が 多 い が,
次 の通 りで あ る.
4本 以 上 の 事 も珍 ら し くな い.
第I貫 通動 脈(I)は,小
内転 筋 と大 内転 筋 主部
と の間 か ら大 腿 の背 側 に 出 る もので あ つ て,通 常短
1例 で は欠 如 してい
た.
IIとIIIとを大 内転 筋 を貫 く高 さで 区 別 す る こと は
844
加
藤
一 見 か な り人為 的 に思 わ れ るか も しれ な い
宣
博
.併 しI
の 下 方 に 現 わ れ る動 脈 は 二頭 筋 短頭 上 端 部 附近 の高
と な る もの で あ る.こ の う ちAは 第2枝 が 分 岐 し
さ に集 中 して お り,短 頭 の 中 部以 下 に 出現 す る もの
あ る.
な い もの, Bは 第2枝 が2本 のIIに 分 れ る もの で
と は明 らか に 異 な つ た群 な を して い る.両 者 の 中間
第II型 第1枝 がIとII,第2枝
部 に現 わ れ て 上 の定 義 か ら人 為 的 に 区別 せ ざ るを得
の.こ の う ちAはIIが1本,
な か つ た 例 は 数例 に過 ぎな か つ た.
在 す る もの で あ る.
Fig.
The IIIrd
of the femoral
perforating
and from
artery
from
the distal
以上存
第III型 これ はIIが2本 以 上 あつ て
2. Origin of the perforating
arteries(I,
II and III).
All the other muscular branches are neglected .
F and P:
以 下 がIIIとな るも
BはIIが2本
第1枝 と第2枝
とか ら分れ る もの
で あ る.
part
the popliteal.
第IV型 第1枝,第2枝
I,
が それ ぞ れ
IIと な り, IIIを欠 いだ1例 で
あ る.
理 論 的 に は こ の他 に も種 々の 型 が考
え られ る.例 えば 第2枝 が2分 して
IIとIIIにな る もの な どで あ るが,出
現 を 見 な かつ た型 は すべ て 省 い た.
この 図 か ら知 られ る様 に,第1枝
か らI又 はIとII,第2枝
又 はIIIが起 り,第3枝
IIIとな る. I,
か らはII,
以 下 は す べて
IIも2枝 以 上 に分 れ
て 内 転筋 を 貫 く こと が珍 ら し くない.
そ の た め,第1枝
が分 岐 す るこ とな
くIと な るの は64側51.2%に
過ぎ
ず, 2分 す る場 合 が(I+II又
はI
が2本 以 上)51側40.8%,更
に3
分又 は4分 す る場 合 がそ れ ぞ れ8側
6.4%及
び2側1.6%に
見 られ た.
第2枝 が分 岐 す るこ とは 稀 で(2分:
6側4.8%,
3分 な し),第3枝
が 分 岐 す るの はPの2分
以下
す る1側 と
第3枝 の2分 す る1側 で あ る.
3.第I貫
通 動脈
数 及 び 分 岐(図2)
1本 のみ の 場合 が大 多 数 を 占 め る
(125側 中92側,
73.6%).
2本,
3
本 の場 合 は そ れ ぞれ30側(24.0%)
及 び3側(2.4%)で
あ つ て,こ れ
は下 に述 べ る様 に上 行 枝 が 分 れて 小
内転 筋 を貫 くもの で あ る. 2本 以 上
あ る場 合,別
c)貫
る こ と は な い.即
通 動 脈 の起 始 及 び 分 岐
以 上 の 定 義 に 従 つて 命 名 した貫 通 動 脈 の数 及 び起
あ る,多
ちIは
く は 第1枝
が そ の ま まIに
始 状 態 を 示 す と 図2の 通 りで あ る.分 類 は整 理 す る
72.8%)の
た めの 便 宜 的 な もの に過 ぎな い が次 の通 りで あ る.
う ち の 上 位 の1∼2本(15側,
第I型
作 る こ と も珍 ら し く な い.
第1枝
がI,第2枝
がII,第3枝
以 下 がIII
で あ る が,
々に大 腿 深 動 脈 か ら起
す べ て 第1枝
II(19側,
か ら起 る の で
な る(91側,
15.2%),又
12.0%)と
はIIの
共通 幹 を
大腿深動脈特 に貫通動脈及び大腿背側の動脈分布について
Fig.
Table 4. Muscles pierced by the perforating
arteries (I, II and III).
Pect:
the
pectineus,
Mag:
the
adductor
adductor
minimus.
Br:
the
adductor
magnus,
4.
right
Arterial
thigh.
pattern
Normal
845
of
type,
the
back
of the
schematic.
brevis,
inclusive
of
the
経 路,特 に 内 転 筋 と の 関係(表4,図1).
最 も普 通 に見 られ るの は,恥 骨 筋 の 下縁 か ら この
筋 の裏(短 内 転 筋 との 間)に 入 り,水 平 に 走 り,あ
るい はや や 上行 して か ら短 内 転筋 の 腱 を骨 よ りや や
離 れ た所 で 貫 き,や や 外 方 に 向 つ て小 内転 筋 を貫 く
か,あ るい は これ と大 内転 筋 主 部 との 間 を通 つ て 背
側 に 出 る経 路 で あ る.い づ れ の 場合 に も背面 に現 わ
れ るの は大 内 転 筋 と小 内転 筋 との間 で あつ て,こ れ
ら斜 め に上 方 に向 つ て背 面 に 出 る と直 ちに通 常 一 本
がIの 主 枝 の 経 路 の基 準 で あ る. IとIIが 共 通 幹 を
の上 行 枝 を分 つ.主 枝(下 行枝)は,内
なす 場 合 に は,短 内転 筋 を 貫 く際,又 は貫 い た後 に
つ て 坐骨 神経 の下(大 内転 筋 との 間)を 下 行 し坐 骨
2分 し, Iは や や 上行 す る こ とが 多 い.表4に
神 経及 び屈 筋 群 に枝 を 与え る.
示す
様 に,短 内転 筋 の 上縁 を こえ るま で上 行 し,大 内転
側 下方 に 向
上 行枝 は大 殿筋 停 止 部 と小 内転 筋 停止 部 との間 を
筋 のみ を貫 く場 合,又 高 く分 岐 して 恥骨 筋 を も貫 く
上 行 し, 2-3枝
場 合が 稀 に認 め られ た.こ の様 に貫 く筋 に種 々の場
枝 は,更 に上 行 して大 転子 の動 脈網 に加 わつ て,下
合 が あ るの は,動 脈 自身 の経 路 の 高 さの違 い によ る
殿 動 脈,外 側 回旋 動 脈 の所 謂 横 枝,内 側 回旋 動 脈 の
他 に,内 転 筋群 の重 な り方 の程 度 如 何 に も大 い に 関
上 行 枝 と吻 合す る.そ の 他,小 内 転筋,時 に大 腿 方
係 す る.例 え ば短 内転 筋 の上 縁 を こえ る場 合 には こ
形筋 に も分 布 す る.大 腿 方形 筋 へ の 枝 は一 般 に細 い.
の筋 の上 縁 が低 いの で あ る(図1参
時 に は外側 広 筋 へ も枝 を 与 え る.上 行 枝 は屡 々,第
Parsons 1900の
照).
