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本編 - 一般財団法人日本経済教育センター
図説・経済教育資料 目 次 はじめに………………………………………………1 (1)裁判所のしくみと三審制 ………………………2 (2)裁判手続の種類…………………………………3 (1)裁判の迅速化……………………………………7 (2)法曹人口…………………………………………7 (3)裁判所の管轄区域と弁護士の都市への集中 ………8 (1)司法制度改革とは………………………………9 (2)国民の期待に応える司法制度 ………………10 (3)身近で人間味ある法曹 ………………………12 (4)国民が参加し、国民によって支えられる司法 ……14 ●司法制度改革のこれまでの流れと今後の進行 ―司法制度改革に向けて― 本編 法務省(赤レンガ棟) 最高裁判所 裁判所法廷 東京高等・地方・ 簡易裁判所合同庁舎 最高検察庁 最高裁判所大法廷 司法制度が、生まれ変わろうとしています。 はじめに 法律は社会を守り、 その法律は裁判によって守 られています。このように法にもとづいて社会や国 家が運営されることを「法治主義」といいます。と もすれば忘れがちですが、私たちは社会の一員と して、 日々法律に守られて暮らしています。 21世紀になって、世界的に経済や文化、 そして 社会が大きな転換点に差し掛かっています。さら に国際化の急速な進行などもあって、司法にも新 しい役割とより大きな信頼が要求されています。 こうした新しい社会にふさわしい司法制度の実現 に向けて、検討作業を進めているのが「司法制度 改革」です。平成11年に司法制度改革審議会を 内閣に設置し、平成13年12 月に司法制度改革 推進本部を設置しました。司法制度 の改革と基 盤整備は、平成16年11 月30日までに行うことが 予定されています。 1 日本の司法制度 今の司法制度は昭和22年に制定されました。 (1)裁判所のしくみと三審制 ●裁判所のしくみ 最高裁判所と下級裁判所。 各裁判所に対応して検察庁も置かれています。 日本国憲法 によって、司法権は 最高裁判所 と 下級裁判所 (高等裁判所、 地方裁判所、 家庭裁判所、 司法権 行政権 簡易裁判所 )に属しています。裁判は、事件の内 容によって下級裁判所 のいずれかで第一審が行 内 閣 われることになっています。 裁判所の種類と役割 最高裁判所 法 務 省 ●最高裁判所…憲法 によって設置されたわが国唯一かつ 最 上級、最終の裁判所です。主に高等裁判所の裁判に対する 不服申し立て(上告など)を取り扱います。 ●高等裁判所…8都市 (札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・ 高松・福岡)に本庁があり、6都市に支部があります。主に 地方裁判所と家庭裁判所、簡易裁判所の不服申し立て(控 訴など)を取り扱います。 最高検察庁 高等検察庁 高等裁判所 ●地方裁判所…全国50か所にあり、また支部が203か所に あります。民事事件、刑事事件の第一審を簡易裁判所と分 担して取り扱うほか、破産事件、執行事件も扱います。 ●家庭裁判所…地方裁判所 と同じところにあるほか、77の 出張所があります。家事事件や少年事件などを取り扱います。 ●簡易裁判所…全国438か所 にあります。金額が比較的少 額の民事事件 と比較的軽い 罪の刑事事件 のほか、民事調 停事件も取り扱います。 家庭裁判所 地方裁判所 地方検察庁 簡易裁判所 区検察庁 ●三審制 慎重に、公正に行い、間違いを防ぐ裁判システム。 控訴、上告と3回の裁判を求めることができます。 同じ事件について3回まで裁判を求めることが できますが、このしくみを三審制といいます。第 刑事裁判 控訴 裁簡 判易 所 裁家 判庭 所 一審の判決に不服の場合、上級の裁判所 へ控訴 することができます。そしてさらに上級の裁判所 裁地 判方 所 へ上告することができることになっています。裁 上告 抗告 控訴 高 等 裁 判 所 再抗告 上告 判を慎重、 公正に行うことによって、 間違いを防ぎ、 人権を守るために行われている制度です。 