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脊髄損傷者の内科的諸問題について - 障害者情報ネットワークノーマネット

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脊髄損傷者の内科的諸問題について - 障害者情報ネットワークノーマネット
『脊髄損傷者の内科的諸問題について』
−からだ全体を見つめよう−
東京慈恵会医学大学第二内科 講師
神奈川リハビリテーション病院 内科 副部長
医学博士 水口 正人 先生
ご紹介いただきました神奈川県リハビリテーション病院内科の水口と申します。私は慈恵医大を卒業
しまして、その後の、昭和62年にこちらのほうに赴任してまいりました。ですから、約11年の間、
神奈川リハビリテーション病院のほうで仕事をさせていただいております。ももとも専門は内科で、大
学では循環器疾患(注:心臓病や高血圧など)と、透析に関する腎臓疾患関係の仕事をしておりました。
リハビリテーション病院に来て、初めて脊損の患者さんと接したわけですが、当初は脊損患者さん特
有の症状あるいは病態でいろいろ不明な点があり非常に悩んだり困ったこともありました。それで、い
ろいろ書物を読んだり、文献を読んだりしましたが、内科的問題についてはまだまだ記載が少ないのが
現状です。これから、私が脊損患者さんの内科問題について、10年にわたって感じてきたこと、調べ
てきたこと、そして皆さんにこうした方がいいということを、これから1時間半ぐらいにわたってお話
ししていきたいと思います。特に脊損患者さん、あるいは頸損患者さんの内科的問題のなかでも、循環
器疾患の問題を中心にお話しさせていただきたいと思います。
前置きはこのぐらいにして、スライドを見ながら、お話を進めたいと思います。
【脊損患者さんの寿命】
第二次世界大戦は1941年から始まりましたが、それ以前は脊損の方たちは短命でございました。
戦争が始まって、戦傷により脊損の方たちがいっぱい増えて、脊損患者さんに対する治療法が大変進歩
しました。具体的には、1940年代にサルファ剤ができて、感染治療法が進歩し、さらに10年後の
1950年代には抗生物質ができ、さらに1960年代には救急医療が非常に発達したこともありまし
て、この2、30年の間に、脊損の方の寿命が著しく延びました。
昨年の日本リハビリテーション学会総会のシンポジウムでも話しましたが、脊損患者さんまたは頸損
患者さんの寿命はどのくらいかですが、当院関係で亡くなった人は過去10年に29名おりまして、平
均寿命が56歳でした。若い人では36歳で骨髄炎が原因で亡くなっています。高齢75歳の人が肺炎
で亡くなっています。脊損期間は障害を受けてから平均26年で亡くなられています。1年ぐらいで亡
くなった方もいらっしゃいますし、44年生きられて亡くなられたという人もいらっしゃいます。
一方、海外での報告というのはいろいろございますが、英国の脊損センターという所が、1992年
に出したリポートですが、 834人調べまして、1940年代に受傷した方の寿命は、受傷してから
平均26年でした。で、1960年代に受傷した方になりますと抗生物質が発達し感染治療がうまくい
き、救急医療の整備もございまして、平均33年に伸びたとのことです。ですから、現在では、普通だ
ったら、33年以上は障害後の寿命があるということです。(注:当然、障害時の年齢によって異なり
ますが。)
それで、英国脊損センターの報告をさらに詳しく見ますと、20歳代では、同じ20歳代の人の死亡
率に比べて脊損の方は8倍くらいの死亡率なんです。ところが、70歳以上になりますと、一般の人も
70歳では死ぬ人が増えてきますので、同じ70歳代を比較しますと、一般の死亡率に比し 1.5倍
ぐらいの死亡率であったということです。それにしても、同じ年代であれば、脊損の方のほうがはるか
に死亡率が高いわけです。ただ、同年代に対する死亡率は年齢とともに減少していくという事実があり
ます。
【死亡原因】
神奈川リハビリ病院の29名の死亡原因ですが、腎不全が原因で亡くなられた方が9名、あとは、が
んが6名、心臓死、心筋梗塞、突然死、心不全などの循環器疾患が6名、肺炎3名、脳血管疾患2名、
その他3名という内訳でございました。
先の英国脊損センターの死亡原因をみますと、一位がやはり腎不全からの死亡が多く24%と、4人
に1人です。それから、今、増えていますのが心血管死です。心筋梗塞とか、心不全とか、それから脳
血管もこの中に入っていますが、海外のデータでは、23%と約1/4の死亡率です。あと肺炎等の吸
器疾患が14%、がんが11%、事故が6%という割合になっております。
海外での報告で死亡原因は、対麻痺患者さんは比較的、腎不全によるものが多いです。ただ、対麻痺
患者さんは、呼吸機能がよいということで、呼吸疾患による死亡は比較的少なかった。それに対し、頸
損患者さんは敗血症(注:敗血症とは、尿路感染症や褥瘡が原因で血管の中にばい菌が入り、そのばい
菌の数が異常に増える状態をさします)で亡くなる、あるいは呼吸器疾患、肺炎が多い。また、頸損患
者さんは、事故で亡くなる方は多いが、がんと心血管病が少ないというデータがでています。そもそも、
がんと心血管病というのは、ある程度長生きしないと増加しませんので、頸損患者さんは、その前に比
較的若くして、亡くなっている方が多いんじゃないかと私は考えております。不全の患者さんは、比較
的活動できるので、事故が多いとか、比較的長生きできるため、反面、がんが多くなるとの興味ある結
果が報告されていました。
腎不全による死亡は確かに多く、二大死因の一つと考えられます。ただし、最近は減少傾向にありま
す。この減少してきている原因は、泌尿器科管理が非常に良くなってきたということが挙げられるので
はないかと思います。腎不全による死亡は30歳代で49%。しかし、60歳以上になりますと、11%
で、むしろ肺炎とか、心血管病で亡くなる方が多くなってきています。腎不全による死亡は障害後20
年以内では30%と非常に高率ですが、障害後30年以上では9%と、非常に少ない割合になってきま
す。しかし、この9%という数字は大変少なく聞こえますが、一般の人が腎不全の結果死ぬということ
は、1%未満ですので、それを考えると、9%でも非常に高い数字だと思います。事故死は30歳前が
結構多く、19%です。50歳代以上では余り活動しなくなるのか、用心深く行動するのか、比較的事
故死というのは減ってまいります。
最近海外の報告で目立つのは、心血管疾患による死亡が大変、増加していることです。海外の報告に
よると、障害後30年以上経った脊損の方では、心筋梗塞とか、脳血管障害(注:脳出血、脳梗塞、く
も膜下出血など)がもっとも多い死亡原因で、46%を占めており、2人に1人です。もちろん、肺炎
などの呼吸機能死は年齢で増加すると、報告されています。
一般人の死因で申しますと、大体、がんによる死亡が、3人に1人から4人に1人です。次が脳血管
障害で大体4人に1人ぐらい、心臓病でも大体4人に1人ぐらい。こういう割合になっていまして、が
