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会報ACCESS 第28号 2009年5月15日発行

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会報ACCESS 第28号 2009年5月15日発行
季刊
www.kasetsuanzen.or.jp
いつまでも
「たかいたかい」ができる家庭を守る
足場コミュニティー誌
やるぞ点検
全国仮設安全事業協同組合
足場の安全 家族の安心
号
28
2009
ア
ク
セ
ス
春
トピックス
法面の技術力
世界的にも高水準
法面保護協会
小久保 秀晴氏
全国特定法面保護協会 専務理事
斜面・法面工事用仮設設備解説
JISA8972の普及促進は
喫緊の課題
手すり先行工法に関するガイドライン
行政が定めたもので
遵守すべきものとして指導
厚生労働省労働基準局安全衛生部長
法面保護協会
28
2009
目次
C
www.kasetsuanzen.or.jp
ア ク セ ス
号
春
o
n
t
緑化等の景観に配慮
法面の技術力
世界的にも高水準
「のり面施工管理技術者」の育成にも力
e
n
t
s
●トピックス│ Topics 1
法面の技術力
世界的にも高水準
‥ ‥‥ 1
小久保 秀晴氏 全国特定法面保護協会 専務理事
篠田伸夫氏 当組合専務理事(聞き手)
●トピックス│ Topics 2‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
斜面・法面工事用仮設設備解説
JISA8972 の普及促進は
喫緊の課題
●クローズアップ
組合員のナカダ産業が省エネ大賞
初の栄誉 中小企業庁長官賞 第一号 ‥ ‥‥‥ 7
蓑川和道氏 ナカダ産業株式会社 社長
●安全夜話‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8
業界 45 年を振り返る(中編)
赤峰民生 当組合企画広報部長
ACCESS
ACCESS
ACCESS
●手すり先行工法に関するガイドライン
行政が定めたもので
遵守すべきものとして指導‥‥‥‥‥‥‥‥
篠田 それではまず貴協会が設立に至った経緯や業務内容等につ
いてお聞かせ下さい。
小久保 当協会は昭和 50 年に任意団体として設立され、昭和 57 年
に社団法人となりました。昭和 40 年代初頭から環境問題が盛んに
取り上げられるようになり、それまで主流だったコンクリート吹付工
(ベタ吹付け)から、緑化等の景観に配慮した工法が必要となりまし
9
厚生労働省労働基準局安全衛生部長
(※ 1)を普及させるこ
た。そのため「吹付けモルタルによるのり枠工」
と、そして業界全体の技術力を向上していくことを目的に設立されま
ACCESS
ACCESS
‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
12
●われら仮設安全監理者
株式会社
十全
専務取締役
吉田 栄一氏
●専門工事業者に聞く‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13
安全をないがしろにすれば
全ての人に迷惑がかかる
した。現在の会員数は約 230 社です。
主な業務内容としては、のり面保護工に関する調査・研究及び開
発とこれらに関する受託、そして技術者及び技能者の養成等です。
篠田 コンクリート吹付工と吹付枠工では、耐用年数にどれくらい
の差があるのでしょうか。
小久保 一般的にコンクリート構造物の耐用年数は 50 年から70 年
市原親一氏 市原建興代表取締役
と言われていますが、コンクリート吹付工の場合、地盤の風化や湧水
ACCESS
ACCESS
ACCESS
等の問題がありますので 20 年から30 年前後だと思います。のり枠
工のほうが耐用年数は延びるだろうと思いますが、昭和 50 年頃から
の工法ですので、現状ではまだ明確になっていません。
全国仮設安全事業協同組合
1
ACCESS
OK!
ACCESS
Top x1
トピックス
地 震 多 い 日 本 の ニ ー ズ が
技 術 力 アップ に 繋 が る
てほしいという要望がありましたので、資格試験を実施することにな
り、平成8年から検討を始め、平成 11 年に「のり面施工管理技術者
社団法人
全国特定法面
保護協会 専務理事
Kokubo, Hideharu
小久保秀晴氏
資格試験」としてスタートしました。国土交通省に国家資格としてほ
しい旨、要望しているところですが、先般、建築の偽装問題等もあり
ましたし、また基幹技能士など技術者について見直しの兆しもあり
ますので期待しているところです。
篠田 現在は何名の資格者がいるのですか。
篠田 昨今の環境問題では CO2 等の新たな問題がありますね。緑
小久保 2,500 名です。合格率は毎回 20 %程度で、土木と緑化のそ
化も、そういう観点から考えていく必要性も出てきているのでしょう
れぞれの知識が必要です。今、技術評価というのは社会的要請とも
ね。
言えますが、技術力について発注者が何を以って評価するのかを考
小久保 そうですね。時代の背景、ニーズに応えられるように工法
えれば、客観的な事実として資格は必ず活用されると考えています
も増えています。以前は芝や低木を植える場合が多かったのです
ので、個々に能力をつけて備えておくことは重要だと思います。
が、最近では元々あった緑を復元しようという傾向にあります。緑化
篠田 この資格者が監督者として各現場に必ず配置されているとい
についての工法は大変重要になってきていますから技術的にも向
うことが望ましいわけですね。
上しています。
小久保 はい。その点を発注者にお願いしているところですが、現
篠田 日本の法面工事の技術力は、国際的に見てどの程度なので
在は秋田県と三重県が「のり面施工管理技術者」を入札参加資格に
しょうか。
いれて頂いています。しかし国のほうはなかなか難しいですね。と
小久保 日本が最も進んでいると思います。日本は斜面が多いこ
いうのも国の場合は発注規模が大きいので、全体の工事費からする
とに加えて地震が大変多い国なので、高い技術が要求されてきまし
と法面工事は極めて小額で、その僅かの部分を規制するというのは
た。その結果、必然的に技術力の向上に繋がったとも考えられます。
難しいといった状況です。
篠田 技術力向上のために貴協会では、どういった取り組みをされ
篠田 分離発注はどれぐらいあるのですか。
ているのですか。
小久保 発注額でいうと全工事の 2 割ぐらいです。
小久保 斜面上で工事が行われることから、法面をしっかりと安定
当協会としては資格試験の活用と、そして分離発注の 2 つを大き
させる技術と知識を普及するための技術書が必要でしたので、建設
な課題として取り組んでいるところです。
省(現、国土交通省)の協力を得て、昭和 62 年に「のり枠工の設計・施
