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2013/5/13 本パートの目的 • 資本主義の歴史性を理解する。 基本科目 経済学 歴史と制度 2013年 担当 柳沢 • 資本主義の発展段階を理解する。 • 資本主義の基本的な仕組みを理解する。 「経済」とは何か 2種類の経済学 • 「経済」は自然と人間の間の物質代謝過程 どんな時代にも必ず存在する。 歴史貫通的、超歴史的←→特殊歴史的 (36頁) • 狭義の経済学=一般的な意味での「経済学」 =商品経済が主要な対象 • 「経済とは生産・分配・消費の活動」(34頁) カール・ポランニー • 経済人類学の創始者(1886~1964) • オーストリア→ハンガリー→カナダ • 広義の経済学=商品経済以外の経済も対象 とする。 → 経済人類学 など カール・ポランニー • 経済人類学 非市場経済である未開社会などを経済 現象として分析する。 → 市場経済を相対化 → 贈与(互酬)・再分配・交換 • 主著『大転換』(1944) 市場社会の形成と崩壊 1 2013/5/13 ポトラッチ トーテムポール • 北米インディアンの儀式 部族長 互いに贈与 部族長 破 壊 大盤振舞 大盤振舞 部 族 民 部 族 民 ポトラッチの再分配 現代のポトラッチ 伝統的社会の経済の統合形態 現代社会の経済の統合形態 • 贈与や再分配が中心 • 交換が中心 • 慣習、政治(権力)、宗教などが経済を動かす 原動力 • 私的な利害が経済を動かす原動力 • 贈与、再分配も存在する • 現代社会の3形態を考えてみよう。 2 2013/5/13 現代社会の人間関係 • 交換が経済の中心 → 商品を媒介とした人間関係 資本主義 • 資本=「自己増殖する価値の運動体」35頁 • 資本主義:資本家の金儲けを原動力とする 経済 アダム・スミス「人間と人間が商人同士の ような関係になる。」 「真の友人と言えるのは生涯で2,3人。 」 • 資本主義は「主義」ではない。(資本制経済) 2種類の「資本」概念 資本主義の特徴 • 資本:金儲けのために姿を変えながら運動し ていくもの。(時には貨幣、時には機械、時に は商品などなど) 厳密には「産業資本」41頁 • 労働力の商品化 ⇐ とても重要 • 労働力=労働する能力 • 労働力の売り手=労働者 賃金を受け取り、生活物資を購入 • 資本ストック:固定設備(機械や工場など) • 労働力の買い手=資本家 購入した労働力を消費=労働させる 資本主義の成立条件 • 条件1 市場の存在 • 条件2 資本家と労働者の存在 =生産手段の非所有者と所有者の存在 (生産手段:工場、機械、原材料など) 詳細は39頁で。 ここまでの整理 • 経済 = 「生産・分配・消費」 → 超歴史的 • 経済の統合形態(ポランニー) 贈与・再分配・交換 • 現代社会は交換がメイン 原動力は私的な利害 モノを媒介とした人間関係 • 市場経済 ⊃ 資本主義 • 資本主義は 「労働力の商品化」が特徴 3 2013/5/13 本パートの目的 • 資本主義の歴史性を理解する。 市場経済⊃資本主義 農民A: 土地や農具など生産手段を所有 職人B: 道具や作業場など生産手段を所有 • 資本主義の発展段階を理解する。 • 資本主義の基本的な仕組みを理解する。 農産物 農民A 職人B 製造品 互いに生産物を交換する社会は資本主義? NO. 労働力が商品化されていない 市場経済⊃資本主義 農産物 農民A 商 人 職人B 製造品 間に商人が介在する社会は資本主義? NO. 労働力が商品化されていない 商人資本 • 安く買って高く売る → 利益を得る • 商人資本 • 商人資本の形式 貨幣-商品-貨幣’ G - W - G’ • 商人資本は生産に関与しない → 資本主義以前から存在する 資本主義以前の商人資本 製品A 荘園A 商人資本 荘園B 製品B 荘園の中で農奴は強制的に働かされている 封建制の時代でも商人資本は存在する 産業資本 • 資本家が生産まで掌握 =労働力を購入して生産を行う (=労働力の商品化) • 産業資本 • 資本主義の確立=生産の主要な担い手が産 業資本になる 4 2013/5/13 資本主義の発展段階 • 発展段階の区分 国家が行なう経済政策が区分の指標 • 代表的な区分 (1)重商主義 経済政策のウェイト大 (2)自由主義 経済政策の消極化 (3)帝国主義 経済政策が再度積極化 (4)「現代資本主義」 重商主義段階の貿易構造 重商主義段階 • 16世紀~18世紀後半 • 西ヨーロッパ スペイン・ポルトガル → オランダ → フランス・イギリス • 基軸産業は毛織物産業 • 商人資本の活躍 → 産業資本の広まり 重商主義の経済政策 • 経済政策(1) 貿易路や植民地の確保 → 強力な軍事力 アメリカ • 経済政策(2) 輸出産業(毛織物)の育成 → 労働力商品化の後押し → 競争相手からの保護 ヨーロッパ 香辛料 アジア イギリス重商主義 アルマダの海戦 1588 • 経済政策(1) 強力な海軍力 18世紀はフランスと覇権争い (7年戦争など) ちなみに、イギリスはほぼ全勝 敗北はアメリカ独立戦争ぐらい 5 2013/5/13 7年戦争 1756-63 イギリス重商主義 • 経済政策(1) 強力な海軍力 18世紀はフランスと覇権争い (7年戦争) • 経済政策(2) 輸出産業(毛織物)の育成 → 労働力商品化の後押し → 競争相手からの保護 囲い込み • 農民から土地(または共有地)を奪う → 農民の生活破壊 → 労働力を売らざる をえない労働者階級の成立 • 第一次囲い込み 16世紀(畑→牧羊の飼育) 「羊が人間を食う」 • 第二次囲い込み 18世紀(農法の変化→ 共有地からの排除) 議会が承認 毛織物産業の保護 (1)羊毛の輸出禁止 17世紀末 アイルランドとアメリカへの原料供給停止 (2)競合商品(キャラコ)の輸入制限 キャラコ=インド産綿製品 1700年キャラコ輸入禁止 1720年キャラコ使用禁止 イギリス重商主義 • 経済政策(1) 強力な海軍力 18世紀はフランスと覇権争い (7年戦争) • 経済政策(2) 輸出産業(毛織物)の育成 → 労働力商品化の後押し → 競争相手からの保護 綿製品 vs. 羊毛製品 綿製品のメリット (1)染色が容易 (2)洗濯が容易 (3)暖かい地方にも売りやすい 6 2013/5/13 インドの糸車 インドの綿布の生産 キャラコへの対抗 産業革命の意義 (1)機械による綿製品の生産 (1)機械による綿糸・綿布生産 → キャラコよりも安い製品 (2)産業資本の確立(=資本が生産面も掌握) 毛織物 綿製品 生産は農民 販売が商人資本 産業資本が生産 と販売を掌握 ケイの飛び杼(1733) (2)機械による作業の単純化(熟練の解体) → 広範な労働力が使用可能に (3)産業資本の自立化(詳しくは41頁) =資本が生産を掌握する ジェニー紡績機(1760ごろ) 飛び杼 7 2013/5/13 カートライトの力織機(1785) ワットの蒸気機関(1776ごろ) 産業革命の展開 自由主義段階 (1)綿工業 → 重工業へ、交通機関の変革 (2)労働者階級と資本家階級の階級社会 → 貧富の格差 → 労働運動(社会主義運動) (3)イギリスは「世界の工場」となる 帝国主義段階 (1)経済政策の消極化 自由貿易(1774キャラコ使用禁止法廃止) 産業資本の自立化 (2)「安上がりの政府」、「自由放任」が政策理念 (3)ただし、労働時間の法的制限などを導入 帝国主義期の政策 (1)19世紀末 • 経済政策(および社会政策)の積極化 (2)株式会社 → 生産の大規模化 (1)植民地の再分割 → 軍事力・戦争 (2)工業関税、農業関税の引き上げ (3)社会保険(疾病保険、失業保険) ← 社会主義運動への対抗 (3)市場の組織化(独占) ← 生産の大規模化 (4)植民地の確保 ← 生産の大規模化 8 2013/5/13 資本の3形式 • 商人資本の形式 • 金貸資本の形式 • 産業資本の形式 商人資本の限界 • 商人資本の参入増大 価格差の消滅 → 商人資本の成立不可能 • 歴史的には国家による商人資本の保護 特許制度、株仲間(日本) 金貸資本 • 金貸資本: 金を貸して利息を得る G ・・・ G’ • 資本主義以前から存在 産業資本 • 資本家が労働力と生産手段を購入し、生産を 行わせる。 • 産業資本の形式 • 金貸資本の限界: 利息の源泉が不安定 生産手段 貨幣-商品 ・・・生産過程・・・ 商品’-貨幣’ 労働力 ここまでの整理 • 市場経済⊃資本主義 生産物を売買しても労働力の売買なし • 商人資本が存在すれば資本主義か? 労働力の売買なしでも商人資本は存在 • 資本主義の特徴は何か? 労働力の商品化 ここまでの整理 • 資本主義の発展段階を区分する指標は? 経済政策(国家の経済への関与)が区 分の指標 • 代表的な段階は? 重商主義 自由主義 帝国主義 「現代資本主義」 9 2013/5/13 ここまでの整理 • 重商主義の時期は? 16世紀から18世紀後半 大航海時代ごろから産業革命の前 • 重商主義の経済政策のウェイトは? 大きい。