裁家 判庭 所 民事裁判 控訴 裁簡 判易 所 控訴 裁地 判方 所 特別 抗告 抗告 高 等 裁 判 所 最 高 裁 判 所 上告 上告 2 (2)裁判手続の種類 ●民事裁判 民事裁判は和解や調停によって解決すること も多くあります。 日常生活での個人間の紛争などを解決します。 民事裁判のながれ 貸金 の返済に関するもめごと、交通事故 の損 裁判所 害賠償についての紛争、不動産の明渡しなど、相 原 告 互の話し合いで解決できないときに民事裁判が 弁護士 を依頼 原告側 行われます。 民事裁判は 、原告が訴状 を提出す ることで始 金銭・土地 などの 財産問題 まり、原告と被告がたがいの言い分を主張し、証 証拠 証人 弁論 調停 拠を提出し、場合によっては証人尋問が行われま 被 告 す。そして、民法、商法などにもとづいて判決を 弁護士 を依頼 下します。通常訴訟 のほか、手形小切手訴訟、人 判 決 ! 裁 判 官 被告側 事訴訟などがあります。 民事裁判(単独の場合) ●民事裁判の費用 裁判官 民事裁判にかかる費用には………… 裁判所事務官(廷吏) ●国に納める手数料 ●弁護士に依頼した場合の弁護士費用 原告代理人(弁護士) などがあります。 裁判所書記官 裁判所速記官 被告代理人(弁護士) 原告本人 被告本人 証人 ●民事裁判事件数の推移 平成4年から13年 まで の 民事裁判は、徐々に、 しかも確実に増加しています。 ● 民事裁判事件数の推移(民事第一審通常訴訟事件新受件数…地方裁判所・簡易裁判所) 155,541 156,850 150,952 152,678 146,588 142,959 144,479 146,392 100,000 143,511 ります。 244,865 150,000 合わせると、約46万件 にのぼ 244,131 200,000 168,588 129,437 13年 の両裁判所 の事件数 を 227,791 は、確実に増えています。平成 305,711 250,000 297,261 すが、簡易裁判所で取り扱う数 302,690 300,000 306,169 う民事事件数は ほぼ横ばいで 276,120 (件) 350,000 266,573 10年間、地方裁判所 で取り扱 地方裁判所 50,000 0 簡易裁判所 平成4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 資料:最高裁判所事務総局 3 ■ 行政訴訟 国民が行政機関の行為に対する判断を求めます。 行政訴訟(合議の場合) 裁判官 国や地方公共団体などの行政機関が行った行 裁判長 裁判官 為に不服がある場合、裁判所 の判断を求める裁 裁判所事務官(廷吏) 判などをいいます。税金を違法に課せられた、土 地を違法に収用された、あるいは生活保護 の認 定をめぐっての争いなどが相当します。 裁判所書記官 裁判所速記官 行政機関 の行為が法律にしたがったものであ るかどうかを判断す る裁判な ので、国民 の権利 国民 行政 や自由を守るという重要な意味を持っています。 ■ 簡易裁判所の事件 民事調停 調停委員 調停主任(裁判官) 調停委員 裁判所書記官 簡易裁判所は 、国民の身近な裁判所 として簡 易な手続による迅速な紛争解決 を目的としてい ます。民事手続 では、民事訴訟、少額訴訟、民事 調停、支払督促などがあります。また刑事手続も 申立人 相手方 行っています。 ●少額訴訟 30万円以下 の金銭の支払いを求める訴えに をする手続です。少額訴訟でも、話し合いで解決 民事調停は「特定調停」が近年最も多くなって います。 したい時には、和解の方法があります。 ●民事調停事件の申立ての内訳 ついて、原則として1回の審理によって紛争解決 例えば ・金銭の貸借・売買 ・損害賠償・近隣関係 など ●民事調停 金銭の貸借や物の売買、 借地借家、 農地の利用、 一般 12.92% た2人以上 の調停委員 と1人 の裁判官からなる 商事2.98% 農事0.01% 公害や日照、通風などに関する紛争を、話し合い によって解決する手続です。一般市民から選ばれ 宅地建物2.16% 平成13年度 交通1.26% 総数 365,204件 公害等 0.05% 調停委員会 が当事者双方 の言い分を聴き、実情 にあった解決を図ります。 特定 80.62% 特定調停とは、債務の支払が困難となった個人および事業 者(法人を含む。)