報告 で は,前 述 の 如 く貫 通 動脈
の定 義 が異 な るので は あ るが,第I貫
通動 脈 は極 め
を大 殿筋 の下縁 近 くに与 え る.一
I貫 通 動脈 が大 内転 筋 を貫 く前 に分 岐 して,主 枝 よ
り上 方で 小 内転 筋 を 貫い て 背側 に 出 る こ と が あ る
て典 型 的な 枝 で あ つ て,著 者 の場 合 と ほぼ 同 じもの
(30側, 24.0%).前
を さ して い る と考 え て さ しつ か え な い.貫 く筋 も著
は かか る場 合 で あ る. 3側 で は独 立 した上行 枝 が2
者の成 績 と よ く一致 す る(76例
本 あつ て,そ の う ち2側 で は上 位 の1木 は主 と して
7.9%;
Mag.
3.9%;
Br., Mag.
中Pect., Br., Mag.
88.2%)
述 の 様 にIが2本
あ ると した の
大 転 子へ,下 位 の 枝 は大 殿 筋 の み に分布 して い た.
分 枝 及 び分 布(表7,図4).
又 他 の1側 で は上 位 の枝 は半膜 様 筋,半 腱 様 筋,大
第I貫 通 動 脈 は大 内転 筋主 部 と小 内転 筋 との 間 か
内転 筋及 び 坐 骨 神 経 に 分 布 し(下 行 枝),下 位 の2
846
加
藤
宣
枝 は上 行 枝 に相 当 して い た.
博
Table 5.
Number
以 上 の 如 く,今 述 べ た最 後 の1側 を 除 くと上 行枝
and origin
perforating
of the IInd
arteries.
は常 にIの 最 も近 位 で起 る枝 で あ り,下 行 枝 は常 に
小 内転 筋 と大 内 転 筋主 部 との 間 か ら背 面 に現 わ れ る
枝 で あ る.
下 行 枝 は通 常坐 骨神 経 と大 内転筋 と の間 を 下行 す
るが,長 頭 枝 の一 部(時 に半 腱 様 筋 枝,半 膜 様筋 枝)
は坐 骨 神 経 の 後 を廻 つて 筋 に達 す る こ とが 多 い .併
し下 行枝 の主 枝 が坐 骨 神 経 の上 を こえ る場合 が時 に
見 られ る.下 行 枝 は経 過 中大 内転 筋 に 枝 を与 え る.
初 部 か ら起 つ て大 内転 筋 の 外側 上 部 に 入 る枝 の他 は
細 く且 つ 出 現位 置共 に不定 で あ る.下 行 枝 の坐 骨 神
経 枝 は103側(82.4%)に
113側(90.4%)に
認 め られ た.長 頭 枝 は
認 め られ,
2-3枝
あつ て この
筋 の主 要 な動 脈 で あ る事 が多 く,か つ そ の ほ ぼ中央
部 に入 る.半 腱 様 筋枝 は103側(82.4%)に
た.半 膜 様 筋 枝 は86側(68.8%)に
存在 し
認 め られ,
中 央 部 に入 る.こ の 他 に,半 膜 様 筋 の起 始 腱 膜 の 内
側 に あ る筋 束 に は,Iが
大 内転 筋 を 貫 く間 に 分 れ筋
束 を別 に貫 いて 大 内転 筋 主 部 の 上 部 の 内側 部 附 近 か
ら現 われ る枝 が しば しば 入 る(こ の 点 を 調 査 した
110側 中34側,
30.9%)
つ に数 え られ る(第6節
.こ れ は上 内側 貫通 枝 の一
参 照) .又 この 筋 に は 下 内
側 貫 通 枝 な どが 分布 す る こと が少 な くな い のでIの
枝 は必 ず し も主 要 な もの で は な い(第8節
その 他
参 照).
上 行 枝 と分 れ た 直後 に外 側広 筋 に入 る枝
を 出す 場 合 が59側(47.2%)に
認 め られ た.こ の 枝
の 末 梢 は 充 分追 求 しな か つ た が主 に外側 広 筋 に 分 布
す る と思 わ れ る.又,例
も枝 を与 え る(5側,
外 的 に は大腿 二 頭 筋 短頭 へ
4.0%).こ
れ は上 部 に入 る極
め て細 い枝 であ つ て,広 筋 枝 か ら分 れ る.
下 行 枝 は時 に著 し く発 達 が 弱 く,又 稀 に全 く欠 除
す るこ とが あ る(12側,
9.6%,表12,図5).こ
の
時 は下 内側 貫 通枝 又 はIIに よつ て代 償 され て い る.
4.第II貫
通 動脈
1st, 2nd, and 3rd branches:
second and the third direct
profunda femoris,
cular branches.
exclusive
the first,
the
branches of the
of the other
mus
表 面 で 大 腿 深動 脈 か ら起 り,短 内転 筋 の表 面 を斜 に
下 行 して,殆 ん ど骨 に接 す る所 で 短 内転 筋 と大 内転
筋 とを 同 時 に貫 くの が普 通 で あ る.貫 く高 さは定 義
の所 で 述 べ た如 く,大 腿 二 頭 筋 短頭 の上 方 乃 至起 始
の上1/3の 範 囲 で あつ て 且 つ 長 内転 筋 停 止 部 の上 縁
よ り も高 い のが 普通 で あ る(図1).第1枝
か ら起
る もの は通 常 第1枝 が短 内 転筋 を貫 く際又 は貫 い て
か ら分れ,大 内転 筋 と短 内転 筋 の関 を 斜 に やや 下行
した 後大 内転 筋 を貫 く.時 に は第1枝 が短 内転 筋 を
貫 く前 に起 つ て下 行 す るこ と が あ る.
表4に 示す 如 く,IIが 短 内転 筋 と大 内転 筋 とを貫
く場 合 は82側(65.6%)で
これ が正 常 型 で あ るが,
長 内転 筋 と短 内転 筋 との 間を 僅 か に下 行 し,短 内転
筋 の下 縁 を こ えて か ら大 内転 筋 を貫 く場 合 も少 な く
な い(33側26.4%).
IIが2本 以上 あ る場 合(22側
17.6%)に
は,貫 く筋 を異 に す る場 合 も多 い(10側
8.0%).こ
の うち8側 で は上 位 の枝 は ほ ぼ正 常 で,
短 内転 筋 と大 内転 筋 とを 貫 き,下 位 の枝 は短 内転筋
の下 縁 を こえ て大 内転 筋 の み を貫 い て い た. 2側 で
は下 位 の枝 が正 常 で,上 位 の枝 は第1枝 が恥 骨 筋及
び 短 内転 筋 を貫 い た後 に これ か ら分 れ て い た. 2本
数 及 び 分 岐(表5,図2)
以 上 あ つ て貫 く筋 が 同 じであ る12側 は上 の82側 及 び
1∼3枝
33側 の 中 に含 まれ て い る(そ れ ぞ れ11側 及 び1側).
み られ た.即 ち1本 の み の場 合 が82.4%
で大 多 数 を 占 め る.又 起 始 は第2枝 か らの 場 合 が普
通 で あ るが,第1枝
か ら又 第1枝 と第2枝 の両 者 か
ら起 る場 合 も稀 で は ない.第3枝
が第II貫 通 動 脈 と
Parsons 1900の 報告 で は各貫 通 動 脈 の 定 義 が明 確
で はな く,又
「
貫 通 枝 」 を も含 めて い る.従 つ て 著
な る もの は見 られ な かつ た. IIが3枝 存 在 した1側
者 の 成績 と直接 比 較 は 出来 な い訳 で あ るが,か な り
一致 した結 果 となつ て い る(56例 中Br .とMag.
で は3枝 共 に 第1枝 か ら起 つ て い た(II-B型).な
69.2%.,
お,第2枝
れ な いが,あ
が3本 以 上 に分 れ る こ とは な か つた.