んと脳血管障害と心臓病が三大成人病といわれる由縁はここら辺にあるわけです。ところでこの成人病
ですが、あとでも触れますが、これらの病気は、生活習慣から生じていることが多いことが分かり、最
近は成人病と言わず、生活習慣病とも呼んでおります。
脊損患者さんにおける死亡原因の特徴ということは、一般人に比べて、腎不全による死亡と、呼吸器
死(注:肺炎)が非常に多いということです。まだ、日本では、がんで亡くなられる方と、心血管死は
一般人と比較して若干多い程度ですが、これは、今後増える可能性が十分にあると考えられます。
【各科合併症】
他の脊損患者さんの寿命を縮める因子としましては、整形外科的な合併症であるとか、泌尿器科的な
合併症であるとか、それから生ずる内科的な合併症があるかと思います。
代表的な整形外科的合併症には、褥瘡があります。この褥瘡が原因で敗血症や骨髄炎になり、さらに
DICやMOFに進展し、亡くなることがあります。DICというのは播種性血管内凝固症候群といい
まして、敗血症がひどくなると凝固異常をきたし、全身の病気になっていく病態です。全身の至る所で
血が非常に固まりやすい状態になり、血栓が生じる。反面、血小板が消費され減少したため、脳出血や
肺出血という重要臓器の出血が起きる病態を指します。さらに、その結果多臓器不全というMOFにな
り、腎不全にも肝不全になり亡くなります。
褥瘡というのはある部分の皮膚が無くなることであります。皮膚というのは感染に対して生理的に重
要なバリアーですから、それが無くなるということは、ばい菌がたやすく体の中に入ってくるという素
地を作るわけですから、これは是非とも気をつけなければいけないわけです。ですから、褥瘡ができな
いように細心の注意を払うとか早期治療が大切です。
泌尿器科的な合併症としましては、尿路感染症が大事です。尿路感染症を何回も繰り返しますと、や
はり腎不全の原因となってきます。それから、膀胱尿管逆流という病気、この中にも手術をなさった方
が多いんではないかと思いますが、これも放置すると腎不全になることがあります。
【内科合併症】
内科的合併症と言いますと、特に気をつけないといけないのは、肺炎です。特に高齢の頸損の患者さ
んには反復性で難治性のため命取りになることが多い。あとは心臓病、腎不全、がん、脳血管障害、慢
性肝炎、代謝性疾患についてをお話してまいりたいと思います。
■肺炎
肺炎ですが、脊損患者さんに肺炎が多い原因は、やはり神経がマヒしているため、十分に肋間筋等を
駆使できず、呼吸機能が十分でないということにあります。呼吸というのは横隔膜で肺を拡げて、それ
で肋間筋や腹筋等でぐっと肺を縮めて空気を出すわけです。胸部脊髄の上の損傷の方、あるいは頸髄損
傷の方というのは、肋間筋等が十分に駆使できませんので、強い咳が出せないとか、喀痰が出しにくい
状態になります。さらに、年を取ってまいりますと、咳嗽反射(ガイソウ)(注:咳の反射)も低下し
てきます。このために、ばい菌が入りやすい、抜けにくいという状況になって肺炎になりやすく重症化、
反復化しやすくなります。
もう一つ問題として肺活量が低下していることが挙げられます。肺活量が低下していると重症化しや
すい。それから、運動習慣が低下しているための免疫力低下が挙げられます。運動習慣を持っています
と、免疫力が上がるという、そういうデータがございます。ですから、運動習慣がないということで、
体の抵抗力がなくなってくるのです。
それから、高齢の方の頸損患者さんになりますと、嚥下障害が生じてきます。一般に嚥下障害では食
道造影時に、食道造影剤を飲んだ時に気管のほうに造影剤が入っていくのが見られるわけですけれども、
高齢の方の頸損患者さんを調べますと、それでは分からない微小の誤嚥があります(注:食道造影以外
の方法で診断します)。この微小の誤嚥でも、高齢の方の頸損患者さんでは呼吸機能等の全身状態が悪
いため、実は肺炎の原因になることがあります。ですから、高齢で頸損の方というのは非常に肺炎とい
うことに気をつけなければいけないわけです。
もう一つは多剤耐性菌による肺炎の問題です。多剤耐性菌で代表的なものが、MRSAといいまして、
メチシリン耐性ブドウ球菌のことです。ブドウ球菌は、皮膚とかその辺に存在するばい菌ですが、医療
側がいろんな強力な抗生剤を使ったために、多くの抗生剤に効かない耐性のブドウ球菌が出現しました。
これがMRSAです。このMRSAによる肺炎になりますと、治療が大変困難になり重症化するわけで
す。そのMRSAが褥瘡とか、尿の中に存在する人が脊損の患者さんでは多いので、肺に自己感染して
しまうことがあり、大変問題があります。もちろん、他の人に菌を移すこともあります。MRSAが褥
瘡とか、尿に存在するのは病院で感染することが多く、病院での対策にも大いに問題があります。
肺炎対策は、言い古したことですけども、風邪をひかないようにするのが大事です。風邪を契機に肺
炎になる方が、非常に多いのです。全ての風邪に対する特効薬というのは現在ございません。ただ、今
年から、インフルエンザAとか、Bとかというタイプがありますが、その中でインフルエンザAに対し
てだけですが、シンメトレルという薬が効くということで、厚生省が認可しました。シンメトレルはパ
ーキンソンの治療に使う薬ですけども、もともとは抗ウィルス剤で開発された経緯を持つ薬なんです。
これがインフルエンザAには効くということが分かってまいりまして、今年からインフルエンザAに対
して適応がとおりました。ただ、症状が出現してから、48時間以内に飲まないと効きません。シンメ
トリルを飲んでいただくと症状は軽くすみます。しかし、インフルエンザAかどうかという診断は難し
いんですね。もしかしたら、Bかもしれない。インフルエンザAの診断には10分で判明する検査方法
がありますが、現在は保険がききません。だけど、今の医療の現場としましては、多分インフルエンザ
Aだろうということで、シンメトレルという薬を飲んでいただくということが良いのではないかと思い
ます。今年は無理でも、来年ぐらいには、皆さんが風邪で来ていただいたら、何型かということがすぐ
分かるようにしていくことができるんではないかと思っています。
風邪というのは多くはウィルス感染症で、この世で一番小さい微生物です。そのウィルスの感染症を
起こしますと、例えば気管の中に繊毛というのがございまして、ばい菌が入ってきたら、その繊毛がは
げしくアメーバーのように動きまして、ばい菌を外へ出してしまうわけですけども、そういうばい菌を
外へ出す繊毛運動が低下します。ということは、風邪というのはウィルスの感染症ですから、それをひ
いた時に、次の細菌、一般に、ばい菌と言われている微生物の感染に陥りやすくなる。いわゆる細菌性
肺炎になりやすくなるということがありますので、ウィルスそのものに根本的に完璧に効く薬が無い現
状では、やはり、風邪をひかないように注意することが大事です。
風邪のウィルスは大体が高温に弱く、低温には強いのです。それから、湿度的に言いますと、乾いた
