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西村順二、「神戸市地場産業であるケミカルシューズ産業の
神戸市地場産業であるケミカルシューズ産業の実態調査 順二*1 西村 KONAN BI Monograph Series No.2015-001 *1 甲南大学経営学部教授、BI 研究所兼任研究員 October 2015 Institute of Business Innovation Konan University 1 *本論文は BI 研究所運営委員会の審議を経て、公開・公刊論文の扱いと認めるものである。 なお、本論文に関する全ての責任は執筆者にあり、本研究所は責任を負うものではない。 2 神戸市地場産業であるケミカルシューズ産業の実態調査 The Empirical Study of Chemical Shoes Industry as an Agglomerated Local Industry in KOBE 論文要旨 本研究は、神戸市長田区に多数位置するケミカルシューズ産業に関して、地域の産業集 積としての諸特徴を明らかにしたものである。日本ケミカルシューズ工業組合 89 社、日 本シューズ産業協同組合 16 社、その他 1 社に対して、アンケート調査を実施し、また 2001 年に実施されたケミカルシューズ産業のアンケート調査との 2 時点比較も行いながら、そ の調査集計結果を纏め、若干のコメントとして業界の特性と課題について考察を行ったも のである。 全体を通して考察された事は、以下のとおりである。業界の売上高は全盛期に比べ落ち込 んだままの状況であるが、総利益や総生産高では、中堅企業が底堅く堅持されていること、 地域の地場産業としての認識は強いこと、後継者については同族継承からやや選択肢が広 がってきていることが明らかである。戦略的には、やや消極的で定番商品や通常の売れ筋商 品群への傾倒が強く、市場情報へのアクセス面では流通業者からの情報入手はネガティブ な一方で、問屋依存は依然として強く残っている。直販志向は強くあるものの、ネットショ ップやなかなかリアルの小売店舗への進出などは少ないということでもある。戦略的なマ ーケティング志向は持ち始めているが、一方で旧態依然とした製造組織の強化への志向も 残されている。また、集積地として、業界内競合企業との協力体制作りについては、概ね その必要性を認識してはいることが明らかになった。 3 目次 Ⅰ 問題意識 Ⅱ 調査概要 Ⅲ 会社概要 Ⅳ 調査結果―経営者の認識 Ⅴ 調査結果―マーケティング基本戦略について Ⅵ 調査結果―戦略的マーケティングの実施 Ⅶ 調査結果―国際産業協力について Ⅷ 結びに変えて 参考文献 4 Ⅰ 問題意識 本調査研究においては、地域における地場産業の集積を分析の対象とし、その集積の 立地特性から、消費地との近接性や消費市場の情報汲み上げに関する傾向を考察するこ とを目指している。地域の産業集積にとって、消費地と生産地の間にあってそのゲート キーパーとしての役割を果たすべき組織体の存在が不可欠なのであろうか、また生産集 積地が消費地・消費市場からの遠隔性から、消費者ニーズへの対応に大手制約を受ける のであろうか、あるいは逆に一元化された消費者情報の収集・汲み上げが可能となるの であろうか、これらについての仮説導出に有効な事実結果の確認を行うものである。 Ⅱ 調査概要 (1)アンケート用紙配布期間 2014 年 12 月 9 日~2015 年 1 月 14 日 (2)アンケート用紙回収期間 2014 年 12 月 11 日~2015 年 3 月 20 日 (リマインダー2015 年 5 月 1 日~5 月末日) (3)総配布数 106 社 (日本ケミカルシューズ工業組合 89 社、日本シューズ産業協同組合 16 社、その 他 1 社) (4)総回収数 52 社 (5)有効回答数 52 社 (6)回収率 52/106 = 49.1% (7)方法 郵送留め置き・郵送回収、被験者自記入方式 (8)調査目的 甲南学園平生太郎基金科学研究奨励助成に基づき、2000-2001 年に実施された『神 戸地場産業復興のための経営的課題-ケミカルシューズ業界を中心に-』プロジェク トから 10 数年が経ち、当時指摘された神戸市長田地区ケミカルシューズ産業地場産業 課題の解決状況を確認する。ケミカルシューズ産業は依然としてこの地域の重要な産 業集積でありながらも、活性化しているとは言いがたい状況にある。今後も重要な地 5 域資源となり得るのか、そのためには何が必要なのかという問題に対する解答を探る ことを目指す。 なお、一部の質問については、2001 年調査との比較考察も行うものとする。以下は、 この調査に基づく調査結果と若干の考察が加えられたものである。 Ⅲ 調査結果―会社概要 1.会社の概況について 1-1.組織形態 表1 組織形態 実数 % 株式会社 40 78% 有限会社 7 14% 合名・合資会社 0 0% その他 4 8% 51 100% 合計 株式会社が 78%を占め、ほとんどの企業が法人組織としての体をなしている。個人 事業としてではなく、法人組織としての経営が進められている。 1-2.