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球状星団M3の変光星

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球状星団M3の変光星
球状星団M3の変光星
研究者名:村仲
石其
優季
神田
彩子
山崎
すばる
担当教諭:湯川
1.研究の動機
東京大学木曽観測所(木曽町三岳)が主催する
銀河学校 2007 にメンバーの内二人が参加し、そ
こで教わったことを生かし、今回新たな二人の
メンバーと共に研究を進めていくことにした。
本研究テーマを決めるにあたって、地学の教
科書の中にある M3 の HR 図(右図)を見て、その
中に他とは孤立したかたまりがあることに興味
を持ち、天文関係の書籍や東京大学木曽観測所
の三戸洋之氏のご助言を参考にして調べていく
中で、球状星団(注 1)内の星の中には変光周期の
短い変光星(注 2)があることを知った。そこで、
変光星とそうでない星には明るさと色の関係に
違いがあると推測し、それを実証するため、研
究を行った。
<注 1 球状星団>
恒星が互いの重力で球状に集合したものをいう。我々の銀河で、球状星団は 150 個ほど
が見つかっている。球状星団に含まれる恒星の数は、数万から数百万個にもおよぶという。
個々の恒星は、球状星団の中心をめぐる運動をしていると思われるが、質量が複雑に分散
している中を運動するため、太陽系の惑星のように楕円運動とはいかないようだ。球状星
団に含まれる恒星は、青白い星から赤い星まであるが、特に明るい星は恒星の末期状態で
あるという赤色がほとんどである。
<注 2 変光星>
恒星の一種で、明るさが変化する星のこと。星の表層の周期的な膨張・収縮または星の
外層や大気の爆発によって変光するもののほか、星が隠れたり表れたりすることで見かけ
上の光度が変わり変光星として観測される場合などもあり、変光する原因はさまざま。
2-1
渉
歩
2.研究の方法
(1) 画像入手
同じバンド(注 3)、同じ露光時間で、数時間の間隔をおいて撮影した球状星団の写真を準備する。今
回は、国立天文台データセンターのサイト、SMOKA
(Subaru Mitaka Okayama Kiso Archive)から
木曽 105cm シュミット望遠鏡(木曽観測所)で撮影した M3 の画像を入手した。
M3
<注 3 バンド>
特定の波長の光しか通さないフィルターのこと。今回は、R バンド(赤のフィルター)と B
バンド(青のフィルター)の画像を使用した。
(2) 一次処理
画像を一次処理(注 4)して研究できる状態にする。
<注 4 一次処理>
星を撮影する CCD カメラの CCD(光を感知する素子)には、それぞれ特性(クセ)がある。一
次処理とは CCD の特性を補正して星本来の画像を作り出すこと。
2-2
(3) 星の明るさを求める
M3 の半径 400 ピクセル内の星ひとつひとつを、すばる画像処理ソフト makalii(マカリ)を用いて測光
する。この条件で M3 の中心部に位置して測光ができない星を除く約 600 個の星を観測対象とする。実
際に測光した星を以下の図に示す。
(4) 変光星を探す
① ブリンクを用いて変光星を探す
makalii のブリンク機能(=画像を交互に表示する機能)を使って、時間差のある同じバンドの画像
を対比し、明るさの異なっている星を探す。
2-3
この作業の結果 23 個の変光星を見つけた。
② 測光したデータを元に変光星を探す
時間差のある同じバンドの画像を測光し、一方のカウント(=測光した明るさの数値)からもう一方
のカウントを割った値が平均値からかけ離れているもの(=明るさの変化が大きい)を変光星とする。
2つの画像における明るさの比
明るさの対数比
測光番号
2-4
今 回 の 研 究 で は 、 平 均 値 が log0.03 だ っ た た め 、 計 算 結 果 が 平 均 値 か ら ± 0.2 を 超 え る
x<log-0.23,log0.17<x のものを変光星と定義し、この条件を満たす 35 個の星を見つけた。
(5) 星の色を求める
R バンドの測光結果と B バンドの測光結果を対比する。ここでは、R バンドのカウントを B バンドの
カウントで割った値を求める。
(6) HR 図を作る
色と明るさのデータをもとに HR 図(注 5)を作り、その相関関係を調べる。
<注 5 HR 図>
正式名称 Hertz Sprung Russell 図。横軸に色、縦軸に明るさをとり、その相関関係を調べ
る分布図。
更に、HR 図の中で変光星の分布に特徴があるか(色や明るさの分布が他と違うか)を調べる。
3.結果
M3 の HR 図
明るさ(log)
R/B
2-5
M3 内の変光星の HR 図
明るさ(log)
R/B
M3 全体の HR 図は、明るい星が赤く、暗くなるにつれ赤い星と青い星にわかれるという特徴をつか