環境に強いのです。だから、日本の冬は、寒くて乾いているので、ウィルスが蔓延するにはもってこい
の環境なんです。反対に高温で多湿、湿度が高いとウィルスが大体死んでしまいます。ですから、室温
を25℃にし、部屋の湿度を50%以上に保つ、また、たまには空気を入れ換えることをしていただき
たい。例えウィルスが部屋の中にいても、換気することで、数を減らすことができますから、是非そう
いうことをやっていただきたい。
それから、もっと大事で言い古したことですが、
“うがい”と“手洗い”の重要性です。この2つは、
ウィルスの感染予防にとっては非常に大切な要素となります。もちろん風邪をひいた他人が目の前でく
しゃみをした場合、それを吸えば移りますが、風邪をひいた人が手で触った物をある人が触って、その
人が、指を鼻に持っていったりしますと、それで移っちゃいます。だから、外出後に、よく“手洗い”
をし、よく“うがい”をすることがほんとに大事ですので、面倒くさいでしょうが、12月、1月、2
月の時期は、まめにやっていただきたいと思います。
また、頸損の方は排痰を、家族の人が、非常に頻回に行っていただきたいと思います。それでもひき
かけたときは、風邪をこじらせぬよう、早めに病院に行って、先程のシンメトリルといった新しい風邪
薬とか、あるいは、ばい菌による二次感染を引き起こさないために、抗生物質を予防的に飲むというこ
とが必要ではないかと思います。
■虚血性心疾患とは
次に、虚血性心疾患のお話をします。虚
血性心疾患というのは心臓の血管の動脈硬
化により起こる病態です。心臓には冠動脈
という心臓のための動脈がございまして、
その冠動脈が心臓の筋肉に酸素と栄養分を
送っております。その冠動脈の動脈硬化が
虚血性心疾患です。動脈硬化により狭窄を
起こしてきますと、運動時に狭心痛を起こ
し、胸が痛くなります。ロシアのエリツィ
ン大統領がこの病気になったことで有名で
す。狭窄だけでなく血栓が生じて完全に冠
動脈が詰まりますと、心臓の筋肉の細胞が
壊死を起こし心筋梗塞になります。心筋梗
塞の範囲が広ければ、心臓は血液を送り出
すポンプですので、ポンプとしての機能は
低下し、生きていけなくなるのです。
これは正常な心臓の図です。(図1)
ここに大動脈というのがあります。これ
が左心室で、ここに入った血液が心臓が収
縮することによって、大動脈を通って全身
に血液が流れていくわけです。その途中の
心臓から出た直後に冠動脈といって細い動
脈が3本あり、いろいろ枝分かれしていま
す。この血管は非常に細くて、大事な心臓
を動かしている血管だから、もう少し神様
が太く作ってくれたらよかったのですが、直径4∼5ミリぐらいの太さしかございませんで、細いもの
です。
こういう構造になっておりまして、これが動脈硬化をおこし細くなると狭心症になるわけでございま
す。
図2
動脈硬化
これは動脈硬化の図です。(図2)
50%狭窄
90%狭窄
このように動脈の中膜に、アテロームといって、酸化した脂肪が溜
まってくるのです。これは成分的には、またあとで話す予定ですが、
LDLというコレステロールの酸化物でございます。これが溜まらな
くても、ここに攣縮と書いてありますが、血管の内膜という所が傷つ
きまして、痙攣を起こし狭心痛を呈することもあります。冠動脈があ
まり狭くなっていなくても、内膜が傷ついているということで、血管
の攣縮を起こして、それが狭心症になる場合もあるということです。
普通の冠動脈硬化によるタイプの狭心症は労作性狭心症といい、一般には、階段昇ったり、脊損の方
ですと車いすをこいだ時、等の運動労作時に、胸痛あるいは胸の絞扼感といった症状が出現します。痙
攣のタイプは、むしろ特殊な狭心症でございまして、明け方の5時とか、4時ぐらいに痙攣のため胸痛
の症状がでます。なにも運動もしていないのに胸が痛くて目が醒めたという場合には、この場合です。
ですから、狭心症というのは必ずしも運動していなくとも痛みが起こる場合もあります。それはあくま
で、特殊ですが。
狭心症の痛みは、どんな痛みかといいますと、痛みの知覚のある人は、胸の真ん中辺りが締め付けら
れる、絞扼感といいますが。しかし、時々、胸が“チクチク”痛み、心配だということで、来院される
方もいますが、狭心症で“チクチク”する痛みになることはまずありません。大体は、手で締められる
ような圧迫感で絞扼感です。
図3正常動脈
でも、人によっては胸が痛いだけじゃなくて、左肩が痛い、あるいは左の顎が
狭窄無し
痛いというふうに感じる人もいますし、それから、右の肩が痛いという人もいま
す。それから、左手の小指が痛いという、そんな症状もあります。ただ言えるこ
とは、昼間の安静時に生じる胸の痛みだと狭心症の可能性は少ないということで
す。昼間だと、少し動いた後、あるいは物を食べた後、これはエネルギーを使い
ますので、労作になりますから、この後に生じる痛みは狭心症の可能性がありま
す。
この図(図3)が通常の血管の構造です。
血管というのは三層構造になっておりまして、内膜、中膜、外膜とあります。動脈硬化になりますと
動脈が細くなり、これが50%狭窄、これが90%狭窄です(図2)。この狭い所を血液が流れるわけ
です。この狭い所を血液が流れるわけですから、酸素や栄養分が十分に流れないということです。中膜
が肥厚し血管が細くなるのですが、この中膜に貯まるのがアテロームという物質で、もとは脂肪なんで
すね。脂肪のなかのLDLというコレステロールが、酸化され、内膜を通過して内腹層に入り、マクロ
ファージという細胞が、食べて、その後、変成してああいう姿(注:アテローム)になるのです。さら
に、石灰化もともない、こんなに内腔が細くるのです。
では、実際の、心筋梗塞の実例をお話ししたいと思います。
最近の実例ですが、50歳の二分脊椎の男性の方です。この方は、平成9年の1月から軽い胸の不快
感があったのですが、放置していました。さらに8カ月ぐらい経ちまして、“みぞおち”も痛くなりま
したが、それでも放置していました。そうしましたところ、平成10年1月17日の朝から、痛みが非
常に強くなり、一睡もできなかった。私どもの病院に電話連絡が入りましたが、病院が自宅から遠いの
で、一刻の猶予もできないので、近くの北里大学病院に緊急で受診させました。やはり、心筋梗塞の診
断で緊急入院になりまして、バイパス手術とか、PTCAというカテーテルで風船を膨らます手術の組
み合わせで、どうにか命は助かりました。
この方の生活歴をみますと、二分脊椎で、幼少の頃からずうっと車いすの生活で、たばこも1日10
本、25年位の間、吸っていた。合併症としては、やはりコレステロール値が高かった。それに肥満も
あるということで、運動不足と喫煙とコレステロールと肥満ということが原因で、心臓の血管が細くな
ったと言えます。
二例目の方は52歳の男性で、C7の頸損の方です。昭和47年の障害でございますから、16年ぐ
らいの頸損歴のある方です。この方は、平成10年の9月30日より呼吸苦が出現してきました。よく
聞いてみますと、横になると症状が悪化すると言いました。改善しないために、10月2日、私どもの