← 資本主義が自立的でない 産業資本が確立する準備 ここまでの整理 • 経済政策(1) 貿易路や植民地の確保 → 軍事力 • 経済政策(2) 輸出産業(毛織物)の育成 → 労働力の商品化の後押し 囲い込み → 毛織物産業の保護 羊毛輸出禁止・キャラコ輸入 禁止 ここまでの整理 ここまでの整理 • 産業資本の自立を決定的にした出来事は? 産業革命 • 産業革命の意義は? 機械による競合商品にまけない生産 機械による熟練の解体(広範な労働市場) 産業資本が生産を掌握 • 産業革命による主要な資本形式の変化は? 商人資本 → 産業資本 • 資本の3形式は? 商人資本形式/金貸資本形式 産業資本形式 • 資本主義以前から存在した資本形式は? 商人資本形式と金貸資本形式 • 産業資本形式を書け • 産業資本が主要な資本形式となる段階は? 自由主義段階 本パートの目的 産業資本の数字例 • 資本主義の歴史性を理解する。 • 価格で見た数字例 44頁 表3 • 資本主義の発展段階を理解する。 • 資本主義の基本的な仕組みを理解する。 利潤の確実性 生産手段 1500万 貨幣-商品 3000万 ・・・生産過程・・・ 商品’- 貨幣’ 6000万 6000万 労働力 1500万 ↑うち3000 万が利潤 10 2013/5/13 社会全体へ拡張 • 社会全体が産業資本による生産と見る 社会的再生産 • 社会全体では生産(および生活)を繰り返す 必要がある 生産手段 1500億 貨幣-商品 3000億 生産手段 1500億 ・・・生産過程・・・ 商品’- 貨幣’ 6000億 6000億 労働力 1500億 貨幣-商品 3000億 ・・・生産過程・・・ 商品’- 貨幣’ 6000億 6000億 労働力 1500億 ↓ 生産手段1500億 剰余生産物3000億→利潤 生活物資1500億 商品’-貨幣’ W’ 生産手段1500億 Pm 剰余生産物3000億 ⊿W→利潤 生活物資1500億 B - G’ 労 働 力 賃金が上昇したら? 労 働 力 生産手段 1500億 純生産物 4500億 資本家が生産手段1500億購入 資本家が剰余生産物3000億購入 労働者が生活物資1500億購入 純生産物=⊿w+B 生産手段 1500億 純生産物の分配 純生産物 4500億 生活物資 1500億 剰余生産物 3000億 利潤の源泉は何か • 産業資本が利潤を確保できる理由 賃金総額が4500億未満であるから • 賃金を低く抑えるメカニズム 賃金↑ → 利潤↓ → 雇用↓ → 賃金↓ 生活物資 4500億 利潤ゼロ • 商人資本や金貸資本よりも利潤が確実 11 2013/5/13 商人資本と産業資本 労働時間単位 • 商人資本は地域的な価格差を利用して利潤 を得る。 → 参入により価格差消滅 • 経済量は価格ではなく、労働時間で測る(集 計する)こともできる。 • 産業資本は労働力の価格を抑えるメカニズ ムを持っている。 → 利潤がより確実に • 投下労働時間=商品の生産に必要な労働時 間(生産手段の生産時間も含む)。 間接労働時間+直接労働時間 • 商人資本の商業資本への変容=利潤を分与 する関係。 労働時間単位の数字例 生産手段 1500億時間 4 5 0 0 億 時 間 純生産物 4500億時間 生活物資 1500億 時間 剰余生産物 3000億 時間 必要労働 労働時間単位の数字例 • 労働者は4500億時間労働して、1500億時 間分の生活物資を買い戻すにすぎない。 • 1500億時間を必要労働時間と呼ぶ (生活維持に必要な労働時間と見なせる) • 3000億時間を剰余労働時間と呼ぶ 剰余労働 利潤の源泉再考 • マルクス経済学では剰余労働が利潤の源泉 であると考える。→ 利潤は生産過程で生み 出される。 • 労働力の売買を通じて剰余生産物を資本家 が取得することを「搾取」と呼ぶ。 労働力再考 • 労働力の販売は、労働する能力を一定時間 売ることで行われる。 • 賃労働: 賃金を受け取って働くこと • 資本・賃労働関係: 雇用する資本家と雇用 される労働者の関係 • 利潤の存在と剰余労働の存在が同値である ことは数学的に証明されている。 12 2013/5/13 労働力商品の特殊性 児童労働 • 資本が直接に生産できない。 • 労働力(=労働する能力)は労働者の生活の 中で生産するほかない(出産も含む)。 • 労働力商品化の「無理」(=市場に全てを任 せられない) → 労働組合 → 自由主義段階でも工場法等が存在 (労働者保護は次第に強化される) 児童労働 帝国主義段階の社会政策 • ドイツの労働者保護政策 1883 医療保険 1884 労災保険 1889 養老保険 • イギリスの労働者保護政策 1911 失業保険 • 社会主義運動への対抗 13