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月刊人事マネジメントで連載(08年8月~ 09 年 9 月まで

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月刊人事マネジメントで連載(08年8月~ 09 年 9 月まで
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
これは人材マネジメント指標に関して、月刊人事マネジメントで連載(08 年 8 月~
09 年 9 月まで 14 回連載)したものである。
要員設定やナレッジワーカー/ホワイトカラーの生産性に関しては、現在に至るま
で継続的にお問い合わせやご質問を頂戴しております。これまで 20 年以上にわた
り、ホワイトカラーの生産性や要員設定などに取り組んできたエッセンスを、つたな
いものですが、まとめて紹介させていただきます。些少でもご参考になれば幸い
です。
(尚、文書中に出てきます、エクセル・ダウンロード・サービスは、サイトの都合で現在は、ご
利用いただけませんのでご了承ください。ご希望の方は別途ご連絡ください。
[email protected] )
人材マネジメント指標(Human
執筆
Resoruces Metrics)
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社代表取締役
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
宮川雅明
プロセス分析から無駄を可視化させる方法
労働生産性を考える
HCROI(Human Capital Return of Investment)
教育投資の指標~組織 ROI の測定~
教育の成果指標をどこに求めるのか
個人単位・業務単位の教育 ROI 算出法
業務単位で教育コストと成果を見る
下地的能力の評価モデル
ホワイトカラーの生産性測定
第 10 回 組織の T 型業務®比率を改善の手がかりにする
第 11 回 人材プールのシミュレーション
第 12 回 ビジネス・リーダー輩出のチェックリスト
第 13 回 要員設定6つのアプローチ
第 14 回 ホワイトカラーの要員設定
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社
http://www.kpci.jp/
©KPCI 宮川雅明
-1-
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 Human Resources Metrics 人材に関するマネジメント指標
1回目「品質コストから見るプロセス別要員」
Katana Performance Consulting Inc 代表取締役 宮川雅明
経営マネジメントにおいて、人材に関する指標で代表的なものといえば、一人当た
り売上高、労働生産性(労働装備率×設備生産性)、直間比率(労務費対人件費)、
年齢別構成比などであろう。しかし、素朴に最も重要な指標は、「人員」である。
日本の生産性の低さは主にホワイトカラーの生産性であることは周知である。そこ
で初回は、ホワイトカラーの無駄を発見し、適正要員設定の可能性を探ることにす
る。今回取り上げる無駄は、品質コストである。品質コストというのは、簡単に言えば
手戻りである。
例えば話である。日曜日にゴルフの予定が入っている。出張先から直接行くことに
なるので、事前にゴルフ場隣接のホテルにゴルフバッグを宅配しておいた。土曜日
夜にホテルに着いたらバッグが届いていなかった。そこで宅配会社に確認したら中
継地点にあることがわかった。原因はともかく、すぐにもってきてもらいた。日曜日
は朝からプレーである。宅配会社はそれから1時間後にホテルに届けてくれた。約束
した品質を守るために別途発生したコストを品質コストという。このケースの場合、1
時間の工数、ガソリン代が品質コストになる。
品質コストは、もともとは品質保持コストという概念であり、起源はクオリティー・マ
ネジメントである。1978年にフィリップB.クリスビーによって提唱された概念である。
私が品質コストのプロジェクトに取り組んだのは80年代半ばに物流会社で取り組ん
だのが、日本で最初の事例と記憶している。
品質コストの問題は、何をもって品質コストと定義するかである。
下記は製造業おける営業部門のモデル事例である。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
大分類
中分類
小分類
コード
Σ
時間
3 構想設計・
設計変更手配
4 図面作成
5 見積作成
7 サンプル試作
・実験
1 仕様確認
1 移動
2 客先訪問
3 内部打ち合わせ
2 構想検討
1 技術資料・図面の検索・調査
8 CEミーティング 1 資料作成
4 図面管理
3 図面検索
1 原価確認
2 内部打合せ
3 原価見積
1 サンプル手配
1 サンプル伝票発行
4 納期調整
5 サンプル品質チェック
9 サンプル納品(客先)
4 価格処理
1 試作売価見積
2 試作売価見積書作成
4 未単価処理
5 量産モニター見積書作成
311
312
313
321
381
443
512
513
711
714
715
719
1141
1142
1144
1145
小計
24
21
24
3
0
2
4
4
8
12
3
0
3
13
2
35
%
営業部
本来 非本来 補完
4
4
1
1
9.89
8.65
9.89
1.24
0.00
0.82
1.65 1.65 3.30 4.94 1.24
0.00
1.24
5.36
0.82
14.42
158 65.09
非本来業務時間
1
1
1
4
4
2
2
9
2
12 48
非本来業務数
ビジネスプロセス全体を描くと、本来、営業が行うべきもの、設計が行うべきもの、
購買が行うべきもの、相互に支援しながら行うものがある。上記の業務プロセスで
は、構想設計の仕様確認で客先打ち合わせを行うというのは、組織役割上、営業の
本来業務ではない、とこの企業では定義している。21時間を要している。3-1-2の
業務である。
ここでは、品質コストの定義を組織使命から導いているのが特徴である。
下図は設計部門のモデル事例である。1週間の中で測定したもので、先の営業の事
例より更に具体的に追及するものである。単位は分である。ここでのポイントは、計
画・非計画という概念を加えている。モノつくりには基本的なルールがある。飛び込
みは生産計画を乱し、ミスを導き、ロスを生む可能性がある。3人の設計者の1週間
のデータを見ると、宇野さんは、非本来/非計画で14.9%の時間を費やしている。
何が非本来/非計画なのかは、業務の記録を見れば推察できる。そして改善し、再
度測定する。
システム開発ではバグはつき物である。2回までは想定範囲としても3回目は、許
容できない基本的なミスがあると基準を設定すれば、3回目の修正時間は品質コ
ストということになる。時間に単価を掛ければ算定できる。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
日付
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月3日
2月4日
2月4日
2月4日
2月4日
2月4日
2月4日
2月4日
計画・非 本来・非コード
業務名
時間
非計画 非本来
生産計画表チェック
30
非計画 非本来
AA○○○在庫調査
30
非計画 非本来
xx-111問い合わせ対応
30
非計画 本来
○○装置取付台重り取付台
75
計画
本来
シャフト、バルプスプリング見積依頼
45
昼休み
60
計画
非本来
モニター用○○テスト
120
非計画 非本来
AA-11問い合わせ対応
60
非計画 本来
新製品技術資料チェック
60
計画
本来
○○隙間対策再検討及び寸法チェック 150
計画
本来
○○取付△△装置・・試作図面作成
90
計画
本来
△△図面作成
30
非計画 本来
○○隙間対策試作問い合わせ
30
非計画 本来
・・・点灯装置
30
非計画 本来
○△隙間対策試作品評価
60
非計画 非本来
○○タイプ射出◆◆問い合わせ対応
60
非計画 本来
図面変更・図面作成
30
昼休み
60
計画
本来
以下略
120
海部さん
森さん
宇野さん
計画・非本来
計画・本来
非計画・非本来
非計画・本来
375 3.9% 計画・非本来
4485 47.0% 計画・本来
1290 13.5% 非計画・非本来
3390 35.5% 非計画・本来
810
3645
1230
2715
9.6% 計画・非本来
43.4% 計画・本来
14.6% 非計画・非本来
32.3% 非計画・本来
1080
4590
1380
2160
合計(分)
9540
8400
合計(分)
9240
合計(分)
11.7%
49.7%
14.9%
23.4%
品質コストはなかなか目に見えない。一生懸命という行動の中に埋もれている。残
業で処理しているかもしれない。品質コストによる要員のマネジメントのポイントは、
「プロセス」と「定義」にある。プロセスで見ることによって、原因を特定化し、見える
状態にさせ、あるべき工数をより具体的にすることにある。ホワイトカラーの生産性
はもっと知的創造的なものにあると指摘する方もいると思うが、標準的な仕事を
きちんとこなせない、マネジメントできない状態において創造的な仕事は成しえな
い。定義を明確にすることで、何をマネジメントすべきかを、目標工数を意識しなが
ら、業務に着手することに意味がある。
次のサイトにアクセスすると、業務プロセスと数値を入れてシミュレーションできる
サンプルエクセル表がある。プロセス別の目標要員と目標改善工数をシミュレーシ
ョンしてみていただきたい。
http://www.kpci.jp/publish/cat58/
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社
©KPCI 宮川雅明
http://www.kpci.jp/
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 Human Resources Metrics 人材に関するマネジメント指標
2回目「労働生産性」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社 代表取締役 宮川雅明
1. 機械化やシステム化をしたら労働生産性はあがるのだろうか?
先ずは労働生産性という概念から理解したい。一言で言えば、一人ひとりの付加価
値(額)である。付加価値とは企業が別途生み出した価値のことで後述する。
単純に考えても、一人ひとり付加価値は大きい方がいいというのはわかる。
付加価値
労働生産性=
従業員数
固定資産
=
従業員数
労働装備率
付加価値
×
固定資産
設備生産性
さて、機械化やシステムを導入すればどうなるかであるが、労働生産性に式に固定
資産を図のように加えることで、労働装備率と設備装備率に分解することができ
る。一般的には固定資産で計算するモデルが多いが、工場においてはFAの重要部
分にシステムがあり、それは資産である。営業情報システムも資産である。システム
は業務遂行する上で恒常的手段として、業務インフラとして使用されている。また、
その投資額も大きい。よって、有形固定資産のみに限定しないこととした。
500 億円 労働生産性⇒
1
500 人
400 億円 労働生産性⇒
500 人
0.8
500 億円 労働生産性⇒ 1.3
400 人
労働生産性の3つの数値を示したが、時系列で変化を見ることが大切である。さて、
最初の問い「機械化やシステム化をしたら労働生産性はあがるのだろうか?」であ
るが労働装備率を高めれば、一人ひとりは武装化される。一方で、設備生産性は下
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
がることになる。つまり、単に機械化やシステム化をしても労働生産性はあがらな
いということである。ではどうするか。投資に応じた人員にするということ。もう一
つは付加価値を高める、つまり利益をあげるということになる。前者は設備投資に
応じた成果を人員という形できちんと成果を収穫するということである。インプッ
トの話しである。合理化投資であれば人員もそれに応じて少なくなっているはすで
ある。ERPといったホワイトカラー生産性に繋がるシステムであれば間接人員は少
なくなっているはずである。
後者はアウトプット向上の話である。新商品のラインであれば、その規設備投資は
売上向上に繋がるはずである。販売やマーケティングに関するシステムであって
も同様で、その成果を検証する仕組みを持って投資意思決定をしないといけない。
2. 付加価値とは何か
付加価値/売上高といった方がよい。付加価値が誰に「分配」されたかを見るもの
である。
(付加価値の計算)
(数値はイメージ)
付加価値とは企業活動
において企業内に新し
い価値をどれだけ生み
出したか。どれだけ少な
い資源でどれだけ多く
の付加価値を生んだの
かを示す。
売上高
100
売上原価
85
売上総利益
15
販売費一般管理費
10
営業利益
5
付加価値率=付加価値
額÷売上高(どれだけ
付加価値の高い製品を
手がけているか)
営業外収益
1
営業外費用
2
経常利益
4
利益分配率=利益÷付
加価値(収益の余力が
わかる)
特別利益
0.5
特別損失
1
労働分配率=(人件費
+労務費)÷付加価値
(賃上げ余力、合理化の
程度がわかる)
©KPCI 宮川雅明
税引前当期純利益
3.5
法人税及び住民税
2
当期純利益
1.5
人件費
金融費用
減価償却費
賃借料
租税公課
法人税等充当額
当期利益
付加価値合計
労働生産率=付加価値
÷従業員数(一人当たり
付加価値、労働集約度
がわかる)
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
先述したように付加価値とは企業が別途生み出した、つまり支払ったものである。
金利や賃借料は金融会社や不動産会社などに「分配」をしたのである。人件費は人
に「分配」したという意味である。税金は社会に「分配」したものである。
売上が少なければ分配することができず、金利も給与も払えない。現状を維持す
るのなら、別途調達をするしかないが、これを繰り返せば、経営は行き詰る。
尚、付加価値の計算の方法は日本銀行や経済産業省、中小企業庁などで提示され
ているのでネットなどで確認していただきたい。
3. 労働分配率
人件費(間接系)、労務費(売上原価の中、工場・直接系)、役員給与の3つが含まれ
る。付加価値がみえると労働分配率が見えてくる。表のモデルをみると、労働分配
率が0.5であることがわかる。この労働分配率が高いということは給与のウェート
が高いということを意味し、賃上げの余力がないということを意味する。
この労働分配率は業種によって大きくことなる。私のようなコンサルティング会社
では設備は殆ど持っていないので労働分配率は高くなる。賃借料がべらぼうに高
いオフィスに入っていれば多少は低くなるだろうが、その分をコンサルティングフィ