病院を訪れました。診察の結果、心不全で原因は心筋梗塞でした。ただ最近の心筋梗塞ではなく、少し
以前に心筋梗塞をやっていたが放置していたのです。で、いよいよ悪化して心不全になって、つらくな
り来院されたのです。どこかの時期に心筋梗塞をやっていたのです。ただ、C7の頸損の方でございま
すから、痛みを感じることができなかった。心臓の痛みを感じる神経というのは、胸髄の1番から5番
にあります。ですから、頸損の方になりますと、その心臓の痛みを感じることができない。それで、知
らぬ間に心筋梗塞を起こしていた。呼吸苦が出現したというのは、実は、心不全になったのです。心筋
梗塞のため、 100あるポンプの機能が60か40になり、そのために心不全になったのです。もう
少しよく聞いてみますと、熱があったため尿路感染症かもしれないと患者さんが思い、水を普段より多
めに取られた。そのことが、心不全の引き金となったということではないかと思います。入院後、心不
全の方は治療により改善しました。神奈川リハビリ病院では、冠動脈カテーテル検査までできませんの
で、県立厚木病院へ送りまして、PTCAという方法によりカテーテルで風船を膨らまして、細い血管
を広げることに成功し、現在は退院なさっております。
この方も、生活歴を拝見すると、喫煙があり毎日10本から20本、30年の間ありました。それか
ら、合併症としては高脂血症がありました。やはり、運動不足とか、もちろん頸損の方ですから運動不
足はやむを得ないですが、喫煙、それからコレステロール高値ということがかなり関係していると考え
られました。
■虚血性心疾患の原因・症状とは
それでは、何が原因で虚血性心疾患が起こるのか、について話します。現在、考えられております虚
血性心疾患、いわゆる狭心症や心筋梗塞の原因は、①耐糖能障害とか糖尿病の耐糖能異常と高インスリ
ン血症。また、先程言いました、②高脂血症(コレステロールや中性脂肪が高値)、③喫煙、④高血圧、
⑤内臓肥満等です。これが、二つ以上あるようなら、かなり注意しなければいけません。
脊損患者さんにおける、虚血性心疾患の特有な問題は、痛みの問題と診断方法にあると考えます。痛
みの問題では、頸損の方においては、痛みはまず起こらないと考えて差し支えないと思います。例え、
あったとしても非常に軽いことが多い。その原因として、一つには、運動強度、駅の階段を駆け上った
りとかはできませんので、運動強度があまり上がらずに痛みが出にくいのです。また、頸損であるとか、
胸髄損傷の1番とか2番の人の場合には、心臓知覚神経の分断のため心臓知覚障害が生じて、狭心症の
痛みが感じられないということがあげられます。他の痛みの問題は、痛みが軽いため、本人が軽く考え
てしまうことが多い。また、他の痛み、ボーダーラインペインとか幻肢痛とかの痛みと混同してしまう
ことがありますので、神経質な方はすぐ来院されるのですが、意外と軽く考えてしまい、病院に行かな
いことがあるのではないかと思います。
■虚血性心疾患の診断方法と治療について
次に、虚血性心疾患の診断方法についての問題点です。虚血性心疾患を確実に最終的に診断する方法
は、今のところ、冠動脈造影という心臓カテーテル検査しかありません。ただ、この心臓カテーテル検
査というのは、 100%安全かというと、ごくまれにですが事故があります。千に一、万に一の事故
があります。ですから、できたらやりたくはないのです。けれども、もし虚血性心疾患があり、放置し
た場合、十に一つの割合で死ぬ可能性があるというんだったら、千に一、万に一の危険性は、ある程度
覚悟してでも検査をしたほうがよいという考えです。したがって、まったく狭心症の“き”の字もない
人に、この心臓カテーテル検査はやるべきではないのです。言い換えると、検査をやる利益が患者さん
の不利益(注:事故等をさす)を上回らなければ、やらないわけです。ですから、明らかな心筋梗塞や
狭心症以外は、本当に心臓カテーテル検査をする価値があるだろうか、という判断のために、おおづか
みの検査をやる必要がでてきます。この検査のための検査、それが、運動負荷心電図検査なのです。
運動負荷心電図検査というのは、一般にはトレッドミル検査と言いまして、ベルトコンベアー上を走
りまして、運動負荷をやり心電図を計測し判定します。脊損の方だと、それができませんので、アーム
エルゴといいまして、自転車のペダルみたいなものを上腕でぐるぐる回して、運動負荷とし、心電図を
計測する方法をとります。頸損の方はそれもできませんので、薬物負荷心電図検査を行います。要する
に運動負荷がかかっていると同じ状態にする薬、ペルサンチンという薬ですが、ペルサンチン負荷をや
りまして、ほぼ運動負荷心電図と同じ精度で診断することができます。
もう一つ、負荷心筋シンチというのがありまして、血管の中にアイソトープ(注:放射性同位元素)
を入れて負荷を行う検査です。このアイソトープ自体は 100%安全な薬ですが、それを血管から入
れまして運動負荷を行う。心臓の血管(注:冠動脈)に細い所ありますと、心臓の筋肉に血液がなかな
か入らないため、アイソトープも心臓の筋肉に入らなくて、集積が低下する。それにより、この人は狭
心症がありそうか否かを診断します。この3つの検査を組み合わせて、最終的に、冠動脈造影検査をや
る価値があるか否かを判断します。怪しければ、冠動脈造影検査を行い、75%以上の狭搾があると、
治療の必要性がある狭心症と診断します。治療は、再びカテーテルを冠動脈に挿入し、風船を膨らませ
狭窄部分を広げます。この技法をPTCA(注:経皮的冠動脈形成術)と言います。他には冠動脈バイ
パス手術(注:CABG)といった心臓外科手術もやる場合があります。
これは実際の冠動脈造影の写真(写真1)ですが、前下降枝という冠動脈の枝の一つに病変がありま
す。ここに(▲の部分)造影剤が途切れている場所ございますね。これは99%狭搾で、これを放置し
ますと、早い時期に心筋梗塞になります。このままだと、狭搾部分以下の心臓の筋肉が死んでしまいま
すから、狭窄部分を広げてあげなければいけません。
PTCAで治療して広げてあげると、こうなって(写真2)、暫くはいい状態になります。(注:“暫
くは”の意味は、広がった部分が再狭窄を起こすことがあるからです。)
多くは冠動脈硬化による狭窄で狭心症を起こすことを説明しましたが、実は少し先にも述べたように、
冠動脈硬化が軽微でも痙攣により狭心症を起こす人があります。
この実例を挙げます。
この写真(写真3)はまさにこれで、普段は冠動脈の狭窄は無いのですが、痙攣を薬剤で誘発します
と、この写真のように冠動脈の痙攣により、血流が途切れます。心電図も変化を起こして参ります。し
かし、薬剤によって痙攣を止めると、また元に戻ります。こういう人は手術やPTCAよりも薬を服用
した方が良い。薬剤で痙攣を阻止するわけです。
今、狭心症に対して行われている治療方法
は、冠動脈の内径が狭くなっている病変部位
がありますと、股動脈からカテーテルを入れ
心臓まで送りまして冠動脈に入れ、狭くなっ
ている部分で風船を膨らまして広げます(図
4)。
ですから、胸を切り開く心臓手術をやらな