篠田 資格者の更新講習も実施されているようですね。
工指針」を作成しました。これは専門技術者用の技術書という位置
小久保 はい。5 年毎に実施しています。内容は 5 年の間に開発
付けで、現在も業界のバイブルになっています。実は、これ以外に
も官で作成した道路土工指針等がありますが、我々のいう法面工事
に関して言えば不足している部分がありましたので、法面の専門工
事に携わる専門技術者のための技術書が必要だったのです。
また、技術者及び技能者の養成という点で、研修会や研究会、講習
会に力を入れています。
篠田 貴協会では「のり面施工管理技術者」の育成に取り組んでい
らっしゃいますね。
小久保 はい。ただ、講習会の受講は任意ですから、技術者の参加
意欲を高めるためにはインセンティブが必要だろうということにな
りました。それと同時に、官のほうから技術者の知識・技術を確認し
聞き手
全国仮設安全事業協同組合
専務理事
篠田伸夫
2
法改正で当協会と
いい協力体制構築を期待
篠田 はい。ハード・ソフトの両面で足場からの墜落防止対策が図
られることとなりました(※ 2)。ソフト面の対策としては、チェックリス
トを用いた点検を実施し、現場が終了するまで保存することが義務
付けられます。更に厚生労働省の安全衛生部長通達で、点検に使
用するチェックリストは、足場の機材毎・種類毎のものとし、点検者の
された新技術等について、そしてもう1 つは安全に関する講習です。
職氏名を記入することが指導されます。
安全については、危険な場所での作業が多いですから事故の防止
当組合は足場の専門家集団だと自負しておりますので、法面工事
対策という点でも大変重要だと考えています。
での安全確保について、ご協力できる余地があるのではないかと思
篠田 おっしゃるとおりですね。質の高い仕事をするうえで安全の
うのですが、いかがでしょうか。
知識は不可欠だと思います。
小久保 当協会では毎年全国 10 箇所で「のり面施工管理技術者講
小久保 また、今年から「ノズルマン資格試験」
(法面吹付工)という
習会」を開催しており、講師は当協会安全委員会の委員長及び委員
新たな資格試験を始めることとしています。これは作業者である職
が担当しているのですが、この度の法改正の内容を考えると、必要
人さんのための資格です。発注者に対し、
この資格の必要性につい
に応じ貴組合から講師を派遣していただく必要があるかもしれませ
てアンケートを実施したところ、
「必要」という回答が6割を超えたこ
ん。また講習会テキストの足場に関する部分を充実させる必要もあ
とから検討を進めていました。法面工事での事故を防止するため
ると思います。その際にはご協力をお願いします。「餅は餅屋」
とい
には、監督者と職人さんの技術、そして安全についての知識が必要
うこともありますし、本来であれば工事を監督する人が全ての知識
です。発注者にとって事故や不良工事は一番の問題であるわけで
を持っていることが望ましいのですが、なかなかそうはいきません
すから、発注者としても業界全体のレベルアップを常に望んでいる
ので。
のだと思います。
篠田 法面工事における足場というのは非常に専門性が高いです
篠田 当組合では足場点検の専門家である仮設安全監理者という
から、色々な面でお手伝いさせていただければと思います。
資格試験を行っておりまして、4,000 名の資格者がいます。現在、こ
貴協会の資格者の方々に仮設安全監理者の資格を取得していた
の資格者による点検の需要側と供給側とをマッチングできるよう、
だければ、現場で監督される際に、お役に立てると思いますので、そ
今年度中にインターネットを使ったシステムの立ち上げを目指して
の点についてもご検討をお願いします。また、例えば、足場につい
検討しているところです。
て勉強会のようなものを定期的に開催して、交流を持たせていただ
小久保 6月1日から厚生労働省が労働安全衛生規則の一部改正
けるようになれば幸いです。
規則を施行することになったようですね。足場の点検について、か
小久保 当協会にも足場資材を扱っている賛助会員さんがいます
なり充実した内容になると聞いています。
ので、そういった方々の意見も聞きながら検討させていただきます。
いずれにしても、今回の法改正は当協会にも反映される内容だと思
いますし、いい協力体制が構築できればと思います。
篠田 最後になりますが、( 財 )日本規格協会と当組合が共同で、斜
面・法面工事用仮設設備の JIS 原案作成のため、平成 17 年 9月から
10 回の検討会を重ね審議してまいりましたが、昨年 12月にようやく
JIS が制定(P4 〜 6 参照)されました。小久保専務理事には検討会の
委員としてご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
小久保 昨年 12 月25日の官報で公示されましたね。発注者にぜ
ひお願いしたいのは、JIS を義務化する場合には、ぜひとも指定仮設
にしていただきたいということです。建設業界における我々の位置
付けというのはあくまで下請けですから、それに係る経費を明確に
していただくことは、JIS の普及にも繋がることだと思います。
篠田 なるほど、そういうことになるわけですね。
本日はお忙しいところ有難うございました。
※ 1 のり枠工:主として、不安定なのり面へ植物を導入す
る場合に、不安定となる要素に対応させることを目
的として、のり表面へ吹付モルタルコンクリートで枠
構造を施工する工法。
※ 2 労 働安全衛生規則の改正について:当組合ホーム
ページ、参照。 http://www.kasetsuanzen.or.jp
3
Top x2
トピックス
斜面・法面工事用仮設設備(JISA8972)の解説
JISA8972 の普及促進は
喫緊の課題
国交省・農水省が普及に本腰
財団法人日本規格協会及び当組合が原
案 を 作 成した 斜 面・法 面 工 事 用 仮 設 設 備
JISA8972 が、昨年 12月25日に制定公示され
ました。この規格は、地滑り対策、砂防、治山、
ダムなどの工事において、がけ(崖)
・斜面・急
傾斜地及び法面に使用する斜面・法面工事用
仮設設備と装備機材並びにそれらの施工方
法及び使用方法について標準化し、現場作業
の安全性の向上を図るために制定したもの
です。
この JIS 規格は、経済産業大臣・国土交通大
臣・厚生労働大臣の 3 大臣共管で制定された
大変珍しいケースです。当組合の機関紙「ア
クセス新聞 VOL103」号で小野辰雄理事長と
経済産業省の後藤芳一製造産業局次長が対
談しておりますが、その席で「この度のJISは、施工標準も制定
の工種・工事における作業の安全を図るために、これらを含
されたことが大変有意義なことであり、国や自治体をはじめ、
めた “ 斜面・法面工事用仮設設備 ”としての基本的な施工標
民間においても、作業の質を確保する仕事の基準として採用