Mag.
30.4%).こ
れ は偶然の一致か もし
るい は著 者 の定 義 が,一 般 に漠 然 と考
経 路,特 に 内 転 筋 と の関 係(図1,表4).
えて い る第II貫 通 動 脈 に大 体 一 致 して い る事 を示 す
IIは 恥 骨 筋 と長 内 転 筋 と の間 隙,即 ち短 内転 筋 の
もの と考 え られ る.
大腿深動脈特に貫通動脈及び大腿背側の動脈分布 について
分 枝及 び 分 布(表7,図4)
847
行 して大 殿 筋 の腱 を こえ,こ の筋 の 表面 及 び皮 下 に
第II貫 通 動 脈 の 主枝 は,大 腿 二頭 筋 の短 頭(Cbr)
の上を こえ,又 は そ の上 部 を貫 いて 広 筋(Vs)に
分布 す る.
入
そ の他,半 腱 様筋 枝(20側,
16.0%),半
膜様筋
る.そ の途 中,短 頭 の上 部 に分 布 す る枝 を 出す の が
枝(16側,
普 通で あ る.併 し2本 以 上 あ る とき はVs(時
が時 々見 られ た.こ れ らの枝 が出現 す るの は第I貫
にCbr)
12.8%)及
び坐骨 神 経枝(15側,
のみ に分布 す る もの の あ る こ と も珍 ら し くな い. II
通動 脈 下行 枝 の 分布 が 狭 いか,あ
のVs枝
れ をIIが 代償 す る場 合 で あ る(第9節
は119側(95.2%),
%)に 出 現 し た.又,
大 殿筋 枝(25側,
Cbr枝 は72側(57.6
Cl枝(44側,
20.0%)が
35.2%)及
び
かな りの頻 度 で 見 られ
6.
2nd
Number
and
Branches
and
3rd
of
origin
branches:
the
femoral
参 照),こ
の
り太 い下 行 枝 が 存在 し,こ れ か ら長 頭 枝,坐 骨 神経
枝,半 腱様 筋 枝 及 び半膜 様 筋 枝 が起 る(図6).
of
see
and
the
IIIrd
Table
perforating
arteries.
5.
popliteal
artery
5.第III貫
Table 7. Distribution
of the perforating
arteries (125 limbs).
るい は欠 除 し,こ
時 は, Iの 下 行枝 に類 似 した経 路 と分 布 を もつ か な
る.大 殿 筋枝 は短 頭 又 は広 筋 に入 る直前 に起 り,上
Table
12.0%)
are
included.
通動 脈
大腿 動 脈 あ るいは膝 窩動 脈 か ら起 る貫 通 動脈 は,
最 下 の第III貫通 動 脈 と全 く同 じ経 路 及 び分 布 を示 す
ので 以下 これ を含 め て述 べ る.
数 及び 分 岐(表6,図2)
1∼5枝
(0.8%)を
%),
見 ら れ た.又IIIを
欠 除 す る も の1側
み た. 2本 の場 合 が最 も多 く47側(37.6
3本 の 場合(30.4%),
が これ に次 ぐ. 4本,
最 上 位 のIIIは,第2枝
すべ て第1枝 がI+IIの
あ る場合(I及
1本 の 場 合(18.4%)
5木 の場合 は稀 で あ る(表6).
で あ る場合19側(15.2%,
場 合 即 ちII型)と 第3枝 で
びIII型)105側,
84.0%と
が あ る.
第2枝 が2分 してIIとIIIに分 れ る型 は見 られ な かつ
た.な お,第3枝
Sm:
the
St:
the
semitendinosus
CI:
the
long
Cbr:
Vs:
Gmax:
the
the
short
vastus
the
最 下 位 のIIIが大 腿動 脈 又 は膝 窩動 脈 か ら起 る場合
head
of
head
lateralis
gluteus
以下 も2分 す る こ と もあ る(2側
1.6%).
semimembranosus
the
and
maximus
biceps
intermedius
はそ れぞ れ10側, 8.0%;
12側, 9.6%に み た.大 腿 動
脈 又 は膝 窩 動脈 か ら起 るのは 普 通1枝 の み で あ るが,
時 に これ が2分
して大 内転 筋 を 貫 く1側 が あ つた.
848
加
藤
宣
博
経路(表4,図1)
側(2.4%),半
IIIは2本 以 上 あ る事 が甚 だ 多 い が,そ の す べ て の
枝 は5側(4.0%)に
枝 が 長 内転 筋 の 裏 を下 行 し短 内転筋 の下 縁 よ り下 方
で,大 内転 筋 の み を貫 く 場 合 が 圧 倒 的 に多 い(111
側, 88.8%).そ
の 他,
1本 の み 存在 し て 短 内転 筋
と大 内転 筋 とを 同 時 に貫 く1側(0.8%),及
び2本
以 上 あ つ て下 位 の もの は大 内転 筋 の み を貫 くが上 位
の もの が短 内転 筋 を も貫 く12側(9.6%)が
(表4).大
あつた
内転 筋 を貫 いて 後 方 に 出 る高 さは 短頭 の
腱 様筋 枝 は1側(0.8%),半
膜 様筋
み られ た に す ぎな い.そ の他,
短頭 の 中央 部 に入 つ た枝 が 筋 中 に分 布 しな が ら下 行
し,長 頭 と合 す る附近 で 直接 又 は一 度 筋 外 に 出て か
ら長頭 下 部 に入 る細 い枝 が常 に見 られ る.
大 殿 筋 及 び坐 骨 神 経へ の枝 は見 られ な かつ た.
6.内
側 貫 通枝(仮 称)に つい て
以 上 述 べ て来 た貫通 動 脈 は,大 内転 筋 の 大腿 骨 粗
線 停 止 部 を骨 に接 して貫 く もので あ るが,こ の 他 に
起 始 の 中1/3が 普 通 で あ る.
Parsons 1900の 報 告 では 各 貫通 動 脈 の 定 義 が明 確
筋 腹 を 貫 く動 脈枝 が あつ て,時 に貫 通 動 脈 と混 同 さ
で は な く,又
「内 側貫 通 枝 」 を も含 めて い る.従 つ
て著 者 の 成 績 とは直 接 に比 較 出来 ない .彼 の成 績 で
れ て い る.前 述 の如 くこれ を仮 り に “内側 貫 通 枝 ”
は54例 中Mag.の
筋 の 背面 に 現 われ る位 置 に よつ て上 下2群 を 区別 す
み77.8%,
Br.とMag.
22.2%
で あつ て 後 者 が か な り多 い .こ れ は著 者 がII又 は下
内側 貫 通 枝 と した もの の 一 部 が第III貫通 動 脈 に 数 え
られて い るた め で あ ろ う と推 定 され る.
と呼 ぶ.内 側 貫通 枝 は通 常1∼3本
存在 し,大 内転
る こ とが 出 来 る.
Fig. 3. Sites of emergence of the superior (SM)
and inferior (IM) medial perforating
arteries.
分 枝 及 び 分 布(表7)
二 頭 筋 短頭 に枝 を 与 え な が ら広 筋 に 入 るの が普
通 で あ る. 2本 以 上 あ る場合 には両 筋 の一 つ の み に
分 布 す る もの もかな り多 く見 られ る. IIと は逆 に,
短 頭枝(中 央 部 以 下 に 分布 す る)がIIIの 欠 除 した1
側 を 除 く124側 に存在 したの に反 して,広 筋 枝 の 出
現 はや や す くな い(85.6%).又IIIの
広筋枝に は特
に 中 間広 筋 に分 布 す る枝 が 多 い .そ の 他 の部 分 に分
布 す る枝 の 出現 す るこ と は稀 で あつ て,長 頭 枝 は3
Table
part
8.