くとも、侵襲が少なく狭心症あるいは心筋梗
塞の治療ができるということです。これだと
約一週間位で退院できます。
■動脈硬化の原因について
動脈硬化は、心臓以外にも起こり、腎臓に
起こると腎不全となり透析をやらなきゃいけ
なくなるし、脳の血管にくると脳卒中になる
わけです。ところで、動脈硬化を起こしてく
る原因、すなわち危険因子は、今このように考えられています(図5)。一つは不変因子、変わること、
変えることができない因子です。そのひとつに、年齢があります。年をとるにつれ多かれ少なかれ動脈
硬化が起こり、だれも免れることはできません。それから女性よりも男性の方が(動脈硬化が)強く起
こります。ただし、女性は、閉経後、急速に動脈硬化が強まってきます。閉経は大体50歳ぐらいです
が、50歳過ぎてある女性ホルモンが止まりますと動脈硬化が男性に追いつけ追い越さんとばかりにと、
どんどん進んで参ります。ですから、70ぐらいになると、動脈硬化は(男性と)同じくらいになりま
す。が、少なくとも40、50ぐらいの時は男性の方が断然、動脈硬化が強いわけです。あと、遺伝的
に動脈硬化を起こしやすい人がいることが分かっています。
次ぎに、可変因子です。この因子は個人が努力すれば、
動脈硬化を抑えられるものです。その一つは、血圧が高
い高血圧症です。血圧が高いほど動脈硬化は進みます。
それから油分が多い、つまり、コレステロールだとか中
性脂肪が多い高脂血症の人ほど動脈硬化は進みます。他
は耐糖能の異常である糖尿病です。糖尿病の人は動脈硬
化が早く進みます。ほかには、肥満・喫煙・運動不足・
ストレス、こういうのが動脈硬化をどんどん進めまして、
狭心症、心筋梗塞、脳卒中、腎不全などを起こしてくる
わけです。とりわけ腎不全については、脊損の方は、そ
の尿路系の問題で腎不全を起こしやすい素地があるわ
けですから、余計(動脈硬化の進展に)気をつけていた
だかなければならないわけです。
■耐糖能異常について
耐糖能異常は、耐糖能障害と糖尿病に分けられます。
正常と糖尿病の間の境界域を耐糖能障害としています。
耐糖能障害であれば、努力すれば元の正常に戻るし、努
力を怠れば糖尿病になってしまいます。
それで、糖とかインスリンについてお話します。糖は
血液中に流れている、体や脳などの臓器を動かしている
重要なエネルギー源です。私たちは食事により、糖を体の中に取り入れて、エネルギー源とし、体など
を動かしているわけです。しかし、糖はインスリンがあってはじめて、血管から筋肉や脳などの細胞の
中に取り入れられて、筋肉を動かしたり脳活動すことができます。ですから、インスリンがないと、糖
を生かせないわけです。耐糖能異常は、このインスリンの量が低下したり、作用が低下する病態です。
ですから耐糖能異常になると、細胞の糖の取り込みが低下して、糖の組織利用が減少して、糖が余るか
ら、血糖が上昇してくる。血糖がある程度以上増加すると、糖尿病となります。
では、なぜ高血糖がいけないか。これは少し難しい話になるので少ししか触れませんが、本質は、タ
ンパク質の糖化といわれています。タンパク質が糖とくっつきまして、細胞の構造が変化し、特に細小
血管の細胞ですが、いろんな臓器障害を起こします。糖というのは生きていく上で、生物にとって、な
くてはならないものなんですが、糖が高すぎると、かえっていけません。 200mg/dl以上の糖
は体に非常に毒だということです。高血糖の結果、血管障害が起き、網膜や心臓や腎臓などの臓器障害
と神経・脳障害が起こるわけです。
糖尿病に特有な最小血管症(注:細い動脈が走行している臓器の障害)の典型的なものは網膜症です。
目の網膜に細い血管が走っており、その血管がやられると、最後は失明します。腎臓にも細い血管があ
り、これがやられると腎不全となり透析が必要となります。
ただし、現在は、糖尿病になれば(動脈硬化の観点から)もちろん危険ですが、糖尿病の域にならな
くとも動脈硬化が進むことが判明しています。糖尿病は細い動脈の動脈硬化で、その結果、臓器障害を
起こしてくるわけですが、糖尿病までなっていなくとも、その一歩手前の耐糖能障害、インスリン抵抗
性がある状態だけでも、大きい動脈とか中ぐらいの太さの動脈の動脈硬化が非常に進むことが知られて
きました。
■インスリン抵抗性とは
インスリンの抵抗性とは、つまり、インスリンの効きが悪いということです。効きが悪いってことは、
運動不足とか食べ過ぎとか遺伝が(原因として)あるわけです。
この図(図6)は、高血圧や高脂血症や耐糖能異
常が氷山の一角であることを表します。要するに高
血圧症でも高脂血症でも耐糖能異常でも、元になる、
根元にあるのは、このインスリン抵抗性じゃないか
と言われてます。一番良くないおおもとは、運動不
足と食べ過ぎで、いわゆる生活習慣病です。この絵
(写真4)は、ビール片手にタバコを吸い、ビール
を飲みながら、ツマミに唐揚げなどの脂っこいもの
を食べ、歩かずに自動車に乗る、こういう生活をし
ている人は、将来的には動脈硬化が進行し、心筋梗
塞や脳卒中になって亡くなれる可能性が強いとい
うことです。それで、糖尿病はいけないという話は
しましたが、なぜ、糖尿病の一歩手前でもいけない
のか、インスリンの抵抗性の存在がいけないのかと
言いますと、一つは、非常に高脂血症を合併しやす
いことが挙げられます。インスリン自体が高脂血症
を防いでいる側面がありますので、インスリンの抵
抗性によりインスリンの効き目が悪くなると、中性脂肪やコレステロールが高くなります。他には、交
感神経の緊張状態により高血圧になりやすいことが言われています。
それから、これは少し難しい話ですが、MAPと言いまして、マイトジェーン・アクティべイト・プ
ロテイン(mitogen−activated protein)のことですが、これがキナーゼ系
を刺激することによって、血管の細胞増殖を起こします。これは血管の内皮の細胞増殖やコレステロー
ルの蓄積が促進されますので、動脈が細くなります。ですから、このインスリン抵抗性だけでも動脈硬
化が促進されることが、分かってきたのです。
■インスリン抵抗性を調べるには
インスリン抵抗性を知るには、空腹時血糖値だけでは分かりません。75gOGTTという経口糖負
荷試験が必要となります。
これは、空腹で朝、外来に来てもらい、採血後、砂糖水を75g飲んでもらいまして、その後、30
分おきに2∼3時間にわたり、何回か血液をとり、結果、この人は糖尿病なのか正常なのか、あるいは
耐糖能異常なのか、また、インスリン抵抗性があるのか無いのか、ということが判断できます。本当に
正確に行うにはグルコース・クランプ法ということになりますが、この方法は、全国でも5∼6の大学
でしかやっていなくて、患者さんの負担も大変なので、普通は、この経口糖負荷試験で代用するわけで
す。
神奈川リハビリテーション病院で、 105人の脊損の方で、明
らかに糖尿病と判明していない人に、経口糖負荷試験を、心配なの
でやらしていただいたのですが、なんと約78%に耐糖能異常が見
つかりました(図7)。それで、糖尿病はその中で16%ありまし
