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H26年度成果報告書 - enPiT 分野・地域を越えた実践的情報教育協働

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H26年度成果報告書 - enPiT 分野・地域を越えた実践的情報教育協働
A N N U A L
R E P O R T
2 0 1 4
文部科学省 情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業
分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク
Education Network for Practical Information Technologies
平成26年度 成果報告書
クラウドコンピューティング分野
セキュリティ分野
組込みシステム分野
enPiT運営委員会
ビジネスアプリケーション分野
大阪大学、東北大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、
神戸大学、九州大学、九州工業大学、北陸先端科学技術大学院大学、
奈良先端科学技術大学院大学、公立はこだて未来大学、
産業技術大学院大学、慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学
は じ め に
大阪大学を代表校とした全国15連携大学では、文部科学省 情報技術人材育
成のための実践教育ネットワーク形成事業の支援のもとで、教育プログラム「分
野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク」enPiTを平成24年度より開
始しています。
本プログラムは、我が国が抱える種々の社会的課題を最先端の情報技術を
駆使して解決するとともに、社会の新たな価値や産業の創出を情報技術の応用
を通じて行える人材の育成を目指し、分野や地域の枠を越えた産学の協働ネッ
トワークを構築し、多くの優秀な学生を育成するとともに、実践的情報教育の知
見を蓄積し、広く普及させることを目的としております。
具体的には、情報技術の中からクラウドコンピューティング、セキュリティ、組
込みシステム、
ビジネスアプリケーションの4つの分野に焦点を絞り、
これら各分
野において、
グループ学習を行う短期集中課題解決型学習(PBL)や、分散開発
環境下で学習する分散PBL等を実施します。
本年度は、昨年度の第1期生の教育を踏まえ、
より規模を大きくし、その中身
を改善して第2期生に対して教育を行いました。本報告書は、
これら4分野の教
育活動の取り組みの内容やその成果の報告とともに、enPiT事業の全国展開を
はかるための種々の活動について述べます。
本成果報告を通じてより多くの大学・大学院がenPiT事業に興味を持ってい
ただき、実践的な情報教育の普及が促進されることを期待します。
また、
より多く
の産業界の方々に、
この活動を理解していただき、enPiT事業へのご支援、
ご協
力いただけるようお願い申し上げます。
enPiT代表
大阪大学大学院情報科学研究科 研究科長・教授
井上 克郎
目 次
第1章
第2章
事業の全体概要
1
1.1
本事業の目的
2
1.2
分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク
3
1.3
各分野の概要
4
1.4
目標人材像・達成目標
6
1.5
カリキュラム概要
6
1.6
教育体制
7
1.7
教育実績
9
1.8
中間評価
12
1.9
受講生の満足度調査
12
1.10 イベント・募集情報
13
1.11 今年度の総括
16
実践教育の取り組み状況
17
2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
クラウドコンピューティング分野
18
2.1.1
取り組みの概要……………… 18
2.1.5
教育実績…………………………… 24
2.1.2
学習・教育目標… …………… 18
2.1.6
教員養成・FD活動…………………… 26
2.1.3
教育内容…………………… 19
2.1.7
来年度のイベント予定・募集情報…
2.1.4
実施体制…………………… 23
2.1.8
まとめ………………………………… 27
セキュリティ分野
27
28
2.2.1
取り組みの概要……………… 28
2.2.5
教育実績…………………………… 33
2.2.2
学習・教育目標… …………… 29
2.2.6
教員養成・FD活動…………………… 41
2.2.3
教育内容…………………… 29
2.2.7
来年度のイベント予定・募集情報…
2.2.4
実施体制…………………… 30
2.2.8
まとめ………………………………… 45
組込みシステム分野
44
46
2.3.1
取り組みの概要……………… 46
2.3.5
教育実績…………………………… 50
2.3.2
学習・教育目標… …………… 46
2.3.6
教員養成・FD活動…………………… 64
2.3.3
教育内容…………………… 46
2.3.7
来年度のイベント予定・募集情報…
2.3.4
実施体制…………………… 48
2.3.8
まとめ………………………………… 65
ビジネスアプリケーション分野
65
66
2.4.1
取り組みの概要……………… 66
2.4.5
教育実績…………………………… 73
2.4.2
学習・教育目標… …………… 67
2.4.6
教員養成・FD活動…………………… 78
2.4.3
教育内容…………………… 67
2.4.7
来年度のイベント予定・募集情報…
2.4.4
実施体制…………………… 71
2.4.8
まとめ………………………………… 79
分野を越えた実践教育
2.5.1
分野横断講義……………… 80
2.5.2
アジャイル研修… …………… 85
78
80
2.5.3
イノベータ―ワークショップ………… 88
第3章
分野を越えた実践教育ネットワーク形成
91
3.1
運営委員会、幹事会の実施状況
92
3.2
作業部会の活動状況
93
3.2.1
広報戦略WG… ……………… 93
3.2.4
教務WG… …………………………… 103
3.2.2
FDWG………………………… 96
3.2.5
女性部会…………………………… 105
3.2.3
評価・産学連携WG… ……… 100
3.3
全体シンポジウム
107
3.4
実践的IT教育研究会(SIG rePiT)の活動状況
108
※本報告書内の実績は平成27年2月時点のものである。
■代表者一覧
事業代表
井上 克郎 大阪大学大学院情報科学研究科
分野代表
クラウドコンピューティング分野
楠本 真二
大阪大学大学院情報科学研究科
分野代表
セキュリティ分野
後藤 厚宏
情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科
分野代表
組込みシステム分野
福田 晃
九州大学大学院システム情報科学研究院
分野代表
ビジネスアプリケーション分野
北川 博之
筑波大学システム情報系情報工学域
■enPiT運営委員会
委員長
井上 克郎 大阪大学大学院情報科学研究科
委員
クラウドコンピューティング分野
楠本 真二
大阪大学大学院情報科学研究科
委員
クラウドコンピューティング分野
平木 敬
東京大学大学院情報理工学系研究科
委員
クラウドコンピューティング分野
西崎 真也
東京工業大学大学院情報理工学研究科
委員
クラウドコンピューティング分野
上原 邦昭
神戸大学大学院システム情報学研究科
委員
クラウドコンピューティング分野
久代 紀之
九州工業大学大学院情報工学研究院
委員
セキュリティ分野
曽根 秀昭
東北大学大学院情報科学研究科
委員
セキュリティ分野
宮地 充子
北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科
委員
セキュリティ分野
藤川 和利
奈良先端科学技術大学院大学総合情報基盤センター
委員
セキュリティ分野
砂原 秀樹
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
委員
セキュリティ分野
後藤 厚宏
情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科
委員
組込みシステム分野
高田 広章
名古屋大学大学院情報科学研究科
委員
組込みシステム分野
鵜林 尚靖
九州大学大学院システム情報科学研究院
委員
ビジネスアプリケーション分野
北川 博之
筑波大学システム情報系情報工学域
委員
ビジネスアプリケーション分野
大場 みち子
公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科
委員
ビジネスアプリケーション分野
酒森 潔
産業技術大学院大学産業技術研究科
委員
全体事務局
粂野 文洋
国立情報学研究所/日本工業大学情報工学科
A N N U A L
R E P O R T
2 0 1 4
第1章
事業の全体概要
1.1
本事業の目的
高齢化、エネルギー・環境問題、震災からの復旧・復興など
こうした人材を育成するため、平成24年に「文部科学省 情
の社会的課題解決、産業における国際競争力強化や新たな
報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業」が
価値、新産業創出等、我が国が取り組むべき課題は山積して
開始された。本事業は、複数の大学と産業界による全国的な
いる。
これらの課題解決には情報技術の高度な活用が必須
ネットワークを形成し、実際の課題に基づく課題解決型学習
のものとなっており、情報技術を高度に活用して、社会の具体
等の実践的な教育を実施・普及することを目的とした公募型
的な課題を解決することのできる人材の育成は我が国の極
事業である。公募の結果、
「分野・地域を越えた実践的情報教
めて重要な課題となっている。
育協働ネットワーク」
(申請代表校:大阪大学)が採択された。
図1.1.1
事業の全体イメージ
複数の大学と産業界の連携による情報技術人材育成の全国的推進ネットワーク
産学連携による情報技術人材育成のための総合的推進ネットワーク
全国の学生、大学、ITベンダー企業、ユーザ企業の参加を促進する連絡調整
産学連携による実践的教育実施のためのガイドライン策定
情報技術人材育成の海外調査
産学連携による実践的教育の実施 など
産学連携による実践的教育の
全国への普及展開
●産学連携により企業の実際の課題に基づく
少人数のチームでの課題解決型学習等の
実践的教育を実施
●夏期休暇期間などを利用した集中実習
●リモート分散実習 など
実践教育コア
参加大学
拠点大学(事務局)
連携大学
全国の学生
・受講生(大学院修士課程)
・拠点大学・連携大学の学生
・拠点大学・連携大学以外の学生
・実践教育コアが設ける
一定の基準を満たす学生
教員が実践教育コアに参加し、
学生を指導。実践教育コアに
おける取り組みを所属先の
大学においても展開
連携大学
連携大学
ITベンダー企業
ユーザ企業
・高度な技術者やプロダクトマネージャなどが
助言者・指導者として協力
・企業の実際の課題に基づく、
実践的教育のテーマの提供
情報技術を活用して社会の具体的な課題を解決できる
能力を有する優れた情報技術人材の育成強化
2
enPiT ANNUAL REPORT 2014
分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク
1.2
第1章 事業の全体概要
分 野・地 域 を 越 え た 実 践 的 情 報 教 育 協 働 ネ ット
教育プログラムのフレームワーク
図1.2.2
ワーク(Education Network for Practical Information
Technologies、略称enPiT:エンピット)では、クラウドコン
4月
ピューティング、セキュリティ、組込みシステム、ビジネスアプ
5月
リケーションの4分野を対象として、各分野の知識領域を幅広
く教育するために、それぞれの分野に専門領域を有する全国
6月
の15連携大学の教員や企業の技術者を結集したプログラム
7月
となっている
(図1.2.1)
。
8月
enPiTでは、各分野ともに図1.2.2にあるような教育プログラ
9月
ムのフレームワークに基づいて実践的教育を行う。
10月
11月
(1)基礎知識学習
短期集中合宿や分散PBLを実施する上で必要となる基礎
12月
知識を学ぶ。各分野の連携大学および参加大学の講義や開
基礎知識学習
短期集中合宿
受講のための事前準備
短期集中合宿
各分野の講義
PBL
分散PBLに向けた準備 など
分散PBL
連携大学・参加大学の学生が
分散環境でPBLを実施
1月
発深知(https://devshinchi.jp/)などで公開されている教材
発 表 会
2月
などを利用できる。
3月
修 了
(2)短期集中合宿
各分野技術に関する講義や演習(基礎知識以外に必要と
図1.2.1
分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク
参加大学
公立はこだて未来大学
参加大学
教員・学生
学術団体
公的機関
九州大学
参加大学
教員・学生
東北大学
学術団体
参加大学
北陸先端科学技術大学院大学
筑波大学
九州工業大学
大阪大学
参加大学
連携企業
名古屋大学
神戸大学
奈良先端科学技術大学院大学
東京大学
慶應義塾大学
東京工業大学
産業技術大学院大学
情報セキュリティ大学院大学
参加大学
enPiT ANNUAL REPORT 2014
3
なる項目、最先端技術など)、PBLに向けた準備等を行い、約2
週間程度の集中教育を受ける。
・FD(幹事:東京大学)
:PBLや短期集中型演習の手法や評
価改善について検討する
・評価・産学連携(幹事:名古屋大学)
:
「社会の具体的な課
題を解決する人材」を育成し得たかの評価方法を検討
(3)分散PBL
分野ごとに分散環境下でのPBLを実施し、終了後は成果発
する
・教務(幹事:筑波大学)
:授業の相互乗り入れや教材の共
表会を開催する。
本事業は複数の大学と産業界による全国的なネットワー
クを形成し、実践的な教育を普及させることが目的であるた
め、分野を越えた普及展開の取り組みが極めて重要である。
有方法等を検討する
・女性部会(幹事:大阪大学)
:女性のIT技術者養成やキャ
リアに関する情報共有・意見交換を行う
平成25年度ではのべ62の大学と87の企業・団体による産
●学会、産業界、大学等の外部有識者6名から構成される外
学連携の人材育成ネットワークとなっていたものが、平成26
部評価委員会を設置し、計画や進捗状況に対する評価を
年度は合計96大学と107の企業・団体によるネットワークに
実施した。
拡大している。平成27年度以降も普及拡大の取り組みをさら
に実施していく予定である。
●enPiTの広報と全国の大学への参加呼びかけを目的とし、
広報戦略WGを中心に、enPiTのWebサイト開設・運用や各
種報告書等の配信、パンフレット・ポスターの作成・配布、
●15連携大学で「共同事業契約書」
を締結した。
ニュースレターの発行・配布などを行っている。各分野にお
●15連携大学の代表で構成される運営委員会を設置、開催
いても、PBLの成果報告会やワークショップなど、成果を公
した。開催実績は平成24年度:2回、平成25年度:4回、平成
表するイベントが開催されている。本事業全体のenPiTシン
26年度:4回である。
ポジウムはこれまでに3回開催されている。平成26年度(第
●分野間に関係する重要事項の協議のために幹事会(代表
3回シンポジウム)は名古屋にて開催された。各分野のイベ
校の大阪大学、幹事校の情報セキュリティ大学院大学、九
ントや全体シンポジウムの詳細については、本章「1.10 イ
州大学、筑波大学の4校、各部会の主査で構成)を設置、開
ベント・募集情報」および第3章を参照されたい。
催した。開催実績は平成24年度:7回、平成25年度:10回、
平成26年度:11回である。
さらに、産業界との連携を強化するため、平成25年度まで
●広報、FD(Faculty Development)、評価・産学連携、教務の
に日本学術会議情報学委員会ソフトウェア工学分科会、
日本
各テーマを検討する4つのWGを設置、開催した。各WGに
経済団体連合会情報通信委員会高度情報通信人材育成部
は各分野から1名の委員が参画している。
これに加え、平成
会、NII-IPA合同フォーラムにおいて、本プログラムの紹介と協
26年度は女性部会を設置した。
力要請を行ってきた。平成26年度は、一般社団法人日本情報
・広報戦略(幹事:慶應義塾大学)
:enPiT全体の広報に関
システム・ユーザー協会、一般社団法人情報サービス産業協
する戦略の検討や計画の策定を行う
1.3
会での協力要請も行っている。
各分野の概要
クラウドコンピューティング、セキュリティ、組込みシステ
生を対象として、短期集中合宿(東日本と西日本でそれぞれ
ム、ビジネスアプリケーションの各分野における取り組み概
実施)、分散PBLを通じて、複数人でチームを組み、情報システ
要をまとめる。
ムをクラウド上で実装し、
さらに、モバイル対応、負荷分散・ス
ケーリング、大規模データ解析等を行うことで、
クラウド技術
クラウドコンピューティング分野
本分野は、いわゆるビッグデータの分析手法、新しいビジ
の導入によって可能となる問題解決方法や効果について、
プ
ロジェクトを通して体感することを目的とする。
セキュリティ分野
ネス分野の創出といった社会の具体的な課題を、
クラウド技
術を活用し解決できる人材の育成を目指し、大阪大学、東京
4
大学、東京工業大学、神戸大学、九州工業大学の5大学が連携
幅広い産業分野において求められている
「実践的なセキュ
して教育を実施する。
クラウド技術の基礎知識を習得した学
リティ技術を習得した人材(実践セキュリティ人材)の育成を
enPiT ANNUAL REPORT 2014
目指す。
募り、九州大学の連合型PBL(Project Based Learning)
と新し
い産学連携教育手法である名古屋大学のOJL(On the Job
セキュリティ人材の育成コース(SecCap)によって、幅広いセ
Learning)の2タイプを実施する。両タイプとも問題発見能力
キュリティ分野の最新技術や知識を具体的に体験を通して習
を身に付ける「基本コース」
と管理技術とその運用方法まで
得することができる。暗号をベースとする情報セキュリティ技
踏み込んだ高度な問題解決能力を身に付ける
「発展コース」
術、Webサーバのセキュリティ技術、ネットワークセキュリティ
を設ける。受講生の指導教員に分散PBLの実施ノウハウを修
技術等の技術面から、法制度やリスク管理などの社会科学的
得してもらい、補助期間終了後に各大学で継続して実施でき
な知識までをカバーする。受講生は、技術系、理論系、社会科
る体制にする。
学系の講義や実践演習・PBLから、それぞれが目指すキャリア
パスに沿った割合で、主体的・自主的に調合した学習プログ
ラムを作って受講することができる。
第1章 事業の全体概要
本取り組みでは、5つの連携大学が協力して開講する実践
ビジネスアプリケーション分野
人材育成を進めるだけでなく、その育成ノウハウを、全国
の大学(参加大学)に広める活動を進める。
これにより、実践
セキュリティ人材育成の枠組み自体を作り上げることができ、
本分野では、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだ
実践セキュリティ人材育成のすそ野を広げ、我が国全体が必
て未来大学の3大学が連携し、各種の先端情報技術を有機
要とする人材の育成体制を作り上げることができる。
的に活用し、社会情報基盤の中核となるビジネスアプリケー
ション分野の実践的問題解決ができる人材を育成する。事前
の基礎知識学習科目の履修により、ビジネスアプリケーショ
組込みシステム分野
ン分野に関わる情報技術を概観し、各種先端技術を活用した
問題解決ができるための基礎知識を習得し、短期集中合宿
により、演習とPBLを実施することで、基礎知識とスキルを実
本分野では、
「組込みシステム開発技術を活用して産業界
践可能なレベルに向上させる。さらに、チームプロジェクトに
の具体的な課題を解決し、付加価値の高いサイバーフィジカ
よる分散PBLにより、ユーザー企業や地域連携からの実践的
ルシステム(CPS)を構築できる人材」を育成することを目標
な課題を行うことで、顧客を意識した問題解決能力、マネジ
としている。連携大学にとどまらず、広く全国から参加大学を
メント能力を養成する。
図1.3.1
4つの分野による実践的情報教育協働ネットワーク
公的機関
参加大学
クラウドコンピューティング分野
組込みシステム分野
学生
人材・知見
学術団体
協働ネットワーク
セキュリティ分野
ビジネスアプリケーション分野
講師
連携企業
enPiT ANNUAL REPORT 2014
5
1.4
目標人材像・達成目標
分野ごとの目標人材像・達成目標は次の通りである。
表1.4.1
分野
分野ごとの目標人材像・達成目標
クラウドコンピューティング分野
クラウド技術を理解し、必要なス
キルと知識について他者と議論
し、実際のクラウド環境を用い
て大規模な処理や効率の良い
目標人材像
処理(負荷分散や分散処理等)
を提供するアプリケーション・情
報システムを開発できる人材。
達成目標
各年度の
目標育成
学生数
平成25年度:50名
平成26年度:70名
平成27年度:80名
平成28年度:100名
1.5
セキュリティ分野
組込みシステム分野
ビジネスアプリケーション分野
社会・経済活動の根幹にかかわ 組込みシステム開発技術を活用 進化を続ける先端情報技術や
る情報資産および情報流通のセ して産業界の具体的な課題を解 情報インフラを有機的に活用
キュリティ対策を、技術面・管理 決し、付加価値の高いサイバー し、潜在的なビジネスニーズや
面で牽引できる実践リーダー。 フィジカルシステム(CPS)の構 社会ニーズに対する実践的問題
築による効率のよい社会システ 解決ができる人材。
ムを実現し、エネルギーや環境
問題など現在の日本が抱える重
要課題に対応できる人材。
平成25年度:60名
平成26年度:80名
平成27年度:90名
平成28年度:100名
平成25年度:40名
平成26年度:60名
平成27年度:80名
平成28年度:100名
平成25年度:60名
平成26年度:70名
平成27年度:85名
平成28年度:100名
カリキュラム概要
■ クラウドコンピューティング分野
基礎知識として、
クラウドを利用したクラウド上で動作する
アプリケーション開発を行うための、
プロジェクト管理手法、
ファシリテーションスキル、開発プロセス、
クラウド環境利用
技術を学ぶ。引き続き、チームでのアプリケーション開発PBL
■ 組込みシステム分野
主に修士課程1年生を対象とした基本コースと修士課程1・
2年生を対象とした発展コースを設ける。
(1)基礎知識学習は、組込みシステム基礎、
ソフトウェア工学、
および各大学で必要とされる科目で構成する。
実施、モバイル対応、負荷分散・スケーリング、大規模データ
(2)短 期集中合宿は、分散PBLのキックオフ合宿という位置
解析等の応用技術の学習とそれらを応用したアプリケーショ
付けで、
スプリングスクールあるいはサマースクールを行
ン開発PBLを行う。
う。
(3)分散PBLは、九州大学の連合型PBLと名古屋大学のOJLの
■ セキュリティ分野
実践セキュリティ人材育成に向けて、共通に必要な基礎知
識学習、幅広いセキュリティ分野の最新技術や知識を具体的
■ ビジネスアプリケーション分野
に体験を通して習得できる実践演習、および応用力を高める
ビジネスアプリケーション分野に関わる情報技術を概観
学習からなるカリキュラムである。技術面では、暗号をベース
し、各種先端技術を活用した問題解決ができるために、基礎
とする情報セキュリティ技術、Webサーバのセキュリティ技
知識を習得するための事前の基礎知識学習、基礎知識学習
術、ネットワークセキュリティ技術から、法制度やリスク管理
で習得した項目に関する演習を実施することで、受講生個人
などの社会科学的な知識までをカバーする。実践演習では、
の基礎項目に関するスキルを実践可能なレベルに向上させ
ハードウェアを対象としたもの、システムやソフトウェアを対
る短期集中合宿、基礎知識学習、短期集中合宿で得た基盤
象としたもの、企業組織のリスク管理を対象としたものなど、
技術を基に、PBLプロジェクトを実施する分散PBLで構成され
バラエティに富んだ演習コースが用意される。受講生は、技
る。
術系、理論系、社会科学系の講義や実践演習・PBLから、それ
ぞれが目指すキャリアパスに沿った割合で、主体的・自主的
に調合した学習プログラムを作って受講することができる。
6
いずれかを選択する。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
1.6
教育体制
制は計62大学、87の企業団体)。各分野の体制(平成27年2月
81大学が参加し、107の企業・団体が助言・指導・テーマ提供
現在)を表1.6.1~4にまとめる。各表内の※は平成26年度か
等の立場で協力し、合計96大学と107の企業・団体による産
らの参加を表している。
学連携の人材育成ネットワークとなっている(平成25年の体
表1.6.1
第1章 事業の全体概要
平成26年度の時点において、15の連携大学に加え、のべ
各分野における教育実施体制(クラウドコンピューティング分野)
■連携大学(5大学)
大阪大学
東京大学
東京工業大学
神戸大学
九州工業大学
計5大学。56名の大学教員が参画。
■参加大学(19大学)
奈良先端科学技術大学院大学
和歌山大学
高知工科大学
大阪工業大学
京都産業大学
立命館大学
兵庫県立大学
近畿大学
早稲田大学
東京電機大学
電気通信大学
慶應義塾大学※
九州産業大学※
広島市立大学※
総合研究大学院大学※
筑波大学※
長崎県立大学※
東海大学※
明治大学※
■連携企業(36社)
株式会社NTTデータ
株式会社オージス総研
株式会社日立ソリューションズ
株式会社日立インフォメーションアカデミー
西日本電信電話株式会社
株式会社日立製作所
ヤフー株式会社
株式会社コネクトドット
新日鉄住金ソリューションズ株式会社
国立情報学研究所
株式会社フォーマルテック
日本マイクロソフト株式会社
株式会社リコー
株式会社野村総合研究所
株式会社ソニックガーデン
株式会社四季の自然舎
株式会社ピコラボ
レッドハット株式会社
日本オラクル株式会社
株式会社セールスフォース・ドットコム
Heroku, Inc.
株式会社ドリコム
株式会社ジュントス
楽天株式会社※
バンプレコーダー株式会社※
株式会社SEプラス※
株式会社サイバーエージェント※
株式会社ディー・エヌ・エー※
株式会社ハウインターナショナル※
株式会社日立システムズ※
株式会社ブレインパッド※
株式会社リクルートホールディングス※
株式会社富士通研究所※
グーグル株式会社※
三菱電機株式会社※
三井住友信託銀行株式会社※
26名の非常勤講師などが参画。
23名の大学教員が参画。
表1.6.2
各分野における教育実施体制(セキュリティ分野)
■連携大学(5大学)
東北大学
北陸先端科学技術大学院大学
奈良先端科学技術大学院大学
慶應義塾大学
情報セキュリティ大学院大学
計5大学。44名の大学教員が参画(基礎科目担当
教員を除く)。
■参加大学(9大学・5校)
東京大学
中央大学
大阪大学
京都大学
九州産業大学※
津田塾大学※
早稲田大学※
東京電機大学※
金沢工業大学※
■平成26年からの高専・学部等
石川工業高等専門学校※
仙台高等専門学校※
東北工業大学※
宮城大学※
東北学院大学※
■連携企業(10社)
日本電信電話株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社
一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター
独立行政法人情報通信研究機構
独立行政法人産業技術総合研究所
株式会社仙台ソフトウェアセンター
株式会社サイバー・ソリューションズ
日本電気株式会社
トレンドマイクロ株式会社※
実践セキュリティ演習教材作成の協力、演習実施
指導の協力、応用学習の先進科目のケース提供
と指導など、
さまざまな形態で参画。
参加大学以外も含め28名の大学教員が参画。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
7
表1.6.3
各分野における教育実施体制(組込みシステム分野)
■連携大学(2大学)
九州大学
名古屋大学
計2大学。32名の大学教員が参画。
■参加大学(31大学)
東海大学
東京電機大学
芝浦工業大学
早稲田大学
東京都市大学
関東学院大学
日本大学
群馬大学
信州大学
福井工業大学
静岡大学
名城大学
愛知工業大学
中京大学
愛知県立大学
南山大学
岐阜大学
立命館大学
同志社大学
和歌山大学
兵庫県立大学
徳島大学
北九州市立大学
九州産業大学
宮崎大学
東京工業大学※
京都大学※
奈良先端科学技術大学院大学※
関西学院大学※
広島市立大学※
九州工業大学※
計31大学。47名の大学教員が参画。
■連携企業(38社)
アイシン・コムクルーズ株式会社
アイシン精機株式会社
学校法人赤山学園九州技術教育専門学校
株式会社アフレル
株式会社ヴィッツ
株式会社永和システムマネジメント
NECソリューションイノベータ株式会社
オークマ株式会社
株式会社OTSL
株式会社サニー技研
独立行政法人情報処理推進機構
株式会社デンソー
東海ソフト株式会社
株式会社東芝
表1.6.4
株式会社東陽テクニカ
トヨタ自動車株式会社
株式会社豊田自動織機
日本電気通信システム株式会社
パナソニックアドバンストテクノロジー株式会社
日立オートモティブシステムズ株式会社
株式会社日立製作所
株式会社日立ソリューションズ
富士ソフト株式会社
ルネサス エレクトロニクス株式会社
イーソル株式会社※
SCSK株式会社※
オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社※
株式会社ジェイテクト※
スズキ株式会社※
株式会社チェンジビジョン※
株式会社東海理化電機製作所※
株式会社豊通エレクトロニクス※
パナソニック株式会社※
富士通テン株式会社※
マツダ株式会社※
矢崎総業株式会社※
ヤマハ発動機株式会社※
菱電商事株式会社※
計38社。連携企業以外も含め、41名が非常勤講
師・アドバイザとして参画。
各分野における教育実施体制(ビジネスアプリケーション分野)
■連携大学(3大学)
筑波大学
産業技術大学院大学
公立はこだて未来大学
計3大学。のべ23名の大学教員が参画。
■参加大学(19大学)
岩手大学
会津大学
茨城大学
埼玉大学
津田塾大学
愛媛大学
琉球大学
室蘭工業大学※
群馬大学※
宇都宮大学※
千葉大学※
東京理科大学※
お茶の水女子大学※
拓殖大学※
同志社大学※
広島大学※
山口大学※
徳島大学※
岡山県立大学※
34名の大学教員が参画。
■連携企業(23社)
NPO高度情報通信
人材育成支援センター(CeFIL)
CeFILを窓口とする
CeFIL連携企業8社と連携実績
株式会社NTTデータ
新日鉄ソリューションズ株式会社
東京海上日動火災株式会社
日本電気株式会社
日本ユニシス株式会社
株式会社日立製作所
富士通株式会社
日本マイクロソフト株式会社
8
enPiT ANNUAL REPORT 2014
富士ゼロックス株式会社
株式会社セールスフォース・ドットコム
楽天株式会社
株式会社ジャパンテクニカルソフトウエア
株式会社エスイーシー
日鉄日立システムエンジニアリング株式会社
日立INSソフトウエア株式会社
株式会社ABEJA
株式会社サムシングプレシャス
株式会社ジースタイラス
ニフティ株式会社
函館蔦屋書店株式会社
株式会社日立産業制御ソリューションズ
株式会社日立ソリューションズ・ビジネス
産業技術大学院運営諮問会議関連企業がPBL
テーマ候補提供、授業実施、学生指導、助言等で
連携。
連携企業以外も含め、のべ約40名が非常勤講師、
連携担当者として参画。
1.7
教育実績
文系出身や情報系でない学生が受講しやすくするために、技
術入門講座を2拠点で開講した。一方、社会科学系の演習に
■ クラウドコンピューティング分野
ついても、ハイブリッド人材に適した内容に拡充した。
SecCapコースの講義や演習の指導には、我が国トップレ
クラウドコンピューティング分野では、いわゆるビッグデー
ベルのセキュリティ関連組織・企業と専門家諸氏に協力いた
タの分析手法、新しいビジネス分野の創出といった社会の具
だくことができた。実際に起こっているインシデントの詳細な
体的な課題を、
クラウド技術を活用し解決できる人材の育成
解説や、実データに基づいたセキュリティ分析演習は、受講
を目的として、5連携大学を中心に、参加大学の教員、連携企
生にとって大変貴重な機会であり、講義や演習後の受講アン
業の専門家の力を結集して、
クラウドコンピューティング、
プ
ケートでも高く評価されていた。平成26年度の連携企業およ
ロジェクトマネジメント、ソフトウェア工学について教育・修
び研究機関は10組織であり、他の組織からも多数のセキュリ
得すべき内容を体系的・実践的に取り込んだ教育プログラム
ティエキスパートに協力をいただいた。
を構築した。
具体的には、4つの教育プログラム(クラウド実践道場、
平成26年度SecCapコースは、連携大学および6参加大学
から109名の学生がSecCap修了認定を目指して参加した。
Cloud Bauhaus、Cloud Spiral、Cloud Q9)
を実施し、143名(う
SecCapコースでは、共通科目・基礎科目、実践演習、先進科
ち51名が参加大学からの受講生)の修了者を得た。
目のそれぞれにおいて所定の単位数を取得できた学生に、
短期集中合宿は、東日本の東京大学と東京工業大学、西日
年度末の分野シンポジウムにおいて、SecCap修了認定証を
本の大阪大学、神戸大学、九州工業大学でそれぞれ合同で実
授与している。平成26年度は、84名の学生が、SecCap修了認
施した。各教育プログラムでは、実際にクラウドを学生が構
定を取得した。SecCap修了認定を取得できた学生は、実践セ
築する、受講生チームがアプリケーション開発を要求分析か
キュリティ人材として実社会での活躍が期待できる。
らクラウド環境上への実装まで自力で実施する、
クラウドを
加えて、SecCapコースの修了認定を目指さずに一部の演
活用したビジネスモデルを提案するなどの特色のあるPBLが
習や講義を受講する学生や、聴講生としての学部生や高専
実施された。また、ハイブリッド人材育成準備として、Cloud
生の受け入れなど、本SecCapコースの門戸を広げた。学部
Bauhausで5名、Cloud Spiralで1名の非情報系学生を受け入
生や高専生からの聴講生を対象とした修了認定(Associate
れている。
SecCap認定)を新たに設け、平成26年度は高専生6名が修了
また、分野内でのFDの活動として、教材開発や授業の実施
第1章 事業の全体概要
各分野の教育実績の概要を記す。
を目指して参加している。
についてのワーキングを開催した。
■ 組込みシステム分野
■ セキュリティ分野
組込みシステム分野では、問題発見能力を身に付ける「基
セキュリティ分野では、幅広い産業分野において求めら
本コース」
と管理技術とその運用方法まで踏み込んだ高度な
れている実践的なセキュリティ技術を習得した人材(実践セ
問題解決能力を身に付ける
「発展コース」を設けている。平成
キュリティ人材)の育成を目指し、平成25年度から5つの連携
26年度は「ライトウェイトコース」を新設し、組込み技術体験
大学が協力してSecCapコースを開講し、平成26年度は、改善
学生の裾野拡大、ハイブリッド人材の養成、さらに参加大学
と拡充を進めた。SecCapコースは、基礎力を養成できる共
数の増加が図れた。
また、九州大学PEARLの基本コースの実
通科目と基礎科目、実践力を養成する約20種類の演習、応用
施時期を、参加大学の学年歴と適合しなかった8月~翌年3月
力を高める先進科目からなり、技術面では、暗号をベースと
から、発展コースと同じ4月~10月に変更した。その結果、参
する情報セキュリティ技術、Webサーバのセキュリティ技術、
加大学の修士受講生の90%以上が最後まで受講・修了するこ
ネットワークセキュリティ技術といった技術的な知識から、法
とができるようになった。
制度やリスク管理などの社会科学的な知識までをカバーして
修士学生120名(学部等65名も加えると185名)の受講生を
いる。平成26年度において本取り組みに参加した教員数は、
受け入れ、九州大学PEARLはコンテストチャレンジ型と事業
連携大学、参加大学および参加大学候補等で72名(基礎科目
企画/技術開発型の24件のテーマを、名古屋大学OJLは連携
の担当教員を含まない)
である。
企業が提供した35件のテーマを実施した。短期集中合宿に
平成26年度のカリキュラムにおける特徴的な取り組みは、
ついては、九州大学は5月にスプリングスクールを8日、8~10
ハイブリッド人材育成に向けた入門講座と演習内容の拡充
月にサマースクールをのべ7日、名古屋大学は昨年度末の3
である。本SecCapコースが重点を置く実践的な技術演習を、
月にスプリングスクールを4日、8~9月にサマースクールをの
enPiT ANNUAL REPORT 2014
9
べ10日、それぞれ開催した。修了生数は修士学生が114名(内
成27年2月20日にビジネスアプリケーション分野ワークショッ
ハイブリッド人材は8名)
となり、今年度の目標60名を超えた。
プを筑波大学東京キャンパスで開催する予定である。
分野間の交流については若手教員のクラウドコンピュー
なお、ハイブリッド人材の育成準備状況としては、本年度よ
ティング分野のFD合宿への参加、情報処理学会との協働に
り参加大学からすでに5名のハイブリッド人材が参画してお
ついてはESSロボットチャレンジ10周年記念イベントとしてシ
り、来年度以降もより多くのご参加をいただけるように準備
ンポジウム開催、学会誌特集記事投稿などの実施、など全国
をすすめている。
また、ハイブリッド人材ではないが、幅広い
的な協働ネットワークの構築を推進した。
分野への教育を目的として産業技術大学院大学を中心に社
今年度末の組込みシステム分野は、2連携大学と日本全国
会人への門戸も広く開いている。
(北海道・東北地方は除く)に広がっている31参加大学とい
また、本年度は分野横断講義として、筑波大学拠点にてア
う構成となった。参加大学の受講生が修士学生だけなら60%
ジャイル研修Ⅰ、
Ⅱを実施した。特にアジャイル研修Ⅱについて
以上を占め、学部等の学生も含めると75%を越えるのが特徴
は、
クラウドコンピューティング分野の大阪大学Cloud Spiral
である。来年度も参加大学数を増加させていくので、
この比
での「スクラム講習」の講義と共通の教材を利用し、実施にあ
率はさらに高くなり、修士2年生・学部4年生の採用選考開始
たっては、Cloud Spiralでのご担当の大阪大学の井垣宏特任
が8月に変更されることも踏まえ、特に夏の短期集中合宿の
准教授に全面的にご協力いただいた。
実施日程を工夫することが重要課題と考えている。
■ ビジネスアプリケーション分野
■ 分野を越えた実践教育
ビジネスアプリケーション分野には本年度、連携大学であ
各分野で実施されている講義・演習の中には、他の分野の
る筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来大学を
学生にとっても非常に有意義と考えられるものもある。
そのよ
はじめ、室蘭工業大学、岩手大学、会津大学、茨城大学、群馬
うな教育を分野横断的に展開するため、平成25年度より分野
大学、宇都宮大学、埼玉大学、千葉大学、東京理科大学、お茶
横断講義を開催している。平成26年度は、次の2種類に分類
の水女子大学、津田塾大学、拓殖大学、同志社大学、広島大
し、分野横断講義を開催した。
学、山口大学、愛媛大学、徳島大学、岡山県立大学、琉球大学
A 分野によらず必要な汎用的内容の講義
の19大学から総計34名の教員がそれぞれのプログラムに参
B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義
加していただいた。さらに、23にのぼる企業および団体から
のご参加をいただき、運営を手助けしていただいた。
また、富
山大学などが来年度以降の参加を検討している。
本分野の本年度の育成学生数の目標は70名である。
これ
A 分野によらず必要な汎用的内容の講義
●ソフトウェア開発のためのドキュメンテーション入門
に対して受講条件として、情報系学部レベル基礎教育を習得
組込みシステム分野
していること、情報系の大学院に在籍していること、情報系企
→ビジネスアプリケーション分野
業の実務経験を有していること、のいずれかが満たされてい
実施日時
8月20日
ることを要求し、さらに、分野で指定する基礎知識を短期集
実施場所
筑波大学
中合宿までに事前に習得しておくことを条件とし、短期集中
受講生
9大学:合計82名
合宿開始前に前提知識の習得状況審査を行った結果、本年
度は審査に合格した147名(筑波大学49名、茨城大学8名、岩
●プレゼンテーションスキル
手大学2名、愛媛大学5名、お茶の水女子大学4名、埼玉大学3
クラウドコンピューティング分野
名、千葉大学4名、東京理科大学2名、山口大学5名、公立はこ
→ビジネスアプリケーション分野
だて未来大学14名、会津大学4名、同志社大学2名、室蘭工業
実施日時
8月22日
大学5名、産業技術大学院大学11名、琉球大学5名、拓殖大学
実施場所
筑波大学
2名、社会人22名)が短期集中合宿を受講し、各大学で成果発
受講生
9大学:合計82名
表会を実施した。そのうち122名(筑波大学48名、茨城大学4
名、岩手大学2名、愛媛大学3名、お茶の水女子大学4名、千葉
10
●ICT分野の研究開発におけるロジカルシンキングと
大学4名、東京理科大学 2名、山口大学5名、公立はこだて未
ロジカルライティングの活用
来大学12名、会津大学 4名、同志社大学 2名、室蘭工業大学5
ビジネスアプリケーション分野
名、産業技術大学院大学8名、琉球大学5名、拓殖大学1名、社
→クラウドコンピューティング分野
会人13名)が分散PBLを受講、各連携大学での成果発表会を
実施日時
10月10日
経て本年度全課程を修了し、enPiT修了証を授与された。本分
実施場所
九州工業大学
野の総括として、来年度にむけての指針を議論するため、平
受講生
enPiT ANNUAL REPORT 2014
九州工業大学:13名
●クラウドエクストラ
●ICT分野の研究開発におけるロジカルシンキングと
クラウドコンピューティング分野
ロジカルライティングの活用
→セキュリティ分野
実施日時
11月21日
実施日時
12月3日
実施場所
奈良先端科学技術大学院大学より配信
実施場所
慶應義塾大学より配信
受講生
受講生
5大学:合計40名
4大学:合計14名
●ビジネスアプリケーションのためのデータサイエンス入門
B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義
ビジネスアプリケーション分野
●ファシリテーションスキル
→クラウドコンピューティング分野
クラウドコンピューティング分野
実施日時
10月31日
→ビジネスアプリケーション分野
実施場所
九州工業大学
実施日時
8月15日
実施場所
公立はこだて未来大学
受講生
受講生
4大学:合計25名
第1章 事業の全体概要
→ビジネスアプリケーション分野
ビジネスアプリケーション分野
九州工業大学:13名
●ビジネスアプリケーションのためのデータサイエンス入門
ビジネスアプリケーション分野
→セキュリティ分野
●Android の Permission機構とその役割について
セキュリティ分野
実施日時
12月17日
→ビジネスアプリケーション分野
実施場所
慶應義塾大学より配信
実施日時
8月28日
実施場所
筑波大学
受講生
受講生
7大学:合計54名
5大学:合計26名
なお、セキュリティ分野の科目の多くは、他分野の学生でも
遠隔受講(同時、
または蓄積)可能となっている。
今年度までの修了学生数や参加教員数等の実績を表1.7.1
●クラウドエクストラ
にまとめる。
クラウドコンピューティング分野
→ビジネスアプリケーション分野
実施日時
8月29日
実施場所
筑波大学
受講生
7大学:合計54名
●クラウドエクストラ
クラウドコンピューティング分野
→ビジネスアプリケーション分野
実施日時
8月29日
実施場所
産業技術大学院大学
受講生
表1.7.1
3大学:合計34名
今年度の教育実績および参加実績
(単位:名)
クラウド
コンピューティング分野
セキュリティ分野
修了学生数
143
参加教員数
組込みシステム分野
ビジネス
アプリケーション分野
合計
84
114
122
463
105
72
75
67
319
参加大学数
19
12
31
19
81
連携企業・団体数
36
10
38
23
107
70
80
60
70
280
分野
連携大学15校を除く
(参考)平成26年度の
目標育成学生数
enPiT ANNUAL REPORT 2014
11
1.8
中間評価
今年度は、enPiTの2年間の取り組みに対する中間評価を
に、enPiTの申請時点での計画と現在の進捗状況・成果、今後
「情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事
の課題を自己評価報告書として取りまとめ、平成26年12月末
業委員会」より受けている。評価の観点は、全国的なネット
に文部科学省に提出している。中間評価結果は平成27年3月
ワーク形成、組織・体制の構築、大学間の役割分担、実践教育
末までには決定し、公表される予定である。我々としては上記
の内容・実施方法・手段・指導体制、大学・企業等との協力、実
の評価項目に対して、全国的なネットワークの形成、修了生
践教育を行う分野、実践教育の規模、他大学の学生・社会人
数、参加大学数等、多くの項目において、当初の事業目標以上
の受け入れ、他大学の教員の協力・FDの推進・成果の普及、
の成果が達成できていると考えている。平成27年度以降も、
当初目標の達成状況、第三者評価組織とPDCAサイクル、支
中間評価の結果を踏まえて改善を行い、本事業を推進してい
援終了後を見据えた取り組み等、多岐に渡る。本評価のため
く次第である。
1.9
受講生の満足度調査
平成26年2月から3月にかけて、平成25年度にenPiTを受講
「研究や学習との両立が難しそう」、
「課題などの負担が重そ
した学生に対する満足度調査を行った。enPiT事業としては
う」、
「プログラムの難易度が高そう」
という回答が多かった。
第一期の学生になる。具体的には、学生に対してenPiT の受
「不安に感じた点はなかった」
という回答は1割未満であり、
講が有益であったかどうかを尋ねたところ、
「非常に有益だっ
多くの学生が受講前に何らかの不安や懸念を感じていたこと
た」
という回答が半数を超える結果となった(図1.9.1)。ほぼ
も明らかになった。
100%の学生が「有益だった」
と回答しており、平成25年度は
調査結果の詳細は、enPiTのWebサイト
(http://enpit.jp/)
非常に高い学生満足度を達成している。
「enPiTの受講を後
のpublicationのページから
「H25年度 enPiTに関する調査結
輩や友人に勧めるか」
という設問に対しても、9割近い学生が
果」
というタイトルで公開している。
「勧めたい」
と回答しており、この結果にも学生の満足度の
高さが表れている。
また、enPiTへの参加にあたって不安に感じた点としては、
受講生の満足度調査結果の抜粋
図1.9.1
enPiTを受講したことは有益だったか
0%
25%
50%
75%