ーにオンされてはクライアントも困るだろう。
減価償却費が高くなれば労働分配率が低くなる。つまり設備投資をすれば低くな
るということである。設備提供者におおく「分配」されていることになる。重要なこ
とは何故そのような結果になったのかという原因を把握することである。
人件費等
50
金融費用
10
減価償却費
20
賃借料
5
租税公課
5
法人税等充当額
5
当期利益
5
付加価値合計
100
弊社の下記サイトから、労働分配率などのシミュレーションができる簡単なエクセ
ル表がダウンロードできます。
http://www.kpci.jp/publish/cat58/
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 Human Resources Metrics 人材に関するマネジメント指標
3 回目「HCROI(Human Capital Return of Investment)」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社 代表取締役 宮川雅明
1.人的資本の価値循環
書籍「The ROI of Human Capital」(AMACOM)の中に、Peter Drucker が「How to
Measure Human Capital’s Contribution to Enterprise Goals」を寄稿している。意
外と知られていないので今回はそれを紹介する。
人的資本の価値循環(Human Capital value circle)
企業のゴール
1.財務
・利益 ・一株当利益(EPS)
・EVA(経済付加価値)
<
<
事業のゴール
<
事業のゴール
2.ポジション
・マーケットシェア
1.サービス
・顧客満足度
1.サービス
・顧客満足度
3.評判
・サプライヤーや企業主からの選択
2.品質
・6シグマ
2.品質
・6シグマ
4.ブランド
・認知
3.生産性
・単位コスト
<
3.生産性
・単位コスト
人的資本のマネジメント
1.雇用
4.維持
7.弱点
2.賃金
5.時間
8.活性
3.教育
6.業務量
<
<
<
<
(How to Measure Human Capital’s Contribution to Enterprise Goals (Peter Drucker )を参考に宮川雅明が要約)
ドラッカーの主張で重要なことは、Human Capital(人的資本)のマネジメントは戦略
とリンケージしているということである。指標そのものが重要なのではなく、個々
の企業の戦略との関係性が前提となっている。ドラッカーのモデルでは、企業(事業
の集合体)のゴールのモデルとして、財務では利益、EPS、EVA(経済的付加価値)
の3つを揚げている。他の3つは、ポジション、評判、ブランドである。つまり市場との
関係性を前提としている。人材は企業価値を向上するためのものであることを明
示している。活性化や直間比率といった内的マネジメントの具体論ではなく、前提
として市場価値をとらえていることに注視すべきである。
Human Capital(人的資本)の価値を算定する前提として、ドラッカーはFTEという概
念を最初に述べている。Full-time equivalent 「フルタイムとみなした場合の人員」
©KPCI 宮川雅明
-8-
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
である。単に頭数だけで考えてはいけないということである。
FTE = Full-time equivalent 「フルタイムとみなした場合の人員」
*equivalentとは同等、相当物という意
2.人的資本に関する指標モデル
Human Capital Value Added(人的資本が生み出した付加価値)
HCVA =
Revenue – ( Expenses – Pay and Benefits)
FTEs
*Pay (給与)
*Benefits(保険及び年金の給付額)
HCVAとは給与(総額人件費といってもよい)を除いた収益に対する一人ひとりの
金額(価値)をいう。
HCROIとは人件費を除いた収益に対する人件費の割合をいう。
Human Capital Return on Investment
HCROI =
(投下人的資本利益率)
Revenue – ( Expenses – Pay and Benefits)
Pay(給料)and Benefits(保険及び年金の給付額)
HEVAは、一人ひとりのEVAである。企業の価値は、調達コスト(市場からの required
return 要求コスト)を差し引いた絶対額が真の経済価値という概念である。グロー
バルスタンダードである。
Human Economic Value Added (一人当たり経済付加価値)
HEVA =
Net operating profit after tax – Cost of capital
FTEs
*Net operating profit after tax =EBIT(経常利益+支払利息)-法人税等
*Cost of capital は資本コスト。WACC (Weighted Average Cost of Capital)を使用。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
3.Human Capital(人的資本)のシミュレーション
(単位;千円)
モデル1
収益
費用
給与、保険等
臨時雇用費
欠勤コスト
離職コスト
従業員数
臨時雇用者数
計
\100,000
\80,000
\25,000
\3,500
\200
\2,000
500
100
HCCF
\25,000
\3,500
\200
\2,000
\30,700
HCVA
HCROI
\100,000 \100,000
\80,000 \80,000
\25,000 \25,000
500
90
\1.80
HCFFとは人的資本に関わるコスト構成要素のことである。
HCCF(Human Capital Cost Factor)
給与+年金など+臨時雇用費+欠勤などのコスト+離職に伴うコスト)
モデル1の数値をベースにモデル2とモデル3をシミュレーションしてみた。このよう
に時系列で人的資本の推移を目標数値を持ってマネジメントしていくことが肝要
である。
モデル1に対して費用10%削減、給与10%アップ
モデル2
HCCF
HCVA
HCROI
収益
\100,000 \100,000 \100,000
費用
\73,000 \73,000 \73,000
給与、保険等
\27,500
\27,500
\27,500
\27,500
臨時雇用費
\3,500
\3,500 欠勤コスト
\200
\200 離職コスト
\2,000
\2,000 従業員数
500 500
臨時雇用者数
100 計
\33,200
109
\1.98
©KPCI 宮川雅明
- 10 -
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
モデル1に対して従業員数と給与など10%削減
モデル1
HCCF
HCVA
HCROI
収益
\100,000 \100,000 \100,000
費用
\80,000 \80,000 \80,000
給与、保険等
\22,500
\22,500
\22,500
\22,500
臨時雇用費
\3,500
\3,500 欠勤コスト
\200
\200 離職コスト
\2,000
\2,000 従業員数
450 450
臨時雇用者数
100 計
\28,200
94.4
\1.89
弊社の下記サイトから、労働分配率などのシミュレーションができる簡単なエクセ
ル表がダウンロードできます。
http://www.kpci.jp/publish/cat58/
©KPCI 宮川雅明
- 11 -
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 Human Resources Metrics 人材に関するマネジメント指標
4 回目「PIに対する組織の ROI 測定能力」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社 代表取締役 宮川雅明
■ Performance improvement(パフォーマンス・インプルーブメント)
教育・研修の効果や成果をどのように評価したらよいか悩んでいる組織は多いと思
う。米国は 1982 年に失業率 12.8%を記録し、日本のマネジメントの研究を行った。
一つの答えは教育と風土である。今でも米国でエクセレントといわれている企業は、
解雇よりも教育投資に重点を置いたように思える。
教育や研修の個々の ROI(return on investment 投下資本利益率)に興味があると
思うが、人の育成や成果はその時間経過や場の機会及びその計画性<OJT さらに
はその人の運のようなものが絡み合って完璧に測定できるなどと、誰も思ってい
ない。この領域に関しては、またの機会に論じたいと思う。また、短時間で習得でき
る作業標準的なものに関する訓練であれば測定は可能であるが、その領域を議論
するものではない。
最初に Performance improvement(パフォーマンス・インプルーブメント)という用語
が欧米ト特に米国では一般的である。これは個人を対象にしたもので、訓点(トレー
ニング)や業績向上のために一つひとつのの能力を高めていくプログラムである。
業績が上がらない、目標値をクリアしない原因を探り、様々な視点から、様々な取り
組みを、組織的・システィマティックに行う活動である。
今回紹介するのは、「The bottom-line on ROI」というパフォーマンス・インプルーブ
メントの測定に関する書籍で論じられている組織の能力に関するものである。出版
は ISPI(International Society for Performance Improvement 1962 設立)である。
この団体は米国に本部を置く「ホワイトカラー生産性向上研究団体」であり、その名
の通り、パフォーマンス・インプルーブメントに特化した NPO であり、グローバル組織
として 100 カ国以上からの団体で形成されている。
金融不安から景気後退局面に入り、失業率が高まっている中で、教育投資などいっ
ていられないという雰囲気かもしれないが、冒頭申し上げた 80 年代を振り返ると、
企業間格差というのは、低成長、不況の時にこそ現われるものだと(経験的)強く
感じる。
■BCR と ROI
©KPCI 宮川雅明
- 12 -
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
Program Benefits
BCR=
Program Cost
*BCR (a benefit-cost ratio)の略
Net Program Benefits
ROI(%)=
x 100
Program Costs
*Net Prgram Benefits=Program Benefits - Program Costs
BCR とは、トレーニングやパフォーマンス・インプルーブメントによって得た利得とそ
のプログラムに要した投資コストの比較である。パフォーマンス・インプルーブメント
の世界でいう ROI とは、プログラムから得られた収益と投資コストの割合をいう。
具体的にどのように測定するかは各企業が創意工夫を行っている。教育そのもの
の効果を短期的に求めないという考えもある。
重要なことは、パフォーマンス・インプルーブメントの取り組みの中で、どのようなプ
ログラムが効果的であったのか、どのようなプロセスが効果的であったのか、最終
成果とどの程度関係するのか、成果そのものをいかに定義し測定するのか、OJT と
のバランスをどのようにとるのかなど、その業務特性や戦略方向性とリンケージし
ながら、よりシスティマティックに計画的に見えるように、つまりマネジメント可能な
状態に、つまり定量的に、プロセスを指先確認できるように、少しでも近づけていく
努力そのものに価値がある。
■ 「組織の ROI 測定能力」チェックリスト
下表は、「トレーニングや能力(業績)向上プログラム」の投資に対する「組織の ROI
測定能力」チェックリストである。評価は 5 段階である。注意していただきたいのは、
組織としての評価であり、ここのプログラムや個人の取り組みに関する評価では
ない。
©KPCI 宮川雅明
- 13 -
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
「トレーニングや能力(業績)向上プログラム」の投資に対する「組織のROI測定能力」チェックリスト
*ROIとは投下資本利益率(Return on Investmentの略)
設問1 当社は、多様なトレーニング、多様な能力(業績)向上プログラムをしっかりとした組織として有している。
設問2 当社は、上級管理職の強い関与を持って、相応規模のトレーニング及び能力(業績)向上プログラムの予算を有している。
設問3 当社は、トレーニングや能力(業績)向上に関する様々な測定を行う制度があり、また測定する文化も有している。
設問4 我々の組織は、有意義であるが厳しい変化をずっと耐え、経験している。
設問5 当社は、トレーニングや能力(業績)向上に関するプログラムの成果に対し、上級管理職からの強いプレッシャーがある。
設問6 トレーニングや能力(業績)向上の成果を測定及び評価する機能に対し、今のところ、さほどコストはかけていない。
設問7 トレーニングや能力(業績)向上プログラムにおいて過去失敗した経験を活かしている。
設問8 トレーニングや能力(業績)向上プログラムに関し、新たなプログラムや新たなリーダーがいる(有している)。
設問9 組織内のチームにおいて、トレーニングや能力(業績)向上プログラムを展開してしく中で、しっかりとしたリーダーの存在を期待している。
設問10 我々のトレーニングや能力(業績)向上プログラムがイメージしているものは素晴らしいものである。
設問11 当社は、トレーニングや能力(業績)向上プログラムの最終成果を要求し続けている。
設問12 トレーニングや能力(業績)向上プログラムを行う機能(組織)は、社内の他のリソースを扱う機能(組織)と、その取り組みや成果に対し、お互い競争をしている。
設問13 トレーニングや能力(業績)向上プログラムのプロセスは、組織戦略と強く結びついている。
設問14 トレーニングや能力(業績)向上プログラムを行う機能(組織)は、社内において、変革を導く先頭になっている。
設問15 トレーニングや能力(業績)向上プログラムに関する全体予算は増加傾向であり、また、その取り組みのプロセスの価値や成果の検証が同時に求められている。
5段階評価
5
全くその通りである。
4
だいたいそうである。
3
半分程度該当する。
2
そうはいえない。
1
全くそうではない。
合計点数から見た組織ROI能力の評価
15~30
PIのROIを評価する能力はない。
PIのROIを評価する能力は乏しい。しかし、可能性がない訳ではな
31~45
い。今こそどうしたら測定できるかを追い求めるスタート地点であ
