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郊外一戸建て新規開発住宅団地の居住者実態と住宅選択に関する研究
生活科学研究誌・Vol. 5(2006) 《居住環境分野》 郊外一戸建て新規開発住宅団地の居住者実態と住宅選択に関する研究 ー高槻市花林苑における事例調査ー 青木 留美子*1、多治見 左近*2 大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程 大阪市立大学大学院生活科学研究科・教授・工学博士 *1 *2 A study on actual conditions of the residents and the choice of housing in new suburban detached housing areas -A case study on Karin-en, Takatsuki CityRumiko AOKI and Sakon TAJIMI Graduate School of Human Life Science, Osaka City University *2 Osaka City University, Professor, Dr.Eng. *1 Summary This study aims to investigate actual condition of the residents to grasp the demand group of a suburban residential section. There are many areas faced with resident aging. In order to utilize housing stock effectively, it is important that the next generation succeed the residence and housing site. We carried out the questionnaire in the new residential area in Takatsuki City. Most of the residents are in their thirties to forties. Many people have uneasiness in association with the neighbors in an old area. Ten percent of people who wishes to live for a long time have house in others. About 30% of the residents have the possibility of getting house and housing lot by inheritance. Keywords:郊外住宅地 一戸建て住宅 高槻市 アンケート調査 suburban housing areas , detached houses, Takatsuki City , questionnaire survey 1.はじめに 減少が予想されるが、依然として農地や山林・緑地等か 戦後の人口増加や高度経済成長期の都市への人口集中 らの転用による宅地造成が行われている地域もみられ、 等を背景に、都市圏では大量の郊外住宅地が形成されて 自然環境破壊への影響や住宅地の供給過多も懸念され きたが、現在これらの住宅地の中には居住者の高齢化が る。 みられる地域も多く、今後は更なる居住者の高齢化や空 このような現状において、開発後年数を経た住宅地に 地・空き家の増加によるコミュニティの衰退や住宅地の 新規入居者を誘導し、居住者の世代交替を促進し、住宅 空洞化も危惧される。住宅宅地を子や親族が継承するの 地を活性化させるためには、郊外一戸建て住宅への入居 か、売却するのか、あるいは売却できるのかについては 希望世帯の特性や入居までの住宅選択経緯を把握し、近 不確定な要素が多く、住宅地の将来像は不明瞭であると 年の住宅取得世帯の住宅選択意識とともに、既存住宅 考えられる( 1 )。