100%
2.7%
n=187
57.8%
39.0%
0.5%
■ 非常に有益だった
■ あまり有益ではなかった
■ ある程度有益だった
■ まったく有益ではなかった
enPiTの受講を後輩や友人に勧めるか
0%
n=187
25%
43.3%
50%
75%
44.9%
100%
10.7%
1.1%
■ 強く勧めたい
■ あまり勧めたいと思わない
12
enPiT ANNUAL REPORT 2014
■ ある程度勧めたい
■ まったく勧めたいと思わない
1 . 1 0 イベント・募集情報
団体に広げるために、イベントや学会活動、広報等のさまざ
まな普及展開活動を実施してきた。主な活動は次の通りであ
る。
●情報処理学会研究報告
コンピュータと教育研究会報告
2014-CE-125(ビジネスアプリケーション分野)
●ESS2014 enPiT-Emb(組込みシステム分野)
(1)
イベントの開催
enPiT第1回シンポジウム
第1章 事業の全体概要
本事業の教育ネットワークを全国のより多くの大学・企業・
また、本教育ネットワークを研究コミュニティとしても発展
させてゆくために、
日本ソフトウェア科学会に研究会(実践的
日時
平成25年3月15日 13:30~17:00
IT教育研究会:略称rePiT、
レピット)を設立した。そして、
日本
場所
千里阪急ホテル
ソフトウェア科学会第31回大会(平成26年9月)にてrePiTセッ
ションを開催した。さらに平成27年1月にはrePiTシンポジウ
enPiT第2回シンポジウム
日時
平成26年1月30日 10:00~17:00
場所
慶應義塾大学 日吉キャンパス…
協生館(藤原洋記念ホール)
ムを開催している。
(3)広報活動
広報戦略WGと各分野の関係者、国立情報学研究所GRACE
センターが中心となり、Webサイト・Twitter・facebookでの
enPiT第3回シンポジウム
情報発信、ポスター・パンフレット
(英語版も含む)の配布、
日時
平成27年1月27日 10:00〜17:10
ニュースレターやメールマガジンの発行等の広報活動を
場所
名古屋大学…
行った。広報戦略WGの活動については第3章を参照のこと。
東山キャンパス理学南館1階(坂田・平田ホール)
また、各分野でもさまざまな広報活動を実施している。
各分野のイベントや参加募集情報の概要は次の通りであ
平成26年度に開催された第3回シンポジウムの詳細につ
る。詳細は第2章や各分野のWebサイトを参照のこと。
いては第3章を参照のこと。第3回より前のシンポジウムの詳
細については平成25年度成果報告書を参照のこと。
各分野においてもさまざまな成果報告会やワークショップ
が開催されている。
その詳細については第2章を参照のこと。
■ クラウドコンピューティング分野
■イベント
クラウド東日本
(2)学会活動
平成26年度
東京大学
インターナショナル実践工房 Facebook Open
Academy Kick off(SFO, USA)
(平成26年10月10~12
日)
クラウド実践工房テーマ発表会(平成26年10月17
日、東京大学弥生キャンパス)
成果報告会(平成27年1月16日、東京大学弥生キャン
パス)
冬合宿(平成27年2月18日~20日、東京大学検見川
総合運動場)
東京工業大学
中間発表会(平成26年7月23日)
成果物発表会(平成26年11月19日)
成果展覧会(平成26年12月16日~17日)
平成27年度
東京大学
クラウド実践工房テーマ発表会(平成27年10月頃)
クラウド実践工房成果報告会(平成28年1月頃)
冬合宿(平成28年2月頃)
東京工業大学
中間発表会(平成27年7月頃)
成果物発表会(平成27年11月頃)
成果展覧会(平成27年12月頃)
平成26年度までにおいて、次の国内外の学会でenPiTの紹
介を行った。
●日本ソフトウェア科学会第30回大会(平成25年9月)
●ACM/IEEE Supercomputing 2013(SC 2013)
●情報処理学会誌・解説記事(Vol.55、No.2、2013)
●ESS2013 enPiT-Emb(組込みシステム分野)
●SEC journal・組織の活動紹介(Vol.10、No.2. 2014)
●平成26年度(2014)理工系情報学科・専攻協議会研究会
(平成26年7月25日)
●International Symposium on University Globalization
2014(平成26年6月28日)
●AXIES総会(平成26年12月11日)
●International Conference on Education, Psychology &
Social Science 2014
●日本ソフトウェア科学会 第31回大会(平成26年9月)
enPiT ANNUAL REPORT 2014
13
定員
クラウド西日本
平成26年度
平成27年度
大阪大学・神戸大学
国際会議SNPD2014(平成26年7月1日、Las Vegas,
USA)
合宿成果報告会(平成26年8月22日、大阪大学中之
島センター)
分散PBL課題1成果報告会(平成26年10月17日、大阪
大学中之島センター)
分散PBL課題2成果報告会(平成26年11月14日、大阪
大学中之島センター)
enPiTクラウドスパイラルセミナー(平成26年10月31
日、大阪大学中之島センター)
分散PBL課題3成果報告会、分散PBL全体成果報告会
(平成26年12月5日、大阪大学中之島センター)
教材作成・FDワークショップのべ6回
九州工業大学
CloudCamp(平成26年9月15日~19日、サテライト福
岡天神)
分散PBL成果報告会(平成27年1月23日、Rudies
Cafe)
大阪大学・神戸大学
合宿、分散PBLの成果報告会(平成27年8月・10月・11
月・12月頃)
教材作成・FDワークショップ(3回程度実施予定)
九州工業大学
分散PBL成果報告会(平成28年1月頃)
応募方法
最大15名
九州工業大学情報工学部大学院係に申込書を提
出
問い合わせ先
Cloud Q9事務局
E-mail ▶ [email protected]
■ セキュリティ分野
■イベント
連携大学・参加大学でのガイダンス(平成26年4月)
セキュリティ分野運営委員会(平成26年8月を除く毎月)
連携企業ワークショップとインターンシップガイダンス
実施(平成26年4月~5月)
平成26年度 アドバイザー委員による実践演習視察とフィードバック
(平成26年7月~9月)
連携大学5拠点での分野シンポジウム・修了認定式(平
成27年3月)
アドバイザー委員会(平成27年3月)
連携大学・参加大学でのガイダンス(平成27年4月)
連携大学5拠点での分野シンポジウム・修了認定式(平
成28年3月)
アドバイザー委員会(平成28年3月)
平成27年度
■募集情報
■募集情報
各連携大学で4月上旬に募集ガイダンスを実施。
大阪大学・神戸大学
演習によっては事前選考が行われる場合があるため、本
募集時期
4月
募集対象
修士1年、社会人可
募集に応募する際は早めに担当教員に相談をする必要があ
最大35名
る。詳細はWebサイトにて公開。
定員
応募方法
問い合わせ先
連携・参加大学教務・大学院係に申込書を提出
Webサイト
http://www.seccap.jp/
Cloud Spiral事務局
E-mail ▶ [email protected]
実践セキュリティ人材育成コース(SecCap)は主として修士1
年生の受講を想定し、通年のプログラムとして実施する。
東京大学
各連携大学におけるSecCapコースの修了要件など運営全般
4月、研究科の全体ガイダンスに合わせ説明会を開催する。
についての問い合わせ先は各大学のSecCap担当まで。
問い合わせ先
東京大学 enPiT事務局
問い合わせ先
情報セキュリティ大学院大学…
TEL ▶ 03-5841-4110
E-mail ▶ [email protected]…
E-mail ▶ [email protected]
…
東北大学…
E-mail ▶ [email protected]…
東京工業大学
募集時期
4月
…
募集対象
修士1年、社会人可
北陸先端科学技術大学院大学…
最大25名
E-mail ▶ [email protected]…
連携・参加大学教務・大学院係、関連研究室に申
…
定員
応募方法
問い合わせ先
込書を提出、研究科オリエンテーションにて説
奈良先端科学技術大学院大学…
明、配布
E-mail ▶ [email protected]…
Cloud Bauhaus事務局…
E-mail
▶
URL
http://www.itpro.titech.ac.jp
▶
[email protected]…
九州工業大学
14
募集時期
4月
募集対象
修士1年
enPiT ANNUAL REPORT 2014
…
慶応義塾大学…
E-mail ▶ [email protected]
■ ビジネスアプリケーション分野
■イベント
■イベント
平成26年度
九州大学PEARLスプリングスクール(平成26年5月10日
~17日、九州大学伊都キャンパス・東海大学高輪キャン
パス)
九州大学PEARLサマースクール前半(平成26年8月18日
~19日、
日本科学未来館 、および、8月20日~21日、東海
大学高輪キャンパス)
名古屋大学OJLサマースクール前半 with SWEST16(平
成26年8月25日~27日、名古屋大学東山キャンパス、お
よび、8月28日~29日、岐阜県下呂市)
名古屋大学OJLサマースクール後半(平成26年9月8日~
12日、名古屋大学東山キャンパス)
九州大学PEARLサマースクール後半&enPiT-Emb成果
発表会 in ESS2014(平成26年10月22日~24日、国立オリ
ンピック記念青少年総合センター)
九州大学実践的ICT教育シンポジウム(平成27年2月24
日、九州大学伊都キャンパス)
名古屋大学OJL基本コース成果発表会&次年度発展
コース春期合宿(平成27年3月4日~6日、名古屋大学東
山キャンパス)
enPiT-Emb研究発表 in ETNET2015(平成27年3月6日~
7日、奄美市社会福祉協議会)
九州大学PEARLスプリングスクール(平成27年4月~5
月)
平成27年度~ 名古屋大学OJLサマースクール(平成27年8月~9月)
平成28年度 九州大学PEARLサマースクール(平成27年8月~10月)
名古屋大学OJL基本コース成果発表会&次年度発展
コース春期合宿(平成28年3月)
平成28年度
組込みシステム教育シンポジウム(平成28年10月~平成
29年3月)最終成果の公表
平成26年度
筑波大学enPiT-BizAppワークショップ(平成26年12月5
日)
筑波大学enPiT分散PBL成果発表会(平成27年2月16日)
産業技術大学院大学分散PBL成果発表会(平成27年2月
21日)
公立はこだて未来大学分散PBL成果発表会(平成26年
12月19日)
第3回ビジネスアプリケーション分野ワークショップ(平
成27年2月20日)
平成27年度
筑波大学enPiT-BizAppワークショップ(平成27年12月)
筑波大学enPiT分散PBL成果発表会(平成28年2月)
産業技術大学院大学分散PBL成果発表会(平成28年2
月)
公立はこだて未来大学分散PBL成果発表会(平成27年
12月)
第3回ビジネスアプリケーション分野ワークショップ(平
成28年2月)
毎年度
第1章 事業の全体概要
■ 組込みシステム分野
ビジネスアプリケーション分野ワークショップ
■募集情報
連携大学、参加予定大学を含め、情報系の大学院に在籍し
ている大学院学生、情報系の学部レベルの基礎教育を習得
している受講希望者、情報系企業における実務経験を有する
受講希望者を対象とし、受講生募集を3~4月頃に行う予定で
ある。
応募者には、指定する基礎知識を必要に応じて短期集中
合宿までに学習してもらい、前提知識の習得状況の審査に合
九州大学PEARLでは、来年度の第1弾であるスプリングス
格することで、短期集中合宿への参加および分散PBLの受講
クールを5月9日~16日の予定で企画検討中である。名古屋
を認める(定員を超えた場合はさらに選抜を行う)。なお、前
大学OJLでは、7月1日(予定)に事業運営委員会を開催し、基
提知識の習得状況の確認は、連携大学学生については指定
本コースのテーマと受講生を承認する。夏期の短期合宿は、
科目の履修実績により、その他の受講希望者については指定
8月24日~28日と9月7日~11日の2週間を計画している。各
科目と同等の内容の履修実績によって行う。
種イベントの予定・確定情報は、随時、Webサイトに掲示し、
●4月~5月 受講生決定、受講者説明会実施
メール連絡網の方々にお知らせしていく。
●6月 短期集中合宿参加のための前提知識習得状況審査
募集案内や参加・応募方法など詳細は、Webサイトにて公
開する。
■募集情報
参加大学・学生の募集時期は、平成27年度の九州大学
Webサイト
http://bizapp.enpit.jp/
PEARLは、基本コース、発展コース、いずれも2月から短期集中
問い合わせ先
筑波大学大学院システム情報工学研究科
合宿(スプリングスクール、4~5月)開始前までである。平成27
コンピュータサイエンス専攻事務室enPiT担当
年度の名古屋大学OJLへの受講生の募集時期は、基本コース
TEL ▶ 029-853-4991
は5月~6月に、発展コースは平成27年1月~2月である。
E-mail ▶ [email protected]
Webサイト
http://emb.enpit.jp/
問い合わせ先
九州大学 PEARL
産業技術大学院大学
TEL ▶ 092-802-3864
産業技術大学院大学内 enPiT事務局
E-mail ▶ [email protected]
TEL ▶ 03-3472-7833
E-mail ▶ [email protected]
名古屋大学 OJL
TEL ▶ 052-789-4228
公立はこだて未来大学
E-mail ▶ [email protected]
公立はこだて未来大学内 enPiT事務局
TEL ▶ 0138-34-6411
E-mail ▶ [email protected]
enPiT ANNUAL REPORT 2014
15
1 . 11 今年度の総括
enPiTは、平成24年度より事業を開始し、本年度は、第二期
生を輩出した。
題の指導、発表会でのコメント、さらに本事業全体への助言
各分野では、平成25年度に実施した結果得られた知見や
など、多岐にわたり非常に多くのご支援を引き続きいただい
受講生・教員、並びに、外部評価委員会等からのコメントに基
ている。
このような支援は、本事業を継続的に、また、効果的
づき、教育プログラムの改善を進め、
より洗練された授業、演
に進めるためには不可欠であったと思われる。
習、PBL等を行い、多くの学生に対して、実践的な情報教育を
実施できた。
来年度以降も引き続き、学生数を増やして、最終目標の400
名に近づける予定である。そのためには、今まで参加がな
当初計画では、4分野合計280名の学生の育成を目標とし
かった大学に対しても、積極的に情報提供を行い、enPiTの魅
ていたが、460名を超える修了者を輩出することができた。
ま
力を理解してもらって、学生参加を促していく予定である。平
た、
これらの学生のうち、106名を15連携大学以外のいわゆ
成25年度に比べて、情報技術の利活用を行ういわゆるユー
る参加大学の学生とする目標が、実際は、170名を超える参加
ザー企業の参画も増えてきているが、今後もより多く参画して
大学の学生を育成することができた。また、
これら参加大学
いただき、ユーザーの視点でシステムやアプリケーション開
は81校、そしていろいろ協力をいただいている企業や組織は
発が行える人材の育成を推進したい。
107にもなっており、平成25年度よりも大幅に増加している。
また、今年度は、いわゆるハイブリッド人材(非情報系知識
さらに、今年度からは4分野間の連携として、分野横断講義
や人文系知識を背景として持つ人材)に対する実践的情報教
やカリキュラム関係資料の蓄積整備を進めた。分野横断講義
育の試行も行った。近年求められている、さまざまな分野に
としては、ロジカルシンキングやファシリテーション等の分野
おいて情報技術を利用したイノベーションを起こすことがで
共通として必要な汎用的内容の講義や特任教員によって提
きる人材の育成に応えるためのものである。来年度も、ハイ
供される各分野の特色ある講義を提供している。
ブリッド人材に対する教育を進めていく予定である。
このように順調に事業を進めることができているのは、各
現在、本年度enPiTを修了した学生にとっては、その後の進
大学の先生方のご尽力によるものが非常に大きい。特に若
路を考える重要な時期になっている。修了生のその後の活躍
手の特任教員が中心になって、積極的に広報し、授業、演習、
は、enPiTの大きな成果指標である。その就職活動にenPiTの
PBLの設計を行って、実際にそれらを主導して学生を牽引し
ブランドが有効に働くことを強く期待する。
ていった。学生もそれらの教育に手ごたえを感じており、
アン
ケート等では、満足度が非常に高い。
16
また、企業や外部団体の方々からは、非常勤講師や演習課
enPiT ANNUAL REPORT 2014
最後に、enPiTに関わりご協力いただいた大学、企業、組織
団体の方々、そして文部科学省に深く感謝する。
A N N U A L
R E P O R T
2 0 1 4
第2章
実践教育の取り組み状況
クラウドコンピューティング分野
2 .1
2 .1 .1
取り組みの概要
れ実施した。
育成目標は、最終年度で100名(うち30名は連携大学以外
クラウドコンピューティング分野は、いわゆるビッグデータ
の学生)であり、東日本、西日本でそれぞれ50名(うち30名は
の分析手法、新しいビジネス分野の創出といった社会の具体
連携大学以外の学生)
である。平成26年度は、修了生数143名
的な課題を、
クラウド技術を活用し解決できる人材の育成を
目標としている。
(うち51名が参加大学)
であった。
また、分野内で教材作成やFD等のワークショップを開催
その目標を実現するために、本分野の連携大学である大
し、
クラウドコンピューティングに関する教育の普及を目指す
阪大学、東京大学、東京工業大学、神戸大学、九州工業大学
とともに、本分野で開発するクラウドコンピューティングに関
では、具体的な育成ポリシーとして、
「クラウド技術を理解し、
する教材コンテンツは、連携諸機関を通じて、広く一般に公開
必要なスキルと知識について他者と議論し、実際のクラウド
して、利用の促進を目指す。
環境を用いて大規模な処理や効率の良い処理を提供するア
プリケーション・情報システム開発ができる人材育成」を目指
す。
2 .1 . 2
学習・教育目標
具体的には、
クラウドコンピューティング技術やプロジェク
2.1.1節で述べた通り、本分野では「いわゆるビッグデータ
トマネジメント等の実践的なソフトウェア開発技術を有する
の分析手法、新しいビジネス分野の創出といった社会の具
連携企業の専門家、
ソフトウェア工学の分野において最新の
体的な課題を、
クラウド技術を活用し解決できる人材」の育
研究を進めている連携大学、参加大学の専門家の力を結集
成を目標としている。
この目標を実現するために、基礎知識
することにより、
クラウドコンピューティング、プロジェクトマ
学習、短期集中合宿、分散PBLでは、下記のような方針でカリ
ネジメント、
ソフトウェア工学について教育・修得すべき内容
キュラムを設計している。
を体系的・実践的に取り込んだ教育プログラムを構築した。
また、本教育プログラムでは、情報技術を利活用して新しい
(1)基礎知識学習
ものやサービスを生み出すという視点も重視されていること
受講生がクラウド技術を理解し、必要なスキルと知識につ
を鑑み、企業の実務家講師によるクラウドシステムの事例を
いて他者と議論し、実際のIaaS環境を用いて大規模な処理や
ビジネス面を含め紹介する講義やクラウドシステムの利活用
効率の良い処理を提供するアプリケーション・情報システム
をする際に必須な知識として、
ロジカルシンキングやクリエイ
開発の準備ができるようになることを目的として、次のような
ティブシンキング等の演習を重視した。
項目を学習する。
クラウド概要とデスクトップ仮想化技術、
ク
本プロジェクトのフレームワークである基礎知識学習、短
ラウドソフトウェア開発プロセス、
ファシリテーションスキル、
期集中合宿、分散PBLの3つの内容に従った教育が博士前期
要求分析、UML、プレゼンテーションスキル、SQLとNoSQL、
課程の1年間で実施できるように教育プログラムを設計し
Webアプリケーション開発、
ソフトウェアテスト、IaaS概要、
ク
た。基礎知識学習では、短期集中合宿を行う上で必要となる
ラウドアプリケーション開発支援環境。
クラウドコンピューティング、
プロジェクトマネジメント、
ソフ
トウェア開発に関する技術を習得し、短期集中合宿では複数
18
(2)短期集中合宿
の学生がチームを組み、
アプリケーション開発のPBLやクラウ
チーム開発を行う上で必要となる、
プロジェクトマネジメン
ドコンピューティングに関する応用技術を学ぶ。最後に、分
ト、
ソフトウェア開発技術を学んだ上で、
クラウド環境を利用
散PBLにおいて、
クラウドならではの特徴を備えたアプリケー
したアプリケーション開発を複数人から構成されるチームで
ションの開発、
クラウドを利用したビジネスモデル提案等を
実施する。また、負荷分散、大規模データ処理等、
クラウドに
行う。なお、短期集中合宿は、東日本(東京大学、東京工業大
関する発展的な内容やクラウドコンピューティングに関する
学)
と西日本(大阪大学、神戸大学、九州工業大学)でそれぞ
最新事例についても学ぶ。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
(3)分散PBL
(3)分散PBL
基礎知識学習、短期集中合宿で得た知識をもとに、チーム
基礎知識、短期集中合宿で得た知識をもとに、チームで下
でアプリケーション・情報システムの分散開発、
クラウドを利
記3課題を行う。
用したビジネスモデル提案等を実施する。
●大規模POSデータを分析し、
コンビニの販売戦略を立案
カリキュラムを通して、国立情報学研究所のedu bas e
●クラウドを利用したビジネス創出
用する。
分野全体としての達成目標は、最終年度で、育成学生数
クラウド開発基礎、
クラウド開発演習(1学期分)が基礎知
100名(うち連携大学以外の学生数30名)、参加大学数10校、
識学習に、
クラウド基礎PBLとクラウド開発応用が短期集中合
FDへの参加教員数20名である。
宿に、
クラウド発展PBLとクラウド開発演習(2学期分)が分散
PBLに、それぞれ対応する。
2 .1 . 3
教育内容
授業は、主に大阪大学中之島センターで隔週に行う。
2.1.2節で述べた学習・教育目標に基づいて、各連携大学で
実施したカリキュラムについて述べる。
表2.1.1
大阪大学/神戸大学
教育プログラム名称をCloud Spiral(Cloud Specialist
Program Initiative for Reality-based Advanced Learning)
と
名付け、教育コースを大阪大学で立ち上げ、神戸大学、参加
大学の教員、連携企業と協働して実施する。
また、短期集中合
オリエンテーション
クラウドの定義および仮想化技術
クラウド環境を用いた開発(企業の事例)
4月25日
ファシリテーションスキル
5月9日
5月23日
6月13日
6月27日
(1)基礎知識学習
7月11日
いて他者と議論し、実際のIaaS環境を用いて大規模な処理や
効率の良い処理を提供するアプリケーション・情報システム
開発の準備ができるようになることを目的として、下記のよう
UMLを用いたユースケース駆動開発
UMLを用いたユースケース駆動開発
SQLとNoSQL
Webアプリケーション開発
~JavaScript、DWR、Java、MongoDB~
Webアプリケーション開発
~JavaScript、DWR、Java、MongoDB~
ソフトウェアテスト、
レビュー
実施した教育プログラムのスケジュールを表2.1.1に示す。
受講生がクラウド技術を理解し、必要なスキルと知識につ
プレゼンテーションスキル
SQLとNoSQL
5月30日
●クラウド発展PBL(2学期、2単位)
●クラウド開発演習(通年、2単位)
7月25日
ソフトウェアテスト、
レビュー
Scrumとチケット駆動開発
Scrumとチケット駆動開発実践(PBL)
ソフトウェアプロセスおよび仕様書の読み方
継続チーム開発手法
Scrumに基づく継続的チーム開発演習
8月19日
Webアプリケーション開発
ル、要求分析、UML、Scrum、チケット駆動開発とプロジェクト
8月20日
Webアプリケーション開発
管理、
プレゼンテーションスキル、SQLとNoSQL、Webアプリ
8月21日
Webアプリケーション開発
ケーション開発、
ソフトウェアテスト、IaaS概要とCloudStack、
8月22日
開発全体の振り返り
クラウドアプリケーション開発支援環境。
9月1日
クラウドのこころ、
スケーリング
9月2日
クラウドを利用した大規模データ処理
9月3日
クラウド活用のためのモバイルWebアプリ構築
9月4日
クラウドを活用したビジネス創出
クラウドソフトウェア開発プロセス、ファシリテーションスキ
(2)短期集中合宿
複数人でチームを組み、
アプリケーション・情報システムを
クラウド上で実装する。
また、分散PBLで使うモバイル用Web
アプリケーション、Hadoop/MapReduceを用いたビッグデー
タ処理等について学ぶ。
10月〜11月
12月5日
ビッグデータに基づく戦略立案・意思決定、モバイ
ルファーストの実践、
クラウドビジネス創出
最終成果報告会
分散PBL
Webアプリケーション開発準備
短期集中合宿
8月18日
な項目を学習する。
クラウド概要とデスクトップ仮想化技術、
対応
基礎知識学習
●クラウド開発応用(1学期、1単位)
講義内容
4月18日
●クラウド開発基礎(1学期、2単位)
●クラウド基礎PBL(1学期、1単位)
平成26年度Cloud Spiralスケジュール
日程
宿は九州工業大学の受講生も参加した。
コースは下記5科目で構成される。
第2章 実践教育の取り組み状況
Cloudや連携大学で導入したプライベートクラウド環境を利
●モバイルサイト用のWebクライアント開発
enPiT ANNUAL REPORT 2014
19
東京大学
クラウド教育コースは次の7科目で構成される。
社会の中の問題点や課題を自ら発見し、それを解決するクラ
ウドソフトウェア・サービスを自ら考案・提案し、実現するPBL
(Problem/Project-Based Learning)型講義を通じて、複数
人のチームで、プロジェクト体制および目標の設定、実施計
●クラウドコンピューティング基礎論
クラウドコンピューティングに必要な基礎的な知識につい
て解説する。データセンターネットワークに起因する問題を
画、
プロジェクトの実施を行うことで、通常の講義や実験では
得られない実践的な力を身に付ける。冬学期、合計30時間の
演習。
とりあげ、原因特定までのアプローチ、解決方法について実
用・学術両面から解説するとともに、演習を通じてデータセン
ターにおける問題を体得する。夏学期週1回、合計30時間の
講義。
●短期集中合宿
ペアプログラミングによる開発を実践的な演習を通じて
学ぶことを目的に短期集中合宿を実施した。合宿は夏季およ
び冬季の2回実施し、夏季は東京工業大学と共同で実施した。
●クラウド基盤ソフトウェア
(東京工業大学の項を参照)
クラウドに代表される今日の情報システムの基盤技術のひ
冬季合宿は企業インターンなどで夏季合宿の参加が困難
とつとして仮想マシンの原理、実装技術を学ぶ。2種類の仮
な学生に配慮して実施しているものである。合宿ではスマー
想マシン、すなわちハードウェア全体の仮想化、JavaやRuby
トホンの位置情報APIを活用するアプリケーションの課題を
のようなプログラミング言語の実行基盤としての仮想機械に
与え、解決すべき問題の発見・アプケーション設計・実装を通
ついて取りあげる。夏学期週1回、合計30時間の講義。
じて通常の講義や演習では得られない実践的な力を身につ
けることを目標としている。2泊3日の合宿および事前講義、合
●クラウド基盤構築
計16時間の演習。
Linuxとオープンソースソフトウェア
(OpenStack)を利用し
た、IaaS(Infrastructure as a Service)
クラウド基盤構築技術を
講義する。前提となるサーバ/ネットワーク技術について基
東京工業大学
礎的な解説と演習を実施した上で、実際のクラウド環境の構
表2.1.2に今年度のスケジュールを示す。
築へと進む。技術要素を根本から理解し、要求に応じた最適
教育プログラム名を
「Cloud Bauhaus」
とし、学術的知識、工
なクラウドのアーキテクチャを選択・構築する能力を獲得す
学的技術、産業人的視点の獲得を狙いとした、基礎科目群(5
ることを目標とする。夏学期週1回、合計30時間の講義。
科目)、基盤ソフトウェア科目群(5科目)、
ソフトウェア工学科
目群(5科目)、
ソフトウェア開発科目群(13科目)を実施。本事
●分散システム基礎とクラウドでの活用
クラウドによるPBLの前提となるクラウドAPIを扱う。本講義
とクラウドアプリケーション開発演習は国立情報学研究所で
実施される。夏休み期間の集中講義、合計15時間の講義。
業でのコース中のクラウド科目、分散PBLは以下の4科目であ
る。
●システム開発プロジェクト基礎
(前学期、2単位)
●システム開発プロジェクト・クラウド応用
●クラウドアプリケーション開発演習
Hadoopプラットフォーム上でMapReduce等を用いて大規
模データの分散処理を行うアプリケーション開発のグループ
演習。
「プログラミングコンテスト」形式で、
グループ間で競い
合う。企業から講演・審査員等で協力を受ける。夏休み期間中
の集中講義、合計30時間。
●クラウドを創るPBL(ソフトウェア・クラウド開発実践Ⅰ)
部品レベルからクラウド構築を行い、受講生がグループを
作り、
クラスタコンピュータの製作、基盤ソフトウェアの実装、
クラウド管理ソフトウェアの実装から、相互結合用のスイッチ
設定、セキュリティ設定までを学ぶ。夏学期、週1回の講義。合
計30時間。
●クラウド実践道場(ソフトウェア・クラウド開発実践Ⅱ)
4〜7名のグループでクラウドアプリケーションを開発する。
20
enPiT ANNUAL REPORT 2014
(後学期、2単位)
●分散システム基礎とクラウドでの活用
(前期、夏季短期集中合宿、1単位)
●クラウドアプリケーション開発演習
(前期、夏季短期集中合宿、2単位)
表2.1.2
前期
平成26年度Cloud Bauhausスケジュール
基礎知識学習
プレ合宿(9月16日〜22日)
夏休み 夏季合宿(9月24日〜26日)
ポスト合宿(9月29日〜30日)
後期
春休み
基礎知識学習
分散PBL
システム開発プロジェクト
基礎
分散PBL
(前期フォローアップ)
分散PBL
システム開発プロジェクト
クラウド応用
冬合宿(2月18日〜20日)
グローバル開発演習(2月16日〜19日、23日)
このうち、2.1.2節で述べた方針に従うと次の内容となる。
研究所が構築、運用している教育用クラウドを演習用環境と
して活用し、実際の事例を中心とした題材を活用することで、
(1)基礎知識学習
ソフトウェア開発に必要なソフトウェア工学技術を学習
するとともに、
クラウド技術の基礎、活用法を学習する。具体
受講生は、実践的な分散処理アプリケーション開発を体験し
た。その具体的な内容は次の通りである。
●クラウドアプリケーション開発演習
9月16日~22日 2単位(東京工業大学と電気通信大学の
グ言語、実装技術、テストデバッグ技法、検証技術、Webコン
み)
ピューティング、分散処理技術、Hadoop、ビッグデータの分散
Hadoop、MapReduceなどのクラウドコンピューティング
処理技術。
これらを含む科目は、当大学および国立情報学研
国立情報学研究所で開催、東京工業大学、東京大学、電気
究所で開講する。
通信大学、早稲田大学、慶応義塾大学、筑波大学、奈良先端
分散PBLを含めて、科目は次のような群に分類されている。
●基礎科目群
プログラム理論、並行システム論、ソフトウェア論理学、分
散アルゴリズム論、計算機アーキテクチャ特論
●基盤ソフトウェア科目群
オペレーティングシステム特論、ハイパフォーマンスコ
科学技術大学院大学、広島市立大学、東海大学、総合研究
大学院大学から受講
●分散システム基礎とクラウドでの活用
9月29日~30日 1単位
第2章 実践教育の取り組み状況
的には次の項目を学習する。要求分析、設計、プログラミン
信頼性やリソース配分などを考慮した分散システムの構築
法
ンピューティング、分散システム構成論、実践的並列コン
ピューティング、
クラウドコンピューティングと並列処理
●ソフトウェア工学科目群
また、夏合宿では、超上流に焦点をあて、ペルソナを用い
た要求分析を実施、ユーザ企業に対し、デモを交えたシステ
ソフトウェア設計論、情報セキュリティ特論、
ソフトウェア工
ム提案を行った。使用した方法論は、実際に企業で使用され
学特論、プログラミング特論、ソフトウェアプロジェクトマ
ているExテーブル法で、株式会社日立製作所から実践者を講
ネージメントと品質管理
師として招へいし、手法の講義やチーム指導も担当教員と協
●ソフトウェア開発科目群
力して行ってもらった。さらに、企業講演(ギルドワークス株
ソフトウェア開発演習、システム検証基礎演習、システム開
式会社、サイボウズ株式会社)、先輩交流も実施、大量データ
発プロジェクト基礎、
システム開発プロジェクト・クラウド応
を扱う先端技術並びにコンピュータサービス提供者としての
用、
ソフトウェアテスト演習、他情報理工学インターンシッ
心構えを学習した。東京大学および参加大学からの受講生と
プ等
の混成チームを編成し、チームビルディングおよびコミュニ
ケーションスキルを習得した。ユーザ企業である株式会社四
(2)短期集中合宿
クラウド技術の実践法に焦点をあて、演習を通して実践
季の自然舎から成果物およびプレゼンテーションについて評
価を行ってもらい、学生へのフィードバックを行った。
的な大規模データの分散処理技術を習得した。短期集中合
なお、2月には、
クラウド実装に焦点をあてた冬合宿を東京
宿には、国立情報学研究所で行ったものと、三浦海岸で行っ
大学と合同で実施した。夏合宿の様子を図2.1.3、図2.1.4に示
たものとがある。国立情報学研究所では、三浦海岸での合宿
す。
(以下、夏合宿)に必要な知識や技術を事前に収集して教え
込むプレ合宿と、終了後に学生の演習体験で得た知識やそ
(3)分散PBL
の技術を再整理させたり、
より高度な知識を教え込んだりす
基礎知識学習、短期集中合宿で得た知識を応用し、チーム
るポスト合宿がある。
プレ合宿・ポスト合宿では、国立情報学
でアプリケーション・情報システムを分散開発した。分散PBL
図2.1.3
ユーザニーズを検討(東京工業大学夏合宿)
図2.1.4
優勝チームの表彰(東京工業大学夏合宿)
enPiT ANNUAL REPORT 2014
21
に相当する科目は、
「システム開発プロジェクト基礎」、
「シス
ただいた。成果発表会と成果展覧会の模様はUstreamで配信
テム開発プロジェクト・クラウド応用」であり、
「システム開発
し、来場できない人にも様子がわかるようにした。成果発表
プロジェクト基礎」は後期より開始される「システム開発プロ
会で13名、成果展覧会で7名が視聴していた。図2.1.5、図2.1.6
ジェクト・クラウド応用」に必要な知識や技術、
プロジェクト運
に成果展覧会の様子を示す。
営のノウハウを身に付ける前段階的な内容で、システム開発
に必要なソフトウェア工学の基礎に関してプロジェクト開発
1月14日、21日に開発プロセスを振り返って自己評価を行う
を通して習得することを目的とする。両科目では、受講生は
個人発表会を開催し、サイボウズ株式会社、株式会社アカリ
チームを組み、要求分析、
プロジェクトの計画、設計、実装、テ
ク、株式会社SEプラスといった企業参加者より講評をいただ
スト、
ドキュメント作成など、総合的な指導を受けつつ、系統
いたり、講演も行ってもらったりした。
的なソフトウェア開発の実践面への適用を習得した。
「システ
なお、2月にグローバル開発演習として、留学生と日本人学
ム開発プロジェクト・クラウド応用」は、
システム開発に必要な
生の英語による混成ミニPBLを実施した。学生は、
クラウドシ
ソフトウェア工学の応用に関してプロジェクト開発を通して
ステムの社会的価値に焦点をあて、ビジネスダイナミクスと
習得することを目的とする。
「システム開発プロジェクト基礎」
ソフトウェアライフサイクルについてPBLを活用しながら学
と同様に、学生はチームを組み、総合的な指導を受けつつ、
んだ。分散PBL参加の学生にも参加してもらい、彼らの成果物
系統的なソフトウェア開発の実践面への適用を習得した。両
をユーザ要件と開発プロセスの観点から分析し、システムの
科目を通じて、特にシステムの社会的価値について深く議論
サービス価値について討議、発表を行った。途中、
日本ヒュー
することで、ユーザ視点とシステムのあり方を習得した。実施
レット・パッカード株式会社からの企業講演を行い、
グローバ
中、株式会社日立製作所、株式会社NTTデータ経営研究所か
ル企業が行っているソフトウェア開発の様子を学生は知るこ
らの企業講演を行い、7月23日中間発表、11月19日成果物発
とができた。
表会(デモを含む)を経て、12月16日〜17日の2日間、内田洋
行ユビキタス協創広場で成果展覧会を開催、開発プロセスと
開発システムについて展示とプレゼンテーションを実施、56名
九州工業大学
(うち24名が企業)の来場者があり、有意義なフィードバック
教育プログラムをCloud Q9(Qは九州、9は野球のチーム
を得た。企業の来場者からは実践的な内容であると評価をい
ワークの象徴であるナインを表す)
と名付け、九州工業大学
において教育コースを設ける。短期集中合宿は、大阪大学・
図2.1.5
成果展覧会での発表の様子(東京工業大学)
神戸大学によるCloud Spiralに合流して実施する。
コースは以下のように3段階6科目で構成される。
(1)基礎知識学習
●クラウド開発型プロジェクト
(前期、3単位)
システム開発プロセス、システムモデリング、Scrumとチ
ケット駆動開発、Webアプリケーション技術など、
クラウド上
でのシステム開発に必要な知識とスキルを講義と演習で学
ぶ。
●OSと仮想化特論(前期、2単位)
仮想マシンの作成やカーネル再構築、
システムコールの作
図2.1.6
成果展覧会での開発アプリのデモ風景(東京工業大学)
成、
カーネルモジュールの作成や仮想マシンの操作に至るま
で、
クラウドに係るOSと仮想化の原理を講義と演習で学ぶ。
●プロジェクトマネジメント特論(前期集中、2単位)
プロジェクトマネジメントの手法について、要求分析や
WBSから各種マネジメント技法、
さらにはクリティカルチェー
ンプロジェクトマネジメント手法に至るまでを講義と演習で
学ぶ。
なお、
これら3科目によって、Cloud Spiral(大阪大学・神戸
大学)の前期で行われている基礎知識学習とほぼ同様の内
容をカバーしており、夏季の短期集中合宿での合同実施を可
22
enPiT ANNUAL REPORT 2014
能にしている。
ント、株式会社リクルートホールディングス、株式会社富士通
研究所、
グーグル株式会社、株式会社ディー・エヌ・エー、株
(2)短期集中合宿
式会社ブレインパッド、バンプレコーダー株式会社が参画し
●クラウド基礎PBL(前期(夏期集中、大阪大学開講)
、1単位)
た。情報理工学系研究科6専攻の教員で構成される運営委員
●クラウド開発応用(前期(夏期集中、大阪大学開講)
、1単位)
会を開催した。
本学では学生のセキュリティ分野の受講意欲が高いことか
同で実施しており、内容、実施期間とも、Cloud Spiralのものと
ら、平成25年度よりセキュリティ分野の受講説明会を4月に開
同一である。
催している。それに加えて平成26年度は情報セキュリティ大
学院大学との単位互換を本格的に開始した。
これによって20
名弱の学生の修了単位が認定できる見込みである。
(3)分散PBL
●クラウド発展プロジェクト
(後期、3単位)
基礎知識学習、短期集中合宿で得た知識をもとに、以下の
形式で分散PBLを実施する。一部の学生はCloud Spiralの分
東京工業大学
散PBLに合流し、発表会まで含めた完全な形で参加する。そ
実施研究科である情報理工学研究科のうち、計算工学専
れ以外の学生は、Cloud Q9独自のPBLとして、
クラウドの特徴
攻と数理計算科学専攻の専任教員8名と特任教員2名で運営
を活かしたシステム
(サービス)
をチーム開発する。
委員会を構成し、カリキュラムや実施状況のチェックや改善
Cloud Q9独自のPBLについても、産業界等の協力を得つ
つ、発表会を実施する。
第2章 実践教育の取り組み状況
これらの2科目は、Cloud Spiral(大阪大学/神戸大学)
と合
を検討した。運営委員会は毎月1回、計11回開催した。教育の
実施状況は表2.1.2の通りである。短期集中合宿では、3名の
教員からなる合宿WGを組織し、担当教員で内容を検討し、実
2 .1 . 4
実施体制
クラウドコンピューティング分野運営委員会を、各連携大
施した。特に夏合宿、冬合宿は、東京大学との共同開催であ
るため、東京大学の担当WGと内容を協議検討した。参加大
学は早稲田大学、電気通信大学、東京電機大学、東海大学、
学の代表者から構成した。運営委員会では、教育プログラム
明治大学、慶応義塾大学、筑波大学、奈良先端科学技術大学
の内容、参加大学・連携企業の勧誘、修了認定方法、短期集
院大学、広島市立大学、総合研究大学院大学であり、先方教
中合宿の実施等について議論した。平成26年度は4回実施し
員とは夏合宿について情報や意見交換を行っていった。連携
た。
以下、各教育プログラムの実施体制についてまとめる。
企業・団体としての参画は株式会社NTTデータ、新日鉄住金ソ
リューションズ株式会社、株式会社フォーマルテック、日本マ
イクロソフト株式会社、国立情報学研究所、株式会社四季の
大阪大学/神戸大学
連携大学である大阪大学、神戸大学の教員と参加大学、連
携企業の実務家教員が中心となり、表2.1.1に示したプログラ
自然舎、株式会社リコー、株式会社野村総合研究所、株式会
社ソニックガーデンで、非常勤講師の派遣、合宿・成果報告会
での講演や学生の作品・活動の評価、教育内容の助言などで
ある。
ムを実施した。参加大学として、奈良先端科学技術大学院大
企業からの分散PBL、夏合宿での講演者の選定、その講演
学、和歌山大学、高知工科大学、大阪工業大学、京都産業大
内容については、企業とつながりの深い特任教員を中心に策
学、立命館大学、兵庫県立大学、近畿大学が参画した。また、
定し、運営委員会で検討した。結果的に、学生には企業の経
連携企業として、株式会社NTTデータ、株式会社オージス総
営管理から最先端の実践的クラウド技術まで、幅広い情報や
研、株式会社日立製作所、株式会社日立ソリューションズ、株
知識が提供できた。
式会社日立インフォメーションアカデミー、西日本電信電話
株式会社、ヤフー株式会社、株式会社コネクトドット、三井住
友信託銀行株式会社、三菱電機株式会社が参画した。
上記、連携大学、参加大学、連携企業の代表者からなる
Cloud Spiral運営委員会を5回開催した。
東京大学
東京大学13名、および国立情報学研究所3名、連携企業か
らの教員でプログラムを実施した。また、連携企業として、株
式会社ピコラボ、
レッドハット株式会社、株式会社SEプラス、
楽天株式会社、ヤフー株式会社、株式会社サイバーエージェ
enPiT ANNUAL REPORT 2014
23
九州工業大学
本年度は、勧誘を行ったものの他大学の参加が得られず、
連携大学である九州工業大学の教員、Cloud Spiralの連携大
2 .1 . 5
教育実績
大阪大学/神戸大学
学・参加大学の教員、および連携企業の実務家教員が教育を
連携大学・参加大学から41名の博士前期課程1年生が受講
担当した。連携企業として、株式会社ドリコム、日本オラクル
し、全員修了した。41名の内訳は、大阪大学12名、神戸大学8
株式会社、株式会社セールスフォース・ドットコム、Heroku,
名、奈良先端科学技術大学院大学4名、和歌山大学5名、高知
Inc.、株式会社ジュントス、株式会社日立システムズ、株式会
工科大学3名、大阪工業大学2名、京都産業大学3名、立命館
社ハウインターナショナルが参画した(図2.1.7)。今年度は特
大学4名である。また、九州工業大学から短期集中合宿に13
に、Cloud Spiralとの連携のため、頻繁に打ち合わせを行っ
名が、分散PBLに4名が、それぞれ参加した(図2.1.8)
。
た。
また、国際会議SNPD2014(15th IEEE/ACIS International
Conference on Software Engineering, Artificial Intelligenc,
図2.1.7
連携企業の実務家講師による授業
Networking and Parallel/Distributed Computing, 2014年7月
(米国開催))にてスペシャルセッションを企画し、
クラウド教
育、
ソフトウェア工学教育に関する研究発表、意見交換を行っ
た。
さらに、短期集中合宿の一環として、平成26年10月31日に
下記の内容で、
クラウドスパイラルセミナーを実施し、109名
の参加があった(図2.1.9)。
ハイブリッド人材の育成準備として、1名の非情報系学生を
受け入れた。
プログラミング等についての基礎知識をそなえ
ていたこともあり、特に問題無く修了できた。来年度は文科系
学生の受け入れに向けて調整中である。
enPiTクラウドスパイラル公開セミナー
図2.1.8
西日本短期集中合宿の様子
~企業におけるクラウドの取り組みや実践例~
開催日時
場所
平成26年10月31日 13:00~17:30
大阪大学中之島センター10F
佐治敬三メモリアルホール
[プログラム]
第1部 Emerging Cloud Platform / Services
13:00 Googleを支えるグローバル基盤とそのクラウド活用について
塩入賢治(グーグル株式会社)
13:30 学術・研究分野におけるアマゾン ウェブ サービス最新事例ご
紹介 吉荒 祐一(アマゾンデータサービスジャパン)
14:00 クラウドとのつきあいかた 山野裕司(株式会社 オージス総
研)
図2.1.9
セミナーの様子
第2部 Creating Values with Cloud
14:50 Big-Data and Machine Learning at Yahoo: Use Cases and
Technologies Andy Feng(Yahoo Inc., USA)
15:20 クラウドプラットフォームの最前線: 機械学習、Internet of
Things、モバイル 馬田隆明(Microsoft Ventures)
15:50 エンタープライズシステム開発におけるクラウド活用のご紹介
丹羽隆(株式会社NTTデータ)
16:20 オープンディスカッション(パネル型式)
中村匡秀(司会、神戸大学)+6名の講演者
24
enPiT ANNUAL REPORT 2014
東京大学
九州工業大学
本年度は、14名の博士前期課程1・2年生がコースを受講
グラムを受講し、27名が修了した。前半(夏学期)分のPBLの
し、13名が修了した(図2.1.10)。分散PBLにおいて、3名の学生
受講/修了者は69名であり、最終的には半数弱の受講者が
はCloud SpiralのPBLに参加した。残りの学生は2チームに分
PBLを修了している。
かれ、それぞれ下記テーマでのPBLを行った。
夏季集中講義・合宿は国立情報学研究所、東京工業大学と