が生活 の立て直しおよび事業 の再建を図 るため、債権者と支払方法等について話し合う調停手続です。 資料:最高裁判所事務総局 4 ●刑事裁判 刑事裁判は被告人が有罪か無罪か、有罪で ある場合にはどのような刑罰を科すかを判断 する裁判です。 犯罪の国際化傾向も強まっています。 殺傷事件や強盗、誘拐、そして覚せい剤などの 薬物、さらに暴力団関係者 だけでなく一般人 へ 刑事裁判のながれ も拡散しているけん銃による事件な ど、凶悪な 刑事事件が続発しています。さらに、悪質な経済・ 検察官 警察官 汚職事犯、そして近年では国際的な集団密航事 裁判所 検察官 件なども増加の傾向にあります。 事件が発生すると、警察官が捜査を行い、検察 官は捜査の結果、犯罪の疑いが確実であれば裁 逮 捕 送 ・ 検 取 ︵ り 身 調 柄 ・ べ 書 捜 査 犯罪 起 訴 判所に訴えを起こします。これが起訴です。刑事 不 起 訴 類 ︶ 裁判はこの起訴から始まり、裁判所は 検察官 の 証拠 証人 弁論 取 り 調 べ 判 決 ! 裁 判 官 被告人 弁護人 主張と起訴された人(被告人 )や弁護人 の主張 を聞き、刑法などの法と証拠に基づいて有罪か 刑事裁判(合議の場合) 無罪か、有罪である場合にはどのように刑罰を 裁判官 裁判長 裁判官 科すかを判断します。 裁判所事務官(廷吏) 裁判所書記官 裁判所速記官 検察官 弁護人(弁護士) 被告人 ●刑事裁判の被告人数の推移 平成13年 の刑事裁判 の第 ● 刑事裁判被告人数の推移(刑事第一審訴訟事件被告人数…地方裁判所・簡易裁判所) (人) 100,000 94,141 77,496 75,834 69,144 40,000 15,963 15,587 16,395 15,496 13,808 14,058 14,884 15,784 16,119 20,000 14,951 います。 65,245 較すると25%近くも増加して 64,428 60,000 62,369 ます。3年前 の平成10年 と比 80,000 73,145 およそ11万6,000人 に及び 85,016 と簡易の両裁判所を合わせると、 99,993 一審訴訟事件被告人は 、地方 この数年、刑事裁判は大幅に増えています。 地方裁判所 0 簡易裁判所 平成4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 資料:最高裁判所事務総局 5 ●家事事件(家事審判、家事調停)と少年事件 家事調停 調停委員 ■家事事件 家庭審判官 調停委員 家庭裁判所調査官 裁判所書記官 非公開での円満な解決を第一に考えて処理 されます。 家庭に関する事件は、家族間 の感情的な対立 が背景 にあることが多い ので、法律的な判断 だ けでは解決が難しい場合があります。同時に、プ 当事者 当事者 ライバシーに配慮する必要や裁判所が後見的な 見地から関与する必要があります。また、家庭内 子の監護に関する処分が最近著しく増加しています。 の紛争や 親族間 の問題では、おもに家事調停 が ● 主な家事事件新受件数の推移 行われます。当事者と関係者の言い分をよく聞き、 婚姻中の夫婦間 (件) 60,000 19,179 12,673 14,332 11,619 11,840 10,569 ます。 9,213 率では子どもの監護に関する処分が急増してい 20,000 11,085 10,000 調停事件数 では夫婦間 の問題が多く、また増加 15,192 15,000 17,027 59,005 52,885 55,560 50,664 53,352 47,721 48,602 46,582 40,000 48,398 家事事件は、最近著しい増加傾向にあります。 50,312 双方が納得できるような解決を図ります。 子の監護に関する処分 (件) 20,000 5,000 0 4 5 年 年 7 年 9 年 11 年 13 年 0 4 5 年 年 7 年 9 年 11 年 13 年 資料:最高裁判所事務総局 ■少年事件 少年審判(単独の場合) 裁判官 裁判所書記官 20歳未満の非行少年の事件を取り扱います。 家庭裁判所調査官 罪を犯した20歳未満の少年などの事件を扱う もので、少年たちの健全な育成を期して、保護処 分などの方法によって教育し、指導するという少 年法の考え方に沿って行われています。 