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第1章 総論

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第1章 総論
高知県会計事務処理要領
第1章 総論
第1節 財務の概念
事 項
1財務の概念
2財務の範囲
説
明 ・ 根 拠 法 令
地方公共団体が行う行政目的を達成するための経済行為の全般にわたって認められる事務、
すなわ
ち予算、収入、支出、決算、財産等に関する事務や、これらに附帯する事務の全てについて、地方自
治法では、これを「財務」と総称しています。
これらは、一般社会の企業等の経済行為では、通常「会計」という用語で観念されています。
地方公共団体においては、「会計」とは、収入、支出のうちの現金の収支の執行手続、決算、現金
及び有価証券並びに物品に関する事務の総称をいうため、「会計」は「財務」の一部という位置付け
であり、この点、一般社会の経済で用いられている「会計」という用語よりも狭義であるといえます。
なお、地方公共団体では、現金、有価証券及び物品の受入れ、払出しを特に「出納」と呼んでいま
す。
地方自治法からみた財務の範囲は、次のとおりです。
第1章 総論 第1節
-1-
高知県会計事務処理要領
第1章 総論 第1節
-2-
高知県会計事務処理要領
第2節 会計年度と会計区分
事 項
説
明 ・ 根 拠 法 令
1会計年度
(1)会計年度の
会計年度とは、地方公共団体の収入及び支出を区分し、整理するために設けられた一定の期間を
意義
いいます。
地方公共団体の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わります(自治法第208
条第1項)。
なお、一会計年度における一切の収入を歳入といい、一会計年度における一切の支出を歳出とい
います。
(2)会計年度独
会計年度独立の原則とは、各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもって充てなければな
立の原則
らないという原則をいいます(自治法第208条第2項)。
(3)会計年度独
会計年度独立の原則をあまりにも厳格に貫くと、地方公共団体の財政運用を硬直化させ、かえっ
立の原則の例 て不利、不経済となる場合もあるので、次のような例外を認め、効率的な運用を図ることとしてい
外
ます。
・継続費の逓次繰越し(自治法第212条、自治令第145条)
毎会計年度の年割額に係る歳出予算の経費の金額のうち、その年度内に支出を終わらなかったも
のは、継続年度の終わりまで逓次繰り越して使用できる。
・繰越明許費(自治法第213条、自治令第146条)
予算成立後の事由に基づき、年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについては、予算
の定めるところにより、翌年度に繰り越して使用できる。
・事故繰越し(自治法第220条第3項、自治令第150条第3項)
年度内に支出負担行為をしたもので、避けがたい事故によって年度内に支出が終わらないものを
翌年度に繰り越して使用することができる。
・歳計剰余金の繰越し(自治法第233条の2)
各会計年度において決算剰余金を生じたときは、翌年度の歳入に編入しなければならない。
・過年度収入/過年度支出(自治法第243条の5、自治令第160条、第165条の8)
出納閉鎖後の収入支出は、これを現年度の歳入歳出としなければならない。
・翌年度歳入の繰上充用(自治法第243条の5、自治令第166条の2)
会計年度経過後、歳入が歳出に不足するときは、翌年度の歳入を繰上げてこれを充てることがで
きる。
2歳入歳出の
会計年度所属
区分
(1)会計年度所
会計年度所属区分とは、個々の収入又は支出がいずれの会計年度に所属するかの区分ですが、こ
属区分の意義
の区分の基準については次の二つの考え方があります。
ア 発生主義(予算主義)
歳入歳出の原因すなわち主として債権又は債務の関係が発生した日の属する年度を基準とする
もので、一般に発生主義又は予算主義といわれています。
第1章 総論 第2節
-3-
高知県会計事務処理要領
イ 現金主義(決算主義)
債権又は債務の発生の事実に関わりなく、現実に収入又は支出された日の属する年度を基準とす
るものであり、一般に現金主義又は決算主義といわれています。
(2)会計年度所
