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メタデータを利用した モバイル端末向けコンテンツ視聴制御技術

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メタデータを利用した モバイル端末向けコンテンツ視聴制御技術
固定・携帯連携TV視聴を実現するメディア流通システム
メタデータ圧縮
メタデータ流通
ユビキタス
メタデータを利用した
モバイル端末向けコンテンツ視聴制御技術
さ
さ
き
たけし
かわもり
まさひと
佐々木 健 /川森 雅仁
携帯電話をはじめとしたモバイル端末におけるコンテンツ視聴制御技術に
ついて解説します.モバイル環境での多彩なコンテンツ視聴形態を実現する
は
た
の
じん
かわぞえ
かつひこ
波多野 仁 /川添 雄彦
コア技術として,メタデータ圧縮伝送技術とメタデータハンドリング技術を
NTTサイバーソリューション研究所
紹介します.
「 HSDPA( High Speed Downlink
モバイル環境固有の課題とは
Packet Access)」や「CDMA2000
える軽量化という概念も重要になって
きます.
サーバ型放送への動きが活発化して
1x EV-DO」といった数Mbit/s級の
NT Tサイバーソリューション研究所
きており,大容量ハードディスクを使
サービスや, 光 ファイバ並 みの
では前述の課題を踏まえながら,モバ
用したTV視聴が当たり前の時代が到
100,Mbit/sを実現する第4世代携帯
イル環境におけるメタデータを利用し
来しようとしています.モバイル環境
(4G)など,広帯域化の傾向にあり
た新たなコンテンツ視聴制御技術を開
においても例外ではなく,モバイルサー
ますが,4G実現にはまだ課題が多く
発しました.これらの技術は,単にモ
バ型放送という枠組みで積極的な議
数年かかることや,ビジネスモデルと
バイル端末上でのコンテンツ視聴制御
論がされています.
して,パケット定額制が主流になって
にとどまらず,個人間でのメタデータ
大容量ハードディスクを搭載した
きているためトラヒックに頼ることのな
流通やインターネットサイトと連動し
ハードディスクレコーダの普及が急速
い新たな収益構造が模索されていま
たコミュニティ形成の仕組みなどを取
に伸びていることからも,放送時間に
す.またモバイル端末の多機能化は進
り入れた,モバイル環境における新し
縛られることなく,好きな時間に見た
む一方であり,ネットワークを利用し
いコンテンツ視聴形態を実現します.
いものだけを見る,といった利用者の利
た各種サービスと併存するモバイル端
そして,それらの技術を支えるキーと
便性を重視した 仕組みが次々と出現
末では,コンテンツ視聴のためだけに
なるのが「メタデータ」です.
してくるものと予想され,こうした仕組
リソースを多く費やすことは好ましく
(1)
みを支える放送と通信の連携技術 は
ありません.よって,このような状況で
今後ますます重要になってきます.
はいかに伝送帯域を有効に使用するこ
コンテンツ視聴を支える技術の1つ
とができるかが重要になってきます.
セグメントメタデータの利用
メタデータは「データのデータ」と
呼ばれるように,データについての情
として,コンテンツ配信制御技術やメ
また多機能化が進むと搭載されるア
報を記述したデータです.例えば,映
タデータ制御技術がありますが,これ
プリケーションの数や機能が増え,各
像データに関するメタデータは,その
らを適用しようとした際,モバイル環
アプリケーションが使用する記憶容量
映像のタイトルや概要,データの形式,
境特有の課題が浮き彫りになる場合が
やメモリ空間なども増加していきます
サービス事業者の情報,課金情報など
あります.次の2点は特にモバイル環
が,同時に軽量化を図らなければ,端
を記述することができます.また配信
境での課題と考えています.
末の筐体のスリム化が図られなくなっ
制 御 やEPG( Electronic Program
① 伝送帯域が狭い
たり,搭載できるアプリケーションの
Guide:電子番組表)で使用される
② 端末のリソースが限られている
数に制限がでてくるという問題が生じ
項目など,多岐にわたる多くの情報を
伝送帯域については,第4世代まで
る可能性があるため,伝送帯域と同様
含むことができます.