準、性能基準及び使用標準を JIS の範囲と定め、施工者及び
され普及していくのが望ましい。せっかくJIS を作ったわけで
製造業者に対して明確に示すことが必要であることから、こ
すから、普及させることが肝心です」
と強調しています。また、
の規格を制定した。
国土交通省は建設工事事故防止重点対策に、農林水産省は
土木工事共通仕様にそれぞれ同 JIS を明記し、普及に本腰を
入れています。
2. 制定の経緯
今回は、斜面・法面工事用仮設設備 JIS 規格普及の一環と
建設業における労働災害の死亡者数は、過去 5 年間にわ
して、関係各位の了承を取り、JISA8972 規格票の解説文の抜
たって、約30 %も減少しているにもかかわらず、本件の斜面・
粋を掲載することと致しました。
法面工事における労働災害の死傷者数は、今なお一定高水
準で推移している現状にあるため、これらの労働災害を撲滅
1. 制定の趣旨
するためには本主題の対策が喫緊の課題となっている。
斜面・法面工事においては、作業者の墜落・転落、滑落及び
我が国の建設業における労働災害の死亡者数は全産業の
物の飛来・落下を防止するために、装備機材を備えた本件の
約 1/3 を占めており、そのうち墜落・転落によるものが約 4 割
設備の設置と組立後の設備の倒壊などを防止するための安
と最も多く、毎年そのうち 30 名前後ががけ(崖)、斜面、法面
全性の確保の両面において、二つの事項を実施することが重
工事などに起因するものである。
要である。
労働災害を撲滅、又は、減少させるためには、がけ、斜面、
一つめは、安全帯の取付け設備のための親綱の設置、斜面
法面、地滑り防止、砂防・砂防山腹、砂防・砂防ダム、ダムなど
などに墜落防護さくを施し、更に斜面に対して容易に対応で
4
経済産業大臣及び国土交通大臣に対して JSA 及び ACCESS
の共同で申出を行った。
その後、平成 20 年 8月26日、日本工業標準調査会標準部
会第21回土木技術専門委員会(以下、“土木技術専門委員会”
という。)において審議が行われ、意見、指摘事項等があった。
これらについて再検討行い、各委員に対して書面による審
議を実施したところ承認が得られたため、所要の事務手続き
を経て、平成 20 年 12月25日付で厚生労働大臣、経済産業大
臣及び国土交通大臣の共管によって、制定公示された。
3. 適用範囲
がけ、斜面、法面、地滑り、砂防 ・ 急傾斜地、治山、ダムなど
の工種・工事における作業の安全を確保するために規格を
制定した “ 斜面・法面工事用仮設設備 ”とする。
きる昇降設備の設置、また、作業者を安全に目的のところへ
注記 H 形鋼くいなどを地中に打ち込んで、その支持力で
移動できるようにするための歩廊設備の設置、工事用機械類
上部の構台などの構造体を支持する作業構台のような仮設
を搭載する機械構台設備の設置及び作業床の周囲に施され
構造物は、労働安全衛生規則 第 575 条の 2 から第 575 条の 8
る手すりなどの装備機材の設置を本件に図ることによって、
に規定されているので、
この適用範囲から除外した。
作業者の墜落・転落、滑落、物の飛来・落下を防止する。
二つめは、“山の斜面の地盤は決して盤石とはいえない ”を
基本的な概念とし、軟弱な地盤の上に設置する場合に起こ
4. 規定要素の規定項目の内容
り得る不同沈下などによる倒壊を防止するためには、前もっ
4.1 性能
て、組み上がったときの構造全体の安全性について強度検討
品質としては、部材の加工・施工に必要とされる寸法、構造
を行って確認し、それに基づいて作成された施工図に従って
及び強度を定めた。強度の基準は、使用荷重に対する2 倍
組み立てることが大切であることから、“ 機械構台設備 ” につ
以上の安全率があれば良しとし、特に、材質について定めな
いては、設計図書を作成して安全を図ることを定めた。
いこととした。ただし、材料の中からダイカストは除外し、鋼・
以上の二つの事項から、1(制定の趣旨)で記しているよう
鋳鋼・鋳鉄(ただし、ねずみ鋳鉄は除く。)
・鍛鋼及びアルミニ
に、がけ、斜面、法面、地滑り、砂防、急傾斜地、治山、ダムなど
ウム合金を対象に強度の値を定めた。また、床材に木材を
の工種・工事における作業の安全を図るために、これらを含
使用する場合の強度の基準は、使用荷重に対する4 倍以上の
めた “ 斜面・法面工事用仮設設備 ”としての基本
的な施工標準、性能及び使用標準を JIS の範囲
と定め、施工者及び製造業者に対して明確に示
すことが必要であることからこの規格を制定す
ることとした。
そこで、平成 17 年度に財団法人日本規格協
会(以下、“JSA”という。)と全国仮設安全事業協
同組合(以下、“ACCESS”という。)は、共同して斜
面・法面工事用仮設設備の原案作成に着手し
た。
平成 17 年 9月から平成 18 年 4月24日までに
10 回(本委員会 3 回、作業会 5 回、分科会 2 回)の
検討会を開催し、慎重な審議を経て成案を得た
のち、JSA において、様式面等の検討が行われ ,
平成 19 年 5月、主務大臣である厚生労働大臣、
5
国土交通省厚木出張所で開催された法面研修会
安全率があれば良しとした。静的試験を行う場合の試験速
しなければならない。この規格に含まれる設備は、構造、用
度については、機械の能力などによって数値は決めないこと
途などが異なり、安全の確保にあたってはチェックリストの点
とする。本性能試験の文中に記した “ 徐々に ” は、一般的な
検項目の作成において、それらの設備について強度などの特
仮設機材の性能試験を行う場合の加圧速度、例えば 0.1 kN/
性を反映したものであること、及び点検者については本設備
sec. ~ 0.3 kN/sec. の意で表現した。また、静的試験は 1 種類
に十分な知識をもつものとした。
の試験に対して5 回行い、最大及び最小の値を除いた残り三
つの測定値を合計し、それを 3で除した値を平均値とした。
5. 経年仮設機材の管理について
4.2 附属書 A(規定)斜面・法面工事用仮設設備施工標準
労働安全衛生法施行令第 13 条第 22 号から第 22 号の 3ま
2. 制定の経緯の中で述べているように、斜面・法面工事用
でに掲げる経年仮設機材については、平 8.4.4 基発第 223 号
仮設設備を設置する環境は決して良いとはいえない。設置
の 2 の “ 経年仮設機材の管理について” に定められた基準に
する地盤の状態、組立てを行うときの足元の不安定さ、また、
従うものとする
組み上がった仮設物に対する構造全体の安全性の評価をい
つ、どのように行うのかなどがある。ここに定める施工標準
は、これらの直面する幾つかの問題を注視しつつ、設置、施
工、設計の 3 要素で構成した。よって相互の転倒に対する危
険にさらされる。例えば、機械構台設備に搭載する機械類は
相当の質量があり、作業時には更に衝撃荷重、水平力、振動