地方自治法上の会計年度所属区分は、原則として発生主義をとり、例外として過年度収入、過年
属区分の原則
度支出のように現金主義をとっています。
(3)歳入の会計
年度所属区分
歳入の会計年度所属区分は次によります。
【自治令第142条】
区
納期の
一定し
ている
収入
随時の
収入
分
所 属 年 度
根
拠
会計年度の末日までに申告があったと
き又は納入通知書等を発したとき
納期の末日の属する年度
令142①
会計年度の末日までに申告がなかった
とき又は納入通知書等を発しなかった
とき
申告があった日又は納入通
知書等を発した日の属する
年度
令142②
納入通知書等を発するもの(使用料、
手数料、分担金等)
納入
地方交付税、地方譲与税、交
付金、負担金、補助金、地方
通知
書等
債その他これらに類する収
を発
入、他会計からの繰入金
しな
その他(口頭により納入の通
いも
知をするもの、委託徴収金)
の
納入通知書等を発した日の
属する年度
その収入を計上した予算の
属する年度
令142①2
歳入に係る督促手数料、延滞金及び滞納処分費
(私法上の違約金は含まない)
令142①3
領収した日(出納員、現金取 令142①3
扱員又は徴収、収納事務の受
託者が受領した場合の日を
含む)の属する年度
当該歳入の属する年度
令142③
(注)
1 収入には、公金振替による振替収入を含みます。
2 「納期の一定している収入」とは、納入すべき期日が法令、契約等によってあらかじめ定め
られている収入をいいます。
(例 条例、契約等により納入期日が定められている使用料、負担
金、財産収入)
3 「随時の収入」とは、収入の性質の随時性に着目し、その事実に基づいて収入事実が発生の
つど徴収するものをいいます。
4 「納入通知書等」とは、納入通知書及び納税通知書その他納税の告知に関する文書をいいま
す。
5 「納期の末日」とは、民法第 142 条、地方自治法第4条の2第4項、地方税法第 20 条の5又
は当該期日が土曜日に当たる場合にその翌日をもって納期の末日とする旨の法令、条例若しく
は規則の規定の適用がないものとしたときの納期の末日をいいます。
(4)歳出の会計
年度所属区分
歳出の会計年度所属区分は次によります。
【自治令第 143 条第1項】
経
費
所 属 年 度
根 拠
(1)地方債の元利償還金、年金、恩給の類
支払期日の属する年度
令143①1
(2)給与その他の給付(年金、恩給の類を除 支給すべき事実の生じた時 令143①2
きます。
)
の属する年度
第1章 総論 第2節
-4-
高知県会計事務処理要領
(3)地方公務員共済組合負担金及び社会保 支出の原因である事実の存 令143①3
険料
した期間の属する年度
(4)賃借料、光 ア 支出の原因である事 支出の原因である事実の存
熱水費、電
実の存した期間が1年 した期間の属する年度
信電話料
度のもの
の類
イ 支出の原因である事 支払期限の属する年度
実の存した期間が2年
度にわたるもの
(5)工事請負費、物件購入費、運賃の類及び 当該行為の履行があった日 令143①4
補助費の類で相手方の行為の完了があ の属する年度
った後支出するもの
(6)その他
支出負担行為をした日の属 令143①5
する年度
【自治令第 143 条第2項】
旅行の期間が2年度にわたる場合における 当該2年度のうち前の年度 令143②
旅費
の歳出予算から概算で支出
することができる。
当該旅費の精算によって生
ずる返納金又は追給金は、精
算を行った日の属する年度
の歳入又は歳出とする。
(注)
1 「給与その他の給付」とは、自治法第2編中の第8章給与その他の給付と同じであり、費用
弁償、旅費も含まれます。
2 3月分の時間外勤務手当、特殊勤務手当等は、4月1日以降に支出しても旧年度となります。
3 退職手当の年度区分は、裁定の日ではなく「支給すべき事実の生じた時」
、すなわち退職又は
死亡の日の属する年度です。
4 「社会保険料」とは、健康保険法、船員保険法、厚生年金保険法、雇用保険法等の規定によ
り地方公共団体が事業主として納付するものをいいます。
5 電気料、水道料等は、3月に使用した分が含まれている場合であっても検針日が4月であれ
ば新年度となります。
6 電話料の3月分通話料と4月分使用料等が一括請求されたときは、通話料は旧年度、使用料
等は新年度の所属となります。
<事例>
使用料金期間
通話料金期間
支払期限
3. 1~3.31
3.11~4.10
4. 1~4.30