の中継ぎとなる「3.5,G」と呼ばれる
に,端末のリソースを必要最小限に抑
18
NTT技術ジャーナル 2005.6
本技術ではデジタル放送の標準と
特
集
なっている「TV Anytime Forum (2) 」
に準 拠 したメタデータのうち,主 に
図1に示すようなセグメントメタデー
タを利用しています.セグメントメタ
データは,コンテンツの内容をあるシー
ンごとに細かく区切ったセグメントと
いう単位で,それぞれのセグメントに
ついての詳細情報を記述することがで
きるメタデータです.
セグメントメタデータの構造を次に
示します.
①
セグメントに関する記述
SegmentInformationTable
SegmentList
各セグメントごとに,
“SegmentInformation”を記述
SegmentInformation
segmentId
ProgramRef
crid
Description
Title Synopsis Genre Keyword
RelatedMaterial CreditsList
SegmentLocator
SegmentInformationTable:
KeyFrameLocator
・
・
・
コンテンツのセグメントに関する
情報が記述されます.
②
SegmentList:個々のセグメ
ントについて“ S e g m e n t I n f o r mation”を設け,特定のセグメン
トを一意に識別するセグメントID
を付与します.それぞれのセグメ
SegmentGroupList
SegmentGroupInformation
groupId
ProgramRef
crid
ントごとにタイトル,概要,対象
GroupType
となるコンテンツを識別するCRID
Description
(Content Reference IDentifier)
と呼ばれるコンテンツ参照識別子,
そのセグメントを端的に表す代表
画像などのデータが記述されます.
fragmentId ・・・
Title Synopsis Genre Keyword
RelatedMaterial CreditsList
Groups
Segments
refList
refList
これらのデータを用いて,チャプ
KeyFrameLocator
ターリストを生成し,視聴者は見
・
・
・
たいセグメントを選択して視聴す
ることができるようになります.
③
[主に記述できるデータ内容]
・対象コンテンツCRID
・タイトル
・概要
・ジャンル
・キーワード
・関連情報
(代表画像,販促用文句,
関連コンテンツ,関連商品
購入サイトのURL等)
・クレジット情報
(製作者,監督,キャスト,
キャラクター情報等)
・セグメントロケータ
・キーフレームロケータ
各セグメントグループごとに,
“SegmentGroupInformation”
を記述
[主に記述できるデータ内容]
・対象コンテンツCRID
・グループタイプ
(ダイジェスト,ハイライト等)
・タイトル
・概要
・ジャンル
・キーワード
・関連情報
(代表画像,販促用文句,
関連コンテンツ,関連商品
購入サイトのURL等)
・クレジット情報
(製作者,監督,キャスト,
キャラクター情報等)
・セグメントリスト
(グループに属するセグメント
のSegmentId)
要素
属性
図1 TV Anytime Forumセグメントメタデータの構造
SegmentGroupList:“Seg-
m e n t L i s t ” に記 述 されている
個々のセグメントを束ねて,ダイ
ジェスト視聴やハイライト視聴な
どを実現するセグメントグループ
を構成することができます.“Seg-
することが可能です.
メタデータの肥大化
メタデータを利用してより高度で,
ない問題になってしまいます.
そこで,大規模メタデータでも,よ
り効率的に伝送・蓄積するための仕組
みが必要になってきます.
ments”に“SegmentList”で指
より多彩なサービスを実現するために
定されているセグメントIDを記述
は,多くの情報が必要になってきます.
することで,そのグループに属す
つまり,これらの情報を記述したメタ
XML形式のメタデータはさまざまな
るセグメントを指定することがで
データもサービスの高度化に比例して
プラットフォーム間でシームレスな流通
きます.またCRIDを指定するこ
肥大化し,その結果ファイルサイズが
制御を行うために,ある厳格な仕様
とで,複数番組にわたるダイジェ
増えるため,伝送帯域や端末リソース
(XML Schema)に合致するように記
スト視聴やハイライト視聴も実現
の限られたモバイル環境では無視でき
述されています.これはもともとさまざ
メタデータ圧縮伝送技術
NTT技術ジャーナル 2005.6
19
固定・携帯連携TV視聴を実現するメディア流通システム
まな使用形態においても処理しやすい
ように定義されているため,冗長な構
成になっている部分も多いといえます.