などが仮設物に作用する。このため、滑動・転倒の防止措置
の施工の方法などについて、この規格を定めた。また、機械
構台設備に対しては、施工の方法などに加え構造全体の安全
性を確保するために、施工図に従って組み立てなければなら
ないこととした。
点検 点検は、労働安全衛生規則 第 567 条の規則を遵守
アンカーボルトの打ち込み作業
今、企 業・経営者に求められるもの
幸田昭一 東京都住宅供給公社理事長
全国仮設安全事業協同組合は、昨年開催した「全国仮設
安全大会 in 東京」の席上で、幸田昭一東京都住宅供給公社
理事長が「今、企業・経営者に求められるもの」をテーマに特
別講演をした内容を冊子にまとめました。
講演では、同公社が足場に起因する事故が起こり、当組合
の仮設安全監理者による足場の安全点検を行ったところ事
故ゼロになったエピソードを紹介しています。
同公社の工事を行っている請負業者も安全意識が大幅に
改善され、
「足場の安全に対する認識が深まった」
と語ってい
ます。
最近の偽装問題にもメスを入れ、何らかの信用失墜行為
があった場合、企業・組織は規模の大きい・小さいに関係な
く一朝にして潰れる時代になったことの現状に触れ、企業に
手よし 世間よし」の「三方よし」に学べと話し、地域貢献が求
とって重要なことは、
「コンプライアンス」と強調しています。
められる時代と語っています。A6 版で送料込み無料配布。
しかしこのコンプライアンスは、社長だけではなく従業員も
幸田理事長は、東京都出納長を経て、平成 19 年 4月から同公
一体となって考えるべきと述べています。
社理事長に就任。講演冊子の問い合わせは同組合 (TEL03・
さらに、今こそ「近江商人」の理念である「買い手よし 売り
3639・0641) に。
6
ナカダ産業株式会社
M i n o k a w a , K azumichi
蓑川和道氏
省エネ大賞を受賞
クロ ー ズ アップ
中小企業庁長官賞
組合員のナカダ産業が初の栄誉
組合員のナカダ産業株式会社
(本社・静岡県島田市、蓑川和道社長)は
2月10日、東京ビックサイトで開催された経済産業省主催の平成20年度の
「省エネ大賞」表彰式において、
「中小企業庁長官賞」
を受賞しました。
プロフィール
〈みのかわ・かずみち〉昭和22年5
月生まれ。専修大学法学部卒。昭
和48年ナカダ産業に入社。昭和
49年同社取締役。昭和60年代表
取締役就任。趣味はゴルフ。
「中小企業庁長官賞」は、中小企業の省エネルギーに関連する
基盤技術を表彰するもので、今年度創設され、同社が第一号の栄誉に。
蓑川社長は、
「これまで不況の中にあっても環境を軸として
技術開発した成果が認められて嬉しい。社内でも大きな励みになる」
と語り、
この件はNHKのニュースをはじめ、多くの専門紙にも報道されました。
ー組合は、足場機材の関連ニュースが多いのですが、
このよ
に設置することで、屋根温度を 60 度から40 度と最大 20 度下
うに養生ネット関連で名誉ある省エネ大賞を得たことで、他
げることが可能になり、室内の温度上昇を防ぎ、年間を通じ
の組合員にとっても大きな励みになると思います。
て空調エネルギーを 2 割程度削減可能です。販売は伊藤忠
蓑川 別件で組合の担当理事のところに相談に伺った折、理
商事、糸の供給は東レが行い、すでに一部ファミリーマートで
事から省エネ大賞の応募資料を頂きました。その後当社の
試験採用されております。
開発課が打ち合わせをして、書類の提出方法、ノウハウ等ま
2007 年夏に、ネットの防塵製品として開発したものを屋根
でもアドバイスを受けました。組合から省エネ大賞のお話
に敷設すれば、部屋は涼しくなるかもしれないという一社員
を聞かなければ挑戦してみようという考えはなかったと思い
のアイディアからスタートしたものです。暑さしのぎが得意
ます。そういう意味で、今回の受賞は、組合からの支援が大
な日本がよく用いていたのは、
「よしず」
と
「すだれ」
ですが、そ
変に大きく、組合に入会しなければ、受賞することはできな
の原理を応用して、屋内への熱伝導を最大限に抑制すること
かったと思います。そこで私が申し上げたいことは、他の組
が可能になりました。塵や埃の目詰まりも防ぎ、施工後は基
合員さんも組合の智恵を借りれば、画期的な販売促進や企
本的にメンテナンスが必要ありません。
業経営の向上に役立つことも有るということです。組合の活
用を是非皆さんも考えて頂ければと思います。
ー受賞されての感想を
ー経済産業省の審査もかなり厳しかったと聞いていますが
蓑川 2008 年春に組合の担当理事からこの話があり、担当
理事に薦められて応募することに決めました。応募総数は
蓑川 以前からも環境展示会等に出展はしていましたが、今
当社も含めて120社、
うち中小企業は22社と聞いております。
回、
「省エネ大賞」の「中小企業庁長官賞」を受賞したことで知
第一次審査は書類審査でした。二次審査はプレゼンテーショ
名度が一気にあがりました。ゼネコン・鉄道関係・ガス関連
ンとヒアリングでそれを無事通過し、三次審査では 11 月20
会社からも引き合いが来て、最近の大型物件では、大手家電
日に商品を張った現場を審査員の皆様方に見ていただきま
メーカーの山梨工場に引き合いが決まり、大型物件受注の魁
した。中小企業らしい柔軟な発想と経済性、そして大きな省
としたいところです。今は、営業部と開発課が一体となって
エネ効果が得られた点が評価されたと聞いております。今
販売促進につとめておりますが、今年春から、伊藤忠商事が
回、受賞を契機として、中小企業庁次長に親しく報告する機
本格的に広報 PR を行うことになっています。
会が得られたことも大きな喜びです。また、窓口である省エ
ー受賞された商品については
ネセンターの担当部長に衷心より感謝する次第です。今後
蓑川 建物屋根の遮光網「クールルーフネット」です。ポリ
とも省エネを中心とした環境製品の開発に努めてまいりたい
エステル難燃糸を使用した網の目が細かいネットを屋根上
と思いますのでよろしくお願いします。
7
安全
話
安全
話
業界 45 年を振り返る
(中編)
赤峰 民生 当組合企画広報部長
プロフィール
〈あかみね たみお〉昭和 39 年 4月日刊建設通信
新聞入社。4 年間「建設安全」担当。日刊建設
産業新聞企画局。建築技術編集主幹を歴任。
現在に至る。
これまで、行政、設計、建築、土木、設備、材料、施工とあらゆ
力説していた。また、同氏は仕事以外での安全も重視してい
る分野において、大変多くの方にご指導いただいた。その中
た方で、現場で働いている時に命を大切にしていても、自宅
で特に私の仕事に多大な影響を及ぼした方を何人かご紹介
で怪我をしたのでは元も子もないと説いた。この当時、
(昭
したい。
和40年代前半)バリアフリーという考え方が無かった時代に、
1 安全については、竹中工務店の初代安全課長であった
家の中の段差を無くすことや、床にワックスを塗り過ぎると滑