4. 1~4.30
2.11~3.10
3. 1~3.31
2.21~3.20
3. 6~4. 5
4.10
4.30
4.20
5.10
支出の会計年度所属区分
使用料金
通話料金
旧年度
新年度
新年度
新年度
旧年度
旧年度
旧年度
新年度
7 「履行があった日」とは、履行確認の日をいい、検査の日です。
8 「補助費の類」とは、補助金、負担金等をいい、寄附金は含みません。
9 「その他」には、扶助費又は損害保険料が含まれます。
10 旅行期間が2年度にわたる旅費を精算払する場合は、旧年度分と新年度分とに分けて支出し
ます。
第1章 総論 第2節
-5-
高知県会計事務処理要領
3会計区分
(1)会計区分の
会計は本来、財政、出納の状況を全体として把握するため単一であるのが適当です(単一会計の
意義
原則)。
しかし、現実には、地方公共団体の複雑多様化した事業の中で特定の事業で独立して経理を行う
必要がある場合、例外を認めて会計を区分して対応しようとするものです。
そこで、地方公共団体の会計は、一般会計及び特別会計に区分するものとされています(自治法
第209条第1項)。
一般会計
会計
普通会計
企業会計以外の特別会計
特別会計
企業会計
(2)一般会計と
特別会計
ア 一般会計
一般会計は、地方公共団体の財務の根幹をなす基本的な会計です。特別会計に属さない全ての
歳入歳出をいいます。
イ 特別会計
特定の事業を行う場合に、その特定の歳入を財源として独立した会計によって経理する必要が
あります。これを特別会計といいます。
特別会計は、法律の規定にある場合を除き、次のような場合に限り条例で設置することができ
ます。
(ア) 地方公共団体が特定の事業を行う場合で、例えば、地方公営企業法の適用のない公営企
業、印刷事業、市場事業等です。
(イ) 特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳出と区分して経理する必要がある場合で、
例えば、用品等調達特別会計、土地取得事業特別会計、各種資金特別会計等です。
(3)普通会計及
び企業会計
ア 普通会計
普通会計とは、決算統計上の区分であり、一般会計と企業会計以外の特別会計とをいいます。
なお、地方公共団体の普通会計の経理方式は、現実に収入支出した金銭を中心にした現金主義
を取っています。
イ 企業会計
企業会計とは、私企業の会計制度を取り入れた地方公営企業法の適用のある企業について用い
られる会計をいいます。
なお、企業会計は発生主義に基づく複式簿記の方法により経理されます。
第1章 総論 第2節
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高知県会計事務処理要領
第3節 予算
事 項
1予算の意義
2予算に関す
る原則
(1)会計年度独
立の原則
説
明 ・ 根 拠 法 令
ア 予算は、一会計年度における歳入歳出予算の見積り又は計画です。
すなわち、一会計年度において地方公共団体が必要な所要経費とこれを賄う所要財源の見通し
をたて、その種類、金額を目的別又は性質別に分類し、集計、積算した計画であり、財政運営の
指針となるものです。
イ 予算の歳入については、一応の収入の見積りですが、歳出については、予算の執行権者に対し
て執行し得べき支出の範囲を定め、支出の権限を与え一種の法規範としての効力をもつものです。
この意味において、この歳出予算に基づかないもの又は予算額を超えての支出は違法となるも
のです。
本章第2節1(2)「会計年度独立の原則」の項参照
(2)総計予算主
一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければなりま
義の原則
せん。これを総計予算主義の原則といいます(自治法第210条)。
(3)予算事前議
予算は年度開始前に議会の議決を経なければなりません(自治法第211条第1項)。この原則の例
決の原則
外として、専決処分(自治法第179条第1項、第180条第1項)、弾力条項の適用(自治法第218条第4項)
があります。
(4)予算公開の
予算が民主的にして能率的な行政の確保を図るためには、住民の理解と協力が不可欠です。この
原則
ために住民に対して予算を公開することをいいます。この原則から予算要領の公表(自治法第219条
第2項)、財政状況の公表(自治法第243条の3第1項)を定めています。
3予算の種類
(1)当初予算と