んだ教科書に書いてあるものに近い HR 図ができた。しかし、文献を調べた中で変光星の HR 図は一か
所に集中すると書いてあったが、今回の研究では変光星の分布は一か所に集中せず、全体的に青っぽい
星であることしかわからなかった。
4.考察
今回変光星を求めるために使用した画像が 2 枚だけだったことや、測光の作業に慣れていないことが
変光星の HR 図がうまく書けなかったおもな原因だと思う。
今後は調査対象とする画像の数を増やし、もっと正確なデータが出せるようにしたい。また、変光星
が変光する仕組みや、なぜ球状星団に存在するか、ほかの球状星団での HR 図上での分布はどうなって
いるかなども調べてみたい。
2-6
5.感想
今回の研究は、つまづく点が多くて予想以上に時間がかかってしまった。
球状星団についての知識、変光星についての知識がなかったので、今回の研究でいろいろと勉強にな
った。まだ画像処理、測光など makalii の操作に慣れていない点があったのでもっと技術を上達させて
使いこなせるようし、天文の知識をより深いものにしていきたい。(村仲)
課題研究は、自分にとってとても有意義なものだった。仲間とはっきりした1つの目標に向かい、目
にみえて成果をあげる研究を進めることは楽しかったし、今回天文も研究をすることで、私は天文だけ
でなく、たくさんのことを学ぶことが出来た。それはありきたりかもしれないが、研究というものの仕
方、誰かと何かを為すということ、可能性を見つけたときの興奮、妥協や失敗、そして何かを発見した
ときの喜び。疲れたり、怒られたり、嫌になったりしたが、それでも研究をして良かった、そう思える
ようになって良かったと思う。今回の研究は自分1人では決して出来ないことだった。仲間と協力して
くださった湯川先生、三戸さんにはとても感謝している。
ちゃんと終わらせることが出来て良かった…みんなお疲れ様。(石其)
まったく未知の分野に踏み込んで、初歩的な知識からの導入だった。そのわりには取り組みに対する
意欲が足りなかったと反省している。星やその観測のメカニズムについて、私が得た知識はほんのさわ
り程度なのだろうけれど、例えば太陽を含めた恒星が気体でできていること自体が、私にとっては大き
な驚きだった。広い目で見て自分たちを取り巻く環境なのに、本当にまったく知らなかった分野なので、
少し世界が広がった気がした。
思うようには研究が進まなかったり、理解できなかったりしたけれど、進んでいくなかでわかってい
くことや考えることが、終盤に近づくにつれてどんどん楽しくなった。たくさん課題が残る研究になっ
てしまったけれど、いい経験ができたと思う。三戸さん、湯川先生ほか、協力してくださった方々、そ
してメンバーのみんなに謝罪と感謝。(神田)
球状星団について知らないことばかりで理解するのが難しかったし研究が順調に進まないこともあ
って大変だった。でも難しい操作を自分達で行って研究を進めていき、わかったことには本当に感動し
た。自分ひとりでは決して出来ない研究をメンバーと共に出来て楽しかったし、色んなことを学んだ。
本研究で取り上げた球状星団は宇宙の星の内でほんの一部だが、その中にだけでもいくつも発見があ
るなら宇宙には数え切れないくらいの謎があって面白いなとおもった。今回研究に力をかしてくださっ
た三戸洋之さん湯川先生メンバーのみんなありがとうございました。
(山崎)
2-7
6.謝辞
本研究は、東京大学木曽観測所で収集され、国立天文台天文データセンターで管理されているサイト
SMOKA(URL:http://smoka.nao.ac.jp/)から入手した資料に基づいています。
今回の研究にあたり、木曽観測所の方々に研究の協力をいただきました。特に三戸洋之氏には研究の
方法に関するご指導・ご助言をいただくなど、多大なご助力をいただきました。ありがとうございまし
た。
7.参考文献
地学の教科書
『地学Ⅰ
新訂版』(実教出版)
半田利弘『はじめての天文学』(誠文堂新光社)
沼澤茂美、脇屋奈々代『140 億光年のすべてが見えてくる宇宙の辞典』(ナツメ社)
二間瀬敏史『図解雑学
宇宙 137 億年の謎』(ナツメ社)
嶺重慎、有本淳一『カラー版
月光天文台ホームページ
Wikipedia(変光星について)
はじめての天文学
-星・銀河とわたしたち-』(岩波ジュニア新書)
http://www.gekkou.or.jp/g-3/ht3-07/g-cluster.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%89%E5%85%89%E6%98%9F
Wikipedia(球状星団ついて)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%83%E7%8A%B6%E6%98%9F%E5%9B%A3
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