Arteries
supplying
of the semimembranosus
the
proximal
muscle.
1)上 内側 貫 通枝(表8)
図3の 如 く大 内 転 筋 の 内側 上 顆 へ停 止 す る筋束 の
上 部 か ら現 われ,す べ て半 膜 様 筋上 部 のみ に分 布 す
る.通 常1枝 で あ る.欠 除 す る場 合 が110側 中16側
(14.5%)あ
つ た.
起 始 に は三 つ の 場合 が あ る.即 ち, (1)第1貫
* In total , the superior medial perforating
branches occurred in 90 limbs (81.8%).
** The proximal part of the muscle was supplied
by branches to the muscle belly.
通
動 脈 が 大 内転 筋 を貫 く前 に これ か ら起 り,こ の筋 に
枝 を 与 え なが らこれ を貫 く場 合(34側,
(2)大 腿 深動 脈 幹 か ら(“ 第1枝
30.9%),
” の起 る上 又 は下
で)直 接分 れ,大 小 内転 筋 を これ に枝 を 与え な が ら
大腿深動脈特 に貫通動脈及 び大腿背側の動脈分布につ いて
貫 く場 合(42側,
38.2%)の
他 に, (3)内 側大 腿 回
旋 動脈 か ら起 り短 内 転筋 と小 内 転 筋 との間 を 閉 鎖神
849
を 与え た の ち背 面 に現 わ れ る場 合(14側,
12.7%)
が み られ た.
経の 後 枝 と共 に下行 して 大 内転 筋 に 入 り,こ れ に枝
Table 9.
Number
Sm:
the
St:
the
semitendinosus
Cl:
the
long
2)下
and distribution
of the inferior
medial perforating
branches.
semimembranosus
head
of
the
biceps.
内側 貫通 枝
れ を主 流 とす べ きか 判 別 困難 の 場合 もあ るが,本 研
大腿 深 動 脈 か ら起 り,大 内転 筋 に枝 を 与 え な が ら
これ を貫 いて 図3の 如 く,筋 の 下 部 か ら背 面 に現 わ
究 で は便 宜 上 す べて 内側大 腿 回 旋動 脈 の枝 と した.
b)大
腿 動 脈 が 内転 筋腱 裂 孔 に達 す る直 前 にそ の
れ,主 と して 半 膜 様 筋 に 分布 す る. 2枝 以 上 存在 す
背面 か ら起 つ て 下行 し,腱 裂 孔 を通 るか,又 は腱 裂
るこ と も珍 ら し くな い(表9).欠
孔 の上 縁 を作 る腱膜 を貫 い て背 側 に 現 われ,半 膜 様
如例 は21.6%で
あ る.
筋,半 腱 様筋,二 頭 筋長 頭 な どの 下 端 部へ 分 布す る
分 布(表9):存
在 す る とき に は僅 か の例 外 を 除
小 枝 が125側 中62側(49.6%)に
認 め られ た.
い て は半 膜 様 筋 の 中 部 に分 布 す る枝 を もつ.分 布 が
c)膝
窩 動脈 が腱 裂 孔を 出 て か ら起 る筋 枝.
広 い時 は半 腱 様 筋,二 頭筋 長頭 及 び 坐骨 神 経 に も分
これ に は上 ・下2群 あつ て,上 枝 は通常1枝 で細
布 す るが,か か る こと は,特 に1枝 の場 合 は 比較 的
く,腱 裂孔 を 出た直 後 に起 り, 2∼3分
稀 で あ る.分 布 の広 い 場合 は,第I貫
部 にい た る.下 枝 は,通 常,内 側 ・外 側 の2枝 あつ
通 動 脈 の 発達
が弱 く,極 端 な場 合 は殆 ん ど(10側),又
(4側)こ
7.大
れ を代 償 す る(第9節
は完 全 に
参照).
腿 背 側 に分 布 す る そ の他 の 動 脈
大腿 背側 の 筋 は,こ れ まで 述 べ て来 た貫通 動脈 及
び上 ・下 内側 貫 通 枝 以 外 に他 の系 統 か らも動 脈 を う
して 屈 筋下
て それ ぞ れ 内側 及 び 外側 上 膝動 脈 よ りや や 上 方で 起
り,膝 窩 上 部 の両 側 の筋 に分 布す るかな り著 明 な動
脈 で あ るが 屈 筋下 部 へ も小 枝 を与 え るので あ る.
8.大
腿 背 側 筋及 び坐 骨神 経 の動 脈 分 布
これ ま で の各章 で は,大 腿 の 背 側 に
ご分 宿 す る動 脈
けて い る.最 下 位 の 第III貫通 動 脈 が,時 に大 腿動 脈
を貫 通 動 脈,上
・下 内側 貫 通枝 及 び そ の他 の動 脈 に
又 は 膝 窩動 脈 か ら,又 上 内側 貫 通 枝 が 時 に 内側 大腿
分 け て述 べ て来 た の で あ るが,こ こで は筋 の側 か ら
回旋 動 脈 か ら起 る こ とは 既 に述 べ た所 で あ るが,こ
これ らを ま とめて 記 述す る.
の他 に次 の 諸 枝 が主 と して 背 側筋 の上 ・下 端 部 に 分
1)半
布 して い る.
a)内
側 大 腿回 旋 動 脈 深 枝 の枝 で所 謂 “横 枝R.
transversue"と 呼 ば れ る もの.
この枝 は,小 内転 筋 と大 腿 方 形 筋 と の間 を通 つ て
坐 骨 結 節 に近 い所 で 背面 に現 わ れ,主 と して 半腱 様
膜 様 筋(Sm)
大 腿 の屈 筋 中最 も内側 に あ る筋 で,上 部(起 始 部)
は薄 く帯状 の広 い腱 で 坐 骨結 節 か ら起 つ て いて 筋 束
に乏 しい.
a)上
部(調 査110側,表8)
この部 に入 る小 動 脈 は大 多 数(94側,
85.5%)に
筋 及 び 二頭 筋 長頭 の 上 端 部 に分 布 す る他,時 に 半膜
見 られ るが,そ の起 始 は 区 々で あ つて 次 の4つ の 場
様 筋 に も分 布 す る.全 例 に 認 め られ た.こ の枝 は 背
合 に分 け られ る.即 ち(1)第I貫
面 に 出 た所 で 下 殿動 脈 の 下 行,枝と吻 合 して 丁字 状 を
上 内側 貫 通枝, (2)大 腿 深 動脈 か ら起 る上 内側貫 通
な す ことが 多 い.こ の吻 合 の 発達 如何 によ つて は何
枝, (3)内 側 回 旋 動脈 か ら起 る上 内側 貫 通 枝, (4)
通 動 脈 か ら起 る
850
加
藤
半 腱 様 筋,二 頭 筋 長 頭 に 入 る内側 大 腿 回旋 動 脈 の 横
枝(第7節a参
照)か
ら分 れて 大 内転篇 の起 始 腱 背
宣
博
1.8%).
これ ら半 膜 様 筋上 部 に分 布 す る枝 は,同 時 に大 腿
側 に沿 つ て 下行 し,大 内転 筋 に分 枝 す ると共 に半膜
背 側 上 内 部 の皮 下 へ枝 を与 え る.又,時
様 筋 に も分 枝 す る もの.