住宅地の環境保全や既存ストックの活 地の選択可能性を検討することも必要であると考えられ 用・循環という点からは住宅宅地の次世代へのスムーズ る。 な継承が求められる。また人口減少や都心回帰現象、マ 郊外住宅地の住環境維持をテーマとした既往研究に ンション数の増加等により今後郊外一戸建て住宅の需要 は、住宅継承に関するもの( 2 )、中高年の定住意向に関 1 ( ) 生活科学研究誌・Vol. 5(2006) するもの( 3 )、住宅の建替え増改築や住宅地の変容に関 た住宅地である。造成・開発は住宅生協によるものであ するもの( 4 )などがあるが、開発後年数が経過した地域 る。住宅宅地の分譲については、住宅生協が行った地域 を対象にしたものが多く、近年開発された住宅地や近年 と民間企業が行った地域が混在しており、販売方法は土 の入居世帯を対象にしたものは少ない。 地分譲、建築条件付き土地分譲、建売り住宅分譲となっ 本稿では、近年開発された高槻市花林苑住宅地の居住 ている。 者を対象にアンケート調査を行った。対象地域の周辺に 2006年 3 月時点での住宅数は建築中を含め333戸であ は1960年代∼ 1970年代前半ごろに開発された住宅地が る。JR東海道線高槻駅から路線バス約15分、バス下車 ほぼ連続して形成されている。近年の郊外一戸建て住宅 徒歩約 3 ∼10分の立地である。周辺には主に1960年代に の需要層を把握すること、また立地条件ではほぼ同様 開発された住宅地がひろがっており、北西で昭和1960年 (5) と考えられる近隣の既存住宅地( 6 )を選択せず新規に開 代後半開発の弥生が丘町、西南で1960年代前半開発の日 発された住宅地に入居した経緯を知ることにより、既存 吉台と隣接している(図 3 - 1 )。 住宅地への入居者誘導の方策や既存住宅地における今後 の有効活用方法を探るための基礎的資料を得ることを目 3−2.アンケート調査 的としている。 2006年 3 月下旬∼ 4 月上旬に、2006年 3 月時点の現地 調査において入居が確認できた全住宅を対象に、住戸ポ 2.高槻市における住宅地開発の概要 スト投函による配布・郵送による回収にてアンケート調 1955年から1993年の間に施工された開発面積 1 ha 以 査をおこなった。回答者は世帯主またはそれに準ずる人 上の住宅地を施工開始年と開発面積でみると図 2 - 1 の とした。配票数321、回収数175、有効回収数173であり ようになる 有効回収率は53.9% であった。 。1955∼64年は開発件数11件、開発面積 (7) 合計171.4ha、1965∼69年は39件、291.3ha、1970∼74年 は36件92ha の開発が行われており、1965 ∼ 74年ごろを 3−3.回答者概要 中心に住宅地開発が行われてきた。 住宅の所有関係では有効回答数173のうち「持ち家」 170「借家」 1 「無回答」 2 であり、ほとんどが持ち家 世帯である。 家族人数は図 3 - 2 のようになり、 4 人家族世帯が 32.4%、 3 人家族世帯が29.5% であり、平均家族人数は 3.7人である。家族の型では夫婦と子からなる世帯が最 も多く69.4%、夫婦のみ世帯が19.1%、その他世帯3.5%、 不明8.1% であった。 世帯主年齢は35∼39歳が最も多く28. 3 % 次いで40∼ 44歳が20.8% となり、30歳代後半から40歳代前半で約半 図2- 1 高槻市における住宅地開発 3.アンケート調査の概要 3−1.対象地域 本調査の対象地域である花林苑住宅地は高槻市都市計 画区域の北東部に位置し、開発面積99703.5㎡・計画戸 数365戸・区画面積150∼234㎡で2001年春にまち開きし 2 ( ) 図3- 1 対象地域の位置 青木・多治見:郊外一戸建て新規開発住宅団地の居住者実態と住宅選択に関する研究ー高槻市花林苑における事例調査ー 勤のつとめ」21.2%、 「無職(専業主婦)」33.3%、夫婦と 子からなる世帯で「常勤」11.7%、 「非常勤」10.8%、 「無 職」71.7% となっており、子どものある世帯では妻が専 業主婦である割合が 7 割を超えている。 