裁判所事務官(廷吏) 家庭裁判所 が少年事件として扱うのは以下の 付添人(弁護士) 保護者 少年 保護者 場合です。 ①罪を犯した14歳以上、20歳未満の少年(犯罪少年) ②14歳未満で法に触れる行為をした少年(触法少年) ③行為、性格、環境などから将来罪を犯すおそれのある 20歳未満の少年(ぐ犯少年) 少年保護事件は減少しつつも、凶悪事件は 続発しています。 ● 少年保護事件の新受人員 (人) 400,000 284,336 10 年 283,389 9 年 297,505 8 年 318,508 7 年 316,703 さします。 298,775 な お、少年事件 でいう少年とは、男女両方 を 293,703 過失致死傷の順に多くなっています。 200,000 321,473 す。非行別では、窃盗、 道路交通事件、 業務上(重) 250,000 355,786 300,000 少年保護事件は全体的には減少傾向にありま 399,738 350,000 12 年 13 年 150,000 100,000 50,000 0 4 年 5 年 6 年 11 年 資料:最高裁判所事務総局 6 司法をめぐる問題 (1)裁判の迅速化 ●裁判にかかる期間 大規模な事件に長い期間がかかるという問題 があります。 民事・刑事裁判の平均審理期間は諸外国と 遜色ありません。 ●平均審理期間の推移(通常の民事訴訟事件) (月) 13.0 11.5 第一審 11.0 裁判 の大きな課題 である審理期間は 、平成 13年 の地裁の民事裁判 で平均8.5月 です。こ れはフランスの8.9月を下回り、 ドイツの6.9月 を上回 る数字 です 。また刑事事件 の平均審理 控訴審 9.8 10.9 10.2 9.0 9.2 9.3 7.8 8.8 6.3 5.0 期間は3.3月で、これも諸外国と比較して遜色 がないものといえます。 8.5 7.0 4.9 3.0 平成4年 6年 8年 10年 しかし、民事・刑事事件 ともに審理に長い 期 4.9 12年 13年 資料:最高裁判所事務総局 間がかかっているのは、大規模な事件や複雑な 事件 が多く、これらの事件を適正・迅速に解決 することが裁判所の課題となっています。 弁護士数は裁判官と検察官の合計の3倍以上。 ●日本の法曹人口の内訳(平成14年度) 裁判所 官職 (2)法曹人口 ●日本の法曹人口の内訳 弁護士の割合が圧倒的に多いです。 最 高 高 等 地 方 裁判所 裁判所 裁判所 倒的に多いことです。裁判官と検察官 の合計の 3倍以上 を弁護士 が占め ています。司法制度改 革では、法曹人口 の拡大と質の向上にも積極的 この半世紀で弁護士の数は3倍以上に。 計 1 1 最高裁判事 14 14 裁 高等裁判所長官 判 官 の 判 事 定 員 判 事 補 8 8 1,445 1,445 820 820 簡易裁判所判事 2,273 15 検 検 事 察 官 の 副 検 事 定 計 員 検事総長 1 次長検事 1 検事長 8 806 806 806 3,094 検事正 50 1,414 899 2,313 弁護士の総数 18,851 総 合 計 24,258 資料:最高裁判所事務総局・法務省広報部 に取り組む方針を打ち出しています。 ●弁護士数の推移 簡 易 裁判所 最高裁長官 計 日本の法曹人口 の特徴は、弁護士の割合が圧 家 庭 裁判所 急速な増加の中で女性の進出も目立っています。 ●弁護士人口の推移 (人) 20,000 19,537 法曹人口 の中でも、弁護士数は 急速に増えて 女 性 合 計(女性を含む) います。昭和25年から平成15年 (2月25日現在) 15,000 14,080 11,624 在)の約50年間で弁護士総数は3倍以上になり、 10,000 8,797 なかでも女性弁護士数の増加がきわだっており、 この10年ほどで2.5倍以上も増えている点が特 6,439 5,804 5,000 2,274 徴的です。 0 6 46 昭和25年度末 35年度末 811 198 446 45年度末 55年度末 平成2年度末 15年(2月25日) 資料:日本弁護士連合会 7 (3)裁判所の管轄区域と弁護士の都市への集中 ●裁判所の管轄区域 ●弁護士の都市への集中 下級裁判所の管轄区域は、法律で定められています。 とくに過疎地での弁護士が不足しています。 