転 筋 の 背面 で第I貫 通 動 脈 と吻 合 す る枝 を 出 す こ と
これ らの 枝 は 通 常1本 だ け の場 合 が 多 いが,時 に
があ る,欠 除 す る16側(14.5%)で
と して大 内
は,半 膜 様筋 中
筋 中 で数 本 に分 れ て大 内転 筋 を貫 いて か ら入 るこ と
央 部 に入 る枝 が 強 大 で分 布 範 囲 が広 く,こ れ に よつ
もあ り,稀 に は(1)と(4)が
て代 償 され て い た.
Table
b)中
併存 す る(2側,
10.
Arteries
I, II, III:
perforating
M.
inferior
distributed
to the belly of the hamstring
arteries
medial
perforating
arteries.
央部
筋 は,上 端 部 で は常 に 内側 回 旋 動脈 横 枝(第7節
こ の部 には,貫 通動 脈 及 び下 内側 貫 通枝 の 著 明 な
枝 が分 布 し,筋 の 主動 脈 とな る.貫 通 動 脈(主 と し
て 第I)の
muscles.
枝 は,斜 内下 方 に 走 りこの 筋 の外 側 縁 を
の
参照)を 受 けて い る.
中央 部 に は貫 通 動 脈 と下 内側 貫通 枝 とが入 る.即
ち,表10に 示 す如 く貫通 動 脈 の み の分 布 す る場 合 が
挾 む様 な形 で,外 側縁 に近 く,前 後面 か ら筋 に入 る.
多 く,下 内側 貫 通 枝 の分 布 す る場合 は少 な い.特 に,
下 内側 貫 通 枝 は大 内転 筋 を 貫 くと直 ちに,半 膜 様筋
下 内側 貫 通 枝 だ けが主 枝 とな る もの は11側(8.8%)
前面 の外 側 縁 寄 りに入 る.そ の高 さは大 内転 筋 を貫
にす ぎな い.
く状 態 に よ り区 々で あ るが,貫 通 動 脈 の枝 よ り も低
い のが 普 通 で あ る.
表10の 如 く,貫 通動 脈,あ るいは 下 内側 貫 通 枝 の
一 方 の み か ら枝 を うけ る場合 が ほぼ 同 数 で,か つ両
者 か ら枝 を うけ る場 合 に比 して 少 な い,こ の点 は半
下 部 は細 長 い腱 を な して い て,肉 眼的 な血 管 は 入
つ て いな い.
3)大
腿 二頭 筋 長 頭(Cl)
上 端 部 は,全 例 に お いて 内側 大腿 回 旋 動脈 横 枝 を
うけ てい る,中 央 部 に 入 る主 枝 に は,貫 通動 脈 と下
腱 様 筋,二 頭 筋 長 頭 と比 べ て著 しい対 称 をな して い
内側 貫 通 枝 と が あ るが(表10),貫
る.太 さの点 で も両 者 の枝 は ほ ぼ同 等 で あ る.
つ て下 内側 貫通 枝 の 分 布 す る場 合 は少 な く,特 に そ
c)下
の 単独 分 布 は甚 だ稀 で あ る.
部
膝 窩 動 脈 か らの小 枝 を 必 ず うけ る(第7節c).こ
の 他 第7節b)に
のべ た大 腿 動 脈 の小 枝 を 屡 々 うけ
る.
2)半
通 動 脈 が主 で あ
下 部 には,第III貫 通 動脈 か ら短頭 に入 る主 枝 の 一
部 が筋 束 を 貫 いて,長 頭 中へ 入 る もの が必 ず み とめ
られ る,こ の他 に,大 腿動 脈 が 内転 筋 腱 裂孔 を 出 る
腱 様 筋(St)
坐 骨 結 節 か ら大 腿 二 頭 筋長 頭 と共通 腱 で起 る この
直 前 に起 る枝(第7節b),あ
出 る枝(第7節c)が
る い は 膝 窩動 脈 か ら
必 ず入 る.
大腿深動脈特 に貫通動脈及び大腿背側の動脈分布 について
この 筋 は屈 筋 中で最 も外 側 に位 置 し,従 つて 大 内
Table
転 筋の 筋 腹 中央 部 を 貫 いて 背 側 に 出 る下 内側 貫 通枝
11.
Arteries
part
851
distributed
of the sciatic
to the femoral
nerve.
か らよ り も,主 と して 貫通 動 脈 か らの血 流 を 受 け る
ので あ る.貫 通 動 脈 の うち,第I,
II貫通 動 脈 か ら
うけ る枝 が主 で あ る.
4)大
腿 二頭 筋 短 頭(Cbr.)(表7)
この 筋 は,主 に第II(72側,
通動 脈(124側,
99.2%)か
57.6%)及
び 第III貫
ら血 流 を うけ,第I貫
通動 脈 か ら も枝 を うけ る 事(5側,
4.0%)は
稀で
あ る.第III貫 通 動 脈 か ら枝 を うけ な い1側 は,第III
貫通 動 脈 の全 く欠 除 した例 で あつ て,こ れ を 除外 し
てIIIの存 在 す る もの だ け を考 慮 す れ ば,す べ て短 頭
I. II.
perforating
へ分 枝 して い る こ とに な る.最 下 位 の 第III貫通動 脈
M.
inferior
7)坐
骨 神 経(表11)
は,膝 窩 動脈 又 は大 腿 動脈 か ら起 る ことが あ るが,
これ らか ら も必 ず 短頭 へ分 枝 して い る.下 内 側貫 通
枝 か ら枝 を うけ る例 は な か つ た.
arteries
medial perforating
arteries.
坐骨 神 経 が大 腿 背 側 を通 る経過 中,こ れ にそ そ ぐ
血 管 は貫 通 動 脈 と下 内側 貫 通 枝 とで ある. 1枝 の こ
以 上 の如 く大 腿 の屈 筋群 に分 布 す る主 な 動 脈 は,
とが多 いが, 2枝 以 上 の場 合 も稀 で は ない.通 常,
貫通 動脈 と下 内側 貫通 枝 で あ るが,最 も内 側 に位 置
貫 通動 脈 か らそ そ ぐが(104側,
す る半膜 様 筋 は下 内側 貫通 枝 を うけ る事 が 甚 だ多 い
通 枝 の発 達良 好 な 場 合 には,貫 通 動 脈 と共 に下 内側
83.2%),下
内側 貫
のに対 して,他 の筋 は貫 通 動 脈 が主 で あ る.特 に,
貫通 枝 か ら もこ れ に加 わ るか(11側,
最 も外側 の二 頭 筋 短頭 が下 内側 貫通 枝 を うけ る事 は
るい は下 内側 貫 通枝 だ けか らこれ にそ そ ぐ(9側,
全 くな い.こ れ は,こ れ らの動 脈 が大 内転 筋 を貫 く
7.2%).こ
位 置 か ら考 え て 当然 の事 で あ ろ う.
下殿 動 脈 の坐 骨 神 経伴 行 動脈 と下 は膝 窩 動脈 か らの
5)外
小枝 と 肉眼 的 な吻 合 を営 ん で い るの が普 通 で あ る.