当初予算は、毎会計年度予算を調製し、年度の開始前に議会の議決を経た(自治法第211条第1項)、
補正予算
一会計年度を通じて定められる基本的な予算です。
補正予算は、当初予算成立後に生じた事由に基づいて、既定の予算に追加その他の変更を加える
ものです(自治法第218条第1項)。
(2)暫定予算
暫定予算は、当初予算が年度の開始までに成立する見込みがない場合等、特別の必要が生じた場
合につなぎとして一会計年度の一定期間に係る予算です(自治法第218条第2項)。
4予算の内容
予算は次の事項により構成されています(自治法第215条)。
(1)歳入歳出予
一会計年度における一切の収入及び支出の内容であり、一般的に予算といえば歳入歳出予算をい
算
います。
(2)継続費
継続費は、数年にわたって継続的な支弁を履行する必要がある場合において、その経費の総額及
び年割額につき、あらかじめ一括して議会の議決を経たうえ数年度にわたって支出することができ
る経費をいいます(自治法第212条)。
(3)繰越明許費
会計年度独立の原則の例外として、歳出予算の経費のうち、その性質上又は予算成立後の事由に
基づき年度内に支出を終わらない見込みのあるものについて、予算の定めるところにより、翌年度
に繰り越して使用することが認められている経費を繰越明許費といいます(自治法第213条)。
歳出予算の繰越に当たっては、その財源も繰り越しすることが義務付けられており(自治令第146
第1章 総論 第3節
-7-
高知県会計事務処理要領
条第1項)、繰越しをしたときは、翌年度の5月31日までに繰越明許費繰越計算書を調製し、次の
議会に報告しなければなりません(自治令第146条第2項)。
<繰越の事務手続>
財源に国費のある場合は、まず各省庁の長の定めるところにより処理します。
・ 繰越承認申請書
・ 繰越等事項(見込)調
・ 繰越事項別調書
・ 繰越計算書
・ 繰越理由一覧表
を作成し、各省庁の長又は財務局長に申請し、承認を得ます。
(注)明らかに年度内に終わらない工事についても、完成年月日を年度末日(3月31日)にして契
約締結し、繰越承認の手続を待って、3月31日付けで工期の変更契約を締結します。ただし、繰越
明許費に係る予算が既に議会で議決されているものについて、工期等の関係で明らかに年度内に完
了しない工事については、契約時に年度をまたがって契約を締結する場合があります。
ア 国費を財源にしている場合
繰越明許に係る翌年度債務負担の承認を得ているもの
イ 県単独事業
全て対象です。
(4)債務負担行
債務負担行為とは、歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるもの
為
を除き、地方公共団体が債務を負担する行為をいいます。
この場合、債務負担行為として予算で定めておかなければなりません(自治法第214条)。
当該年度に支出義務を負うものは歳出予算に計上されるので、後年度に支出義務を負うものが債
務負担行為となりますが、後年度に係るものでも継続費あるいは繰越明許費として予算に定められ
たものは除かれます。
後年度に支出義務を負う点、会計年度独立の原則の例外となりますが、後年度にその経費につき
支出を行う場合は改めて歳出予算として計上しなければなりません。
(5)地方債
地方債とは、地方公共団体が必要な財源を第三者から借入れを行うことによって負担する長期に
わたる県の債務をいい、地方債を財源として充当できる事業は、地方財政法等により一定のものに
限定され、また、これを起こすには総務大臣の協議を必要とします(自治法第230条・第250条、地
方財政法第5条・第5条の3)。
地方債を起こす場合は、起債の目的、限度額、起債の方法、利率及び償還方法を予算で定めなけ
ればなりません(自治法第230条第2項)。
(6)一時借入金
一時借入金とは、会計年度中に一時的に収支の不均衡が生じ、歳計現金が不足した場合、その支
払資金の不足を補うために借り入れる借入金をいい、その最高額は、予算で定めなければなりませ
ん(自治法第235条の3第1項及び第2項)。
一時借入金は、その会計年度の歳入をもって償還しなければなりません。したがって、その償還
期限は当該年度の出納閉鎖期日までとなります(自治法第235条の3第3項)。
一時借入金の最高額とは、1回の借入金額をいうものではなく、ある時点における一時借入金の
現在高の最高額をいいます。
(7)歳出予算の