共同で実施した。夏季集中合宿には本学から3名が参加、全
員が修了した。参加希望者からは企業インターンとの重複を
理由とする辞退が多く見られる。
(1)Inst: 複数のクラウドストレージサービスを統合した大容
量ストレージサービス
(2)m ultiPaaS: 複数のPaaSを統合して目的に最適化した
PaaSを実現するサービス
冬季集中合宿には5名が参加した。本学からの学生2名に
これらの 成 果 は 、1月2 3日に 、地 域 の I T 交 流 会で ある
加え、東京電機大学、早稲田大学(学部生)、東京工業大学か
e-ZUKA Tech Nightにおいて、e-ZUKA Tech Evening「Cloud
ら各1名が参加した。
Q9最終成果発表会」
として発表した。発表には、IT企業関係
者、他大学教員、他大学学生、本学のコース以外の学生等も
東京工業大学
東京工業大学および参加大学からは合計62名が参加し
第2章 実践教育の取り組み状況
情報理工学研究科(6専攻)の博士課程1年生を中心にプロ
参加した(図2.1.11)。
また、外部の学生、企業の技術者を対象に月1回程度、
クラ
た。本学からの修士1年の参加者は33名であり、
うち実施研究
ウド構築技術のワークショップを行うCloud Campを行った。
科以外の専攻から5名が参加しており、平成27年度には、修士
また昨年度の修了生がIPAの平成26年度「未踏IT人材発掘・
課程修了見込みである。参加大学からは、早稲田大学9名、電
育成事業」に応募し、採択されている。
気通信大学7名、東京電機大学2名、東海大学5名、明治大学1
名、慶応義塾大学1名、筑波大学2名、奈良先端科学技術大学
院大学1名、広島市立大学1名、総合研究大学院大学1名で合
計30名であり、
このうち、2名が修士2年、2名が学部4年であっ
た。夏合宿に限っても、参加大学は昨年の3校から5校、人数
図 2 . 1 . 1 0 「クラウド開発型プロジェクト」
の実習の様子
は昨年の7名から19名と大幅に増えている。
プレ合宿、ポスト
合宿については他大学との単位互換協定に基づいて参加大
学の学生に単位を出した。
ハイブリッド人材の育成準備として、経営工学専攻から3
名、材料工学専攻、知能システム科学専攻から各1名の合計5
名の非情報系学生を受け入れ、分散PBLを実施した。
Cloud Bauhausの受講生については、経営工学専攻から3
名、材料工学専攻、知能システム科学専攻から各1名を受け
入れ、分散PBLを実施した。必ずしも全員が分散PBLを修了
できたわけではないが、異分野の知識を持った学生を開発
チームに加えたことにより、ビジネスアイデアの検討時に新し
い視点が生まれたり、実ユーザを見つけてアプリを評価して
もらう行動力が加わったりしたなど効果があった。その反面、
図 2 . 1 . 1 1 Cloud Q9最終成果発表会の様子
学生間コミュニケーションで想定以上の問題が発生しチーム
運営に支障が生じ、情報系の学生に負荷がかかったなどの多
くの問題点もあった。最初の説明会やチームビルディングに
課題が残っている。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
25
2 .1 . 6
教員養成・FD活動
東京大学
教育プログラムで開講する授業への参加や教材作成・
●IaaS、SaaS、PaaSの3種類のクラウドサービスそれぞれにつ
FDWGの取り組みを通じて、教材作成のノウハウ、
クラウドコ
いて、構築からサービス提供までを取り扱う演習課題を開
ンピューティングに関する講義内容や演習方法、企業の実務
発した。
家教員による実践的内容を学ぶ仕組みを構築する。また、教
●グループ開発PBLに若手教員をメンターとして参加させ、
ソ
育内容についてのワークショップを実施し、連携大学・参加
フトウェア開発における実践教育の指導方法、教育手法の
大学教員と知見の共有を図る。最終的には、作成した教材を
習熟を進めている。複数のメンターが学生グループを指導
パッケージ化し、同等の内容を他大学でも実施できるような
するシステムとすることで、他の教員の指導手法に触れる
仕組みを作った上で、参加大学の教員が所属する大学で本
機会を提供している。
分野に関係する講義を立ち上げて、補助期間終了後も継続し
て教育が実施できることを目指す。
上記方針に基づいて、各連携大学では以下の取り組みを
行った。
大阪大学/神戸大学
●本学の平木教授が主査となっているFDWGがとりまとめ
た、講義・演習アンケートを実施した。
●夏合宿を東京工業大学と連携して行うことで、相互の大学
の講義内容の理解、異なる教育手法の習熟を行った。
東京工業大学
今年度は大阪大学/神戸大学の教員以外に9大学13名の
●夏合宿、成果報告会などで実施した企業の講演時には、教
参加大学教員と連携し、教材・演習開発および講義の実施を
員が参加するようにし、現場でのノウハウを吸収し、担当講
行った。講義は大阪大学/神戸大学の教員だけでなく、5名
義に反映するように指導している。
の参加大学教員が主体的に実施した。昨年度に続いて、株式
●夏合宿では、教員を参加させ、株式会社日立製作所からの
会社NTTデータ、株式会社オージス総研等複数の連携企業に
講師による実際の開発法の講義やチーム指導法を学ばせ
おける実務家教員が非常勤講師等として採用され、一部講
た。
義・演習を担当した。昨年度に実施された実務家教員による
●5月13日〜17日に教員2名をNEC Telecom Software
講義の一部については、今年度から大阪大学教員が参加大
Philippinesに派遣し、社長ら幹部とグローバル人材育成の
学教員と連携して引き継ぎを行い、大学教員による講義とし
議論を行ったとともに、同社で行っている社内研修の一部
て実施された。
(Software Development in Different Culture)へ参加させ
ワークショップや参加大学・連携大学教員との意見交換等
を合宿形式で2回、ビジネスアプリケーション分野や組込みシ
ステム分野など他分野連携大学との講義見学を通じた意見
た。
●独自のアンケートを学生に実施し、その結果に応じて改善
策を議論し、実施する体制をとっている。
交換を4回程度実施し、
ノウハウ、教育手法の共有および講義
内容の改善・評価を行った。教材開発においては講義資料・
演習資料だけでなく、他大学・他分野でも展開可能な教員向
九州工業大学
けマニュアルを含む整備を行った。今年度は実際にアジャイ
●本学の教員、他大学の教員、産業界からの教員が、同一の
ル開発に関する講義資料一式をenPiT Bizapp分野の筑波大
授業に参加することにより、FDを効果的に進めることがで
学に提供し、実施されている。
また、その他の講義についても複数の参加大学および連
携企業において利用されている。
きた。
●前期のクラウド開発プロジェクトを円滑に進めるため、反
転授業を試行した。予習用のビデオ教材を準備した。
●大学で独立してクラウド教育を進められるよう、
クラウドの
基礎を学べるクラウドシステムと教材のパッケージ(Cloud
Extra)の開発を進めている。
●分散PBL等で利用できるような、
クラウド特有のPBLの課
題・資料等のパッケージ化も進めている。
26
enPiT ANNUAL REPORT 2014
2 .1 . 7
来年度のイベント予定・募集情報
大阪大学/神戸大学
来年度も、表2.1.1に示す内容とほぼ同じスケジュールで、
東京工業大学
来年度も表2.1.2に示すスケジュールに準じて実施する予
定である。運営委員会も毎月実施する。今年度の企業講演
の学生のフィードバックをもとに、講演者と密接に連携し、
その内容について検討を行うとともに、今年度と同様のスケ
神戸大学の教員を中心として、参加大学、連携企業の非常勤
ジュールで実施する。今年度の経験をもとに教材作成を推進
講師・招聘教員が講義を行う。
するとともにFD活動をより推進する。
連携大学、参加大学、連携企業のメンバーから構成される
平成27年3月末より受講生募集を行う予定である。
Cloud Spiral運営委員会を4回開催する予定である。
また、教
材作成・FDWGを継続して実施し、
クラウドコンピューティン
問い合わせ先
グ分野内、分野間での情報交換、教材作成を実施し、教員養
東京工業大学内 Cloud Bauhaus事務局
成の活動を推進する。
E-mail ▶ [email protected]
平成27年3月末から4月初旬にかけて、受講生募集を行う
URL ▶ http://www.itpro.titech.ac.jp
第2章 実践教育の取り組み状況
実施する予定である。大阪大学で授業を開講し、大阪大学と
予定である。Cloud SpiralのWebサイト、連携大学・参加大学
内でのガイダンス等を通じて募集する。
問い合わせ先
九州工業大学
来年度も、本年とほぼ同じスケジュールで実施するが、内
大阪大学内 Cloud Spiral事務局
容については、連携企業からの意見等も積極的に取り入れ、
E-mail ▶ [email protected]
今年度の内容をさらに発展させるとともに、参加大学につい
URL ▶ http://cloud-spiral.enpit.jp/
ても募集を進めている。なお、来年度からは九州産業大学の
参加を予定している。
受講生募集については、既に平成26年9月24日に、大学院
東京大学
入学予定者学生に対する本コースの説明会を実施した。3月
平成27年度も、先に述べた平成26年度とほぼ同じスケ
ジュールで実施する予定である。演習・講義は東京大学、国立
末から4月初旬にかけて、
さらに説明会を実施し、受講生募集
を行う。
情報学研究所、連携企業の教員で行う。また、運営委員会は
年2回開催する予定である。
受講生募集は、平成27年4月に行う予定である。本学学
問い合わせ先
九州工業大学内 Cloud Q9事務局
生に向けては、新入生ガイダンス、およびクラウド実践道場
E-mail ▶ [email protected]
Webサイトを通じて募集する。参加大学内にむけてはそれぞ
URL ▶ http://www.iizuka.kyutech.ac.jp/graduate/cloud-q9
れの大学の教員を通じて募集を行う。
セキュリティ分野の受講希望者に対しては、本学の受講生
募集と同時期に募集・説明会を開催する予定である。
2 .1 . 8
まとめ
平成26年度はクラウドコンピューティング分野として、143
問い合わせ先
名が修了した。また、分野として5名のハイブリッド人材学生
東京大学内 enPiT事務局
を受け入れた。授業アンケートの結果、受講者からの評価は
E-mail ▶ [email protected]
非常に高く、来年度以降も内容を改善して、実施していく。
TEL ▶ 03-5841-4110
今後も参加大学(と参加大学からの受講生)や連携企業
(特に利活用企業)の勧誘を継続する。ハイブリッド人材学
生の受け入れも積極的に行う。短期集中合宿も東日本(東京
大学、東京工業大学)
と西日本(大阪大学、神戸大学、九州工
業大学)で継続して実施する予定である。成果報告会の共同
実施、一部の授業の相互交換等を分野内の連携として今後
検討していく。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
27
2.2
2 . 2 .1
セキュリティ分野
取り組みの概要
近年の社会生活、産業、行政のすべてにおいて、情報セキュ
リティの必要性は高まる一方である。一般市民への普及啓発
トと相談しながらシステム開発ができる人)
●幅広いIT利用企業(ユーザ企業)のIT部門において、セキュ
リティベンダーやセキュリティコンサルタントと協力して、
自社のセキュリティシステムを構築できる技術者
活動が重要であると同時に、高いセキュリティレベルを有す
●CIO、CISOといった組織のセキュリティ経営を担う経営者
る人材育成が必須である。
●IT技術者を育成する教育機関(大学、専門学校など)の教育
我が国では、次の3つの層のすべてにおいて人材育成が
者
急務である。最上位層においては、少数の世界的トップレベ
として期待される人材である。また、
このような人材育成は、
ルの人材(トップガン)を発掘すること、第2層においては、産
「IT技術+セキュリティ技術」
という意味でのマルチスペ
業界や学術分野で、セキュリティ技術開発や研究を進めるセ
シャリスト人材の育成を目指していると言える。
キュリティエキスパートを育成すること、第3層においては、今
実践セキュリティ人材の育成は、広く社会生活全般に関わ
回の事業が目指す、幅広いIT分野や組織運営においてセキュ
る産業、行政、教育の分野におけるリーダー的人材の厚みを
リティ実践力を持って社会や産業をリードする人材(実践セ
増すことにもつながる。その結果、我が国全体の安心・安全
キュリティ人材)
を育成することが求められている。
レベルの向上がもたらされる。また、実践セキュリティ人材
実践セキュリティ人材は、
●IT産業(製造系)において、セキュリティ要求レベルの高い
プロダクト開発に携わるIT技術者(セキュリティエキスパー
図2.2.1
は、その上位レベルにあたるセキュリティエキスパート人材
のベースであり、我が国のみならずグローバルに活躍するセ
キュリティエキスパート人材育成につながる。
幅広いセキュリティ人材ニーズに対応するカリキュラム
基礎知識学習
共通科目: 情報セキュリティ運用リテラシー
演習
先進科目
理論系 情報セキュリティ演習
理論系 最新情報セキュリティ理論と応用
技術系 セキュリティ基礎演習
技術系 情報セキュリティ技術特論
ネットワークセキュリティ検査と対策演習
Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習
デジタルフォレンジック演習
Capture The Flag(CTF)入門と実践演習
無線LANセキュリティ演習
システム攻撃・防御演習
システム侵入・解析演習
リスクマネジメント演習
インシデント体験演習
IT危機管理演習
ハードウェアセキュリティ演習
ネットワークセキュリティ実践
社会 インシデント対応とCSIRT基礎演習
科学系 組織経営とセキュリティマネジメント演習
事業継続マネジメント演習
28
基礎科目: 所属大学指定科目
enPiT ANNUAL REPORT 2014
先進ネットワークセキュリティ技術
社会 セキュア社会基盤論
科学系 情報セキュリティ法務経営論
その他の活動
セキュリティ分野シンポジウム
企業インターンシップ
交流ワークショップ
本取り組みは、5つの連携大学が協力して実践セキュリティ
の実践セキュリティ人材の育成を目指す。
さらに、今年度から
学部生や高等専門学校生を参加対象とする大学や高等専門
その育成ノウハウを、全国の大学(参加大学)に広める活動を
学校から5校が参加校として加わり、人材育成の裾野を広げ
進める。実践セキュリティ人材育成の枠組み自体を作り上げ
る活動を進めている。
この取り組みでは、“SecCap”と呼ぶ特
ることにより、実践セキュリティ人材育成のすそ野が広がり、
別の履修コースを設け、その修了認定である
「SecCap修了認
我が国全体が必要とする人材の育成体制を作り上げることが
定」
を学生が目指すことにより、履修学生の意識づけを高める
できると考える。
(2.2.3節参照)。
平成29年度以降において連携大学や参加大学が主体的に
2.2.2
人材育成を継続できるようにするために、本履修コースを指
学習・教育目標
導できる教員を育成することが必要である。本事業では、次
本事業を通して育成する実践セキュリティ人材は、実社
世代においてセキュリティ分野の教育プログラムを開発し牽
会における実業経験を重ねることにより、情報セキュリティ・
引するリーダー格教員を連携大学で各1名、そのリーダーの
エンジニア、情報セキュリティ・マネージャ等の情報セキュ
もと、教育プログラムを実施する教員または候補者を連携大
リティ実践リーダーとなるマルチタレント人材になること
学で各3~5名程度育成することを目指す。
この教員養成は、
を理想とする。
これらの人材は最高情報セキュリティ責任者
参加大学にも広げていく。
第2章 実践教育の取り組み状況
人材の育成コースを用意し、人材育成を進めるだけでなく、
(CISO:Chief Information Security Officer)および実際に
対策を立案し、その実行を指示する情報セキュリティ担当者
2.2.3
(CISO補佐)
としての活躍が期待される。
教育内容
本事業のセキュリティ分野では、5つの連携大学が中心と
セキュリティ分野では、5連携大学(情報セキュリティ大学
なり、平成25年度は65名、平成26年度は84名が修了認定を
院大学、東北大学、北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端
取得した。現時点で大学院修士コースの学生を参加対象とす
科学技術大学院大学、慶應義塾大学)が中心となり、社会・経
る参加大学は9校であり、順次、参加大学を拡大することによ
済活動の根幹に関わる情報資産および情報流通のセキュリ
り、最終の平成28年度は連携大学と参加大学にて100名程度
ティ対策を、技術面・管理面で牽引できる実践リーダーの育
図2.2.2
幅広いセキュリティ人材ニーズに対応するカリキュラム
基礎力
実践力
応用力
受講生が目指すキャリアパスに向けて、
技術系、理論系、社会科学系の実践演習を主体的に選択
春学期
共通科目(2単位)
(情報セキュリティ運用リテラシー)
夏休み期間中心
技術系
演習
技術系
演習
理論系
演習
秋学期
先進科目
(理論系)
or
+
基礎科目(2単位)
(所属大学指定科目から選択)
●情報セキュリティ演習
技術系
演習
技術系
演習
社会系
演習
成果報告
シンポジウム
先進科目
(技術系)
or
基礎科目(2単位)
(所属大学指定科目から選択)
技術系
演習
●セキュリティ基礎演習
●ネットワークセキュリティ検査と対策演習
●Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習
●デジタルフォレンジック演習
●Capture The Flag(CTF)入門と実践演習
社会系
演習
社会系
演習
●無線LANセキュリティ演習
●システム攻撃・防御演習
●システム侵入・解析演習
●リスクマネジメント演習
●インシデント体験演習
●IT危機管理演習
●ハードウェアセキュリティ演習
●ネットワークセキュリティ実践
先進科目
(社会科学系)
●インシデント対応とCSIRT基礎演習
●組織経営とセキュリティマネジメント演習
●事業継続マネジメント演習
enPiT ANNUAL REPORT 2014
29
成を目指す。
防御演習)」をパッケージ化し、他連携大学に提供した。ハー
5連携大学が共同で提供する実践セキュリティ人材育成
ドウェアセキュリティ演習は奈良先端科学技術大学院大学
コース(SecCapコース)
では、幅広いセキュリティ分野の最新
で、セキュリティPBL演習AおよびBは慶應義塾大学で、それぞ
技術や知識を具体的な体験を通して習得することができる。
れ各大学の教員が担当して実施された。
SecCapコースは、基礎力を高める共通科目、短期集中型演習
として実施する技術系、社会科学系、理論系の実践演習、およ
●入門演習の実施
び演習後にさらなる応用力を高める先進科目の組み合わせ
ハイブリッド人材育成に向けて、非情報理工系の学生(経
からなり、情報セキュリティにおける理論・技術・制度と法律・
営、経済、社会学など出身)向けの入門的演習を2コース開発
組織マネジメントをカバーできる「幅」
と、基礎知識・実践演
し、試行実施した。
習・応用知識に渡る
「深さ」
を備えている
(図2.2.1)
。
実践演習では、ハードウェアを対象としたもの、システムや
ソフトウェアを対象としたもの、企業組織のリスク管理を対象
としたものなど、バラエティに富んだ演習コースを用意して
2.2.4
実施体制
(1)
セキュリティ分野全体の実施体制(図2.2.4)
いる。受講生は、技術系、理論系、社会科学系の講義や実践
5連携大学が中心となり、特徴ある多彩な実践セキュリティ
演習・PBLから、それぞれが目指すキャリアパスに沿った割合
演習とその基礎力と応用力を高める科目からなる実践セ
で、主体的・自主的に調合した学習プログラムを作って受講
キュリティ人材育成コース(SecCapコース)を用意している。
することができる
(図2.2.2)
。
SecCapコースの科目や演習については、我が国のセキュリ
SecCapコースでは、基礎知識学習のための共通科目「情
ティ関連事業をリードする連携企業と共同で演習教材を開発
報セキュリティ運用リテラシー」
(必修科目)、各大学で開講さ
し、実際の講義や演習指導にも講師として参画いただくこと
れている既存の科目の中から選定した「所属大学指定科目」、
により、産業界や社会生活の現場で求められる実践セキュリ
実践演習(実践セキュリティ演習・PBL等)、および応用学習
ティ人材育成が可能なものになっている。また、学生のイン
のための先進科目(応用知識等)の所定単位を修了した学生
ターンシップの受け入れについても支援いただいている。
には、実践セキュリティ人材の入り口に立てたことを示す称号
「SecCap修了認定」
を与える
(図2.2.3)
。
平成26年度は、昨年度の実施状況を踏まえ、次のような取
り組みを行った。
(2)連携大学と参加大学
SecCapコースに向けて、平成24年度から5連携大学間で
の単位互換協定を締結している。
これにより、SecCapコース
として5大学が分担して開講する基礎知識学習、実践演習、応
●演習時間数の見直しと演習内容の充実
用学習の講義と演習を、相互に履修できる体制とした。特に、
例:I-02~I-08の時間数を倍にすることで、時間割に余裕を
コース認定の必修講義である共通科目は、昨年度より開講し
持たせ、
「対策」の実施を組み込む等、演習内容の充実と理解
ている奈良先端科学技術大学院大学と情報セキュリティ大学
度の向上を図った。
院大学に加え、平成26年度からは北陸先端科学技術大学院
大学でも開講し、それぞれ遠隔講義システムにて配信してい
●演習設備の他大学提供に向けたパッケージ化と小型化
東北大学の「ハードウェアセキュリティ演習」および奈良先
端科学技術大学院大学の「セキュリティPBL演習A(無線LAN
セキュリティ演習)」、
「セキュリティPBL演習B(システム攻撃・
る。他連携大学および参加大学の学生は、他科目の履修状況
に合わせて選択して受講できる。
参 加 大 学 に つ いては 、各 連 携 大 学 が ホスト役となり、
SecCapコースを参加大学の学生に提供する体制とした。ホ
スト役の連携大学は、適宜、参加大学と
(既存または新規の)
図2.2.3
SecCap修了認定
■SecCap修了認定(SecCap6)
共通科目
(2単位)+
実践演習(2単位)+
先進科目
(2単位)
(先進科目のかわりに実践演習も可)+
基礎科目
(4単位以上)
■SecCap10:セキュリティスペシャリスト認定
上記に加え、
実践演習と先進科目で4単位以上
単位互換協定等を結び、参加大学の学生がSecCapコースの
(一部の)講義や演習を受講できるようにするとともに、参加
大学の学生の履修管理やコース認定について支援した。
平成26年度から、大学院研究科だけでなく、大学の学部お
よび高等専門学校を受け入れ、SecCapコースの(一部の)講
義や演習を提供している。大学院の単位取得をベースとする
SecCapコースの修了認定に加え、学部生や高専生からの聴
講生を対象とした修了認定(Associate SecCap認定)を設け、
より幅広い人材育成に取り組むこととした。
(3)
セキュリティ分野運営委員会
5連携大学の担当教員とスタッフによるセキュリティ分野運
30
enPiT ANNUAL REPORT 2014
営委員会を構成し、SecCapコースの基本設計、
コースの修了
ついて具体的なアドバイスをいただいた。
また、平成26年度
認定の考え方のとりまとめ、および単位互換協定に基づく学
は、講義についても視察いただき、貴重なコメントを頂戴し
生の相互受講の履修管理を行う。
た。
●ネットワークセキュリティ検査と対策演習(I-02)
(4)
セキュリティ分野の有識者会議(アドバイザー委員会)
開催日
8月9日
をいただくための有識者会議を設置した。平成27年2月時点
視察者
下 村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協
での委員は次の6名の方である。
会/enPiT-Securityアドバイザー委員)
近澤武(独立行政法人情報処理推進機構)
●Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習(I-03)
富永哲欣(西日本電信電話株式会社)
開催日
8月30日
江崎浩(東京大学 大学院情報理工学系研究科)
視察者
下 村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協
花田経子(新島学園短期大学 キャリアデザイン学科)
会/enPiT-Securityアドバイザー委員)
下村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協会)
田中俊昭(株式会社KDDI研究所)
●デジタルフォレンジック演習(I-04)
平成25年度に続き、平成26年度も、夏季の実践演習(複数)
開催日
9月27日
視察者
田中俊昭(株式会社KDDI研究所/enPiT-Security
をアドバイザー委員に分担して視察いただき、進め方などに
図2.2.4
第2章 実践教育の取り組み状況
セキュリティ分野の人材育成の進め方についてアドバイス
アドバイザ ー 委員)、江 崎 浩(東 京 大 学 教 授 /
連携企業、参加大学と共同の実施体制
石川工業高等専門学校
宮城大学
東北学院大学
福井大学
北陸先端科学技術
大学院大学
金沢工業大学
トレンドマイクロ
情報通信研究機構
(NICT)
東北工業大学
仙台ソフトウェアセンター
産業技術総合研究所
仙台高等
専門学校
東北大学
サイバー・ソリューションズ
実践演習
基礎
知識
学習
理論系演習
応用
学習
社会科学系演習
技術系演習
大阪大学
日本アイ・ビー・エム
京都大学
奈良先端科学技術
大学院大学
神戸大学
NTTコミュニケーションズ
JPCERTコーディネーションセンター
和歌山大学
公立
はこだて
未来大学
日本電信電話
日本電気
情報セキュリティ
大学院大学
東京電機大学
佐賀大学
参加大学院
参加校(学部・専門学校等)
連携協力企業
横浜国立大学
九州工業大学
参加大学院候補
東京大学
中央大学
慶應義塾大学
大分大学
早稲田大学
静岡大学
九州産業大学
東京女子大学
お茶の水
女子大学
津田塾大学
enPiT ANNUAL REPORT 2014
31
enPiT-Securityアドバイザー委員)
習の一部を大阪大学(セキュリティPBL演習A、B、G)
と共同で
実施した。
このうち情報セキュリティPBL演習A、Bについては、
●ハードウェアセキュリティ演習(N-06:セキュリティPBL演習
慶應義塾大学と同時開催し、成果発表会ではテレビ会議シス
F)
テムを用いて相互に意見交換を行った。
開催日
9月10日
視察者
近 澤武(情報処理推進機構/enPiT-Securityアド
バイザー委員)
連携する企業は、一般社団法人JPCERTコーディネーション
センター(JPCERT/CC)、NTTコミュニケーションズ株式会社、
独立行政法人情報通信研究機構(NICT)である。JPCERT/CC
およびNTTコミュニケーションズ株式会社の協力により情報
●Capture The Flag(CTF)入門と実践演習(I-05)
開催日
9月6日
視察者
下 村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協
会/enPiT-Securityアドバイザー委員)
セキュリティPBL演習Cを実施し、NICT北陸StarBED技術セン
ターの協力によりセキュリティPBL演習Dを実施した。
(7)北陸先端科学技術大学院大学の実施体制
北陸先端科学技術大学院大学では、情報セキュリティの理
●事業継続マネジメント演習(I-08)
論と応用の両面から、情報セキュリティ技術の本質を理解す
開催日
9月27日
る人材を育成することに焦点をあてる。平成25年度と同様、
視察者
田中俊昭(株式会社KDDI研究所/enPiT-Security
座学講義である
「最新情報セキュリティ理論と応用」および短
アドバイザ ー 委員)、江 崎 浩(東 京 大 学 教 授 /
期集中合宿型の演習「情報セキュリティ演習」を実施し、暗号
enPiT-Securityアドバイザー委員)
理論からネットワークセキュリティまでの幅広い内容につい
て、数理の理解や実装・実験を通じて体系的な知識・技術の
●情報セキュリティ運用リテラシーⅠ・Ⅱ
開催日
10月25日
視察者
田中俊昭(株式会社KDDI研究所/enPiT-Security
アドバイザー委員)
修得を目指した。
さらに平成26年度からは新たにSecCapコースの共通必修
科目である基礎学習講義「情報セキュリティ運用リテラシー」
を開講し、参加大学学生が受講しやすい体制とした。セキュリ
ティシステム設計等に関する座学講義で基礎力を強化する。
(5)東北大学の実施体制
東北大学では、ハイブリッド人材育成への先行取り組みと
参加大学として、金沢工業大学および石川高等専門学校
が加わり、平成26年度は石川高等専門学校6名(専攻科3名、
して、東北学院大学工学部、宮城大学、東北工業大学、仙台高
本科3名)を受け入れた。石川高等専門学校6名は、高専・学
等専門学校が平成26年度の参加校として、本SecCapコース
部等からの参加学生のために設けた修了認定(Associate
に参加した。
SecCap認定)を目指し受講している。
実践演習として開講する「ハードウェアセキュリティ演習」
最終年度の平成28年度には、連携大学および参加大学で
の教材開発は産業技術総合研究所と共同で実施した。
また、
30名程度の参加を想定した課題提出閲覧システムおよび演
教材のパッケージ化を行い連携大学(奈良先端科学技術大
習環境を完成させる予定である。
学院大学)に提供を行った。さらに、株式会社仙台ソフトウェ
なお、連携する企業は、インテル株式会社およびトレンド
アセンター(NAViS)を通じて、仙台地域における技術系の高
マイクロ株式会社であり、近年の技術動向を踏まえ、実用的
度人材育成・定着を目指した産学官コンソーシアム(Sendai
な情報セキュリティ技術を取り入れた教材の開発に向けての
Schemeコンソーシアム)の枠組みを用い、株式会社サイ
アドバイスを受けている。
バー・ソリューションズより支援を受けて、ネットワークセキュ
リティ実践(PBL演習)
を実施した。
(8)慶應義塾大学の実施体制
慶應義塾大学では、平成26年度より参加大学として九州産
(6)奈良先端科学技術大学院大学の実施体制
32
業大学および津田塾大学が参加した。今後さらに広く参加大
奈良先端科学技術大学院大学では、大阪大学大学院情報
学の拡充を目指している。
また、講義として
「情報セキュリティ
科学研究科、京都大学大学院情報学研究科が平成26年度の
技術特論」を開講し、セキュリティに関する基本的な知識と応
参加大学としてSecCapコースに参加した。
また、東北大学で
用力の獲得を目指した。本講義については9拠点に配信する
実施されているハードウェアセキュリティ演習を正式に本学
とともにアーカイブしオンデマンド受講可能とした。演習に関
の演習の一つとして実施した。平成27年度以降の参加大学と
しては、奈良先端科学技術大学院大学、一般社団法人JPCERT
して複数の大学と調整を進めている。
コーディネーションセンター(JPCERT/CC)、NTTコミュニケー
SecCapコースの講義と演習については、コースの共通必
ションズ株式会社と連携し、
リスクマネジメント演習の一部と
修科目である基礎学習講義(情報セキュリティ運用リテラ
してマルウェア解析技術の習得に関する演習、非情報系学生
シーⅠ、
Ⅱ)を他連携大学や参加大学に提供するとともに、演
を対象とした基礎演習、奈良先端科学技術大学院大学・大阪
enPiT ANNUAL REPORT 2014
大学が中心となって開発した演習を慶應義塾大学へ移転し
慶應義塾大学で同演習の実施を行った。また、オープンソー
ス関連の組織と連携し、新しい価値観に基づく社会における
セキュリティの確保について学ぶ場を設けた。具体的には、
2.2.5
教育実績
(1)基礎力を鍛える共通科目と基礎科目
情報セキュリティ・エンジニアとして身に付けるべきセキュ
リティ技術の基礎力として、OS、
ソフトウェア、ネットワークな
でなく、セキュリティに関する認知の向上や社会システムとし
どのセキュアな構成技術、およびマルウェア対策に関する広
てのセキュリティ保全モデルの構築を学び、新しい環境での
範な知識・技術を習得する。
セキュリティについて学生に理解させる。
また、連携企業等と積極的に議論を行い、本コース修了生
のキャリアパスについて検討を行った。情報セキュリティ実践
このために本事業で新たに連携大学の共通科目を用意す
るとともに、各連携大学のネットワーク関連、およびセキュリ
ティ関連の基礎科目(所属大学指定科目)を活用している。
力を有する学生を積極的に生み出すと同時に、それを受け入
表2.2.5は、平成26年度SecCapコースの5連携大学共有時
れ活用する社会基盤の実現を目指し、複数の企業と議論を進
間割である。共通科目(情報セキュリティ運用リテラシー)は、
めている。
奈良先端科学技術大学院大学が金曜日に、情報セキュリティ
大学院大学が土曜日に、北陸先端科学技術大学院大学は前
(9)情報セキュリティ大学院大学の実施体制
第2章 実践教育の取り組み状況
オープンソース関連コミュニティと連携し、技術的側面だけ
期火曜日(後期は奈良先端科学技術大学院大学と共通)に
情報セキュリティ大学院大学では、主に、首都圏にある参
開講し、講義の遠隔配信を行うことにより、連携大学(情報セ
加大学のハブとして、必修科目や演習の他、既設の講義につ
キュリティ大学院大学、東北大学、北陸先端科学技術大学院
いても他連携大学や単位互換協定等を締結している参加大
大学、奈良先端科学技術大学院大学、慶應義塾大学)
と参加
学に提供している。平成26年度は、参加大学から、東京大学、
大学(東京大学、中央大学、京都大学、大阪大学、九州産業大
中央大学、津田塾大学の学生を受け入れた。また、新たに早
学、津田塾大学)の学生が受講した。
稲田大学、東京電機大学と授業交流の協定書を締結し、一部
受講生を受け入れた。今後、横浜国立大学、公立はこだて未
来大学等へ拡大することを予定している。
(2)実践力を高める実践セキュリティ演習
産業界が求めるマルチタレント型のセキュリティ人材育成
SecCapコースの共通必修科目である基礎学習講義(情報
に向けて、表2.2.6に示すように、セキュリティ分野全体で約20
セキュリティ運用リテラシー)については、社会人学生および
のセキュリティ実践演習モジュールを用意した。実践演習モ
他大学からの履修を考慮して前期と後期の土曜日に開講し
ジュールは、技術実践演習、社会科学演習、理論系演習など、
た。また、分野横断的に多くの学生が受講しやすくするため
技術主体から社会科学主体まで、幅広いセキュリティ実践力
に、講義をビデオ録画し、オンデマンド型で遠隔講義配信す
をカバーするものであり、受講生は、所属大学の方針に従い、
るためのシステムを準備し、試行実施した。
複数の演習モジュールを選択して受講できる形で実施した。
夏季に開講した集中型の実践セキュリティ演習では、技
また、ハイブリッド人材育成に向けて、非情報理工系の学生
術系の実践演習4モジュール、社会科学系の演習3モジュール
(経営、経済、社会学など出身)向けの入門的演習を2コース
(各1単位相当・約21時間)を実施した。平成25年度に実施し
開発し、慶應義塾大学と情報セキュリティ大学院大学で試行
た際の実施状況、受講生アンケートおよびアドバイザー委員
実施した。演習の開講時期は8月から9月の夏季休暇期間を
等の意見を反映して、演習時間の見直し、演習内容の追加と
中心に配置したが、指導講師や連携企業の都合などにより、
充実を図った。また、前述7演習に加え、ハイブリッド人材育
一部は後期(10月以降)の開講となった。そのような演習につ
成に向けて、非情報理工系の学生(経営、経済、社会学など出
身)向けの入門的演習を開発し、試行実施した。
図2.2.7
入門的演習コース
(セキュリティ基礎演習)の演習風景
連携する企業は、日本電信電話株式会社、日本アイ・ビー・
エム株式会社などであり、夏季に開講する集中型の実践セ
キュリティ演習(ネットワークセキュリティ検査と対策演習、
Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習、デジタルフォ
レンジック演習)
と、後期開講の応用学習である先進ネット
ワークセキュリティ技術の実践的な教材開発や演習指導に
協力いただいた。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
33
表2.2.5
曜日
月
平成26年度 SecCap共有時間割
科目名
情報セキュリティ
マネジメントシステム
担当教員
区分
遠隔
有無
20:00〜
21:30
無
情報セキュリティ大学院大学
有
北陸先端科学技術大学院大学
受講生所属大学
情報セキュリティ
後期
大学院大学
情報セキュリティ
運用リテラシー
宮地・
布田 他
共通
必修
(C)
前期:4/18(*)、4/22、
4/25(*)、5/2(*)、5/13、
北陸先端科学技
5/20、5/27、6/3
術大学院大学
[(*)は金曜。後期は金
曜]
セキュアシステム
構成論A
辻
基礎・
選択
情報セキュリティ
前期
大学院大学
14:40~
16:10
有
情報セキュリティ大学院大学、
東京大学
暗号プロトコル
土井
基礎・
選択
情報セキュリティ
後期
大学院大学
10:40~
12:10
有
情報セキュリティ大学院大学、
東京大学
情報セキュリティ
法務経営論
樋地・金谷・
小野
先進・
選択
後期
16:20~
17:50
有
東北大学、情報セキュリティ大
学院大学、北陸先端科学技術
大学院大学、東京大学
ネットワークシステム
設計・運用管理
佐藤・後藤
基礎・
選択
情報セキュリティ
前期
大学院大学
20:00~
21:30
有
情報セキュリティ大学院大学
後藤・佐藤
先進・
選択
情報セキュリティ
後期
大学院大学
18:20~
21:30
無
情報セキュリティ大学院大学、
東京大学、中央大学、東京電機
大学(*)
湯淺 他
先進・
選択
情報セキュリティ
後期
大学院大学
18:20~
21:30
無
情報セキュリティ大学院大学、
慶應義塾大学
セキュア法制と
情報倫理
林・湯淺
基礎・
選択
情報セキュリティ
後期
大学院大学
18:20~
21:30
無
情報セキュリティ大学院大学
情報セキュリティ
運用リテラシーⅠ
山口・藤川・
猪俣+
オムニバス
共通
必修
(B)
奈良先端科学技
術大学院大学
前期:4/18、5/16、5/23、 13:40~
5/30
16:50
有
奈良先端科学技術大学院大
学、慶應義塾大学、大阪大学、
京都大学、九州産業大学
情報セキュリティ
運用リテラシーⅡ
山口・藤川・
猪俣+
オムニバス
共通
必修
(B)
奈良先端科学技
術大学院大学
後期:10/31、11/28、
12/5、1/16
13:40~
16:50
有
奈良先端科学技術大学院大
学、慶應義塾大学、大阪大学、
京都大学、九州産業大学
情報セキュリティ
運用リテラシー
宮地・
布田 他
共通
北陸先端科学技
必修(C) 術大学院大学
後期:10/31、11/28、
12/5、1/16[前期は火
曜]
13:40~
16:50
有
北陸先端科学技術大学院大学
最新情報セキュリティ
理論と応用(※1)
宮地・布田・
面・蘇
6/13、6/27、7/4、7/25、
8/1、8/8、8/22、8/29、
9/5、9/12、9/19、9/26
13:30~
16:40
有
北陸先端科学技術大学院大
学、奈良先端科学技術大学院
大学、大阪大学、京都大学、東
京大学、石川高等専門学校(*)
有
慶 應 義 塾 大 学、情 報 セキュリ
ティ大学院大学、東北大学、奈
良先端科学技術大学院大学、
大 阪 大 学 、京 都 大 学 、東 京 大
学、津田塾大学、九州産業大学
特設講義
(セキュア社会基盤論)
先進・
選択
東北大学
北陸先端科学技
術大学院大学
4/25、5/9、10/17、
10/24、11/7、11/14、
12/12、12/19
情報セキュリティ
技術特論
砂原・山内+
オムニバス
先進・
選択
慶應義塾大学
(KMD)
情報セキュリティ演習
宮地・布田・
田中・陳
演習・
選択
北陸先端科学技
術大学院大学
セキュアシステム
構成論B
辻
基礎・
選択
情報セキュリティ
後期
大学院大学
後藤
共通
必修
(A)
情報セキュリティ
大学院大学
特設講義
(情報セキュリティ運用
リテラシーⅠ
・Ⅱ)
土
時間帯
基礎・
選択
特設講義
(先進ネットワーク
木 セキュリティ技術)
金
学期・期間
原田
火
水
開設大学
(研究科)
13:40~
16:50
北陸先端科学技術大学院大
6/6、6/20、7/11、7/18、
有
学、奈良先端科学技術大学院
8/1
(※2) (6/6~
大学、大阪大学、京都大学、東
[合宿]9/5~9/6
8/1)
京大学、石川高等専門学校(*)
20:00~
21:30
無
情報セキュリティ大学院大学
有
情報セキュリティ大学院大学、
東北大学、慶應義塾大学、東京
大学、中央大学、津田塾大学
前期:4/12、4/19、4/26、 13:00~
7/19
16:10
後期:10/11、10/25、
11/15、11/29
9:00~
12:10
セキュリティ
システム監査
堀江・丸山
基礎・
選択
情報セキュリティ
前期
大学院大学
10:40~
12:10
無
情報セキュリティ大学院大学、
東京大学
セキュアプログラミング
とセキュアOS
柴山
基礎・
選択
情報セキュリティ
後期
大学院大学
9:00~
12:10
有
情報セキュリティ大学院大学、
東京大学
不正アクセス技法
森井
基礎・
選択
情報セキュリティ
後期
大学院大学
13:00~
16:10
有
情報セキュリティ大学院大学、
東京大学
(*)聴講生として受講
(※1)
「最新情報セキュリティ理論と応用」は「情報セキュリティ演習」を履修していることを受講条件とする。
(※2)
[6/6]第1回(13:30~15:00)/第2回(15:10~16:40)、
[6/20]第3回(13:30~15:00)/第4回(15:10~16:40)
、
[7/11]第5回(13:30~15:00)/第6回(15:10~16:40)
、
[7/18]第7回(13:30~15:00)/第8回(15:10~16:40)、
[8/1]第9回(13:30~15:00) 集中演習(9/5 11:00~18:30、9/6 9:20~12:30)
34
enPiT ANNUAL REPORT 2014
表2.2.6
平成26年度 SecCap実践演習の実施状況
設置大学院
奈良先端科学
技術大学院大学
北陸先端科学
技術大学院大学
実践演習
モジュール名
日程
登録
数
受講生所属大学
開催場所
I-01
セキュリティ技術入
門講座 7/25~7/26
慶應義塾大学、東京大学、中央大学
8
情報セキュリティ
大学院大学
I-02
ネットワークセキュ
リティ検 査と対 策
演習
8/1、8/2、
8/8、8/9
情報セキュリティ大学院大学、東北大
学、慶應義塾大学、東京大学、津田塾
大学、早稲田大学(*)
38
情報セキュリティ
大学院大学
I-03
Webアプリケーショ
8/22、8/23、
ン検査と脆弱性対
8/29、8/30
策演習
情報セキュリティ大学院大学、東北大
学、慶應義塾大学、東京大学、津田塾
大学
36
情報セキュリティ
大学院大学
デ ジタルフォレン
ジック演習
9/19、9/20、
9/26、9/27
情報セキュリティ大学院大学、東北大
学、慶應義塾大学、東京大学、中央大
学、東京電機大学(*)
32
情報セキュリティ
大学院大学
9/5~9/6
情報セキュリティ大学院大学、東北大
学、慶應義塾大学、東京大学、中央大
学、東京電機大学(*)
26
情報セキュリティ
大学院大学 他
特設実習
(セキュリティ
I-04 実践Ⅰ)
および
特設実習
I-05 (セキュリティ
実践Ⅱ)
Capture The Flag
(CTF)入門と実践
演習
I-06
インシデント対応と
CSIRT基礎演習
8/1、8/4、8/5、
8/6、8/7、8/8
情報セキュリティ大学院大学、東京大
学、中央大学
12
情報セキュリティ
大学院大学 他
I-07
組 織 経 営とセキュ
リティマネジメント
演習
8/19、8/21、
8/26、8/28、
8/30
情報セキュリティ大学院大学、慶應義
塾大学、東京大学
7
情報セキュリティ
大学院大学 他
I-08
事業継続マネジメ
ント演習
9/16、9/18、
情報セキュリティ大学院大学、東京大
9/22、9/25、9/27 学
7
情報セキュリティ
大学院大学
6/14~6/15
奈良先端科学技術大学院大学、北陸
先端科学技術大学院大学、東北大学、
28
大阪大学、京都大学、東京大学、九州
産業大学
大阪大学
システム攻撃・防御
演習
6/28~6/29
奈良先端科学技術大学院大学、北陸
先端科学技術大学院大学、東北大学、 27
大阪大学、京都大学、九州産業大学
大阪大学
セキュリティ
PBL演習 C
リスクマネジメント
演習
8/25~8/28
奈良先端科学技術大学院大学、慶應
義塾大学、大阪大学、京都大学、九州
産業大学
22
東京地区(企業・
研究所等)
N-04
セキュリティ
PBL演習 D
インシデント体 験
演習
9/2~9/4
奈良先端科学技術大学院大学、北陸
先端科学技術大学院大学、大阪大学、 21
京都大学
NICT北陸StarBED
技術センター
N-05
セキュリティ
PBL演習 E
IT危機管理演習
9/15~9/17
奈良先端科学技術大学院大学、慶應
義塾大学、大阪大学、九州産業大学
12
奈良先端科学技
術大学院大学
N-06
セキュリティ
PBL演習 F
ハードウェアセキュ
リティ演習
9/9~9/11
奈良先端科学技術大学院大学、情報
セキュリティ大学院大学、大阪大学、
京都大学、九州産業大学
7
奈良先端科学技
術大学院大学
N-07
セキュリティ
PBL演習 G
システム侵入・解析
演習
12/6~12/7
奈良先端科学技術大学院大学、北陸
先端科学技術大学院大学、東北大学、
27
大阪大学、京都大学、東京大学、九州
産業大学
大阪大学
J-01
情報セキュリティ
演習
北陸先端科学技術大学院大学、奈良
先端科学技術大学院大学、大阪大学、
33
京都大学、東京大学、石川高等専門学
校(*)
北陸先端科学技
術大学院大学
T-01
ハードウェア
セキュリティ演習
9/3~9/5
東北大学、慶應義塾大学
11
東北大学
T-02
ネットワーク
セキュリティ
実践
11/9、11/22、
11/23、12/13、
12/14、
発表会1/13
東北大学、東北工業大学(*)、仙台高
等専門学校(*)
24
仙台ソフトウェア
センター
K-01
セキュリティ
基礎演習
5/31~6/1
慶應義塾大学、東京大学
13
慶應義塾大学
K-02
セキュリティ
PBL演習 A
6/14~15
慶應義塾大学、東北大学、東京大学
15
慶應義塾大学
K-03
セキュリティ
PBL演習 B
6/28~29
慶應義塾大学、東北大学、東京大学
17
慶應義塾大学
N-01
セキュリティ
PBL演習 A
無 線 L A N セキュリ
ティ演習 N-02
セキュリティ
PBL演習 B
N-03
東北大学
慶應義塾大学
科目名
6/6、6/20、7/4、
7/18、8/1
[合宿]9/5~9/6
第2章 実践教育の取り組み状況
情報セキュリティ
大学院大学
No.