る。
PIのROIを構築する組織能力及びスキルがある。組織内において
46~60
測定のプロセスを完成させる良い時期である。決してプレッ
シャーを感じる必要はない。
61~75
既にPIのROIを測定し評価(良かったか悪かったか、どうしたらより
良くできるか)する幅広い能力を有し、実施している。
PIとはパフォーマンス・インプルーブメント(Performance improvement)の略
15 設問あるので、平均 2 点だと 30 点になり、PI の ROI を評価する資格はない、とい
う判定になる。教育投資云々を語る前に、マネジメントの基本機能、例えば予算管
理、在庫管理、スケジュール管理、目標管理などが、先ずは運用されるよう努力をし
て欲しい(レベル)ということである(冷ややかな言い方で恐縮であるが、そういう
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
ことである)。
■ 人的生産性の追求
今後、構造的に、労働人口の減少やホワイトカラーの生産性、正規雇用、労働時間問
題などがより顕在化してくる。表面化しなくても深く存在することになる。失われた
10 年、その後のジョブレス・リカバリーを覚えているだろうか。通常であれば不景気
になると労働時間は短縮するが結果は逆行した。結果、そうやって乗り切ってきた
のも事実である。今後は、貴重な人材である一人ひとりに対し、IT投資や能力開発
プログラム、キャリアアップなど無駄のない効果的な武装化を戦略的・計画的に図
っていくことである。そのためには、先ずは組織のPI(パフォーマンス・インプルーブ
メント)に対するマネジメントの取り組み実態をセルフチェックすることからはじめ
る。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 Human Resources Metrics 人材に関するマネジメント指標
5 回目「教育の成果指標の原単位」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
■ 目的で異なる教育モデル
目的のないところにマネジメントはない。教育の目的によって、教育の方法や期待
成果も異なってくる。
当社(KPCI)は業務を2つに区分している。S型業務®と T 型業務®である。S型業務
というのは、Standard Time 型業務®の略で、標準時間型業務と呼んでいる。標準時
間型業務というのは、作業標準例えば手順やプロセスなどが標準化されているの
で、誰が処理しても標準的な時間で処理できる業務のことである。伝票処理や入
力処理、或いはデータのグラフ化などある一定の社内教育または実務経験をクリ
アしていれば、おおよその時間は読める業務である。このS型業務®というのは、組
織によってレベルが異なる。この程度の標準部品の設計であれば、30 分でできると
すれば、それはS型業務®である。人によっては 60 分であったり、30 分であったりす
ればそれは標準化されていない(原因と対策は別)といえる。よって、S型業務®と
いうのは標準化されているという意味と標準化されるべきという2つの意味を持
っている。例えば、製造業であれば、改善手法など(その組織独自の手法や用語も
含め)は全社共通言語化されるべきものであり、S型業務®といえる。
T 型業務®というのは、Target Time 型業務®の略で、目標時間型業務と呼んでいる。
成果を定義(イメージ)した後、どの程度の時間投資を要するかを設定する業務で
ある。よって、スキルによって必要とされる時間は異なる。ある人は 1 時間でできて
も、スキルの低い人は 3 時間要するかもしれないし、何時間かけてもできないかも
しれない。
「教育」といった時、S型業務®を対象とするのか T 型業務®を対象とするかで、教育
の効果測定の方法も異なってくる。
■OJTとOFF-JT
一般的には、職場内か職場外かという物理的環境で区分しているようであるが、あ
まり適した区分とはいえない。例えば、外部講師を社内の会議室に呼んで研修をす
るのをOJTとは言いがたい。社内講師が技術研修所で教えたのをOJTとは言いが
たい。OJTとは、上司が日常的な職場の中で実務を通じて都度、瞬間瞬間で指導や
注意、フィードバックを受ける類のものである。
職場から離れ、会社内でも異なるフロアーや研修棟などで学ぶものはOFF-JTと
捉えた方がよい。
また、OJTは営業、設計、購買といった機能別に固有の業務を教える場面で発揮さ
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
れる。営業部門や設計部門で共通言語として習得しておくべきスキルであっても、
その対象人数が多くとなるとOFF-JTという形態をとることもある。
通常、S型業務®でOFF-JTの場合、個別機能ではなく、機能共通の場合に行われ
るもので、新入社員教育や階層別研修などである。
E-Learning はOFF-JTのS型業務®に区分した。その理由は、E-Learning は個人で
学ぶものであり、時間・空間を上司などと共有せず、実務を行っている時間の中で
気づくものではないからである。
重要なことは、目的によって、教育の方法も区分され、評価も区分されるというこ
とである。図は、教育モデルの 4 区分を図解したものである。
教育モデル(Educational Model)
S型(Standard time型業務®)
標準化された・標準化されるべ
き業務。よって標準時間で管理
可能な業務。
それは効率性で生産性が評価さ
れる。無駄なくできているか。
T型(Target time型業務®)
目的とする成果から投資すべき
資源例えば時間を決める業務。
それは効率性ではなく、成果で
評価される。S型業務と比べ創造
性が要求される。
OJT
日常の職場及び業務
環境の中で、実務を通
じて行われるトレーニ
ングや指導の類。
■機能別固有業務の習得(帳票、
システム処理、業務処理など)。
■報連相などの基本動産。
■読み・書き・そろばんの指導。
■行動様式としての企業文化。
■徒弟的関係などによるエキス
パート育成。
■ストレッチした課題(場)への挑
戦と実践指導。
■経営課題に関し、機能横断的
動きを要するプロジェクト経験。
Off-JT
日常的職場及び業務
環境以外で行われる
と感じるトレーニング
や研修の類。
■ある程度の規模として、共通
言語化しておきたい知識や情報
(新入社員教育、コンプライアン
ス教育、新任管理者研修など)
■日常業務に間接的に寄与する
経営全般に関する知識(外部の
研修所に参加、外部講師を社内
に呼ぶ)。
■より専門性を深める知識教育。
■E-Learning
■時間・空間をより広げた戦略思
考訓練。
■職場環境と切り離した環境で
洗練すべき資質教育。
■トップマネジメントの強いコ
ミットメントのあるアクションラー
ニング。
例)ビジネス・リーダー育成
仕事及び
業務の種類
教育の方式
©Katana Performance Consulting Inc 2008
■OJT/S型業務®の期待
例えば、営業部門(営業機能)において、自社商品の知識を記憶するということは
当然であり、他社商品との比較・説明もプレゼンテーションできなければいけない。
営業マンによって、自社商品のメリットの説明は異なる、機能面の数値が異なってい
れば信用問題になる。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
設計部門が出図納期の入力をしなければ、営業部門はいつ図面ができあがる計画
がたたないので、見積もり算定のスケジュールが立たず、よって顧客への回答がタ
イムリーに行えないといった事態に陥る。よって、出図納期など業務上必要なデー
タ入力は躾とルールを持って徹底しなければならない。
レポートのまとめや数値のチェックなどは躾の類であり、その場でピシッと叩くくら
いでないと緊張感が出ない。緊張感のないものは意識が欠如しているので、研修
をやったところで知識は身についたとしても実務的効果はない。よって、実務の現
場で注意する必要がある。それがないと、上司が修正したり、作り直したりする時間
が機会損失となる。
行動様式としての企業文化というのは、無意識的に繰り返す行動習慣であり、根底
には思考習慣が存在する。例えば、一つのクレームや問題が発生した時、場当たり
的に対処し、対処療法でその場を凌いだとしても、ソリューションにはなっていない
ので、同類の問題を発生させることになる。何故、そのような問題が発生したかを
再現し、仮説を立て、対策を施し、検証するというステップを踏むという思考と行動
が習慣として定着している組織は、OJTによってのみ、風土として定着するもので
ある。改善研修のみで改善風土をつくることはできない。
OJT/S型業務®の場合、組織全体として、或いは特定の機能(部門)において、品質
と時間が計画できる状態でないといけない。よって、常に意識下にあることで、行
動に繋がることが前提となる。
■教育成果指標の原単位
教育ROIC(return on invested capital)における投資(invested capital)は、一人に
投じた教育時間コストと考えることができる。指標を設定する場合、重要なことは
原単位を設定することである。原単位とは、一人当たり、1 時間あたり、1 件あたりと
いった特定の 1 単位をベースとした指標である。
総額やマスでは生産性や改善効果を見ることができない。戦略的に総額をマネジ
メントする場合、それは異なる目的として捉えなければならない。
例えば、OJT/S型業務®の教育時間コストとして考えられるのは、①管理者による
「一人ひとり当たり実務指導時間」×管理者の時間単価、②チームまたは職場組織
として行っている改善時間の「一人当たり改善時間」×一人ひとり時間単価となる。
教育というのは人に対して行うものであるので、原単位の基本は「一人当たり」に
なる。
Return にあたる成果は、機会損失になる。仮に教育を施さなかった場合、営業マン
が顧客の前で適切な商品紹介ができず、質問にも応えられなかった場合に発生す
る損失にあたる。
システムを使ってデータを入力する場合、教育をしていなければその都度指示を
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
するといった工数が機会損失にあたるが、入力の仕方などはシステム的に対処し
ていることが通常と考えれば、不注意による入力ミスや怠慢による入力遅れによ
って発生する機会損失(リスク)を算定すべきと考える。つまり、業務によってその損
失は様々である。
さて、ここでお気づきのように、営業マンの商品知識とそのプレゼンテーションスキ
ルを教育するには、OJTとOFF-JTの双方で行うことが効果的である。商品知識
などは担当地域エリアに関わらず計画的に集中して対象者を集め、同じ教材で同じ
プログラムで教育を受けることで教育の抜け洩れを無くすことができる。また、参
加者同士でプレゼンテーションをロールプレイングすることで、自分のスキルを比
較することが可能となり、全員のスキルをある一定レベルで高める(標準)ことが可
能となる。つまり、教育の効果を実務で出していくのは、対象業務単位で考える必
要がある。結果として、営業マンが新規顧客を開拓できるかどうかは別にして、当
初の教育目的を、一定レベルで商品知識を習得し、顧客が不安なく説明を聞くレベ
ルであり、顧客からの想定される質問に対し満足のいく回答をどの営業マンでも行
えることが目的になる。しかし、担当するエリアによって顧客特性は異なる。取引履
歴や規模などによって要求水準は異なる。それは職場の営業課長などの上司のア
ドバイスをもとに、別途事前準備をしていかなくてはならない。そして、結果を検証
することになる。
教育の成果を出すためには、OJTとOFF-JTの組み合わせが求められることにな
る。その場合、OJTとOFF-JTの連携による相乗効果(シナジー)が求められる。
よって、教育効果のROICは①「業務(単位)別」、②「一人当たり(個人)」を考慮(基
本の単位)しながら、OJTとOFF-JTの③「シナジー」の要素も加えて成果を測定
する必要がある。そして、可能な範囲で顧客、上司などに対してアンケートなどのツ
ールを活用するなどして④「多面的に結果を測定」する必要がある。
また、教育目的を新規顧客の獲得というレベルに高めるとすれば、提案能力や顧客
事業を分析する能力などが別途要求されることになり、それは T 型業務®に該当し、
S型業務®である「一定レベルで商品知識を習得し、顧客が不安なく説明を聞くレ
ベルであり、顧客からの想定される質問に対し満足のいく回答をする」という目的
とは分けて考えることが肝要である。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 人材マネジメント指標Human Resoruces Metrics
6回目「個人単位と業務単位の教育ROI」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
■ 個人単位での教育投資効果
下表は前回内容に対応する計算シミュレーションである。弊社ホームページから
ダウンロード(第5回:12月号)していただきたい。
教育プログラムは、選抜方式、カフェテリア方式、個人で会社に提案して受講す
るなど多様化している。よって、個人別に教育投資効果を測定してくことが求めら
れる。個人別に求めることで、一人ひとりが投資に対する成果意識を持つようにな
ることも効果の一つといえる。コスト意識、成果意識を感じるような仕掛けが大切
である。
下表のA投資金額は3区分、B成果は2区分である。成果は収益と機会利益の2つ
である。収益に貢献できる教育プログラムであるという前提である。ロールプレイ
ングによる実習、具体的な保全手順などである。或いは、事例紹介や満足度調査に
基づいたデータなどは企画書に活用できる、といった具合である。
機会利益という概念は会計学にはないが、機会損失の逆を意味している。利益
といっているのは収益から原価を引いた意味合いを持つからである。教育貢献度
はそのまま教育プログラムの評価に繋がる。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
A 投資金額(Input)
1.教育・研修コスト
教育・研修の費用①
教育・研修の費用②
教育・研修の費用③
教育・研修の費用④
教育・研修の費用⑤
教育関連の投資は下記の3つに区分して算定することとする。
(年間費用)
全体コスト(年間)
研修名
対象人数
一人当たりコスト
プレゼンテーションスキル
\3,000,000
30
\100,000
商品勉強会
\3,000,000
30
\100,000
マーケティング研修 \4,500,000
30
\150,000
MBAプログラム
\10,000,000
50
\200,000
見積りシステム学習
\1,000,000
40
\25,000
Input-1
\575,000
(年間費用)
人件費(年間) OJT対象人数 指導(工数)比率 一人当たりコスト
\10,000,000
5
15%
\300,000
\50,000,000