伊地知喜一氏である。同氏との出会いは、私が日刊建設通
るから注意せよ。――と現場の安全講話の中で話していた。
信新聞の「建設の安全」を担当した時(昭和 42 年)であった。
2 設計の分野では、吉田五十八氏、前川国男氏ら、数多く
同氏は新潟の監督署から竹中工務店に入社され、業界で初
の巨匠と巡り合ったが、中でも最も深い付き合いをしていた
の安全課長に就任した方である。その後、多くの実績が認め
だいたのが明石新道氏である。同氏は早大理工学部教授を
られ安全指導役として現場の安全に尽力された。同氏の安
経て、明石建築設計事務所を開設。稲門建築会(早大のアー
全指導の礎は、常にその現場で働く人に焦点を当てているこ
キテクトで構成する会)のボスであった。同氏との出会いは、
とである。時には安全規則に沿ったものでなくても、働く人
私が建築総合資料社に席を置き、
「月刊建設資料」の企画を
の命を守ることであれば良しとした方であった。規則は人の
担当していた頃(昭和 59 年から平成3年)だった。同氏は常
命を守るためにあるのであって、行政や規則のためにあるの
に施主と同じ気持ちになって、仕事をすることが大切だと強
ではない。――というのが口癖だった。また、同氏は保安帽
調していた。ともすれば、施主にアーキテクトの考えを無理
の改良にも尽力した。強度を測定するため、
自宅の庭木に吊
に押し付けるようなことが多い時代でもあった。今でさえ著
るした保安帽をバットで叩いて変形状態をテストしたり、働く
名なアーキテクトの場合、気を遣って施主ですらモノも言え
人の負担を軽減できるようメーカーに協力して、より軽く強度
ないというケースがある。同氏は常に謙虚さが大切だ。施
のある保安帽の開発に取り組まれた。同氏には、数多くの現
主あってのアーキテクトだ。――と口癖のように言っていた。
場で同行したが、足場へ上りそこで働く作業員に気軽に話し
(次号に続く)
かけ、
「君の命は 1 つしかない。だから大切にしてほしい。」
と
8
厚生労働省労働基準局安全衛生部長
Ozawa, Hideo
全国仮設安全事業協同組合理事長
Ono, Tatsuo
尾澤 英夫氏
小野 辰雄
手すり先行工法に関
行政が定めたもので
小野 これまでも厚生労働省は建設労働災害防止に当たっ
てこられましたが、今回さらに足場に係わる規則を改正され、
6月に施行されます。今回の規則改正や部長通達に、われわ
れは大きな期待を寄せています。これらを守ってもらうには、
最初の半年の周知徹底が肝心ですね。
尾澤 その通りです。規則を守ってもらうには、制度や仕
組みがどのように変わったかをしっかりと知ってもらわなけ
ればいけません。そのために、47 都道府県にある労働局と
三百数十ある労働基準監督署に通知するとともに、分かりや
すい資料をつくり、施行までの周知期間に、監督署において
管内の元方事業者や現場関係者などを対象に集団指導を実
施し、周知します。また、現場において個別指導も行います。
このための予算をすでに措置しています。
小野辰雄
小野 建設現場で監督署の一斉指導がよくありますが、労働
小野 今回の厚生労働省の規則改正などは大変な英断と思
安全衛生法違反が 50 %以上あり、そのうち半分以上が足場
います。
関係で、既にある法令さえ守られていないのが現状です。法
尾澤 学識経験者や関係者の方々とともに、理事長にも委員
治国家なのに、モラルが低いといえます。建設業界の関係者
として参加していただいた「足場からの墜落防止措置に関す
にしっかりと守ってもらうため、規則改正や部長通達、そして
る調査研究会」
(以下、
「足場研究会」
という。)が 1 年以上の時
改正版ガイドラインなどの内容の周知徹底を是非お願いし
間をかけ、昨年秋に報告書をまとめました。これを受けて規
ます。
則が改正されます。1月22日に、労働政策審議会安全衛生
尾澤 建設業は、労働災害による死亡災害の発生が一番多
分科会に改正案要綱を諮問し、この案を妥当とする答申をい
い業種であるため、2008 年度を初年度とする5 か年間の計
ただきました。
画である第 11 次労働災害防止計画で、災害防止対策の重点
今回の足場の墜落防止対策は柱が3つあります。1つめは、
業種にしています。具体的な対策は 4 つ。1 つめは、重層下
規則改正によって事業者が守らなければいけない法令遵守
請けの構造の中で、元方事業者が統括的な安全管理をしっか
の徹底、2 つめは、足場研究会からの提言にもあった足場等
り行うことです。2 つめは、専門工事業者はそれぞれの作業
に関するより安全な措置の普及、3 つめは、改正される「手す
に応じた安全管理をすることです。3 つめは、発注者につい
り先行工法に関するガイドライン」の普及です。
てで、安全確保に十分配慮してもらうことです。4 つめは、墜
小野 それぞれの柱の中身はどのようになっているのでしょ
落・転落の災害がもっとも多いため、この対策をしっかりやっ
うか。
ていくことです。この 4 つの対策のうち、墜落・転落防止が今
尾澤 その前に、労働災害の発生状況を説明します。07 年
回の規制改正につながっているわけです。
の全産業の死亡者数は 1357 人で前年よりも115 人減少しま
厚生労働省は、足場に係る労働安全衛生規則(以下、
「規則」
という。)の一部改正を行い、
6月から施行することとしています。これに伴い、安全衛生部長名による通達(以下「部長通達」
という。)
を発出するほか、
「手すり先行工法に関するガイドライン」
(以下「ガイドライン」
という。)
を改正し、
足場からの墜落防止を目指します。尾澤英夫・厚生労働省労働基準局安全衛生部長は、
「6月1日の施行までに、規則改正や関係通達等の周知徹底を図っていく」
と語っています。
今回は、小野理事長が尾澤部長を訪問し、今回の規則改正の中身や狙いについて語り合いました。
9
※この記事は「アクセス新聞」2009 年 2月号から転載したものです
するガイドラインは、
遵守すべきものとして指導
より
6月1日より施行
たことによる死亡者数が 25 人、くさび緊結式足場などを含む
単管足場の手すりの下のすき間から墜落したことによる死亡
者数が 18 人です。墜落防止措置が講じられていたにもかか
わらず、災害に被災した方がいるのも事実です。
このように死亡災害が起きているわけですから、もう一度、
対策を見直し、充実させ、交さ筋かいの下部や手すりの下の
すき間から墜落することがないように足場研究会で検討しま
した。
墜落防止措置として、わく組足場の交さ筋かいに加えて、
高さ15 センチメートル以上 40 センチメートル以下に下さん
又は高さ15 センチメートル以上の幅木の設置、これらと同等
尾澤英夫氏
以上の機能を持つ設備の設置、あるいは手すりわくの設置を
義務付けます。単管足場等では、従来高さ75 センチメート
した。戦後では一番少なくなっており、関係者の皆さま方の