た。なんと、隠れ糖尿病があったんです。さらに驚いたことには、
空腹時の血糖値は全く正常範囲だったのです。簡単な人間ドックや
普通の検診では空腹時の血糖だけですので、それだけでは判断でき
ないということなんです。ですから、是非、一年に一回くらいは面
倒でも、砂糖水を飲む経口糖負荷試験を受けていただきたいと思い
ます。特に、30歳以上の方は。一般人で耐糖能異常がある人は、
30歳以上の方では、大体40%から50%くらいと、依然よりだ
いぶ増えています。脊損の方は、さらに、大体、健常の方の2倍の頻度と、かなり多いので注意しなけ
ればいけません。
■脊損の方の理想体重とは
我々は、痩せようとしてダイエットをしますね。太っていると、
身長を伸ばわけにいきませんから、体重を減らそうとするわけで
すけど、そもそも体重の基準とは何でしょうか。基準には、標準
体重というのがよく知られていますが、医学的によく用いられる
のは、別の指標である、ボディー・マス・インデックス(BMI)
を用います。是非、言葉として覚えていただきたいのですが、こ
れは、体重を、身長の二乗で割った値です。例えば1メートル6
0センチの人は1.6の二乗にするわけです。1メートル70セ
ンチの人は1.7を二乗して、それを、体重から割るわけですね。
それがBMIで、全世界的に体重と病気の関係が判明していまし
て、BMIが22のときが一番病気になりにくいということが分
かっています。この22より多くてもいけないし、少なくても病
気になりやすいということなんです。ですから今まで脊損の患者
さんに対してでも、BMI=22を目安にしていたのです。
BMI=体重(㎏)/身長の二乗 (m)
ところが、脊損の方は、一般の方の2倍の頻度で耐糖能異常があったので、じゃあ、体と身長の関係
はどうなのかということを調べ
ました。すると、73%の人が標
準体重でむしろ痩せの傾向があ
ったんですね(図8)。
これはどういう事かというと、
足を使えないために足の筋量が
非常に衰え、一方で、運動不足の
ため、お腹に脂肪がたまってくる。
こういう状況があるため、一般の
人の標準体重は役に立たないん
ではないかというふうに考えて
います。例えば、脊損の方ではB
MIが22以下の人でも、インス
リン抵抗性のある人が多く見つ
かりましたので、22では決して
安心はできないということなの
です。
この図(図9)は脊損の方のB
MIと内臓脂肪の関係を表した
グラフです。
縦軸は内臓脂肪で、横軸はBMIです。内臓脂肪はお腹のCTをとりまして、内臓脂肪がどれくらい
あるかということを測ったのですが、通常だったらBMIが22より下だったら、内臓脂肪は多くはな
いのです。内臓脂肪の正常値はこの 面積が 100㎝2以下が正常値でございます。内臓脂肪が少な
くて、健康的というのは、この内臓脂肪面積が 100㎝2以下です。 ところが、脊損の方を測りま
すと、BMIが22以下なのに、内臓脂肪面積が 100以上の方がいっぱいいらっしゃるんです。B
MIが22で内臓脂肪面積が 300㎝2近い、あるいは 300を越えている人もいるんです。です
から、脊損の方のBMIの正常値を、この22で区切ると、ダメなのです。足の筋肉量が落ちていて、
それだけで体重が減少しているわけですから、脊損の方のBMIは下方修正しなきゃいけないのです。
私が提言したいのは、脊損の人の理想的なBMI値は、19前後と考えなければいけないということで
す。
このスライド(図10)は、インスリン抵抗性がある人と、無い人の脂肪面積の関係図ですが、イン
スリン抵抗性が無い人(注:正常の反応の人)は、内
臓に脂肪がたまっていないのです。ところが、インス
リン抵抗性がある人(注:病的な人)は、やはり内臓
にいっぱい脂肪たまっている人が多いことが判明し
まして、このことから、内臓脂肪とBMIという関係
はある程度相関するというふうに考えています。
重ねて言いますと、脊損の方の耐糖能障害は約8
0%に存在し、一般人での2倍です。ですから、2倍
の耐糖能障害を持つということは、心筋梗塞とか狭心
症になる可能性も2倍と考えなければならないとい
うことです。それだけ注意が必要だということなので
す。
脊損の患者さんで耐糖能障害が多いわけは、体がご
不自由なために運動習慣が少ないことにあります。一
般の方だと水泳したり、あるいは家の近くを1時間ぐ
らい歩いたりすることは比較的簡単にできますが、脊
損の方には、なかなかそれができない。もちろん、車いすの競技もありますが、やっておられるのは、
ごく一部の人だけで、実際には、なかなかできにくいのが現実だろうと思います。脊損の方で、運動や
っている人は一所懸命やっているんでしょうが、やらない人は全然やらないというのが現状ではないで
しょうか。それから、運動時には、おもに上肢の筋肉を使い、足の筋肉は麻痺しているため、使いませ
んから、使用運動筋肉量が少ない。そのため、筋肉組織自体がインスリンに反応しなくなり、それがイ
ンスリン抵抗性をあげているという悪循環になり、それらの結果、脊損の方には耐糖能障害が多いとい
うことになるのだと考えられます。
■高脂血症について
高脂血症の話をしますが、高脂血症とは、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、高LDL血症等
を言います。悪玉のコレステロールはLDLといいますので、よく覚えてください。このLDLが今一
番悪いのです。参考ですけれども、HDL、これは善玉のコレステロールで、これは高いほど良いので
す。ですから、HDLは低い人が悪いのです。
さて、高脂血症が心臓や脳に悪さをする証拠は、いろいろありますが、一番有名なフラミンガム・ス
タディを示します。この図(図11)は、総コレステロールが高くなるにつれ、非常に、狭心症や、心
筋梗塞合併率が、右肩上がりに上がっていきます。このことから、総コレステロールは
200mg
/dl 以下にしておいたほうが安全だと言えます。
次に、危険因子の重なり(注:
高コレステロール血症や耐糖能
障害や高血圧や喫煙や心肥大な
どの危険因子の重なり)と心臓
病ということをお話します。先
程も言いましたが、総コレステ
ロール値がいちばん左は185
mg/dlの群、一番右は 3
30 mg/dlの群を示しま
すが、総コレステロール値が上
がれば狭心症、心筋梗塞の発症
率が上がっています。また、耐
糖能障害のある人と無い人では、
無い人よりもある人の方が、狭
心症や心筋梗塞の発症率が高い
わけです。血圧の問題、これは
収縮期血圧が 105mmHg
の人と 195mmHgの人で
すけれども、 105mmHg
の人の方が狭心症や心筋梗塞の
発症率が全然低い。喫煙者と非
喫煙者では、やはり喫煙者の方
が狭心症や心筋梗塞の発症率が
高いわけです。それから心臓肥
大、これは高血圧の結果が多い
のですが、やはり心臓肥大のあ
る人は、虚血性心疾患を起こしやすいことが判明しました。
また、悪玉コレステロールであるLDLとは何かということですが、これは直接の動脈硬化の原因物
質であると考えられています。少し難しい話なのですが、これが血中に多いと、高血圧や精神的ストレ
