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(PC)橋の鋼材腐食劣化特性と合理的補修方法
プレストレストコンクリート(PC)橋の鋼材腐食劣化特性と合理的補修方法 神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻構造材料診断・維持管理グループ(森川研究室) URL: http://www2.kobe-u.ac.jp/̃morikawa/ 遊間からの侵入 ■PC橋のグラウト充てん不良が問題となってきています. 上縁定着部 からの侵入 PC桁 シース内侵入 ■凍結防止剤(塩化物)を含む雨水が定着部などからグラウト充てん 不良部へ侵入し,PC鋼材の腐食や破断が発生しています. 漏水 橋台 ■PC鋼材の破断によるPC橋の耐荷性能の低下が危惧されています. 桁背面・底面漏水 (Ⅰ)実橋調査 (1)外観変状 (2)削孔調査 採取したシース内の滞水 最大 塩化物イオン濃度 0.27wt% 採取したグラウト 最大 塩化物イオン濃度 12.48kg/m3 ※発せい限界 塩化物イオン濃度 3.9kg/m3 下フランジやウェブに主ケーブルに沿ったひび割れ、エフロレッセンスの変状 (3)グラウト充填状況 上縁定着④ (C4) グラウトの充てん状況やPC鋼材の腐食状況などを確認 (4)PC鋼材の腐食状況 上縁定着③ (C3) 上縁定着② (C2) 上縁定着① (C1) 端部定着 (上段) 除せい前 除せい後 端部定着 (下段) ※PCケーブルの位置図はポステン式単純T桁橋の標準設計図(昭和41年)のものを引用 記号凡例 PC鋼線 腐食なし 腐食あり グラウト充填良好 グラウト充填不良 グラウト未充填 ○ △ □ ○ △ □ グ ラ ウ ト 充 填 状 況 グラウトが充填され,PC鋼線がグラウトで保護されている状態 グラウトの一部が充填されておらず,PC鋼線がグラウトで保護されていない状態 グラウトが充填されていない状態 断面欠損を伴うPC鋼材の腐食が発生 ※記号の塗りつぶしはグラウトが含水によりアンボンド状態になっており,PC鋼線と一体化していないことを示す (Ⅱ)応力腐食割れ 背景 アノード ・局部腐食(アノード腐食)箇所からアノード反応型の亀裂形成 で発生する活性溶解型応力腐食割れが発生する可能性有 ・局部腐食から水素チャージによる亀裂形成で発生する 水素脆性割れが発生する可能性有 試験体の破断面 活性溶解型 応力腐食割れ試験より破断性状を把握 応力腐食割れ試験(神鋼鋼線工業(株)と共同研究) 試験体 電食切欠き 促進腐食 長手方向に 亀裂が進展 900mm 850mm PC鋼線 (12φ7mm) 既設グラウト 水素脆性割れ 塩ビ管 グラウト注入 試験機 実橋梁でのPC鋼線の破断事例 試験荷重 腐食液 ・設計荷重(0.6Pu) ・0.2%耐力の85% 活性溶解型:20wt%硝酸アンモニウム溶液(100℃) 水素脆性割れ:20wt%チオシアン酸アンモニウム溶液(50℃) より線の外側は腐食して 剥がれるように切れ, 内側は引張力による延性 的に破断していた 一ツ葉大橋(宮崎県道路公社) 日経コンストラクション2011.12.12 (Ⅲ)亜硝酸リチウム(LiNO2)を用いたグラウト未充てん部への補修方法 従来のグラウト未充てん部への補修方法(グラウト再充てん) STEP1 茶色部分はさび (シース内側) 茶色部分はさび 主桁 さび層内には多量の 塩化物イオンが残留 (腐食促進環境) 鋼製シース 腐食したPC鋼線 グラウト 未充てん部 従来の補修方法の問題点 STEP3 STEP2 グラウト ウェブ側面から コア削孔 グラウト再注入 (再充てん) グラウト注入用 ウェブ断面 ホースの取り付け 主桁 ウェブ断面 主桁 鋼線間の空隙への グラウト注入は困難 3 ウェブ断面 主桁 腐食抑制効果が不十分 4 ウェブ断面 亜硝酸リチウム(LiNO2)を用いたグラウト未充てん部への補修方法 (リパッシブ工法:(株)ピーエス三菱と共同開発) 亜硝酸リチウム(LiNO2):防せい剤の一種で,塩化物イオンが存在する環境下でも鋼材を再不動態化し,腐食の抑制が可能 STEP1 STEP2 亜硝酸リチウム 水溶液の注入 NO2‐ さび層 Cl‐ NO2‐ 亜硝酸リチウム 水溶液の除去 NO2‐ 再不動態化 したPC鋼材 塩化物イオン Cl‐ 亜硝酸リチウム 水溶液 Cl‐ ‐ NO2 NO2 NO2‐ ‐ Cl ‐ NO2‐ Cl ‐ NO2‐ NO2 ‐ NO2 ‐ NO2 ‐ 自然電位測定結果 -200 -300 6.5%LiNO 2 水溶液 -400 照合電極 40 60 80 NO2- Cl- 4.10 Cl- /NO2- — — 13%LiNO2水溶液浸せき 0.23 3.2 0.072 40%LiNO2水溶液浸せき 0.53 5.1 0.104 -200 LiNO2水溶液に浸せき さび試料 外側 内側 外側 LiNO2水溶液浸せき後 内側 補修部 ◆ □ △ × △ LN-G補修 LN-W・ Nor-G補修 LN-W・ LN-G補修 × 0 照合電極 亜硝酸リチウム添加 補修材再充てん NO21.30 0.66 (wt%) Cl-/NO20.146 0.515 ◆ □ △ × 0.4 0.3 0.2 ○ 0.1 □ 0 △ -0.1 × 50 Nor-G補修 LN-G補修 LN-W・ Nor-G補修 LN-W・ LN-G補修 100 150 200 250 300 測定開始からの日数(日) 測定開始からの日数(日) 亜硝酸リチウム水溶液注入時の PC鋼材の自然電位モニタリング Cl0.20 0.42 0.19 0.34 0.5 0 50 100 150 200 250 300 腐食抑制効果 LN-W・LN-G補修≒ LN-W・Nor-G補修> LN-G補修> Nor-G補修 試験片 水に浸せき 0.6 Nor-G補修 □ 200 240 マクロセル電流測定結果 ○ 400 0 180 さび層のイオン分析結果 LiNO2水溶液浸せき前 600 既設グラウト部 (Cl-6kg/m3添加) 120 経過時間(分) 試験体(7φ7mm) 1000 800 60 亜硝酸リチウム 水溶液 分極抵抗測定結果(補修部) 分極抵抗(kΩcm2) 補修部(補修方法) ・通常グラウト再充てん (Nor-G補修) ・ LiNO2添加グラウト再充てん (LN-G補修) ・LiNO2水溶液浸せき+ 通常グラウト再充てん (LN-W・Nor-G補修) ・ LiNO2水溶液浸せき+ LiNO2添加グラウト再充てん (LN-W・LN-G補修) 実橋梁での適用例 試験体No.3 0 100 さび層のイオン分析結果 亜硝酸リチウム水溶液注入 試験体No.2 内側 -100 -400 試験体 20 浸せきせず 試験片 試験体No.2 外側 0 -300 飽和Ca(OH)2 水溶液 浸積時間(Hrs.) 亜硝酸リチウム 水溶液 100 電圧計 電位(mV,SCE) 電位(mV,SCE) 試験片 試験体No.1 V 40.0%LiNO 2 水溶液 0 計測孔 自然電位測定結果 ・腐食したPC鋼線束 -600 塩ビ管 Cl 200 -500 照合電極 電極 ‐ ‐ NO2‐ 13.0%LiNO 2 水溶液 -100 電圧計 グラウト埋没実験 NO2 ‐ Cl 0 ・1本の腐食した鋼材 試験片 NO2 ‐ ‐ 水溶液浸せき実験 V 亜硝酸リチウム 添加グラウトの 再充てん さび層からの 亜硝酸イオンの 逆拡散防止 NO2‐ 亜硝酸イオン Cl‐ NO2 再不動態化 ‐ Cl ‐ Cl マクロセル電流(mA) さび層や鋼材 間へ浸透 STEP3 マクロセル腐食抑制効果 LN-W・LN-G補修≒ LN-W・Nor-G補修 ≒LN-G補修> Nor-G補修 本補修方法における今後の検討課題 ・長期的な腐食抑制効果の検討 ・補修後モニタリング手法の確立 ・ ・腐食抑制効果が発揮されるPC鋼材の 電圧計 腐食限度の検討