最終審、最上級 の裁判所として最高裁判所 を 平成14年末現在、日本弁護士連合会(日弁連) 設けることは憲法が定めていますが、どのような の「地方裁判所・支部別弁護士数 」によると、全国 下級裁判所 (高等裁判所、 地方裁判所、 家庭裁判所、 にある地方裁判所(50か所 ) ・支部(203か所 ) 簡易裁判所)を設け、それぞれの裁判所がどのよ のうち弁護士が一人もいない所が24、一人しか うな事件を扱うか、また具体的な裁判所の設立と いない所が36となっています。 管轄区域については法律で定められています。 弁護士の数を、各都道府県別にみると都市部に 下級裁判所 では高等裁判所が日本の8か所の 集中しており、 また弁護士がいる市区町村の割合は、 大都市に、地方裁判所 と家庭裁判所は 各都道府 東京(72%)、神奈川(63.3%)、大阪(53.3%) 県(北海道には4つ置かれている)50か所に、簡 など広域に弁護士がいる一方、15%にも満たな 易裁判所は全国の主な市町村438か所にといっ い県が多数を占めています。 たように全国くまなく配置されています。 ●管轄区域ごとの設置裁判所 旭川 最高裁、高裁、地裁、家裁、簡裁…… 高裁、地裁、家裁、簡裁…… 高裁支部、地裁、家裁、簡裁…… 地裁、家裁、簡裁…… 釧路 札幌 函館 ●都道府県別弁護士がいる市区町村数の割合 青森 ① 0∼15%未満…………………… 秋田 盛岡 ② 15∼30%未満…………………… ③ 30∼45%未満…………………… 山形 仙台 ④ 45∼60%未満…………………… ⑤ 60∼75%未満…………………… 1. 太線( )は高等裁判所の管轄地域を表します。 2. 細線( )は地方裁判所及び家庭裁判所の管轄地域を表します。 3. このほか、388か所にも簡易裁判所が設置されています。 福井 松江 鳥取 神戸 京都 佐賀 長崎 山口 福岡 大分 熊本 松山 金沢 宇都宮 長野 名古屋 奈良 津 高松 水戸 前橋 さいたま 東京 甲府 大阪 福島 新潟 大津 広島 岡山 宮崎 岐阜 富山 千葉 横浜 静岡 和歌山 高知 那覇 徳島 鹿児島 資料:最高裁判所事務総局・日本弁護士連合会 ひとくちメモ ●弁護士と司法書士 の所在状況 (市区町村レベル・ 簡易裁判所レベル) 1. 市区町村レベル 全国の市区町村数a 3,241 2. 簡易裁判所レベル aのうち弁護士所在 aのうち司法書士所在 aのうち弁護士所在 aのうち司法書士所在 市区町村数b(b/a%) 市区町村数c(c/a%) 全国の簡易裁判所数a 簡裁数b(b/a%) 簡裁数c(c/a%) 445(13.7%) 2,007(61.9%) 438 291(66.4%) 433(98.9%) 〈注〉 ①司法書士:平成14年7月9日現在 ②弁護士:平成14年4月1日現在(日弁連「会員名簿」等による日司連独自調査) ③全国の市区町村数:平成14年7月1日現在(日司連独自調査) ④簡易裁判所数:平成14年7月1日現在 資料:日本司法書士連合会 8 司法制度改革 (1)司法制度改革とは 事後チェック、救済型社会への司法の対応。 社会 のさまざまな変化に伴って行われている 行政改革や 経済構造改革 によって、日本の社会 は事前規制・調整型社会か ら事後チェック・救済 新しい社会を支える司法制度づくりが始まっています。 司法制度改革の基本理念 事前規制・調整型社会 一連の諸改革 型社会へと転換していくことになります。司法制 度もこの変化に対応し、新しい社会にふさわしい ●行政改革 ●経済構造改革 等 制度となるために見直しが必要になっています。 司法制度改革は、国民にとって身近で信頼され る司法制度を構築しようというもので、次の3本 柱からなっています。その第一は「国民の期待に 応える司法制度の構築」で、ここでは裁判をもっ 事後チェック・救済型社会(国際化がすすむ社会) と速く、そして充実したものにするための民事お 司法の役割が増大 よび刑事司法制度の改革を行います。二番目は「司 司 法 法制度を支える法曹の在り方の改革」です。法曹 人口を大幅に増やすとともに、能力を高めるため 司法制度 の改革を行います。三番目の「国民的基盤の確立」 法曹 国民 (裁判官・検察官・弁護士) は、国民の司法参加 です。つまり、国民が刑事事 件で裁判官 とともに有罪、無罪や 刑罰の決定な どに関与する制度などを導入します。 