ル以上の手すり等を設ければよかったのですが、高さ85セン
ご努力の賜物です。もっとも多かった 1961 年は 6,500 人を
チメートル以上の手すり等を設け、高さ35 センチメートル以
超えていましたから、約5分の1に減っています。07 年の建
上 50 センチメートル以下に中さんの設置、これと同等以上の
設業は 461 人で、61 年と比べると約6分の1になり、さらに
設備の設置を義務付けます。
大幅に減っています。10 年前と比べても、全産業は 35 %減、
また、物体の落下防止措置として、高さ10 センチメートル
建設業はこれを上回る46 %減となっています。この間、公共
以上の幅木、防網または、メッシュシートの設置等を義務付
事業の減少で建設業の従業者数は 19 %減少していますが、
けます。
建設業の従業者数の減少以上に死亡災害は減っています。
点検については、作業開始する前に、手すり等のとりはず
これは、建設業労働災害防止協会等関係団体、関係者皆さま
し及び脱落の有無を点検し、異常を認めたときは、直ちに補
方の永年に渡るご努力の成果です。
修することを義務付けます。また、足場の組立て・変更時・悪
ところで、事故の型別でみると、建設業の死亡災害のうち墜
天候等の後に点検することを引き続き義務付けるとともに、
落は、07 年に 45 %を占め、その発生原因として墜落はもっと
この場合、きちんと点検がされていることを確保するため、当
も多いものとなっています。02 - 06 年の 5 年間で足場から
該足場を用いる仕事が終了するまでの間、点検結果の記録と
の墜落による死亡災害は、217 人となっています。このうち、
保存も義務付けます。上記足場以外でも、架設通路や作業
手すり等を設置せず安全帯を付けていなかったことなどによ
構台、つり足場などにも同様の措置を講じます。
る死亡者数が 134 人でもっとも多く、手すり等は設置されて
小野 改正された規則の施行スケジュールはどのようになっ
いたにもかかわらず墜落した死亡者数は 68 人でした。この
ていますか。
68 人を詳しくみると、交さ筋かいの下部のすき間から墜落し
尾澤 規則は公布されると、通常、周知のために 3 か月間程
足場の墜落防止対策 3 つの柱
墜落防止対策
ガイドライン
安全措置普及
法令遵守徹底
その1 規則改正によって事業者が守らなけれ
ばいけない法令遵守の徹底
その2 足場研究会からの提言にもあった足場
等に関するより安全な措置の普及
その3 改正される「手すり先行工法に関する
ガイドライン」の普及
10
足 場 か ら の 死 亡 事 故 が ゼ ロ に なる
ことも 夢 で は な いと確 信
より
度が必要です。2月か 3月に公布して周知し、6月1日から全
者として該当する旨の説明がありました。
面施行することとしています。
尾澤 3 つめは、改正される
「手すり先行工法に関するガイド
ACCESS
ACCESS
ACCESS
小野 2つめの柱である規則以外の足場等に関するより安全
ライン」の普及です。国の公共工事では、土木工事共通仕様
な措置について説明をお願いします。
書にその採用が明記されているので積極的に採用されてい
尾澤 規則にはしないが墜落・転落を防止するため、足場研
ます。民間工事でも普及定着が必要なので、今年度中に改
究会の提言を受けて「より安全な措置」として講じるべき事項
正いたします。
について、部長通達を発出します。わく組足場では、先ほど
以上が足場についての墜落防止対策の内容と、施行に向
の規則に加えて安全性を高めるため上の方にも「上さん」を
けてのスケジュールです。これによって労働災害の撲滅に大
設置すること、単管足場等では、先ほどの規則に加えて幅木
きく寄与することを期待しています。
を設置すること、また、脚柱間のすき間をつくらないように、
小野 建設業界では、ガイドラインは「決まり」ではない、だ
作業床を設置することを指導いたします。
から守らなくてもいいという認識があります。
ACCESS
ACCESS
点検についてですが、作業開始前の点検については、職長
ACCESS
尾澤 ガイドラインは、災害防止のための有効な対策とし
等当該足場を使用する労働者の責任者から指名するよう指
て、行政が定め、その実施を促しているものです。ガイドライ
導いたします。
ンだから弱いというものではなく、行政がガイドラインとして
足場の組立て・変更時・悪天候等の後の点検については、
示したものは、当然、遵守していただきたいものとして考えて
チェックリストの例を示すとともに、事業者がそれを参考に使
います。ガイドラインでは、技術的方法を示しています。行
用する足場の種類・機材に応じたチェックリストを作成して
政としては、ガイドラインは、安全水準の向上のために遵守
点検を行うよう指導いたします。
するべきであると現場で指導しています。
点検の実施者については、原則として、足場の組立て等作
小野 よく理解できました。部長通達やこの度改正される
業主任者、元方安全衛生管理者等であって、足場の点検につ
「手すり先行工法に関するガイドライン」は、指導の範疇で
いて、 労働安全衛生法第 19 条の 2 に基づく足場の組立て等
あることが分かりました。通達と同等以上のことをやれば、そ
作業主任者能力向上教育を受講している等十分な知識、経
れで合格ということですね。今回の対策がきちんと守られれ
験を有する者を指名することを指導いたします。
ば、故意でなければ足場から落ちようがありません。足場か
小野 アクセスの足場点検に係る教育では、足場の組立て等
らの死亡事故がゼロになることも夢ではないと確信していま
作業主任者のみならず、建築士、施工管理技士や技術士等を
す。われわれもこれまで以上に情熱をもって安全活動に取り
含めて対象としています。足場研究会の中でも、厚生労働省
組んでいきます。
ACCESS
ACCESS
ACCESS
ACCESS
からアクセスの仮設安全監理者も十分な知識・経験を有する
墜落防止対策
1 規 則 改 正によって
事 業 者 が 守らなけ
ればいけない法令
遵守の徹底
わく組足場…交さ筋かいに加えて、高さ15cm 以上 40cm 以下に下さん又は高さ15cm 以上の
●
幅木の設置あるいは手すりわくの設置を義務付け
単管足場等…高さ85cm 以上の手すり等を設け、高さ35cm 以上 50cm 以下に中さんの設置
●
物体の落下防止措置として、高さ10cm 以上の幅木、防網または、
メッシュシートの設置等を義務付け
●
点検…作業開始する前に、手すり等のとりはずし及び脱落の有無(異常を認めたときは、直ちに補修)
。
●
足場の組立て・変更時・悪天候等の後に点検。当該足場を用いる仕事が終了するまでの間、点検結果
の記録と保存も義務付け
2 より安全な措置の
普及
足場研究会の提言を受けて
「より安全な措置」
として講じるべき事項について、部長通達を発出
●
●
わ
く組足場…安全性を高めるため上の方にも
「上さん」
を設置する