4.居住者の特性 4−1.従前住居と入居の理由 従前の居住地は、高槻市49.7%、高槻市以外の北大阪 地域( 9 )17.3%、北大阪地域以外の大阪府14.4%などと なっており、約半数が高槻市内からの入居である。 図3- 2 回答者世帯の家族人数 世帯主の年齢別に前住宅の種類をみると図 4 - 1 とな る。世帯主年齢が若いほど借家からの入居が多く年齢が 上がるほど持ち家からの入居が多い。 従前の住居を退去した理由を複数回答でたずね、前住 宅の種類別にみてみると表 4 - 1 のようになる。全体で は「前住宅の狭さ」や「子どもの誕生・成長」をあげる 世帯が多い。一戸建て持ち家からの入居では「前住宅の 周辺環境が不満」「前住宅が老朽化」という理由をあげ る世帯が 3 割を超える。 図3- 3 回答者の世帯主年齢 図4- 1 世帯主年齢別前住宅の種類 表4- 1 前住宅の種類別退去の理由(複数回答) 図3- 4 世帯主の通勤時間 (8) 数を占める(図 3 - 3 ) 。世帯主の就業状況は「常勤 のつとめ」が82.1% と最も多く、次いで「会社役員」が 8.1% である。世帯主の通勤時間は約60分が32.9%、約45 分が23.1% である(図 3 - 4 )。 勤務先の所在地は「高槻市」12.1%、 「大阪市」33.5%、 「高 槻市と大阪市を除く大阪府」24.3%、「京都府」13.3% な どとなっている。 妻の就業状況を世帯の型別にみると、夫婦のみの世帯 で「常勤のつとめ」36.4%、「パート・アルバイト等非常 3 ( ) 生活科学研究誌・Vol. 5(2006) く39歳以下の世帯の56.6% が持ち家選択の理由としてい る。 4−2.住宅選択の際の重視点 現住居を選択する際に重視した点について 5 段階評価 でたずね、世帯主年齢別の平均をみてみると図 4 - 2 の ようになる。全年齢層でみると「緑の多さや空気のよさ 等自然環境」、 「閑静であること」、 「住宅の広さや間取り」 が重視されている。39歳以下の若年層では「子育て環境・ 教育環境」の重視度が高くなる。「自由設計の魅力」は 世帯主年齢が低いほど重視する傾向があり、「販売者や 施工者の知名度」は高年齢層ほど重視する傾向が見られ る。 5.住宅選定の経緯 5−1.情報源 住宅選定の際に活用度の高かった情報源について複数 回答でたずね、世帯主年齢別にみると表 5 - 1 のように なる。全体では折り込みチラシや住宅メーカーからの情 報の活用度が高い。住宅情報雑誌やインターネットから の情報は、年齢が高くなるほど活用度が低くなる傾向が ある。 5−2.既存住宅地のイメージ 図4- 2 住宅選択の際の重視点 既存住宅地の街並みとコミュニティに関するイメージ 表4- 2 世帯主年齢別持家を選択した理由(複数回答) について回答記入者の年齢別にみてみると、「成熟した 街並みが魅力的である」と評価している割合は年齢が高 くなるほど上昇する。39歳以下では既存住宅地の街並み を肯定しているのは約 2 割である。また「コミュニティ が完成されていて新参しにくい」とする割合は年齢が低 いほど上昇する(図 5 - 1 )。若年層ほど既存住宅地につ いて抵抗感を持つ傾向があると考えられる。 5−3.既存住宅地における住宅取得の検討 住宅選定の候補地として新規開発住宅地だけではな く、既存住宅地を検討したかどうかをたずねてみると、 全体の67.6% が「検討した」と答え、世帯主年齢別では 持ち家を選択した理由を複数回答でたずね、世帯主の 年齢が高くなるほど既存住宅地も候補地にあがった割合 年齢別にみてみると表 4 - 2 のようになる。「将来のこと を考えると安心」は全体の54. 4 % が持ち家を選択した 理由にあげており、この理由は世帯主年齢が高くなるほ ど多くなる。世帯主年齢60歳以上の回答者の 7 割以上が 「安心」をあげている。「家賃を払うよりも経済的」で あるという理由をあげたのは全体では48. 