側 及 び 中 間広 筋(Vs)
この筋 が,外 側大 腿 回 旋 動 脈 か ら起 る枝 を常 に受
けて い る事 は 言 うまで もな い.貫 通 動 脈 か らの枝 は
時 に無 視 され て い るが,前 述 の 如 くどの貫 通 動 脈 か
らも高 頻 度 に分 布 して い る.即 ち,第I貫
ら59側(47.2%),
107側(85.6%)に
IIか ら119側(95.2%),
通動脈か
III:か
ら
お いて枝 を うけ,貫 通 動 脈 か ら
全 く枝 を 受 け な い例 は な か つ た.又,太
さを考慮 し
て も寧 ろ貫通 動 脈 か らの 血 流 が主 で あ る場 合 が 多 い
の で あ る.こ れ らの 広 筋 枝 は外 側 広 筋 に枝 を 与 え な
が ら これ を貫 いて,中 間広 筋 に も分 布 す るの で あ る
が,そ の うちIの 広 筋枝 は主 と して 外側 広 筋 に分布
し, IIIの広 筋 枝 は寧 ろ 中 間広 筋 に多 くの 枝 を 与 え
る.
6)大
9.大
8.8%),あ
れ らの 坐 骨神 経枝 は,坐 骨神 経上 で 上 は
腿 背側 の 動 脈分 布 型
以 上 述 べて 来 た如 く大 腿 の背 側 に分 布 す る主 な動
脈 は第I-第III貫
枝(M)で
通 動 脈(I,
II, III)と 下 内側 貫通
あつ て,そ の 他上:下 部 に は上 内側 貫通
枝,内 側大 腿 回 旋動 脈 横枝,大 腿動 脈 末 端部 乃 至膝
窩動 脈 の枝 が分 布 す るの で あ る.一 般 には,こ の う
ち最 も著 明 な もの は第I貫 通 動 脈 で あつ て,そ の下
行 枝 は屈 筋 の主 部 に分 布 す る.こ れ に対 して 下 内側
貫通 枝 は主 と して半 膜 様筋 に,又 第II,第III貫 通動
脈 は主 と して 二 頭筋 短 頭及 び広 筋 に分 布 す る(図4).
これ が 即 ち正 常 型 で あつ て, 125側 中93側 に見 られ
た.所 が比 較 的 少数 で はあ るが,下 内側貫 通 枝 又 は
第II貫 通動 脈 が 著 し く発達 して 第I貫 通動 脈 の分布
殿 筋(Gmax)
領城 を か な り代 償 して い る例 が あ る.既 に述 べ た様
調査 したの は この筋 の下 外 側 部 だ けで あ る.こ こ
に変 異 の多 い の は 半膜 様筋(Sm),半
腱 様筋(St),
に入 る枝 は主 に 第I貫 通 動 脈 の上 行 枝 か らの分 枝 で
二 頭 筋 長頭(Cl)の
あつて 全 例 に 認 め られ るが,こ の他 に時 に第II貫 通
につ い て は変 異 が少 な い.こ れ を第12表 に示 す,但
動脈 か ら も入 る(25側,
20.0%)こ
筋 腹 の 動脈 分 布 で あつ て 他 の筋
とが あ る.又 大
し2動 脈 以 上 が 一筋 腹 に分 布 して い る場合,そ の う
殿筋 技 は,し ば しば大 殿 筋 を貫 いて 大 腿外 側 上 端 部
ち著 し く細 い もの は無 視 し,分 布 の傾 向 が 明 らか に
の皮 下 に 分 布 す る.
な るよ うに した.従 つ て今 まで 述べ た値 と は多 少異
852
加
藤
宣
博
Table 12. Distribution of the perforating arteries ( I, II, III) and the inferior medial
perforating branches (M) to the muscle belly of the semimembranosus (Sm),
semitendinosus (St) and the long head of the biceps (Cl).
な つ て い る.こ の表 か ら著 者 は大 腿背 面 の 動 脈分 布
少 の 違 い は無 視 して(上 述 の 如 く著 し く細 い もの は
型 を次 の5型 に分 けて 考 え た い.
省 いて あ る)そ れ ぞ れ1/2又 は1/3筋 腹 に分 布 す る
A.正
もの と し, 3筋 に つ いて の数 値 を合 計 して,そ の動
常 型及 び これ に準 ず る もの
第I貫 通 動 脈 が3筋 腹 の主 な 動脈 で あ つて, M,
M,
II, IIIは分 布 しな い か又 は一 部の み に 分布 す る.
第I型(正
Smに
はM+I,
Stに はI,
Clに はIが
事 が最 も多 い(そ れ ぞれ39.2%,
この組 合せ 即 ちMI-I-I型
68.8%,
は30側(24.0%)に
分布す
見ら
はI,
ClにI+IIが
も少 な くな い(そ れ ぞ れ26.4%,
分 布 す る こと
24.8%,
18.4%).
そ こで か か る型 も含 め て正 常 型 と した.合 せ て74側
第2型(準
正常 型)
な い が, Iの 発達 は 良好 で3筋 腹 の1/2以 上,即
MI-MI-MI型
I型 の計5側 はMとIと
ち
11/2筋 腹 以 上 に分 布 す る もの を総 称 す る.分 布 範 囲
の数 値 はや や 人為 的で はあ るが 次の 様 に定 め た.即
ち1筋 腹 に2又 は3動 脈 が 分布 す る とき は太 さの 多
及 びMI-M-
が 等 分 に分 布 し,第3型
と
の 移行 型 と考 え られ る.
B.第I貫
通 動 脈 の大 腿 屈 筋 枝 の分 布 が狭 く,代
りにM, II, IIIが分 布 す る もの.
2型 にはIが11/2筋
が 含 まれ るので,第3型
個 々の 筋 腹 の動 脈 分 布 に つ いて は 正常 型 とは 云 え
には 表 に示 す 様 に多 様
の3側 は 正常 型 に甚 だ近 い もので あ
る,又M-MI-I型,
第1,
あ る.
では
腹 に分 布 す
の 型 が含 まれ るが個 々の型 の例 数 は 少 ない.こ の う
ちI-I-III型
56.0%)
れ た.こ れ を狭 義 の 正 常型 とす る ことが 出来 る.併
(59.2%)で
IIIはそれ ぞ れ1/3筋 腹, Iは21/3筋
る と見な す の で あ る,第2型
常 型)
しSmにM又
脈 の分 布 範 囲 とす る.例 え ば, MIIII-I-I型
腹 以 上 に分 布 す る もの
以下 は そ の 分 布 が11/2筋
腹 に み たな い場 合 で あ る.
第3型(下
Mが2筋
(11.2%)に
内側 貫 通 枝 発 達 型)
腹 以上 に 分 布 す る型 で あ つ て, 14側
見 られ た.こ の う ち 貫通 動 脈 の 全 く分
布 しな い場 合 が4側 に見 られ たの は注 目 に値 す る.
大腿深動脈特 に貫通動脈及び大腿背側の動脈分布について
Fig. 5.
A case of type 3 (No. 70,
- M-MII,
the descending
な お,第2型
MI-M-I型
branch
のM-MI-I型,
right
side).
M
of I is missing.
MI-MI-MI型
及 び 第5型 のM-MI-III型
と
とM-MII-
I型 の計7側 で は,下 内 側 貫通 枝 の 分 布が11/2筋 腹 で
853
Fgi. 6. A case of type 4 (No. 78, right
IIM-II-I II.
side).
な お,一 般 的な 傾 向 と して次 の所 見が注 目 され る.
即 ち, MはSmの1/2又
は全 部 に 分布 す るの が 正
常で あ るが,分 布 の広 が る 際 に は 先 ずSt,次
いで
あつて か な り発達 し,下 内側 貫通 枝 発 達型 に含 め て考
Clに 及 ぶ.逆 にIIは 外 側 のClか
順に
え るこ と も出来 る(こ れ を加 え る と20側,
分 布 を 広 げ るの で あ る.但 し,個 々の 場合 に例 外 の
第4型(第II貫
16.0%).