単管足場等…幅木を設置する、
また脚柱間のすき間をつくらないように、作業床を設置する
●
点検の実施者については十分な知識、経験を有する者を指名
●
3 改 正される「手すり
先行工法に関するガ
イドライン」
の普及
11
国の公共工事では、土木工事共通仕様書にその採用が明記されている
●
民間工事でも普及定着が必要なので改正した。
●
ACCESS
ACCESS
われら仮設安全 監理者
近畿支部の支部長会社をつとめる株式会社十全。
近畿の足場業界を束ねる役割を果たして頂いているのが藤井正光支部長で、
吉田栄一専務は、同支部長の右腕の存在です。
業務がご多用の中にあっても
「安全点検」は重要な業務の一つと言い切る
吉田専務に近畿の動向や現状を聞きました。
足場機材の老朽化に大きな危機感
吉田 栄一氏
プロフィール
〈よしだ えいいち〉京都市生まれ
40 歳。平成 6 年十全入社。娘の
ピアノ発表会に連弾で出場する
ため目下練習中。
株式会社十全 専務取締役
ー今回は近畿支部の組合員としてはじめて
「我ら仮設安全監理
は、安全衛生法を 50% 以上遵守していないという記事が建設専
者」のコーナーにご登場して頂くことになりましたが、まずは近
門紙で散見されますが、我々としてもこの状態を今後どうしてい
畿を取り巻く状況からお話を伺えればと思います。
くか、大きな課題といえるでしょう。
吉田 公共工事からお話をいたしますと、年々件数は減少して
ー貴社としては安全点検の取り組みはいかがですか
おり、今期の私の安全点検は現在 15 件ですが、公共工事での点
吉田 私は 2005 年 8月3日に仮設安全監理者の資格取得をし
検は2件のみです。大型工事も減少傾向です。国の工事以外
ておりますが、私が特別なのではなく、全社レベルで取得し、点
では大阪市は二段手すりと幅木 ( つま先板 ) が導入されています
検を励行しております。つまり、企業の戦略的な仕組みとして点
が、大阪府は手すり先行工法のみの採用にとどまっています。こ
検を組み込んでおります。たとえば、ある物件の中で、部分的に
のほかでは、当方が本社を置く茨木市では学校の耐震補強工事
十全の機材を納めることがありますが、当社としては納入した足
の需要が多い。しかし、いずれにしても新築物件が少なくなって
場以外の足場も点検いたします。それが安全点検文化を確立す
います。
ることにつながり、事故を激減させることになることはいうまで
また、民間では、最近まではマンション新築の需要が多かった
もありませんが、営業戦略上大きな利点につながるのです。「十
のですが、マンションが供給過多になり、今は大幅に減少してい
全さんに頼めば安心」
という意識が高まれば、それだけ我々の出
ます。シャープの堺工場のような大型物件も見受けられますが、
番も増えますからね。
全体的には新築は激減といえるかもしれません。一方で、マン
そのため、我々としては組合が今年度の最重要課題としてあ
ションや大型店舗等のリフォーム関係が底堅いのも一つの傾向
げている「安全装備機材」及び「安全点検」の法制化について非
です。今、近畿管内で、建設需要動向を天気に例えれば、曇りか
常に注視してその動向を睨んでいます。その点について組合の
らすでに雨が降り出している状況で、決して芳しいとはいえませ
活動に大いに期待しているところです。
ん。これに輪をかけて、デベロッパーや元請の倒産が足場業界
ー「安全点検」を営業上のメリットに上げておられる点について
にも大きな不安材料として影を落としているので、全く楽観視で
大いに感銘を受けました。このほかにも特に危惧している課
きない状況です。このような中、我々としては、組合を中心とし
題はありますか
て、近畿支部管内での組合員等と活発に意見交換をはかり、情
吉田 機材の老朽化です。今、仮設のリース代金は非常に安い。
報収集に努めています。
しかし、安いままでは困る。新たな機材の購入ができないから
ー近畿での問題点というのはどのようなところがありますか
です。このあたり我々はもっと危機感をもたなければならない
吉田 リフォームの現場では、点検ができない場合もあります。
と痛感しているところです。最近、足場が崩壊したニュースを
というのも、あまりにも足場に関する不備が多く、安全面で話に
時々聞きますが、これはひょっとしたら機材の老朽化も原因の一
ならないのです。「二段手すり」や「幅木」の話をする以前の問題
つなのかもしれません。我々リース会社が新しい機材を購入し、
であり、安全衛生法自体守られていないのではないかと疑ってし
安心して現場に搬入するためにも、リース代金の適正化は必須
まう。本気で改善依頼をしようとすれば、指摘事項が多すぎて結
です。このあたり組合に声を大にして発言してもらうことが我々
果的に現場の所長さんの不興を買ってしまうから点検できない
の希望です。
のです。厚生労働省の職員による現場立ち入り調査した結果で
12
専門工事業者 の あ り か た
専門工事業者 に
聞く
プロフィール
〈いちはら・しんいち〉高校卒業後、同
社に入社。先代の父に厳しく鍛えら
れ、千葉の足場工事業者の確固たる
地位を築く。今や千葉県内だけでな
く、東京や神奈川をはじめ関東一円
に進出。千葉県の優秀技能者とし
て平成 15 年と18 年に表彰され、そ
の技能は県からのお墨付き。趣味
は、水泳・ダイビングなどのマリンス
ポーツ、ゴルフ、スキーなどスポーツ
全般が得意。
有限会社市原建興代表取締役
Ichihara, Shinichi
市原親一 氏
同社の現場
安 全 軽 視 は 全 員 に 迷 惑
ーこの会社を興された足跡からお聞きいたします
た。水泳部に 3 年間所属し、国体にも出場しましたので、東
市原 当社は、先代が昭和 50 年 2月に興し、初期は基礎と一
海大学への推薦入学が可能でした。実は、私は当時、水泳で
緒に丸太足場を組んでいましたが、基礎だけでは当時、企業
身を立てる夢を胸に秘めておりましたが、その頃の水泳の世
間競争に勝つことが難しく、足場業を本格的に行い業容の拡
界は現在ほどポピュラーではありませんでしたので、水泳で
大を図りました。最初は、主として2 × 4 の住宅でブラケット
はメシは食ってゆけず、大学に進学せずに現在の仕事に就
足場を手掛けていましたが、その後、枠組み足場や吊足場な
いたのが正解だったと思っています。私をこの業界に導いて
ど、各種足場にも参入しました。
くれた先代の言葉通り、水泳は趣味のままで良かったと痛感
私がこの仕事に従事したのは 18 歳ですから、早くも24 年
しています。その偉大な先代は3年前に他界しましたが、今
の年月が過ぎました。当時は大学進学も考えましたが、親父
でも心より尊敬しており、先代の名を汚さぬよう日々励んでい
(先代)から「早く家業を手伝え」と言われ、熟慮の末に今の
ます。
仕事に就きました。当時は高度成長期の最中で、非常に多
現在も水泳やダイビングなどマリンスポーツを始め、ゴル