(*)聴講生として受講
enPiT ANNUAL REPORT 2014
35
いては、週末(土曜日、日曜日)を活用することにより、他の講
知っておくべきセキュリティ上の脅威を理解するとともに、
義との重複を避けるように努めた。
攻撃を検知するためのログ解析手法やネットワークセキュリ
ティ検査の知識および技術を習得すること、さらに検査で明
次は演習モジュール例である。
らかになった脆弱性への対応方法を習得することである。
具体的には、代表的な攻撃手法の解説、攻撃を受けたWeb
●ネットワークセキュリティ検査と対策演習(I-02技術系)
昨年度と比較して演習時間を倍に増やし、昨年度「ネット
ワークセキュリティ検査演習」
として実施した内容に加え、今
年度は検査によって発見された脆弱性への対応方法も含め
サーバのログ解析演習、検査ツールを利用したポートスキャ
ン検査演習や脆弱性検査演習と検査結果報告書の作成、脆
弱性への対策演習などを実施した。
ログの解析方法、ネットワークセキュリティ検査による脆弱
性の発見、発見された脆弱性への対応を一連で学ぶことによ
た。
演習のねらいは、各種サーバ環境の構築や運用に際して
り、各種サーバの運用管理に必要な知識・技術の基礎を身に
付けることができた。
図2.2.8
ネットワークセキュリティ検査と対策演習の様子
平成26年度は、情報セキュリティ大学院大学、東北大学、慶
應義塾大学、東京大学、津田塾大学、早稲田大学から38名の
学生が参加した。
●システム攻撃・防御演習(N-02・K-03技術系)
脆弱性のあるシステムをインターネットに接続した場合、
どのように攻撃されるのか、攻撃に対してどのように防御す
るのか等について理解する演習である。具体的には、システ
ムの攻撃によく利用される脆弱性や攻撃の原理、防御技術に
ついて概観し、実際の攻撃ツールを解析し、その原理を学ぶ。
最終的に、実験結果をもとに安全なシステム運用の手法につ
いてグループごとに議論、考察した。
各自が演習に取り組む
平成26年度は、N-02には、奈良先端科学技術大学院大学、
北陸先端科学技術大学院大学、東北大学、大阪大学、京都大
学、九州産業大学の学生が参加し、K-03には、慶應義塾大学、
東北大学、東京大学の学生が参加した。
●ハードウェアセキュリティ演習(T-01・N-06技術系)
情報通信機器などのハードウェアから情報漏えいが生じる
メカニズムを学び、実験を通して物理的セキュリティに関す
る問題に対する理解を深め、ハードウェアセキュリティ対策
の重要性を学ぶ演習である。特に、計測を伴う演習を通して、
暗号アルゴリズムを実装したハードウェアの動作中に生じる
副次的な情報(サイドチャネル情報)を利用して秘密情報を
グループ討議
奪うサイドチャネル解析とその対策の基本概念を学ぶことが
できる。
平成26年度は、T-01には、東北大学、慶應義塾大学の学生
と奈良先端科学技術大学院大学、慶應義塾大学の教員が参
加し、N-06には、奈良先端科学技術大学院大学、情報セキュ
リティ大学院大学、大阪大学、京都大学、九州産業大学の学
生が参加した。
●情報セキュリティ演習(J-01理論系)
暗号アルゴリズムの組み合わせにより、
どのように暗号プ
ロトコルを実現するかを説明し、実際に、最新情報セキュリ
ティ理論で数式処理ソフトウェアMathematicaを用いて実装
発表
36
enPiT ANNUAL REPORT 2014
した暗号アルゴリズムを用いて、各種暗号プロトコルの実装
図2.2.9
実践演習環境の例(I-02ネットワークセキュリティ検査と対策演習)
各受講生に6つの仮想マシン
(VM)
として割り当て
検査対象サーバ(それぞれに様々な脆弱性が存在する)
ポートスキャン
検査
NW-Server2
(unix)
NW-Server3
(Windows)
NW-Server4
(Windows)
第2章 実践教育の取り組み状況
NW-Server1
(unix)
脆弱性検査
DoS検査
NW-Nessus
Nessusサーバ 兼 OpenVASサーバ
NW-Web-Client
VMware vSphere Client
作業用クライアント
ノートPC(物理)
を行う。さらに、RFIDタグや携帯端末、VANETなどのさまざま
度は次の5科目を実施した。それぞれ開講大学以外の連携大
なアプリケーションで脚光を浴びている楕円曲線暗号につい
学や参加大学からの受講生があった。
て解説するとともに、最新情報セキュリティ理論で実装した
暗号アルゴリズムを用いて、実際に楕円曲線暗号の実装も行
●理論系:最新情報セキュリティ理論と応用
う。遠隔講義用システムを利用した講義配信を行うとともに、
開講:北陸先端科学技術大学院大学
e-Learningシステムを用いて学生とのインタラクションを密
受講:北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学技術大
に行い、課題の理解を深める。
また、新PBL型グループワーク
学院大学、大阪大学、京都大学、東京大学、
システムを用いたグループワークを行い、情報セキュリティ
石川高等専門学校(*)
の理論学習を促進する。
平成26年度は、北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端
●技術系:先進ネットワークセキュリティ技術
科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、東京大学、石川工
開講:情報セキュリティ大学院大学
業高等専門学校の33名の学生が受講、参加した。
受講:情報セキュリティ大学院大学、東京大学、中央大学、
東京電機大学(*)
●組織経営とセキュリティマネジメント演習(I-07社会科学系)
組織における情報セキュリティ管理の基礎について、過
図 2 . 2 . 1 0 ハードウェアセキュリティ演習の演習風景
去の事故事例を題材とし、セキュリティ事故防止のためにセ
キュリティ管理者としてどのように対処すべきか、
グループ討
議を通して学ぶことができた。
また連携企業(富士ゼロックス
株式会社)を訪問し、企業の現場組織が課題へどのように対
応しているかについて議論することができ実践力が強化でき
た。
平成26年度は、情報セキュリティ大学院大学、慶應義塾大
学、東京大学の学生が参加した。
(3)応用力を高める先進科目
共通科目・基礎科目と実践セキュリティ演習で養った実践
力の応用力を身に付ける統合的学習科目である。平成26年
enPiT ANNUAL REPORT 2014
37
図 2 . 2 . 1 1 情報セキュリティ演習の様子
講義の聴講
各自で演習取り組み
チームでプログラム実装
グループ討論
図 2 . 2 . 1 2 社会科学系演習の風景
グループワークの様子
38
enPiT ANNUAL REPORT 2014
質疑応答
表 2 . 2 . 1 3 平成26年度の先進講義の例:先進ネットワークセキュリティ技術
日本を取り巻くサイバー攻撃の現状 (LAC 伊東)
10/9
「サイバー空間の構成要素」
を利用した犯罪行為の局所的見地と大局的見地 (サイバーディフェンス研究所 名和)
フォレンジック技術の現状と課題 (デロイトトーマツ サイバーセキュリティ先端研究所 岩井)
11/13
Revisiting MWS2014 (NTTSC研 秋山・NTTコム 畑田)
11/27
SOC監視・分析技術(1)
とIBM SOC見学 (日本IBM 窪田)
12/11
SOC監視・分析技術(2) (日本IBM 窪田)
1/8
ユーザー企業のセキュリティ対策 (セコム トラストシステムズ 大﨑)
1/22
NTT-CERTの取り組み: CSIRTの概要と情報分析 (NTTSC研 種茂、神谷、小倉)
2/5
情報分析課題の発表 (NTTSC研 種茂、神谷、小倉)
●技術系:情報セキュリティ技術特論
第2章 実践教育の取り組み状況
10/30
様々な分野目線を相関し、サイバー空間問題の背景構図を鳥瞰的に捉え本質を見抜く力を学ぶ
(富士通システム統合研究所 岡谷)
次は先進科目の学習例である。
開講:慶應義塾大学
受講:慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学、東北大
学、奈良先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、東
京大学、津田塾大学、九州産業大学
●先進ネットワークセキュリティ技術
実社会での活動事例をベースに、実践セキュリティ演習
にて体験的に習得したネットワークセキュリティ技術の実社
会での役割と今後の技術展望や課題について学ぶことによ
●社会科学系:セキュア社会基盤論
り、先進ネットワークセキュリティ技術について理解し応用力
開講:情報セキュリティ大学院大学
を深めた。実社会での事例としては、企業組織や官庁・自治
受講:情報セキュリティ大学院大学、慶應義塾大学
体の内部で活動するネットワークセキュリティ事故対応チー
ム(CSIRT)
と、セキュリティベンダー等が提供するセキュリ
●社会科学系:情報セキュリティ法務経営論
ティオペレーションセンター(SOC)サービスを取り上げ、社
開講:東北大学
会における役割と今後の課題について学んだ。さらに、イベ
受講:東北大学、情報セキュリティ大学院大学、北陸先端科
ント分析の実践演習や、インシデント対応の現場(日本アイ・
学技術大学院大学、東京大学
ビー・エム株式会社箱崎事業所)見学および実務者の体験
談を通して知見を深めることができた。本科目の最終課題に
(*)聴講生として受講
は、CSIRTチームとしての情報分析業務に取り組み、受講生が
作成した分析レポートを最終日に発表して成果を確認した。
図 2 . 2 . 1 4 先進ネットワークセキュリティ技術の講義風景
講義
イベント分析
enPiT ANNUAL REPORT 2014
39
図 2 . 2 . 1 5 MWSカップ参戦の様子
競技に真剣に取り組む
(4)CTFとインターンシップ
本教育プログラムでは、産業界の人材ニーズと育成プロ
グラムのマッチングを強化するために、前述の実践セキュ
解析方法の発表
プガイダンスを実施した。
また、演習T-02ネットワークセキュ
リティ実践は、株式会社サイバー・ソリューションズの協力を
得て、
インターンシップとして実施した。
リティ演習や講義を連携企業・連携組織と共同で開発し実
施した。学生間・社会人(企業)間の人的ネットワーキングを
醸成するために、セキュリティ実践力の腕試しの場としてCTF
本シンポジウムは、年度の締めくくりとして、連携大学、参
(Capture The Flag)への積極的な参加と企業インターン
加大学のSecCapコース修了生、関連教員とスタッフ、連携
シップを推奨した。
CTFについては、実践セキュリティ演習(I-05 Capture The
企業のサポートメンバーが一堂に会し、1年間の実績を確認
しあう場である。5連携大学を遠隔会議システムで相互接続
Flag(CTF)入門と実践演習、N-04情報セキュリティPBL演習
した分散開催の形式をとった。また、シンポジウムの場で、
D)の一環として、MWSカップ(平成26年10月)などのCTFイベ
SecCap修了生の認定式を行った。
ントに学生チームとして参戦した。
企業インターンシップについては、NPO日本ネットワーク
アドバイザー委員には5拠点のいずれかに出席いただき、
シンポジウムの視察の後、アドバイザー委員会を開催して、
セキュリティ協会(JNSA)の人材育成検討会主催の「産学情
平成26年度の実績と平成27年度の計画についてアドバイス
報セキュリティ人材育成交流会〜インターンシップに向けて
とご意見をいただいた。
〜(5月10日)」を共催する形で、連携企業とのインターンシッ
図 2 . 2 . 1 6 講義・演習アンケートの実施例
40
(5)enPiT-Securityシンポジウム
(平成27年3月9日開催)
enPiT ANNUAL REPORT 2014
2.2.6
中に欲しい情報を見つけられなかった」
「ついていけなかっ
教員養成・FD活動
た」
という声も多く聞かれた(表2.2.17)。要望としては、
「時間
を長くとってほしい」
「基礎的な演習を取り入れてほしい」
とい
(1)受講生アンケートと講義・演習へのフィードバック
う声が多く聞かれた。
講義や演習による理解度向上の程度と受講生から見た演
アンケート結果と受講生の演習中の様子を受け、平成25年
実施し、受講生の理解度や難易度の把握および講義・演習の
度の演習実施後に演習の改善について検討を行った。主な
改善を図った(図2.2.16はデジタルフォレンジック演習(I-04)
改善内容は、次の通りである。
のアンケート)
。
●演習時間を倍にする
2日間→4日間へ。
●予備演習を実施する
●演習改善の取り組み例-デジタルフォレンジック演習(I-
本格的な解析演習に向けたステップとなる演習。解析に必
04)の改善
要となる知識の理解を促すとともに、各種ツールの使い方に
デジタルフォレンジック演習は、インシデント発生後の対
処に必要となるデジタルフォレンジック技術の基礎を習得す
慣れることを目的とする。
ることをねらいとした演習である。具体的には、デジタルフォ
●解析演習中に中間ディスカッションを実施する
レンジックの基礎知識・技術の解説、Windows端末の解析で
解析演習の途中経過をグループ内、および、全体で共有
共通的に実施される基本的な作業の解説と実習、企業にお
し、議論する。知識の共有や整理を行う過程で、受講生間で
けるインシデントを想定した本格的な解析演習を集中して行
の教え合いや講師との質疑を活発にすること、全体の足並み
う。
を揃えることを目的とする。
第2章 実践教育の取り組み状況
習の難易度を把握するため、各講義や各演習でアンケートを
予備演習は、昨年度実施した実践演習の改善に向けた
他の講義・演習と同様にアンケートを実施し、演習終了後
ワークショップ「体験演習;デジタルフォレンジック超入門」に
にアンケート分析を行った。
おいて試行し、
ブラッシュアップした。
平成25年度のアンケート自由記入欄に寄せられた受講者
のコメントでは、
「実践的で有益だった」
「知識の獲得ができ
これらの改善により、平成26年度の演習では、受講生の取
た」
という声が多い一方、
「ツールの使い方で躓いた」
「解析
り組みが活発になった。アンケートにおいては、演習前後の
表 2 . 2 . 1 7 平成25年度アンケート自由記入欄のコメント回答割合
分類
回答割合
1
実践的で有益だった、体験してわかったことがあった
28%
2
知識の確認、新しい知識の獲得ができた
29%
3
ツールの使い方で躓いた、慣れる時間が欲しい
20%
4
欲しい情報が得られなかった
11%
5
ついていけなかった、説明や進みが速い
29%
※コメント数を受講者数で除した値を百分率に直し、回答割合としている。
一人が複数のコメントを挙げている場合は、複数回答として扱っている。
図 2 . 2 . 1 8 平成25年度と平成26年度の比較-演習前後の知識状況の伸び幅
1
演習前後の知識状況の伸び幅
平成25年度
平成26年度
平成25年度、平成26年
度でアンケート項目が
異なるため除外
2
解析手法
1.6
2.0
3
解析項目(1)
1.2
1.7
4
解析項目(2)
1.3
1.8
知識状況の伸び幅
項目
3
■ 平成25年度 ■ 平成26年度
2
2
1.6
1.2
1
0
項目2
1.8
1.7
項目3
1.3
項目4
enPiT ANNUAL REPORT 2014
41
図 2 . 2 . 1 9 平成25年度と平成26年度の比較
-アンケート自由記入欄のコメント回答割合
1
分類
実践的で有益だった、
体験してわかったこと
があった 平成25年度 平成26年度
28%
50%
2
知識の確認、新しい知
識の獲得ができた
29%
3
ツー ル の 使 い 方で 躓
いた、慣れる時間が欲
しい
20%
4
欲しい情報が得られな
かった
11%
3%
5
ついていけなかった、
説明や進みが速い
29%
0%
28%
回答割合
項目
(%)
50
回答割合
50
■ 平成25年度 ■ 平成26年度
40
30
20
29 28
28
10
6%
0
6
10
知識状況の伸び幅、自由記入欄のコメント回答割合が、図
0
3
20
20
30
11
29
項目1
項目2
項目3
項目4
項目5
た。
2.2.18、2.2.19のように変化した。
また、要望として目立ったも
また、奈良先端科学技術大学院大学にて無線LANセキュリ
のは、
「思考過程などノウハウ的な部分を教えてほしい」
とい
ティ演習に関するFDを受けた慶應義塾大学の教員が、自大
うものであり、昨年度に比較して、受講生の演習内容に対す
学において当該演習を実施した。
る理解が進み、中身の議論に入れたことを示している。
これら
から、今回実施した改善は、良い方向に作用したと捉えてい
(3)分野外連携大学との交流
FD活動として、組込みシステム分野の教員に演習に参加い
る。
来年度に向けては、予備演習および中間ディスカッション
実施方法をさらにブラッシュアップするとともに、他の演習へ
の導入・展開を検討している。
ただいた。
●デジタルフォレンジック演習(I-04)
開催日
9月19日、20日、26日、27日
参加者
松原豊、倉地亮(名古屋大学)
(2)演習を通じた教員のFD
今夏行われた演習では、学生の受講に加えて教員のFDを
引き続き、分野横断の「組込みセキュリティ」の最新の技術
実施した。例えば、東北大学開講のハードウェアセキュリティ
課題について、意見交換を進めており、今後、関連する企業
演習には、セキュリティ分野教員5名(奈良先端科学技術大学
ニーズや人材育成の進め方を具体的に検討することになっ
院大学、慶應義塾大学)が参加し、ハードウェアセキュリティ
た。
の講義、演習実施方法について情報を共有した。さらに、演
習に参加した連携大学の1つである奈良先端科学技術大学
院大学では、FDに参加した教員が本演習を自大学で実施し
図 2 . 2 . 2 0 演習を通じた教員のFD-ハードウェアセキュリティ演習
(東北大学)
また、社会科学系の演習を視察いただき演習の進め方等
に対し貴重なご意見をいただいた。
●インシデント対応とCSIRT基礎演習(I-06)
開催日
8月5日
視察者
山本雅基(名古屋大学)
●組織経営とセキュリティマネジメント演習(I-07)
開催日
8月21日
視察者
高嶋博之(名古屋大学)
組込みシステム分野の観点からは、ディスカッション中心
の社会科学系の演習の進め方や、社会人学生と通常の学生
が一緒に学ぶ環境が参考になったとのことであり、分野間で
の相乗作用に役立った。
42
enPiT ANNUAL REPORT 2014
(4)産業界・官公庁との交流
ドウェアセキュリティ分野を中心に議論が行われており、今
実践セキュリティ人材を必要とする産業界や官公庁から
年度はRecent Research and Education in EM Information
SecCapコースの演習や先進講義を視察いただき、本取り組
Security(電磁波セキュリティ
(ハードウェアセキュリティを含
みの理解を深めていただくと同時に、貴重なコメントを頂戴
む)研究および教育に関する最新動向)が企画されていたこ
した。
とから、
これにも参加し、発表、意見交換、資料収集を行った。
●情報セキュリティ運用リテラシーⅠ・Ⅱ、特設講義(先進ネッ
ティ演習に関する発表としてはDevelopment of Human
トワークセキュリティ技術)
Resources in Hardware Security through Practical
開催日
10月30日、11月15日、11月29日、12月11日 Information Technology Education Program というタイトル
視察者
秋山・春木(東芝)
で行い、enPiT全体およびenPiT-Securityの活動の概要を説
明するとともに、東北大学で開講されているハードウェアセ
●セキュリティPBL演習C(リスクマネジメント演習)
(N-03)
キュリティ演習で開発を行った授業教材、実施形態について
開催日
8月25日~8月28日
報告を行った。会場からは、演習実施形態の詳細や本演習が
視察者
赤 坂・河合(総務省)、上村・佐々木・岩谷(経産
対象としている学生についてなど活発な質疑が行われた。
省)、歌代・村上・満永(JPCERT/CC)、村田(ニフ
ティ)他
第2章 実践教育の取り組み状況
enPiT-Securityのアピールおよびハードウェアセキュリ
また、本セッションでは、ハードウェアセキュリティ分野に
おける著名な研究者であるルーヴェン・カトリック大学(ベル
ギー)のIngrid Verbauwhede教授も参加しており、同大学で
(他 多数の見学者があった)
実施されているPBL形式のハードウェアセキュリティ関連演
習について報告がなされた。Verbauwhede教授とはセッショ
(5)海外視察:米国
enPiT全体およびenPiT-Security活動のアピールおよび
ハードウェアセキュリティ演習について、関連分野の研究
ン後にも活発な意見交換を行い、国際連携などについても
足がかりを得たことから、今後は授業視察などを含めた教員
間の国際交流を計画する予定である。
者・企業関係者と意見交換および資料収集を行うために
また、セッション内ではハードウェアセキュリティに関して
2014 IEEE International Symposium on Electromagnetic
関心が高まっている故障利用解析に関する発表も行われて
Compatibility(IEEE EMCS 2014)に参加した。
おり、SecCapコースで開講されているハードウェアセキュリ
IEEE EMCS 2014では、電子機器から非意図的に放射され
ティにおいても、現在演習を行っている電力解析に加えて、
こ
る電磁波の計測法、評価法、抑制法などが議論されている。
うした解析についても追加していく必要があると考えられる。
中でも、第5技術委員会内の小委員会EM Leakageではハー
図 2 . 2 . 2 1 広報活動および国際連携の計画-IEEE EMCS 2014への参加
enPiT ANNUAL REPORT 2014
43
2.2.7
来年度のイベント予定・募集情報
来年度のイベント予定
●連携企業ワークショップと
●奈良先端科学技術大学院大学
奈良先端科学技術大学院大学では、新入生ガイダンス時
(4月第1週)において募集案内を行い、受講希望者は、応募
書類に記載し選考面談の上決定する。なお、4月の第2週まで
に選考面談を実施し、受講生を決定する予定である。
インターンシップガイダンスの実施
Webサイト
http://www.seccap.jp/naist/
平成27年4月~5月
問い合わせ先
E-mail : [email protected]
NPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)主催の人材
交流会に参画する形で、連携企業とのインターンシップガイ
●北陸先端科学技術大学院大学
ダンスを実施する。受講生が企業の人材ニーズに直に接する
北陸先端科学技術大学院大学では、情報科学研究科入学
場を通して、実践的なセキュリティ技術への取り組み意識を
生に対して3月に本分野のパンフレットを送付するとともに、
高めてもらうことがねらいである。
新入生ガイダンス時(4月第1週)において募集案内を行い、
受講希望者を積極的に募る。受講希望者は、4月第2週まで
●実践演習の改善に向けたワークショップ
に、
スクリーニングテストおよび選考面談によって決定する。
平成27年10月~12月
Webサイト
http://www.jaist.ac.jp/
連携大学、参加大学、連携企業のメンバーにより、実践演習
問い合わせ先
E-mail : [email protected]
のさらなる改良・改善について検討するワークショップであ
る。
このワークショップのアウトプットに従い、各連携大学は
●慶應義塾大学
実践演習の追加開発や改良を進める。
慶應義塾大学では、理工学研究科、政策・メディア研究科、
メディアデザイン研究科の学生に対して、4月の第1週に実施
されるガイダンスにおいて説明会と募集案内を行い、積極的
各連携大学の募集情報
に受講希望者を募る。受講希望者は、意欲のある学生を積極
的に受け入れる。なお、応募多数の場合は書類選考を行う。
●東北大学
Webサイト
東北大学では、平成27年度の新入生オリエンテーション(4
月3日)で資料配付を行い、資料に記載された日時(4月上旬)
にガイダンスを実施する予定である。前期および通年科目に
http://www.st.keio.ac.jp/
http://www.sfc.keio.ac.jp/gsmg/
http://www.kmd.keio.ac.jp/jp/
問い合わせ先
E-mail : [email protected]
ついては4月中旬が履修登録期限の予定である。後期科目に
ついては10月中旬が履修登録期限の予定である。なお、夏季
に実施する集中型演習については、演習科目によっては演習
情報セキュリティ大学院大学では、平成27年度の新入生オ
機材の制約から定員があるため、必要に応じて事前選考をす
リエンテーション(4月6日)に合わせてガイダンスを実施する
る可能性がある。
予定である。なお、夏季に実施する集中型演習については、
詳細は、本学のWebサイトでアナウンスする。
44
●情報セキュリティ大学院大学
演習科目によっては演習機材の制約から定員があるため、
Webサイト
http://www.esprit.is.tohoku.ac.jp
必要に応じて事前選考をする可能性がある。詳細は、本学の
問い合わせ先
E-mail : [email protected]
Webサイトでアナウンスする。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
Webサイト
http://www.iisec.ac.jp/
問い合わせ先
E-mail : [email protected]
2.2.8
まとめ
②演習の入門コースの開講:
情報系の学生だけでなく、文系の学生など、非情報系の学
生が、SecCapコースを受講しやすくするために、平成26年度
れている実践的なセキュリティ技術を習得した人材(実践セ
は技術演習の入門コースを試行的に開講した。平成27年度
キュリティ人材)の育成を目指し、平成25年度から5つの連携
は、ハイブリッド人材の育成に向けて、技術演習の入門コー
大学が協力してSecCapコースを開講した。SecCapコースは、
スを改善するとともに、MOOC等を活用して、基礎知識につ
基礎力を養成できる共通科目と基礎科目、実践力を養成する
いても事前に準備できる環境作りを進める。
約20種類の演習、応用力を高める先進科目からなり、情報セ
キュリティにおける理論・技術・制度と法律・組織マネジメン
トをカバーできる
「幅」
と、基礎知識・実践演習・応用知識に渡
る
「深さ」を備えている。
SecCapコースの講義や演習の指導には、我が国トップレ
ベルのセキュリティ関連組織・企業と専門家諸氏に協力いた
③演習の拡充:
平成26年度に実施した演習のそれぞれの内容を改良・拡
充するとともに、ハードウェアセキュリティ演習、無線LANセ
キュリティ演習、システム攻撃・防御演習については、開講大
学をさらに増やして、学生の受講機会を増やす。
だくことができた。実際に起こっているインシデントの詳細な
解説や、実データに基づいたセキュリティ分析演習は、受講
生にとって大変貴重な機会であり、講義や演習後の受講アン
ケートでも高く評価されていた。
第2章 実践教育の取り組み状況
セキュリティ分野では、幅広い産業分野において求めら
④分野横断の講義と演習:
平成26年度に試行した分野横断講義をさらに拡充する。
ク
ラウドコンピューティング分野やビジネスアプリケーション分
平成26年度は、5連携大学および6参加大学から109名の
野の講義を受講できる機会を増やすとともに、セキュリティ
学生が、本SecCapコースの修了を目指し、登録した。SecCap
分野の講義を他分野の学生にも積極的に開放する予定であ
コースでは、共通科目・基礎科目、実践演習、先進科目のそれ
る。
また、組込みシステムのセキュリティやクラウドのセキュリ
ぞれにおいて所定の単位数を取得できた学生に、年度末の
ティなど、分野にまたがるセキュリティ技術の講義や演習に
分野シンポジウムにおいて、SecCap修了認定証を授与する。
ついて準備を進める。
平成26年度は、84名の学生が、SecCap修了認定を取得した。
平成26年度のSecCapコースのカリキュラムについては、
セキュリティ分野のアドバイザー委員の方々にご視察いただ
平成25年度は、5連携大学に加え、連携大学のいずれかと
の既存の単位互換協定に基づいて、4つの参加大学から受講
いたほか、セキュリティ人材を求める企業や官公庁の方々に
生を受け入れる形でスタートした。平成26年度は、参加大学
も紹介した。総じて、SecCapコースの講義と演習は、セキュリ
をさらに広げ、また、新たに学部・高専等を対象にAssociate
ティ実践力の養成につながるものとして高く評価され、特に
SecCap認定を設け、学部・高専からの受講生を受け入れた。
企業関係からは、SecCapコースの講義や演習を大学院生だ
FD活動については、平成26年度、5連携大学の教員が継続
けでなく、企業や官公庁へも提供して欲しいとの声が多く聞
的に相互に連絡をとりつつカリキュラムを実施したほか、教
かれた。
員向けの体験演習を実施した。平成27年度は、前述の演習拠
セキュリティ分野では、平成27年度以降に向けて、SecCap
点を増やす活動、および、それぞれの演習の指導を複数大学
コースのさらなる拡充と幅広い展開を進める予定である。講
の教員が担当する場をさらに増やし、教員側も体験を通して
義科目や演習科目は、平成26年度に実施した受講生アンケー
講義や演習の指導能力の向上を目指す。
トの分析に沿って次のような拡充を行う。
①共通科目の開講拠点とオンデマンド受講:
SecCapコースとしての必修科目である共通科目は、平成
25年度の2拠点開講から、平成26年度は、3拠点開講とし、そ
れぞれ他の連携大学・参加大学へ遠隔配信した。また、一部
の講義についてインターネットからのオンデマンド受講を試
行した。来年度は、オンデマンド受講が可能な講義を増やす
ことにより、全国の大学等の受講生により多くの受講機会を
提供する。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
45
2.3
2 . 3 .1
組込みシステム分野
取り組みの概要
学習・教育目標
2.3.2
エネルギーや環境問題など現在の日本が抱える重要課題
2.3.3節に示すように、組込みシステム分野では、基本コース
に対応するには、スマートグリッドやスマートホームに代表
(対象:主に修士1年生)
と発展コース(対象:修士1・2年生)を
されるサイバーフィジカルシステム(CPS)による効率のよい
設ける。短期集中合宿と分散PBLの2つを修了と評価した修
社会システムの実現が必要となる。CPSの開発では、組込みシ
士学生を修了生とし、その達成目標を表2.3.1のように設定し
ステムは重要な位置を占め、その品質の確保が従来以上に
た。
重要となっている。
品質(特にディペンダビリティ)の高いものづくりは技術論
なお、実際には学部生も受講するので、修了と評価した学
部生数も参考値として集計・報告する。
だけではなく、考え方(姿勢)が重要であるが、大学の通常の
講義で教育するのは困難であり、PBLを通じた実践的教育が
表2.3.1
組込みシステム分野の学習・教育目標
必要となる。本分野では、
「組込みシステム開発技術を活用
平成
25年度
平成
26年度
平成
27年度
平成
28年度
合計
40
(30)
60
(50)
80
(70)
100
(90)
280
(240)
参加
大学数
―
―
―
―
15~20
大学
FD参加
教員数
―
―
―
―
30~40
名
して産業界の具体的な課題を解決し、付加価値の高いサイ
バーフィジカルシステムを構築できる人材」を育成することを
目標としている。
この目標を実現するために、連携大学にとど
まらず、広く全国から参加大学を募り、九州大学の連合型PBL
(Project Based Learning)
と新しい産学連携教育手法であ
る名古屋大学のOJL(On the Job Learning)の2タイプを実施
し、組込みシステム分野の実践教育ネットワークを構築する。
修了生数
( )内は連携大学以外で内数
連合型PBLでは、情報処理学会組込みシステムシンポジウ
ム(ESS)ロボットチャレンジのテーマを共通課題としており、
制御、機体、各種センサー、組込みソフトウェアを利活用する
2.3.3
教育内容
ことが求められる。また、画像認識を用いた位置の把握など
分散PBLとして、連合型PBLと新しい産学連携教育手法であ
受講生がさまざまな工夫を行うことができる教材にもなって
るOJLの2タイプを設けた。両タイプとも基本コース(対象:主
いる。情報の利活用教育に適した教材と言える。
に修士1年生)
と発展コース(対象:修士1・2年生)を設けた。基
OJLでは、産業界から求められる開発課題に対して、学生、
本コースは、問題発見能力を身に付けるコースである。発展
教員、
プロジェクトマネージャ
(PM)、企業の管理者がチーム
コースは、基本コースからの単なる延長ではなく、管理技術と
を作り取り組む。企業の開発課題を大学で長期間実施するこ
その運用方法まで踏み込んだ高度な問題解決能力を身に付
とをねらいとしており、企業の課題を情報の利活用により解
けるコースである。基本コース修了に相当する能力を身に付
決する教育そのものである。
けていれば、基本コースを受講していない学生も発展コース
補助期間終了後も引き続き、本事業の成果に基づいた教
材開発(教科書の出版など)や若手教員の育成に取り組む。
を受講してよい(表2.3.2)。
基礎知識学習の授業は、参加大学で用意できないことが
また、事業継続ための施策として、単位互換制度の整備、大
考えられる。用意できない場合は連携大学(九州大学、名古
学のカリキュラムへの組み込み、修了認定証の企業への認知
屋大学)からその授業を配信した。
度向上を実施する。また、受講生の指導教員に分散PBLの実
短期集中合宿は、複数拠点で同時開催することも考える。
施ノウハウを修得してもらい、補助期間終了後に、PBLやOJL
例えば、九州大学連合型PBLの場合は、参加大学がすでに九
を各大学で継続して実施する。
州、四国、近畿から関東にまで広がっている。そのため、スプ
リングスクールは九州大学に全参加大学が集結するのでは
46
enPiT ANNUAL REPORT 2014
なく、九州大学と首都圏の大学の2拠点で同時開催した。今
九州大学では、受講生の事前教育用に大学院システム情
後、場合によっては関西地区も加えた3拠点で、
というような
報科学府で実施している次の2講座を整備し、配信できるよう
複数拠点で同時開催することも考える。
に準備した。
短期集中合宿後の分散PBLでは、問題発見から問題解決ま
●組込みシステム特論(前期)
でをプロジェクトとして取り組み、組込みシステム技術の実践
●モデル駆動開発特論(後期)
分散PBLの終了時は成果発表会を実施した。2.3.5節で詳述
また、次の教材を準備し、連合型PBLにおけるキックオフに
位置付けるスプリングスクール、サマースクールで使用した。
するが、学会と連携した成果発表会も企画した。
●キックオフ・オリエンテーション教材
●PBL演習課題・開発環境・開発技術の解説教材
【教材】
●プロジェクトマネジメント教材
整備を進めている教材は、次の通りである。
●ディペンダビリティ技術、センサー・ネットワーク技術、モデ
ルベース開発・検証技術、HW/SW協調開発技術等の組込
名古屋大学では、受講生の事前教育用に、大学院情報科学
研究科で前期に開講している次の2講座を整備し、配信した。
みシステム開発に関する基礎および発展的な内容
●分散PBLの指導方法や進め方
●ソフトウェア工学特論
●ソフトウェア開発技術、プロジェクトマネジメント手法、開
●システムプログラム特論
第2章 実践教育の取り組み状況
力を養成した。
発支援ツールの利用法
●文書作成技術、
プロジェクト実施時のコミュニケーション技
OJLのキックオフに位置付ける夏期の短期集中合宿では、
次の教材を使用した。
術
表2.3.2
組込みシステム分野の教育内容
分類
授業科目名
概要等
ディペンダビリティ技術、センサー・ネットワーク技術、モデルベー
組込みシステム基礎
ス開発・検証技術、HW/SW協調開発技術等の組込みシステム開
発に関する基礎について学ぶ。
基礎知識学習
分散PBLを実施する上で必要なソフトウェア開発技術やプロジェ
ソフトウェア工学
クトマネジメント手法について学ぶ。開発支援ツールの利用やモ
デルベース開発の基礎についても学ぶ。
任意
各大学で必要とされる科目
基本コースの分散PBL(組込みシステム開発総合演習)のキックオ
フ合宿。基本コースの学生が組込みシステム開発と分散PBLの実
基本コースキックオフ
施に必要なスキルを学ぶ。1週間程度をめどに、自主的に学生が
運営し、学生がハードウェアからソフトウェアまでの幅広い一連の
短期集中合宿
開発プロセスを実際に体験する機会にする。
発展コースの分散PBL(組込みシステム開発総合演習)のキックオ
発展コースキックオフ
フ合宿。参加大学の指導教員、PM、発展コースの学生が参加し、
分散PBLの指導方法や進め方についてFDを行う。
組込みシステム開発総合演習
基礎知識、短期集中合宿で得た知識をもとに、チームで組込みシ
基本コース
ステムを開発する。
組込みシステム開発総合演習
発展コース
分散PBL
基本コース修了者が開発可能なレベルの組込みシステムを、技術
および実用の両面から、
より実践的な組込みシステムへ発展させ
る開発方法について学ぶ。
基本/発展のいずれのコースも、連合型PBLとOJLの2タイプから一つを選択する。
連合型PBLでは、ESSロボットチャレンジのテーマを共通課題とする。
この課題では、制御、機体、各種
センサー、組込みソフトウェアを利活用することが求められる。
また、画像認識を用いた位置の把握
など受講生がさまざまな工夫を行うことができる教材にもなっている。情報の利活用教育に適した
教材と言える。
OJLでは、産業界から求められる開発課題に対して、学生、教員、PM、企業の管理者がチームを作り取
り組む。企業の開発課題を大学で長期間実施することを狙いとしており、企業の課題を情報の利活
用により解決する教育そのものである。
※「授業科目名」および「単位数」は、連携大学(九州大学・名古屋大学)、参加大学、各々のカリキュラムに準拠する。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
47
●OJL概論
九州大学
●組込み概論
九州大学は、大学院システム情報科学府情報知能工学
●組込みプログラミング基礎教材
専攻社会情報システム工学コースQITO(Kyushu University
●プロジェクト管理教材(開発プロセスと品質、プロセスフ
Information Communication Technology Architect
ローダイアグラム、予実管理)
●プロジェクト・コミュニケーション教材
Education Program)の中に、サイバーフィジカルシステム人
●文書作成技術教材
材育成プログラムPEARL(Practical information Education
collaboration network Against Research fields and
上記の組込みシステム分野の教材データは、平成26年9月
Localities)を新設し、本事業に取り組んだ。事業運営委員会
からenPiT関係者に限定公開している。開発した教材データ
はPEARL運営委員会と称し、学内教員と参加大学の教員、企
と教育実績資料等は、九州大学PEARLデータ共有システムに
業等のアドバイザーで構成される。平成24年度5名であった
蓄積し、随時閲覧可能となっている。
学内教員を平成25年4月から10名に増員し、平成25年度13名
であった学外委員もオブザーバー(委員候補の委員会出席
その他に、名古屋大学で実施している社会人技術者向け
の公開講座を、組込みシステム分野だけでなく他分野の学生
者)
も含め22名まで増員した。平成24年度は12月、2月の2回、
が受講できるようにした。
平成25年度は4月、6月、9月、12月、2月の5回、平成26年度は4
月、8月、1月の3回の打ち合わせを実施し、体制固めと教材開
2.3.4
発・広報等を実施してきた。
実施体制
(1)連携大学
名古屋大学
組込みシステム分野の連携大学は九州大学と名古屋大学
の2校である。推進体制は、上部組織として組込みシステム分
名古屋大学は、大学院情報科学研究科が本事業に取り組
野運営委員会(九州大学、名古屋大学の教員で構成)を設置
む。各専攻から教員1名が参加する事業実施委員会と、参加
し、昨年度は11月、1月、3月の3回、今年度は5月、7月、9月、11
大学を含むOJL実施担当者からなるOJL実施担当者会議を設
月、1月、3月の6回打ち合わせを実施した。組込みシステム分
けた。さらに、それらの上位に参加大学の代表者と企業のア
野運営委員会の下にサブとして九州大学、名古屋大学各々の
ドバイザリ委員を含む事業運営委員会を設置し、実施体制を
事業運営委員会を設置した。
さらにその下には、
カリキュラム
整備した。
アドバイザリ委員は、
アイシン精機株式会社、株式
策定、教材開発、FD、教務、広報などのWGを設けた。
会社デンソー、
トヨタ自動車株式会社、富士ソフト株式会社の
4社から1名ずつにご協力をいただいた。
図2.3.3
OJLフレーム
国際標準
OJLプロジェクト
一般公開
開発成果
開発成果
教員
大学A
PM
管理者
指導
指導
企業1
指導
開発成果
大学B
修士課程の
学生
幹事大学
48
enPiT ANNUAL REPORT 2014
OJLテーマ
企業の技術者
(オプション)
企業2
平成26年度は、7月2日に第1回目の事業運営委員会を開催
し、OJL基本コースのテーマと参加学生を承認した。さらに、
(4)外部人材の活用とその知見の定着、継続体制作り
外部人材の活用については、連合型PBLでは、ESSロボット
3月4日に第2回目の事業運営委員会を開催し、履修生の修了
チャレンジのテーマを採用し、学会の有識者から全面的な
認定を行うとともに、平成27年度OJL発展コースのテーマと
バックアップを得た。ESSロボットチャレンジの参加大学は、
参加学生を承認した。
可能な限り本事業に参加し、参加大学の指導教員が本事業
(2)参加大学、連携企業、団体
組込みシステム分野の参加大学は、平成24年度の18大学、
加企業も、技術アドバイザーとして本事業に参加した。他方、
OJLでは、
プロジェクト管理の経験を持つPMを配置するため
平成25年度の27大学から平成27年1月末時点で31大学に増
に、企業での開発経験者を専任で雇用した。さらに、企業の
加した。その他、大学ではないが、横浜システム工学院専門
技術者が、開発者として参加することも歓迎している。企業の
学校が九州大学PEARLに参加した。企業および技術アドバイ
技術者と一緒に仕事をすることは学生にとっても有益であ
ザー・教育アドバイザーの参画は、平成24年度の17社、平成
る。
25年度の32社から平成27年1月末時点で38社に増加した。そ
外部人材の知見を定着させるための施策については、短
の他、ESSロボットチャレンジのサポート企業など、我が国を
期集中合宿では、指導教員、PM、発展コースの学生、企業か
代表する組込みシステム関係の企業が、スプリングスクール
らのアドバイザーなどが参加し、分散PBLの指導方法や進め
とサマースクールで参画した。
方についてFDを行った。学内教員、参加大学の指導教員は、
大学教員と連携企業等のアドバイザーとの役割分担は、九
外部の人材(企業からのアドバイザーや学会関係者)
との交
州大学の連合型PBLでは、指導教員と外部アドバイザー(企
流の場を得ることができ、そこで得た知見を次のPBLやOJLの
業の技術アドバイザー・教育アドバイザーや他大学の教員)
指導に活かすことができた。成果発表会や組込みシステム教
が共同して指導にあたる。
育シンポジウムは、参加大学や連携企業だけでなく、広く外
名古屋大学のOJLは、図2.3.3に示すフレームで実施し、大
部に公開し、外部からの参加者からのフィードバックを活か
学教員と企業の管理者とPMが学生を指導する。大学教員は
す場となった。短期集中合宿でのFDや対外シンポジウムを通
学生とのペアで参加し、学生の技術的な指導にあたる。さら
じて得た知見を指導教員に持ち帰ってもらい、補助期間終了
に、OJLテーマを提供する連携企業からは管理者が参加し、
後に、各大学で実施するPBLやOJLで活かしてもらう。
学生の発表に対してコメントを加えるなどをして、企業が要
求する水準を具体的に示し指導にあたる。OJLの大きな特徴
は、各OJLプロジェクトに専任のPMを置くことである。PMは、
学生に対して、OJLテーマにおける開発を、一つの開発プロ
ジェクトとして位置付け、開発を自己管理するように指導す
PBLやFDの知見を蓄積、共有し、
●教材の共有:本事業の成果に基づいた教材の公開(教科書
として出版予定)
●単位互換制度の整備:他大学からも単位取得できる仕組
み
る。
これにより、学生は、すでに学習したソフトウェア工学の開
●学会との連携:情報処理学会との合同イベントの継続
発プロセスに関する知識を、実際の開発に対して実践するこ
●OJLの継続:OJLを継続して実施できるよう、企業に費用負
とを体験する。
連合型PBL、OJL、いずれにおいても、連携企業からの参加
者は、短期集中合宿におけるFDやPBL発表会の場で、実践的
第2章 実践教育の取り組み状況
全体の教材開発にも従事した。ESSロボットチャレンジの参
担を働きかける
により、事業期間終了後も活動を継続できるような体制の構
築を推進する。
な側面から大学に対してアドバイスを行う。
(3)学内教員の活用
学内教員の活用方法については、先導的ITスペシャリスト
育成推進事業に従事し、PBLやOJLに関する経験を有する学
内教員を指導教員として活用する。その際に、若手教員を優
先的に指導教員に登用し、教材開発(教科書の出版など)の
主担当とする。
プロジェクト管理の経験がない若手教員に対
しては、FDを行いプロジェクト管理の実務能力を養成する。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
49
2.3.5
密に連携し、情報処理学会組込みシステム研究会の後援で、
教育実績
図2.3.4に示す日程で実施した。基本コースの実施時期は、参
組込みシステム分野では、基本コース(対象:主に修士1年
加大学の学年歴と適合しなかった8月~翌年3月を、発展コー
生)
と発展コース(対象:修士1・2年生)を設けている。平成26
スと同じ4月~10月に変更し、基本コースと発展コースを合同
年度は、組込み技術体験学生の裾野拡大、ハイブリッド人材
で実施した。基本コースの実施時期を変更した結果、参加大
の養成、さらに参加大学数の増加を目的に、ライトウェイト
学の修士受講者の90%以上が最後まで受講・修了することが
できるようになった。
このPEARL基本・発展コースは、5月のス
コースを新設した。
プリングスクールでキックオフし、その後の分散PBLを経て、8
月~10月のサマースクールで成果発表を行う。11月以降は、
九州大学
学会発表にチャレンジし、翌年2月には有志による成果発表
会も企画予定という1年間のコースとなった。
九州大学PEARLの連合型PBLは、
「情報処理学会のESSロ
ボットチャレンジを目指し、複数の大学が連合してPBLを実
PEARL基本・発展コースは、5月10日~17日のスプリングス
施」するものである。ESSロボットチャレンジの実行委員会と
図2.3.4
図九州大学PEARLの平成26年度実施日程
平成26年
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
平成27年
1月
2月
3月
基礎知識学習
春合宿
コース
PEARL
ライトウェイト
コース
PEARL
基本コース
発展コース
学生募集
キック
オフ
5/10~17
スプリング
スクール
表2.3.5
成果発表会
7/5
8/18~21
中間発表会 サマースクール
前半
10/22~24
12/1
サマースクール
国際学会
後半
発表
(ESS2014) (SEEW2014)
3/6~7
国内学会
発表
(ETNET2015)
九州大学PEARLスプリングスクールのプログラム
名称・場所
月日
キックオフ
九州大学
伊都キャンパス
ウエスト2号館
506号室
&
東海大学
高輪キャンパス
4号館1階
4103教室
ミニ分散PBL
成果発表会
5/10
5/11
時 間
5/14
5/17
enPiT ANNUAL REPORT 2014
内 容
09:00〜09:30
オリエンテーション 久住憲嗣(九州大学)
09:30〜10:30
組込みシステムの現状と開発技術の特性 久保秋真(アフレル)
10:50〜12:00
ターゲット紹介 細合晋太郎(九州大学)
13:00〜15:00
Scrumによるプロジェクトマネジメント 日下部茂・細合晋太郎(九州大学)
15:20〜17:00
システム開発方法論(1) 久住憲嗣(九州大学)
17:00〜19:00
懇親会
09:00〜12:00
システム開発方法論(2) 久住憲嗣(九州大学)
13:00〜15:30
制御プログラム製作のための実験計画 三輪昌史(徳島大学)
15:50〜17:00
実践力・研究力のためのPBLで養う問題発見・解決力 渡辺晴美(東海大学)
5/12〜16
TV会議
50
分散PBL
各チームごとに計画に従い、
ミニ分散PBLを実施
18:00〜20:00
進捗報告(5分/チーム)&質問タイム[Skype]
09:00〜12:00
発表会(15分/チーム)
春合宿コ―ス
キックオフ
春合宿コ―ス
分散PBL
春合宿コ―ス
成果発表会
13:00〜14:00
14:20〜16:00
コース
学生提案&チームビルディング
クールでキックオフした。
プログラムは表2.3.5に示すように、
演習課題は、掃除機ロボットRoombaを開発したiRobot社
の教育用ロボットiRobot Createの制御ソフトウェアを開発
曜の2日間は、九州大学伊都キャンパスと東海大学高輪キャ
し、120cm×80cmの長方形の外周を、ロボットに載せたペッ
ンパスの2拠点で同時開催するが、前年度はこの2日間で合
トボトルおよび長方形の角に置いた杭のペットボトルを倒
宿終了であった。今年度はその2日間をキックオフとし、各自
さない様に一周し、走行タイムを競う。8日目の7拠点(九州
の学校に戻って5日間ミニ分散PBLを行い、次の土曜日に複
大学、東海大学、東京電機大学(東京千住キャンパス・千葉
数拠点のTV会議で成果発表会を行った。
このように、キック
ニュータウンキャンパス)、信州大学、徳島大学、広島市立大
オフ・分散PBL・成果発表がセットになったので、スプリング
学)TV会議の成果発表会では、各チームが工夫した点、苦労
スクールのみ受講する「春合宿コース」を新設し、
このライト
した点、走行ベストタイム等を発表した(図2.3.6)。
ウェイトコースの受講生も募集した。広島市立大学、信州大
学、芝浦工業大学から各1チームが新たに加わり、
スプリング
スクールの参加者数は学生75名、教員・アドバイザー25名の
計100名であった。
図2.3.6
第2章 実践教育の取り組み状況
土曜日から翌週の土曜日までの8日間とした。最初の土曜・日
九州大学PEARLスプリングスクールの模様
東京会場:東海大学
ロボットのハードウェア性能調査の演習
福岡会場:九州大学
7拠点TV会議の成果発表会
enPiT ANNUAL REPORT 2014
51
スプリングスクール終了後の分散PBLでは、表2.3.7に示す
サマースクールは、前半と後半の2回に分けて行った。前半
競技会での演習課題に取り組んだ。
スマートモバイル競技の
は8月18日~19日に日本科学未来館で競技会(分散PBLの成
コンパルソリ部門(必修)では、前年度は課題1の直線走行
果発表)およびシンポジウムを、8月20日~21日に東海大学で
課題のみであったが、今年度は回転も含む走行課題が2つ追
分散PBLの振り返りを行った。後半は10月22日〜24日の情報
加された。ベーシック部門(必修)では、ロボット2台でもよく
処理学会組込みシステム研究会が主催する組込みシステム
なった。また、時間制限がなくなり、地図精度を競い合った。
シンポジウム2014(ESS2014)の中で、成果発表会とPEARL修
競技会で2台使ったチームは1チームだけであったが、因みに
了証授与を行った(表2.3.8)。サマースクールの参加者数は
そのチームは3位であった。
アドバンス競技(希望者のみ)は、
学生56名、教員・アドバイザー57名の計113名であった。
前年度はベーシック部門と同じ課題で高度な結果を要求す
る競技であったが、今年度は新たなサービスを提案する競技
8月18日~19日のスマートモバイル競技の競技会では、九
となった。アドバンス競技の参加チーム数は前年度の1チー
州大学、東海大学、東京電機大学(千住・千葉)、芝浦工業大
ムから2チームに増えた。
学(豊洲)、東京都市大学、関東学院大学、徳島大学、広島市
立大学、横浜システム工学院専門学校の10チームが出場し、
表2.3.7
競技会での演習課題
スマートモバイルロボット競技
・競技ハードウェア:iRobot Createを使用
・コンパルソリ部門
課題1: 5メートル直線走行。実行は1回。課題終了時の目標地点からのずれで評価。
課題2: フィールド上に示した50cm四方の範囲からはみ出さずに、180度超信地旋回を反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回り、反時計回り
と走行。実行は1回。課題終了時の目標角度からのずれを評価。
課題3: 5メートル先のドックに入る。実行は2回。
ドック入り判定(充電モードが3秒以上継続)が得られたかどうかにより評価。
評価: 各課題の評価の最高点の合計点をコンパルソリ部門の評点とする。
・ベーシック部門
課題: 規定の時間内に環境内を自律的に動作し、その過程において地図を作成。ロボットは最大2台使用することができる。いずれかのロボット
が環境中に配置されているドッキングステーションで停止したことをもって、課題終了。なお、
ドッキングステーションへの到達は充電モー
ドへ切り替わったことにより判定。課題終了後に可視化した地図を審判が判定することとする。
評価: ①地図の完成度、②地図の数値情報の提示、③規定時間内ゴール
アドバンス競技
・競技ハードウェア:1台以上のiRobot Create、1機以上の飛行物体(AR-Droneや飛行船など、機種は定めない)、
その他を使用
課題: チャレンジャー提案型の競技。チャレンジャーの自由な発想により新たなサービスを創出し、提案サービスのプロトタイプについて、発表
およびデモ(各々15分程度)を行う。
評価: ①サービス観点、②工学観点、③プロジェクトマネジメント観点
52
enPiT ANNUAL REPORT 2014
表2.3.8
九州大学PEARLサマースクールのプログラム
日本科学
未来館7階
イノベーション
ホール
未来館ホール
分散PBLの
振り返り
東海大学
高輪キャンパス
4号館1階
4101教室
8/18
8/19
8/20
8/21
10/22
成果発表会
国立
オリンピック
記念
青少年総合
センター
10/23
第2章 実践教育の取り組み状況
競技会
(分散PBLの
成果発表)
および
シンポジウム
08:00〜 開場:RC2014(*)運営委員集合
(*)ESSロボットチャレンジ2014実行委員会はRC2014と略記
09:00〜 チャレンジャー集合[会議室2]
:調整・準備
12:50〜13:00 オープニング 紫合治(東京電機大学)
12:50〜14:40
総合司会
スマートモバイルロボット競技・コンパルソリ
情報事業委員視察
13:00〜14:40
久住憲嗣(九州大学)
部門 競技会((8分)×10チーム=80分)
競技進行
スマートモバイルロボット競技・ベーシック部門 リハーサル((10分+5分)×
15:00〜18:00
久 保 秋 真( チェン ジ ビ
10チーム=150分)
ジョン)
08:00〜 開場:RC2014運営委員集合
競技審判
09:00〜 チャレンジャー集合[会議室2]
:調整・準備
小 倉 信 彦( 東 京 都 市 大
スマートモバイルロボット競技・ベーシック部門 競技会((10分+5分)×10
学)
09:30〜12:30
チーム=150分)
三輪昌史(徳島大学)
13:30〜14:00 競技会成績発表・講評 元木誠(関東学院大学)、汐月哲夫(東京電機大学)
元木誠(関東学院大学)
MDD/ESSロボットチャレンジ10周年記念シンポジウム[会場:未来館ホール]
競技タイマー係
14:00〜16:30 パネル:
「この10年を振り返る」 コーディネータ:二上貴夫(東陽テクニカ)、
細合晋太郎(九州大学)
渡辺晴美(東海大学)
17:00〜19:00 交流会 [会場:展望ラウンジ]
09:00〜09:40 PEARL第9回運営委員会 [会場:1号館4階会議室]
09:50〜10:00 オープニング 福田晃(九州大学)
講義1:
「アイデアと論文のすきま」
10:00〜11:30
ワークショップ・アドバイザ
岸知二(早稲田大学)
座長:渡辺晴美(東海大学) 久 保 秋 真( チェン ジ ビ
11:30〜12:00 ワークショップ
ジョン)
13:00〜14:30 (講演を踏まえたチーム内討議)
渡辺晴美(東海大学)
15:00〜17:00 学生企画セッション:
三輪昌史(徳島大学)
講義2:
「機構の特徴を活かした
小 倉 信 彦( 東 京 都 市 大
10:00〜11:30 インタラクションデザインによるロボット設計」
学)
奥川雅之(愛知工業大学)
座長:三輪昌史(徳島大学)
元木誠(関東学院大学)
11:30〜12:00 ワークショップ
久住憲嗣(九州大学)
13:00〜14:30 (講演を踏まえたチーム内討議)
細合晋太郎(九州大学)
14:45〜16:45 チームごとの討議結果発表
16:45〜17:00 クロージング 渡辺晴美(東海大学)
◆ロボットチャレンジ:デモセッション (会場:カルチャー棟 B1 リハーサル室)
総合司会:久住憲嗣(九州大学)
09:00〜10:30 コース設営、チューニング
10:30〜11:50 ベーシック部門デモンストレーション1(15分×5チーム)
座長:小倉信彦(東京都市大学)
13:00〜14:20 ベーシック部門デモンストレーション2(15分×5チーム)
座長:久保秋真(チェンジビジョン)
競技進行:久住憲嗣(九州大学)、
14:40〜15:40 アドバンス競技 競技会(20分×2チーム)
競技審判:二上貴夫(東陽テクニカ)、三輪昌史(徳島大学)
15:40〜16:00 アドバンス競技 競技会講評 二上貴夫(東陽テクニカ)、三輪昌史(徳島大学)
16:00〜16:20 九州大学PEARL修了証授与式 プレゼンター:福田晃(九州大学)
◆ポスター展示(コアタイム16:40〜17:50)
(会場:センター棟 4F 416号室)
1.不確定要素を考慮した組込みシステム開発手法の提案:Ispd and Wisp(九州大学)
2.2つの自律移動型ロボットを利用した新しい警備システムの提案:Miw研(徳島大学)、Ispd and Wisp(九
州大学)
3.iRobot Createによる探索地図作成のアルゴリズム:Miw研(徳島大学)
4.オドメトリを用いた自律移動ロボットによる環境地図作成:HCU(広島市立大学)
5.