歳出予算の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互にこれを流用することができませ
各項の金額の ん。ただし、歳出予算の各項の経費の金額は、予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定める
流用
ところによりこれを流用することができます(自治法第220条第2項)。
第1章 総論 第3節
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高知県会計事務処理要領
5予算の執行
及び事故繰越
し
(1)予算の執行
(2)事故繰越し
予算の執行、すなわち地方公共団体の収入や支出を実行する行為は、一定の手続に従って行わな
ければなりません。ことに、歳出予算の執行は、その定められた目的に従って適正に使用され、完
全に予算の目的を達成することが要請されます。歳出予算をして、所期の目的を達し、十分な効果
を発揮させ得るかどうかは、予算の執行の手続の当否にあります。
このため、予算の執行に関する基準として、次の手続を定めなければならないこととされていま
す(自治法第220条第1項、自治令第150条第1項)。
ア 予算の計画的かつ効率的な執行を確保するための必要な計画を定めること。
イ 定期又は臨時に歳出予算の配当を行うこと。
ウ 歳入歳出予算の各項を目節に区分するとともに、当該目節の区分に従って歳入歳出予算を執
行すること。
事故繰越しは、年度内に支出負担行為をし、年度内に完了すべき工事等の履行が、災害等避けが
たい事故のため遅延し、年度内にその支出を終わらなかったもの(当該支出負担行為に係る工事そ
の他の事業の遂行上の必要に基づき、これに関連して支出を要する経費の金額を含む。)について
予算を翌年度に繰り越して使用することをいいます(自治法第220条第3項)。事故繰越しは、予算
執行の段階での処理であり、予算の内容である繰越明許費とは違って議会の議決は不要です。
事故繰越しをする場合は、繰越額の財源を翌年度に繰り越さなければなりません(自治令第150
条第3項)。
(3)予算の翌年 ○継続費の逓次繰越しと繰越明許費との相違点
度繰越しの比
継続費の逓次繰越し
較と相違点
・はじめから履行が数年度要するものであるこ
と。
・その経費の総額と年割額が、あらかじめ定め
られていること。
・経費自体には別段の制限がないこと。
・逓次繰越使用の財源は、予定財源で足りるこ
と。
繰越明許費
・翌年度1年限りであること。
(さらに事故繰越しは可能)
・必要金額であること。
・経費には要件があること。
・繰越使用の財源は、必ず確定した財源を伴っ
ていなければならないこと。
○繰越明許費と事故繰越しとの相違点
繰越明許費
・歳出予算の経費に関するものであること。
・あらかじめ年度内に経費を使用し終わらない
おそれのあることが予想されるもので、当該
年度で全額未使用の場合も対象となること。
・予算の内容として、予算で定めなければなら
ないこと。(議会の議決が必要であること)
・具体的に支出負担行為がなされていなくても
可能であること。
第1章 総論 第3節
事故繰越し
・歳出予算の経費の具体的な金額に関するもの
であること。
・あらかじめ繰越しは予想されなかったが、年
度内に経費の金額の使用が終わらない事実
に対して行われること。
・避けることができない事故のためということ
が要件であること。
・予算で定めることを要せず、予算の執行段階
において、行われるものであること。(予算
執行過程の繰越しであること)
・具体的に支出負担行為が行われていなければ
ならないこと。(関連経費の金額は例外)
-9-
高知県会計事務処理要領
第4節 出納閉鎖
事 項
説
明 ・ 根 拠 法 令
1出納閉鎖及
出納閉鎖とは、会計年度が終了した後において、その終了した年度に属する予算の執行結果である
び出納整理期 収入支出の経理を完結して、その年度の一切の現金経理を閉鎖することをいい、5月31日が、閉鎖の
間の意義
期日とされています(自治法第235条の5)。
また、会計年度終了後の4月1日から、この出納閉鎖期日の5月31日までの期間を出納整理期間と
いい、この期間に終了した年度の収入支出の整理をしなければなりません。決算整理のための期間で
あることから、終了した年度に属する収入調定、支出負担行為は原則としてできません。支出命令は、
支出負担行為が会計年度末の3月31日までに行われている限り、
出納整理期間中にも行うことができ
