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発熱, 食欲不振, 全身倦怠感を 自覚した1例
発熱, 食欲不振, 全身倦怠感を 自覚した1例 岡野 義夫1), 高嶋 美佳1), 澤田 徹1), 町田 久典1), 畠山 暢生1) 日野 弘之1), 篠原 勉2), 大串 文隆1) 独立行政法人国立病院機構高知病院呼吸器センター1) 臨床研究部2) 症例 症 例:98歳, 女性 既往例:特記すべき事無し 家族歴:特記すべき事無し 主 訴:発熱, 食欲不振, 全身倦怠感 現病歴:20xx年7月に発熱, 食欲不振, 全身倦怠感を主訴に当院を受診となっ た。胸部レントゲン検査, 胸部CT検査にて右胸水を認めた。精査加 療目的にて当院に入院となった。 現 症:身長 150cm, 体重 40kg, 体温 36.7℃, 血圧 105/56mmHg, 脈拍数 63/分, 整, room air SpO2 98% 呼吸音 右下肺野で呼吸音の減弱を認める, 腹部に圧痛なし 入院時血液検査 WBC 6860/ul Neutro 72.2% Lymph 20.7% Mono 6.6% Eos 0.4% Baso 0.1% RBC 350 x 104/μl Ht 31.5% Hb 11.3g/dl Plt 21.1 x 104/μl GOT GPT ALP LDH T-Bil BUN Cre Na K 15IU/L 7IU/L 188IU/L 96IU/L 0.82mg/dl 19.6mg/dl 0.47mg/dl 135mEq/L 3.4mEq/L CRP 9.16mg/dl CEA 2.0ng/ml CYFRA 2.4ng/ml NSE 9.2ng/ml 入院時胸部レントゲン検査 入院時胸部CT検査 右胸水貯留を認めた。 胸水検査 比重 pH 蛋白 糖 LDH CEA 1.028 7.4 4.3g/dl 95mg/dl 379IU/L 1.42ng/ml 細胞分類 好中球 マクロファージ 好酸球 86% 12% 2% ヒアルロン酸 ADA 122000 42.5IU/L 胸水細胞診診断 Class V, Adenocarcinoma or Malignant mesothelioma 悪性細胞が孤立散在性から小集塊で見られる。核中心性から偏在性 細胞質は厚く, 辺縁が全周性にファジー多角, 小体の目立つ細胞。 低分化の腺癌細胞か中皮腫も疑う細胞像を呈している。 右胸膜生検病理組織(HE染色) 大型明瞭な核小体, ヘテロクロマチン, 大型濃染類円形核, 多角から紡錘形胞体 を持つ腫瘍細胞が, 不規則に錯綜して密に増殖している。 右胸膜生検病理組織(免疫染色1) AE1/3陽性 CAM5.2陽性 Ber-EP4陰性 カルレチニン陽性 D2-40弱陽性 右胸膜生検病理組織(免疫染色2) Vimentin陰性 CEA陰性 CK5/6陰性 右胸膜生検病理組織診断 Malignant mesothelioma, sarcomatioid type 大型明瞭な核小体, ヘテロクロマチン, 大型濃染類円形核, 多形~紡錘形 胞体を持つ腫瘍細胞が, 不規則に錯綜して密に増殖している。硝子様間質 に埋没するような部分も認める。腺腔形成, 粘液産生はない。 免疫染色では, AE1/3陽性, CAM5.2陽性, カルレチニン陽性, Ber-EP4陰性 D2-40弱陽性, vimentin陰性, ER陰性, CEA陰性, CK5/6陰性。 CK5/6陰性であるが, カルレチニン陽性が顕著であるため, malignant mesothelioma, sarcomatoid typeと診断した。 悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma:MPM) 悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma:MPM) は, 胸腔内面をおおう一層の中皮細胞に発生する難治性腫瘍で ある。これ以外に中皮腫は, 腹膜, 心膜, きわめてまれに腹膜鞘 状突起の遺残である精巣鞘膜の中皮細胞にも発生する。日本の 2003~2008年の死亡統計(ICD-10)では, 中皮腫の全死亡数は 6030人であり, その中で診断が確認された929例の発生部位は, 胸膜(85.5%), 腹膜(13.2%), 心膜(0.8%), 精巣鞘膜(0.5%)で, 圧倒的 にMPMが多い。2010年の死亡数(1209人)は, ICD-10が導入さ れた1995年の2.4倍となり, 特に男性での増加が著明である(男 女比5:1)。中皮腫と石綿(アスベスト)曝露は密接に関係してい るが, 男性での急増は職業性アスベスト曝露の機会が女性より 多いことが原因である。 悪性胸膜中皮腫に対する治療戦略 化学療法 cisplatin + pemetrexed cisplatin + gemcitabine cisplatin + irinotecan cisplatin + vinorelbine 奏効率 25~30% cisplatinが使えない場合は, carboplatinが選択される。 外科治療 肉眼的完全切除(macroscopic complete resection) 患側肺を温存させる胸膜切除/肺剥皮術 (pleurectomy/decortication) 胸膜・肺・横隔膜・心膜をen-blocで切除する胸膜肺全摘術 (extrapleural pneumonectomy:EPP) 放射線療法 予後不良因子 非上皮型 男性 進行臨床病期 PS不良 血小板数増多 白血球数増多 Vascular endothelial growth factor高値 免疫染色 AE1/3 CAM5.2 カルレチニン Ber-EP4 D2-40 Vimentin CEA CK5/6 上皮, 中皮 腺癌 中皮(特異性が高い) 上皮 中皮 中皮 腺癌 中皮