ランドマークを用いた自己位置補正手法の提案:もっくん(関東学院大学)
11:00〜17:50 6.A*アルゴリズムを用いた未調査領域の探索:綾鷹(東京電機大学)
7.
スクラムとチケット駆動開発の組み合わせによるソフトウェア開発:電大ロボメカ(東京電機大学)
8.イベント型ランドオンゲームによるアミューズメントサービスの提供:WHC(東海大学)
9.チケット駆動開発とStrategyパターンを用いたアイデア試行の手法:WHC(東海大学)
10.モデル記述言語stmcのためのMDD向けデバッグ支援ツールの開発:ふわっと
(東京都市大学)
11.ユーザ機能駆動開発を用いたスマートモバイルロボット開発プロジェクト:芝浦Navi(芝浦工業大学)
12.
スマートモバイルロボットiRobot Createの基本性能をソフトウエアで引出す工夫:YSE_RoboChale2014
(横浜システム工学院専門学校)
★ロボットチャレンジ:発表セッション
(会場:センター棟 4F 402号室)
★ロボチャレ1:分野・地域を越えた実践的情報教育恊働
座長:久住憲嗣(九州大学)
ネットワーク組込みシステム分野PBL成果報告
(発表時間:10分×1+13分×4+15分×3)
1.enPiT概要説明:久住憲嗣(九州大)
2.
プロジェクトマネージメント的観点から見た反省:吉橋忠政(関東学院大)
3.
自律移動ロボットの自己位置推定の精度向上:松田大樹、田頭幸宏、中村貴史(広島市立大)
4.
コンテキスト指向プログラミング実現に向けたプログラム実行時書き換えフレームワークの研究に至っ
13:30〜15:20
た経緯:谷川郁太、渡辺晴美(東海大)
5.不確定要素を含んだ組込みシステム開発のリスク管理手法の評価:青山慎二、高赫、佐伯良光、張暁龍、
中里一幾、山﨑友貴、久住憲嗣(九州大)
6.公共空間におけるWi-Fiパケット人流認識システム:福崎雄生(立命館大)
7.車載ソフトウェアプラットフォームとモバイル端末のシステム連携:奥山尚平(愛知工業大)
8.RTOSをベースとしたMindstorms EV3用開発プラットフォーム:李奕驍(名古屋大)
★ロボチャレ2:パネル「ESSロボットチャレンジ10周年:10年を振り
コーディネータ:
返り、今後を語ろう」
菅谷みどり
(芝浦工業大学)
15:30〜16:40
パネリスト:近藤隆路(大阪工業大学)、高瀬英希(京都大学)、細合晋太郎(九州大学)、柳美由貴(芝浦工業
大学)
18:00〜20:00 ◇情報交換会(会場:カルチャー棟 2F レストランとき)
『ロボッ
e n P i Tトチャレンジ2014表彰式』
ANNUAL REPORT 2014
53
図2.3.9
九州大学PEARLサマースクールの模様
スマートモバイル競技ベーシック部門の競技会
講義後のワークショップ
enPiT-Emb PBL成果報告セッション
アドバンス競技の競技会
PBL成果を競い合った(図2.3.9)。採点基準に基づく競技審判
8月20日~21日の振り返りでは、①講義1:アイデアと論文
の評価により、競技終了後に各チームの順位が発表された。
のすきま
(岸知二教授、早稲田大学)、②講義2:機構の特徴を
しかし、サマースクール後半までの期間も、分散PBLを引続き
活かしたインタラクションデザインによるロボット設計(奥川
行った。
雅之准教授、愛知工業大学)、③ワークショップ(講義を踏ま
サマースクール後半の10月22日には、全チームが8月の競
えたチーム内討議)、④チームごとの討議結果発表、を実施し
技会での戦略、成功・失敗の原因分析などを発表しながら、
た。10月23日の分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネッ
2ヶ月間でブラッシュアップさせたロボット走行のデモンスト
トワーク組込みシステム分野PBL成果報告セッションでは、九
レーションを披露した。そのデモの後、地上走行ロボットと飛
州大学、関東学院大学、広島市立大学、東海大学、名古屋大
行物体とを使用するアドバンス競技の競技会を2チームの参
学、立命館大学、愛知工業大学の7名がPBL成果の論文発表
加で実施した。新規の課題であったので、予想外の展開も見
を行った。
られたが、見学チームのメンバーも興味深く注視していた。
10月23日のポスター展示では、
スマートモバイル競技10チー
ムとアドバンス競技2チームがポスター発表を行った。
九州大学PEARLと密に連携しているESSロボットチャレン
ジは、平成26年に10周年を迎えた。そこで、ロボットチャレン
図 2 . 3 . 1 0 ロボットチャレンジ10周年記念イベントの開催
日本科学未来館でのシンポジウム
54
enPiT ANNUAL REPORT 2014
ESS2014でのパネルセッション
範で多様な連合型PBLを目指すものである。表2.3.11は成果
り返る10周年記念シンポジウムを8月19日に開催した。
また、
発表会での24チームのPBLテーマである。非情報系のハイブ
ロボットチャレンジの参加チャレンジャーまたは運営サポー
リッド人材は2チームで、修士1年7名、学部4年4名であった。
ターである若手教員・学生が今後の10年を語る10周年記念
複数大学にまたがるチームとしては、九州大学と徳島大学で
パネルを10月23日に企画した(図2.3.10)。さらに、
『分野を超
構成した1チームが生まれた。
この3名はコンテストチャレン
えたものづくりと教育-組込みシステム開発教育のためのロ
ジ型テーマのチームメンバーでもあり、両方のPBLテーマに
ボットチャレンジ』
と題する特集を学会誌情報処理1月号に13
取り組んだ。
名の共著で投稿した。
来年度の九州大学PEARLは、今年度と同様の日程で基本・
前述したように、今年度から
「春合宿コース」を新設した。
発展コース、春合宿コースを実施する計画である。また、サ
また、
「基本・発展コース」
ではロボットチャレンジ競技会に向
マースクール前半のみ受講する夏合宿コースを追加募集す
けたコンテストチャレンジ型テーマのみならず、事業企画/技
ることも計画している。ただし、修士2年生・学部4年生の採用
術開発型テーマでの参加も受け入れた。後者は学生一人の
選考開始が8月に変更されることを踏まえ、サマースクールの
チームや、複数大学にまたがるチームでの参加も募り、
より広
実施日程を工夫することが重要課題と考えている。
第2章 実践教育の取り組み状況
ジの主催・運営の中核を担ってきた先生方がこの10年を振
表 2 . 3 . 1 1 九州大学PEARL PBLテーマ一覧
№
春合宿コース
基本/
発展コース
PBLテーマ
チーム名(所属)
・チーム人数
1
速さと精度を求めて
チーム信州大学(信州大学)6名(M2:3名、M1:2名、B4:1名)
2
PEARLスプリングスクール成果報告
ドリーズ(芝浦工業大学)6名(M1:2名、B4:4名)
3
スプリングスクール走行課題の振り返り
ふわっと
(東京都市大学)4名(M2:1名、B4:1名、B3:2名)
4
PEARL成果報告
東海大学A(東海大学)9名(M2:2名、M1:3名、B4:4名)
5
iRobot開発最終報告
東海大学B(東海大学)10名(M1:3名、B4:7名)
1
不確定要素を考慮した
組込みシステム開発手法の提案
Ispd and Wisp(九州大学)6名(M2:6名)
2
iRobot Createによる探索地図作成のアルゴリズム
Miw研(徳島大学)4名(M1:4名)
【H】
3
チケット駆動開発と
Strategyパターンを用いたアイデア試行の手法
WHC(東海大学)
7名(M2:1名、M1:1名、B4:5名)
4
オドメトリを用いた
自律移動ロボットによる環境地図作成
HCU(広島市立大学)3名(M1:3名)
5
ランドマークを用いた自己位置補正手法の提案
もっくん(関東学院大学)4名(M1:1名、B4:3名)
6
A*アルゴリズムを用いた未調査領域の探索
綾鷹(東京電機大学)4名(B4:4名)
7
スクラムとチケット駆動開発の
組み合わせによるソフトウェア開発
電大ロボメカ(東京電機大学)
7名(M1:3名、B4:4名)
【H】
8
モデル記述言語stmcのための
MDD向けデバッグ支援ツールの開発
ふわっと
(東京都市大学)
3名(M2:1名、B3:2名)
9
ユーザ機能駆動開発を用いた
スマートモバイルロボット開発プロジェクト
芝浦Navi(芝浦工業大学)
9名(M1:5名、B4:4名)
10
スマートモバイルロボットiRobot Createの
基本性能をソフトウエアで引出す工夫
YSE_RoboChale2014(横浜システム工学院専門
学校)2名(2年:2名)
11
イベント型ランドオンゲームによる
アミューズメントサービスの提供
WHC(東海大学)
7名(M2:1名、M1:1名、B4:5名)
12
2つの自律移動型ロボットを利用した
新しい警備システムの提案
Miw研(徳島大学)、Ispd and Wisp(九州大学)
3名(M2:2名、M1:1名【H】
)
13
派生開発における形式手法適用研究
QNET(九州大学)1名(M2:1名)
14
リピーターを対象にしたイベント配信サービスeventry
SEO(九州大学)6名(M2:6名)
15
PBL向けScrum支援ツール開発
Master4(九州大学)4名(M2:4名)
16
おもりセンサを用いた無人販売管理システム
ICLA(九州大学)4名(M1:4名)
17
利用者位置に応じた携帯メール自動応答システム
絹織(九州大学)3名(M1:3名)
18
携帯置き忘れ検知システム
QITOKATTO(九州大学)4名(M1:4名)
19
植物育成支援システム
メガネーズ(九州大学)4名(M1:4名)
コンテスト
チャレンジ型
事業企画/
技術開発型
【H】
:ハイブリッド人材
enPiT ANNUAL REPORT 2014
55
基本コースの参加募集は、5月から6月にかけてWebを用
名古屋大学
いて実施した。申し込みを希望する学生は、自身の指導教員
名古屋大学で行うOJLは、企業が関連する開発テーマを用
の許可を得た上で、申し込みを行った。
いて、開発プロジェクトを立ち上げ、
プロジェクト管理を体験
OJLテーマは、複数の大学から学生を公募するテーマだけ
させながら学生を育成することに特徴がある。平成26年度
ではなく、各参加大学が個別にテーマを設定して当該参加大
は、図2.3.12に示す日程で実施した。OJLは、基本コースと発
学の学生のみを割り当てるテーマがある。
展コースで構成されており、基本コースの受講生は主に修士
これらのテーマと受講生は、7月2日に実施した事業運営
1年生を、発展コースは修士2年生を想定している。発展コー
委員会で承認された。最終的には、表2.3.13に示す19のOJL
スは、基本コースの修了者を対象として、
より高度な水準の教
テーマに、それぞれ学生が割り当てられた。
育を行う。
加えて平成26年度は、主にハイブリッド人材を対象とした
OJL基本コースは10月からの後期に実施するが、OJLに申
短期間で組込み技術を学ぶライトウェイトコースを新設し、IT
し込みを行う学生は、必要な基礎的な科目を前期に履修する
を専門としない学生への教育に取り組んだ。
ことが求められていた。例えば、名古屋大学の学生は、上期に
図 2 . 3 . 1 2 名古屋大学OJLの平成26年度実施日程
平成26年
3月
4月
5月
基本コース
6月
7月
参加申込
10月
11月
12月
合宿A
平成27年
1月
ライトウェイトコース
合宿A’
2月
3月
OJLの実施
合宿B
成果発表会、
OJL修了認定
8/25~29 9/8~12
主にハイブリッド人材を対象
継続
確認
9月
基礎教育(必要に応じて受講)
主に
修士1年生を
対象
発展コース
8月
合宿B’
8/25~27 9/8~9
主に修士2年生を対象
OJLの実施
成果発表会、OJL修了認定
合宿C
合宿D
キックオフ合宿
4日間程度
修了合宿(発表&後輩指導)
4日間程度
表 2 . 3 . 1 3 名古屋大学のOJLテーマと受講生数
56
テーマ
人数
車載制御アプリケーションの
マルチコア向けのアーキテクチャおよび評価環境実現 M1 1名
自律移動ロボット制御システム向け
省電力指向ソフトウェアプラットフォーム
B4 1名
M1 2名
制御アルゴリズムのメニーコア向け最適化
M1 1名
カメラで観測する物体の三次元位置検出
M1 1名
組込みソフトウェア開発のプロダクト分析
M1 1名
M2 1名
CloudiaにおけるAndroid向け
データストリームエンジンの開発
M1 1名
車載Ethernet通信プロトコルスタックの開発
M1 1名
M1 1名
プロセッサの性能見積もり機構の開発
M1 1名
車両周辺環境とドライバ状態を考慮した
自動車運転モデルの検討
mRubyベースのロボット制御プラットホームの開発
M1 3名
不揮発性メモリの信号処理システムの開発
M1 1名
組み込みソフトウェアを対象としたコードクローン解析
M2 1名
組込みシステム用MDD開発を意識した
基礎的な概念モデルに対する評価機構の開発
M2 1名
2015年度ETロボコン向け教材開発
B4 2名
M1 4名
組込みシステム向け仮想化を用いた
ロボット制御プラットホームの研究開発
B4 1名
RoboCar 1/10 による
車載ソフトウェアプラットホームの実証実験
M1 1名
稲作用除草ロボットの開発
B4 1名
耐タンパLSIの車載セキュリティーへの応用
M1 4名
M2 1名
カスタマイズ可能なコーディングチェッカによる
セキュアコーディング
M1 3名
enPiT ANNUAL REPORT 2014
テーマ
人数
開講される
「システムプログラム特論(2単位)」
と
「ソフトウェ
OJLの受講生は、8月25日~29日と、9月8日~12日の合計
ア工学特論(2単位)」の履修が求められた。なお、
この2科目
2週間にわたり実施した短期集中合宿への参加が求められ
は、参加大学に希望があれば、TV会議システムで配信した。
た(表2.3.14)。前半の合宿では、OJLの実施に必要な基礎知
表 2 . 3 . 1 4 名古屋大学OJLサマースクールのプログラム
8月25日
9:00
8月26日
13:00
受付
昼食
オリエンテーション
開発文書 演習
開発文書 講義
8月29日
チーム開発 実習
下呂へ移動
SWEST
2日目参加
(午前)
昼食
昼食
昼食
成果発表会 準備
チーム開発
実習
競技会
SWEST
2日目参加
(午後)
SWEST
1日目参加
成果発表会
組込み基礎 講義&演習
19:00
8月28日
チーム開発 説明
チーム開発 実習
12:00
8月27日
第2章 実践教育の取り組み状況
基本コース合宿Aスケジュール
名古屋へ移動
懇親会
解散
基本コース合宿Bスケジュール
9月8日
8:45
9月9日
9月10日
9月11日
9月12日
朝礼
朝礼
朝礼
朝礼
チーム開発 実習
発展コース
成果発表
昼食
昼食
9:00
11:30
管理ツール 実習
プロジェクト 管理体験談
昼食
プロジェクト
計画書作成/見直し
クロージング
12:30
13:30
受付
オリエンテーション
OJLガイダンス
17:00
チーム開発 実習
チーム開発 実習
設計書の書き方
18:00
発展コース
成果発表
発展コース
履修者による
後輩指導と討議
プロジェクト
計画書作成
討議
発展コース合宿Dスケジュール
9月8日
8:45
9月9日
9月10日
9月11日
9月12日
受付
朝礼
朝礼
朝礼
発表資料作成
発展コース
成果発表
基本コース
参加学生の指導
基本コース
参加学生の指導
昼食
昼食
昼食
9:00
11:30
クロージング
12:30
発展コース
成果発表
13:30
基本コース
参加学生の指導
発表資料作成
17:00
18:00
基本コース
参加学生の指導
討議
enPiT ANNUAL REPORT 2014
57
識の習得と、異なる大学の学生が同一の開発チームとなり行
に参画する教員や企業関係者の要求を踏まえて開発対象を
う自律走行車を制御するモデルベース開発実習、さらに社
明確にした要求仕様書を作成することや、要求仕様に従い設
会人が参加する組込みシステム技術に関するサマーワーク
計を実施した結果としての設計書を作成することなどが求め
ショップにおける発表などを行った。後半の合宿では、
コミュ
られた。
ニケーション能力や文書作成力に関する講義・演習を行った
後で、OJLで実施する開発計画書を作成した。
この合宿には、基本コースと発展コースの受講生が参加し
た。都合により参加できなかった学生に対しては、後日にPM
が個別に指導を行った。
その後に、学生はそれらの成果物をどのようなスケジュー
ルに従い開発するかをガントチャートで記述することが求め
られた(図2.3.16)。なお、
ガントチャートは、OJLの進捗状況に
応じて、適宜改訂することが指示された。
なお、
ライトウェイトコースの受講生は、上記の夏合宿の一
部に参加した。修士2年2名、修士1年1名、学部4年5名、計8名
8月25日~29日に実施した前半の合宿は、実践力を養成す
の内、修士2年1名を除く7名がハイブリッド人材であった。彼
ることを目的として、図2.3.15に示すように講義と演習が繰り
らは3~4名でチームを作り、設計書を書きながら自律走行車
返し行われた。
を制御するモデルベース開発を行うことが求められた。合宿
その後、8月28日と29日に、学生は、社会人も参加するワー
の8月25~27日の前半と9月8~9日の後半でチームメンバー
クショップSWEST16(組込みシステム技術に関するサマー
を入れ替え、設計書のみを引き継いで開発を行う経験をし
ワークショップ)に参加した。
た。
9月8日~12日に実施した後半の合宿では、学生は改めて
10月から始まったOJLでは、学生は、設計書の作成やプロ
文書作成やコミュニケーション技術に関する講義と演習を受
グラムの実装だけではなく、プロジェクト管理を実践的に学
けた後、プロジェクト計画書の作成が求められた。具体的に
習した。具体的には、学生は週報を作成し、1回/週の割合で
は、OJLで行う開発を一つのプロジェクトと見なし、OJL基本
PMと打ち合わせを行うことが求められた。
コースの終了までの期間内に作成する成果物を定義した。つ
図2.3.17に、週報の書式を示す。週報には、
これまでの1週
まり、学生は、単にプログラムを実装するだけではなく、OJL
間の実績とこれからの1週間の予定を記入する。学生は週報
をPMへ提出し、PMと週例ミーティングを行う。
図 2 . 3 . 1 5 合宿での講義と演習の様子
PMが遠隔地の異なる大学に所属する学生と週例ミーティ
ングを行う場合は、WebEX(Webを使用した会議システム)
も
しくはTV会議システムを用いて実施した。週報などのファイ
ルは、SVNを用いて学生とPMの引き渡しをした。1回のミー
ティング時間は、テーマや報告内容により異なるが、おおむ
ね1時間程度であった。
PMは、学生の進捗状況を確認し、抱えている課題を認識
し、必要なアドバイスを実施するとともに、PMコメント欄に
記入して週報を返却した。進捗が当初の計画通りに進んで
いない場合には、計画の見直しを学生とともに行い、ガント
チャートの改訂を指示した。
学生は、スケジュール改訂の体験を通じ、自らの生産性を
認識し、妥当なスケジュールを見積もる実践力を養う。なお、
生産性に関心を持たせるために、学生は、1週間で作成した
プログラムや開発文書などの分量と、それに要した時間を週
報に記録することが求められている。
PMは必要に応じて、学生が作成する要求仕様書や設計書
などの開発文書を精査し、技術的な内容や書き方を具体的
に指導した。また、学生が使用する開発環境の調査を行った
場合には、調査結果を記録するように求めた。
このように、OJLでは、
プログラム実装のみを行うことを許
さず、開発プロセスに従い、要求定義や設計などを行うこと
が求められている。そして、各アクティビティにおける成果物
としての開発文書の作成が求められている。その上で、
ガント
58
enPiT ANNUAL REPORT 2014
チャートを用いて、
スケジュールの自己管理を行うように習慣
づけられる。
練習を実施した。
OJL発展コースは、平成26年度の上期に、16テーマが実施
された。発展コースの指導内容は、基本コースのそれと同様
携企業の方と指導教員に対して、月例報告を行うことが求め
である。ただし、PMが学生に要求する水準を高めている。さ
られた。学生は、参加者から、進捗状況や技術的な内容につ
らに、一部の学生に対しては、修士論文の作成をプロジェクト
いての指導を受けた。
月例報告会の時間はテーマごとに異な
に設定して、修士論文の提出までのガントチャートを作成す
るが、おおむね1~2時間程度であった。
るように指導した。つまり、修論研究の全体に対してプロジェ
OJL発展コースは、平成26年3月3日~6日の名古屋大学東
クト管理を実践するように求めた。プロジェクト管理の実践
山キャンパスでの短期集中合宿でキックオフした。当合宿で
的な能力は、単にシステムの開発だけではなく、研究論文の
は、平成25年度基本コースの成果発表を行うとともに、発展
作成までを含み発揮されるべきであり、OJLを通してさまざま
コースのプロジェクト計画作成や、就職活動に向けての面接
な問題解決を行う実践力を養成する。
図 2 . 3 . 1 6 ガントチャート例
第2章 実践教育の取り組み状況
さらに学生は、1回/月の割合で、OJLテーマに参画する連
図 2 . 3 . 1 7 週報の書式
enPiT ANNUAL REPORT 2014
59
なお、組込みシステム分野の活動を参加大学以外にも広
らば、今年度末の組込みシステム分野は、2連携大学と日本全
報するために、10月23日に開催されたESS2014のenPiT-Emb
国(北海道・東北地方は除く)に広がっている31参加大学とい
セッションにおいて、OJL学生による発表を3件行った。
う構成となった。参加大学の受講生が修士学生だけなら60%
来年度の名古屋大学OJLは、基本コースと発展コースを図
以上を占め、学部等の学生も含めると75%を越えるのが特徴
2.3.18に示すように実施する。発展コースは、
より高い水準で
である。来年度も参加大学数を増加させていくので、
この比
の実践力を養成するために、その受講生は、基本コースの修
率はさらに高くなっていくからである。
了者から希望する者を選考する。修士2年生の就職活動が9
月まで行われるので、発展コースの合宿時期の変更を検討し
ている。
【学会発表等の成果一覧】
●平成26年度
(1)大迫 周平, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 加藤 公敬, 石塚 昭
彦, 坂口 和敏, 川高 美由紀, 森田 昌嗣, 鵜林 尚靖, 福田 晃,
【まとめ】
組込みシステム分野の連携大学間の横断活動は、2ヶ月に
"PBLにおけるデザイン思考適用の効果と課題," 情処学研報
1回の頻度で開催している組込みシステム分野運営委員会
2014-SE-184(2), pp.1-7, 日立研究所(勝田地区),May 2014.
での打ち合わせに基づいて、短期集中合宿への講師派遣、
(2)細合 晋太郎, 石田 繁巳, 亀井 靖高, 大迫 周平, 井垣 宏, 鵜
ESS2014でのenPiT-Embセッション企画、組込み技術とネット
林 尚靖, 福田 晃, "IoTシステムを題材としたPBLの導入提案,"
ワークに関するワークショップETNET2014での組込みシステ
情処学研報 2014-SE-185(7), pp.1-6, 富良野文化会館, July
ム分野修了生の発表などを行った。来年度も教員・アドバイ
ザーの分野内、分野間の交流も図りながら、学生教育の場、
2014.
(3)Shaymaa E. Sorour, Tsunenori Mine, Kazumasa Goda
and Sachio Hirokawa, "Prediction of Students' Grades
教員FDの場を広げていく。
組込みシステム分野の平成26年度の受講生数と修了生数
based on Free-style Comments Data," Proc. the 13th Int.
を表2.3.19に示す。受講生数は昨年度の92名から120名に、
Conf. on Web-based Learning (ICWL2014), LNCS 8613,
修了生数は昨年度の65名から114名に増加し、今年度目標
p.142, Tallinn, Estonia, Aug. 2014.
の60名を超えた。なお、学部生等も加えると受講185名、修了
(4)野田 夏子, 細合 晋太郎, "モデル駆動で開発しよう―実適
157名であった。ハイブリッド人材の修了は修士8名と学部生
用における課題と先端技術 ," ソフトウェアエンジニアリング
9名であった。
シンポジウム2014論文集, pp.217-217, 芝浦工業大学芝浦
発展コースは、就職活動を行う修士2年生を主な対象とす
キャンパス, Sep. 2014.
る。また、参加大学から多数の学部4年生も受講生に含まれ
(5)細合 晋太郎, 石田 繁巳, 亀井 靖高, 大迫 周平, 井垣 宏, 鵜
る。来年度は、修士2年生・学部4年生の採用選考開始が8月に
林 尚靖, 福田 晃, "IoTを題材としたPBLの実施と分析," 日本ソ
変更され、就活スケジュールが大きく変わる初年度であるの
フトウェア科学会第31回大会(平成26年度)
(JSSST2014)講
で、適切に状況を確認しながら、合宿や成果発表会などのス
演論文集, rePiT1-3, 名古屋大学東山キャンパス, Sep. 2014.
ケジュールを工夫することが重要課題と考えている。なぜな
(6)舘 伸幸, 山本 雅基, 吉田 則裕, 高嶋 博之, 海上 智昭, 安藤
図 2 . 3 . 1 8 名古屋大学OJLの平成27年度計画日程
平成26年
3月
4月
基本コース
5月
6月
参加申込
ライトウェイトコース
合宿A
10月
11月
12月
合宿A’
平成27年
1月
2月
3月
OJLの実施
合宿B
成果発表会、
OJL修了認定
合宿B’
8/24~26 9/7~8
(予定) (予定)
主に修士2年生を対象
OJLの実施
合宿C
キックオフ合宿
2月末 or 3月始め 4日間程度(予定)
60
9月
8/24~28 9/7~11
(予定) (予定)
主にハイブリッド人材を対象
継続
確認
8月
基礎教育(必要に応じて受講)
主に
修士1年生を
対象
発展コース
7月
enPiT ANNUAL REPORT 2014
合宿D
成果発表会、OJL修了認定
オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2014.
友樹, 松原 豊, 本田 晋也, 高田 広章, "OJLによる実践的組込
みシステム教育," 日本ソフトウェア科学会第31回大会(平成
(9-1)久住 憲嗣, "enPiT概要説明."
26年度)
(JSSST2014)講演論文集, rePiT2-1, 名古屋大学東山
(9-2)吉橋 忠政, "プロジェクトマネージメント的観点から見
た反省."
キャンパス, Sep. 2014.
(7)大迫 周平, 孔 維強, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 石田 繁巳,
自己位置推定の精度向上."
価アンケート傾向分析," 日本ソフトウェア科学会第31回大会
(9-4)谷川 郁太, 渡辺 晴美, "コンテキスト指向プログラミン
(平成26年度)
(JSSST2014)講演論文集, rePiT4-2, 名古屋大
グ実現に向けたプログラム実行時書き換えフレームワーク
の研究に至った経緯."
学東山キャンパス, Sep. 2014.
(8)井垣 宏, 奥田 剛, 細合 晋太郎, 早瀬 康裕, "続・ソフトウェ
(9-5)青山 慎二, 高 赫, 佐伯 良光, 張 暁龍, 中里 一幾, 山﨑
ア工学の共通問題:2.PBLと共通問題~成功事例と失敗事例
友貴, 久住 憲嗣, "不確定要素を含んだ組込みシステム開発
による共通問題の形成~," 情報処理, Vol.55, No.10, pp.1064-
のリスク管理手法の評価."
(9-6)福崎 雄生, "公共空間におけるWi-Fiパケット人流認識シ
1068, Oct. 2014.
(9)分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク組
込みシステム分野, "分野・地域を越えた実践的情報教育協働
ステム."
(9-7)奥山 尚平, "車載ソフトウェアプラットフォームとモバイ
ル端末のシステム連携."
ネットワーク組込みシステム分野(enPiT-EMB) Project-Based
Learning成果報告," 組込みシステムシンポジウム2014, 国立
第2章 実践教育の取り組み状況
鵜林 尚靖, 福田 晃, "テキストマイニングによるPBL発表会評
(9-3)松田 大樹, 田頭 幸宏, 中村 貴史, "自律移動ロボットの
(9-8)李 奕驍, "RTOSをベースとしたMindstorms EV3用開発
表 2 . 3 . 1 9 組込みシステム分野の受講生数・修了生数
平成25年度
組込みシステム分野合計
修了
受講
修了
92
65
120
114
【40】
内ハイブリッド
連携大学
22
22
【目標】
参加大学
43
受講・修了生数
【目標】
発展コース
ライトウェイトコース
9
8
45
44
【10】
96
45
受講
修了
平成28年度
受講
修了
【80】
【100】
【10】
【10】
【70】
【90】
70
75
【30】
内ハイブリッド
基本コース
【60】
【10】
70
他(学部・博士・専門学校)
平成27年度
受講
【目標】
修士
平成26年度
【50】
65
43
9
9
修士
63
44
58
57
他
43
18
49
31
修士
29
21
48
45
他
53
27
0
0
修士
14
12
他
16
12
参加大学数
27
31
連携企業数
32
38
enPiT ANNUAL REPORT 2014
61
プラットフォーム."
(9-9)菅谷 みどり, 近藤 隆路, 高瀬 英希, 細合 晋太郎,柳 美由
貴, "パネル:ESSロボットチャレンジ10周年:10年を振り返り、
今後を語ろう."
から新しい技術へのチャレンジ-," 情報処理, Vol.56, No.1,
pp.62-64, Jan. 2015.
(21)小倉 信彦, 久保秋 真, "分野を超えたものづくりと教育
(10)渡辺 晴美, 久住 憲嗣, 三輪 昌史, 元木 誠, 小倉 信彦,
-組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:
久保秋 真, 細合 晋太郎, 菅谷 みどり, 紫合 治, "ESSロボット
5.組込みシステムの共通問題:飛行船システム競技 -工学
チャレンジ2014," 組込みシステムシンポジウム2014論文集,
教育の基礎である計測から考察する-," 情報処理, Vol.56,
pp.134-139, 国立オリンピック記念青少年総合センター, Oct.
No.1, pp.65-67, Jan. 2015.
2014.
(22)三輪 昌史, "分野を超えたものづくりと教育 -組込みシ
(11)"ロボットチャレンジポスター概要," 組込みシステムシン
ステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:6.制御工学
ポジウム2014論文集, pp.140-142, 国立オリンピック記念青
から見たソフトウェア -ロボット製作における制御とソフト
少年総合センター, Oct. 2014.
ウェア-," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.68-70, Jan. 2015.
(12)高瀬英希, 細合晋太郎, 岡山 直樹, 喜多 真琴, 後藤 文康,
(23)元木 誠, "分野を超えたものづくりと教育 -組込みシス
谷口 一徹, 長濱 みほ, 星野 利夫, 宮崎 秀俊, "若手組込み技
テム開発教育のためのロボットチャレンジ-:7.
ロボットチャ
術者を対象とした教育実習LED-Camp2の実施速報" 組込み
レンジ課題を用いた機械学習応用教育," 情報処理, Vol.56,
システムシンポジウム2014論文集, pp.151-152, 国立オリン
ピック記念青少年総合センター, Oct. 2014.
No.1, pp.71-73, Jan. 2015.
(24)菅谷 みどり, 谷田川 ルミ, 杉本 徹, "分野を超えたものづ
(13)松原 豊, 安藤 友樹, 吉田 則裕, 舘 伸幸, 高嶋 博之, 山本
くりと教育 -組込みシステム開発教育のためのロボットチャ
雅基, 本田 晋也, 高田 広章, "enPiT-Emb名古屋大学事業:OJL
レンジ-:8.ロボットPBLを学部導入教材として活用する -
(On the Job Learning)を中心とした実践的産学連携教育,"
授業における事例報告-," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.74-76,
組込みシステムシンポジウム2014論文集, pp.161-161, 国立
オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2014.
Jan. 2015.
(25)香山 瑞恵, "分野を超えたものづくりと教育 -組込みシ
(14)大迫 周平, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 石田 繁巳, 鵜林 尚
ステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:9.小型飛行
靖, 福田 晃, "テキストマイニングを用いた価値創造教育カリ
船を使った初等中等教育向け情報教育 -情報の符号化を体
キュラムの効果分析," 情処学研報 2014-SE-186(8), pp.1-8,
験的に学習する教材:Letʼs Go Go! Magical Spoons-," 情報
大阪大学吹田キャンパス, Nov. 2014.
処理, Vol.56, No.1, pp.77-79, Jan. 2015.
(15)Ikuta Tanigawa, Harumi Watanabe, Midori Sugaya
(26)細合 晋太郎, 大山 将城, "分野を超えたものづくりと教育
and Kenji Hisazumi, "A Case Study: How to Find and Reify
-組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:
a Research Theme on Project Based Learning for Master's
10.ESSロボットチャレンジ10周年座談会 -参加者OBと10年
Course Education," Proc. Software Engineering Education
を振り返る-," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.80-83, Jan. 2015.
Workshop (SEEW2014), LNCS 8613, Jeju, Korea, Dec. 2014.
(27)渡辺 晴美, "分野を超えたものづくりと教育 -組込みシ
(16)久住 憲嗣, 渡辺 晴美, "分野を超えたものづくりと教育
ステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:11.速報 -
-組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:
ESSロボットチャレンジ2014を終えて-," 情報処理, Vol.56,
0.編集にあたって," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.50-52, Jan.
No.1, pp.84-85, Jan. 2015.
2015.
(28)中井 将貴, 松原 豊, 高田 広章, 山口 晃広, "データスト
(17)二上 貴夫, "分野を超えたものづくりと教育 -組込みシ
リーム管理システムのための動作検証環境," 組み技術とネッ
ステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:1.MDD/ESS
トワークに関するワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福
ロボットチャレンジの原点 -コンテスト継続の原動力-," 情
祉協議会, Mar. 2015.
報処理, Vol.56, No.1, pp.53-55, Jan. 2015.
(29)成瀬 有美, 石川 拓也, 安積 卓也, 大山 博司, 高田 広章,
(18)福田 晃, "分野を超えたものづくりと教育 -組込みシス
"組込みコンポーネントシステムの呼び出しフロー解析ツー
テム開発教育のためのロボットチャレンジ-:2.大学におけ
ルの開発," 組み技術とネットワークに関するワークショップ
る実践的教育へのチャレンジ -開かれた教育への挑戦-,"
(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar. 2015.
情報処理, Vol.56, No.1, pp.56-57, Jan. 2015.
(30)谷川 郁太, 渡辺 晴美, "コンテキスト指向フレームワー
(19)久住 憲嗣, "分野を超えたものづくりと教育 -組込み
クContextCSによる掃除機開発," 組み技術とネットワークに
システム開発教育のためのロボットチャレンジ-:3.ロボッ
関するワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会,
トチャレンジを用いた分野・地域を超えたProject-Based
Mar. 2015.
Learning," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.58-61, Jan. 2015.
62
4.組込みシステムのためのモデル駆動開発技術 -共通問題
(31)等々力 拓也, 小倉 信彦, 渡辺 晴美, "状態遷移モデル記
(20)久住 憲嗣, 渡辺 晴美, "分野を超えたものづくりと教育
述言語stmcを用いた組込みソフトウェアのためのモデルレ
-組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ-:
ベルデバッグツールの開発," 組み技術とネットワークに関す
enPiT ANNUAL REPORT 2014
るワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar.
松永 卓也, 中元 一輝, 奥原 将一郎, 邵 楠, 川村 峰大, 安倍 昌
2015.
輝, 渡辺 晴美, "派生開発によるマップ作成システムの開発."
(32)信田 圭哉, 高嶋 博之, "ATK2 OSを搭載したRoboCar
(7-4)大橋 孝輔, 本田 晋也, 舘 伸幸, 高田 広章, "OJL成果報
1/10向け自動ブレーキシステムと,Android端末連携システ
告-マルチコア向け組込みリアルタイムシステムの省電力機
ムの開発," 組み技術とネットワークに関するワークショップ
構-."
(7-5)松本 江里佳, 島田 秀輝, 佐藤 健哉, 山本 雅基, "OJL
(33)中山 悟, 菅谷 みどり, 中野 美由紀, "RLS:分散ロボットシ
(On The Job Learning)による安全運転支援のためのLocal
ステムのデータ収集プラットフォーム," 組み技術とネットワー
クに関するワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協
議会, Mar. 2015.
(34)山崎 友貴(九州大学), "プロジェクト開発の不確定要素
が及ぼす影響分析," 組み技術とネットワークに関するワーク
ショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar. 2015.
Dynamic Map(LDM)データの効率的伝送方式の検討."
(7-6)渡辺 晴美, 小倉 信彦, 久保秋 真,福田 浩章, 三輪 昌史,
元木 誠, "パネル: ESSロボットチャレンジ 2013分野を超えた
ものづくり."
(8)渡辺 晴美, 元木 誠, 久住 憲嗣, 三輪 昌史, 小倉 信彦, 久
保秋 真, 細合 晋太郎, 福田 浩章, 紫合 治, "ESSロボットチャレ
ンジ2013," 組込みシステムシンポジウム2013論文集, pp.81-
●平成25年度
86, 国立オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2013.
(1)亀井 靖高, 細合 晋太郎, 大迫 周平, 川高 美由紀, 西川 忠
(9)山本 雅基, 上野 新滋, 舘 伸幸, 二上 貴夫, 古屋 栄彦, "パ
行, 鵜林 尚靖, 福田 晃, "PBLにおける発想法とロジカルシン
ネル:進化する組込み技術の育成手法," 組込みシステムシン
キングの導入事例," 情報学研報 2013-SE-181(4), pp.1-6, 和
ポジウム2013論文集, pp.153-153, 国立オリンピック記念青
歌山県立情報交流センター, July 2013.
少年総合センター, Oct. 2013.
(2)細合 晋太郎, 亀井 靖高, 大迫 周平, 井垣 宏, 鵜林 尚
(10)"ロボットチャレンジポスター概要," 組込みシステムシン
靖, 福田 晃, "PBLへのDaaS開発環境の導入事例," 信学技報
ポジウム2013論文集, pp.154-157, 国立オリンピック記念青
SS2013-30, Vol.113, No.159, pp.103-108, 北海道立道民活動
少年総合センター, Oct. 2013.
センター, July 2013.
(11)松原 豊, 舘 伸幸, 高嶋 博之, 山本 雅基, 本田 晋也, 高田
(3)岸 知二, 細合 晋太郎, "ソフトウェア工学の共通問題:1.
広章, "ポスター論文:enPiT-Emb名古屋大学事業:OJL(On
ソフトウェア工学の共通問題とは," 情報処理, Vol.54, No.9,
the Job Learning)を中心とした実践的産学連携教育," 組込
pp.878-881, Sep. 2013.
(4)久住 憲嗣, 細合 晋太郎, 渡辺 晴美, 元木 誠, 小倉 信
みシステムシンポジウム2013論文集, pp.168-168, 国立オリ
ンピック記念青少年総合センター, Oct. 2013.
彦, 三輪 昌史, 孔 維強, 築添 明, 鵜林 尚靖, 福田 晃, "コン
(12)大迫 周平, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 加藤 公敬, 石塚 昭
テストチャレンジ型組込みシステム開発PBLカリキュラム
彦, 坂口 和敏, 川高 美由紀, 森田 昌嗣, 鵜林 尚靖, 福田 晃,
の開発," 日本ソフトウェア科学会第30回大会(平成25年度)
"PBLにおけるデザイン思考の導入事例," 情処学研報 2013-
(JSSST2013)講演論文集, rePiT-8, 東京大学本郷キャンパス,
Sep. 2013.
SE-182(22), pp.1-7, ITビジネスプラザ武蔵, Oct. 2013.
(13)舘 伸幸, 山本 雅基, 高嶋 博之, 松原 豊, 本田 晋也, 高田
(5)鵜林 尚靖, "チュートリアル:モデル駆動開発とドメイン特
広章, "enPiT-Emb(名古屋大学) OJLによる実践的組込みシス
化言語," 組込みシステムシンポジウム2013論文集, pp.2-2,
テム教育," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ
国立オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2013.
(6)高田 広章, "基調講演:実践的組込みシステム技術者の育
(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(31), pp.1-6, 沖縄
県ICT文化ホール, Mar. 2014.
成に向けて~大学側からの問題提起~," 組込みシステムシ
(14)大橋 孝輔, 本田 晋也, 舘 伸幸, 高田 広章, "マルチコア
ンポジウム2013論文集, pp.6-6, 国立オリンピック記念青少年
向けリアルタイムOSにおける省電力機構," 組込み技術とネッ
総合センター, Oct. 2013.
トワークに関するワークショップ(ETNET2014), 情処学研報
(7)分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク組
2014-EMB-32(32), pp.1-6, 沖縄県ICT文化ホール, Mar. 2014.
込みシステム分野, "分野・地域を越えた実践的情報教育協働
(15)Yixiao Li, Takuya Ishikawa, Yutaka Matsubara and
ネットワーク組込みシステム分野(enPiT-EMB) Project-Based
Hiroaki Takada, "An RTOS-based Platform for LEGO
Learning成果報告," 組込みシステムシンポジウム2013論
Mindstorms EV3," 組込み技術とネットワークに関するワーク
文集, pp.55-56, 国立オリンピック記念青少年総合センター,
ショップ(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(33), pp.1-
Oct. 2013.
(7-1)久住 憲嗣, "enPiT概要説明."
(7-2)
日下 和也, 石田 良介, 高 原, 馬 立東, "プロジェクトが抱
えるあいまいさを考慮したシステム開発."
(7-3)谷川 郁太, 井熊 悠介, 佐塚 洋右, 福山 祐哉, 山崎 大輔,
第2章 実践教育の取り組み状況
(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar. 2015.
6, 沖縄県ICT文化ホール, Mar. 2014.
(16)久住 憲嗣, 細合 晋太郎, 渡辺 晴美, 元木 誠, 小倉 信
彦, 三輪 昌史, 孔 維強, 築添 明, 鵜林 尚靖, 福田 晃, "コン
テストを活用した連合型Project Based Learningカリキュ
ラム," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ
enPiT ANNUAL REPORT 2014
63
(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(34), pp.1-6, 沖縄
県ICT文化ホール, Mar. 2014.
2.3.6
教員養成・FD活動
(17)谷川 郁太, 小倉 信彦, 菅谷 みどり, 渡辺 晴美, "組込み
組込みシステム分野の若手教員の育成方針は、
「参加大学
ソフトウェアプロトタイプ開発のためのプログラム動的書
の指導教員も分散PBLに参加し、実践的教育のノウハウを修
き換え," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ
得し各大学に持ち帰り、補助期間終了後に、PBLやOJLを各大
(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(35), pp.1-5, 沖縄
学で継続して実施できる体制にする」
ことである。
県ICT文化ホール, Mar. 2014.
(18)高瀬 英希, 細合 晋太郎, 安藤 友樹, 尾鷲 幸代, 川上 達
九州大学PEARLでは、学生が参加する短期集中合宿(スプ
也, 舘 伸幸, 星野 利夫, 松原 豊, 赤山 聖子, 久住 憲嗣, 高田
リングスクール・サマースクール)、PBL成果発表会などのイ
広章, "若手組込み技術者を対象とした短期合宿LED-Camp1
ベントの各種連絡事項は、必ず指導教員を通じて学生に伝え
実施報告," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ
た。指導教員は学生に帯同してイベントに参加し、教授方法
(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(36), pp.1-6, 沖縄
の見学のみならず、教員間の情報交換、新たな企画の意見交
県ICT文化ホール, Mar. 2014.