ます。
出納整理期間中には、
旧年度(過年度)の収支整理事務と新年度(現年度)の会計事務とが並行処理さ
2出納整理期
間中の会計事 れるので、その処理に当たっては会計年度所属区分に留意を要します。
務
会計年度中の歳出の誤払い又は過渡しとなった金額を返納させるときは、
収入の手続の例により当
(1)誤払金等の
該支出した経費に戻入することとされています(自治令第159条)が、出納整理期間中に発見した誤
戻入
払金等についても、当該期間中に支出負担行為を減額のうえ返納通知をすれば、当該支出した経費に
戻入することができます(昭和41年4月22日行政実例)。
会計年度中の歳入の誤納又は過納となった金額を払い戻すときは、支出の手続の例により、当該収
(2)過誤納金の
入した歳入から戻出することとされています(自治令第165条の7)が、出納整理期間中に発見され
戻出
た過誤納金の戻出についても、
当該期間中に調定額を減額整理のうえ戻出命令をすれば当該収入した
歳入から戻出することができます(昭和41年4月22日行政実例)。
出納閉鎖後の収入及び支出はすべて現年度の歳入及び歳出としなければなりません(自治令第160
3出納閉鎖後
条・第165条の8)。これをそれぞれ過年度収入、過年度支出といいます。
の会計事務
なお、出納閉鎖後の誤払金等の戻入、過誤納金の戻出についても同様です。
第1章 総論 第4節 -10-
高知県会計事務処理要領
第5節 時効
事 項
1時効の意義
説
明 ・ 根 拠 法 令
時効とは、一定の事実上の状態がある法定の期間継続した場合に、事実の法律関係に関わらず、そ
の継続した事実関係を尊重して、これに法律効果を与え、権利の取得又は消滅の効果を生じさせる制
度をいいます。時効完成によって権利を取得せしめるのが取得時効で、一定の期間権利者が権利を行
使しないという事実状態が継続する場合、当該権利を消滅させるのが消滅時効です。
2地方自治法
金銭の給付を目的とする地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほ
の時効
か、5年間これを行わないときは、時効により消滅します。
地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様です(自治法第
236条第1項)。このように地方自治法では、金銭債権の消滅時効のみ規定しています。
3時効の援用
金銭の給付を目的とする地方公共団体の権利の時効による消滅については、
法律に特別の定めがあ
と利益の放棄
る場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができません。地方公共団
体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様です(自治法第236条第2項)。
4消滅時効の
金銭の給付を目的とする地方公共団体の権利について消滅時効の中断、停止等について、適用すべ
中断停止等
き法律の規定がないときは、民法の規定が準用されます(自治法第236条第3項)。
5納入通知・督
法令の規定により地方公共団体がする納入の通知及び督促は、民法第153条の規定にかかわらず時
促の効力
効中断の効力を有します(自治法第236条第4項)。
このように民法第153条の特例を定め、時効中断の絶対的な効力を認めたのは、地方公共団体の金
銭債権について民法上の時効中断の手続を必要としたのでは事務手続上極めて煩雑となり、
歳入を確
保できないおそれが生じるためです。
(注)民法第153条「催告は6か月以内に裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調
停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更正手続参加、差押え、
仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない」。ただし、法令の規定により地方
公共団体がする督促後相当の期間を経過していてもなお履行がないときは、
強制執行等の措置をとる
べきです(昭和44年2月6日行政実例)。
第1章 総論 第5節
-11-
高知県会計事務処理要領
6収入に係る ○収入に係る消滅時効の期間
消滅時効の期
収入科目
事例
間
県税
・自動車税
時効期間(年)
根拠法令
5
地税法 18
地方譲与税