スにより血管の内膜(注:血管の一番内側の膜)に傷害が起こった時に、このLDLが容易に内膜を通
過し内膜層(注:血管の内膜と中膜の間)に入り込みます。入ったLDLは酸化され、マクロファージ
という細胞に食われサイトカインという物質を放出します。このサイトカインは平滑筋細胞を中膜より
引き寄せ、マクロファージと平滑筋細胞は最終的にはともに泡沫化され、粥状硬化という動脈硬化が完
成すると考えられています。ですから、動脈硬化の進展にこのLDLは不可欠なのです。この値は、総
コレステロール値と中性脂肪値とHDLより数式で出せますが、今は直接、血液から計れます。この値
(LDL)を140mg/dl以下にすることが大切なのです。
では、これらのコレステロール値や中性脂肪を下げるにはどうすれば良いのでしょう。やはり、食事
療法と運動療法が一番大切です。
食事療法は、脂肪や甘いものを制限することが基本です。四つ足動物の肉、特に霜降りの牛肉はいけ
ません。二つ足でも、鶏肉の皮はいけません。肉ならば、豚肉のヒレや鶏肉のささみにします。また、
卵や牛乳も他の栄養素の面からも必要ですが、せいぜい一日、卵一個、牛乳一本にとどめます。
それから、運動療法、これは脊損の方には難しいのですが、なるべく、移動には車いすをこいだり散
歩したりして運動に心がけてください。いっぺんに運動しなくても、一日に短時間でもよいから何回も
運動あるいは車いすで移動することが大切だと思います。それでも、ダメな場合には、薬物療法で値を
下げます。今は、副作用も比較的少なく、効率よく値を下げられる薬があります。
一方、HDLはLDLとは反対に、善玉のコレステロールです。このHDLは、血管内膜層にあるL
DLを引き抜き、肝臓に送り返す作用があるため善玉と呼ばれています。証拠としては、世界には10
0歳以上の人が多い長寿村がいくつかあるのですが、共通点はこのHDL値が100mg/dl以上と
高いということです。動脈硬化が少ないので、皆、長生きしているというわけです。このHDLですが、
どのようにすれば値を上げられるかということですが、もちろんある程度、遺伝的な体質で決まってい
る反面、努力で少しでも上げる方法があります。それは、運動と禁煙と薬物療法です。禁煙は強い意志
は必要ですし、運動も動機付けや強い意志が必要です。薬物療法に関しては、現在は本命的な薬はまだ
ありませんが、平成11年あたりから、ぼちぼち登場してくる予定ですので楽しみです。ちなみに、脊
損の方は正常値(注:男は35mg/dl以上、女は40mg/dl以上)以下の低HDL血症の方が
多いので、気をつけなければいけません。
■内臓肥満について
今度は、内臓(脂肪蓄積)肥満についてですが、内臓肥満とは皮下組織ではなく内臓に脂肪が蓄積す
る状態をいいます(写真5)。
一般には皮下(脂肪蓄積)肥満は体型から洋梨型肥満体型を示し、内臓肥満はリンゴ型肥満体型を示
します。体型でおおよそ分かるわけですが、正確にはお腹のCTで、脂肪量を測り決めます。すなわち、
CTで臍の部分の断層の脂肪面積を、皮下部と内臓部で計測します。内臓部の脂肪は大腸や小腸などの
腸管周囲の脂肪を測ります。前にも述べましたが、内臓脂肪面積が100㎝2以上、あるいは内臓脂肪
面積/皮下脂肪面積≧0.4が内臓(脂肪蓄積)肥満とされています。
それで、なぜ、内臓(脂肪蓄積)肥満は良くないのか。それは、門脈という胃や腸から吸収した栄養
分を肝臓に運ぶ管を介し、内臓脂肪から直接、肝臓に流入する遊離脂肪酸が増えるため、インスリンの
作用を妨害し、インスリン抵抗性を増強するからだとされています。それに引き換え、皮下(脂肪蓄積)
肥満は、そういう作用がないため、インスリン抵抗性には関係なく、ただ美容的な問題にとどまるので
す。ちなみに、脊損の方は、内臓(脂肪蓄積)肥満の率が、一般に比べると高率であり、ここにも運動
不足の影響が出ており注意しなければいけないのです。
■高血圧について
次に血圧の問題について話させていただきます。
高血圧は狭心症や心筋梗塞や脳卒中などの基になる病気であり、脊損の方々ではこの高血圧は一般の
人と同じ病態あるいは頻度か否かは問題となるところです。
実は数年前、約500人の脊損の方の血圧を調べましたところ、完全脊損の方ではTh6以下の麻痺
では、高血圧は一般とほぼ同程度か、やや多い頻度でしたが、Th5以上の高位胸髄損傷あるいは頸損
の方では、全く高血圧の人がいないことが、判明しました(図12)。もちろん、自律神経過反射など
による一時的な昇圧や腎不全などのための高血圧はあり
ましたが、我々がいわゆる高血圧症と呼んでいる、本態
性高血圧症はなかったのです。ですから、Th5までの
完全脊損の方で、高血圧があれば、自律神経過反射など
による一時的な昇圧か腎不全などのための二次性高血圧
と考えなければいけないのです。一時的な昇圧は、普段
は正常血圧なのに、膀胱に尿が貯まりすぎたり、便が直
腸を刺激している時のみに昇圧することで判断できます。
一時的な昇圧でなく、持続性の高血圧がTh5までの完
全脊損の方にあれば、慢性腎不全を疑い、腎機能を一度、
調べてみる必要性があるかと思います。
一方、Th5までの脊損の方でも、不全損傷であれば、
少ないですが高血圧症は存在しますので気をつけねばな
りません。これは、交感神経が完全には遮断されていな
いため、高血圧症が発症してくるものと考えられます。
では、高血圧症がなぜいけないのでしょうか。それは、少し前にも触れましたが、疫学的にも狭心症、
心筋梗塞の虚血性心疾患や心不全や脳血管障害(注:脳出血や脳梗塞)や腎不全の原因として最大のリ
スクファクターであるからです。先程の、ヨーロッパのフラミンガム・スタディー(注:高血圧や高脂
血症と心臓病や脳血管障害による死亡率等を調べた疫学調査)でも血圧が低いほど、心臓病や脳血管障
害を起こさず長生きすると申し上げましたが、日本でも九州の久山町調査でも同様の報告がなされてお
り、血圧に関しては年齢に関係なく、低いほど良いようです。もちろん、上の血圧(注:収縮期血圧)
は100mmHg以上はないと困りますが。
そうすると、適正な血圧はどの位に考えたら良いのでしょうか。残念ながら、まだ絶対的な指針はで
てないのです。いつ測ったら良いのかという問題にしても、この時間ならば、これだけの血圧がいいっ
ていう基準はありません。ただ、いつ計っても上の血圧が 130mmHg以下、いつ計っても拡張血
圧が80mmHg以下の人、この両方を満たす人は、まず血圧に関する限り、心配ないと思います。普
段は、上の血圧が 130mmHg以下かつ下の血圧が80mmHg以下の人が病院にきて上の血圧が
180mmHgで下の血圧が100mmHgになったとしても、余り心配ないのです。持続的に高い血
圧が問題なのです。
しかし、基本的に血圧は低い方がいいのです。くどいのですが、それは脳血管障害や心臓病の発症率、
死亡率が下がるからです。また腎臓病や糖尿病の合併症の悪化を防げるからです。だから血圧を下げな
ければいけないのです(図13)。
しかし、だからといって、血圧の高い人を急