通 動 脈 発 達型)
多 いの は云 うまで もな い.IIIが こ の3筋 筋 腹 に分 布
IIが2筋 腹 以 上 に分 布 す る型 で あ つ て8側(6.4
%)に
見 られ た,第5型
MII-II-MI型
のMII-III-III型
の計3側 で は,IIが
らSt, Smの
及 び
か な り 発 達 して
したの は細 い ものを 無 視す る と7側 に過 ぎな い ので,
その 一般 的な 傾 向 は うかが わ れ な い.し か もそ の分
布 は狭 く,計1筋
腹 に分布 した のが 最 大で あ る.上
11/2筋 腹 に分 布 して い るので 第5型 に含 め て 考 え る
の分 類 に おい て 理論 的 に はIII発達型 も考 え られ るが,
こと も出来 る(こ れ を加 え る と13側,
この 様 な例 は た とえ あ ると して も甚 だ 稀 な もの で あ
れ にせ よ第4型
10.4%).何
は第3型 よ り も少 な く,又Mが3筋
ろ う と思わ れ る.
腹 の全 部 を 占め る型 は 見 られ な かつ た.
第5型(混
総
合 型)
M, II, IIIの 分 布 は 何れ も11/2筋 腹 以下 で あ るが
大 腿深 動 脈 の貫 通 動 脈 を 中心 と して 大腿 背 側 の動
合 計 す る と11/2筋 腹 を こえ る もの で あつ て, 10側
脈 分布 を実 習屍69体125側
(8.0%)に
1.貫
見 られ た.こ の うち上述 のM又 はIIの や
や 発達 す る5側 を の ぞ くと5側(4.0%)に
い.
す ぎな
括
に つ いて 調 べ た.
通 動 脈及 び 「内側貫 通 枝 」の 定 義
一般 の考 え 方 に従 つ て,大 腿骨 に接 して 内 転 筋を
貫 く もの のみ を 貫通 動 脈 と し,骨 よ り離れ て 筋 を貫
854
加
く もの は内 側 貫 通枝(仮 称)と
藤
宣
博
して 区別 す る.
はな い.
内 転筋 と大 内 転筋 主 部 と
5.各
第I貫 通 動 脈(I):小
貫 通 動 脈 の貫 く筋: IとIIは 短 内転 筋 と大
の 間 か ら背側 に現 われ る貫通 動 脈 .こ の枝 で,こ れ
内転 筋(小 内転 筋 を 含 む), IIIは大 内転 筋 の み を 貫
よ り上 方 で小 内転 筋 を 貫 く もの もす べ てIと す る.
くの が 普通 で あ る(表4).
第II貫 通 動 脈(II):大
腿二 頭 筋 短 頭 の上 方 乃 至
そ の起 始 の 上1/3の 高 さの範 囲で 大 内 転 筋主 部 を貫
く貫 通 動 脈.
6.各
貫 通 動 脈及 び 「内側 貫通 枝 」 の 分布
一 般 にIの 上 行 枝 は大 殿筋 な ど に,下 行 枝(主 枝)
は二頭 筋 長 頭,半 腱 様 筋,半 膜 様 筋,坐 骨 神 経 に分
第III貫通 動 脈(III):短
頭 起 始 の下2/3の
高 さの
範 囲 で 大 内 転筋 を貫 く貫 通動 脈.大 腿動 脈 下 部 乃 至
膝 窩 動 脈 か ら起 つ て これ と同 じ経 路 分布 を示 す もの
も含 め る.
布 して屈 筋 の主 動 脈 とな り, II及 びIIIは二 頭 筋 短頭,
外側 広 筋,中 間広 筋 等 に分 布 す る(表7,図4).
上 内側 貫 通枝 は半膜 様筋 上 部 に,下 内側 貫 通枝 は
半膜 様 筋 筋 腹 な どに 分 布 す る のが 通 例 で あ る.
「上 内側 貫通 枝 」:第I貫
通 動 脈,大 腿 深 動 脈又
7.貫
通動 脈 及 び 内側 貫 通 枝 の他 に半 腱 様 筋及 び
は内 側 大 腿 回旋 動 脈 の 小 枝 で,大 内 転筋 を貫 い て そ
二 頭 筋 長 頭 の上 部 に は 内側 回 旋 動脈 横 枝,屈 筋下 部
の 上 内 部 か ら背 面 に現 わ れ る もの(表8,図3)
に は大 腿 動脈 下 端 乃 至膝 窩 動 脈 の枝 が分 布 す る(図
.
通 常1枝.
4).
「下 内側 貫 通 枝 」:大 腿 深 動 脈 か ら起 る大 内 転筋
枝 の 一 部 が筋 を 貫 い て,そ の下 部 に現 われ る もの.
1∼3枝(表9,図3)
2.貫
.
腿背 側 の動 脈 分 布
大 殿 筋下 部 に はI(100%),外
側 及 び 中間 広 筋 に
はII(95.2%)とIII(85.6%),二
通 動脈 の総 数(表1,
2, 3)
大 腿深 動 脈 か ら起 る数 は2∼6本
本 の事 が 多 く,平 均 は4.02本
らは屡 々2∼4分
8.大
(57.6%)とIII(99.2%),坐
で3,
4又 は5
で あ る(表3).こ
頭 筋短 頭 にはII
骨 神 経 にはI(82.4%)
が 主 と して分 布 し,こ れ らは変 異 が 少 な い.こ れ に
れ
反 して二 頭 筋 長頭,半 腱 様筋,半 膜 様 筋 の三 筋腹 の
して か ら内 転筋 を貫 くの で,大 内
動 脈 に は変 異 が多 い.そ の主 動 脈 は一 般 にIの 下 行
転 筋 を貫 く所 で 数 え る と2∼7本
事 が多 く,平 均 は4.66本
で, 4又 は5本 の
枝 で あつ て,下 内側 貫通 枝(M)が
そ の一 部 に分 布
に大 腿
し,時 に はII,稀 にはIIIも加 わ るので あ るが, Iの
動 脈 又 は膝 窩動 脈 か ら起 るIIIを加 え る と筋を 貫 く数
発 達 が弱 く, M又 はIIに よつ て 代償 され るこ と も少
は平 均4.85本
な くない.こ れ を 目標 と して 大 腿背 側 の動脈 分 布 を
3.各
で あ る(表1).更
とな る(表2).
貫 通 動 脈 の数(図2,表5,
Iが2又
6)
第I貫 通 動脈 の発 達 した正 常型(74側,
は3本 あ る場 合 は それ ぞ れ30側24.0%,
3側2.4%,
IIが2本 以上 あ るの は17.6%で
比較 的
少 な い.こ れ に反 してIIIは2又 は3本 あ るの が普 通
で あ る. IIIの欠 除 例 が1側(0.8%)に
な おIが2本
8.0%)の5型
6.4%),
に分 け るこ とが来 る.
稿 を終 るに 臨 み終 始 格 別御 懇 篤 な 御 指 導 と御校 閲
が それ ぞ れI,
II,第3枝
以下 がIII
と な る 場 合(第I型,
72.0%)が
が,第1枝
分 れ る第II型(15.2%)とII
が第1枝
混合 型(10側,
内側 貫 通 動脈 発 達型
通 動 脈発 達 型(8側,
見 られ た.
通 動 脈 の起 始 型 は図2に 示 す 通 りで あ る.
第1枝,第2枝
15.2%.),下
(14側, 11.2%),第II貫
以 上 あ るの は その 上行 枝 が 独 立 して 筋
を貫 く場 合 で あ る.