5
5%
\500,000
\50,000,000
5
2%
\200,000
Input-2
\1,000,000
2.OJT
上司による指導
職場勉強会
その他
3.個人単位での受講
E-Learning①
E-Learning②
通信教育①
通信教育②
外部プログラム①
外部プログラム②
プログラム名
クレーム対応
顧客満足度分析
トータル金額
\400,000
\400,000
営業コンプライアンス
\300,000
市場調査の方法
\300,000
成熟時代のプレミアム戦略
\3,000,000
ワークショップ型開発
\2,000,000
参加人数
20
20
15
15
60
40
Input-3
A インプット:年間一人当たりのOJT&OFF-JT投資金額
B 成果(Output)
(年間費用)
一人当たりコスト
\20,000
\20,000
\20,000
\20,000
\50,000
\50,000
\180,000
\1,755,000
成果は収益という形で出るもの、機会利益という形で出るものと2つに区分する。
1.収益関連
商品売上
サービス売上
メンテナンス売上
その他①
その他②
組織としての収益 対象人数
\200,000,000
\100,000,000
\5,000,000
\0
\0
2.機会利益
見積りミスによる損
価格転換率
手配遅れによるロス
組織としての改善額 対象人数
\10,000,000
\30,000,000
\5,000,000
40
20
5
1
1
教育貢献度(%) 一人当たり収益
20%
\1,000,000
20%
\1,000,000
40%
\400,000
0%
\0
0%
\0
Output-1
\2,400,000
40
40
40
教育貢献度(%) 一人当たり利益
50%
\125,000
25%
\187,500
50%
\62,500
Output-2
\375,000
B アウトプット:年間一人当たりの教育関連による利益貢献額
\2,775,000
*機会利益とは改善による効果と考える。例えば見積りによるロスが2000万円あったとする。それが教育などに
よって1000万円に削減されたとする。その差額を機会利益と考える。(機会損失という概念を応用したもの)
C
教育ROIレシオ
C 教育ROIレシオ(アウトプット/インプット)
©KPCI 宮川雅明
1.58
(1を基準に見る)
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
■ 業務単位での教育ROI
業務単位というのは、業務のプロセスコストとの対比で考える教育ROIである。例
えば、あるサービスまたは商品を企画~製造~販売~回収までの一連のライフサ
イクルコスト(生涯コスト)を100万とした場合、例えば販売に関するプロセスコストを
把握し、その中における教育コストを把握し、効果を測定するというものである。
この考え方で大切なことは、ライフサイクルコスト全体の中で、計画または予算
としてのプロセスコストが設定され、次に教育コストが配分、設定され、それがいわ
ばプロセス教育予算となる。
恐らくは、最初にライフサイクルコストを把握または設定することが課題になる。
例えば、ある商品一つにおける総原価の構成を図解、把握しているとは限らないか
らである。製造原価、販売費用、保管費用、物流費用、フォローアップ費用などであ
る。製造原価と期間原価を把握することになる。面倒くさいと思うかもしれないが、
逆にいえば、総原価を把握することで教育コストのウェート、重要性がより明確に把
握でき、算定できるということになる。次回は業務単位のROIについて更に言及す
る。
■業務単位の教育ROI(サンプル)
A商品のライフサイクルコスト(全体のコストを100とする)
バリューチェーンまたはビジネスプロセス
全体比率
開発・企
生産管理
経理及び フォロー
設計関係 製造関係
販売関係 物流関係
画関係
関係
業務関係 関係
100
5
10
45
5
20
5
3
その他
5
2
内訳
製造関係コストを100とした場合
原材料費
50
労務費を100とした場合
工場経費
15
稼動
75
労務費
35 内訳 保全教育
7
計
100
改善活動
8
管理など
10
その他
計
100
©KPCI 宮川雅明
例)保全教育が計画通
りに行われたか、成果
は期待通りかを測定
する。
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 人材マネジメント指標Human Resoruces Metrics
7 回目「業務単位の教育コストと業務の成果」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
■ 業務単位の教育コストの位置づけ
09年1月号では下記2つのモデルを紹介した。両方とも組織・機能単位での測定
に適している。通常教育というのは、全社共通で行うのは、新入社員教育、新任管
理教育、新任取締役教育といったもので、多くは部門別に展開される。理由は、部門
つまりスペシャリティが異なるので教育内容も異なるからである。
組織(全社、部門、職場単位)単位でみる教育ROI
教育ROIレシオ
(アウトプット/インプット) =
*ROIとはReturn on
Investmentの略)
B アウトプット(成果):
年間一人当たりの教育関連による利益貢献額
(収益関連+機会利益)
A インプット(投資金額):
年間一人当たりのOJT&OFF-JT投資金額
ビジネスプロセスでみた教育コスト
A商品のライフサイクルコスト(全体のコストを100とする)(或いは金額を記入)
バリューチェーンまたはビジネスプロセス
全体比率
開発・企
生産管理
経理及び フォロー
設計関係 製造関係
販売関係 物流関係
画関係
関係
業務関係 関係
100
5
10
45
5
20
5
3
その他
5
2
内訳
製造関係コストを100とした場合
原材料費
50
労務費を100とした場合
工場経費
15
稼動
75
労務費
35 内訳
保全教育
7
計
100
改善活動
8
管理など
10
その他
計
100
例)保全教育が計画通
りに行われたか、成果
は期待通りかを測定
する。
業務単位の教育コストは更に細かく見るモデルになる。そのイメージを次に示す。
業務を機能単位だけでなく、業務プロセスまで展開する。それを更にS型業務®
と T 型業務®、OJTとOFF-JTに分ける。この4区分は、08年12月号で紹介した区分
である。
4区分に分ける理由は、業務の特性に応じ、成果指標が異なる。よって、教育の目
的、方法も異なるからである。S型業務®は誰もが作業標準に基づき、標準時間で処
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
理できるようになることにより、無駄がないことが成果となる。よって、財務的には
コストダウンという成果に繋がる。S型業務®は基本業務であることが多く、業務も
多い。僅かな例外や無駄も大きなロスとなる。
T 型業務®の評価は、効率化ではなく、成果になる。無駄なくできたかというより、
適正な時間を投資したので、狙った成果が出たかどうかが評価になる。つまり、スキ
ルを要する業務である。財務的成果としては、売上や収益の向上か、機会損失を無
くす(逆の言い方をすれば機会利益を生み出す)ことが成果となる。
大分類
3 構想設計・
設計変更手配
中分類
1 要求仕様確認
2 構想検討
3 DR
小分類
1
2
3
4
1
2
3
4
5
6
7
1
2
3
T型業務®
S型業務®
コード OJT OFF-JT OJT OFF-JT
移動
客先打合せ(訪問、TEL)
内部打ち合わせ
製品企画書作成
技術資料・図面の検索・調査
リーダー打ち合わせ(指導・相談)
構想案作成(アイディアスケッチ)
設計(レイアウト・計算)
客先打合せ
CADデータ変換
移動
DR資料作成・準備
DR
移動
311
312
313
314
321
322
323
324
325
326
327
331
332
333
4 品質検討
1 設計FMEA
341
5 特許出願
2 FTA
1 出願資料作成
2 内部打合せ
342
351
352
1
2
3
1
361
362
363
371
材料・材料メー
6 カー
の選定
7 設計変更
材料メーカー打ち合わせ
資料調査
内部打合せ
不具合原因の究明
3
技術データ
ベースシステム
研修
月10時間の実
践指導
120
48
改善技術、過去
事例の学習
48
T型業務®
S型業務®
OJT OFF-JT OJT OFF-JT
4 図面作成
1 作図・トレース
2 検図
3 出図処理
4 図面管理
1
2
3
1
2
1
2
3
4
5
1
2
3
CADデータ変換
トレース依頼・打ち合わせ
作図・トレース
検図(トレーサー・担当者)
図面サイン(調査・承認)
コピー
各種押印
配布
図面D/B登録依頼作成
図面D/B登録
パソコンインプット
図面検索
図面のコピー・配布
411
412
413
421
422
431
432
433
434
435
441
442
443
内容
内容
CAD研修など
24
データベースに
関する業務シス
テムの習得研修
3
■業務特性に応じて教育の成果を意識する
S型業務®と T 型業務®に分けて、教育コストを記入することは、当該業務の成果
を定義することになり、より目的的な教育を考えるようになる。
例えば、大分類4の図面作成では、作図・トレースは、OFF-JTによる教育になって
いる。設計部門からすれば、こうしたスキルは若手時代に習得すべき業務である。ま
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
た、会社により使用するソフトや専用ソフトもある場合がある。設計部門にとって、
一定の入社年限以内に習得すべき基礎的スキルである。よって、S型業務®のOFFJTとなる。
一方、FMEAやFTAは設計だけに限らず品質に関与する部門(例えば製造)にお
いては欠かせないマネジメント技術である。個人の経験やスキルにも影響するが、
組織としてのデータベースにも大きく影響する。簡単にいえば、過去発生したトラブ
ルなどを集積し、故障が起きる傾向を調べ、事前にトラブルなどを察知するもので
ある。信頼性、保全性、安全性、経済性全てに影響する。
OFF-JTによる教育としては、事象記号や論理記号、発生要因の評価手法などの
習得などである。実際はチームによるディスカッションの中でスキルを高めていくこ
とになる。これを実務の一環とみるか教育とみるかは会社個々の見解となるが、比
較的若手であれば教育的要素は多くなる。
現在 T 型業務®であっても教育や改善などによってS型業務®すべきというニー
ズも導き出すという効果もある。
上記モデルでは48とか24といった数字が入っているが、これは一人当たりの年
間時間である。金額でも構わない。重要なことは原単位を一人当たり(個人)にして
いることである。組織としては部門など組織単位の方がマネジメントしやすいのだ
が、それは予算管理上の目的が強い。
教育の成果にこだわれば部門全体に予算やコストではなく、一人ひとりにどれだ
け効果的に実施されているかである。予算内であっても一人30分の教育では効果
はない。だとすれば人数を四分の一にして、2時間の教育の方が効果的である。
一人当たりで計算することで、選抜コア人材のようなプログラムももらさず算定
することができる。教育のROIはその成果を、業務の成果を定義することと表裏一
体で行うことにより、より目的的、効果的に行うことに意味がある。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 人材マネジメント指標Human Resoruces Metrics
8回目「下地的能力の評価モデル」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
1.代表的人材評価モデル
これまで労働分配率や教育ROIなどについて語ってきた。今回は評価について
である。人材の評価は人事制度において全ての企業で取り組まれている。代表的
な評価モデルを先ずは紹介する(訳は省略させていただいた)。
基本形は業績(パフォーマンス)と非業績(ポテンシャル;可能性やバリュー:価値
観または規範的行動)の2つであることが推察される。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの人材評価モデル
マネジメントポジションの評価の考え方
Performance(業績)、Potential(能力)、People Development(指導育成)
の3項目を5段階で実施。1.0~5.0で数値化される。
評点
Performance
Potential
People Development
4.6~5.0
Outstanding
Outstanding
Outstanding
3.6~4.5
Superior
Promotable
Superior
2.6~3.5
Competent
Development
Competent
1.6~2.5
Needs
Capable
Needs Improvement
Limited
Unacceptable
Improvement
Unacceptable
1.0
*promotableという単語は字引にはないが、promoteの形容詞形として理解していただきたい。
GEのマネジメントポジションの評価モデル
Values
Performance
The Superstars:
Bound for Key
Leadership Roles
The Second- Chancer:
Given More Time or
Different Role
Removal-:The
Numbers’ No longer
Protect or Prolong
you
The Failures:Removed
With No Apology
360°Input to Leadership Assessment
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
2.コンピタンス評価
非業績系はコンピタンス(competence:資質、能力)という言葉に象徴される。先
述のポテンシャルやバリューなどである。ちなみに、コンピタンスは競争(compete)
と同系の言葉である。業績の評価に比べ目に見えにくい。
コンピタンスの評価は組織の人材に対する思想や価値観などが反映される。つま
り、人材ビジョンが先に定義されて初めてコンピタンスモデルは定義できる。コンピ
タ ンス の尺度 は様々 で代表 的 なものは、Integrity( 高潔 )、Innovation( 革新)、
Courage(勇気)、Edge(先鋭、ぎりぎり)といったものが多い。欧州を代表するエリク
ソンのコンピタンスモデルは3つに区分されている。
Individual
Capacities
例)Cultural
Awareness
e
nc
ete
mp
Co
Pr
of
es
sio
na
lC
om
n
ma
Hu
例)Product
Knowledge
pe
te
nc
e
