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駐在員だより - 日本産業機械工業会
駐在員便り シカゴ 6月に入り、暑すぎず、涼しすぎず、非常に過ごしやすい日が続いています。ある天気のよい週 末、車で5分ほどの距離にある自然公園に行ったところ、たくさんの人が集まって、釣り、サイク リング、ジョギング、バーベキューなどを楽しんでいました。駐車場には車がたくさん止まってい るのですが、公園自体が非常に大きいため、人ごみという感じはしません。我が家も家族で散歩を していたのですが、公園内でバーベキューをして昼食をとっている人たちの姿に触発され、その日 の夕食は家の庭でバーベキューを楽しみました。 去る5月20日、21日と NATO(北大西洋条約機構)のサミットがシカゴで開催されました。 オバマ大統領をはじめ、加盟国28カ国の首脳などがシカゴに集結するということで、当地ではい ろいろと話題になりました。今回は、NATO サミットに係る顛末について書きたいと思います。 実は、この NATO サミット、元々は、この直前、5月19日にワシントン郊外のキャンプデービ ットで開催された G8 サミットとあわせてシカゴで開催される予定でした。シカゴでの G8 サミッ ト及び NATO サミットの開催が発表されたのは、2011年の夏でした。シカゴでは、このような 大きな国際会議を多くは経験していませんが、2011年5月にシカゴ市長に就任したエマニュエ ル市長が大統領首席補佐官であったことから、G8 サミット、NATO サミットをシカゴに招致した と、話題となっていました。他方で、あまり経験のないシカゴにおいて、多数の国の首脳を迎え入 れるために、いったいどこの場所で開催するのか、セキュリティはどうなるのか、また、デモで集 結した人々が暴徒化して大変な騒ぎになることもありますので、その点も含めて、いろいろと懸念 する声もありました。 また、G8 サミットには、日本の首相も出席しますから、当地の総領事館をはじめ、我々ジェト ロ、シカゴ商工会議所等、日本人コミュニティでは、首相のシカゴ来訪にあわせた様々なイベント 等の企画がはじまりました。前回、日本の首相がシカゴに来訪されたのは、1999年までさかの ぼります。当時の小渕首相がシカゴの他にロスとワシントンとまわる米国公式訪問の一環として来 訪され、その際には、1,000人を超える規模での食事会や、メジャーリーグでの始球式の登板 などが行われました。さて、今回は、ということで、G8 サミット、NATO サミットの開催が近づ いてきた、今年の2月頃、総領事館からジェトロに対しても、首相のシカゴ来訪に際しての具体的 なアイディア出しの協力依頼がありました。もちろん、サミットだけ出席して帰国されることも考 えられますが、それにあわせて意義のある企画が提案できれば長くシカゴに滞在いただける可能性 もあるわけで、我々としては、いかに魅力的なアイディアを提供できるかが鍵でした。 その頃には、サミット会場には、全米でも最大規模の展示会場であるマコーミックプレイスと決 定し、またシカゴ市は、サミット開催にむけたセキュリティの体勢等についての説明会なども開催 し、いよいよ具体的になってきたという感じでした。ところが3月初旬、唐突に G8 サミットはシ カゴではなく、キャンプデービッドで開催することに変更となった旨、発表されました。理由は、 セキュリティ上の問題ということだったのですが、まさに晴天の霹靂といった発表でした。 エマニュエル市長がシカゴに G8 サミット、NATO サミットを招致した大きな理由の一つは、地 元への経済効果だったわけですが、当該発表がなされた際に、市長は、NATO サミットは引き続き シカゴで開催され経済効果も相当程度ある、とあわせて主張していました。他方、我々日本人コミ ュニティにとってみると、日本の首相は G8 サミットには参加するものの、NATO サミットには基 本的には加盟国ではないので参加しません。首相がシカゴに来るか、来ないかで大きな違いです。 総領事館は G8 が終わったあと、シカゴにも来訪できないか、働きかけをしたようですが、結果、 ― 103 ― 残念ながら13年ぶりの首相のシカゴ来訪は、なくなってしまいました。 さて、5月20日(日) 、21日(月)の NATO サミットの開催を週明けに控えた、前週の木曜 日からダウンタウン内のあちこちで路上駐車が禁止され、警備のための多数の警官の姿を目にする ようになりました。翌金曜日になると、どこから集まってきたのかと思うほどの本当に多くの警官 がダウンタウンを埋め尽くしました。また、金曜日には、いくつかのデモが行われ、また、その様 子は、ジェトロが入居しているビルの管理会社からメールを通じて逐一報告されました。要は、そ の近辺には近づかないように、ということです。さらに、日系企業も含む少数でない企業が、NATO サミット開催当日の月曜日には、出勤に至らずという措置をとっていました。ジェトロでは、そこ までの措置はとらなかったものの、出勤に際してはスーツではなく私服で来るようにとの指示があ りました。いくつかのデモは貧富の差の拡大を非難していることから、スーツを着ていると攻撃の 対象になりかねないということからでした。 さて、当日。デモ隊と警官隊との衝突はゼロではなかったものの、一般企業や市民に危害を与え るというようなことはなく、大事件に至らずに閉会を迎えました。今回の NATO サミット開催によ る経済効果ですが、ある試算によると、1億3,000万ドルとなっています。他方で、上記のと おり、普段シカゴ市内に来ていた者が来なくなったりもして、郊外鉄道である Metra は、逆の経済 効果ではありませんが、普段よりも乗客が減ったということも発表しています。いずれにしまして も、大きな事故等なく、無事に会議が終了したことは、一番よかったのではと思っています。 写真は、シカゴダウンタウンの該当に掲げられた NATO サミット開催の旗と、駐停車が禁止とな ったダウンタウン内道路の掲示です。 ジェトロ・シカゴ事務所 産業機械部 松本 崇 ― 104 ―