換などで交流を深めていた。
カリキュラム策定、教材開発のWGメンバーは、短期集中
合宿の開催準備では、毎週1回以上のペースで打ち合わせを
行っている。WGの打ち合わせやPEARL運営委員会では、合宿
終了後の振り返りと来年度に向けた議論を行っている。その
議論の中で、機械、ロボット、ソフトウェア工学などの専門が
異なる教員同士で、お互いに見学し合ってきた教授方法につ
いて意見交換していることは有意義である。
若手教員のFDの場としては、分野内のイベントだけでな
く、分野外のイベントも積極的に活用している。具体的な参
加実績としては、
クラウドコンピューティング分野のFD合宿、
ビジネスアプリケーション分野のPBL成果発表会、などがあ
る。
名古屋大学OJLにおいて、PMは、学生に対して実践的な指
導を行うので、
プロジェクト管理を実際の開発現場で行った
経験があることが望ましい。名古屋大学では、企業において
プロジェクト管理の経験がある者が中心になりPMを担当し
た。週報やプロジェクト管理ツールのマネジメントツールを
導入し、OJLの指導水準の維持に努めた。学内および参加大
学の若手教員に対しては、定期的なミーティングやOJL発表
会などを通じてFD活動を行った。
さらに、教員は他分野での分散PBLの授業見学や、学生の
発表会やソフトウェア科学会の実践教育研究会などへの参
加を通じて、実践的な教育手法に関するFDを実施した。
64
enPiT ANNUAL REPORT 2014
2.3.7
来年度のイベント予定・募集情報
(1)来年度のイベント
組込みシステム分野では、今年度と同様、情報処理学会の
名古屋大学OJL
名古屋大学大学院情報科学研究科 附属組込みシステム研究センター
〒464-8601
名古屋市千種区不老町
ングスクール・サマースクール)、分散PBL成果発表会、
シンポ
TEL ▶ 052-789-4228 FAX ▶ 052-789-4237
ジウムでのenPiT-Embセッション、などを開催する予定であ
E-mail ▶ [email protected]
る。
URL ▶ http://emb.enpit.jp/ojl/index.html
九州大学PEARLでは、来年度の第1弾であるスプリングス
クールを5月9日〜17日(予定)で企画検討中である。参加大
学との日程調整で、期間が前後にシフトする可能性は残って
いる。
2.3.8
まとめ
今年度は、参加大学を27から31大学に、連携企業を32から
名古屋大学OJLでは、7月1日
(予定)に事業運営委員会を開
38社に増加させ、情報処理学会組込みシステム研究会の後
催し、基本コースのテーマと受講生を承認する。夏期の短期
援を得て学生・教員の学会発表も34件で、全国的な協働ネッ
合宿は、8月24日~28日と、9月7日~11日の2週間を計画して
トワークの構築の基盤ができた。
いる。イベントの開催日程の確定情報は、enPiT-EmbのWeb
ページに掲示する。
第2章 実践教育の取り組み状況
組込みシステム研究会の後援のもと、短期集中合宿(スプリ
ライトウェイトコースを新設し、組込み技術体験学生の裾
野拡大、ハイブリッド人材の養成、さらに参加大学数の増加
今回の事業は、全国の大学が連携して組込みシステム技術
が図れた。修士学生120名(学部等65名も加えると185名)の
の実践的人材を育てるネットワークを作ることが目的である
受講生を受け入れ、九州大学PEARLはコンテストチャレンジ
ため、連携大学にとどまらず、広く全国から参加大学を募り、
型と事業企画/技術開発型の24件のテーマを、名古屋大学
その学生に対して分散PBLを実施する。開発テーマと連携企
OJLは連携企業が提供した35件のテーマを実施した。
業のリストを公開し、全国の大学から、それに参加したい学
基本・発展コースのキックオフの位置付けで実施した短期
生を募る。その際に、指導教員も一緒に参加することを条件
集中合宿については、九州大学は5月にスプリングスクール
とする。組込みシステム技術に関して勉学・研究している、ま
を8日、8月~10月にサマースクールをのべ7日、名古屋大学
たは取り組もうとしているすべての学生が対象になる。
は昨年度末の3月にスプリングスクールを4日、8月~9月にサ
「短期集中合宿(スプリングスクール・サマースクール)に
マースクールをのべ10日、それぞれ開催した。各合宿の講義・
参加」、
「分散PBLを受講し成果発表会で発表」の2つに対する
演習・成果発表での講師は、連携大学間で交流させるだけで
評価結果に基づき、修了証を出す。
なく、参加大学・連携企業からも招いた。
修了生数は修士学生が114名であり、今年度の目標60名を
(2)募集情報
超えた。
参加大学・受講生の募集時期は、平成27年度の九州大学
PEARLは、基本コース、発展コース、いずれも2月から短期集
来年度は、教員・アドバイザーの分野内・分野間の交流を
中合宿(スプリングスクール、4~5月)開始前までである。平
さらに図りながら、全国的な協働ネットワークの構築を推し
成27年度の名古屋大学OJLへの受講生の募集時期は、基本
進めていく。発展コース学生には基本コース学生指導やセッ
コースは5月~6月に、発展コースは平成27年1月〜2月であ
ション企画などの役割も与え、学部生の受講も継続して受け
る。
ライトウェイトコースは7月の予定である。
入れ、ハイブリッド人材の育成にも取り組み、組込みシステム
分野教育の裾野・ネットワークを広げていく。なお、学生の就
問い合わせ先
活スケジュールが来年度から大きく変わるので、大学ごとの
組込みシステム分野全体および九州大学PEARL
就活状況を適切に確認しながら、合宿や成果発表会などのス
九州大学大学院システム情報科学府情報知能工学専攻
ケジュールを工夫する。
社会情報システム工学コース QITO PEARLプロジェクト
〒819-0395
福岡市西区元岡744番地 ウエスト2号館 508号室
TEL ▶ 092-802-3864 FAX ▶ 092-802-3865
E-mail ▶ [email protected]
URL ▶ http://www.qito.kyushu-u.ac.jp/project/PEARL
enPiT ANNUAL REPORT 2014
65
ビジネスアプリケーション分野
2.4
2 . 4 .1
基礎知識学習、短期集中合宿、分散PBLでは、先端情報技
取り組みの概要
術の習得のみではなく、問題解決のための情報技術の適用
本分野は、進化を続ける先端情報技術や情報インフラを有
と利活用の側面も重視した教育を行っている。具体的には、
機的に活用し、潜在的なビジネスニーズや社会ニーズに対す
連携大学や参加大学教員に加えて、連携企業や組織からの
る実践的問題解決ができる人材の育成を目指す。図2.4.1に
実務経験者を招聘し、実務的な視点からの講義・演習を実施
概要を示す。
する他、PBL課題設定においても、社会の実問題を捉えるよ
図2.4.1
ビジネスアプリケーション分野の概要
ビジネスアプリケーション分野
進化を続ける先端情報技術や情報インフラを有機的に活用し,
潜在的なビジネスニーズや社会ニーズに対する実践的問題解決ができる人材の育成
先端情報技術・
情報インフラ
[連携3校+参加校]
室蘭工業大学
茨城大学
埼玉大学
お茶の水女子大学
拓殖大学
広島大学
徳島大学
岩手大学
群馬大学
千葉大学
津田塾大学
同志社大学
山口大学
琉球大学
会津大学
宇都宮大学
東京理科大学
岡山県立大学
愛媛大学
筑波大学
ライトウェイトコース(1週間)
スタンダードコース(2週間)
午前(9:30~12:15)
ビジネスアプリケーションの
最新トピックに関する講義
情報デザイン、エスノグラフィ、
ロジカルシンキング、データ分析、
セキュリティ技術、クラウド技術、
プレゼン技術、
ドキュメンテーション技術、
アジャイル手法とスクラム
ビジネスニーズ・
社会ニーズ
双方を見据えた問題解決
1. 基礎知識学習
2. 短期集中合宿
3. 分散PBL
各参加校での
事前学習
サマースクール
3拠点開催
習得知識を元に
PBLを実施
ソフトウェア工学分野、
ビジネスアプリケーション
開発に関する基礎科目
講義
演習
ミニPBL
中間報告会
成果報告会
教育検討会
公立はこだて未来大学
ビジネス・サービスデザイン実践
①人間中心のデザインの考え方と設計方法、問題発見、発想、企画
②ファシリテーションの考え方、
コンセンサスを導くスキル
ビジネスアプリケーション開発基礎演習
チームでビジネスアプリケーションを分散開発(開発環境の構築、
開発プロセス、
アイデア出し、
プロジェクトマネジメントなど)
午後(13:30~16:16) ミニPBL
システム開発企画書、要件定義、仕様策定、開発計画等を
演習指導を交えて作成
最終日には成果報告会を開催
産業技術大学院大学
ビジネスアプリケーション特論 講義(1週間)
日本
各地から
参加
66
enPiT ANNUAL REPORT 2014
プロジェクト管理、企画、情報デザイン、Webアプリ発展の歴史
楽天株式会社のAPIを使用したWebアプリケーション開発
ビジネスアプリケーション演習(1週間)
Ruby on Railsを用いた演習、
楽天株式会社のAPIを用いたプログラム開発
楽天
うな課題設定を行っている。
また、先端技術のみでなく、ユー
●オープンシステム工学
ザーセンタードデザインを指向した問題分析・情報デザイン
(筑波大学) 2.0単位
力に関する講義・演習も設定している。
これらによって、学生が自主的に問題を発見し、取り組むこ
とができる機会を提供し、創造的なソリューションを発案する
オープンな規格に基づいた相互運用性が求められるオー
プンシステムを設計、構成するための基盤ソフトウェア技術
について講義する。
力を強化する。また、ワークショップ、PBL発表会などで、活動
の成果を自ら発信する機会を設定する。
●組込みシステム論
(筑波大学) 3.0単位
組込みシステムについて、まずその全体像を俯瞰したの
2.4.2
学習・教育目標
本分野は、すでに述べたように、進化を続ける先端情報技
ち、携帯電話や自動車といった典型的な製品における技術要
素、開発プロセスや設計技法などの開発技法について、実例
とともに学習する。
術や情報インフラを有機的に活用し、潜在的なビジネスニー
ズや社会ニーズに対する実践的問題解決ができる人材を育
成することを目指している。実践的問題解決とは「現実の問題
を正しく捉え、最新の情報通信技術を適切に選択することで、
●サービス指向システム開発
第2章 実践教育の取り組み状況
能力や、潜在的な顧客に対してソリューションを提案する能
(筑波大学) 2.0単位
サービス指向アーキテクチャ
(SOA)の概念を学ぶととも
真のソリューションを創り出すこと」であり、
このためには、次
に、Webサービス等を利用して、SOAに基づくシステム開発
世代社会情報基盤を成す先進要素技術を十分理解し、複合
の実習を行う。
的かつ俯瞰的にそれらを適用することで顧客要求を満足す
る解を示す能力が必要となる。さらに、人間中心のユーザー
センタードデザインによるトータルなデザイン能力も重要で
ある。要求分析・設計・実装等の開発力に加えて、情報デザイ
●最新IT動向に関する特別講義
(筑波大学) 2.0単位
ITが社会におよぼすインパクト、最先端技術の開発動向、
ン力、問題発見・解決力等も加味した教育を行い、将来的に
革新的なIT活用戦略等の各種事例について、産業界から幅広
ビジネスイノベーションを創出し得る人材が輩出できること
い講師陣を招聘し、各社のトレンドの捉え方、読み方を交えて
を目指す。
講義する。
本分野における年度ごとの受講生数(主として博士前期課
程学生)の目標は、平成25年度60名、平成26年度70名、平成
●組込みプログラム開発
27年度85名、平成28年度100名と設定している。なお、産業技
(筑波大学) 3.0単位
術大学院大学拠点では、10名以上の社会人学生の参加を想
モバイル端末に搭載された機能と既存のサーバインフラ、
そして、組込みシステムを統合したシステムについて、問題提
定している。
また、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来
大学の3連携大学で、平成25年度はのべ約30名の大学教員
起から解決策の提案、システムの設計・開発までを行える総
合力を持った人材を育成する。
の参画を予定していた。
これに加えて、参加大学として平成26
年度は、室蘭工業大学、岩手大学、会津大学、茨城大学、群馬
大学、宇都宮大学、千葉大学、東京理科大学、埼玉大学、お茶
●サービスサイエンス特論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
の水女子大学、津田塾大学、拓殖大学、同志社大学、愛媛大
情報システムをベースとしたビジネスの観点において、①
学、広島大学、山口大学、徳島大学、岡山県立大学、琉球大学
ユーザーの⾏動を分析し、②価値と市場を創造し、③実際に
の計19大学、約25名の大学教員が参加することを目指した。
サービスを提供するための実現手法を開発することが重要
なお、富山大学が来年度参加予定である。
となる。サービス提供者が満足するのではなく、顧客が満足
する姿を目標としたサービスや市場がのぞまれる。そこで、本
2.4.3
教育内容
講義においては、序盤において近年注目を集めているサー
ビスと消費者⾏動、サービスサイエンス、サービスエコノミク
(1)基礎知識学習科目
ス、サービスマーケティング、サービスエンジニアリングにつ
●ソフトウェア開発工学
いて扱う。中盤においては、市場を創造するための各種戦略
(筑波大学) 4.0単位
として、ブルーオーシャン戦略やホワイトスペース戦略を紹
要求分析に基づいたソフトウェア設計、
ソフトウェア開発に
介する。終盤においては、市場や組織がうまく働いているか
おけるライフサイクルや工程、および標準化の考え方を講義
を評価するダイナミクスモデルに基づくシミュレーション技
し、UMLによるオブジェクト指向設計およびシステム開発の
法について解説する。
また、具体的な市場として、旅⾏業界に
工程とそのプロセスの改善について実習を通して学ぶ。
関わる現状を紹介する。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
67
●データインテリジェンス特論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
業 務デ ータを⽤ いて素 早 い 意 思 決 定を行うた め の B I
(Business Intelligence)は、⼤容量で多様なデータを対象に
がる業務プロセスがBPRにとって極めて重要であることを指
摘する。情報の統合化の例として部品表を取り上げ、代表的
な業務プロセスとしてSCM(Supply Chain Management)
と
CRM(Customer Relationship Management)を取り上げる。
DI(Data Intelligence)へと更なる発展を遂げようとしている。
ITによるビジネスプロセス・マネジメントで何が可能かを知
本講義では、
このようなニーズに答えるために、⼤容量で多
り、情報戦略コンサルタントとして必要な視点やスキルを身
様なデータを対象にした統計解析やデータマイニングから
に付ける。
の知識獲得技術について、体系的な説明を行うことを目的と
する。特にデータマイニング技術に関しては、技術内容の提
示だけでなく、マイニングツールを実際に動作させることが
●情報ビジネス特別講義
(産業技術大学院大学) 2.0単位
可能な演習を施すことにより、講義により得た知識に従った
組織における組織構築、組織運営、組織継続について学習
動作原理と具体的な動作状況を実際に確認できるようにす
する。授業では、組織管理の知識を網羅的に整理しながら、
る。
組織マネジメントの方法を紹介する。また、事例発表研究な
どを通して組織管理の制度の光と影を考えていくことで、知
●ユビキタスプラットフォーム特論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
識の定着を図り、社会人としての基礎的なビジネス知識基盤
を得ることを方針とする。
大規模システムや基幹システムの開発分野と同等に、ス
マートフォンに代表されるモバイルシステムを初めとした組
込みシステム分野は、
ソフトウェア産業の重要な一角を占め、
●ネットワークシステム特別講義
(産業技術大学院大学) 2.0単位
従事する情報アーキテクトも増えている。近年では、ロボット
本講義では、各種ネットワークサービスを提供するサー
や自動運転などでも注目されている。本講義では、組込み分
バの構築手法および管理手法について解説する。
ここでは、
野で⽤いられるソフトウェアプラットフォーム技術、背景とな
Unix系およびWindows系サーバシステムについて、両者を
る要件、実システム例、業界動向を論じる。具体的には、組込
比較しながら解説することにより、共通する基本的な機能を
み各種OSとデバイスドライバ、周辺機器技術、
スマートフォン
理解させるとともに、それぞれの特徴を明確にしていく。
のアプリケーション技術や携帯電話、ロボット等と業界動向
を学ぶ。
●コミュニケーション技術特論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
●情報システム構築プロジェクトマネジメント論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
情報システム構築におけるプロジェクト管理の進め方を、
ビジネスの現場では、報告書や提案書、仕様書などのド
キュメントによってさまざまな情報を関係者に伝達する必要
がある。その際、
ドキュメントの品質が低いと、本当に必要な
情報処理推進機構が発行している「高度情報化人材育成標
情報が相手に伝わっていなかったり、間違った情報が伝わっ
準カリキュラム プロジェクトマネージャ」を基準に学習す
てしまったりして、仕事の生産性に大きな影響がでてしまう。
る。授業では、体系化された情報システム構築プロジェクトの
また、仕事や研究において、たとえ素晴らしい成果を挙げた
カリキュラムでプロジェクト管理の知識を網羅的に整理しな
としても、それをちゃんと相手に伝えることができなければそ
がら、実務事例の紹介を多く取り入れて具体的なプロジェク
の成果は正しく評価されない。
「伝えたい情報をいかにして
ト計画や管理の方法を指導する。また、演習などを通してプ
伝えるか、そして誤解なく理解してもらえるか」
というスキル
ロジェクト管理の知識をどのように実務に適用するか考えて
はビジネスパーソンとして必要最低限持っておくべきスキル
いくことで、知識と実践力の橋渡しを実現することを方針とす
と言える。
る。
本講義ではドキュメントも情報伝達(コミュニケーション)
の一つの手段として捉え、
ドキュメントおよび、
プレゼンテー
●情報システム特論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
ションによるコミュニケーションについて、演習を行いながら
その作成技術を身につけていく。
ITは仕事のしかたを変える⼒を持っている。BPR(Business
Process Reengineering)は経営に大きなインパクトをもた
らす。仕事のしかたを変えるために、
どこに目をつければ良
68
●オブジェクト指向開発特論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
いか、
どのようにアプローチすれば良いか、
どのような論理
オブジェクト指向によるソフトウェア開発の上流工程(要求
で相手を説得すればよいかを実践できるようにする。ITは
分析と設計)
での基礎力と応用力を育成する。
まず、要求分析
縦割りになりがちな組織の中で、組織横断的に横串を刺す
と設計の共通言語として普及が進んでいるUMLの基礎を学
Capabilityを持っている。情報の統合化と組織(企業)をまた
習し、業務モデリングの演習課題を通じて、分析モデリングの
enPiT ANNUAL REPORT 2014
基礎力をつける。次に、
これまでの分析・設計の先人の知恵
の集積であるアナリシスパターンやデザインパターンの考え
●ビジネスアプリケーション総合開発演習
(筑波大学) 2.0単位
ビジネスアプリケーションの開発課題を自ら考え、問題解
ンパターンについては、主要なデザインパターンを学習し、
こ
決能力をもち、製品として世に送り出すまでに考えるべきこと
れらのデザインパターンを利用したJavaプログラムの作成を
を実践的に学び、ビジネスフィールドにおける製品開発手法
体験する。またオープンソースのJavaプログラムを教材とし
について演習を通じて習得する。
て、デザインパターンがどのように使われているかを研究す
る。
これらの学習を通じてソースコードの解読、
リファクタリン
グの能力を育成する。
●プロジェクト実践ワークショップ
(筑波大学) 2.0単位
高度なICTを基礎とした諸問題の解決を目指して、正しく問
●アジャイル開発手法特論
(産業技術大学院大学) 2.0単位
近年のビジネス環境の変化の速さは、重厚長大な長期計
題設定を行い、その問題解決のための研究開発プロジェクト
の自主的な企画・運営を行う基礎的能力を講義と演習で修得
する。
画を陳腐化させ、ビジネスモデルやプロジェクト計画の有効
期間を縮める一方である。
このような状況に対応する必要か
ら、変化する要求に対応しながらビジネスに柔軟に沿うこと
で価値を生み出す、アジャイルなソフトウェア開発の手法が
脚光を浴びている。
第2章 実践教育の取り組み状況
方を理解し、
より高度な分析・設計の能力を育成する。デザイ
●ビジネスアプリケーション特論
(産業技術大学院大学)2.0単位
ビジネスアプリケーション特別演習として実施される分散
形式でのPBLの準備を目的としている。対象とするビジネスア
この授業では、アジャイルソフトウェア開発手法の一つで
プリケーションは、楽天API(楽天株式会社が提供するWebア
あるScrumと、
アジリティの高いソフトウェア開発を行うため
プリケーション開発用のAPI)を使用したWebアプリケーショ
に必要不可欠となるモダンな技術要素についての基礎知識
ンであり、
アジャイル開発手法のScrumでの開発を実践する。
を習得する。
本科目では分散PBLを実施するにあたって必要となるプロ
ジェクト管理、企画、情報デザイン、Webアプリケーションの歴
●ICTデザイン通論
(公立はこだて未来大学) 2.0単位
本学教員および学外のICTシステム設計分野の複数の専門
史・背景の知識を取得した上で、分散PBLのチーム編成、PBL
テーマ検討、計画策定をミニPBLとして実施する。最終成果物
としてはPBL開発計画書を作成する。
家が連携して、最先端の技術動向や実践的な技術について
オムニバス形式で講義および演習を行う。本講義を通じて受
講者は実践的な技術の一端や技術者が経験する実際上の問
題と課題を理解し、総合的な判断力を養う。
●ビジネスアプリケーション演習
(産業技術大学院大学) 1.0単位
この授業では次の①から③ついて学び、チームによるソフ
トウェア開発プロジェクトを円滑に実施するために不可欠な
●e-learningを用いた基礎知識習得
(公立はこだて未来大学) 0.0単位(自習)
各種のツールや基礎的なプログラミングを学ぶ。
①開発環境とプログラミング言語Ruby
既存のe-learning教材を用いて、Javaプログラミング、
アル
②リモートリポジトリ
(GitHub)、テスト自動化、継続的インテ
ゴリズム、UML、Linux、ネットワーク技術、
クラウドコンピュー
グレーション、PaaS(Platform as a Service)を利⽤したソフ
ティング、
システム開発、
プロジェクトマネジメントなどに関す
る基礎的な知識の習得と、Javaプログラミング演習教材を用
トウェア開発の基礎
③上記を活⽤するための自己組織的なチームワーク
いたプログラミングスキルアップを行う。
●ビジネスサービスデザイン実践
(2)短期集中合宿科目
●モバイルサービスソフトウェア開発
(筑波大学) 2.0単位
(公立はこだて未来大学) 2.0単位
人間中心のデザインの考え方とその設計方法を理解する。
単に人間とシステムとの接点だけではなく、それを利用す
ソフトウェア開発の基本的なプラクティスとして、モバイル
るユーザーとして本当に利用する価値があり、使って満足で
アプリケーションとサーバ、
クラウドといった情報インフラの
きるシステムとはどういうものかを理解する。
また、そのため
利用手法、ユーザーの周辺環境を捉えるサービスアプリケー
の実践的な設計のプロセスを演習にて設計する。
ションのためのプログラム開発手法を、演習を交えて習得す
る。さらに、ビジネスアプリケーションフィールドの基盤とな
る技術についてオムニバス形式で幅広く学ぶ。
●ビジネスアプリケーション開発基礎演習
(公立はこだて未来大学) 2.0単位
ビジネスアプリケーション開発のための基礎を学ぶ。チー
enPiT ANNUAL REPORT 2014
69
ムを編成し、基本例題に基づいて、開発環境の構築から開発
演習は楽天のAPIを利用したビジネスアプリケーションを
プロセス、プロジェクトマネジメントなどのビジネスアプリ
アジャイル手法で開発するスクラムチームと、海外の要求に
ケーション開発を一通り学習する。
対してグローバルな提案・開発を行うグローバルチームに分
けて実施される。
スクラムチームは、アジャイル開発手法であるScrumを
(3)分散PBL科目
使って、Webアプリケーション分野の新しい製品やサービ
●PBL型システム開発B
スの企画立案から、プロトタイプ開発によるアーキテクチャ
(筑波大学) 4.5単位
実践的なシステム開発を、
プロジェクト計画、要件定義から
ベースラインの確立、インクリメンタルな機能強化開発、運
外部設計工程までをモデル開発技術等を用いて、PBL形式で
用・保守までを実践する。具体的なテーマとしては、楽天株式
遂行する。
会社のWebアプリケーション開発用のAPIを利用し、実用レ
ベルの製品・サービスの開発と運用を経験する。
一方、
グローバルなビジネスへの対応力も求められ、海外
●イニシアティブプロジェクトⅠ
(筑波大学) 2.0単位
へのビジネスアプリケーションの提案力を高めることも重要
「プロジェクト実践ワークショップ」
と連携することで、高度
なテーマである。そこで、
ブルネイやベトナムの⼤学と協⼒し
なICTを基礎とした諸問題の解決を目指して正しく問題設定
ながら、ロボットとインターネットを活用したサービスアプリ
を行い、その問題解決のための研究開発プロジェクトの自主
ケーションを開発する。
ミニPBLでは、遠隔会議によりそれぞ
的な企画・運営を行う基礎的能力を実践的に修得する。
れの国の文化や特徴を活かしたロボットサービスのアイデア
を考案し、要求仕様書としてまとめる。分散PBLでは、その要
求仕様書を基に実機(ロボット)を使ったアプリケーション開
●イニシアティブプロジェクトⅡ
発を共同で行う。
(筑波大学) 2.0単位
「イニシアティブプロジェクトⅠ」に引き続き、高度なICTを基
礎とした諸問題の解決を目指して正しく問題設定を行い、そ
の問題解決のための研究開発プロジェクトの自主的な企画・
●PBL型システム開発演習
(公立はこだて未来大学) 2.0単位
ビジネスアプリケーションをテーマとしたシステム開発を
運営を行う基礎的能力を実践的に修得する。
イテレーション型開発やアジャイル開発などの手法を用い
て、PBL形式で遂行する。
●ビジネスアプリケーション特別演習
(産業技術大学院大学) 2.0単位
図2.4.2
ビジネスアプリケーション分野実施体制
ビジネスアプリケーション分野実施体制
北川分野代表
筑波大学
公立はこだて未来大学
岩手大学
お茶の水女子大学
琉球大学
茨城大学
津田塾大学
楽天株式会社
室蘭工業大学
群馬大学
広島大学
株式会社セールスフォース・ドットコム
株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア
宇都宮大学
山口大学
産業技術大学院運営詰問会議関連企業
株式会社エスイーシー
埼玉大学
愛媛大学
日鉄日立システムエンジニアリング株式会社
千葉大学
徳島大学
日立INSソフトウェア株式会社
東京理科大学
岡山県立大学
株式会社ABEJA
拓殖大学
会津大学
同志社大学
NPO高度情報通信人材育成支援センター
(CeFIL)
株式会社サムシングプレシャス
CeFILを窓口とするCeFIL連携企業
株式会社ジースタイラス
株式会社NTTデータ
新日鉄ソリューションズ株式会社
東京海上日動火災株式会社
日本電気株式会社
日本ユニシス株式会社
日本マイクロソフト株式会社
株式会社日立製作所
富士通株式会社
富士ゼロックス株式会社
70
産業技術大学院大学
enPiT ANNUAL REPORT 2014
ニフティ株式会社
函館蔦屋書店株式会社
株式会社日立産業制御ソリューションズ
株式会社日立ソリューションズ・ビジネス
2.4.4
実施体制
本分野は、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて
未来大学の3校を連携大学とし、室蘭工業大学、岩手大学、会
宇都宮大学、埼玉大学、千葉大学、東京理科大学、お茶の水女
子大学、津田塾大学、拓殖大学、同志社大学、広島大学、山口
大学、愛媛大学、徳島大学、岡山県立大学、琉球大学の計19
大学を参加大学として実施。
津大学、茨城大学、群馬大学、宇都宮大学、埼玉大学、千葉大
学、同志社大学、広島大学、山口大学、愛媛大学、徳島大学、岡
山県立大学、琉球大学の計19大学を参加大学として運営に
あたった。
本分野の連携大学、参加大学、連携企業・団体をその役割
とともに次に示す。
連携企業(23社)
●筑波大学が連携窓口となる企業(10社)
:
CeFIL
CeFILを窓口とするCeFIL連携企業
株式会社NTTデータ
新日鉄ソリューションズ株式会社
(1)連携大学
筑波大学
ビジネスアプリケーション分野の統括:
分野活動の全体統括、参加大学の取りまとめ、各種管理業
務、分野イベントの統括等。
東京海上日動火災株式会社
日本電気株式会社
第2章 実践教育の取り組み状況
学、東京理科大学、お茶の水女子大学、津田塾大学、拓殖大
日本ユニシス株式会社
株式会社日立製作所
富士通株式会社
日本マイクロソフト株式会社
富士ゼロックス株式会社
つくば・東京地区短期集中合宿(基礎知識学習を含む)、分散
PBLの実施:
筑波大学学生の他、本州・四国・九州を中心とした参加大
学学生を主な対象とする。
高度情報通信人材育成支援センター(Center for Future
●産業技術大学院大学が連携窓口となる企業(2社)
:
楽天株式会社
株式会社セールスフォース・ドットコム
●公立はこだて未来大学が連携窓口となる企業(11社)
:
株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア
ICT Leaders:以下CeFIL)ならびに連携企業・団体との連携窓
株式会社エスイーシー
口。
日鉄日立システムエンジニアリング株式会社
日立INSソフトウェア株式会社
産業技術大学院大学
株式会社ABEJA
株式会社サムシングプレシャス
つくば・東京地区の短期集中合宿(基礎知識学習を含む)、分
株式会社ジースタイラス
散PBLの実施:
ニフティ株式会社
産業技術大学院大学学生の他、本州・四国・九州・沖縄を中
心とした参加大学学生を主な対象とする。
産業技術大学院大学運営諮問会議等の各種連携企業・団
体との連携窓口。
函館蔦屋書店株式会社
株式会社日立産業制御ソリューションズ
株式会社日立ソリューションズ・ビジネス
これらの企業からは、基礎知識学習科目での非常勤講師
や分散PBL、短期集中合宿におけるゲストスピーカーを派
公立はこだて未来大学
函館地区短期集中合宿(基礎知識学習を含む)、分散PBLの実
施:
公立はこだて未来大学学生の他、北海道および東北・関西
遣していただき、助言指導を受けるとともに、教育検討会や
ワークショップにおいてカリキュラムや実施体制等に関する
評価やコメントをいただいた。
次に、連携大学の学内教員と外部人材の活用やその知見
について次に示す。
を中心とした参加大学学生を主な対象とする。
公立はこだて未来大学サポート企業等の各種連携企業・
団体との連携窓口。
(3)学内教員の活用
学内教員は専任教員と協力して、本事業に関わる講義・演
習等の準備および実施を行う。
また、分野運営委員会や各種
(2)参加大学、連携企業、団体
参加大学(19大学)
室蘭工業大学、岩手大学、会津大学、茨城大学、群馬大学、
WGへの参画、教材開発におけるテキスト作成、および、実習
課題等の素材用のプログラム・ハードウェア作成も担当する。
さらに、各種の報告書とりまとめや参加大学の募集およびそ
れらの窓口を担当するとともに、広報のための素材の作成や
enPiT ANNUAL REPORT 2014
71
広報活動を行う。その他、事前学習のためのビデオ教材の開
フォメーションアカデミーから増本登志彦氏、九州工業大学
発および配信、短期集中合宿の準備と実施、運営、分散PBLや
からMarat Zhanikeev氏を招き、エスノグラフィやドキュメン
発表会における学生指導、外部アドバイザとの窓口担当や
テーション、ロジカルシンキング、
プレゼンテーション、
クラウ
ワークショップ開催の準備と実施などについても専任教員と
ド環境に関する諸技術などビジネスアプリケーションの実践
協力して実施する。
またこれらの運営に関することの他、教育
に直結した教育を行った。
検討会、
ワークショップ等の各種イベントへ参加するといった
ことも行う。
(4)外部人材の活用とその知見の定着、継続体制作り
ビジネスアプリケーション分野全体として次のことを行っ
ている。
産業技術大学院大学
産業技術大学院大学では、昨年に引き続きアジャイル方式
で利活用企業の要求を実現するスクラムコースと、
グローバ
ルコースを実践した。
●ビジネスアプリケーション分野運営委員会等に連携企業
スクラムコースでは株式会社セールスフォース・ドットコ
や団体からの委員の参加を依頼し、事業全体への各種アド
ム社や楽天株式会社の支援のもとクラウド開発環境である
バイスを継続的に受ける。
Herokuをベースとして、その上に楽天株式会社のAPIを入れ
●短期集中合宿における講義・演習に連携企業等からの講
て開発するといった先端の開発作業を体験した。
このような
師を招聘し、ビジネスアプリケーション分野における実践
企業レベルの最新のアジャイル開発を体験することで、
より
的な知見の教育を図る。また、
これらの授業資料を参加大
実践的なWebアプリケーション分野の開発を会得することが
学にも提示可能な形でまとめることで知見を定着させる。
できた。
●分散PBLでの連携企業からの講師の助言、成果発表会での
アドバイスや講評を受ける。
●教育検討会において、本事業の実施方法や教育内容に関
して外部の人材の知見を反映する。
●ワークショップを通じて、ビジネスアプリケーション分野に
グローバルコースでは、昨年のブルネイ・ダルサラーム大
学、ベトナム国家大学に加えてニュージーランドのユニテッ
ク工科大学を加え、共同でWebアプリケーションを開発する
ことで国際的な視野でのシステム開発技術を会得することが
できた。
関わる実践教育のあり方や、そこで対象とすべき最新の技
また、
スクラムコース、
グローバルコースそれぞれに外部か
術動向等に関して討議する。オープンなワークショップとし
らの評価委員数名と専任の若手教員を配置し知見の定着を
て開催することで、さまざまな視点からの知見を本事業に
図ることをめざした。企業との連携としては、先に紹介したス
フィードバックする。
クラムによるWebアプリケーションにおいて、連携企業であ
●活動成果報告書を作成し蓄積するとともに、学生表彰、成
果発表会の開催などで、本事業を活性化させ、広く普及を
る楽天株式会社から客員教授を招き、企業における実践的
な開発手法についての教育を行った。
はかる。
●収集した知見のドキュメンテーション化とWebサイト等で
の公開を行う。
公立はこだて未来大学
公立はこだて未来大学では、会津大学、同志社大学、室蘭
筑波大学
筑波大学では、本年度はCeFILおよびCeFIL連携企業との5
工業大学からの学生を受け入れた。短期集中合宿の1週目は
これら3大学の学生に実際に函館に来てもらい、合同で演習
を行った。2週目は遠隔講義を行った。
回におよぶ連携ワークグループミーティングを実施し、企業
側と大学側の意識合わせや、企業から大学への要望などを
逐次確認し、産学連携でのプログラム実施への反映に努め
た。
また、成果発表会やワークショップにおける討論の場に
おいて、ビジネスアプリケーション分野に関わる実践教育の
あり方や、そこで対象とすべき最新の技術動向等に関して
CeFIL連携企業の方と討議を行い、さまざまな視点からの知
見を本事業にフィードバックした。
その他、短期集中合宿における講義・演習に連携企業等か
らの講師として、パロアルト研究所から佐々牧雄氏、合同会
社イオタクラフトから塩谷敦子氏、株式会社ハーティネスか
ら高橋慈子氏、東京大学から山口利恵氏、株式会社日立イン
72
enPiT ANNUAL REPORT 2014
図2.4.3
筑波大学におけるアジャイル研修Ⅰの様子
参加大学とは適宜打ち合わせ会議を開催し、遠隔講義の
に実施した。さらに分散PBL科目としては、イニシアティブプ
方法や講義プロセスの記録について検討し、教材開発・講義
ロジェクトⅠ、イニシアティブプロジェクトⅡ、PBL型システム
の進め方改善へつながった。
開発Bを開設し、ビジネスアプリケーションにおける課題を基
企業との連携としては、ICTデザイン通論で企業講師を招聘
にしたPBL教育を実施した。
短期集中合宿では、第1週を8月18日から25日まで、第2週
アプリケーション開発基礎演習やPBL型システム開発演習の
を8月19日から9月1日まで実施した。受講生は事前にチーム
成果発表会では、企業から多くの方に出席してもらい有意義
および開発テーマを決定し、その上で第1週のテーマを「提案
なコメント等をいただいた。
テーマの洗練」、第2週のテーマを「実践・試行に基づく開発
また、地域との連携として、ビジネスサービスデザイン実践
では函館市の市役所の方、地元企業の方、近隣住民に参加し
てもらい、地域密着型のサービスデザインを提案できた。
速度の見積もりと開発計画」に定めて合宿を行った。
第1週目の初日は1日研修としてプロダクトディスカバリの
演習を行った。各自持ち寄ったテーマとは別に「就職活動を
支援するプロダクトの提案」を題材とし、解決しようとする問
2.4.5
教育実績
題点に対して、対象顧客、顧客の現状と抱える問題点、
プロダ
クトが提供する価値をリーンキャンバスにより明確にし、そこ
第2章 実践教育の取り組み状況
し実践的な技術や現場の問題を講義してもらった。ビジネス
から相互レビュー、
プラグマティックペルソナなどを用いてア
筑波大学
イデア、顧客像、シナリオを設計した。第1週目2日目以降は午
まず基礎知識学習科目として、
ソフトウェア開発工学、オー
前中にオムニバス形式の講義、午後はPBLによるチーム開発
プンシステム工学、組込みシステム論、サービス指向システム
を実施した。オムニバス講義では、チーム開発に必要なロジ
開発、最新IT動向に関する特別講義、組込みプログラム開発
カルシンキング/ライティング、
ドキュメンテーション、ユーザ
を開設し、幅広いIT技術に関する予備知識の教育に努めた。
エクスペリエンス、プレゼンテーションスキルの講義を行っ
また、短期集中合宿では、モバイルサービスソフトウェア開
た。午後のチーム開発では初日のプロダクトディスカバリ研
発、ビジネスアプリケーション総合開発演習、
プロジェクト実
修で学んだ内容を元に、提案内容に対する対象顧客の決定
践ワークショップを開設し、実践的な開発技法の学習と、
プロ
と顧客像の考察、プロダクトの提供する価値、価値提供の観
ジェクトベースの開発手法についてその導入教育を実践的
点で重要度の高い機能の選定と具体的なシナリオを設計し、
図2.4.4
筑波大学におけるアジャイル研修Ⅱの様子
図2.4.6
筑波大学におけるミニPBLの様子
図2.4.5
筑波大学におけるオムニバス講義の様子
図2.4.7
筑波大学における短期集中合宿成果報告会の様子
enPiT ANNUAL REPORT 2014
73
その上で要件定義とプロダクト設計を各チームで進めた。提
参加大学:修士1年22名、修士2年1名
案内容やチームの状況に合わせてプロトタイプシステムの
開発や他チームへのレビューなども指導した。第1週の最終
分散PBL科目であるPBL型システム開発B、ならびにイニシ
日には提案内容に関する成果報告として口頭発表を開催し
アティブプロジェクトⅠ、
Ⅱでは、ビジネスアプリケーションにお
た。第2週目も初日に1日研修を実施し、スクラム開発の研修
けるICTに関する諸問題の解決のため、問題設定や要件定義
を行った。マシュマロチャレンジなどを交えてスプリント、開
を正しく行い、その問題を解決するためのシステム開発をプ
発メンバーや顧客との対話の重要性を演習し、
「家と庭を造
ロジェクト形式で実施するために必要な実践的な開発能力
る」
というテーマに対して顧客役と開発チームを決めて擬似
やプロジェクトマネジメント能力などを講義と演習で修得す
的なスプリント開発演習を行った。それを踏まえて第2週の
ることを目的としている。平成26年度は短期集中合宿に参加
チーム開発では、分散PBL期間を含めた開発計画を立て、
プ
したチームのうち17チームが引き続き参加し、合宿で構想・
ロトタイプシステムを開発した。また午前中のオムニバス講
設計したシステムの実装およびテストを行った。各チーム、テ
義では、データ分析、セキュリティ、
クラウドコンピューティン
レビ会議システムやチャット、SNSなどを用いてメンバー同士
グの最新技術に関する講義を行った。合宿の最終日には口
コミュニケーションをとり開発を進めた。進捗状況は定期的
頭発表に加えデモ展示を行った。
にレポートまたはテレビ会議システムによる中間報告会など
それぞれの受講生数は次の通りである。
●プロジェクト実践ワークショップ(64名)
成果は平成26年12月5日に筑波大学にて、テレビ会議シス
筑波大学:修士1年28名、修士2年3名
テムおよびUstreamによる公開シンポジウムの形式で開催
参加大学:修士1年29名、修士2年3名
した。学生チームは、ショートプレゼンテーションおよびポス
●モバイルサービスソフトウェア開発(18名)
ター・デモ発表による成果報告を行った。
また、シンポジウム
筑波大学:修士1年18名、修士2年0名
では本年度の実施内容全般について教員、学生、社会人それ
参加大学:修士1年0名、修士2年0名
ぞれの立場からの意見交換を行う教育検討会を実施しPBL
●ビジネスアプリケーション総合開発演習(52名)
筑波大学:修士1年30名、修士2年1名
74
で報告をし、チームの状況に合わせた指導を行った。
や次年度以降のカリキュラム等のあるべき姿について幅広
い議論が行われ今後の改善に役立った。
図2.4.8
筑波大学の短期集中合宿成果報告会におけるデモの
様子
図 2 . 4 . 1 0 enPiT筑波大ワークショップにおけるデモの様子
図2.4.9
enPiT筑波大ワークショップ(12/5)の様子
図 2 . 4 . 1 1 enPiT筑波大ワークショップ表彰式の様子
enPiT ANNUAL REPORT 2014
出席者
小林真也教授(愛媛大学)
黒田久泰准教授(愛媛大学)
果報告会を、平成27年2月16日に筑波大学にて、テレビ会議
システムによる公開講義として実施予定である。
遠藤慶一助教(愛媛大学)
上田賀一教授(茨城大学)
分散PBL科目の受講生数は下記の通りである。
筑波大学:修士1年45名、修士2年3名
浜本義彦教授(山口大学)
参加大学:修士1年20名、修士2年3名
山口真悟准教授(山口大学)
田村慶信准教授(山口大学)
梅澤猛助教(千葉大学)
伊藤恵准教授(公立はこだて未来大学)
産業技術大学院大学
基礎知識学習科目として、サービスサイエンス特論、情報シ
岩本智裕様(キャリア大学)
ステム特論、データインテリジェンス特論、ユビキタスプラッ
塩野目剛克准教授(筑波技術大学)
トフォーム特論、情報システム特論、情報ビジネス特別講義、
菊池純男様(株式会社日立製作所)
ネットワークシステム特別講義、コミュニケーション技術特
永江耕治様(AP Communications)
論、オブジェクト指向開発特論、アジャイル開発手法特論、情
神谷隆司様(CeFIL)
報システム構築プロジェクトマネジメント論、短期集中合宿
愛宕翔太様(CODEAL)
では、ビジネスアプリケーション特論と、ビジネスアプリケー
広瀬俊哉様(SEプラス)
ション演習を開設した。さらに分散PBL科目としては、ビジネ
谷川耕一様(ブレインハーツ・DB Onlineチーフ
スアプリケーション特別演習を開設した。
キュレーター)
短期集中合宿においては、enPiT必須科目であるビジネス
錦見美貴子様(産業技術総合研究所)
アプリケーション特論に40名、enPiT選択科目であるビジネス
半田剣一様(産業技術総合研究所) 他
アプリケーション演習に35名がそれぞれ参加した。
合計88名
また、筑波大学の分散PBL科目「PBL型システム開発B」の成
また、成果発表会としてはスクラムコースとグローバル
コースに分けて2回のPBL発表会を行った。
図 2 . 4 . 1 2 産業技術大学院大学スクラムコース
図 2 . 4 . 1 4 産業技術大学院大学における
図 2 . 4 . 1 3 産業技術大学院大学グローバルコース
図 2 . 4 . 1 5 産業技術大学院大学における
成果発表会(12/13)の様子
成果発表会(1/24)の様子
第2章 実践教育の取り組み状況
山中克久准教授(岩手大学)
ビジネスアプリケーション開発演習の様子
アジャイル開発手法特論の講義の様子
enPiT ANNUAL REPORT 2014
75
スクラムコースは平成26年12月13日に主会場である産業
び演習を実施したほか、e-learningを用いた基礎知識習得を
技術大学院大学と参加大学を遠隔会議システムで結び開催
実施し、基礎知識の教育に努めた。
また、短期集中合宿では、
した。産業技術大学院大学から6チーム、参加大学である琉
ビジネスサービスデザイン実践とビジネスアプリケーション
球大学から1チームが楽天株式会社のAPIを利用したWebア
開発基礎演習を、さらに分散PBL科目として、PBL型システム
プリケーション開発の事例を発表した。各チームとも優れた
開発演習を開設した。それぞれの受講生数は下記の通りであ
内容であり、
スクラム手法による短期間でのアプリケーション
る。
の開発の可能性を実証した。
●ICTデザイン通論(24名)
出席者
渡 辺知恵美助教(筑波大学大学院システム情報
工学研究科)
渡名嘉村盛和教授(琉球大学情報工学科)
合計17名
公立はこだて未来大学:修士1年16名、修士2年4名
参加大学:修士1年4名、修士2年0名
●e-learningを用いた基礎知識習得(21名)
公立はこだて未来大学:修士1年15名、修士2年2名
参加大学:修士1年4名、修士2年0名
平成27年1月24日にはグローバルチームが3チーム、それ
●ビジネスサービスデザイン実践(25名)
ぞれブルネイ、ニュージーランドとベトナムの大学との連携
公立はこだて未来大学:修士1年12名、修士2年2名
で行った海外におけるビジネスアプリケーションのニーズに
参加大学:修士1年11名、修士2年0名
基づく開発事例を発表した。
出席者
産業技術大学院大学教員
(5名)
外部評価委員
(1名)
ニュージーランドユニテック工科大(4名)
●ビジネスアプリケーション開発基礎演習(25名)
公立はこだて未来大学:修士1年12名、修士2年2名
参加大学:修士1年11名、修士2年0名
●PBL型システム開発演習(23名)
産業技術大学院大学学生(11名)
公立はこだて未来大学:修士1年11名、修士2年1名
合計21名
参加大学:修士1年11名、修士2年0名
公立はこだて未来大学
基礎知識学習科目として、ICTデザイン通論で最先端の技
術動向や実践的な技術についてオムニバス形式で講義およ
ビジネスアプリケーション開発基礎演習では、学生の作業
補助も活用してモバイルアプリケーション開発教材を作成
した。開発環境として、開発用ノートPC、モバイル端末等を
準備し使用した。5名ずつ4チームがモバイルアプリケーショ
ン開発環境Titaniumを用いて、新しいモバイルアプリケー