The Ericsson Competence Model
Business Competence
例)Customer
Orientation
3.キャリアモデル別への進化
課長、部長といった役職は組織の使命が決まることで求められる役職が決ま
る。組織は戦略に従うので、戦略と組織(使命と機能の定義)が決まることで必要
な役職が設定されることになるので、管理者の評価という議論は求められる戦略
や組織使命の定義から評価されることになる。結果、課長の評価という議論からキ
ャリア別の評価、例えば、スペシャリスト、マネージャー、プロジェクト・リーダー、ビジ
ネス・リーダーといった評価モデルが必要となってくる。
スペシャリストとビジネス・リーダーでは求められる業績も資質も異なる。スペシャ
リストでは専門的な資質が高く求められるが、ビジネス・リーダーでは戦略的センス
が求められる。しかし、専門的な能力というのは、それぞれの専門性においては業
績と強く関係する。経理やIRの部門であれば会計・財務の専門性、法務であれば法
律やコーポレート・ガバナンス或いはSOX法に関する専門性、製造部門であればT
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
QCや標準原価などは欠かせない専門性になる。しかし、専門的資質だけでは真の
成果は出ない。事実を追求する姿勢、問題を改善する力、時代を先読みする直観、
人の話を聴く能力、チームをまとめる組織化力など専門的ではないが、下地とな
る能力が必要となる。つまり、資質は「専門的資質(能力)」と「下地的資質(能力)」
の2つに区分する必要がある。ジェネラリストというのは、本来はこの下地的能力が
高い人材をいう。
4.下地的能力の評価モデル
次表はキャリア別の評価モデルである。重要なことは、評価が目的ではなく、
日々の行動の指針となることで、壁に貼って毎日見て、自問自答しながら行動する
ツールであるべきということである。
このモデルでは、5つの尺度は各キャリアで共通であるが、求められる内容が異
なる。コミュニケーション能力でも、担当者層では事実で聴く能力が重要視される
が経営者層になれば人脈が問われる。
また、人事制度は制度でありツールである。仕組みがあっても運用がまずければ
成果はでないことも十分に留意すべきである。
©KPCI 宮川雅明
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スペシャリストの下地的能力の評価尺度(モデル)
尺度
項目
思考力
1 事実を分け、因果関係を構造的にとらえ、例示する。
2 知的体力、知的正直さがある。
3 演繹的、帰納的に推論する。
ビジネスセンス
1 コスト意識がある。
2 時間意識がある。
3 品質にこだわる。
コミュニケーション
1 言葉を定義し、他者の話を疑似体験(例示)で聴く。
2 報告・連絡・相談。
3 社内・社外でのプレゼンテーション。
実行力
1 多くの仕事をこなす。
2 自己完結する。
3 最終品質をチェックする。
価値観
1 仕事が好き。仕事に興味を持っている。
2 難易度の高い仕事にすすんで挑戦する。
3 社外価値を追求するプロフェッショナリティを持っている。
評点(5点満点評価)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
(5,4,3,2,1)
プロジェクト・リーダーの下地的能力の評価尺度(モデル)
尺度
項目
評点(5点満点評価)
思考力
1 戦略をプロセスにブレークダウンする。
(5,4,3,2,1)
2 時間資源を配分し、右からスケジューリング(線引き)する。
(5,4,3,2,1)
3 シナリオを描き人の動きをデザインする。
(5,4,3,2,1)
ビジネスセンス
1 プロジェクト・テーマの戦略的位置づけや背景を理解する。
(5,4,3,2,1)
2 次のプロジェクト・テーマを想定している。
(5,4,3,2,1)
3 仮定として、失敗の箇所や原因を事前に想定し、代替案を用意している (5,4,3,2,1)
コミュニケーション
1 メンバーの能力を引き出す。
(5,4,3,2,1)
2 都度、成果や課題をオープンにフィードバックする。
(5,4,3,2,1)
3 トラブルなど前兆をキャッチする。
(5,4,3,2,1)
実行力
1 手段や方法を柔軟に選択または創造する。
(5,4,3,2,1)
2 顧客、他部門など他者を動かす(自律的に動くように導く)。
(5,4,3,2,1)
3 障害があっても、計画及び納期に間に合わせる。
(5,4,3,2,1)
価値観
1 逃げない。
(5,4,3,2,1)
2 チームとしての成果を尊重する。
(5,4,3,2,1)
3 財産を残す。
(5,4,3,2,1)
★指定アドレスにアクセスすると、「ビジネス・リーダーモデル」を加えた入力シー
トと平均値が紹介されますので、自社と比較してみてください。
©KPCI 宮川雅明
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連載 人材マネジメント指標Human Resoruces Metrics
9回目「ホワイトカラー生産性測定の概念とポテンシャル評価モデル」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
1.3つに大別されるホワイトカラーの生産性
ホワイトカラーの生産性は一般的には、労働生産性(第2回連載「労働生産性」参
照)で評価され、分母の従業員数は労働時間で換算される。ここでは、結果として
単に労働生産性を問うのでなく、ホワイトカラーの生産性の本質に沿った指標とは
何かについて検討するものである。
ホワイトカラーの業務はその産出(アウトプット)の目的から、3つに大別される。
一つは戦略的な業務である。どのような課題を設定するかである。戦略のミスは戦
術ではカバーできない。2つ目は管理的な業務である。意思決定された課題に対し、
目標や時期を計画し、進捗管理を行い、無駄なく効果的に課題を進めていく業務で
ある。3つ目は処理的な業務である。処理といっても全く作業的な業務をいってい
るのではなく、戦略課題を遂行するプロセスの一つである。競合他社比較分析やC
S満足度調査、改善そのものである場合もある。
2.戦略的業務に関するホワイトカラーの生産性
ホワイトカラーのアウトプットは目的及び目標が明示されていることが前提にな
る。目的のないところにマネジメントは存在しない。何故、その戦略課題が設定され
たのか、その背景と意味は何か、何が取捨選択されたのか、その課題を達成すると
何が良くなるのかが組織として共有されることで成果は初めて実現される。組織
メンバーが理解も納得も共感もしていなければ、その戦略課題はやる前から実施
されないだろう。よって、戦略課題の組織コンセンサスの程度が測定されることに
なる。課題の中味つまり戦略を評価することではない。厳しい目標でも、立てた戦
略に迷いなく実践されるかどうかを問うのである。挑戦する場を与えることがホワ
イトカラー生産性向上の基本条件となることを忘れてはいけない。
3.管理的業務に関するホワイトカラーの生産性
プロジェクトを実施したがうやむやに終わってしまったという経験は誰にでもあ
るだろう。こうした経験にホワイトカラーの生産性は支配される。徹底してやりきる
習慣つまり風土のないところでは、次の課題も遂行することはできない。よって計
画性を問うことがホワイトカラーの生産性を問うことであり、徹底実践することが
ホワイトカラーの生産性を向上させるのである。
4.処理的業務に関するホワイトカラーの生産性
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
処理的業務の多くは基本業務と呼ばれるものである。受発注業務、経理業務、入
出庫業務など多くはルーティンで発生する業務である。処理的業務は、質量ともに
計画されたアウトプットを出したかどうかを問う業務であり、仕様チェック項目に対
して何個クリアしたか、目標量を到達したかなど、より具体的に生産性が問われる
業務である。処理的業務の多くは、システム化やアウトソーシングなど手離れをし
ている業務も多く、より戦略的、管理的業務の生産性が問われている。
5.組織生産性と個人生産性
機械は使うほどに劣化するが、人の場合は、失敗など経験すればするほどそのノ
ウハウが人に蓄積される。人に成果が蓄積される特性を持つ。
また、戦略課題がブレークダウンされることで個人への責任分担が具体的な業
務として明確になっていく。人に成果が委ねられるのである。
ホワイトカラーの生産性とは、目的(戦略課題)によって成果が可変する。よって、
目的を明確にし、組織として共有し、そこから立てられた計画に対して、実行された
かどうかを評価する人間中心のシステムであることを忘れてはならない。
戦略性を問うアウトプットの業務は、組織としてのコンセンサスが生命線であるた
め、組織として測定する必要がある。そして、課題が計画されブレークダウンされ具
体的な業務になるに従い、個人としての責任分担が明確化され、結果個人のスキル
が問われることになる。また、その課題がどのような背景、目的で選択・設定された
ものであるかを共有することで正しく処理することができる。例えば、クレーム処
理はクレームの応対をすることではなく、同じ原因を二度と起こさないような仕組
みを如何に構築するかであり、同時にクレーム顧客をファン化させることが目的で
あることを共有することで初めて生産性を問う価値が出てくる。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
ホワイトカラーの生産性概念
=
課題の設定と共有
=戦略性
Envision
管理的業務
Managerial Work
=
課題の解決と進捗
=計画性
Execution
処理的業務
Operational Work
=
課題処理の質と量
=能率性
Efficiency
戦略的業務
Strategic Work
組織生産性
ホワイトカラーにおけ
る組織生産性と個別
生産性の2つの側面
個人及び個別生産性
©宮川雅明1993
ホワイトカラーの生産性指標:E3
課題の設定と共有
=戦略性
Envision
全社または各組織または各機能の戦略課題
に対して、どの程度、共通認識(理解、納得、
共感)があるかを測定する。
課題の解決と進捗
=計画性
Execution
どのように課題を遂行したらよいか、展開手
順が構造化され、計画され、徹底実践され
ているかを測定する。
課題処理の質と量
=能率性
Efficiency
個人または個々の業務または個々のシステムが所
定または計画されたコストの範囲で、求められる品
質で・求められる量を処理できたかを測定する。
©Katana Performance Consulting Inc 2003
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
6.ホワイトカラー生産性のポテンシャル評価
下表は、上記概念をベースにしたホワイトカラー生産性のポテンシャルを評価す
るチェックリストである。生産性そのものは、アウトプット対インプットであるので、売
上や付加価値に対する人員で算定することはできる。しかし、重要なことは、結果
を評価することではなく、どうしたら生産性を高めることができるのかのマネジメ
ントの技術を構築することにある。
ポテンシャルを測定するということは、仮に労働生産性が低い部門、職場、戦略
課題があった場合、下記設問がその原因のヒントとなる。つまり、ホワイトカラー生
産性を高めていくチェックリストモデルである。
ホワイトカラー生産性のポテンシャル(可能性として持っている能力)評価
対象とする戦略課題の名称「 」
5(肯定)、4(やや肯定)、3(どちらともいえない)、2(やや否定)、1(否定) 評価欄
ホワイトカラー生産性の「戦略性に関する簡易質問」
ー
1 あなたの職場または部門は、全員がこの戦略課題の背景、目的、成果を言える。
2 あなたの職場または部門は、全員がこの戦略課題の成果を具体的に例示できる。
3 あなたの職場または部門は、全員がこの戦略課題に共感し、挑戦する意欲に燃えている。
小計
ホワイトカラー生産性の「計画性に関する簡易質問」
ー
1 あなたはの職場またはチームでは、どのような展開手順で進めるか、時間軸も含め、図解できている。
2 あなたはの職場またはチームでは、課題を実行するための改善案が計画されている。
3 あなたの職場またはチームでは、課題やプロジェクトは常に進捗管理され、最後まで遂行される。
小計
ホワイトカラー生産性の「能率性に関する簡易質問」
ー
1 あなたは、個々の作業(業務)に対し、目標時間を事前に設定し、おおよそ目標時間通りに達成できている
2 あなたは、個々の作業(業務)に対し、計画したアウトプットを達成している。
3 あなたは、個々の作業(業務)に対し、責任分担を感じている。
小計
合点計
比率%
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載
人材マネジメント指標Human
Resoruces Metrics
10回目「組織の T 型業務®比率」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
1.組織の業務マップ
業務マップは組織マネジメントの基本ツールである。全社の戦略を受け、様々な
機能別戦略(製造戦略、購買戦略、営業戦略など)へ分解され、各部門に方針管理と
いう仕組み(或いは予算管理など)で分解・展開される。
組織の T 型業務®の比率とは一言でいえば構造改革型業務(或いは課題解決型
業務)比率のことである。詳細は http://www.kpci.jp/2008/04/per_hpt.html をご
参照いただきたい。T 型業務®の逆がS型業務®(標準時間型業務)である。
組織の T 型業務®比率は、戦略と組織使命によって変化する。例えば、経営企画
的な部門であれば、T 型業務®比率は高いと推察される。S型業務®はリサーチ関
係の業務であろう。例えば、今後は M&A の戦略をより積極的に行うという全社戦略
がたてば、経営企画部門の T 型業務®の種類も変化するであろうし、T 型業務®比
率も変化する。経理部門であれば、S型業務®が多くないと困る。請求・支払などは
ルーティンとして発生する。また、社外関係者にも影響し信用にも関わる。ルーティ
ンの多い経理関係の業務は、改善やシステム化などによって徹底的に標準化し、S
型業務®化しておきたい。
2.現状業務マップ
下表は営業部門の現状の業務マップである。
現状部門業務マップ 部長 課長 A
中期経営計画
100
50
年度キャッシュフロー計画
48
50
月次業績管理
120 240
既存顧客拡販活動
240 1330
新規市場開拓活動
240 220
物流・在庫管理
10
48
システム開発プロジェクト
10
24
営業事務
5
36
その他
880 220
計 1653 2218
B
0
0
20
1380
120
240
0
240
60
2060
C
20
60
120
320
12
880
440
400
40
2292
(D)
0
0
20
1300
220
240
0
240