国民の期待に 応える司法制度 の構築 司法制度を支える 法曹の在り方 の改革 国民的基盤の 確立 (国民の司法参加) 司法制度改革の3本柱 資料:司法制度改革推進本部事務局 ■ 司法制度改革の動き 平成11年7月、司法制度改革審議会設置法に基づいて司法制度改革審議会が内閣に設置され、 平成13年6月 司法制度改革審議会意見 が内閣に提出されました。それを受けて、同年11月司 法制度改革推進法が公布され、12月に内閣に司法制度改革推進本部が設置されました。平成14 年3月に「司法制度改革推進計画 」を決定。本部の設置期限である平成16年11月 30日までに、 行う予定の措置の内容、実施時期を示しました。 9 (2)国民の期待に応える司法制度 ●民事司法制度の改革 スピーディで利用しやすい裁判をめざして。 まず、民事裁判をよりスピーディで内容の濃いものにすることをめざしています。審理計画を立て、迅速 な処理を行うと同時に、医療や建築などの専門性の要求される事件への対応の強化が図られます。また、 身近な簡易裁判所や 家庭裁判所を使いやすいものとするなどして、裁判を身近なものにしていくさまざま な新しいしくみが考えられています。 民事に関する紛争を裁判以外の方法で解決する裁判外紛争解決手段(ADR)があります。これには、行 政機関、弁護士会、民間団体による仲裁、調停、あっせんなどがありますが、 こうした方法も有力な選択肢と なるよう、拡充・活性化が図られることになるでしょう。さらに、行政訴訟の制度についてもよりいっそう、 国民の権利と自由をより実質的に保障する観点から見直しが行われます。 司法に関する情報提供窓口の充実やADRの活性化にも力をそそぎます。 民事司法制度の改革 より使いやすく、迅速な手続へ トラブル 発生 執 行 裁判所への アクセス拡充 裁 判 判決・和解等 権利の確実な実現 裁判手続と ADRの連携強化 ●専門的知見を要する事件への対応強化 ●労働関係事件への対応強化 ●知的財産権関係事件への対応強化 ●家庭裁判所・簡易裁判所の機能の充実 裁判外の紛争解決手段(ADR)の 拡充・活性化 ひとくちメモ ●司法の行政に対するチェック機能の強化 資料:司法制度改革推進本部事務局 ADR (Alternative Dispute Resolution) 裁判外の紛争解決手段をいい、厳格な裁判手続と比べて、柔軟な対応ができる利点があります。多様 な特長を有するADRの育成・充実が図られるような方策が検討されています。 10 ●刑事司法制度の改革 適正・迅速な裁判を実現し、社会秩序を維持し、 国民の安全を確保。 刑事司法 の目的を十分かつ 適切に果たすこと 事件発生 被害者等の保護 により、国民のよりいっそうの安全を確保するこ とが刑事司法制度改革のねらいです。 刑事裁判はおおむね迅速に審理されていますが、 重大な事件では相当の期間を要するものがあり、 捜 査 新たな時代に ふさわしい捜査・ 公判手続 起 訴 検察審査会の 機能強化 裁 判 裁判の充実・迅速化 被疑者・被告人の 公的弁護制度の 整備 刑事裁判遅延 の印象を与える原因にもなってい ることから、刑事裁判の充実、迅速化を図るため の方策が検討されます。裁判前に十分な争点整 理を行ったり、証拠開示を拡充するための準備手 裁判員制度の 導入 ●新たな準備手続の創設 ●連日的開廷の確保等 続の創設や公的な弁護制度 の整備などが考えら れています。 判 決 資料:司法制度改革推進本部事務局 ●国際化への対応 司法の国際的対応力の強化が重要。 急速に進む国際化社会 において、自由で公正 な社会を法による支配の理念のもとに、形成・維 持することは重要なことです。そのために国際 民事司法の国際化 ●国際的な民・商事紛争を 迅速に解決します。 刑事司法の国際化 ●国際的な犯罪の 増大に対応します。 的な民事事件、刑事事件の増大に対する、総合的 な対応強化 が図られ、また弁護士 が国際的な法 的需要 に対応するために、法曹養成段階か らの 対応方法も考えられています。また、開発途上国 に対する法整備支援は、引き続き推進されます。 法整備支援の推進 国際的な 事件に対応できる 司法整備が 必要なのね 開発途上国への 法整備支援も 行われて いるんだね ●開発途上国に対する 法整備支援を 推進します。 