このような冗長な構成部分を圧縮アル
ゴリズムによって必要最小限のデータ
群として抽出して扱います.メタデー
タ圧縮伝送技術では,図2に示すよう
にMPEG-7で規定されるBiM(Bina-
テキストXML
<TVAMain>
<ProgramDescription>
<ProgramInformationTable>
<ProgramInformation>
<BasicDescription>
<Title>Advertisement</Title>
<Synopsis>shampoo</Synopsis>
<Keyword>Shampoo</Keyword>
<Keyword>Lalasta</Keyword>
</BasicDescription>
</ProgramInformation>
</ProgramInformationTable>
</ProgramDescription>
</TVAMain>
XML情報セット
等価な情報
XMLパージング
ry format for MPEG-7 data)をベー
バイナリXML
復号化
スとし,テキスト形式のXMLをバイナ
リ化することで10分の1程度にまで圧
縮することができます.表ではXMLの
構造体について複数のサンプルを用い
バイナリXML
符号化
圧縮伝送
XML情報セット
て,圧縮率を測定した結果を示してい
図2 XML文書のバイナリ化
ます.実データであるテキストデータ
を除くX M L 構造体の圧縮ではほとん
どが9 9%以上の圧縮が可能なことが
分 かります. 実データはその内容に
よって圧縮率が異なってきますが,構
造体の占める割合が多いXML文書に
表 メタデータの構造圧縮の例
テキストXMLサンプルファイル名
テキストXMLデータサイズ
(バイト)
CollectionStructureDS_1.xml
768 345
バイナリ化XMLデータサイズ
(バイト)
542
構造圧縮率
(%)
99.9
CollectionStructureDS_2.xml
3 847
24
99.4
おいては構造圧縮だけでも大きな効果
CollectionStructureDS_3.xml
148 847
255
99.8
があることが分かります.
StillRegionDS_1.xml
7 258
15
99.8
送信側Codecと受信側Codecでこ
StillRegionDS_2.xml
3 208
15
99.5
の圧縮アルゴリズムを共有しているた
StillRegionDS_3.xml
め,伝える必要のあるデータだけを抽
出・圧縮したバイナリXMLをそのまま
伝送すればよいことになります.
6 826
15
99.8
VideoSegmentDS_1.xml
173 627
574
99.7
VideoSegmentDS_2.xml
107 338
353
99.7
VideoSegmentDS_3.xml
11 801
38
99.7
VideoSegmentDS_4.xml
259 252
860
99.7
受信側でバイナリXMLへアクセスす
VideoSegmentDS_5.xml
695 727
2 315
99.7
るときも,いったんテキスト形式(XML
VideoSegStillReg_1.xml
8 131
43
99.5
形式)にデコードする必要はありませ
VideoSegStillReg_2.xml
12 962
78
99.4
ん.これは受信側プログラムがXMLに
VideoSegStillReg_3.xml
61 992
329
99.5
アクセスするAPI(Application Programming Interface)であるDOM
(Document Object Model)のオブ
ジェクトを操作するのと同様に,バイ
の有効活用にも効果があるといえます.
メタデータハンドリング技術
多くのモバイルユーザは,長時間に
わたってコンテンツを視聴することはあ
まりなく,「好きなものを少しだけ見た
ナリXMLに直接アクセスし,データ参
メタデータハンドリング技術はメタ
い」という場合が多いようです.限られ
照・更新することができることを示し
データ圧縮を施されて伝送されてくる
た時間の中で自分の欲する映像だけ
ています.
多くのメタデータをモバイル端末側で
を短時間で視聴するためには,個々人
つまり,本技術はXML圧縮により
高速処理し,後述する嗜好情報メタ
の嗜好属性に合わせた仕組みが必要
効率的に伝送するだけではなく,より
データとマッチング処理を行うことで
になってきます.その個人の嗜好属性
多くの情報を端末側に蓄積することが
従来にないコンテンツ視聴制御を実現
情報をメタデータ(嗜好情報メタデー
可能であることを示し,端末リソース
できます.