20
2040
0
0
0
0
0
620
0
1040
0
1660
計 比率
170 1.43%
158 1.33%
520 4.4%
4570 38.3%
812 6.8%
2038 17.1%
474 4.0%
1961 16.4%
1220 10.2%
11923 100.0%
T型業務® S型業務®
70.0% 119.0 51.0
20.0% 31.6 126.4
5.0% 26.0 494.0
60.0% 2742.0 1828.0
90.0% 730.8 81.2
20.0% 407.6 1630.4
50.0% 237.0 237.0
5.0% 98.1 1863.0
60.0% 732.0 488.0
43.0% 5124.1 6799.0
T型業務®比率
書籍「マネジメント・ヒエラルキー」(学文社、宮川雅明著より)
業務の数(大分類という)は 9 個であり、7 名の職場である。部門全体の T 型業務
®業務比率は43.0%である。T 型業務®やS型業務®は大分類単位で見る場合もあ
れば中分類、小分類で見る場合もある。それは目的によって異なる。また、43.0%
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
が高いか低いかも目的によって異なる。
業務マップというのは伝統的な手法であるが、1 年間、誰がどの業務に投資する
のかを鳥瞰するもので、戦略と行動との整合性を図るものであり、管理の基本ツー
ルである。
3.あるべき業務マップ
下表は前述営業部門の改善後業務マップである。戦略によって、この営業部門に
エリアマーケティングという業務がプロジェクトとして追加された。エリア・マーケ
ティングプロジェクトの投資時間は 418時間である。
リデザイン業務マップ 部長 課長 A
中期経営計画
100
50
年度キャッシュフロー計画
48
50
月次業績管理
120 200
既存顧客拡販活動
240 1000
新規市場開拓活動
240 500
物流・在庫管理
20
48
システム開発プロジェクト
20
48
エリアマーケティングプロジェクト
10
48
営業事務
5
36
その他
880
80
計 1683 2060
B
20
40
24
1000
500
120
12
120
100
24
1960
書籍「マネジメント・ヒエラルキー」(学文社、宮川雅明著より)
C
20
60
48
600
12
400
440
120
200
24
1924
(D)
20
40
24
1300
250
100
12
120
100
24
1990
0
0
24
0
0
700
0
0
1100
0
1824
計 比率
210 1.84%
238 2.08%
440
3.8%
4140 36.2%
1502 13.1%
1388 12.1%
532
4.6%
418
3.7%
1541 13.5%
1032
9.0%
11441 100.0%
96.0%
T型業務®比率
70.0%
20.0%
5.0%
60.0%
90.0%
20.0%
50.0%
85.0%
5.0%
60.0%
49.4%
T型業務® S型業務®
147.0 63.0
47.6 190.4
22.0 418.0
2484.0 1656.0
1351.8 150.2
277.6 1110.4
266.0 266.0
355.3 62.7
77.1 1464.0
619.2 412.8
5647.6 5793.5
プロジェクト業務というのは、会議の時間だけ設定し、後は空いた時間を活用し
て進め、納期か近づくと集中して一気に纏めることが多い。これではプロジェクト
は成功しない。
業務というのは毎年同じ業務が継続されるわけではない。追加、削除など戦略に
応じて見直しがされる。中期経営計画などのローリングは定期的に行われているが、
行動をマネジメントすべき現場で、戦略目標に応じた業務と人のマネジメントがシス
ティマティックに行われていることは少ない。
何よりも、組織の意志として、このプロジェクトには 418 時間を投資する価値があ
る業務であるということを明示することである。組織の知的生産性は、まずはこの
戦略と行動を時間という共通のパラメータで繋げることからはじまる。
4.業務マップと組織の T 型業務®比率が意味するもの
意味するものは次の通りである。
①
組織の役割体系~組織使命と換言してもよい。先の例でいえば、この営業
部門はエリア・マーケティングという機能(使命)を戦略によって追加された
©KPCI 宮川雅明
- 35 -
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
②
ということであり、エリアの業績責任或いはエリアの顧客マネジメントの責
任を継続的に負うということを示唆している。または、その能力が組織とし
てあるかどうかの検証をされているといえる。
組織の改善度~安易に増員して新たなことをやっていては、生産性はなか
なか高まらない。そこで、改善が必要になる。S型業務®の改善を更に進める
必要がある。T 型業務®もS型業務®化できるものは改善をする。例えば、物
流・在庫管理に関しては、A さん、B さん、C さんは 50%以上の改善をしながら、
D さんへのシフトを可能にしないといけない。システムを導入することも考
えられるが、573時間(1961時間―1388時間)の工数削減に相応する投資で
あるかどうかを検証しないといけない。システムの活用期間が 5 年として、
573 時間×5 年=2,865時間、時間単価 1 万円と仮定し、2,865 万円の投資
でブレークイーブンである。つまり、改善のためのシステム投資の判断基準
③
④
⑤
となる。改善が進めば、S型業務®比率は高まり、他の組織との統廃合も考え
ることができる。統廃合によって、より効率的な組織・業務マネジメントと更
なる構造改革型業務への追加が可能になる。
組織としての優先順位~最初に、うちの営業部門の役割は10個であるとい
えること。そして、資源(時間)の配分はこうである、と明示することである。
優先順位をつけることは資源配分であり、戦略的組織の基本である。この優
先順位は時間という共通言語を使って、メンバー全員が意識し記憶しておく
べきものである。
個人への意識付け~エリア・マーケティングプロジェクトでの課長の投資時
間は年間 48 時間である。月間 4 時間である。この時間を如何に有効に使っ
て A さん以下を動かしていくかをデザインしないといけない。A さん、B さん、
C さんもチームとしてどのように動けばよいか、何を分担するかをイメージ
し、年間 120 時間、月間 10 時間をデザインしないといけない。空いた時間に
やろう、ミーティングの時に考えよう、納期直前で頑張ろうでは計画とはい
えない。
組織の構造改革型業務比率~文字通りである。かっこよくいえば、組織のチ
ャレンジ度ともいえる。ただし、T 型業務®比率が高いことだけがチャレンジ
度が高いというわけではない。改善後業務マップの計の下に96.0%という
数値があるが、これは現状業務マップの総時間との比率である。全体として
4%の総時間を削減し、同時に T 型業務®を6.4%高めているということで
ある。②の改善度の範疇にいれてもよいが、高い改善度は大きな挑戦とい
える。
⑥
チームと要員のマネジメント~6 名のメンバーが全員新人では困る。一人足
りないので増員を要望するといった話はどこでもあるが、要員は業務の質
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
と量のセットで語られるものである。マネジメントは誰にどのような T 型業務
®を重点配分するのかといった育成も鑑み、チームとしての分担とリスクも
鑑み、個人別 T 型業務®によって各人のキャリアやモチベーションを鑑み、或
いはどのようなキャリアの人材が必要なのかを人事に明示する上でも業務
マップは組織共通のツールとなる。
人材マネジメントとして、組織における各人の役割、S型業務®比率による改善目
標、戦略という意志を日々の行動に繋げていく時間意識のマネジメント、個々人が
それぞれの業務の価値ウェートを全体観(業務マップ)の中でとらえることによる
意思の共有などが組織の T 型業務®比率で凝縮される。
組織マネジメントの次の段階として、この年間計画を月間そして週間にブレーク
ダウンしていくことが求められる。年間 418 時間投資するエリア・マーケティングプ
ロジェクトでは、何月にフィージビリティスタディを行うのか、何月にエリア内の潜在
顧客を測るのか、何月に顧客の新たなセグメンテーションを設定するのかなどをデ
ザインする必要がある。時間は無限ではない、有限であるから配分概念が存在し、
成果を見極めることで投資時間を設定し配分することが可能となる。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 人材マネジメント指標Human Resoruces Metrics
11回目「人材プール」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
1.人材が成長と継続の源泉
人材は会計上、労務費であり人件費であり外注委託費であり、コストとしてとらえ
られている。また、人はムダをもたらすこともあり、ミスも犯すこともある。時には
会社を潰すほどのリスクを起こすこともある。一方で、あらたなアイデアを生み出
すのは人であり、特許を生み出すのも人である。改善を行い、ムダをなくすことが
できるのも人である。経営の将来の方向性を適切な方向へ導くことができるのも
人である。
わかってはいるが、経営にとって最も重要な経営資源である人を、計画的に育成
し、成長させ、リーダーとして、人間としても成長させていくことに、経営はシスティ
マティックに取り組む必要がある。
単に、営業の研修に参加させている、管理者研修を行っている、コーチングの研
修を行っている、ではシスティマティックとはいえない。主語は人であり、研修やそ
のテーマではない。その人にとってどのような育成ビジョンとプロセスがあるのか
をもって、計画的に育成していく仕組みが必要である。確かに人は勝手に育つもの
であるが、運任せではマネジメントにならない。そのようなマネジメントでは、育つ
前に優秀で転職できる人材が先ずは離れていく可能性が高い。環境(場、機会)を
与えることで早期に計画的に育成していける企業が、いつの時代においても、或い
は少なくともこれからは、継続的に成長していく。
2.人材プールという発想
人材プールという概念は決して新たしいものではなく、様々な形或いは表現で
組織の中に存在してきたものである。選抜、一本釣り、次期候補などである。
人材プールは経営ビジョンや長期経営計画とリンケージして策定される。例えば、
5 年後、トルコで工場を建てるという計画があったとする。どのような人材が必要
であろうか。海外で同様の経験をしたことがある社員が先ずは候補にあがるが、
そうした社員は往往にして現在赴任中に現地法人のマネジメント、品質の安定と労
務管理そして業績向上で手一杯であろう。ヘッドハンティングという選択肢もある
が、人材が育つ組織であることが最も望ましい。ただし、ヘッドハンティングがよく
ないということではない。戦略的環境において外部から調達した方が能率的で効
果的であることもあれば、社内人材と競争させることもできる。
将来において、国内において非正規労働の雇用が困難になり、消費立地が顧客
にとってメリットがあれば(コスト上のメリット、マーケティング上のメリットなどが有
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
るということ)継続的にグローバルリーダーを育成していく必要がある。5 年間の
猶予の中で誰にどのような経験をさせるかをデザインしないといけない。
3.人材プールのシミュレーション
下表は人材別の候補者シミュレーション表である。ビジネス・リーダーとは役員や
事業責任者をイメージしている。プロジェクト・リーダー人材とは肩書き(役職)に関
係なく、上記のような海外工場や現地法人の設立責任、新規性の高き経営課題、風
土や組織を大きく変革するような課題などを任せられる人材である。上級管理職
というのは部長層、管理職は課長層をイメージしている。専門職とは主任研究員、
法務、特許、会計などをイメージしている。
下表では計Aとマネジメント人材との差13(名)とある。部長や課長であってもプ
ロジェクト・リーダーとは限らない。専門職でプロジェクト・リーダー人材である場合
もあれば、管理職でプロジェクト・リーダー人材である場合もある。その重複が 13 名
という意味である。管理職は全員プロジェクト・リーダーであって欲しいと仮定すれ
ば、重複は少なくとも 40 名以上にならないといけない。
人材プールシミュレーション表
人数 %
人数
1 ビジネス・リーダー人材
5 6.1% 対マネジメント人材合計 ⇔ ビジネス・リーダー候補人材
4
2 プロジェクト・リーダー人材
10 12.2% 対マネジメント人材合計 ⇔ プロジェクト・リーダー候補人材
7
3 上級管理職人材
10 12.2% 対マネジメント人材合計 ⇔ 上級管理職候補人材
6
4 管理職人材(注)
40 8.0%
対B
⇔ 管理職候補人材
65
5 専門職人材
30 6.0%
対B
⇔ 専門職候補人材
70
計A 95
152
マネジメント人材合計(管理職、専門職以上の実人数計)
82
重複(A-実人数) 13 (重複とは、例えば、管理職でありプロジェクト・リーダーでもあるといった人材)
*□箇所を入力
%
5.2% 対マネジメント人材合計
1.4%
対B
9.0% 対マネジメント人材合計
14.5%
対B
16.7%
対B
36.1% 対基盤人材
選抜~育成期間
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
10年
7年
5年
3年
5年
(注)専門職で管理職は管理職としてカウントしている。
6 基盤人材(若手、管理職前)
421 80.0%
対C
対D
-
⇔ 基盤人材候補
25 10.4% 対非正社員
55.0%
7 その他の人材(下記内訳)
23 4.4%
インターンシップ関係
21
アドバイザリー関係
2
計C(B+その他人材) 526
対C
対C
対C
-
⇔ その他の人材候補(下記内訳)
⇔ インターンシップ候補人材
⇔ アドバイザリー関係候補
13 2.5%
12 2.3%
1 0.2%
8 非正規社員
240 31.3%
計D(B+非正規社員) 766
対D
-
計B(マネジメント人材+基盤人材) 503
対C
対C
対C
ビジネス・リーダー候補人材は 4 名である。マネジメント人材 82 名のうち既にビ
ジネス・リーダーである 5 名を除いて 4 名の候補者がいることを示しており、マネジ
メント人材(82名-5名=77名)の5.2%にあたる。プロジェクト・リーダー候補人材は 7
名である。プロジェクト・リーダーは基盤人材からも抜擢される可能性があるので、
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
ビジネス・リーダー5 名、プロジェクト・リーダー10 名を除いた母数で計算すると1.
