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新規研究課題提案書
新規研究課題提案書 提案課・室名 問合せ先 (課題提案者が記入) 課・室名:国土地理院地理地殻活動研究センター 宇宙測地研究室 地殻変動研究室 研究制度名 住 所:茨城県つくば市北郷1番 代表担当者名:宇宙測地研究室 主任研究官 矢来 博司 正確・迅速な地盤変動把握のための合成開口レーダー干渉画像の高度利用に関 する研究 特別研究 研究期間 平成20年 ① (3)防災・環境保全に貢献する研究開発 研究課題名 課題分類 4月 ~ 平成23年 3月 ( 3年間) ② 研究開発の 干渉合成開口レーダー(干渉SAR)は地表面の変位を高密度に得られる技術 背景・必要性 であり、地震・火山活動や地すべり等の地表面の変動現象の把握に威力を発揮 すると期待されている。国土地理院は地盤変動を面的に監視するため、陸域観 測技術衛星「だいち」のデータを定常的に解析し、SAR干渉画像を作成してい る。平成19年3月発生の能登半島地震に関する解析から地震時に生じた地盤変 動を「だいち」により詳細に検出できる可能性が明らかになった。 現在の定常解析では軌道情報の誤差や大気の水蒸気位相遅延などによる大 きな誤差がSAR干渉画像に含まれている。地盤変動を示す干渉画像を作成する には熟練技術者の試行錯誤的な解析を必要とし、迅速な解析が困難であるとと もに、気象条件が良い場合を除けば大気による誤差を十分に除去できない事例 もみられる。また、干渉画像で与えられる位相情報から地盤変動量を求める位 相連続化(アンラップ)技術が未完成であり、特に、解像度を維持した手法は 開発されていない。このため、干渉SAR手法による半自動的な処理により、高 解像度で正確な地盤変動を迅速に抽出する技術の開発が求められている。 軌道情報については、平成19年度から開始された特別研究「SAR衛星の位置 決定の高精度化を通じた地盤変動抽出の高度化に関する研究」において誤差低 減技術の開発が行われている。 大気による位相遅延については、地形と相関するという仮定に基づく解析が これまで行われてきた。気象モデルの空間・時間分解能が精細化しつつあり、 国土交通省総合技術開発プロジェクト「準天頂衛星測位・通信システムの開発」 において、気象モデルを用いたレイトレーシング法による位相遅延量の算出手 法が確立され、気象モデルを用いた水蒸気位相遅延除去手法の実現が可能とな る環境が整ってきた。 位相連続化処理においては、従来のSAR衛星では画像の干渉性が低いため平 滑化を行う必要があり、解像度を犠牲にしてきた。一方、「だいち」では画像 の干渉性が高く、高解像度での位相連続化処理が実現できれば、高解像度の地 盤変動を抽出する可能性を持つことが分かってきた。 従って、気象モデルを用いた水蒸気位相遅延補正手法、高解像度に適合した アンラップ手法を開発し、SAR衛星の位置決定の高精度化手法と統合する技術 開発を行うことにより、SAR干渉画像を利用した正確・迅速な地盤変動把握を 実現し、緊急時における防災情報の迅速な提供等が期待される。 なお、本研究課題での研究成果は、「だいち」SARデータだけでなく、他の 地球観測衛星のSARデータにも応用が可能である。 ③ 研究開発の SAR干渉画像による正確・迅速な地盤変動把握を実現することを目的とし 目的・目標 て、SAR干渉画像に適合した位相遅延分布の計算手法の開発、アンラップ処理 の高度化を行うことにより、干渉画像の高度利用を可能とする技術を開発する ことを目標とする。 ④ 研究開発の ・レイトレーシング法による、SAR干渉画像に適合した位相遅延分布の計算手 内容 法の開発 ・実データを用いた位相遅延モデルの評価 ・特別研究「SAR衛星の位置決定の高精度化を通じた地盤変動抽出の高度化に 関する研究」の成果として得られる軌道情報と、本研究での位相遅延モデルを 組み込んだSAR干渉画像高度利用化手法の開発 ・高解像度を維持した位相連続化処理技術・半自動化システムの開発 ⑤ 研究開発の 気象モデルを用いたレイトレーシング計算による水蒸気位相遅延推定手法 方法、実施体制 の検討は宇宙測地研究室主任研究官および研究官が行う。推定位相遅延量分布 の評価については宇宙測地研究室主任研究官と地殻変動研究室および測地部 宇宙測地課が協力して行う。また、アンラップ処理の高度化については、地殻 変動研究室長が宇宙測地研究室、測地部宇宙測地課と協力して行う。 エフォートは次の通り。宇宙測地研究室主任研究官(矢来:30%)、宇宙測 地研究室研究官(宗包:10%)、地殻変動研究室長(飛田:10%)。 ⑥ 研究開発の 3.技術開発 種類 ⑦ 現在までの 1.