5 % であるが、 これは世帯主年齢が低いほど理由としてあげる割合が高 4 ( ) 表5- 1 住宅選定の際に活用した情報源 (複数回答) 青木・多治見:郊外一戸建て新規開発住宅団地の居住者実態と住宅選択に関する研究ー高槻市花林苑における事例調査ー 住宅地(10) を候補地にあげたのは68.6%、近隣を除く高 槻市内は21.6%、高槻市外9.8% であった。 5−4.既存住宅地検討の過程 既存住宅地を検討した世帯の既存住宅地検討過程の状 況や、取得にいたらなかった理由を「はい」 「いいえ」 「わ からない」の三択でたずねてみると図 5 - 3 のようにな る。「規模立地等で条件に合う物件がなかった」ことが 既存住宅地での住宅取得がならなかった最大あるいは決 定的な理由であると考えられるが、 7 割以上の回答者が 「既存住宅地では新規開発住宅地より近所づきあいへの 不安が大きかった」としている。 6.居住者の住宅経験と地縁性 住宅選択の際に影響を及ぼすと考えられる居住者の住 宅経験と地縁性要素のひとつである実家の所在地につい 図5- 1 回答者年齢別既存住宅地に対するイメージ 図6- 1 幼少期から成人期までに過ごしたうち 最も印象深い住宅の建て方 図5- 2 世帯主年齢別既存住宅地検討の有無 図5- 3 既存住宅地検討過程の状況と既存住宅地非選定の理由 が高くなる傾向がある。世帯主年齢39歳以下では25.3% が「既存住宅地は検討していない」と回答している(図 5 - 2 )。また、既存住宅地を検討した世帯のうち近隣の 5 ( ) 図6- 2 夫婦各々の実家の所在地 生活科学研究誌・Vol. 5(2006) て見てみる。幼少期から成人するまでに過ごした住宅の を所有しているかどうか、相続予定の住宅宅地があるか 中で最も印象深かった、あるいは最初に思い浮かぶ住宅 をみると、 「所有している」世帯は9.4%、 「所有はないが の建て方について夫婦各々にたずねたところ、図 6 - 1 相続の予定がある」世帯が32.6% ある(図 7 - 3 )。相続 のようになり、59.5%の世帯で夫婦いずれもが一戸建て の予定がある世帯では相続発生時に居住継続の意向が変 住宅での居住経験を最も印象深いとしており、夫婦両方 化することも考えられる。また将来相続が発生した場合 が戸建て住宅以外とした世帯は 5 . 2 %と僅かであった。 ほとんどの世帯が夫婦の少なくとも一方が一戸建て住宅 での居住経験を印象深いものとしている。 また、夫婦各々に調査時点での実家所在地をたずねる と、夫婦の少なくとも一方の実家が高槻市内であると回 答したのは37.0%、高槻市を除く北大阪地域が13.9%、 北大阪地域を除く大阪府内が23.7%であった。夫婦いず れもの実家が近畿地方以外と回答した世帯は8.1%であ った(図 6 - 2 )。夫婦両方あるいは少なくともいずれか の実家からそれほど離れていない地域が居住地として選 択される場合が多いと考えられる。 7.居住継続の可能性 7−1.住み替えに関する意識 住み替えに関する意識を知るために「家族構成や通勤 状況などその時々の状況によって住み替えればよい」か どうかをたずねた。世帯主年齢別にみると、年齢が上が るほどライフスタイルに応じた住み替えに肯定的である 図7- 1 世帯主年齢別住み替えに関する意識 傾向がみられるが、これは回答者がいずれも入居 5 年未 満であり、世帯主年齢40歳代後半以降で実際に現住居に 移ってきたことが影響していると考えられる。世帯主年 齢39歳以下の回答者では約半数が「時々の状況で住み替 える」ことに否定的であり、これらの世帯はなるべく長 く住むつもりで郊外一戸建て住宅に入居してきたと考え られる。しかし、「高齢期の夫婦にとっても郊外一戸建 て住宅がよい」かどうかをたずねると、世帯主年齢39歳 以下の回答者で高齢期も郊外一戸建てがよいとしたのは 3 割に満たない。世帯主39歳以下の比較的若い世帯では、 郊外一戸建て住宅地を、高齢期に至るまでの期間に住ま 図7-2 世帯年収別現住宅での居住継続意向 う場所として捉えていると考えられ、高齢期以降の住宅 としても適切であるとするのは少数である。(図 7 - 1 )。 7−2.居住継続の意向 現住居に住み続ける意向についてみてゆく。