に下げちゃいけない。めまい、ふらつきを起こ
すようでは体の調子が悪くなるからいけない
のです。高い血圧に体が慣れているのです。特
に長い間、血圧が高い人、あるいは血圧コント
ロールが不良の人は急に下げちゃいけない。3
カ月から4カ月の時間を費やしてゆっくりと
下げていかなければいけない、これは大事なこ
とです。
■がんについて
がんの話をしますが、がんというのは脊損の
方では、以前は、褥瘡からの皮膚がんが多かっ
た。最近、目立つのは慢性C型肝炎からくる肝
臓がんです。脊損の方は、昔、受傷のときや褥
瘡治療時に輸血なさった方が多くて、このとき
C型肝炎になった人が非常に多いのです。昭和62年以降はC型肝炎ウィルスの診断方法が確立され、
輸血血液の中には、ウィルスの混入はほぼ防げていますが、昔は分からなかった。C型肝炎が30年、
40年経過しますと、肝硬変や肝臓がんになります。これは心配ですので、ご自分がC型肝炎かそうじ
ゃないか、まだ分かっていない人は是非、一度はC型肝炎の検査を受けてくだい。それで、C型肝炎と
判明している人は採血や肝臓CTやエコーなどの定期的なフォローをしていただきたいと思います。が
んは、早期発見が重要で、採血やエコーとCTを定期的に組み合わせてやっていれば、大体、直径1セ
ンチ、2センチぐらいで見つけることが可能です。3カ月おきにやっていれば、3センチ以下でがんを
見つけられ、手術可能ですし、今は手術をせずとも血管の治療(注:TAEといい、がん細胞を栄養と
している血管をカテーテル操作で詰め、がんを兵糧責めで壊死させる方法)で治すことでも、かなり治
療成績が良いようですので、C型肝炎の方は必ず定期的な検査を受けていただきたいと思います。
肝臓がん以外のがん、例えば、肺がん、胃がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、子宮がん、卵巣が
んは一般の方の、罹病率と変わらないと思います。これらは、一般人と同様、人間ドックや会社検診で
早期発見に努めなければいけません。ただ、皆さま方の中には、一般の人に混じって検診を受けること
に抵抗感を持つ人がおられ、がん健診に対して足が遠のいている人がおられると思います。そういう観
点からは、神奈川リハビリで、脊損の方にマッチしたがん健診をやれる事ができたらと考えています。
■腎不全について
次は腎不全です。これは減少傾向にあるものの、未だ死亡原因として、主たるものであることは事実
です。尿路管理は進歩しましたが、一方で高齢化と栄養過多で糖尿病が増えておりますので、糖尿病で
は腎不全になる頻度が高いことより、再び腎不全が増加する懸念があります。腎不全になれば透析をや
れば死ぬことはないと考えられますが、脊損の方が腎不全で死亡に至る背景としましては、既存の透析
施設では、脊損患者さんの診療に熟知した整形外科医がいないことが挙げられます。腎不全の管理はう
まくいっても、褥瘡だとか、その他の管理がうまくいかなくて、透析に入ると早めに亡くなられる方が
多いことにつながっていると考えられます。
■消化器系疾患について
消化器系では、消化器の運動機能低下と排便障害、痔の悪化等があります。消化器の運動機能低下の
ため、菌の排出が遅れ、MRSA腸炎が起こりやすかったり、あるいは排便障害のため大腸がんが増加
したりする懸念があります。
【まとめ】
もうそろそろ時間も近づいてきましたので、終わりにしますが、脊損の方を拝見している我々医療従
事者が考えなければいけないことは、やはり脊損の方を診ていく上で、軸となる医療機関、例えば神奈
川リハビリ病院などを明確にし、すべての医療はその軸の医療機関だけではできませんので、地域医療
とうまくネットワークを組むことだと思います。軸の医療機関が、地域の病院ではどこまでできる、こ
こまではできないというのを把握し、うまく患者さんが地域の病院に受診できるように誘導してゆく。
地域の病院でできない医療は、もちろん軸となる医療機関で行うが、将来的には地域の病院でできるこ
とを増やしていく。こういうセンターシステムを構築しなければならないと考えています。
それから、さっきも少し述べましたが、欧米に比べ、脊損患者さんの疾病に対する全国的な疫学調査
が不足していると感じます。厚生省の方でも、はっきりした数字はとらえていないと思います。しかし、
そういう公的な調査を待っていては、いつになるのか分かりません。できる病院だけでも、とにかくや
り始め、やがて他の病院が追従して、学会でも取りあげるという形態になればいいのではと思います。
そして、そこで得られた情報をちゃんと次の世代の患者さんにフィードバックしていくのです。
それから、脊損の方々の健康維持増進の対策と指導づくり、これが少し難しいことなのです。うちの
神奈川リハビリ病院でもこれだけの脊損の方を診ているのだから、人間ドックをやったらどうかと思っ
ています。一般の病院では、脊損の方の血圧の特殊性とか内臓脂肪の問題、糖の代謝の特徴的な問題が
よく分かっていないので、人間ドックは難しいのではないかと思います。しかし、各都道府県に一カ所
ぐらいは、脊損の方の軸となる医療機関をつくっていただいて、そこで人間ドックをやればいいと私は
考えています。
一方、患者さんに考えていただきたいことは、なるべく食事の内容や量、運動習慣を考慮し、標準体
重をなるべくBMIで言いますと19前後にしていただきたいということです。糖尿病の家族歴を持っ
てる方でBMIが19以上の人は年に1回ぐらいは耐糖能に異常はないか、空腹で内科外来に来ていた
だき砂糖水を飲んで、30分おきに2∼3時間、血糖を測定する検査を一年に一回位やっていただきた
いと思います。
不全麻痺の方とTh6より下の脊損の方は血圧測定を、3カ月に1回ぐらいは家庭内測定でもいいで
すから、やっていただきたいと思います。そして、年に1∼2回はコレステロールとか、中性脂肪とか、
善玉コレステロールとかの脂質検査や心電図検査をしていただきたいと思います。
動脈硬化の危険因子を多く持つ方、タバコを吸っているとか、耐糖能異常があるとか、血圧が高い方
は、年に1回は心臓チェックという意味で、運動あるいは薬物負荷心電図とか心筋シンチ検査を行って
いただきたいと思います。
心臓の負荷検査がなぜ必要かというと、脊損の方は狭心症になっても余り痛みを感じない方が多いこ
と、あっても軽く考えてしまうということで、知らない間に重症になってしまう可能性があるからです。
この点から、やはり年に1回位は心臓の負荷検査もやっていただきたいと思っております。
それでは大変、長い時間になってしまいましたが、この辺で私の話を終わりたいと思います。10年
以上の間、私が今いる病院で脊損の方を診させていただいて、調べたこと、感じたこと、文献で述べら
れていることを中心にお話をさせていただきました。今日、私が話しましたことが皆さんの健康の維持
と増進に少しでも役立っていただければありがたいと思います。
長い間、ご静聴ありがとうございました。
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