研究段階 開発段階 ⑧ 想定される ・SAR干渉画像提供の迅速化に伴う、緊急時における適時的な防災情報の提供 成果と活用方針 ・SAR干渉画像の信頼性向上を通じた、より正確な地盤変動情報の提供 ・「だいち」SAR干渉画像からの地盤変動情報の高度利用による地盤変動監視 ・より正確な地盤変動情報の提供による地震メカニズム解明の高度化 ・地盤変動情報の提供による防災対策の支援 ・研究の進展に応じ、適宜「だいち」干渉SAR解析へ適用し、成果を提供 ⑨ 研究に協力 情報通信研究機構、宇宙航空研究開発機構 が見込まれる機 関名 ⑩ 関係部局等 河川局砂防部、国土技術政策総合研究所、(独)土木研究所 との調整 ⑪ 備考 新規研究課題事前評価表 (課題提案者が記入) 提案課・室名 課・室名:国土地理院地理地殻活動研究センター 宇宙測地研究室 問合せ先 地殻変動研究室 住 所:茨城県つくば市北郷1番 代表担当者名:宇宙測地研究室 主任研究官 矢来 博司 研究課題名 正確・迅速な地盤変動把握のための合成開口レーダー干渉画像の高度利用に関 する研究 研究制度名 特別研究 研究期間 平成 20年 4月 ~ 平成 23年 3月 ( 3年間) ① 研究開発 本研究課題は、干渉SAR解析の信頼性の向上・迅速化・効率化を図るもので の方向の妥 あり、干渉SARを用いた国土の地盤変動の監視に寄与するものである。国土地 当性 理院研究開発五箇年計画における重点研究開発課題の「(3)防災・環境保全に 貢献する研究開発」に該当することから、研究開発の方向は妥当である。 ② 国内・国 際的研究状 況を踏まえ ての実施の 妥当性 ③ 背景・必 要性の妥当 性 ④ 目標設定 の妥当性 ⑤ 国土地理 院が実施す べき妥当性 大気中の水蒸気がSAR干渉画像に与えるノイズについては、これまでにも大 気モデルやGPS観測で得られる天頂遅延量を用いた補正が試みられてきたが、 気象モデルやGPS観測点の空間分解能が不十分であること等が障害となって、 十分な解決には至っていない。また、三次元の大気モデルを用い、レイトレー シングによる位相遅延分布を求めた例はこれまでにない。 近年、気象モデルの空間・時間分解能が精細化しつつあること、国土交通省 総合開発プロジェクト「準天頂衛星測位・通信システムの開発」において、気 象モデルを用いたレイトレーシング計算による位相遅延量の算出手法が確立 され、補正に有効であることが確認されたことから、これらを用いた水蒸気位 相遅延分布の推定により、水蒸気位相遅延について定量的な解決が期待できる ようになった。 位相連続化処理(アンラップ処理)については、さまざまなアルゴリズムが 提案されているが、未完成であり、解像度を犠牲にする必要がある。「だいち」 のような干渉性の高いSARデータの出現により、その解像度を生かした位相連 続化処理手法の開発が望まれる。 これらの問題を解決することにより、干渉SAR解析の信頼性の向上・迅速化・ 効率化が可能となる。従って当課題を実施することは妥当である。 干渉SAR解析において、水蒸気位相遅延誤差は解析の信頼性の向上・迅速化を制 約する大きな要因の一つとなっている。また、現在、高解像度を生かした位相連 続化処理手法は存在せず、干渉SAR解析の信頼性・迅速性が損なわれている。これ らの問題が干渉SARを用いた国土の地盤変動監視の効率化を妨げている。 このため、上記問題の解決は防災の観点から待望されており、当課題は妥当で あると言える。 本研究課題により位相遅延分布の計算手法の確立、位相連続化処理の高度化 が行われ、別課題の特別研究により得られる高精度軌道情報と統合すること で、干渉SAR解析およびその結果に基づいた地盤変動監視の信頼性の向上・迅 速化・効率化が期待できる。したがって当課題の目標設定は妥当である。 国土地理院は「だいち」について宇宙航空研究開発機構と共同研究協定を結 んでおり、干渉SAR解析による国土の地盤変動の監視を担当している。防災のた めの国土の監視は行政が担うべき仕事であり、その技術を向上させる本研究課題 も行政機関で実施する必要がある。 国土地理院は、干渉SAR解析を行う独自の解析ソフトウェアを開発しており、干 渉SAR解析に関する技術的蓄積がある。また、2007年能登半島地震に関して行った 解析により、断層運動による地殻変動だけでなく多数の地すべりが発生したこと をSAR干渉画像において初めて発見するなど、SARデータ解析においても数多くの 実績・経験を積んでいる。 従って本研究課題を国土地理院が実施することは妥当である。 ⑥ 内容、方 <内容の妥当性> 水蒸気位相遅延の補正、高解像度での位相連続化処理手法の高度化により、 法、実施体 制の妥当性 干渉SAR解析による高解像度での変動量抽出の信頼性の向上・迅速化・効率化 が見込まれるため、当課題の内容は妥当であると考えられる。 <方法の妥当性> 水蒸気位相遅延に関する補正にはさまざまな手法があるが、三次元の気象モ デルを用いたレイトレーシング法が最も理想に近い補正方法であると考えられ る。国土地理院は、国土交通省総合技術開発プロジェクト「準天頂衛星測位・ 通信システムの開発」において、気象モデルを用いたレイトレーシング計算に よる位相遅延量の算出手法を確立し、補正に十分な精度を持つことが確認され ている。また、国土地理院は「だいち」のデータを定常的に入手しており、位 相遅延補正手法の精度評価を効率的に行うことができるため、干渉SAR解析に気 象モデルを用いたレイトレーシング法を適用することは妥当である。 さらに、防災上重要である、地すべりなどの局所的な現象を捉えるためには、 高解像度のまま位相連続化処理することが必要であり、干渉性の高い「だいち」 をターゲットにして位相連続化手法の高度化を図る方法は妥当である。 <実施体制の妥当性> 気象モデルを用いたレイトレーシング計算による位相遅延量の算出手法につ いては、宇宙測地研究室で上記手法の開発・精度評価を行っており、手法を熟 知している。また、干渉SAR解析については宇宙測地研究室主任研究官および 地殻変動研究室長、宇宙測地課で豊富な経験を有している。したがって、これ らの関係者が協力して研究を行うことで本研究は効率的に推進できると見込ま れる。従って当課題の実施体制は妥当である。 ⑦ 省内他部 SAR干渉画像の防災利用に関して、河川局砂防部、国土技術政策総合研究所、 局等との調 (独) 土木研究所との調整が必要である。 整の状況 ⑧ 他省庁、 水蒸気位相遅延の推定手法に関して、情報通信研究機構との間で情報交換を 異分野等と 行っている。 の連携方針 等 ⑨ 成果活用 本研究で開発される手法は、信頼性の高い地盤変動情報や緊急時における防 方針の妥当 災情報の適時的提供を推進するものであり、防災対策に役立つものである。ま 性 た、地震等に伴う正確な地殻変動データを提供することで、現象のモデル化を より精密に行い、そのメカニズム解明の高度化に活用することが可能である。 また、研究成果は研究の進展に応じて適宜「だいち」干渉SAR解析に反映され、 地盤変動監視の効率化が図られる。 従って成果活用方針は妥当であると考えられる。 ⑩ その他、 課題内容に 応じ必要な 事項 (参考資料等を適宜添付する) 正確・迅速な地盤変動把握のための合成開口レーダー干渉画像の 高度利用に関する研究 正確・迅速な地盤変動把握を阻害する要因 ・軌道値の誤差 ・軌道縞・水蒸気位相遅延の残留 →干渉画像の精度低下 ・高解像度変動量抽出が困難 ・大気中水蒸気による位相遅延 ・位相連続化(アンラップ)処理 半自動処理による迅速化 ① 機械的な処理 軌道誤差 = ② + + 除去 特別研究「SAR衛星の位置決定 の高精度化を通じた地盤変動抽 出の高度化に関する研究 」 地盤変動 大気位相遅延 除去 信頼度が高い位相 高精度軌道値 位相遅延分布推定 本研究 気象モデル 入力 気象モデルを用いた 位相遅延計算手法の開発 位相連続化処理法の高度化 ③ 変動量図 高解像度に適合した 位相連続化手法 位相遅延計算 ソフトウェア 計算手法の最適化 レイトレーシング法 位相遅延分布 精度評価 zより正確な地盤変動情報の提供 z緊急時の適時的な防災情報の提供 zより効率的な地盤変動監視 高解像度かつ 正確な変動量 の把握 (単位はcm) 正確・迅速な地盤変動把握のための合成開口レー ダー干渉画像の高度利用に関する研究 従来のわかりにくい表現 ・干渉SAR画像の変動は位相で表現される。 能登半島地震の 地殻変動 ・位相連続化処理(Phase Unwrapping) をしないと,コンターが描けない。 ・一般ユーザーが使いにくい。 ・三次元化ができない。 ・位相連続化処理を自動的に行うアルゴリズム は現存しない。 ↓ ・GUI(Graphical User Interface)を利用 した会話的な位相連続化処理法を開発する。 -180° 位相 +180° 高解像度画像では位相連続化失敗 × わかりやすい表現・定量的 ○ 本研究 衛星(西南西上空)に向かう変動量(cm) 具体的な位相連続化処理法の構想 ・基本:特異点(Residue, Singularity)の性質を利用する。 ・コヒーレンスを参考に人間がガイドを引く。 ・GUIによる試行錯誤(判断は人間) ・崖,断層を人間が引く ・レイオーバー,シャドウを見極める ・位相,コヒーレンス,地形,特異点画面の切り替え ・複数の位相連続化処理アルゴリズムの併用