全体の 80.2% が「住み替えは考えておらずなるべく長く住みた い」としており、世帯収入別でみると1250万円まででは 収入があがるほど「いずれ住み替える」とする世帯が増 加する傾向にある(図 7 - 2 )。 このうち「住み替えは考えておらずなるべく長く住み たい」としている世帯について、現居宅の他に住宅宅地 6 ( ) 図7-3 居住継続意向世帯の他の住宅宅地所有の状況 青木・多治見:郊外一戸建て新規開発住宅団地の居住者実態と住宅選択に関する研究ー高槻市花林苑における事例調査ー には、複数の住宅宅地を所有する世帯の増加も予想され 用度が高くなかったが、業者へのヒアリングによれば る。 既存住宅地の好物件は住宅情報誌に掲載されない場合 も多い。 8.周辺既存住宅地の住宅宅地取引状況 ④開発後年数が経過している住宅地に対しては、若年層 周辺の既存住宅地における住宅宅地の売買物件の状況 ほど抵抗感をもっており、コミュニティへの参加や近 を把握するため、2006年 4 月に高槻駅周辺の不動産業者 所づきあいで不安を持っている人が多い。 8件 (11) にヒアリング調査をおこなった。ヒアリング結 ⑤居住継続の意向については「住み替えは考えておらず 果をまとめると次のようになる。 なるべく長く住みたい」とする世帯が約 8 割であるが、 <周辺地域における近年の取引状況> 居住継続を希望する世帯の 4 割以上が現住宅の他に住 ・安岡寺、日吉台、松ヶ丘、弥生が丘町の各地域では年 宅を所有または相続の予定がある。また世帯主年齢39 間数件から十数件程度の売り物件が出る。売り物件は、 歳以下では「高齢期の住まいとして郊外一戸建てがよ 中古住宅や古家付き土地、更地の状態で元の持ち主か い」とするのは 3 割に満たない。長期的な居住継続に らの仲介物件であることもあれば、業者が売り出す条 件付き土地や新築建売住宅の場合もある。 関しては不確定な要素が多いと考えられる。 既存住宅地活性化や既存ストックの循環を推し進める ・現状では、価格設定が相場にみあっていれば売却でき ずに残ることは少ない。 方法のひとつとして、一戸建て住宅の主な需要層である 若年層を既存住宅地に誘導することが考えられる。新規 <顧客の状況> 開発住宅地に入居した若年層には、既存住宅地でのコミ ・高齢期になると郊外住宅地から駅近くのマンションへ ュニティ参加に不安を持っていることが多い。より多く の移転を希望する人が多い。 の若年層を既存住宅地にひきつけるためには、町並み整 ・マンションに移転した高齢者の場合は、とりあえずは 戸建住宅も所有し続ける場合がある。 備などハード面だけでなく、コミュニティ活動などソフ ト面でのアピールも必要であると考えられる。 <広告媒体> また、価格や入手のしやすさ等、コミュニティ以外の ・活用度の高い広告媒体は折り込みチラシやインターネ 要因についても検討する必要があると考えている。 ットであり、手撒きチラシ・折り込みチラシ、インタ ーネットで買い手が見つかりにくい場合に住宅情報誌 <謝辞> に掲載となることが多い。 本研究を進めるにあたりご協力いただきました花林苑 ・好条件のものは一般的な広告に載せる前に買い手がつ くことも多い。 自治会役員の方々はじめ居住者の皆様に心よりお礼申し 上げます。ありがとうございました。 9.まとめ 注 開発後数十年を経過した住宅地に隣接して近年新規開 ( 1 )参考文献 1 発された郊外一戸建て住宅地の居住世帯を対象にアンケ ( 2 )参考文献 1 、 2 など ート調査を行った結果、以下のことが明らかになった。 ( 3 )参考文献 3 など ①郊外一戸建て住宅への入居者は30歳代から40歳代前半 ( 4 )参考文献 4 、 5 など が大半であり、親と子からなる世帯や夫婦のみの世帯 ( 5 )図 3 - 1 に示した弥生が丘町、日吉台、安岡寺、松 が多く、若年層では借家からの入居が大半であり、世 ヶ丘の各地域はいずれも高槻市北部の丘陵斜面に 帯主年齢が上がるほど持家からの住み替えが多くな 形成されており、JR高槻駅から各地域まで路線 る。 バス10∼15分程度、アンケート調査対象地域「花 ②前住宅の退去理由としては住宅の狭さが最も多く、ま 林苑住宅地」から松ヶ丘住宅地までは直線距離で た持家を選択した理由としては若年層では「家賃より も経済的」が最も多い。