図 2 . 4 . 1 6 公立はこだて未来大学における
ビジネスアプリケーション開発基礎演習のようす
ションの提案と開発を行った。プロジェクトの進捗管理には
Redmine、成果物のバージョン管理にはSubversionを使用
し、分散PBLで必要となるスキルを習得した。
会津大学および室蘭工業大学との通信のためにPolycom
TV会議システムと多地点サーバを使用した。
本講義で使用した参考書籍は、次のとおりである。
●iPhoneアプリ開発の教科書iOS7&Xcode5対応
森巧尚、
まつむらまきお、平成26年1月、マイナビ
●SCRUM BOOT CAMP
西村直人、永瀬美穂、吉羽龍太郎、平成25年2月、翔泳社
図 2 . 4 . 1 7 公立はこだて未来大学におけるビジネスサービス
デザイン実践(前半)のField Surveyのようす
76
enPiT ANNUAL REPORT 2014
図 2 . 4 . 1 8 公立はこだて未来大学におけるビジネスサービス
デザイン実践(後半)のファシリテーション演習
●オープンソースに依るプロジェクト管理入門
ビジネスサービスデザイン実践の後半では大阪大学の毛
ファーエンドテクノロジー株式会社、平成22年2月、秀和シ
利幸雄特任准教授を講師として招聘し、
ファシリテーションの
ステム
考え方を学ぶために講義と個人・グループ演習で実施した。
●入門Redmine第3版
前田剛、平成24年8月、秀和システム
議論を活性化し結論を引き出す際に必要となるコンセンサス
(総体的合意)を導くスキルを、演習を通して体験しながら学
んだ。チームの相乗効果を発揮させ生産性を向上するため
プログラミング
の具体的なスキルやツールを習得することができ、
これ以降
森真吾、平成24年9月、マイナビ
次の書籍は、講義のために準備し自由利用とした。
『実用Subversion第2版』
、
『GitHub実践入門』
の演習においてチームワークを高めることにつながった。
分散PBL科目であるPBL型システム開発演習では、
「自分と
異なる世代の人に価値をもたらすもの」をテーマとしたビジ
ネスアプリケーション開発を、参加大学と遠隔PBL形式で行っ
また、やむを得ない事情で本演習に参加できない学生に
た。作るものはWebアプリケーションだけに限定せず、タブ
対して、Webアプリケーション開発を対象としたグループ開発
レットアプリケーション、ArduinoやAR Droneなどの組込み
を自習で学ぶ教材を新たに作成・提供し、受講させた。
この教
機器と組み合わせたものでも可とした。最初にヒアリングや
材による受講学生のために提供した参考書籍は以下の通り
要求分析ツリーを使った要求開発を行い、イテレーション型
である。
開発やアジャイル開発の手法を用いたシステム開発を行っ
『CakePHP2.1によるWebアプリケーション開発』、
『ゼロか
た。平成26年度は公立はこだて未来大学と会津大学、同志社
らわかるPHP超入門』、
『PHP逆引きレシピ』、
『SCRUM BOOT
大学、室蘭工業大学の学生が混じった4つの混成チームで活
CAMP』、
『オープンソースに依るプロジェクト管理入門』、
『入
動を行った。各チーム、①祖父母と孫のコミュニケーションを
門Redmine第3版』
活性化するためのタブレットアプリケーション「だんらんダイ
第2章 実践教育の取り組み状況
●JavaScriptとTitaniumではじめるiPhone/Androidアプリ
ニング」、②車と車のコミュニケーションを円滑にするための
ビジネスサービスデザイン実践では、公立はこだて未来
Androidアプリケーション「ライトシグナル」、③保育園で撮影
大学の情報デザイン教員と共同で準備した会場と作成した
した写真を使った保育園スタッフや保護者間のコミュニケー
教材を利用した。
「新しい市電のサービスデザイン」をテー
ション支援ツール「えんみる」、④子どもに楽しく学ぶきっかけ
マとして、函館市内の銭湯などの調査に基づき、サービスデ
を提供する
「ロボットダンス」の開発に取り組んだ。
ザインを行った。函館市西部地区に現存する大黒湯(現在は
本講義の成果発表会を平成26年12月19日にテレビ会議シ
営業してない)を基地に、市電関係者や周辺市民へのインタ
ステムおよびネット中継(Ustream)を使った公開講義として
ビュー、市街地や電停、車両基地での参与観察を通じて問題
実施した。発表会では4チームによる要求分析ツリーを使っ
発見と分析を行った。最終的に市電を使った新しいサービス
た要求開発やシステム開発の成果を、デモンストレーション
をジオラマや物語、IT機器を利用したプロトタイプを用いて
を盛り込んで発表した。出席者からは質疑応答形式でコメン
提案した。地域に密着した提案を行うために、地域の方々
(市
トをもらった。
役所の関係者、新聞社、近隣住民など)にも演習に参加しても
参加者
木 下実氏(日本アイビーエム・ソリューション・
らい、積極的に意見を述べてもらった。本講義において、地域
サービス株式会社)
活性につながる取り組みが注目され、函館新聞に掲載され
高森満氏(アグリ・コネクションズ株式会社)
た。記事のなかではenPiTについても紹介され、有意義な取り
澁谷歩氏(株式会社ジースタイラス)
組みを市民に知ってもらえる良い機会となった。
TV会議システム・ネット中継からの参加者:
図 2 . 4 . 1 9 公立はこだて未来大学における
PBL型システム開発演習での分散開発の様子
図 2 . 4 . 2 0 公立はこだて未来大学におけるenPiT振り返りの様子
enPiT ANNUAL REPORT 2014
77
吉岡廉太郎准教授(会津大学)
識学習における教材開発等や、本事業で実施するさまざまな
嵯峨智准教授(筑波大学)
イベントに携わることで、実践的教育に関する一層のスキル
他 公立はこだて未来大学教員7名
アップも期待できる。
参加大学に在籍する教員に対しては、短期集中合宿や分
平成27年1月9日には、
これまでの演習で撮影した記録映
散PBLに積極的に参加してもらうことで実践的教育の普及
像や写真を活用しながら本年度のenPiTカリキュラム全体の
展開や教員のFDとしても効果的であった。また、連携企業の
振り返りを行った。
ここでは本学のenPiT特任教員が開発した
担当者を交えた実践教育に関する情報交換、意見交換、
レク
Experience Mapを利用した振り返りツールを使用した。模造
チャー等の場を設定することでビジネスアプリケーション分
紙、マーカー、付箋、振り返りカード、
コンセプトシールを使用
野における効果的なFD体制の形成を図っている。
した。振り返りを行うことで学生の学びを外化し共有できた。
さらに、連携大学ごとのワークショップや分野ワークショッ
また、学生の学びを教員が把握することで、次年度のカリキュ
プの際に、本プログラムに参加している学生・教員・連携企
ラムや教材の改善にもつながった。
業担当者を一堂に会した年度の活動の振り返りを行い、カリ
キュラムの実施方法や教育内容の改善に努めている。連携大
ビジネスアプリケーション分野全体として、第三回ビジネ
スアプリケーション分野ワークショップを平成27年2月20日
学、参加大学合わせて、40名程度の教員の参加を目標にして
いる
(本年度の実施状況は前述の通り)。
に筑波大学東京キャンパスにて、テレビ会議システムおよ
これらを通して、ビジネスアプリケーション分野を中心とし
びUstreamによる公開シンポジウムの形式で開催した。78名
た実践的な大学院教育のレベルアップを図るとともに、連携
(教職員39名、学生29名、社会人10名)の参加者のもと、横
大学、参加大学において、PBLを中心とした実践教育を担当
塚裕志CeFIL理事長のご講演や連携3大学の活動報告、各連
可能な教員の一層の充実を図っている。その他、平成25年度
携大学から選抜された学生チームのプロジェクトのデモと発
からの短期集中合宿における集中講義・演習と分散PBLを通
表、パネルディスカッションなどを行った。今年度の振り返り
して、実践的教育手法を連携大学・参加大学と共有可能な情
と次年度へのフィードバックとして、教員、学生、社会人それ
報としてまとめていくとともに、連携大学や参加大学の情報
ぞれの立場でのビジネスアプリケーション分野における人
交換のためのネットワークを維持・強化し、実践教育の普及
材育成のあり方について幅広い意見交換を行う貴重な場と
を目指している。
なった。
2.4.6
教員養成・FD活動
筑波大学では、平成25年度に本事業専任の2名の若手教
2.4.7
来年度のイベント予定・募集情報
●筑波大学enPiT-BizAppワークショップ
大学名
筑波大学
員が本事業における事前基礎知識学習、短期集中合宿、分散
開催時期
平成27年12月
PBLの実施全体に携わることで、実践教育の能力を強化育成
開催場所
筑波大学
している。また、教育能力だけではなく、連携大学間のコミュ
ニケーション、参加大学との交渉、本事業活動に関わる各種
●筑波大学enPiT分散PBL成果発表会
イベントの企画や実施にも中心的に携わることで、大学間連
大学名
携のためのネットワーク構築に関する能力の強化も図ってい
開催時期
平成28年2月
る。
開催場所
筑波大学
筑波大学
産業技術大学院大学では、ベテランから若手までの専任教
員6名と特任教員2名で本事業に取り組んでいる。
これらの体
制により、ビジネスアプリケーション分野のFDとして若手教
員育成も行っている。
公立はこだて未来大学において、1名の若手教員が引き続
●産業技術大学院大学分散PBL成果発表会
大学名
産業技術大学院大学
開催時期
平成28年2月
開催場所
産業技術大学院大学
き本事業の推進に中心的に携わることを通じて、実践教育を
推進できる能力を磨いている。
また他の連携大学の発表会へ
参加したり、enPiT教員の情報交換会に参加したり、積極的な
大学名
FD活動を行っている。本学のenPiTに関する講義を公開する
開催時期
平成27年12月
ことで、大学間相互の教員育成にも貢献している。
開催場所
公立はこだて未来大学
また、3連携大学(筑波大学、産業技術大学院大学、公立は
こだて未来大学)においては、ベテラン教員の他に、若手教員
が本事業に中心的に携わる。短期集中合宿、分散PBL、基礎知
78
●公立はこだて未来大学分散PBL成果発表会
enPiT ANNUAL REPORT 2014
公立はこだて未来大学
●第4回ビジネスアプリケーション分野ワークショップ
筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて
大学名
未来大学
つ俯瞰的にそれらを適用することで顧客要求を満足する解
を示す能力を教育することを目指した。加えて、ユーザーセン
タードデザインによるトータルなデザイン能力、さらに要求
開催時期
平成28年2月
分析・設計・実装等の開発力に加えて、情報デザイン力、問題
開催場所
未定
発見・解決力等も加味した教育を実施した。
は147名にのぼった。
このうち133名が分散PBLに進み、博士
募集情報
課程学生1名を含む123名が本年度の全課程を修了した。本
連携大学、参加予定大学を含め、情報系の大学院に在籍し
ている大学院学生、情報系の学部レベルの基礎教育を習得
年度受講生数の目標は70名であり、
この目標を大幅に超える
実績を上げた。
している受講希望者、情報系企業における実務経験を有する
また、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来
受講希望者を対象とし、受講生募集を3~4月頃に行う予定で
大学の3連携大学で23名、それに加えて、室蘭工業大学、岩手
ある。
大学、会津大学、茨城大学、群馬大学、宇都宮大学、埼玉大学、
応募者には、指定する基礎知識を必要に応じて短期集中
千葉大学、東京理科大学、お茶の水女子大学、津田塾大学、
合宿までに学習してもらい、前提知識の習得状況の審査に合
拓殖大学、同志社大学、広島大学、山口大学、愛媛大学、徳島
格することで、短期集中合宿への参加および分散PBLの受講
大学、岡山県立大学、琉球大学の計19の参加大学から34名、
を認める(定員を超えた場合はさらに選抜を行う)。なお、前
その他大学から5名の教員の参加を得た。目標の連携大学30
提知識の習得状況の確認は、連携大学学生については指定
名には満たなかったが、目標に近い値を達成することができ
科目の履修実績により、その他の受講希望者については指定
た。参加大学25名の目標は十分に達成することができた。さ
科目と同等の内容の履修実績によって行う。
らに、富山大学が来年度からの参加を予定しており、
より一層
募集案内や参加・応募方法など詳細は、Webサイトにて公
の拡大が期待できる。
産業技術大学院大学ではこれからのビジネスアプリケー
開する。
http://bizapp.enpit.jp/
ション開発技術者に必要と考えられる2大要素の、
アジャイル
●4月〜5月 受講生決定、受講者説明会実施
開発手法とグローバル開発をテーマに集中講義や分散PBL
●6月 短期集中合宿参加のための前提知識習得状況審査
を実施した。アジャイル開発技術においては、利活用企業と
Webサイト
第2章 実践教育の取り組み状況
本分野全体で平成26年度の短期集中合宿への受講生数
しての楽天株式会社や、
スクラム手法の第一人者の協力のも
▼enPiTビジネスアプリケーション分野事務局
問い合わせ先
と、短期間で品質の高いアプリケーションの開発を達成した。
また、
グローバルチームは実際にブルネイやベトナムの大学
筑波大学大学院システム情報工学研究科
生からの要求を受け、
グローバル基準に則った開発や文化の
コンピュータサイエンス専攻事務室enPiT担当
違いを体感することができた。
TEL ▶ 029-853-4991
E-mail ▶ [email protected]
産業技術大学院大学の分散PBL受講生38名のうち29名が
社会人学生であった。
このうち22名は正規学生ではなく、外
部から科目等履修制度などを使って受講した学生である。今
産業技術大学院大学
後も、仕事を持ちながら学ぶ社会人学生が増えることが予想
産業技術大学院大学内 enPiT事務局
される。産業技術大学院大学のenPiTプログラムは、
このよう
TEL
な仕事を持つビジネスマンが参加しやすいように、夜間や土
▶
03-3472-7833
E-mail ▶ [email protected]
曜日の講義を提供しており、本年度は社会人へ積極的に本プ
ログラムの広報活動を行ったことにより、多くの社会人の参
公立はこだて未来大学
公立はこだて未来大学内 enPiT事務局
加を得た。今後も社会人が学ぶ環境を整備していきたい。
また、分野全体として、情報系以外の電気系や機械系など
TEL ▶ 0138-34-6411
の広く工学系の人材、芸術系や文化系なども含めた幅広い
E-mail ▶ [email protected]
人材に対するビジネスアプリケーション分野の教育を行うこ
とも目指していきたい。
2.4.8
まとめ
本年度の各報告会やFDを通じて、関係組織の方々から多く
のご意見をいただいた。来年度はこれらを基に、
より多くの学
本分野は、先端情報技術や情報インフラを有機的に活用
生に対し高い教育効果をあげられるカリキュラムと体制を目
し、潜在的なビジネスニーズや社会ニーズに対する実践的問
指す。そのためには、学生らしい斬新な提案に対する期待も
題解決ができる人材育成を目指している。そのため、次世代
踏まえ、課題設定や実施内容を工夫するなどの対応も必要と
社会情報基盤を成す先進要素技術を十分理解し、複合的か
考えている。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
79
2.5
2 . 5 .1
分野を越えた実践教育
に、専任教員の交流やFDとしての副次的効果も考慮して、各
分野横断講義
分野、連携大学で相互にカリキュラムに取り入れることを積
分野を越えた実践教育として、教務WGで本年度に企画し、
極的に検討した。その結果、本年度はAを3種類(4講義)、Bを
実施した「分野横断講義」の詳細について述べる。
「分野横断
4種類(7講義)、併せて8種類で12の分野横断講義を実施し
講義」
としては、次の2種類がある。
た。また、
これら以外にもクラウドコンピューティング分野と
A 分野によらず必要な汎用的内容の講義
て共同で分散PBLを実施するなどの取り組みも行われた。本
B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義
年度の実施状況の概要は図2.5.1の通りである。
ビジネスアプリケーション分野がテレビ会議システムを用い
なお、昨年度よりセキュリティ分野の科目の多くは、登録を
昨年度は、Aを2種類(3講義)、Bを1種類(1講義)の試行
行うことで、他分野の学生でも遠隔受講(同時、または蓄積)
的実施に留まったが、本年度は、各分野の連携大学から分野
が可能となっている。
これに関し、
クラウドコンピューティン
横断講義として提供可能な候補リストを作成し、
これをもと
グ分野では本年度よりネットワークセキュリティに関する科目
図2.5.1
平成26年度 分野横断講義概要
クラウドコンピューティング分野
提供
組込みシステム分野提供
[ネットワークセキュリ
ティ
(アーカイブによる
自主学習)]
クラウド
コンピューティング
分野開催
セキュリティ分野
開催
セキュリティ分野提供
A ロジカルシンキング
(10/10:九州工業大
学)
B データサイエンス
入門(10/31:
九州工業大学)
B クラウドエクストラ
(11/21:奈良先端科学技
術大学院大学
+配信)
A ロジカルシンキング
(12/3:慶應義塾大学
日吉
+配信)
B データサイエンス入門
(12/17:慶應義塾大学
日吉
+配信)
組込みシステム
分野開催
ビジネス
アプリケーション
分野開催
ビジネスアプリケーション
分野提供
ー
B クラウドエクストラ B Androidの
(8/29:筑波大学
パーミッション機構
(短期集中合宿中)) (8/28:筑波大学
(9/25:産業技術大学院
(短期集中合宿中))
大学
(短期集中合宿中))
Bファシリテーションスキル (8/15:未来大
(短期集中合宿中))
A プレゼンテーションスキル (8/22:筑波大学
(短期集中合宿中))
A ドキュメンテーション
(8/20:筑波大学
(短期集中合宿中))
【凡例】A 汎用的な講義 B 特任教員による専門的な講義
※セキュリティ分野で開講している多くの科目は登録を行うことで他分野の学生でも遠隔受講が可能。
※組込みシステム分野 名古屋大附属組込みシステム研究センターの「社会人組込み技術者向けの公開講座」
を、enPiT全分野の履修学生は無料で受講可能。
80
enPiT ANNUAL REPORT 2014
その他
[産技大と分散
PBLを共同開催
(後期土曜日数
回程度、テレビ会
議にて開催)]
(蓄積)
を学生に案内し自主学習として受講させている。
また、本年度より、組込みシステム分野の名古屋大学附属
組込みシステム研究センターの「社会人組込み技術者向けの
公開講座」をenPiT全分野の履修学生に無料で受講可能とし
(a2)ク
ラウドコンピューティング分野から
ビジネスアプリケーション分野に提供
プレゼンテーションスキル
講師
ている。
増本登志彦氏(株式会社日立インフォメーション
アカデミー)
説明資料の作成と捉えて、身近なものとして考え
A 分野によらず必要な汎用的内容の講義
る。
グループでのミニ演習が中心となる講義のた
め、仲間の考え方も聞くことで参考になる。
(a1)組込みシステム分野から
ビジネスアプリケーション分野に提供
ソフトウェア開発のためのドキュメンテーション入門
講師
塩谷敦子先生(合同会社イオタクラフト)
概要
ソフトウェア開発における開発文書づくり
(ドキュ
本講義では、プレゼンテーションをちょっとした
実施日時
8月22日 9:30~12:15
実施場所
筑波大学総合研究棟B SB0110教室
受講生
筑波大拠点短期集中合宿第1週(8/18~8/25) 参加学生82名
[所属内訳]
メンテーション)の重要性と、その基礎技術を学
ぶ。開発文書はどう書くべきか、
という基本的なと
筑波大学:49名
らえ方とドキュメンテーションの役割を学習し、
愛媛大学:5名
情報を正確に分かりやすく伝達するための文書
茨城大学:8名
の書き方の基礎技術を学ぶ。
岩手大学:2名
実施日時
8月20日 9:30~12:15
埼玉大学:3名
実施場所
筑波大学総合研究棟B SB0110教室
お茶の水女子大学:4名
筑波大拠点短期集中合宿第1週(8/18~8/25) 東京理科大学:2名
受講生
第2章 実践教育の取り組み状況
概要
千葉大学:4名
参加学生82名
山口大学:5名
[所属内訳]
筑波大学:49名
愛媛大学:5名
図2.5.3
茨城大学:8名
分野横断講義
「プレゼンテーションスキル(8/22)
」の様子
岩手大学:2名
埼玉大学:3名
お茶の水女子大学:4名
東京理科大学:2名
千葉大学:4名
山口大学:5名
図2.5.2
分野横断講義
「ドキュメンテーション
(8/20)」の様子
(a3)ビ
ジネスアプリケーション分野から
クラウドコンピューティング分野に提供
ICT分野の研究開発におけるロジカルシンキングと
ロジカルライティングの活用
講師
高橋慈子氏(株式会社ハーティネス)
概要
研究開発のテーマの設定、要件定義の作成を行
うには、情報を整理し、ロジカルに全体を構築す
ることが重要になる。そうした思考方法のひとつ
としてロジカルシンキングが活用できる。本講で
は、ロジカルシンキングの手法、考え方を理解し、
情報整理やロジックの作成などの演習を通して
enPiT ANNUAL REPORT 2014
81
実践する。
また、技術文書作成へ進める際に求め
られる、正確さ、わかりやすさを実現するために、
ロジカルシンキングからロジカルライティングに
落とし込んでいく方法も取り上げる。
B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義
(b1)クラウドコンピューティング分野から
ビジネスアプリケーション分野分野に提供
実施日時
10月10日 14:40~16:10
実施場所
九州工業大学情報工学部 大学院セミナー室
講師
毛利幸雄氏(大阪大学)
九州工業大学大学院情報工学府修士課程学生
概要
ファシリテーションの考え方を、座学と個人・グ
受講生
ファシリテーションスキル
13名(クラウドコンピューティングコース学生10
ループ演習を通して学ぶ。また、議論を活性化し
名を含む)
結論を引き出す際に必要となるコンセンサス(総
体的合意)を導くスキルを、演習を通して体験し
ながら学ぶ。会議の効率化だけでなく組織・企業
(a4)ビ
ジネスアプリケーション分野から
変革にも役立つ、
ファシリテータの役割と重要性
セキュリティ分野に提供
ICT分野の研究開発におけるロジカルシンキングと
についての認識を深め、チームの相乗効果を発
ロジカルライティングの活用
揮させ生産性を向上するための具体的なスキル
講師
高橋慈子氏(株式会社ハーティネス)
概要
やツールを習得する。
(a3)
と同じため省略
実施日時
8月15日 9:00~18:00
実施日時
12月3日 13:30~16:45
実施場所
公立はこだて未来大学 本棟484教室
実施場所
慶應義塾大学日吉キャンパス協生館6F大会議室
受講生
より遠隔講義システムで3拠点に配信
受講生
未来大拠点集中合宿(8/11~8/15、8/18~22、
25) 参加学生25名
[所属内訳]
いずれも大学院修士課程学生:合計14名
公立はこだて未来大学:14名
[所属内訳]
情報セキュリティ大学院大学:6名(内2名は慶應
会津大学:4名
義塾大学で受講)
室蘭工業大学:5名
東北大学:5名
同志社大学:2名
北陸先端科学技術大学院大学:3名
図2.5.5
図2.5.4
分野横断講義
「ロジカルシンキング(12/3)」の様子
分野横断講義
「ファシリテーションスキル(8/15)
」の様子
(b2)セキュリティ分野から
ビジネスアプリケーション分野に提供
AndroidのPermission機構とその役割について
講師
山口利恵氏(東京大学)
概要
スマートフォンはユーザが常に持ち歩き、取得で
きる情報も多いので、ユーザのプライバシーへの
配慮が重要である。
プライバシーを適切に保護す
るためには、ユーザが本当にその情報をサービ
ス事業者に渡して良いのかについて、意思の確
認をする必要がある。スマートフォン上のアプリ
82
enPiT ANNUAL REPORT 2014
が、ユーザの意思を確認する方法として、パー
[所属内訳]
ミッションがあるが、適切な設定をどのようにし
筑波大学:31名
たらよいのか、
また、ユーザにどのようにしたらわ
愛媛大学:4名
かりやすく伝えられるのかを考える。
茨城大学:8名
8月28日 9:30~12:15
岩手大学:1名
実施場所
筑波大学総合研究棟B SB0110教室
千葉大学:4名
筑波大拠点短期集中合宿第2週(8/26~9/1) お茶の水女子大学:4名
受講生
東京理科大学:2名
参加学生54名
[所属内訳]
筑波大学:31名
図2.5.7
愛媛大学:4名
分野横断講義
「クラウドエクストラ
(8/29)
」の様子
茨城大学:8名
岩手大学:1名
千葉大学:4名
第2章 実践教育の取り組み状況
実施日時
お茶の水女子大学:4名
東京理科大学:2名
図2.5.6
分野横断講義
「AndroidのPermission機構(8/28)」の様子
(b4)クラウドコンピューティング分野から
ビジネスアプリケーション分野に提供
クラウドエクストラ
講師
Marat Zhanikeev氏(九州工業大学)
概要
(b3)
と同じため省略
実施日時
9月25日 18:30~21:40
実施場所
産業技術大学院大学 357PC講義室
受講生
産技大拠点短期集中合宿(9/22~27) 参加学
生34名[所属内訳]
(b3)クラウドコンピューティング分野から
産業技術大学院大学:10名
ビジネスアプリケーション分野に提供
琉球大学:5名
クラウドエクストラ
講師
Marat Zhanikeev氏(九州工業大学)
拓殖大学:2名
概要
クラウドは、データセンターを中心にした大規模
社会人:17名
な技術である。
「クラウドエンジニア」
という正式
な職名はないが、データセンターにおいてクラウ
ド系の仕事をしている職員のことを、
クラウドエ
図2.5.8
分野横断講義
「クラウドエクストラ
(9/25)
」の様子
ンジニア
(CE)
と呼んでも間違いない。CEは、さま
ざまな問題を解決しなければならないが、共通
する内容は「作業の効率」
と
「性能管理」の2つに
絞れられる。本講義では、
ミニクラウドを構築・運
営しながら、
この2つの問題におけるいくつかの
具体的な解決方法を演習の形で学ぶ。
実施日時
8月29日 9:30~12:15
実施場所
筑波大学総合研究棟B SB0110教室
受講生
筑波大拠点短期集中合宿第2週(8/26~9/1) 参加学生54名
enPiT ANNUAL REPORT 2014
83
13名(クラウドコンピューティングコース学生の
(b5)クラウドコンピューティング分野から
み)
ビジネスアプリケーション分野に提供
クラウドエクストラ
講師
Marat Zhanikeev氏(九州工業大学)
概要
(b3)
と同じため省略
実施日時
11月21日 15:10~18:20
実施場所
奈良先端科学技術大学院大学より遠隔講義シス
図 2 . 5 . 1 0 分野横断講義
「データサイエンス入門(10/31)
」の様子
テムで3拠点に配信
受講生
いずれも大学院修士課程学生:合計40名
[所属内訳]
情報セキュリティ大学院大学:4名
東北大学:10名
北陸先端科学技術大学院大学:9名
奈良先端科学技術大学院大学:5名
奈良女子大学(奈良先端科学技術大学院大学に
て受講)
:12名
図2.5.9
分野横断講義
「クラウドエクストラ
(11/21)」の様子
(b7)ビジネスアプリケーション分野から
クラウドコンピューティング分野に提供
ビジネスアプリケーションのためのデータサイエンス入門
講師
渡辺知恵美氏(筑波大学)
概要
(b6)
と同じため省略
実施日時
12月17日 13:00〜16:10
実施場所
慶應義塾大学日吉キャンパス協生館6F大会議室
より遠隔講義システムで2拠点に配信
受講生
いずれも大学院修士課程学生:合計26名
[所属内訳]
情報セキュリティ大学院大学:1名(慶應義塾大学
で受講)
東北大学:5名
北陸先端科学技術大学院大学:13名
(b6)ビジネスアプリケーション分野から
慶應義塾大学:7名
クラウドコンピューティング分野に提供
ビジネスアプリケーションのためのデータサイエンス入門
講師
渡辺知恵美氏(筑波大学)
概要
近年のブログやSNS等の爆発的な利用者増加に
より世界中の人々の行動ログがインターネット上
のサーバに蓄積されている。
これらの膨大なビッ
グデータを分析し、利用者の行動傾向を発見して
マーケティングにつなげ、利用者への適切な商品
推薦機能をアプリケーションに提供する「データ
サイエンティスト」
という職業が注目を集めてい
る。本講座では、ビッグデータを分析しビジネス
につなげるためのデータ分析のプロセスや必要
なスキル、ビッグデータの扱い方について講義す
る。
実施日時
10月31日 14:40~16:10
実施場所
九州工業大学情報工学部 N501室
受講生
84
九州工業大学大学院情報工学府修士課程学生
enPiT ANNUAL REPORT 2014
図 2 . 5 . 1 1 分野横断講義
「データサイエンス入門(12/17)
」の様子
2.5.2
スクラム実践
アジャイル研修
スクラム実践においては、予め定められたプロジェクトとし
て、Android端末を利用したカンバンアプリケーション作成に
アジャイル研修(インド)の概要等
従事した。本アプリケーションはカンバンデータをサーバに
高度な情報開発技術を習得することを目的としたFDの一
智准教授、渡辺知恵美助教と各大学学生2名が株式会社NTT
みを有する。
チームは教員2名、学生2名、株式会社NTTデータ社員2名、
データ主催Global Agile eXperienceトレーニングに参加し
現地インド人開発者3名で構成された。
スプリントでは、ペア
た。
プログラミングにより実装を進めていくこと、テスト駆動開発
(TDD)で実施することを確認して開発を開始したが、当初
はプロダクトオーナとトレーニング指導者との間の連絡不足
事前研修
本トレーニングは1/14、1/21~23の合計4日間の日本での
や、日本人とインド人開発者の意思疎通不足のため、いくつ
研修と、1/24~2/28の32日間のインドでの研修からなる。ス
かの追加業務で1日半ほど時間を無駄にするなど、問題も多
クラム研修では、
アジャイルとは何か、
スクラムとは何かとい
かった。ただ、
これらも含めてスクラムの醍醐味と捉えること
うことに関して簡単なグループワークを通じて学んだ。
さらに
もできる。すなわち、
さまざまな状況が発生しても自分たちで
現地プロジェクトで使用する各種ツールの簡単な講習を受
状況を把握し、
これを改善してゆくことで自己組織化してゆく
けた。
ことがスクラムチームの目的であるので、解決のための枠組
第2章 実践教育の取り組み状況
貫として、東京大学から小林克志准教授、筑波大学から嵯峨
蓄積し、サーバとの通信により、データを取得、更新する仕組
みを探ることが重要課題となった。早速次の日のミーティン
グで問題が顕在化され、必要な解決策がチーム内で議論さ
ビジネス英語
3日間の日本でのスクラム研修を経て、
インド共和国プネ市
れ、
これを実施することとなった。
これらの議論を土台として
にあるNTT DATA Global Technology Serviceにてビジネス
開発をすすめ、ある程度動作するアプリケーションを完成さ
英語およびスクラム実践を開始する。ビジネス英語では座学
せた段階で、第一週のスプリントレビューを迎えた。
プロダク
とともに、ロールプレイによる学習も積極的に行われた。様々
トオーナからは一定の評価は得たものの、成果物の受領まで
な状況における英会話を参加者が自ら考え、参加者間で会話
には至らなかった。
を実施することで、実践的に学ぶことができた。
第二週は、前スプリントにおける積み残しを整理、解決す
図 2 . 5 . 1 2 「GAX研修」
の様子
解像度低い
enPiT ANNUAL REPORT 2014
85
ることを目的として、TDDを徹底すること、カバレッジの確認
役では、デモンストレーションにトラブルがあった場合の柔
やFailure Testを排除するための継続的インテグレーション
軟な対応(他の議題を先に進めるなど)や、
レビュー結果に対
(CI)の環境準備として、Jenkinsを用意することなどもタスク
して計画時には出ていなかった要望やコメントが顧客から
に盛り込まれた。この週から筑波大学の渡辺助教も参加さ
出された場合の交渉などを実践した。
れ、各Pairを動的に観察することで次Sprint以降の参加をス
本研修自体は七週間のプログラムであるが、enPiTから参
ムーズにしてもらうこととした。
これらの議論をもとに、各ペ
加した学生と教員の参加は第四週を持って完了し帰国した。
アでのタスクを割り当て、テストをベースとした実装を進め
最終日にはNTTデータで実際にアジャイル開発手法を採用し
た。単体テストの書き方自体が困難であったことやCIのため
ているチームメンバーによる開発事例紹介があった。
の単体テストによる実装変更の影響などもあり、先程まで成
功していたものがいつの間にか失敗するといったこともた
びたびあった。そのため、
プロダクトコードよりユニットのた
ミーティングにおける問題の共有、短いタイムボックスに
めのコーディングに忙殺されたスプリントとなった。
しかしな
よる問題と解決策の議論と早いチームへのフィードバック、
がら、そのおかげもあり、第二週のレビューではCIによるカバ
未知の知識に関し、担当者からのセッションによる情報共有、
レッジも定量的に示すことができ、ユーザストーリに則ったレ
ふりかえりによる問題の明確化と改善、対等な立場としての
ビューを実施することで、2つのユーザストーリの受領をプロ
各メンバーからの自発的な提案とさまざまな議論と解決策
ダクトオーナから得ることができた。
また、
スプリントと平行し
の提示など、Scrum自体に開発者として参加し、Scrumチーム
てエクストリーム(XP)開発の実践例についての講習が行わ
が成長してゆく過程、自己組織化してゆく様子をチームメン
れた。小林准教授と嵯峨准教授は第二週終了後に帰国した。
バーとして内側から主体的に考え、変えてゆくことを体感した
第三週は初日のスプリント計画ミーティングにおいて前ス
ことにより、参加者はスクラム開発手法の教育者認定を得る
プリントの結果を考慮した開発速度の見積もりやユーザス
レベルに達することができた。
トーリの決定をし、開発者の開発スピードやテストにかかる
一方でアジャイル開発をenPiTで導入するための難しさ
コストを反映した適切なタスク割り当てを行った。結果とし
の一端を知ることとなった。本研修は1チームで開催し、
リー
てこのスプリントではプランニングで予定したユーザストー
ダー役であるスクラムマスタと顧客役であるプロダクトオー
リの開発をすべて完了することができた。本スプリントでは、
ナは最初の3スプリントまでアジャイルの経験が豊富な社員
チーム内およびプロダクトオーナとのコミュニケーションの
が担当し適宜適切な方向にチームを導いた。またチームメ
必要性に焦点が当てられた。本スプリントで取り組むユーザ
ンバーは毎日9時から18時までこの研修に専念していた。
こ
ストーリに対して顧客の要件があいまいな箇所についてプラ
の研修方法を実際enPiTにて多くの学生に適用するのは難し
ンニングで確認し、開発中に不明な点に気づいた場合やイン
く、指導する内容の取捨選択が必要である。一方でアジャイ
タフェースや実装方法に関して現状では顧客要件が満たせ
ル開発に関する各技法はスプリントの進め方に密接にかか
ない場合は、早急にチーム内でフロアミーティングを行い、
ス
わっていることもあり、中途半端に取捨選択をすると全体が
プリント中に積極的にプロダクトオーナと交渉することを実
破たんする恐れもある。そのため取捨選択してenPiTでの指
践的に行った。
これによりレビュー時にプロダクトオーナと開
導に取り入れるためには経験者のアドバイスを取り入れた
発メンバーとの意思疎通が取れていなかったことが発覚する
慎重な姿勢が必要であると感じた。さらに、本研修では開発
問題を避けることができた。研修中、
プロダクトオーナは開発
構想やスケジュール(ユーザストーリとタスクの洗い出し)は
メンバーと同じ部屋におり、交渉がしやすい環境にあった。
レ
指導者側で提示されていたが、enPiTの指導では設計時点か
ビュー前にもプレゼンテーションの手順に関して事前にプロ
らチームで取り組む必要がある。
この点も研修とは別に調査
ダクトオーナと打合せをした上で行われた。
また本スプリント
して実践しなければならないと感じた。
でCIツールおよびコードカバレッジ可視化ツールの導入が
完了し、一連の開発環境が整った。
第四週はコミットしたプロダクトの単体テストおよび統合
テストがすべて成功している状態を維持することが徹底され
た。開発メンバー間のルールを決め、CIツールでfailが認めら
れた場合は何より優先してその解決を行うこと、
またfail test
をコミットした開発者には「休憩時間にチャイを出す」ペナル
ティを適用した。
これによりプロダクトの品質維持に関する意
識が開発メンバー間に徹底された。
またこれまでスクラムマ
スタはアジャイル開発経験のある社員が担当していたが、本
スプリントでは研修メンバーが交代で担当し、会議のファシ
リテーションなどを行った。特にスプリントレビュー時の進行
86
得られた成果
enPiT ANNUAL REPORT 2014
アジャイル研修のフィードバック
+嵯峨准教授、渡辺助教
概要
「プロダク
トディスカバリー」
という手法を使いな
クラウドコンピューティング分野の東京大学ではPBLとして
がら、最小限のリソースで最大の成果を目指した
ソフトウェアのグループ開発を冬学期に実施している。当該
プロセスや各プロセスでの技法を学び、演習を通
PBLでは今年度からリポジトリ管理、課題管理といったアジャ
して頭と手と会話を駆使しながらアイデアをプロ
えで、
ソフトウェア開発ベストプラクティス(ウォーターフォー
実施日時
8月18日 9:30~18:00
ル、スクラム、エクストリーム)のいずれかでの開発を課して
実施場所
筑波大学総合研究棟B SB0112教室
いる。
受講生
筑波大拠点短期集中合宿第1週(8/18~8/25) 参加学生82名
ビジネスアプリケーション分野の筑波大学からは2名の専
[所属内訳]
任教員(嵯峨智准教授、渡辺知恵美助教)がインドでのアジャ
筑波大学:49名
イル研修に参加しており、
この研修のフィードバックとして、
愛媛大学:5名
研修実施元の株式会社NTTデータと連携して、筑波大学拠点
茨城大学:8名
での8月の短期集中合宿中に以下の2つを実施した。なお、特
岩手大学:2名
にアジャイル研修Ⅱ
(上級編)では、
クラウドコンピューティン
埼玉大学:3名
グ分野の大阪大学Cloud Spiralでの「スクラム講習」の講義と
お茶の水女子大学:4名
共通の教材を利用し、実施にあたっては、Cloud Spiralでのご
東京理科大学:2名
担当の大阪大学の井垣宏特任准教授に全面的にご協力いた
千葉大学:4名
だいた。
山口大学:5名
第2章 実践教育の取り組み状況
ダクトへ落とし込んでいくプロセスを体験する。
イル手法で広く用いられているツールの利用を必須としたう
当日は、森本千佳子特任講師(enPiTクラウドコンピュー
アジャイル研修Ⅰ(入門編)
講師
杉浦由季氏、石井宏氏(株式会社NTTデータ)
図 2 . 5 . 1 3 「アジャイル研修Ⅰ
(8/18)」の様子
ティング分野 東京工業大学専任教員)や、参加大学の愛媛
大学教員4名、埼玉大学教員1名、茨城大学教員1名も見学参
図 2 . 5 . 1 4 「アジャイル研修Ⅱ
(8/26)
」の様子
enPiT ANNUAL REPORT 2014
87
加した。
受講生
教員7名と学生6名
[所属内訳]
東北大学:2名
アジャイル研修Ⅱ(上級編)
講師
筑波大学:1名
杉浦由季氏(株式会社NTTデータ)+嵯峨准教
情報セキュリティ大学院大学:1名
授、渡辺助教
概要
北陸先端科学技術大学院大学:1名
アジャイルソフトウェア開発手法の1つである
Scrumの基礎知識として、
プロダクトバックログ、
奈良先端科学技術大学院大学:1名
スプリントバックログの作り方、
プランニングポー
公立はこだて未来大学:1名
カーによるメンバーの意思統一の方法、デイリー
九州大学:1名
スクラムの方法などを講義と演習で実践する。
九州工業大学:1名
実施日時
8月26日 9:30~18:00 北九州市立大学大学院:1名
実施場所
筑波大学第3エリアB棟3B311教室
東京大学:1名
筑波大拠点短期集中合宿第2週(8/26~9/1 参
大阪大学:1名
受講生
産業技術大学院大学:1名
加学生54名
[所属内訳]
筑波大学:31名
●授業詳細
具体的な授業は下記のように行われた。
愛媛大学:4名
茨城大学:8名
[11月1日]
岩手大学:1名
❶自己紹介を通じてチームビルディングを行う。予め記入し
千葉大学:4名
た自己紹介シートを元に、専門分野や研究実績に加えて趣味
お茶の水女子大学:4名
や家族構成についてのプライベートなことも共有する。
東京理科大学:2名
❷各チームでつくりたいもの(ビジョン)
とそれによって人の
生活がどのように変わってほしいのか(哲学)を定める。今回
当日は、参加校の愛媛大学教員2名も見学参加した。
のワークショップでは「自動車業界を活性化する」
というお題
をもとに行った。
2.5.3
イノベーターワークショップ
❸哲学とビジョンを定めた後は、現場に入り民族誌調査を行
う。今回は、担当教員が調査対象現場に事前交渉し、自転車
本年度はハイブリッド人材育成に向けた準備として、情報
店、自動車販売店、
レースカー調整工場の3つを準備した。参
工学をベースとしない人材も含めたAイノベーターワーク
加者は1時間程度の参与観察(participant observation)を行
ショップ、Bものつくりの関連講義を実施した。
なった。調査の手法としては師匠弟子モデルを利用した。師
匠弟子モデル(Master-Apprenticeship Model※1)は、調査対
A イノベーターワークショップ
講師
佐藤千尋特任助教(慶應義塾大学大学院メディ
アデザイン研究科)
概要
象者を師匠と見立て、調査者は弟子としてただひたすら見習
う手法をとる。
❹行なった調査を多数の視点から分析を行う。まず、調査の
内容を文章で書き起こし、濃い記述(Thick Description※2)を
さまざまな分野で活躍するエンジニアの育成に
作成する。その後、5つの異なる視点を用いて分析を行い、調
おいて、
「社会の要請」を正しく理解しものつくり
査の全体像を描き出す。5つの視点での分析とは、時間軸、空
を進める必然性がある。
また、情報工学をベース
間、事物、文化、人間関係それぞれに着目して分析モデルを
としない人材に「ものつくり」のセンスを附与する
作成する※3。描き出された調査の全貌をもとに、今回デザイ
ことで、社会に浸透する技術を支援する人材の育
ンしたいもののターゲットペルソナとなる人を設定する。
成に寄与するものと考える。本ワークショップで
は、異なるバックグラウンドの人材でチームを組
み、多様なサービス現場で実際にどういう現象が
実施日時
起きているのかを学生自らが学ぶことで、
よりリ
※1:Hugh Beyer, Karen Holtzblatt, Contextual Design:
アルなサービス設計と技術の融合を目指した。
Defining Customer-Centered Systems (Interactive Technologies)
11月1日 10:00~18:30 11月2日 9:00~15:00
実施場所
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
C3S02教室
88
enPiT ANNUAL REPORT 2014
(1997)より
※2:Clifford Geertz, The Interpretation of Cultures (1977)よ
り
※3:Beyer (1997)より
[11月2日]
模様替えできる車、車内シートをおりたたみ反転させるとホッ
❺調査で得たコンテキストをもとに、
ブレーンストーミングを
トプレートとして使用できる車、複数の車を仮想的に連結さ
行う。まずは、ポストイットを用いて言葉や絵などでアイデア
せて車間コミュニケーションがとれる車、
という3つのコンセ
を可能な限り創出する。
アイデアは、チームが設定したビジョ
プトがつくられた。
ンを実現するためであればどのようなくだらないアイデアで
いて、形状をつくることで可能な限り数を出す。短時間ででき
●授業評価
普段情報系ではあまり経験できないような実地調査や教
るだけ個数を出すことがポイントである。
員・研究員・学生を交えた協同作業であったことについては
❻複数のアイデアを統合させて一つのコンセプトを製作す
好評価であった。
また、二日間という限られた時間の中で、離
る。まずはコンセプトスケッチと称した、簡単な設計図をフ
れた場所にある調査先へ往復したり、
ラピッドプロトタイピン
リーハンドで描く。そして、様々な素材を用いて原寸大のプロ
グの時間を十分にとったりなどのプランニングについても評
トタイプを素早く製作する。素材は、ワークショップ運営者が
価された。デザイン思考のプロセスは理論としては知ってい
予め準備したもので、板ダンボール、木材、模造紙などをはじ
たけれど、実際に体験することができてよかったという意見も
め、綿、布、折り紙などの素材や、傘、畳、ボールなどの既成品
あった。さらに、
ファシリテーションや参加者が意欲的であっ
も含まれる。
また、
プロジェクターやカメラなども使用した。
たことやチームの雰囲気がよかったことも挙げられた。
しか
❼製作したコンセプトが与える経験を、寸劇を用いて表現す
し、調査先を事前に準備しておいたにも関わらず、チームに
る。設定したターゲットペルソナにとってどのような良い経験
割り当てを伝えたタイミングが遅かった関係でたてたビジョ
を与えるコンセプトなのか、
ということをストーリー仕立てで
ンと離れてしまった調査になってしまったことや、会場の場所
演技を行う。今回は、骨格のみをベースとして外装を自在に
がわかりにくかったことなどの事務的なことを指摘された。内
図 2 . 5 . 1 5 イノベーターワークショップ
(11/1)協力先の
図 2 . 5 . 1 7 イノベーターワークショップ
(11/2)
図 2 . 5 . 1 6 イノベーターワークショップ
(11/2)
図 2 . 5 . 1 8 イノベーターワークショップ
(11/2)
レースカー調整工場にて民族誌調査を行う様子
ブレーンストーミングを行う様子
第2章 実践教育の取り組み状況
もかまわない。ある程度数が揃ってきたら、次は紙粘土を用
ラピッドプロトタイピングを行う様子
寸劇でコンセプトの与える経験を伝える様子
enPiT ANNUAL REPORT 2014
89
容としては、限られた時間であるが故に省略されてしまった
東京大学:1名
過程があったため、道筋にズレが生じてしまっているときに
大阪大学:1名
修正に時間がとれないことを指摘された。
東京工業大学:1名
産業技術大学院大学:1名
B ものつくりの関連講義
ものつくりにおけるナラティブデザイン
(b1)
デザイン思考とものつくり
講師
稲蔭正彦教授(慶應義塾大学大学院メディアデ
ザイン研究科 研究科委員長)
概要
人間社会は、日常的にストーリーを語ることでコ
もの作りの基本はコンセプトをデザインすること
ミュニティを形成している。自分の意思を正確に
から始まる。
日本の高度成長はさまざまなコンセ
伝えること、そして相手の意思を正確に理解する
プトを作り、試して、市場に投入し顧客のビジョン
ことを実現するために、様々な言語が進化し続け
をかなえる商品をたてつづけて生み出すことに
ている。ツイッターのようなオンライン上のつぶ
よって可能になった。
このような商品をイノベー
やきも短いストーリーである、
として捉えることが
ションと呼ぶ。1980年代後半から日本のもの作り
できる。いかにストーリーを魅力的に伝えるか?