弁護士(法曹)の国際化 ●弁護士の国際化への対応を 抜本的に強化します。 ●外国法事務弁護士等 との提携・協働を 推進します。 資料:司法制度改革推進本部事務局 11 (3)身近で人間味ある法曹 ●弁護士・検察官・裁判官制度の改革 能力の向上と社会ニーズへの的確な対応。 裁判官 ●豊かな知識・経験のある裁判官の確保 ●裁判官に対する信頼感を高める ●裁判所の運営への国民参加等 弁護士は民間企業や行政機関での活躍に制限 がありましたが、これを見直して社会のさまざま な分野で活躍しやすくなるでしょう。検察官は新 相互交流の促進 しい形の犯罪などにも対応できるよう、新たな研 修を導入し、能力の向上に取り組みます。また裁 判官は 、的確な判断 を下す ために豊かな知識 と 経験を備えることが必要です。とくに若手の裁判 弁護士 裁判官への弁護士 からの任官の 推進など ●弁護士の社会の隅々における活躍 ●依頼しやすい弁護士とする ●弁護士の国際化等 検察官 ●検察官の意識改革・能力向上 ●検察庁の運営への国民参加 官には、一時的に弁護士事務所等で働く制度など も検討されています。 資料:司法制度改革推進本部事務局 ●法曹人口の拡大 法曹の数を大幅に増やし、司法の質を高める。 日本の法曹人口は 、先進諸国 と比べるとたい 法曹人口の大幅な増加 司法試験合格者数 へん少なく、現在でも社会 の法的ニーズに対応 できていないのが現状です。今後、法曹に対する 需要はますます増大することが予測されている ため、法曹の数を増やし、また新たな法曹養成シ ●平成13年(2001年)には年間約1,000人を ●平成14年(2002年)には年間約1,200人程度に ●平成16年(2004年)には年間約1,500人程度に ●平成22年(2010年)頃には年間約3,000人程度に ステムを作り上げる必要があります。平成16年 には司法試験合格者数 を年間1,500人程度 に、 さらに平成22年 ころには年間3,000人程度 に 増やすことをめざし、これによって平成30年頃 法曹人口 には、日本の法曹の数は5万人ほどになることが 平成13年(2001年)には約22,000人を 見込まれています。 平成30年(2018年)頃には、50,000人規模へ到達 司法試験 合格者を 段階的に増やして いくんだね 裁判所・検察庁の人的体制の充実 そうすることで 法曹人口が 15年後には2倍以上に なるのね ●裁判官・検察官の大幅増員を図ります。 ●裁判所職員(裁判所書記官など)や検察庁 職 員( 検 察 事 務 官 など)の 適 正 な 増 加を 図ります。 資料:司法制度改革推進本部事務局 12 ●法曹養成制度の改革 より質の高い法曹の養成へ向けて。 法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成システムを新たに作る こととしています。その中核が法科大学院で、すでに平成16年4月から学生の受け入れを予定しています。 法科大学院は新しい法曹養成システムの中核となる教育機関で、少人数教育を基本とした密度の濃い ものとなります。社会のニーズに応えるさまざまな法曹を養成することが目的で、経済学や理数系など法 律以外の分野を学んだ人や社会人などの多様な人材を幅広く受け入れ、専門的・先端的な分野について も教育を行うことになっています。また、裁判官、検察官、弁護士などの実務家が参加して、実践的な教育 も行います。 新しい法曹養成システムとして法科大学院が開設。 従来の法曹養成制度 点(試験)による選抜 弁護士 司法試験 司法修習 検察官 裁判官 新しい法曹養成制度 プロセスによる養成 弁護士 法科大学院 司法試験 司法修習 検察官 裁判官 法曹養成に特化した 教育を行うプロフェッ ショナルスクール 法科大学院 における 教育内容 を踏まえた 試験 法科大学院 における 教育内容 を踏まえ、 実務修習を中核に 資料:司法制度改革推進本部事務局 ひとくちメモ 専門職大学院制度の創設 社会経済の複雑化、高度化、国際化が進展する中で、実践的な教育を通して高度で専門的な知識をもっ た職業人を大学院で養成するため、専門職大学院制度が平成15年4月からスタートします。 法科大学院は、 法曹を養成するための中核的な教育機関としてばかりでなく、専門職大学院のトップランナーとしても、 注目を集めています。 