しかし、世帯主年齢が高くな 約 2 ㎞である。 ( 6 )本稿では「花林苑住宅地」のように新規開発分譲 ると「将来のことを考えると安心」が最も多い。 される住宅地に対し、開発後数年以上経過し、初 ③住宅選定の際の情報源としては折り込みチラシや住宅 期入居が 完了しており街やコミュニティが完成 メーカーからの情報の活用度が高く、次いで住宅情報 していると思われる住宅地を「既存住宅地」と称 誌となっている。不動産業者による情報はそれほど活 する。 7 ( ) 生活科学研究誌・Vol. 5(2006) ( 7 )参考資料 6 による 調査より」 日本都市計画学会都市計画論文集 ( 8 )平成15年住宅・土地統計調査によれば、大阪府に No.39- 3 ,pp625-630,2004 おける持ち家居住世帯の家計を主に支える者の年 2 )鈴木佐代ほか 「郊外戸建住宅地の居住者変化と住 齢構成は、29歳未満1.7%、30∼34歳5.5%、35∼39 宅継承に関する研究−横浜市青葉区の建売分譲住 歳8.4%、40∼44歳7.9%である。対象地域は開発後 宅地の一事例から」日本建築学会計画系論文集 間もないということもあり、世帯主の年齢構成は No.597,pp161-166 ,2005.11 若年層に偏っている。 3 )山本茂ほか 「居住者の定住意向から見たニュー ( 9 )吹田市・茨木市・豊中市・摂津市・箕面市・池田市・ タウンの住環境保全の課題−千里ニュータウン戸 豊能郡・三島郡 建住宅地をケースに」日本建築学会計画系論文集 (10)弥生が丘町、日吉台、安岡寺、松ヶ丘の住宅地域 No.596,pp115-122 ,2005.10 (11)インターネットタウンページより「建物売買」「中 4 )高木恭子ほか 「千里ニュータウンにおける戸建て 古住宅売買」「土地売買」「分譲住宅のキーワード 住宅のリフォームと建替えの実態―長寿命化を目的 で駅周辺500m以内で検索したところ22件が該当し とした住宅のリフォーム手法に関する研究」日本建 た。その一部をヒアリング調査対象としたが、不 築学会計画系論文集 No.556,pp189-196 ,2002. 6 動産情報は業者間で共有されることも多いためお 5 )柴田健ほか「高度成長期に開発された郊外戸建て住 よその傾向は把握できると考えている。 宅地の変容プロセスに関する研究」日本建築学会計 画系論文集 NO.543 ,pp109-114,2001. 5 参考文献・資料 6 )平成 5 年度大阪府住宅・宅地開発動向一覧表―大阪 1 )小浦久子 「郊外住宅団地の居住実態と市街地の 府建築部住宅政策課 持 続 に 関 す る 研 究 − 神 戸 市 高 倉 台 団 地における 郊外一戸建て新規開発住宅団地の居住者実態と住宅選択に関する研究 ー高槻市花林苑における事例調査ー 青木 留美子、多治見 左近 要旨:昭和40年代を中心に大量に開発された郊外住宅地では現在居住者高齢化や、空き地・空き家化等の問題に直 面している地域も多い。これら開発後年数を経た住宅地に新規入居者を誘導し、居住者の世代交替を促進し、住宅 地を活性化させるためには、郊外一戸建て住宅への入居希望世帯の特性や入居までの住宅選択経緯を把握し、近年 の住宅取得世帯の住宅選択意識とともに、既存住宅地の選択可能性を検討することも必要である。本研究では開発 後数十年が経過した住宅地と隣接する地域に、近年開発された住宅地高槻市花林苑を対象にアンケート調査を行っ た。 結果、①郊外一戸建て住宅入居者には30∼40歳代の核家族世帯が多い。②近接する既存住宅地の購入も検討した にもかかわらず、選定に至らなかったのは近所づきあいに対する不安が影響している。③入居者のなかには他にも 住宅を所有する世帯、あるいは将来相続する予定がある世帯が約4割存在し、将来の住宅所有の継続や子への継承に ついては不確定な要素を持つ世帯が多い。等のことがわかった。 持続可能な郊外住宅地を形成してゆくには、物理的に良好な住環境の維持とともに、コミュニティに関するアピ ールも重要であると考えられる。 8 ( )