タ)として自動生成し,公式メタデータ
20
NTT技術ジャーナル 2005.6
特
集
あるユーザが集まり自然とその特定の
メタデータ圧縮伝送技術
放送局
コンテンツサーバ
制御
メタデータ
れ
流
コ
制御
メタデータ
ン
テ
ン
の
ツ
ツ
の
ン
流
テ
れ
ン
コ
ユーザA
コミュニティサイト等 嗜好情報
嗜好情報の流通 メタデータ
TVA準拠
メ
タ
メタデータ
デ
ー
タ
の
流
れ
・TV Anytime(TVA)準拠
メタデータ検索機能
・メタデータ圧縮符号化方式
・バイナリXMLパージング機能
・TVA準拠検索インタフェース
ブリッジ機能
メタデータハンドリング技術
れ
流
の
タ
ー
デ
タ
メ
メタデータサーバ
通信事業者
ユーザB
・嗜好情報メタデータリアル
タイム生成機能
・TVAメタデータエンジン
・公式メタデータ&嗜好情報
メタデータのマッチング機能
・嗜好情報に基づくコンテンツ
再生制御機能
・嗜好情報メタデータ流通機能
・GUIダイナミック生成機能
図3 メタデータ圧縮・ハンドリング技術の適用イメージ
テーマに関 する仮 想 的 なコミュニ
ティが形成されているともいえます.
こうした場においても嗜好情報メタ
データを流通させることで,あるテー
マにおけるさまざまな映像に関して,
人々の「関心点」というものを表すこ
とができ,そこから新たなコンテンツ利
用が生まれるものと考えています.
このような多彩なサービスを実現す
る各種システムは,メタデータ圧縮・
蓄積をはじめとしたモバイル端末に組
み込むためのさまざまな軽量化の仕組
みを取り入れています.
との組み合わせによって個人に合っ
ンテンツ提供者の許容する範囲内で私
た再生制御を可能にします(図3)
.
的利用を認めるこの仕組みによって,
本技術で実現できることは主に次の
3点です.
①
自分のお気に入りのシーンだけ
視聴者の利便性向上を図りながらも,
今後の取り組み
NT Tサイバーソリューション研究所
コンテンツ提供者の権利保護も実現す
では,事業会社が取り組んでいる放送
ることができます.
と連携した映像配信サービス(NT T
をインデックス付けし,そのイン
さらに,嗜好情報メタデータを個人
ドコモの「OnQ プロジェクト」等)に
デックスに従ったコンテンツ再生
間で流通させたり,インターネットサ
適用可能な基盤技術の研究開発に取
が可能.
イトを通して発信したりすることがで
り組んでいます.
② 友人・知人などにお薦めシーン
きます.受信側は同じコンテンツを視
■ 参考文献
を興味の度合いやコメントととも
聴する場合でも,友人から受け取った
に紹介.
嗜好情報メタデータを基に,コンテン
(1) 川添・端山:“新しいT Vの見方を実現する
放送通信連携技術,”NTT技術ジャーナル,
Vol.16, No.5, pp.8-9, 2004.
(2) http://www.tv-anytime.org/
③ 自分のお薦めコンテンツ情報を
ツをさまざまな見方で楽しむことがで
インターネットサイト等より情報
きます.例えば,複数の嗜好情報メタ
発信が可能.
データを基に再生中のシーンについて
公式メタデータでは対応するコンテ
友人の興味度やコメントを参照するこ
ンツに関して,ダイジェスト視聴やハ
とができるため「人気ランキング視聴」
イライト視聴などの基本的なサービス
といった,従来のコンテンツ視聴では
を規定している場合がありますが,そ
なかったインタラクティブなサービスを
れらはコンテンツ提供者の意図した視
実現することができます.
聴形態であって,必ずしも視聴者が見
一気にサービスが充実したブログや,
たいシーンだけを集めたものとは限り
ソーシャルネットワーキングサービスと
ません.本技術では,視聴者の意図し
いった個人が情報発信する機会は急速
たとおりにコンテンツを視聴させる仕
に増加してきており,現実社会だけで
組みを実現する一方で,コンテンツ提
なく,趣味の領域で仮想のコミュニ
供者が危惧する,視聴者側での想定
ティを形成したい,という要望が多く
外のコンテンツ利用を防ぐため,ある
あることが伺えます.またブログのよう
定義に基づき公式メタデータと嗜好情
にある特定分野について詳しく情報発
報メタデータとを制御しています.コ
信している場では,同じ分野に興味の
(左から)佐々木 健/ 川森 雅仁/
川添 雄彦/ 波多野 仁
モバイル環境における固定携帯連携サー
ビスの高度化を目指し,ユビキタス環境で
の新たなコンテンツ流通を実現するための
研究開発を推進していきます.
◆問い合わせ先
NTTサイバーソリューション研究所
第一推進プロジェクト
TEL 046-859-4582
FAX 046-855-3495
E-mail [email protected]
NTT技術ジャーナル 2005.6
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