13 (4)国民が参加し、国民によって支えられる司法 新たな参加制度としての「裁判員制度」。 司法制度改革 の柱の一つであり、新しい分野ともいえるのが「国民的基盤 の確立」です。司法が十 分にその機能を果たすためには、国民からの支持と理解を得ることが不可欠との観点から、刑事訴訟 手続への新たな参加制度である裁判員制度の導入が図られています。 裁判員制度は、一般国民が裁判官と責任を分担しながら協働し、有罪・無罪や刑罰を決定していくも のです。裁判に国民の感覚がより反映されるようにすることにより、国民の司法に対する理解と支持が 深まる効果が期待されています。裁判員は、選挙人名簿から無作為に抽出された人を母体として具体 的な事件ごとに選任されます。 制度の内容については、平成16年 の通常国会での法案提出に向けて、検討作業が進められている ところです。 国民の司法に対する理解と支持が深まるための司法づくり。 司 法 刑事訴訟手続への新たな参加制度(裁判員制度の導入) ●国民が、一定の重大な罪の刑事裁判において、裁判員として、裁 判官と共に、有罪・無罪や刑の決定に関与する制度を導入します。 ●裁判員は、 「一般の国民」から無作為にリストアップされた人の中 から選ばれることとされています。 ●裁判内容に、法律の専門家ではない国民の健全な社会常識が、 より反映されるようになることによって、国民の司法に対する理解 と支持が深まることが期待されています。 裁判員制度以外の 参加制度 ●裁判所・検察庁・弁護 士会の運営について、 国民の意志をより反映 させる仕組みも整備 その他 ●司法をわかりやすく ●司法に関する情報公開 など 参 加 国 民 資料:司法制度改革推進本部事務局 ひとくちメモ 司法へのアクセスの拡充 国民の司法へのアクセスを拡充するために、司法の利用相談窓口(アクセス・ポイント)を充実し、法 律相談などの総合的な情報提供の強化が考えられています。訴訟申立手数料の低額化や弁護士報酬の一部 を敗訴者に負担させる制度も検討中です。 また、裁判所の利便性をインターネットを通じて向上させたり 、 裁判所の配置についての見直しも検討されています。 14 司法制度改革のこれまでの流れと今後の進行 6月 9日…… 司法制度改革審議会設置法が公布 ●平成11年 7月27日…… 司法制度改革審議会を内閣に設置 ●平成12年 11月20日…… 中間報告 6月12日…… 司法制度改革審議会意見を内閣に提出 ●平成13年 11月16日…… 司法制度改革推進法が公布 12月 1日…… 司法制度改革推進本部を内閣に設置 ●平成14年 3月19日…… 司法制度改革推進計画を閣議決定 「裁判の迅速化に関する法律案」 (仮称)等、 ●平成15年 改革関連法案を国会に提出予定 「裁判員制度」導入に関する法案等、改革関 ●平成16年 連法案を国会提出予定 4月………… 法科大学院(ロースクール)開校予定 ●平成18年 新司法試験の導入予定 ●平成22年 司法試験合格者を3,000人程度とする見込み 編集・発行 http://www.keikyo-center.or.jp/ 〒105-0001 東京都港区虎ノ門2丁目6番4号(第11森ビル)電話(03)3503-3757(代) 編集専門委員(50音順) 池下 井野 海野 榎本 金澤 金納 誠 靖久 省治 康司 利明 善明 東京都練馬区立上石神井中学校教諭 内閣府大臣官房企画調整課企画官 全国公民科・社会科教育研究会会長 東京都立科学技術高等学校教諭 東京都教育庁指導部高等学校教育指導課指導主事 成蹊小学校教諭 桑原 佐藤 篠田 仲 名古屋 成田 利夫 全国小学校社会科研究協議会会長 俊一 東京都文京区立第九中学校教諭 健一郎 東京都立蒲田高等学校教諭 信之 東京都立富士高等学校教諭 眞智子 東京都墨田区立第一吾嬬小学校教諭 秀和 東京都台東区立上野小学校長 原田 峯岸 宮地 村橋 吉越 昭 誠 忠明 勝子 裕二 図説・経済教育資料 身近で、頼もしく、速い司法となるためには―司法制度改革に向けて―/本編 平成15年3月発行 写真提供=最高裁判所事務総局・法務省 (社)全国工業高等学校長協会理事長 全国中学校社会科教育研究会会長 全国地理教育研究会会長 (社)日本経済団体連合会社会本部情報メディアグループ長 内閣府大臣官房参事官