忙で文字通り「猫の手も借りたい」位に人手が足りない状況
フやスキーもやりますし、スポーツは全般的に得意で、心身
でした。そこで先代は私を早く一人前にしたいのと、人手不
のリフレッシュに役だっています。
足解消の両面から、私を一刻も早く仕事に就けたのだと考え
ています。
ー先代の奨めでこの足場業界に入られた訳ですが、どんな
高校は静岡東海大附属第一高等学校に在籍していまし
業界だとお感じになりましたか
13
市原 この業界は、自分のガンバリが如実に業績に反映し
係の構築こそが重要であると考えています。
ます。その反面、少しでも気を緩めると、直ぐにでも他の同
今、少々心配なのが公共事業の減少です。現在の受注比
業者に抜かれてしまいます。従って慢心することなく自己研
率はおおよそ民間 7 割、公共 3 割です。昨今の世界同時不況
鑚に励み、技術の体得や安全の更なる確保に努めています。
の影響で民間工事は縮小傾向にありますので、今以上に公
この心地良い緊張感が、本業界の魅力ではないかと思ってい
共事業の割合を増やしてゆきたいのですが、このまま公共事
ます。
業が減少すると厳しいことは確かです。ただし、今後は公共
一方、営業販路の拡大は企業発展の重要なファクターで、前
の耐震工事の増加が見込まれますので、この分野にも力を
回の組合報にあった北一さんの社長も御苦労されたように、
傾注したいと考えています。
私もトップ営業にも力を傾注しています。地道に知り合いを
増やし、仕事やオフタイムの付き合いを通してコツコツと信
ー 6月1日から、厚生労働省の安全衛生規則の一部が改正
頼を積み重ねることにより、拡販につながると考えておりま
され、従来の点検に加え、点検した内容を工事完了時まで
す。現在はこれを具現化すべく、中小企業関連の組合やアク
記録保存することが義務となります。組合員にとって大きな
セスに入会し、新たなる人脈の拡大に励んでいます。アクセ
追い風になりますが、このあたりについていかがおもわれま
スのような同業者の皆さんは勿論のこと、中小企業の他業種
すか
の方々の話を伺うと非常に参考になりますし、企業経営のヒ
市原 今、力を入れているのは資材の整備点検です。足場
ントをも得ることができます。経営の方針というのは、同業
にはケレンをかけ、ペンキを塗ったりして目で見る管理の強
者でも異業者でも、その根底にあるものは変わらないと思っ
化を進めています。これと共に力を入れなくてはならないの
ています。また、アクセスから送られてくる資料を丹念に読
は、足場の安全点検です。当社には残念ながら仮設安全監
んでみると、新しいビジネスや新規販路の開拓にも活かせま
理者の資格者がいませんので、これから取得する予定です。
すから、
アクセスに入会して良かったと感じています。
貴組合主催の講習会が 6月に開催されますので、当社の社員
現在の商圏は千葉県内が中心ですが、お客様の依頼があ
も何名か受講させ、足場の安全点検を行う体制を整備強化し
れば関東一円をはじめ、日本全国どこへでも行きます。千葉
ます。
元請が足場の安全点検を行うのは、各社とも多忙なため難
しいと考えます。それを補う形で仮設安全監理者の役割が
仮 設 安 全 監 理 者 資 格 取 得で
点検体制整備へ
重要になり、活躍する機会が増加すると思っています。実際
に、アクセスからの資料を読むと、厚生労働省が発表した規
則改正におけるパブリックコメントの中に、
「日常の業務でこ
れを行うのは非常に大変」とありました。そこを仮設安全監
県内では千葉ニュータウン関係の工事が多く、ここは首都圏
理者が的確に行うことで、発注者や元請から更に大きな信頼
各所から同業者の参入が多数あり、ビジネスの激戦区になっ
を獲得できるのは間違いないと考えます。
ています。そこで重要なのが発注者と元請けの方々との信
頼関係です。今までに培ったノウハウに基づき、
「品質」
「納
ー社長の安全観についてはいかがでしょうか
期」
と
「安全」を武器に受注を獲得しています。
市原 私は常に社員に対して健康管理と安全に対して細心
勿論「金額」は受注を決定する重要なファクターのひとつ
の注意を心がけるよう、指導しています。就中、
「安全」をな
ですが、それだけで決まらないのがこの業界の醍醐味だと思
いがしろにすれば、自分は言うに及ばず、家族にも会社にも、
います。当社の実績とお客様との信頼関係が強固であれば
また、取引先にも迷惑をかけます。「労災は自分ひとりだけ
ある程、
「市原さんに決めたよ。頑張れ」と言われます。これ
の問題ではない」という自覚をしっかり持つことが大切だと
が原動力となりもっと頑張ってお客様に良い結果を提供しな
考えます。「ケガと弁当は自分持ち」という古き習慣が建設
ければ、という気持ちが醸成され、その結果、更に良いサイク
業界にはありますが、一刻も早く改善すべきと感じています。
ルが生じ他の現場の仕事の紹介を受け、新たな受注に結び
そのため、アクセスが提唱している「建設職人社会ルネッサ
付くようになります。
ンス」や「安全文化の創造」は、これからの明るい建設産業に
名刺を配って当社をアピールすることも大事ですが、それ
不可欠であるということに全く同感です。今後ともアクセス
だけで受注できるほど甘い世界ではありません。仕事を受
の一員として「建設職人社会ルネッサンス」の構築に邁進す
注するには、お客様とのコミュニケーションを密にし、信頼関
る所存です。
14
足場・型枠支保工
仮設に起因する労働災害撲滅を目指して
平成 20 年度目標:現場安全監理点検
10,000 件
〜仮設事業の価値創造を〜
本
部 東京都中央区日本橋小伝馬町 15 番 18 号 日本橋 SKビル 5F
〒103-0001 TEL 03-3639-0641 FAX 03-3639-0640
北 海 道 支 部 北海道札幌市厚別区下野幌テクノパーク2 丁目 1-14
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中 部 支 部 愛知県名古屋市南区浜田町 1-10 2F
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四 国 支 部 香川県さぬき市志度 1883-1 大河原ビル 2F 202 号
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アクセス第 28 号│ 2009 年春号
2009 年 5月15日 全国仮設安全事業協同組合発行
〒103-0001 東京都中央区日本橋小伝馬町 15-18日本橋 SK ビル 5F E-Mail : [email protected]
全国仮 設 安 全 事 業 協 同 組 合
ア ク セ ス
やるぞ点検 足場の安全 家族の安心
28号 2009 www.kasetsuanzen.or.jp
陽のあたる安全文化の創造
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