4%という比率になる。
その他の人材としてインターンシップなどを入れているのは、大学との提携など
協業戦略が恒常化する可能性を見込んでいる。基盤人材候補は非正規社員からの
登用する計画としている。
選抜~育成期間というのは、計画期間を意味している。ビジネス・リーダーが 10
年と最も長くなっているが、早期発見、早期育成を前提とした考えである。もっと長
くてもよい。育成候補人材数を何年の育成プラン期間でみているかで、候補者人材
の多い、少ないが判断できる。
この表を埋めることの意味として以下の項目が考えられる。
① 具体的に候補者氏名を列挙することで候補者個人が特定化されること。
② 経営ビジョンや長期経営計画にリンケージしてどのような人材がどれくらい必
要か計画を持つこと。
③ 人材モデルを持つこと。
④ 候補者選定・選抜の仕組みを持つこと。
⑤ マネジメント層一人ひとりが育成の責任を日常的に意識すること。
⑥ 候補者一人ひとりに対して育成プランを持つこと。
3.事業部、機能別への展開
先の人材シミュレーション表をベースに事業部別、機能(バリューチェーン別)に
人材プールのシミュレーションを展開することが可能になる。特に現場においては、
ノウハウの蓄積とスキルの伝承を必要とする業務においては計画的な育成の仕組
みと日常的な人材育成意識をマネジメント職全員が持つ必要がある。更に加えれ
ば、徒弟的育成の文化がどの候補者人材においても人材育成の基本と考える。
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イメージフォーマット
人材プールのモデル
(単位は人数)
ビジネス・リーダー人材
ビジネス・リーダー候補人材
全社(グループ
会社含む)
事業単位で見る
A事業部 B事業部
プロジェクト・リーダー人材
プロジェクト・リーダー候補人材
管理職(マネージャー職)人材
管理職(マネージャー職)候補人材
スペシャリスト(専門職)人材
スペシャリスト(専門職)候補人材
基盤人材(若手、管理職前)
基礎人材候補
インターンシップ関係
その他人材(アドバイザリーなど)
非正規社員
イメージフォーマット
人材プールのモデル
(単位は人数)
ビジネス・リーダー人材
ビジネス・リーダー候補人材
全社(グルー 機能区分(バリューチェーン)で見る
プ会社含む) 企画機能 研究・開発機能 設計機能 製造機能 購買機能
プロジェクト・リーダー人材
プロジェクト・リーダー候補人材
管理職(マネージャー職)人材
管理職(マネージャー職)候補人材
スペシャリスト(専門職)人材
スペシャリスト(専門職)候補人材
基盤人材(若手、管理職前)
基礎人材候補
インターンシップ関係
その他人材(アドバイザリーなど)
非正規社員
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12回目「ビジネスリーダー輩出の組織能力」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
■育成ビジョン
育成ビジョンとはあるべき育成イメージを具体的に描いたものである。各企業が
それぞれの経営方針や戦略などに応じて作成するものである。
育成ビジョンは大きく3つ挙げてある。人材プール、機会創造、徒弟的環境である。
縦軸には仕組みと運用の2つである。仕組みとは制度ととらえてよい。決済権限規
程のように明文化されていなくてもよい。目標管理制度や方針管理など組織には
一定のルール、手順、フォーマットなど一つの形をもっているものがある。運用とは
仕組みにやり方である。例えば、目標管理制度があるからといって思うように運用
されているか、狙った成果が出ているかどうかは別である。管理者が職場の目標、
個人の目標など必要な時間を計画的にとり直接説明し話し合うという時間をとっ
ていなければ目標は理解されても納得はされずに実施されることはない。仕組み
や制度を目的的に意味あるようにするための妙味みたいなものである。
■人材プール
例えば、警備会社が人的警備から機械警備に変革していくには、通信技術に関し
て相応の知見がなければならない。それがサービスの中核になれば通信技術に詳
しいエキスパートが必要になる。全てをアウトソーシングして外部に頼るわけにはい
かない。人材紹介会社に依頼するのも一つの方法であるが、自立的に人が育つ組
織であることが基本である。このように将来事業の方向性からどのような人材を
何名育成するかを計画して備えておく必要がある。それは経営者人材に限ったこ
とではなく、要素技術である溶接技術をもった若手を何名育てよう、金型設計技術
をもった若手を何名育てようといったことも同様である。
・ 一隅を照らすというのは、その人を良いところをみつけ育てるということで、
誰にもよいところはあるという考え方である。全ての人にオーダーメイドの
育成計画をつくるということではない。
・ 社長一人の考えで特定個人をルールとは関係なく選抜はしない。
・ 選抜委員会のような類はなくてもよい。それは取締役の責任である。
・ 運用として伯楽をいれたが、上司に支援をさせるくらいの器がなければビジ
ネスリーダー層の素養はない。
・ 一度候補者に入ったからといっても毎年新たな候補者があがってくる。よっ
て、入れ替えが発生する。環境や戦略がかわれば、期待される人材モデルや
プールの仕方もかわる。更新することである。
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
■機会創造
人は仕事を通じて育つ。しかし、経済が安定し経営も安定していると自らの殻を
壊すような機会に会わない可能性もある。同じ部署に何年も在籍したり、異動して
も拠点が異なるだけで同じ機能であったりすればスペシャリティやジェネラリティ
など高めにくくなる。
・ ビジネスリーダー層が扱う経営課題というのは正解がない。それを問題とす
るかどうかのセンスから試される。これをやればよくなるという唯一の手段
などなく、問題は複雑に絡み合い問題要素もどのように変化・追加されるか
わからない。そうした不確定な課題に対して先見性などの直観を養っておく
必要がある。もし、そうした機会がなければ意図的につくってでも経験するこ
とである。
・ 30 歳の有望な人材がいるとする。40 歳までに海外で責任者として活躍でき
る人材にしたい、とする。この 10 年間でどのような経験をするかを計画しな
いといけない。業種などによって異なると思うが、製造業であれば現場、購
買、設計、営業、企画、物流、開発~何を経験したらよいだろうか。全て経験す
るとなると各機能に 1 年とかになってしまう。人が足りないから、退職したか
ら補充といった発想では戦略に応じた計画的人材育成はできない。
・ ビジネスリーダーを育成していくには地理的な素養が欠かせない。グローバ
ル企業であるかどうかでは関係ない。よって、ローカル(地域、日本)、リージョ
ナル(東アジア、北米など)、グローバル(欧州、アジアなど)で活動するプロジ
ェクトまたはポジションに計画的に身を置くことが望ましい。
■徒弟的環境
環境においてどのような人と組むかは将来を大きく左右することになる。メンタ
ーは上司でない方がよいと一般的にはいわれるが、私はそうは思わない。アドバイ
ザーがいることはよいことだが、人事系部門や他部門の管理職層でもその役を演
じることはできる。人が育つには日常的に緊張した空気の中に身を置く必要がある。
明るく和気藹々で結構、しかし品質や姿勢などには厳しい職場である。ポケットに手
を突っ込んでいる、携帯をオンのまま机の上に置いていくといった礼儀レベルから
はじまり、読み・書き・そろばんを手を叩かれながら学んでいく職場である。具体的
な技術や方法を学び、問題にあってはその考え方や行動の姿勢を学ぶことで腕を
磨いていく。上司はメンターでもあり師匠でもある。
・ 人材育成の仕組みが単独で存在しているのではなく他の仕組みとリンケー
ジしていることである。また、そうでないと機会を提供したり、必要な予算を
とったり、担当上司に個別に依頼することはできない。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
・
・
・
・
状況に応じ、プレイングマネージャーであることは自然である。しかし、プレイ
ングにあまりに偏重しマネジメントを全くできていないケースをよく見る。月
末に売上やスケジュールを確認する会議を行うのが精一杯というマネージャ
ーである。こうなると大胆当者といった方がよい。時間空間を共に過ごさな
ければ部下は育たない。部下が優秀であれば自分も更に上の仕事に挑戦す
ることができる。逆であればますます大胆当者になり、体力勝負になる。マネ
ージャーは人材を育成する最先端にいるということを強く意識しないといけ
ない。一人ひとりの部下に何を今年習得させるか、何を経験させるか、何をア
ドバイスするかをいえないといけない。安全などの例外を除き、思いつきや感
情でも指導は危うい。平常心でアドバイスをすることである。組織は部下の育
成程度を評価する仕組みを持つことである。
日々考える習慣を身につけることで現状を見る目、改善を考える多様性など
を養うことになる。それを担うのが現場でありマネージャーの責務である。
改善の風土がないところに革新など起こるはずもない。
私が若手コンサルタントのころ毎年この 1 年で学んだことを発表する場があ
った。若手もいっても一定クラスまで辿りつくまで毎年行う。30 歳の人もいれ
ば 25 歳の人もいる。私より先輩のコンサルタント達が私の目の前で散々叩か
れる姿を見て私も否応なしに緊張したものである。「君のいう定量化とは何
だ」「顧客の定義はなんだ」「やったことが成果か?」など知的正直さを問わ
れながら職業人としての姿勢を問われる。この発表とは別に年に数回事例紹
介や技術紹介をさせられる。また、年に 1 回役員層と個別に話し合うという場
も設けられていた。この語り合いという場では、「お前はいつやめるんだ」
「お前は何で飯を喰うのだ」といった質問が容赦なくぶつけられる。この会議
は合宿で行われ、発表が終わっても逃げしてくれない。夜はながい。これはコ
ンサルタント会社に限った話ではない。経験を血肉にしていくのは知的内省
を自律的に継続して行う習慣を体得しないといけない。
評価は積分であるが管理は微分である。結果を責めてもいいが、それだけで
は対策にはならない。プロセスを評価しフィードバックすることである。この適
切なフィードバックがOJTの重要な点である。上に立つ者はタイムリーで適切
なフィードバックを行う責任があることを自覚しなければならない。
表の 15 項目に点数を入れると、あなたの会社のビジネスリーダー輩出の組織能
力を評価することができる。
©KPCI 宮川雅明
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人材プール
育成ビジョン
機会創造
(育成ビジョン ビジョン、戦略、特性に応じた多様 挑戦できる業務や立場が計画的
な候補者のプールを持つ。
或いは柔軟に設定される。
の説明)
仕組み
1
一隅を照らす。候補者一人ひと
りに合わせたオーダーメイドの
育成計画がある。或いは多様
性を認める。
~組織的また
複眼をもって候補者を検討し
はルールとして
2 選抜する仕組みや場が取締役
フォーマルに行
会にあること。
われている~
答えのない、不確定な要素の
1 多い課題を提供する。または、
意図的につくる。
2
3年程度で異質な業務を経験
するローテーションであるこ
と。(ただし、研究所など例外も
ある)
徒弟的環境
先輩の知識と判断のもとになった知
恵を日々習得する職場であり、適切
なフィードバックがある。一人ひとり
が主体的に考え行動する職場であ
る。
事業計画、予算制度、目標管理
1 制度など一連のマネジメントプ
ロセスになっている。
マネージャー層の育成に対する
2 姿勢や行動を評価する仕組みが
あること。
横断的にメンバーが集う、課題
3 が厳しく要求され、活学の教育
プログラムがある。
3
創造性を発揮するカイゼン活
動、提案活動、小集団活動、公募
プロジェクトなどを日常的に行
う。
上級管理職クラスに伯楽(資質・
ローカル、リージョナル、グロー
能力を見抜き、それを引き出す
4 バルな単位での課題を提供す
人が上手い人)が存在し、徒弟
る。
的に関与すること。
4
主体的に知的内省を行う機会や
場を一定の頻度で、フォーマル・
インフォーマルを問わず、設定す
る。
選抜のための仕組みやプロセ
3 スがあり、役員クラスがそれを
共通認識していること。
運用
4
~仕組みが目
的的に意味あ
るように展開
するための配
慮、工夫として
~
中計などのサイクルにあわせ
5 てプールする人材も更新する
こと。
機能横断的な課題、損益感覚
5 を実感するようなプロジェクト
を担当すること。
知識と熟練を繰り返すための徒
弟制度またはそのようなOJT。
5 結果だけでなくプロセスを含め
た適切で適時なフィードバックを
行う。
©Katana Performance Consulting Inc 2009
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13回目「要員設定のアプローチ」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
■ 要員設定6つのアプローチ
売上原価の中にある労務費は変動費的で一般管理費の中にある人件費は固定
的といわれる。例えば、生産管理部門や設計部門は制服を着ており、工場内か隣接
している敷地内にいるので労務費として算定される場合もあるだろうが、人件費
とみた方がよいと思える。
ここで扱う要員設定は人件費である。下記6つのうち、人材プール戦略アプロー
チ以外は 20 年以上前から取り組まれているものであるが意外と知られていない。
一般的なのは人件費型アプローチである。間接部門である人件費は業務の質や
量からのアプローチより人事制度からのアプローチが多い。成果貢献報酬制度や
雇用の多様化、アウトソーシング、異動、自然減と採用の調整などである。
相互評価アプローチ
資源配分としてどの部門・機能が余剰でどの部門を
強化すべきなのか…
要員の適正化ニーズ
ZBB型アプローチ
増員要求を評価・査定する仕組みで限られた資源を
優先順位から配分する…。リストラしないと…。
・部門間でみた時のバラツキ?
・他社と比べて?
問診
・このままだと人件費が膨れていく?
・売上や利益に応じた人件費率は?
・戦略と人材をもっと密接に?
ニーズ分析・診断
~何を問題とするか、戦略などとの関
係から方向性と優先順位を決める~
組み合わせ /
パターン化
・増員した割には効果が?