は停滞を始め今に至るが、その理由の一つとして
この問いに取り組んできた分野の1つがコンテ
個別のもの作りの技術やそれが提供できる機能
ンツ分野と広報宣伝分野である。このクリエイ
にはこだわったが、顧客がそのものをほしいと思
ティブ産業で蓄積したストーリーテリングのメ
うビジョンを提供できなかったことが挙げられ
ソッド化は、
ナラティブデザインとして学術的にも
る。イノベーション力にかけていたのである。デ
扱われ、その応用がビジネスの現場でも注目さ
ザイン思考はこうしたものつくりの現場にコンセ
れている。本講義では、ストーリーを正確に伝え
プトをエンジニアが自ら生み出す方法として非常
るだけではなく、魅力的に伝えるためのナラティ
に有効である。
ラップトップコンピュータというい
ブデザインの基礎を解説し、その上で視覚言語、
ままでにないコンセプトを生み出したIDEOのイ
五感によるコミュニケーションに加え、モノを通
ノベーションの方法として知られているこの手法
したナラティブデザインの展開について紹介す
は、顧客の観察と行動の分析、工作による試行錯
る。
誤をとおしたコンセプトデザイン、顧客にコンセ
実施日時
10月28日 18:10~19:40
プトを商品として届けるビジネスモデルのデザイ
実施場所
(b1)
と同じため省略
ンという3つのプロセスに別れる。
このプロセス
受講生
(b1)
と同じため省略
の詳細を具体的に説明しながら、ゼロから1をイ
ノベーションする方法としてのデザイン思考につ
いて紹介する。
実施日時
10月28日 16:30~18:00
実施場所
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
受講生
教員9名と学生7名(現地受講生2名、遠隔受講生
C3S01教室
9名、
アーカイブ受講生5名)
[所属内訳]
東北大学:2名
筑波大学:2名
情報セキュリティ大学院大学:1名
北陸先端科学技術大学院大学:1名
奈良先端科学技術大学院大学:1名
慶應義塾大学(日吉:1名)
公立はこだて未来大学:1名
九州大学:1名
九州工業大学:1名
北九州市立大学大学院:1名
90
講師
奥出直人教授(慶應義塾大学大学院メディアデ
ザイン研究科)
概要
(b2)
enPiT ANNUAL REPORT 2014
A N N U A L
R E P O R T
2 0 1 4
第3章
分野を越えた
実践教育ネットワーク形成
3 .1
運営委員会、幹事会の実施状況
15連携大学が共同で本事業を推進するために連携大学の
代表で構成される運営委員会を設置している。運営委員会で
は、分野を越えた活動全体の情報共有と、推進に必要な協定
(1)運営委員会の活動
運営委員会は年間4回程度を予定しており、本年度は次の
日程で4回開催した。
書の承認などの重要事項の意思決定を行っている。さらに、
分野間に関係する重要事項を協議し、推進のための具体案
第1回運営委員会
を策定するために各分野の幹事校(大阪大学、情報セキュリ
開催日時
平成26年5月24日 14:00~15:30
ティ大学院大学、九州大学、筑波大学の4校で構成)
と事務局
開催場所
公立はこだて未来大学
(大阪大学と国立情報学研究所が担当)で構成される幹事
第2回運営委員会(合同委員会)
会を設置している。
このほかにも事業全体の方向性や実践教
開催日時
平成26年9月10日 12:00~13:30
育の普及に関して評価しアドバイスをいただくために、外部
開催場所
テレビ会議
の有識者から構成される外部評価委員会を設置している。図
3.1.1に本事業全体の組織体制を示す。
図3.1.1
第3回運営委員会(合同委員会)
開催日時
平成27年1月27日 9:00~10:30
開催場所
名古屋大学 東山キャンパス
第4回運営委員会(合同委員会)
本事業全体の組織体制
enPiT運営委員会
幹事会
外部評価委員会
enPiT事務局
開催日時
平成27年3月11日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
平成25年度の成果実績の確認、各分野や作業部会の状況
報告、分野間の交流促進、シンポジウムの企画準備、本事業
の中間評価等についての情報共有を行い、現状課題や今後
の方向性等について議論した。
連携大学
クラウドコンピューティング分野
(2)幹事会の活動
大阪大学大学院情報科学研究科
東京大学大学院情報理工学系研究科
東京工業大学大学院情報理工学研究科
神戸大学大学院システム情報学研究科
九州工業大学大学院情報工学府
セキュリティ分野
情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科
東北大学大学院情報科学研究科
北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科
奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科
慶應義塾大学大学院理工学研究科
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
幹事会は原則月に1回の頻度で開催しており、本年度は以
下の日程で11回開催した。
第1回幹事会
開催日時
平成26年4月9日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
第2回幹事会
開催日時
平成26年5月7日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
第3回幹事会
開催日時
平成26年7月9日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
第4回幹事会
組込みシステム分野
九州大学大学院システム情報科学研究院
名古屋大学大学院情報科学研究科
開催日時
平成26年8月6日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
第5回幹事会(合同委員会)
ビジネスアプリケーション分野
筑波大学大学院システム情報工学研究科
公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科
産業技術大学院大学産業技術研究科
参加大学
連携企業・団体
開催日時
平成26年9月10日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
第6回幹事会
開催日時
平成26年10月8日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
第7回幹事会
開催日時
92
enPiT ANNUAL REPORT 2014
平成26年11月12日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
第11回幹事会(合同委員会)
第8回幹事会
開催日時
平成26年12月10日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
開催日時
平成27年3月11日 12:00~13:30
開催場所
テレビ会議
幹事会はスピードと、経済的な効率を重視するため、遠隔
第9回幹事会
開催日時
平成27年1月14日 12:00~13:30
会議(テレビ会議)によって実施している。幹事会の主な議題
開催場所
テレビ会議
は、各分野や作業部会の状況確認や課題整理、作業部会の活
動の方向性や協定案の方向性の検討、分野間の交流促進方
第10回幹事会(合同委員会)
平成27年1月27日 9:00~10:30
法、
シンポジウムの企画準備、次年度以降の予定・計画などで
開催場所
名古屋大学 東山キャンパス
ある。
3.2
作業部会の活動状況
分野間の情報や知見の共有、そして協働ネットワークの枠
より実施した(表3.2.1)。
を越えた実践的情報教育の普及活動を強力に推進するため
に、運営委員会のもとに必要なWGを平成24年度に設置し
た。設置したWGは①広報戦略、②FD、③評価・産学連携、④
(2)体制
広報戦略WGの体制は、砂原秀樹リーダー(慶應義塾大学)
教務の4つである。各WGには各分野から選出された1名の委
を中心に各分野から選出された1名以上の委員および事務
員が参画している。平成26年度から女性部会が新たに設置さ
局担当委員で構成されている。平成26年度の構成員は、表
れた。
ここでは平成26年度における各WGの活動内容や成果
3.2.2の通りである。
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
開催日時
と女性部会の活動内容を紹介する。
表3.2.2
3 . 2 .1
広報戦略WG 幹事:慶應義塾大学
広報戦略WGの目的は、enPiTで実施している実践的な情
報教育を全国に普及させるため、連携大学、参加大学、およ
び情報系の学科・専攻の学生や教員へのenPiTの認知度を向
上させ、本事業への参加を促すことである。具体的には、本事
業の目標とする受講生数を達成するために、広報戦略の策定
と広報活動を行った。
広報戦略WG 委員
担当委員
クラウド
コンピューティング分野
中村匡秀(神戸大学)
セキュリティ分野
猪俣敦夫(奈良先端科学技術大学院大学)
組込みシステム分野
舘伸幸(名古屋大学)
ビジネス
アプリケーション分野
三末和男(筑波大学)
事務局
吉岡信和、末永俊一郎(国立情報学研究所)
オブザーバー
井上克郎(大阪大学)
(1)活動の概要
広報戦略WGの活動は、主に広報戦略の策定、広報のター
ゲットとなる大学、教員、学生等のニーズの把握や認知度の
測定などの市場調査、広報物の作成と配布である。
これらの
活動を行うため、平成26年度はWGの会合を8回遠隔会議に
表3.2.1
広報戦略WGでは、広報ターゲットの絞り込み、広報活動の
成果の測定、および現状の実践的情報教育の現状を把握す
広報戦略WG 会合
開催日
(3)
ニーズや認知度の調査
時間
第1回
平成26年5月9日
12:00〜13:00
第2回
平成26年6月13日
12:00〜13:00
第3回
平成26年7月8日
12:00〜13:00
第4回
平成26年9月29日
12:30〜13:00
第5回
平成26年10月28日
13:00〜14:00
第6回
平成26年12月9日
13:00〜14:00
第7回
平成27年1月21日
13:00〜14:00
第8回
平成27年3月11日
13:30〜14:30
るため学生、教員、大学および企業に対して調査を実施した。
次にその調査の概要を述べる。
▼平成26年度の調査概要
平成26年度に行った調査は表3.2.3にある通り、参加大学
になる可能性がある全国の情報系・電気電子系の大学専攻
とenPiTの修了生が就職する可能性がある全国の企業に対し
てアンケート調査を行った。
平成25年3月にも全国の情報系・電気電子系の大学専攻に
対して実践教育の必要性やenPiTの認知度について調査を
enPiT ANNUAL REPORT 2014
93
行ったが、平成25年度のenPiTの広報活動の成果と、実践的
さらに、enPiTの修了生が就職する可能性がある企業の
教育の普及度の割合を測定するために、同様の調査を行っ
enPiTの認知度を測定した。具体的には、enPiTの連携大学の
た。
この結果、次のことが判明した。
専攻の就職先企業を400企業程度列挙し、企業の規模や業種
1.実践教育を重視する傾向は一層拡大している。
の比率を保つように調査先1,000社を選定した。
この調査の
2.情報系専攻の半数以上がシステム開発演習を実施
結果、次のことが判明した。
3.他の授業や研究との両立を含む学生の負担感が課題
4.実 践教育の実際の取り組みまでにまだまだ至っていな
1.従 業員規模の大きなIT企業ほど実践教育の新規性・先
端性を高く評価している
い
enPiTの認知度に関しては、平成25年度と比べenPiTに参画
2.enPiT修了生の顕在ニーズが高いセグメントは中堅から
大規模なIT企業
している専攻、ある程度知っている専攻の数が11専攻増えて
いるが、知らないという専攻の割合が26.2%から35.8%に増え
3.enPiT修了生に対する潜在ニーズはすべてのセグメント
の企業に存在している
ている。
これは、平成26年度の調査では、enPiTを知らない専
攻からも比較的多く回答を得ることができたことによるもの
4.現 在の顕在ニーズの強さはenPiTの認知度と関連可能
性がある
と考えられる。
表3.2.4
平成26年度の広報物
=== enPiT メールマガジン 第8号:enPiT女性部会(WiT)特集 2014/5/16 ===
http://www.enpit.jp/
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enPiTメールマガジンは、enPiT関連のセミナー・イベント情報、各種出版物など、
enPiTに関する最新情報をご紹介するメールマガジンを不定期で発行しています。
--------------------------------------------------------------------−目 次−
1.enPiT女性部会を立ち上げました
2.WiT第1回定例会のご案内
3.平成25年度報告書公開のお知らせ
☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 1. enPiT女性部会を立ち上げました ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
2014年4月より、enPiTに関わる女性教員・女子学生(学部生・大学院生、修了生)
=== enPiT メールマガジン 第14号:成果報告会特集(12/18) ===
http://www.enpit.jp/
■ニュースレター
主な対象:教員、大学
概要:
[4号]発表会特集、
[5号]合宿特集、
[6号]
シンポジウム特集を発行。
========================================================
enPiTメールマガジンは、enPiT関連のセミナー・イベント情報、各種出版物など、
enPiTに関する最新情報をご紹介するメールマガジンを不定期で発行しています。
---------------------------------------------------------------------目 次-
1.第3回シンポジウムの参加募集のお知らせ
2.実践的IT教育研究シンポジウムのお知らせ
3.平成26年度enPiT各コース成果報告会のお知らせ
■メールマガジン
主な対象:教員
概要:8号から14号の発行。
■学生の声(小冊子)
主な対象:学生
概要:過去のenPiT修了
生のインタビューやアン
ケート結果を、enPiTに興
味のある学生に伝える。
■Twitter(@enpit_jp)
facebook(enPiT.jp)
主な対象:教員、学生
概要:演習やイベントの
生の声を伝える。
94
enPiT ANNUAL REPORT 2014
☆☆☆☆☆☆☆ 1.第3回シンポジウムの参加募集のお知らせ ☆☆☆☆☆☆☆
2015年1月27日(火) 名古屋大学において、enPiT 第3回シンポジウムを開催します。
本シンポジウムでは、実践的人材育成についての招待講演及びenPiT各分野のチャレンジ
表3.2.3
平成26年度の調査概要
対象
調査内容
調査方法
平成26年5月下旬~6月中旬、郵送アンケート
全国のIT企業、ユーザ企業1,000社
(回答:149件)
• 新卒採用時に重視する点
• 情報系専攻者に対する期待
• 情報系大学院での実践教育に対する関心
• enPiTの認知度/認知経路
• enPiTの教育内容等に対する印象・意見
• enPiT修了生の採用についての興味
• enPiTに対する期待や要望
平成26年11月中旬~下旬、郵送アンケート
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
大学院の情報系・電気電子系の専攻
(244専攻)
(回収:123件)
• 実践教育の重視度・不足度
• 実践教育の実施状況
• 実践教育の充実化の必要性
• 実践教育の実施に関する課題
• enPiTの認知度
• enPiTへの自校学生の派遣に対する関心
• enPiTの受講者候補となり得る学生の人数
• 学生がenPiTを受講する際の懸念事項等
■パンフレット、Webサイト、
ポスター、バナースタンド
主な対象:教員、大学
概要:デザインを一新した。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
95
5.新興IT企業やユーザ企業は“異なる実践性”を期待してい
る
今年度から教員への認知度を促進させるため、
ダイレクト
メールによりニュースレター等広報物の配布を開始した。さ
企業におけるenPiTの認知度については、
「内容を詳細に
知っている」、
「内容を少しは知っている」、
「名前は聞いたこ
らに、enPiTに参画している教員に対しては、FDWGと連携し、
公開講義のスケジュールや合宿スケジュールを同封した。
とがある」
と回答した割合は、計25%程度であった。特に99
人以下の規模の企業における認知度は2割未満と低かった。
(5)今後の広報戦略と活動
enPiTの認知経路については、
「enPiTのパンフレット等を見
平成27年度は、平成26年度に引き続き教員向けに広報を
たことがある」
と回答した割合が最も高く、次いで「enPiTの
行うとともに、企業向けにも広報を行う予定である。具体的に
Webサイトを見たことがある」、
「自社がenPiTに参画してい
は、年3回のニュースレターの配布とWebサイトの改善を考え
る」
という順になった。
これらの調査結果は、enPiTのWebサ
ている。
また、引き続き学会やFDWGと連携し、積極的に教員
イト
(http://enpit.jp/)のpublicationのページから公開してい
にenPiTの魅力を伝える活動を展開する。
る。
この調査結果を踏まえ、企業への認知度向上のためパンフ
レット・ニュースレターの配布とWebサイトの充実を実施する
という広報戦略を策定した。
3.2.2
FDWG 幹事:東京大学
本WGは、合宿形式での集中演習や遠隔会議システムおよ
びクラウド等を活用した分散PBL等、実践的教育手法の改善
(4)広報物と広報活動
平成26年度に作成した広報物を表3.2.4に挙げる。本年度
は、昨年度の調査結果を踏まえ学生向け広報物を重点的に
につなげていくための分野横断的FD活動を検討し、推進す
ることを目的としている。今年度の活動内容および成果、来年
度の予定を次に記す。
改善した。そして、広報物を用いて以下のような活動を行っ
た。
(1)活動内容
●各連携大学の掲示板へのポスター掲示
平成25年度は、講義・演習評価アンケート共通化と試行、公
●説明会、
イベント等でのパンフレットの配布
開授業の実施促進、関連教員交流会の開催、講義に即したシ
●大学ICT推進協議会(AXIES)年次大会におけるenPiTのポ
ラバス作成の促進などの活動を行ってきた。
これらの活動を
スター発表とセッションの企画(図3.2.5)
●連携・参加大学の教員、および情報系の教員、興味を持っ
ている企業一般・専攻へのニュースレターの配布
踏まえ、平成26年度は分野共通様式の講義評価アンケートお
よび演習評価アンケートの本格実施、公開授業の拡大と参加
促進、2回目の関連教員交流会の開催等を実施した。
これらの
活動の計画および遂行のため、年間を通じ5回のWG会合を
図3.2.5
AXIES 2014年度 年次大会での発表の様子
遠隔会議で開催した(表3.2.6、表3.2.7)。
表3.2.6
FDWG 会合
開催日
時間
第1回
平成26年5月14日
10:00~11:30
第2回
平成26年7月2日
10:00~11:30
第3回
平成26年9月3日
10:00~11:30
第4回
平成26年10月29日
10:00~11:30
第5回
平成27年1月22日
10:00~11:30
表3.2.7
FDWG 委員
担当委員
クラウド
平木敬、小林克志(東京大学)
コンピューティング分野
96
enPiT ANNUAL REPORT 2014
セキュリティ分野
大久保隆夫(情報セキュリティ大学院大学)
組込みシステム分野
久住憲嗣(九州大学)
ビジネス
アプリケーション分野
秋口忠三(産業技術大学院大学)
事務局
櫻井浩子(大阪大学)
粂野文洋(国立情報学研究所/日本工業大学)
図3.2.8
公開授業一覧(一部抜粋)
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
enPiT ANNUAL REPORT 2014
97
図3.2.9
共通アンケート票
図 3 . 2 . 1 1 授業・演習に関する満足度
■この科目を受講して満足しましたか?
2.2
0.9
(単位:%)
5.2
6.1
満足
やや満足
やや不満
授業
48.6
37.1
演習
56.8
不満
43.1
N=555
N=634
■この科目の内容は自分にとって有益と感じましたか?
1.3
0.3
(単位:%)
3.3
5.0
強く感じた
少し感じた
44.0
授業
49.7
enPiT ANNUAL REPORT 2014
34.1
まったく感じなかった
演習
62.2
N=555
98
あまり感じなかった
N=633
科目・1,189回答(授業:34科目・555回答、演習:30科目634回
(2)活動成果
本年度の活動である共通アンケートの本格実施、公開授
答)の評価結果が得られた。満足度の評価では、すべての質
業、関連交流会の成果について報告する。
問において、授業、演習ともに肯定的な回答が90%を超える
科目に対する評価アンケートは大学のFD活動として日常
結果となっている
(図3.2.11)。
的に行われているものであるが、enPiTの教育の取り組みに
おいて、その項目や内容等については共通化がなされてい
次に公開授業に関わる活動について報告する。平成25年
度は19科目を公開授業としたが、平成26年度は101科目を公
開授業とし、教員の授業見学の機会を大幅に拡大させた。さ
果を集計・分析することで、enPiTで実施されている授業や演
らにenPiTの関連教員の参加を促すための繰り返しのアナウ
習の良い点、要改善点についての全体傾向を明らかにする
ンスや参加教員実績のモニタリング・報告などを行った。表
ことができる。平成25年度は、
このようなねらいのもと、いく
3.2.8はアナウンスしている公開授業の情報を一部抜粋した
つかの大学における評価アンケート事例を参考に授業用の
ものである。
これらの公開授業への参加実績(平成27年1月
評価アンケート、演習用の評価アンケートを設計した。
さらに
時点までの、のべ人数)を表3.2.10にまとめる。
enPiT関係者のレビューを経て、アンケートを試行し、共通ア
最後に本WGで企画開催したenPiT関連教員交流会につい
ンケート票を確定させた(図3.2.9)。平成26年度はこの共通ア
て報告する。本交流会は分野、大学をまたがる関連教員の交
ンケート票に基づいて本格的なアンケートを実施した。4月
流を促進する場を提供することを目的に開催するもので、昨
から9月までの期間に実施された授業・演習において合計64
年度に続き2回目の開催となる。平成27年1月26日に、名古屋
表 3 . 2 . 1 0 公開授業参加実績
(のべ人数)
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
なかった。
アンケート項目や内容を共通化した共通アンケー
ト票を整備し、分野横断でアンケートを実施し、
アンケート結
(単位:人)
連携校教員
連携校教員
分野内
分野間
189
20
参加校教員
その他
172
793
■この科目を受講して興味を持ちより深く学びたいと感じましたか?
1.4
0.2
(単位:%)
6.2
7.6
強く感じた
少し感じた
40.0
授業
38.2
演習
55.5
あまり感じなかった
まったく感じなかった
51.0
N=555
N=634
■この科目の受講を他の人に薦めたいですか?
1.4
0.9
(単位:%)
4.4
7.4
強く薦めたい
薦めてもよい
42.7
38.6
授業
あまり薦められない
まったく薦められない
演習
52.0
52.5
N=555
N=633
enPiT ANNUAL REPORT 2014
99
表 3 . 2 . 1 2 交流会のプログラム
13:30
開会
13:40〜14:40
特別講演 「ITが拓く女性の未来」
独立行政法人 国立女性教育会館
理事長 内海房子
15:00〜17:00
enPiT各分野における取り組み
●クラウドコンピューティング分野
東京大学 浅井大史、
神戸大学 まつ本真佑
●セキュリティ分野
東北大学 林優一、
慶應義塾大学 山内正人、
北陸先端科学技術大学院大学 田中覚
●組込みシステム分野
九州大学 細合晋太郎、
名古屋大学 舘伸幸
●ビジネスアプリケーション分野
筑波大学 嵯峨智、
データを用いながら、現在でも男女参画が進んでいない状
況に日本があること、男女共同参画社会実現のための施策の
一層の必要性を指摘された。続いてenPiTの各分野における
現場教員の取り組みの紹介があった。分野ごとに2~3名の教
員が講演を行い、合宿や演習でのエピソードや受講後の学
生の反応など、現場教員ならではの講演となった。最後のグ
ローバルアジャイル研修報告はインドで実施されたアジャイ
ル開発手法(スクラム)研修の報告である。本研修は株式会社
NTTデータの協力によるものでenPiTからは教員3名と受講生
2名が参加した。意見の引き出し方、
タイムボックス、
プロジェ
クト完了の定義やそのためのレビューなど、教員にとっても
参考になる内容であり、その後の演習指導に活かされている
ことの報告があった。
(3)来年度の予定
平成27年度は平成26年度の実施内容を充実させ、公開授
業の促進、共通アンケートの実施と結果のフィードバック、教
員交流会をすすめていく予定である。
産業技術大学院大学 永瀬美穂
17:00〜17:30 グローバルアジャイル研修報告
東京大学 小林克志、
筑波大学 渡辺知恵美
17:30
閉会
3.2.3
評価・産学連携WG 幹事:名古屋大学
(1)
目的
enPiTの教育目標は「最先端の情報技術を実践的に活用
することができる人材育成」におかれている(http://www.
大学東山キャンパスにて開催し、50名弱の関連教員が参加し
enpit.jp/)。そこで、enPiT評価・産学連携WG(以降、評価WG
た。表3.2.12が交流会のプログラムである。
と表記)では、その活動の目的を、enPiT受講生が「最先端の
科学技術を実践的に活用することができる人材として育成さ
最初の特別講演では、国立女性教育会館(以下、NWEC)の
れたか」を評価することに設定した。
内海房子理事長から
「ITが拓く女性の未来」
というタイトルで
講演をいただいた。内海理事長は津田塾大学の数学科を卒
(2)体制構築
業後、
日本電気株式会社に入社、その後、NECソフト株式会社
評価を実施するためにenPiTの各分野から1名ともう2名
の執行役員、NECラーニング株式会社の社長を経て、現在は
の、合計6名を選出した。事務局として2名を置き、合計8名で
NWECの理事長に就任されている。
自らの経歴紹介のなかで
女性の管理者が皆無であった過去の状況に触れた後、各種
表 3 . 2 . 1 4 評価・産学連携WG 委員
担当委員
図 3 . 2 . 1 3 関連教員交流会の様子
組込みシステム分野
山本雅基、海上智昭(名古屋大学)
クラウド
小林隆志(東京工業大学)
コンピューティング分野 春名修介(大阪大学)
100
enPiT ANNUAL REPORT 2014
セキュリティ分野
宮地充子(北陸先端科学技術大学院大学)
ビジネス
アプリケーション分野
奥野拓(公立はこだて未来大学)
事務局
櫻井浩子(大阪大学)
粂野文洋(国立情報学研究所/日本工業大学)
企業アドバイザー
上野新慈(株式会社FUJITSUユニバーシティ)
下村正洋(株式会社ディアイティ)
二上貴夫(株式会社東陽テクニカ)
増本登志彦(株式会社日立インフォメーション
アカデミー)
表 3 . 2 . 1 5 ブルーム・タキソノミーの認知過程次元
評価WGを構成した。さらに、評価WGの活動を企業の立場
で見ていただくために、各分野の連携企業から1名ずつ合計
次元
4名に企業アドバイザーとしてご参加いただく体制を整えた
(表3.2.14)
。
今年度は、平成27年1月までに3回のWG会議を開催し、内1
回は企業アドバイザーの意見を徴収した。
(3)実践力
内容
①記憶する
長期記憶からの回復
②理解する
説明から意味を構築
③適用する
手順の遂行・活用
④分析する
構成要素の分析と関係性
⑤評価する
基準や標準に基づいた判断
⑥創造する
新しい構造の構築
る能力について検討した。結果、評価WGでは、単に知識を記
学習経験を調査することにより、情報技術を実践的に活用
憶する能力にとどまらず、知識や技能を問題解決に適用する
する能力を推定することにした。特に、enPiTで実施するPBL
能力が期待されると考えた。特に、社会が要求する「実践力」
(Project Based Learning)が実践力を高めることが期待され
は定量的な問題ではなく、
より複雑な問題を解決する能力で
ていたので、PBLへの取り組み度合いを調査し「最先端の情
あると考えられる。評価WGは、上述のような視点からenPiT
報技術を実践的に活用する能力」を推定することにした。
受講者の実践力を評価することを目的に設定した。
教育の目標設定や測定を認知領域の分類に対応づけて
行う試みは、日本技術者教育認定機構(JABEE)や複数の教
育機関で採用されている。表3.2.15に、教育現場で使用され
(4)評価の課題
評価を行う上で、我々は2つの課題を設定した。
ている認知領域の分類と教育目標の例として、Andersonと
第一に、実践力は専門知識の定着を問うテストでは測定困
Krathwohlによる認知過程次元の分類を示す。①記憶するか
難である点が挙げられた。第二に、履修カリキュラムが4分野
ら、⑥創造するに向けて、順に教育目標の水準が高くなる。
で異なる学生の学習効果を測定するために、共通指標の必
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
評価WGは最初に、
「実践的に活用」されることが期待され
評価WGは、実践力の育成というenPiTの教育目標は、認知
要性が認められた。
過程次元(表3.2.15)の、
「③適用する」以上の次元に相当する
enPiTでは、最先端の情報技術を、実践的に活用する能力
と考えた。
この水準以上の教育では、
レポートの作成や演習
の育成が求められる。
この種の能力は、知識の定着程度のみ
が必要とされる。そこで、
クラウドやセキュリティなどの4分野
では評価が困難であり、先行事例では行動観察をもって補わ
の専門技術教育に際して、
レポートの作成や演習を経験した
れている。たとえばKirkpatrickは、社会人の教育評価を①反
かを質問紙法で調査した。
応、②学習、③行動、④結果の4水準で下すよう提案している
次に、社会が期待する、あるいは、その期待を上回る水準
が、実践力に相当する③行動水準は、上司らによる行動観察
で、実践力を発揮し得る行動特性である
「コンピテンシー」の
を求めている。大学における教育においても、教員が観察し
成長を、標準化テストで計測することにした。
評価することは可能だが、enPiTでは複数の大学が教育に参
近年では学士力や社会人基礎力と呼ばれる能力体系でも
加するので、異なる大学の教員間で学生評価の水準を合わ
指摘されるように、
「コミュニケーション」や「自己管理」など
せることが困難である。
の重要性は従前より指摘されている。enPiTが育成を目指す、
IT技術を実践的に活用して社会の問題解決に取り組む人材
は、専門性の高い知識を有することに加え、他者とのコミュニ
(5)計測方法
ケーションを保ち、
リーダーシップを発揮し、計画を立て、
自己
我々は、第一と第二の課題を共に解決するために、2種類
管理をしながら課題に取り組むことが期待される。
の計測を行うこととした。
前述の能力要素は、
コンピテンシー(行動特性)
とも呼ばれ
最初に、我々は、enPiTの教育期間中における受講者の
図 3 . 2 . 1 6 PROGコンピテンシーの能力要素
総 合
対人基礎力
対自己基礎力
対課題基礎力
親和力
感情制御力
課題発見力
協働力
自信創出力
計画立案力
統率力
行動持続力
実践力
enPiT ANNUAL REPORT 2014
101
ており、ルーブリックを用いた自己・他者評価による計測が試
た。3以上を実践的な学習有りと判断する。
みられている。分野・地域を越えて実施されるenPiTでは、複
行動特性は、PROGテストを2回実施して、その差を評価す
数の大学が、異なるカリキュラムで教育することもあり、
自己・
ることとした。1回目のテストは、平成25年6月21日から10月1
他者評価の水準を合わせることがなお一層困難である。そこ
日にかけて行われた。2回目のテストは、平成25年12月19日
で、標準化テストを用いることにし、PROG(Progress Report
から平成26年2月14日にかけて行われた。テスト実施時期に
on Generic skills)
テストを採用した。
幅がある理由は、大学ごとに分散PBLを行う時期や期間が異
PROGはリテラシー(知識活用力)
とコンピテンシーを計測
なるためである。
する2種類のテストで構成される。いずれもマーク・記述式で
あり、前者は30問を45分間で、後者は251問を40分間で解く。
(7)計測結果の分析
コンピテンシーのテストは、産業技術大学院大学の協力のも
実践的な学習の有無の質問紙に対する回答数は145(内
と開発されたテストで、望ましい社会人のモデルとの差異が
訳:クラウドコンピューティング分野56、セキュリティ分野44、
点数化されるように設計されている。
組込みシステム分野29、ビジネスアプリケーション分野16)
で
PROGでは、コンピテンシーを、全体的な能力を表す「総
あった。
合」
としてまとめた上で、
「対人基礎力」
「対自己基礎力」
「対課
分野別に、受講生に習得を期待する技術関連の設問群と
題基礎力」の3つに分け、さらにその下位に3種類ずつの能
その他の設問群に分けて、回答の平均点を求めた。
クラウド
力要素を配置し、合計13種で構成している(図3.2.16)。各評
コンピューティング分野では、習得が期待される設問(関連
価項目は、1から7の7段階(7が最高)で採点される。今回は、
設問)の平均点は4.7、その他の設問の平均点は1.9であった。
PROGの「コンピテンシー」のみを使用し、PBLの前後で得点
セキュリティ分野はそれぞれ3.0と1.3、組込みシステム分野は
の変化を分析する。
それぞれ3.9と1.7、ビジネスアプリケーション分野はそれぞれ
4.2と2.2であった。
各分野とも、関連設問の回答値は、3以上であったことを確
(6)計測の実施
実践的な学習の有無を問い合せる設問は、問題解決能力
に関する講義・演習や、構築能力に関する講義・演習など、6
認した。他方、各分野で関心を持たないその他の技術に関す
る回答値は、3より小さかった。
種類のカテゴリに分類された合計39項目であった。設問項目
行動特性を計測するPROGテストの受検者は、1回目の受
は、受講生に習得を期待する技術関連の設問と、その他に分
検者数が216名、2回目が173名であり、1回目と2回目を共に
けられる。設問項目は、教育の実施形態を7肢選択法により回
受検した修士学生165名のコンピテンシーの採点結果を分
答を求めるものであった。回答の選択肢は、①学ばなかった、
析対象とした。165名の内訳は、
クラウドコンピューティング
②講義で学んだ、③テストやレポートをした、④小演習をし
分野45名、セキュリティ分野37名、組込みシステム分野14名、
た、⑤中演習をした、⑥大演習をした、⑦大演習を主体的にし
ビジネスアプリケーション分野69名であった。
たである。演習規模は、参加者と時間長の組み合わせで定め
得点分布に正規性が確認できなかったので、符号付き順
表 3 . 2 . 1 7 PROGコンピテンシーの得点変化
102
**< .01
*< .05
行動特性の変化
1回平均値
2回平均値
平均値差
(2回-1回)
t値
漸近有意確率
総合
3.59
4.24
0.65
5.56
.000
**
対人基礎力
3.58
4.17
0.59
4.76
.000
**
対自己基礎力
3.82
4.41
0.58
4.94
.000
**
対課題基礎力
4.13
4.55
0.42
3.22
.001
**
親和力
3.19
3.83
0.64
4.80
.000
**
協働力
3.69
4.39
0.70
4.93
.000
**
統率力
3.73
4.18
0.44
3.32
.002
**
感情制御力
3.90
4.53
0.62
4.97
.000
**
自信創出力
3.67
4.20
0.53
4.52
.000
**
行動持続力
3.70
3.96
0.26
2.02
.043
*
課題発見力
4.44
4.96
0.52
4.34
.000
**
計画立案力
3.74
4.01
0.27
1.74
.133
実践力
4.13
4.48
0.35
2.66
.005
enPiT ANNUAL REPORT 2014
**
位検定で2回の得点の差を検定した。その結果、
「計画立案
力」以外の能力要素で有意な差が確認できた(p < .01「行動
持続力」は p < .05;表3.2.17 PROGコンピテンシーの得点
3.2.4
教務WG 幹事:筑波大学
(1)経緯とミッション
教務WGはenPiTの4つの分野間の、特にカリキュラムに関す
変化)。
る相互交流を行うために平成25年3月に組織されたもので
ある。
このため、主要なミッションとしては以下の2つがある。
(8)評価
enPiTでの教育効果を測定するために、学習経験を問う調
査と、行動特性を教育前後で計測する標準化テストを組み合
(Ⅰ)分野横断講義の企画・実施
(Ⅱ)
カリキュラム関係資料の蓄積・整備
25年度のenPiT教育で検証した。
その結果、enPiTにおいて、最先端の情報技術の実践力を
高める教育が実施されたことを確認した。さらに、PROGテス
(2)
メンバー
教務WGは4分野から各1名と事務局から2名の合計6名の
メンバーで構成されている
(表3.2.18)。
トを分散PBLの前後に実施し、受講者の行動特性が有意に向
上したことを確認した。行動特性の変化に有意に関係する要
表 3 . 2 . 1 8 教務WG 委員
因は「力を伸ばす実践の有無」であると考えられている。
この
ことから、enPiTで行動特性の得点を高めた要因は、分散PBL
で学んだ知識を実践的に問題解決に適用する体験を繰返し
たことであったと推察される。
以上から、本測定手法がenPiTの効果測定に適用可能であ
ることが実証されたと共に、受講生の実践力が高まったこと
担当委員
ビジネス
アプリケーション分野
河辺徹(リーダー)
(筑波大学)
クラウド
小出洋(九州工業大学)
コンピューティング分野
セキュリティ分野
曽根秀明(東北大学)
組込みシステム分野
築添明(九州大学)
事務局
吉岡信和、末永俊一郎(国立情報学研究所)
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
わせる手法(以降「行動特性の標準化テスト」)を提案し、平成
※
が確認された 。
※山本雅基,小林隆志,宮地充子,奥野拓,粂野文洋,櫻井浩
子,海上智昭,春名修介,井上克郎:enPiTにおける教育効
果測定の実践と評価,コンピュータソフトウェア,Vol.32,
No.1(2015),pp.213-219.
(3)平成26年度活動実績
(9)来年度の予定
本年度は遠隔会議システムを用いて、6回(5月13日、7月15
平成27年度からの新卒採用スケジュールは、エントリー開
日、9月24日、11月19日、1月21日、3月18日)の会議を実施し
始が12月から4月に、選考が4月から8月に変更される。そのた
た。各分野(大学)
での本年度のカリキュラム内容や教材整備
めに、平成26年度に行動特性の成長を計測するための標準
状況等を調査確認し、
(Ⅰ)分野横断講義の企画・実施につい
化テストと実践力の自己評価を求める調査を受けた修士課
ては、分野横断講義候補リストの作成とそれに基づく実施計
程1年生の学生は、就活経験の影響を受けていない。他方、今
画の検討を行い、本年度も昨年度同様、以下の2分類の講義
年度に分析対象とした平成25年度の学生は、就活経験の影
を実施した。
響を受けている。
来年度はPBLを履修したが就活経験を持たない学生の評
価を行い、就活経験の影響を受けた今年度の評価と比較す
A 分野によらず必要な汎用的内容の講義
B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義
る。
Aについては、
●「ロジカルシンキング」に関する講義
ビジネスアプリケーション分野
→クラウドコンピューティング分野、セキュリティ分野
●「プレゼンテーションスキル」に関する講義
クラウドコンピューティング分野
→ビジネスアプリケーション分野
●「ドキュメンテーション」
に関する講義
組込みシステム分野
→ビジネスアプリケーション分野
の3種類(4講義)を企画・実施した。昨年度は2種類(3講義)
だったが種類数、講義数ともに増やした。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
103
また、Bについては、
なっており、
クラウドコンピューティング分野では本年度より
●「クラウドエクストラ」
ネットワークセキュリティに関する科目(蓄積)を学生に案内
クラウドコンピューティング分野
→ビジネスアプリケーション分野(2拠点)、セキュリティ
分野
●「ファシリテーションスキル」
クラウドコンピューティング分野
→ビジネスアプリケーション分野
●「Androidのパーミッション機構」
セキュリティ分野
→ビジネスアプリケーション分野
●「データサイエンス入門」
し自主学習として受講させている。
また、組込みシステム分野の名古屋大学附属組込みシステ
ム研究センターの「社会人組込み技術者向けの公開講座」を
本年度よりenPiT全分野の履修学生に無料で受講可能とする
取り組みも行われた。
これらを含めた「分野横断講義」については各分野の受講
学生に積極的に履修を進めるよう広く案内している。
次に、分野横断講義の企画・実施と並行して、
(Ⅱ)カリキュ
ラム関係資料の蓄積・整備については、昨年度の方針を踏襲
して、継続して進めた。教材については著作権等の問題が生
ビジネスアプリケーション分野
じるため一般公開はせず、文部科学省の担当者や本事業の
→クラウドコンピューティング分野、セキュリティ分野
評価委員を含めた関係者のみ閲覧可能な方針とした。
また、
の4種類(7講義)を企画・実施した。
こちらも昨年度の1種類
教材をはじめとする各種のカリキュラム資料は、随時更新さ
(1講義)から大幅な増加である。
(これらの分野横断講義の
れるため、閲覧用データファイルそのものを教務WGで管理
実施実績等の詳細については、
「2.5 分野を越えた実践教
するのではなく、
ファイル自体は各分野や連携大学のサーバ
育」参照)
。
で蓄積し、そのリンクを集めたページを国立情報学研究所の
なお、
これら以外にも、
クラウドコンピューティング分野と
サーバ(Wiki)上に整備している
(図3.2.19)。
ビジネスアプリケーション分野がテレビ会議システムを用い
て共同で分散PBLを実施するなどの取り組みも行われた。
(4)平成27年度活動計画
さらに、セキュリティ分野の科目の多くは、登録を行うこと
次年度も、遠隔会議システムを有効に使いながら定期的に
で、他分野の学生でも遠隔受講(同時、
または蓄積)が可能と
会合を行い、
(Ⅰ)分野横断講義の本格的な実施と
(Ⅱ)カリ
図 3 . 2 . 1 9 教務WGで整備したカリキュラム関係資料のページの例
(クラウドコンピューティング分野)
104
enPiT ANNUAL REPORT 2014
キュラム関係資料の継続的な蓄積・整備を進めていく予定で
ある。
まず、
(Ⅰ)分野横断講義については、
3.2.5
女性部会 幹事:大阪大学
女性IT技術者の育成のためのネットワーク形成を目指し、
A 分野によらず必要な汎用的内容の講義
H26年4月に女性部会(Women in Information Technology、
B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義
WiT)が設立された。enPiTにおける女性部会の活動目標は、
の2本立てとして企画、実施を進める。
①女子学生・女性教員のネットワーク形成、②女性IT技術者
Aについては本年度実施した「ロジカルシンキング」や「プ
レゼンテーションスキル」の講義に加えて「ドキュメンテー
への関心を高める、③女性IT技術者育成の支援策を提案する
ことである。
進めている。
一方、Bについては、分野間交流や特任教員のFDとしても
(1)活動の概要
女性部会では、定例会や合宿、シンポジウムの企画・開催、
効果的であるため、
より精力的に企画、実施を推進していく予
情報科学系専攻女子学生企画の支援や、女子中高生への啓
定である。
このために現在、教務WGのメンバーにより、各分
蒙普及を行った。
野から提供された提供可能講義リストを作成し、
これに基づ
これらの活動を行うため、平成26年度は部会会議を6回(4
き、受け入れ可能な講義と実施形態の検討を進めている。な
月11日、5月12日、9月8日、12月7日、1月28日、3月18日)開催し
お、
より活発な実施のために、実施形態は、短期集中合宿の
た。
内容に組み込んでの実施、事前学習科目としてアーカイブ教
材の自習、前期、後期を問わず学期中の集中講義(スポット的
な実施)等、分野の実情に合わせて柔軟な実施案を企画する
予定である。
次に(Ⅱ)カリキュラム関係資料の蓄積・整備については、
(2)体制
女性部会は、enPiT女性教員6名に、アドバイザーとして
國井秀子先生、enPiT男性教員5名で構成されている。
(表
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
ション」に関する講義も分野横断的に実施するための検討を
3.2.20)
本年度リンク集として整備したWikiページについて、FDWGと
も連携調整しながら、継続して整備していく予定である。
表 3 . 2 . 2 0 女性部会 委員
担当委員
女性部会メンバー
櫻井浩子(大阪大学)
森本千佳子(東京工業大学)
渡辺知恵美(筑波大学)
木塚あゆみ(公立はこだて未来大学)
永瀬美穂(産業技術大学院大学)
中島明日香(奈良先端科学技術大学院大学/
NTTセキュアプラットフォーム研究所)
アドバイザー
國井秀子(enPiT外部評価委員、芝浦工業大学)
佐伯幸郎(クラウドコンピューティング分野、神
戸大学)
山内正人(セキュリティ分野、慶應義塾大学)
髙嶋博之(組込みシステム分野、名古屋大学)
神谷年洋(ビジネスアプリケーション分野、公立
はこだて未来大学)
坂本一憲(国立情報学研究所)
(3)活動成果
本年度の活動内容と成果は、次のとおりである。企画案
内や活動報告は、女性部会ホームページ(http://enpit-wit.
jimdo.com/)や、Facebook(https://www.facebook.com/
enpit.wit/info)、Twitter(https://twitter.com/enPiT_WiT)を
活用し、発信した。
①定例会の開催
第1回定例会は平成26年5月26日に、芝浦工業大学 中野
美由紀氏を講師として招き開催した。当日は、国立情報学研
究所をメイン会場としてTV会議を用い、enPiTの連携大学で
ある公立はこだて未来大学、筑波大学、産業技術大学院大
学、大阪大学へ配信した。24名(うち男性7名)が参加した。
enPiT ANNUAL REPORT 2014
105
中野氏には、男女共同参画や女性技術者の働き方、世界的
平成26年8月7日~9日まで、国立女性教育会館で開催され
な動向に関する講演いただいた。そのあと、全体ディスカッ
た「女子中高生夏の学校2014~科学・技術・人との出会い」に
ションをし、女子学生には「情報科学系専攻を選んだ理由」
ポスター・デモ展示を行った。
を、教員など社会人経験のある参加者からは「女性IT技術者
の特徴」について意見を出してもらった。
第2回定例会は、平成26年10月9日に産業技術大学院大学
をメイン会場とし、今回もTV会議を用い、公立はこだて未来
女性部会では、
「日用品化するコンピュータに女性の視点
を生かそう!」
というテーマで、ビジネスアプリケーションのデ
モを行った。ポスターでは、enPiTや女性部会の活動を紹介
し、女子中高生に対し情報科学の魅力を伝えた。
大学、筑波大学、慶應義塾大学、名古屋大学へ配信した。社会
人(教員含む)14名、学生2名(うち男性8名)が参加した。
第2回では、WiTのメンバーによる「私のキャリア」
トーク、
⑤女性部会企画シンポジウムの開催
京都大学で開かれる情報処理学会第77回全国大会の最終
同じくWiTメンバーの中島明日香氏から、
「IT系女性コミュニ
日である平成27年3月19日に、女性部会主催のシンポジウム
ティ作りの一例~CTF for GIRLSの取組みのご紹介~」につ
を開催する予定である。テーマとして、
「ダイバーシティの実
いて報告してもらった。以上2つの報告を踏まえ、全体ディス
現化を目指して-女性IT技術者の活躍について考える」を掲
カッションでは、女性IT技術者が抱える問題の整理を行った。
げ、講演3題のあとに会場とのディスカッションを行う。
②合宿の開催
(4)来年度の予定
平成26年12月6日~7日、国立女性教育会館にて、ワーク
来年度は、定例会の継続開催に加え、キャリアワークショッ
ショップ「IT技術者としてのキャリアを考えるワークショップ〜
プ、国立女性教育会館主催の女子中高生夏の学校へのポス
どんな環境にも負けない、
しなやかなキャリアについて考え
ター展示、女性IT技術者のキャリア実態を把握するためのア
る〜」を開催した。講師として、新島学園短期大学 花田経子
ンケート調査などを行う予定である。
氏にお願いをした。女性教員6名、男性教員4名が参加した。
合宿では、人材を育成するための手段と場作りや、自分
のキャリアを振り返る(スキルの棚卸し)ワークを行った(図
3.2.21)。参加した教員からは、教員のFD活動として、継続して
開催して欲しいという声もあった。ただし、本来は学生向けに
企画した合宿であるため、学生に参加してもらうためにはど
うしたらよいか、開催時期・場所、広報の工夫など検討が必要
である。
③女子学生主催イベント支援
筑波大学大学院システム情報工学研究科に在籍する女子
学生が中心となり、平成26年7月19日~21日までハッカソン
イベント
「Women’s Hackathon at Tsukuba」が開催され、イ
ベントへのアドバイスや審査員として協力をした(図3.2.22)。
④女子中高生への啓蒙
図 3 . 2 . 2 1 合宿の様子
106
enPiT ANNUAL REPORT 2014
図 3 . 2 . 2 2 「Women’s Hackathon at Tsukuba」
の様子
3.3
全体シンポジウム
本事業の成果を公開・発表するenPiT第3回シンポジウム
を、平成27年1月27日に名古屋大学東山キャンパス坂田・平
田ホールにて開催した。
プログラムは表3.3.1の通りである。
参加者数は184名となり、大学からは125名(学生を含む)、
第1部の最初の招待講演「自動車を取り巻く情報技術の現
状及び情報技術者への期待」では、自動車を取り巻く情報技
術および技術者への期待について、分かり易い事例をまじえ
ながら、
ご講演いただいた。二つ目の招待講演「ICT社会ビジ
ネス教育へのデザイン思考の導入」ではイノベーション創出
13:00~
13:10
13:10~
および学生の双方にとって参考になる内容であった。そして、
参加学生の実践力の向上が垣間見える発表でもあった。分野
文部科学省 挨拶
[第1部]招待講演
13:20~
自動車を取り巻く情報技術の現状及び情報技術
14:00 者への期待
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
副社長 宮田博司氏
14:00~
ICT社会ビジネス教育へのデザイン思考の導入
14:40 富士通株式会社
シニアバイスプレジデント 加藤公敬氏
る取り組み報告であった。学生による成果発表は参加した学
生でないとわからない様々な体験が盛り込まれており、教員
enPiT代表 大阪大学大学院情報科学研究科
13:20
だいた。いずれのご講演の内容も本事業の今後の方向に深
第2部はenPiT受講学生による成果発表と分野代表者によ
●開会の挨拶
研究科長・教授 井上克郎
のためのデザイン思考とその重要性についてご講演をいた
い示唆を与えるものといえる。
enPiT 第3回 シンポジウム プログラム
[第2部]enPiT平成26年度活動報告
14:55~
16:35
各分野学生発表
●クラウドコンピューティング分野
代表者による取り組み報告は各分野での全体状況を把握す
●セキュリティ分野
るのに役立つ内容であった。
●組込みシステム分野
また、シンポジウムの後に情報交換会が開催された。情報
交換会には学生25名を含む104名が参加した。連携大学から
のポスター発表とデモ展示もあり、教員同士あるいは学生と
の間で多くの活発なディスカッションがあった。
第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成
企業や公的機関からは59名の参加となった(図3.3.2)
。
表3.3.1
●ビジネスアプリケーション分野
16:35~
各分野代表発表
17:00
17:00~
●閉会の挨拶
17:10 名古屋大学大学院情報科学研究科
研究科長・教授 坂部俊樹
図3.3.2
enPiT 第3回 シンポジウムの様子
enPiT ANNUAL REPORT 2014
107
3.4
実践的IT教育研究会(SIG rePiT)の活動状況
本事業の実践的IT教育の展開と教育研究の成果共有、研
本研究会では、enPiTで実施している4つの分野(クラウド
究コミュニティ形成のため、本事業の関係者が中心となり、平
コンピューティング分野、セキュリティ分野、組込みシステム
成26年度から下記の研究会が発足した。
分野、ビジネスアプリケーション分野)を中心に、PBL(Project
Based Learning)等の実践的な情報教育に関するカリキュラ
研究会名 実践的IT教育研究会(略称:rePiT)
ムの設計、取り組みの現状、開発した教材、合宿・PBLの運用
運営体制(平成26年度)
計画等、大学内外で共有すべき内容に関する議論を行い、教
主査:楠本真二(大阪大学)
育法、ツールやニーズ調査、運用上の工夫等、取り組みの推
運営委員:
進を助ける内容も議論し、情報を共有することを目的として
井垣宏(大阪大学)
いる。
鵜林尚靖(九州大学)
今年度は、平成26年9月7日~10日に名古屋大学で開催さ
大久保隆夫(情報セキュリティ大学院大学)
れた日本ソフトウェア科学会 第31回大会において、rePiTの
大場みち子(公立はこだて未来大学)
企画セッションと平成27年1月28日に同じく名古屋大学で、第
粂野文洋(国立情報学研究所/日本工業大学)
1回実践的IT教育研究シンポジウムを開催した。
森本千佳子(東京工業大学)
吉岡信和(国立情報学研究所)
企画セッションでは、enPiTの連携大学・参加大学を中心
に12件の論文発表があり、活発な議論が行われた。なお、企
画セッションの発表の中から、坂本一憲氏(国立情報学研究
表3.4.1
10:35~
第1回実践的IT教育研究シンポジウム プログラム
●基調講演
11:35 クラウドコンピューティングによって変わる、生活と
教育
ニフティ株式会社 クラウド事業部
佐々木浩一
11:35~
●セキュリティ教育事例1
12:15 SecCap: enPiT securityの紹介
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
砂原秀樹
13:15~
●セキュリティ教育事例2
13:55 伸びる人と伸ばす人とセキュリティ・キャンプ
株式会社NTTデータ/セキュリティ・キャンプ実施
協議会
宮本久仁男
14:00~
●クラウドコンピューティング教育事例1
14:40 アジャイルソフトウェア開発教育のためのチケット
システムを用いたプロジェクト定量評価手法
大阪大学大学院情報科学研究科
井垣宏
14:45~
●クラウドコンピューティング教育事例2
15:25 PBLに役立つファシリテーションスキル授業の開発
と実施結果
大阪大学大学院情報科学研究科
毛利幸雄
108
enPiT ANNUAL REPORT 2014
所)の「ハッカソン形式の実践的IT教育の実施報告」が高橋奨
励賞を、藤原哲氏(公立はこだて未来大学大学院)の「RDFと
ユーザプロファイルを用いたPBL向け情報推薦手法」が学生
奨励賞を、それぞれ受賞している。
第1回実践的IT教育研究シンポジウムでは、37名の出席者
があった。佐々木浩一氏(ニフティ株式会社クラウド事業部)
に「クラウドコンピューティングによって変わる、生活と教育」
という基調講演を頂いた。
また、特別講演としてクラウドコン
ピューティング分野とセキュリティ分野の教育事例をそれぞ
れ2件発表いただいた。各分野で実施している特徴的な授業
の詳細について紹介いただき、参加者からは多くの質問が
あった。
シンポジウムのプログラムを表3.4.1に示す。
来年度も、
ソフトウェア科学会の大会での企画セッション、
シンポジウムを計画している。
また、
ジャーナルの特集論文の
ような企画も検討している。
Education Network for Practical Information Technologies
発行:大阪大学大学院情報科学研究科
enPiT事務局
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-5
T E L ▶ 06-6879-4395
F A X ▶ 06-6879-4649
U R L ▶ http://www.enpit.jp/
E-mail ▶ [email protected]
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