4.貫
準 正常 型(19側,
59.2%)と
がIとIIに
と第2枝
過半数 を 占 め る
か ら起 る第III型(12.0%)も
な お,本 論 文要 旨は 昭和37年11月11日 第17回 解 剖
学 会 中 ・四 国地 方 会 に 於 いて 発 表 した.
1) Hochstetter, F.: Uber die ursprungliche Haupt
achlagader der hinteren Gliedmasse des Menachen
und der Saugetiere, nebat Bemerkungen uber
die Entwicklung der Endaste der Aorta abdomi
1890.
甚 の敬 意 と感 謝 の誠 を 捧 げ る.
稀で
文
nalis. Morph. Jb. 16: 300-318,
を賜 わ つた 恩 師大 内弘 教 授並 びに 小 坂淳 夫 教授 に深
献
2) Leboucq: In der Disc. zu Zuckerkandl's Vor
trag.
Verh.
d.
anat.
Gesellachaft 7:
129,
1893.
3) Zuckerkandl, E.: Zur Anatomie and Entwick
lungsgeschichte der Arterien des Unterschenkels
大腿深動脈特 に貫通動脈及 び大腿背側の動脈分布について
and des Fusses. Anat. Heft. 5: 207-291 ,
1895.
55-80
Aste bei den niederen catarrhinen Affen. Eine
Am. J . At at.
vergleichend-anatomische Untersuchung. Morph.
25: 55-95, 1919.
5) Senior, H. D.: The description of the larger
direct or indirect
Jb. 36: 276-461,
10) Bluntschli,
muscular branches of the
Morphogenetic study .
Am. J. Anat. 33: 243-265, 1924.
1907.
Varietaten der Arteria pro
femoris medialis des Menechen. Morph. Jb.
6) Senior, H. D.: An interpretation of the recorded
arterial anomalies of the human pelvis and
11)
thigh.
Am. J. Anat. 36: 1-46 , 1925.
7) Senior, H. D.: Abnormal branching of the
111-120,
H.:
funda femoris uud der Arteria circumflexa
human femoral artery;
human popliteal artery.
1894.
9) Bluntschli, H.: Die Arteria femoralis and ihre
4) Senior, H. D.: The development of the arteries
of the human lower extremity.
and 99-114,
855
37: 142-153,
1908.
塚 口利 三 郎:下
肢 主 幹 動 脈 の 経 路 に 就 い て .東
京 医 学 会 雑 誌.
22,
583-592,
1908.
12) Parsons, F. G.: Ninth report of the comittee
of collective investigation of the Anatomical
society of Great Britain and Ireland for the
Am. J. Anat . 44:
1929.
year 1898-99.
-272 , 1900.
8) Popowsky, J.: Das Arteriensystem der unteren
J. Anat. & Physiol. 34: 260
Extremitaten bei den Primaten. Anat. Anz. 10:
On the Profunda
and the
Femoris
Artery,
Arterial
Supply
Especially
of the Back
its Perforating
of the
Branches
,
Thigh
By
Nobuhiro KATO
Department of Anatomy, Okayama University MedicalSchool(Prof. H. OUTI)
The author investigated 125 lower limbs of 69 Japanese cadavers from his dissecting room,
and obtained the following results.
1. Definition of the perforating arteries and the medial perforating branches.
As generally accepted, only those arteries, that perforate the adductors close to the linea
aspera, are called perforating arteries. Such arteries, as those piercing the adductor maguns
far from the femur, are provisionally called "medial perforating branches".
The first perforating artery (I) appears backwards from between the adductor minimus and
the main part of the adductor magnus.
The second perforating artery (II) perforates the main part of the adductor magnus above
or at the proximal third of the origin of the short head of the biceps.
The third perforating arteries (III) perforate the adductor magnus at the height of the
middle and the distal thirds of the biceps origin. In some cases, a twig whose course and
distribution are the same as those of the third perforating arteries arises from the distal part
of the femoral artery or from the popliteal artery. Such are also included in the third per
forating arteries.
"Superior medial perforating branch" a rises from the first perforating artery, the profunda
femoris artery or the medial circumflex artery, pierces the adductor magnus and appears at
the upper medial part of its posterior surface. Generally it occurs as one twig.
"I
nferior medial perforating branches" arise from the muscular branches to the adductor
magnus and appears backwards at the lower part of the muscle, as one to three twigs. (Table
856
加
藤
宣
博
9).
2. The total number of perforating arteries (Tables 1, 2 and 3).
They arise from the profunda femoris as 2-6 branches, in most of the cases as 3-5
(average 4.02). As they sometimes divide into 2 or 3 branches before they pass through the
adductors, the number of branches, piercing the adductor magnus, is more than the former:
2-7, in most of the cases 4 or 5 (average 4.66). Furthermore, if the perforating arteries
of the femoral and popliteal origins are included, the average number of the arteries, passing
through the adductor magnus, is 4.85.
3. The number of each perforating artery (Tables 5 and 6).
I is generally single, rather rarely two (30 limbs, 24.0%) or three (3 limbs, 2.4%) in
number. The supernumerary first perforating arteries are its ascending branches, that pierce
the muscle separately. II also is generally single, rather rarely two or three (17.6%).
Whereas, III is generally two or three in number. In one case III was missing.
4. The origin and branching of the perforating arteries are presented in Fig. 2. In the
majority of the cases, the first and the second branches become I and II respectively, and
III are derived from the third branch and on (Type I, 72.0%). Besides, the type II (15.2%),
in which the first branch divides into I and II, and type III (12.0%), in which II are
derived from the first and second branches, are not rarely found.
5. Generally, I and II pierce the adductor brevis and the adductor magnus, while III
the latter muscle only. (Table 4).
6. Distribution of the perforating arteries and the "medial perforating branches". (Table
7 and Fig. 4).
Generally the ascending branch of I is distributed to the lower part of the gluteus ma
ximus and its neighbourhood, the descending branch (the main branch), as the principal source
of the arterial supply of the hamstring muscles, supply the long head of the biceps, the
semitendinosus, the semimembranosus and the sciatic nerve, and II and III supply the short
head of the biceps and the vastus lateralis and intermedius.
The "superior medial perforating branch" enters the proximal part of the semimembrano
sus, and the "inferior medial perforating branches" supply chiefly the belly of the semi
membranosus.
7. Besides the perforating arteries and the medial perforating branches, the hamstring
muscles are supplied by some twigs : the transverse branch of the medial circumflex artery
supplies the proximal part of the semitendinosus and the long head, and some twigs from the
distal part of the femoral and from the popliteal arteries supply the distal part of the hamst
ring muscles.
8. Arterial pattern of the back of the thigh (Table 12, Figs 4, 5, 6)
The lower part of the gluteus maximus receives branches from I (100%), the vastus late
ralis and intermedius from II (95.2%) and III (85.6%), the short head of the biceps from
II (57.6 %) and III (99.2%), and the sciatic nerve from I (82.4%), each with little varia
tions. On the other hand, the arteries to the belly of the long head the semitendinosus and
the semimembranosus are fairly variable. Normally, their main source is the descending
branch of I, and the inferior medial perforating branches (M) and sometimes II, rarely III
as well, supply only a small part. But not rarely the descending branch is small or missing
and substituted by M or II. In this respect various arterial patterns of the back of the thigh
are classified into five types: two types with developed I, normal type (74 limbs, 59.2%)
and paranormal type (19 limbs, 15.2%), type with developed M (14 limbs, 11.2%), type
with developed II (8 limbs, 6.4%) and mixed type (10 limbs, 8.0%).
Fly UP