・地方道路、石油ガス及び航空
機燃料譲与税
5
自治法 236①
地方交付税
・普通・特別交付税
5
自治法 236①
5
自治法 236①
5
自治法 236①
道路法 73⑤
海岸法 35⑤
5
自治法 236①
5
会計法 30
自治法 236①
交通安全対策特別交
付金
分担金及び負担金
・分担金
・負担金
使用料及び手数料
国庫支出金
・国庫負担金、国庫補助金、
国庫委託金
財産収入
・財産貸付収入
・不動産、物品及び有価証券売
払収入
・利子及び配当金
・生産物売払収入
10
10
民法 168①
民法 168①
5
2
民法 169
民法 173
寄附金
5
自治法 236①
繰入金
5
自治法 236①
繰越金
5
自治法 236①
・延滞金、加算金及び過料
5
・預金利子
・貸付金元利収入
・受託事業、収益事業
・弁償金
・違約金及び延滞利息
5
10
5
5
10
自治法 236①
地税法 18
民法 169
民法 167①
商法 522
自治法 236①
民法 167①
諸収入
(注)この表は一般的な例示であり、適用にあたっては個々具体的に検討を要する。
第1章 総論 第5節
-12-
高知県会計事務処理要領
7支出に係る ○支出に係る消滅時効の期間
消滅時効の期
支出科目
事例
間
報酬
・委員報酬等
時効期間(年)
根拠法令
2
労基法 115
給料
・一般職給料
2
労基法 115
職員手当等
・扶養手当その他の法律又は条例
に基づく手当
2
労基法 115
共済費
・労働保険料
・厚生年金保険料
・健康保険料
2
2
2
労基法 115
災害補償費
・労働基準法第 75 条~第 80 条に
規定する災害補償料
・労働者災害補償保険法による障
害補償給付、遺族補償給付、障
害給付、遺族給付
・労働者災害補償保険法による上
記以外の給付及び葬祭料
2
労基法 115
5
労災法 42
2
労災法 42
恩給
・普通恩給、増加恩給、扶助料、
退隠料
7
恩給法 5
賃金
・臨時・非常勤職員等
2
労基法 115
報償費
・弁護士・公証人
2
民法 172
旅費
需用費
・費用弁償、実費弁償、一般旅費
・消耗品(用紙、文具等)
・燃料(ガソリン、灯油)
・印刷製本代
・料理店の飲食代
・電気、ガス代
・水道料
・修繕料(物品の修理)
5
2
2
2
1
2
5
2
自治法 236①
民法 173Ⅰ
民法 173Ⅰ
民法 173ⅠⅡ
民法 174Ⅳ
民法 173Ⅰ
自治法 236①
民法 173Ⅱ
役務費
・運送料
1
・広告料
・筆耕、翻訳及び速記料
・し尿汲取料(相手が公共団体)
・し尿汲取料(相手が私人)
5
5
5
5
民法 174Ⅲ
商法 567
商法 522
商法 522
自治法 236①
商法 522
委託料
・設計委託
使用料及び賃借料 ・植木鉢借上料
・土地家屋借上料
・タクシー借上料
・会場(会議室)借上料
・機械借上料
3
1
5
5
1
1
民法 170Ⅱ
民法 174Ⅴ
民法 169
商法 522
民法 174Ⅳ
民法 174Ⅴ
工事請負費
・工事代金
3
民法 170Ⅱ
原材料費
・材料購入代
2
民法 173Ⅰ
公有財産購入費
・土地購入
・家屋購入
・土地買収(権力作用による場合)
・家屋買収(権力作用による場合)
10
10
5
5
民法 167①
民法 167①
自治法 236①
自治法 236①
備品購入費
・備品の購入
2
民法 173Ⅰ
5
自治法 236①
負担金、補助及び ・負担金、補助金、交付金
交付金
第1章 総論 第5節
-13-
高知県会計事務処理要領
扶助費
3
5
民法 170Ⅰ
自治法 236①
補償、補填及び賠 ・立退料、移転営業補償(権力作
償金
用)
・不法行為に基づく損害補償請求
権
・確定判決等に基づく損害賠償請
求権
5
自治法 236①
3
民法 724
10
民法 174 の2
償還金利子及び割 ・税収入の過誤納還付金
引料
・過年度に係る使用料等の過誤納
に係る返還金
・小切手償還請求に係る支払
5
5
地税法 18 の 3①
自治法 236①
5
自治法 236①
小切手法 72
寄附金
10
民法 167①
5
国税通則法 72
公課費
・医療扶助、出産扶助
・生活扶助等
・自動車重量税
(注)この表は一般的な例示であり、適用にあたっては個々具体的に検討を要する。
第1章 総論 第5節
-14-
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