質量アプローチ
少数精鋭を実現したい…。業務の質と量から要員を
科学的に見積りたい…。
人件費型アプローチ
成果主義配分に…。総額人件費から設定したい…。
変動費管理化したい…。人事制度で…。
データベースアプローチ
競合他社や業界水準など他データと比較して…。財
務的指標から自動的に…。
人材プール戦略アプローチ
長期的、戦略的に必要な人材モデルから資質別の人
材構成を考えたい…。
相互評価アプローチというのは、組織風土に関係する。過去に何度か人事制度的
に要員や総額人件費を調整したことがあると現場からは、「あの部門は人が多くな
いか?」「あの部門のあの仕事は本当に必要か?」「目先のことしかできず将来へ
の活動が全くできない陣容であることを知っているのかな?」といった疑問の声
があがるものである。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
こうした声は各部門がどのような仕事をどのような目的で行っているのか、そ
の成果は何かが見えない、知らないことが原因の一つである。悪戯に制度的に絞
ろうとしても禍根を残しかねない。もし時間があるのであれば部門間でお互いの
業務を相互評価してみることである。要員の質と量は人事部門だけの問題ではな
い。
■From/To 分析
要員に関する部門間の意識を醸成する方法が相互評価アプローチである。下表
はそのサンプルである。
From/To分析結果 あなたの課の業務診断 (サンプル)
課名
業務名
有効度
必要度
経理
×
負荷
対策
○
廃止
◎
見直し
日別債権管理
×
旅費精算
○
入出金処理
○
○
○
現状
週間成約報告
△
◎
△
強化
月次決算
×
○
◎
活用
留意点
From/To といっているのは、あなたの部門から当部門の業務がどのように評価さ
れているか、当部門があなたの部門業務をどのように評価しているかを見るとい
うことである。経理や人事部門は基本業務が多く、システム化などで効率化されて
はいるがやめるわけにはいかない業務を多く抱えている部門(機能)である。営業
部門などは内勤事務処理比率が意外と多いものである。
そうした業務間情報を相互にみることで活用や見直し或いは廃止といった方向
性を見出すことで、業務または機能単位で強化人員、活用人員、創出人員といった
方向性を導くアプローチである。
■プロジェクト感覚で優先順位をつける ZBB 型アプローチ
ゼロ・ベース・バジェティングの略である。カーター元米国大統領がジョージア州
知事時代に州予算を改善するために行ったことで有名になった。
過去にこだわらずゼロベースで発想するというもので、プロジェクト単位で優先
順位をつけていく。例えば100のプロジェクトまたは予算案件があったとする。従来
は予算を全ての案件に僅かでも配分できるように按分するよう配慮するのである
が、中途半端なものでは成果が出ないということがある。そこで必要な予算を優
©KPCI 宮川雅明
- 47 -
月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
先順位ごとに配分する。仮に70位で予算がなくなったら、残り30のプロジェクトに
は予算は配分しないというもの。プロジェクトの優先順位を上から並べていくので
ラインキングタワーともいわれた。この発想を要員設定に応用する方法である。基
本機能的な業務はかなり効率化してきた組織や戦略的案件つまりプロジェクトで
戦略実行している組織に適した手法である。新規プロジェクトを立ちあげても求め
る人材ではない、兼務兼務で実行が疑わしいプロジェクトといった経験を持つ人は
多いだろう。
■ 業務とその成果から導く質量アプローチ
業務の質と量から要員(人材の質と量)を設定する方法でもっとも確かなアプロ
ーチといえる。これは以前紹介した業務マップ、S型業務®・T 型業務®といった手法
を使い、業務改善を前提に業務の成果(質)と量に応じて要員(工数)算定するアプ
ローチである。
中期経営計画を行っている会社は多い。3 年後毎に戦略を見直すが、戦略に応じ
た組織機能の定義、業務体系の見直し、役割設定などがシスティマティックに展開
されていないので戦略と業務がリンケージされないケースに適した取り組みであ
る。
■データベースアプローチ
データベースアプローチというのは財務や生産性指標などを継続して測定する
ことで要員の目標設定を行うアプローチである。労働分配率や労働生産性、一人
当たり売上高、時間当たり売上高、面積あたり売上高など事業及び業務特性に応じ
て設定する。一人当たり売上高は競合他社比較、面積あたり売上高は社内時系列
で比較するなど工夫を要する。ただ、データベースアプローチは数値の比較である
ので対策を示唆してくれるものではない。質量アプローチが必要になる。目標設定
に役立つアプローチである。
■人材プール戦略アプローチ
人材プールに関しては 6 月 5 日号で紹介させていただいた。必要な人材モデル
群ごとに必要な人材数を長期的に設定し、育成やローテーションなどを考慮して社
内人材基盤を築いていくアプローチである。団塊世代の退職に備え要素技術や固
有技術を有するスペシャリストを長期的、計画的に育成していく取り組みなどはそ
の代表である。
グローバリゼーションの中、不確実であるがゆえに先見性を必要とするビジネス
リーダーなどコア人材の長期的人材プール戦略が今後重要視されてくるであろう。
この戦略は 10 年単位で計画するアプローチである。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
■ 要員設定アプローチの選択
6つのアプローチを単独で行う必要はなく組み合わせて実施していくことが実
際的である。下記はどのアプローチをとった方がよいかをみる簡易アンケートであ
る。★シミュレーション用エクセルをダウンロードしてください。
12の設問に点数を入れてください。強い肯定なら5点です。点数を入力するとグラフも自動的に変わります。
要員設定6つのアプローチ
①
②
③
ZBB型アプローチ
④
⑤
質量アプローチ
⑥
⑦
人件費型アプローチ
⑧
⑨
データベースアプローチ
⑩
⑪
人材プール戦略アプローチ
⑫
1 相互評価アプローチ
2
3
4
5
6
設問
部門間の人材のバラツキ(質と量)が気になる。
要員について部門間の声をこれまで聞いたことがない。
予算案件について戦略的優先順位のランキングをつけていない。
業績悪い時は何でも予算を切るといった発想が強い。
業務の質と量から要員を設定することはない。
部門など職場単位で「業務と人と時間」に関する一覧表を作成することはない。
総額人件費などの計画やシミュレーションなどやっていない。
人事制度などの工夫で最適人件費などの改善など取り組んだことがない。
一人当売上高や労働分配率など競合他社と比較して要員設定など仕組みとしてやっていない。
人材に関する数値において、目標管理や方針管理などの指標とリンケージしていない。
人材モデル毎の要員設定を仕組みとして持っていない。
育成など長期的人材計画を仕組みとして持っていない。
回答種別小計
合計
比率(満点60点)
どちらと
強い肯定
弱い否定 強い否定
肯定(4) もいえな
(補)横計
(5)
(2)
(1)
い(3)
4
4
3
3
2
4
1
1
3
4
5
5
10
16
9
39
65.0%
2
2
要員設定アプローチ別計
質量 人件費型 データベース 人材プール
6
6
2
7
10
相互評価 ZBB
8
©KPCI 宮川雅明
4
4
3
3
2
4
1
1
3
4
5
5
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
連載 人材マネジメント指標Human Resoruces Metrics
14回目最終回「ホワイトカラー要員設定」
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社(KPCI) 代表取締役
宮川雅明
■ 要員設定は正しいマネジメント手順で行うこと
ホワイトカラーとは工場ラインや物流など現場を除く全ての人を対象とする。ホ
ワイトカラーの生産性は改善、システム化、アウトソーシングなどで取り組まれてき
た。しかし、その多くは標準的な仕事であり、事業にとって付加価値を生まない業務
である。例えば、給与振込み業務などはやめることはできないが、業績には貢献し
ない、よってシステム化しアウトソーシングする。必然、残された領域はホワイトカラ
ーの中でも知的創造的な業務のウェートが高いはずである。
ホワイトカラーの全てが戦略的・目的的に仕事をしているわけではない。一生懸
命であっても戦略、目的が変化すればその業務は無目的となる。
ホワイトカラー要員設定の基本プロセス
業務成果の再定義
資源配分(工数)の設定
目的的改善と方法改善
業務プロセス別工数とスキル要件
ピークオフや発生サイクル、モチベーションなど考慮し
た分業分担
よって、ホワイトカラーの要員設定を行う前提として、戦略から組織機能、業務成
果の定義、そして役割設定など正しいマネジメントの順番で展開する必要がある。
戦略とは優先順位と資源配分が本質である。よって、優先順位が相対的に低くなっ
た機能、業務については資源配分を少なくし、高い業務には多く配分する戦略性が
求められる。
■戦略的資源配分
図は業務優先度評価シミュレーション(Task Priority Evaluation)である。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
業務優先度評価シミュレーション(Task Priority Evaluation)
価値ウェート(3点満点)
工数ウェート
ギャップ
業務中分類 価値と工数 A:将来の売上に B:現在の売上維
各業務の価
計(A+B) 値ウェート 時間(月間) 工数比率 価値(-)工数
貢献する
持に貢献
1 既存顧客ニーズ分析
2 既存顧客の日々売上実績把握
3 既存顧客への新規提案
4 既存顧客クレームや問い合わせ
5 見積作成含めた営業活動
6 デリバリーや発注業務
7 既存顧客事業特性の分析
8 現在顧客でない潜在顧客の分析
9 顧客周辺ビジネスの研究
2
0
3
2
0
0
3
2
3
3
1
1
3
3
1
2
1
1
15
16
5
1
4
5
3
1
5
3
4
31
16.1%
3.2%
12.9%
16.1%
9.7%
3.2%
16.1%
9.7%
12.9%
100.0%
100
100
100
350
550
400
50
10
10
1670
6.0%
6.0%
6.0%
21.0%
32.9%
24.0%
3.0%
0.6%
0.6%
100.0%
10.1%
-2.8%
6.9%
-4.8%
-23.3%
-20.7%
13.1%
9.1%
12.3%
0.0%
業務の中分類単位で行うのが要員設定を行う上で最も実際的である。(S型業務
®、T型業務®に関しては 10 回目連載を参照いただきたい。)
価値ウェートの考え方は一つのサンプルである。将来性や現状といった時間軸も
しくは、構造改革・課題解決と維持管理的といった区分が基本になる。工数は月間
で検討している。年間工数の場合、ピークオフなどが見えにくいケースがある。この
事例では 1670 時間であるので 10 人ほどのチームであることがわかる。
業務5の見積作成含めた営業活動が-23.3%と最も改善要求が高い業務であ
ることがわかる。
■ 要員設定の基本は改善
業務5の業務の実態を分析すると図のようになる。1件あたりの時間は 11 時間で
ある。先の業務優先度評価シミュレーションにある 550 時間を見ると月 50 件の処理
を行っていることが想像できる。
改善の基本は目的追求から始まる。そして方法改善、最後に人の改善である。顧
客にとっての成果を考えながら目的的に改善する。主な内容は図のとおりである。
改善の結果、中分類の単位時間が11時間から3.5時間に削減されたことがわかる。
T型業務®は1.5時間であり、営業が行う必要はない。
現状のやり方だと営業マン一人の属人性が高く顧客情報も個人に埋もれ分業が
取りにくいプロセスである。更に、一人に人間にS型業務®、T型業務®のプロセスが
混在することは見えないロスを生む。人は全く無駄なくプロセスを展開することは
できず、プロセスごとに余裕を作るものである。よって、単位業務は 11 時間とある
が実際はもっと多くの時間を要しているものと推察できる。
このようにS型業務®、T型業務®別にプロセスが工数で見えることで、どのよう
なスキルを持った人が何人必要かといったことが具体的にデザインすることが可
能になる。
©KPCI 宮川雅明
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月刊人事マネジメント 14 回連載人事マネジメント指標 08 年 8 月号~09 年 9 月
(単は時間)
1回の受注業務における既存の業務プロセス
S型業務® T型業務®
1 既存品はカタログ番号からの受注メール処理
0.5
2 納期回答
0.5
3 納期交渉
2.0
4 新たな仕様のものは別途訪問(訪問時間含む)
6.0
5 営業が簡便な図面を作成し見積もりを概算
1.0
6 納期と価格を顧客に連絡、交渉
0.5
7 設計部門へ設計依頼
0.5
S型業務®/T型業務®各計
2.5
8.5
11
単位業務時間
改善
1回の受注業務における改善後の業務プロセス
1 既存品はカタログ番号からの受注メール処理
2 新規のものはグレード別に見積
3 特殊な仕様のものはTV電話など活用
4 特殊な仕様のものはTV電話など活用2回目
5 納期と価格交渉
S型業務®/T型業務®各計
単位業務時間
(単は時間)
S型業務® T型業務®
0.5
1.0
1.0
0.5
0.5
2
1.5
3.5
ホワイトカラーの要員設定を考える際には、業務の成果を前提に、改善を行う。その結
果、S型業務®量とT型業務®量が見えてくる。このケースの場合、現状では営業の工数
が1件あたり11時間を要していたが、改善プロセスを見ると、営業が必ずしも行う必要
がないことが伺える。
また、現状では営業個々に業務が属人的についているが、改善後では特殊な仕様の
ものだけスペシャリストが分担するというプロセスの分業が見えてくる。
標準品の納期交渉がT型業務®になっ
ている。これは顧客にとっても改善し
たい時間。多くは社内調整である。
よって在庫基準などから納期回答は
例外を除き、一定のルールを決めて
顧客から見えるようにしておくことが
顧客の方が判断する。無理なやりとり
より、顧客側も受注企業側も計画性を
重視するようにする。
営業活動は、意外と移動時間の割合
が多い。提案や十台クレーム以外行
かない方が顧客にとっても効率的。
Skypeなど無料で映像のやりとりもで
きる時代。顧客が求める成果は、早期
の見積りと仕様上の特徴を具体的に
伝えたいこと。また、映像を使うこと
でだらだら話しもしなくなる。
営業個々が簡単な図面を作成するこ
とはスキル上、意味あることである
が、顧客が求めているのは早期で確
かな仕様の確認と見積り。こうした業
務はスペシャリストに集中した方がよ
い。営業をローテーションや教育で設
計知識を学習する機会を提供する方
策は別途とってもよい。
特殊な仕様のものは1回で済むとか
限らない。やってみて気付くことも
ある。恐らくはこれまでも複数の打
ち合わせを行っていたはず。よって
最初から2回目を計画しておく。
このホワイトカラー要員設定手法は正しいマネジメント手順を踏んでいるだけで
ある。営業を事例に取り上げたが、購買、生産管理、知的財産部、経営企画など様々
なホワイトカラー部門がある。業務特性を戦略的に分析することで、ホワイトカラー
の工数だけでなく、目標管理、コンピタンス・マネジメントまで統合的にマネジメント
することが可能となる。特にホワイトカラーの中でもナレッジワーカーの要員設定
を行うことが結果的に戦略的成果の定義とそれに適した目標工数、コンピタンスモ
デルをより明確にし、結果的に知的生産性を高めることに繋がっていく。
今回で連載は終了します。ありがとうございました。
カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社 代表取締役 宮川雅明
©KPCI 宮川雅明
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