創業後の年暦 表2 期間 実 数 % 12 年未満 5 10% 12-20 年 1 2% 21-30 年 9 17% 31-40 年 9 17% 41-50 年 12 23% 51-80 年 14 27% 81-100 年 2 4% 52 100% 合計 6 51-80 年の社歴を持つ企業が一番多く、27%を占めている。帝国データバンクの調 査によれば、2012 年時点における企業平均年齢は 35.6 歳である。創業 31 歳以上の企 業は全国では 56.1%程度であるが、ケミカルシューズ産業では 71%程度となっている。 新規参入し難く、相対的に長寿企業が多くを占めている業界であるといえよう。 これらは業界の新規参入上は新陳代謝が進んでいないという一面と、長寿企業が後継者 を用意して長く経営を続けていることにより、組織としては新陳代謝がはかられていると も言える。 1-3.資本金規模 資本規模は、1000 万円以上‐3000 万円未満が 47%を占めて、一番多い。また、3000 万円未満の企業全体で 89%を占めている。資本金では中小規模である企業が多いとい うことである。 表3 実数 金額 (%) 500 万円未満 9 18% ―1000 万円未満 12 24% ―3000 万円未満 24 47% ―5000 万円未満 3 6% 5000 万円以上 3 6% 51 100% 合計 1-4.・5 支社状況と空間配置 表4 支社数 数 0社 6 1社 10 2社 1 3社 1 4社 1 無回答 33 合計 52 7 表5 支社所在地 数 東京 11 兵庫 2 大阪 1 神戸 2 青森 1 支社を有している企業は、52 社中 13 社である。また、支社の所在地は、上記の表 5 にあるように関西地域にもあるが、東京が一番多く、集中している状況である。これは、 取引情報収集・取引打ち合わせや消費トレンド情報収集のためであることは明らかであ る。 1-6.創立出自 図1 0% 6% 7% 製造業者 卸売業者 小売業者 その他 87% 創立時の出自については、その多くが製造業者であり、87%を占めている。また、卸 売業者からの業務拡張も見られる。本来的にモノ作り志向が強い企業群からなると言え よう。 2.製品の生産状況について 8 2-1・2.生産形態とケミカル比率 表6 生産形態 実数(%) ケミカルシューズ単一 22 42% ケミカルシューズ以外の靴 24 46% 6 12% 52 100% 無回答 合計 表7 比率 実数(%) 25%未満 6 24.0(%) 26-50% 4 16.0(%) 51-75% 1 4.0(%) 76-99% 10 40.0(%) 100% 4 16.0(%) 合計 25 100.0(%) 生産品では、ケミカルシューズだけを生産している企業とケミカルシューズ以外にも 生産拡張している企業が拮抗している。必ずしもケミカルシューズだけにこだわるので はなく、革靴などへの製造拡大が進んでいる。また、表7にあるように、ケミカルシュー ズ以外に拡張している企業群ではそれでもケミカルシューズ依存が高いが、一方でケミ カルシューズ依存を低めている企業群も確実に見られるということである。 2-3.製品タイプ別売上高構成比 図2 2% レディース定番比率 12% 44% レディースファッション比率 42% メンズ比率 その他比率 9 製品の売上高構成比で見ると、レディース定番製品が44%、レディースファッション 製品が42%と、この両社で86%に上る。紳士用製品も見られるが、12%とその比率は小 さいものに留まっている。業界全体としては、生産状況の拡大とあわせて、定番品と流 行品に広がった売上高構成となっている。販売面からの品揃えというよりは、製造とい う業務から言えば、製造ラインの拡張に挑戦してきたということである。 2-4.製品タイプ別価格構造 表8 製品タイプ (千円) 平均単価 最高単価 最低単価 レディース定番製品 6.98 17.00 0.59 レディースファッション製品 8.07 17.00 0.59 メンズ製品 4.46 7.00 2.00 製品の特性では、ファッション製品が定番製品よりも相対的には高価格帯を占めてい る。また男性製品よりも、女性品の方が相対的に高価格帯となっている。女性向け・フ ァッション向け商品が、戦略的商品として位置づけられているという事である。 2-5・6.所有ブランド数とブランド品比率 独自ブランドの所有企業は41社にのぼり、所有ブランド数の最小は0、最大は10である。 中央値では2ブランドとなり、少数ではあるが独自ブランドを有している企業が確実に 存在しているということである。52社のうち41社が何らかのブランド化を図っている事 は、今後の戦略展開の一つの方向性として可能な戦略であるとも言える。 図3 41 37 33 29 25 21 17 13 9 5 1 0 2 4 6 10 8 10 12 表9 売上高比率 実数 (%) 25%以下 13 32% 26-50% 9 22% 51-75% 8 20% 76-99% 9 22% 100% 2 5% 合計 41 100% また、上記表9にあるように、売上高ベースから見た最有力ブランドの比率では、76%以 上の依存が11社、25%以下の依存が13社となっている。50%ラインでみると、それより 小さい依存の企業が22社、逆にそれより大きい依存の企業が47%となり、2極化の傾向が みられる。上記に示したように、ブランド化への途において、幾つかの成功要因を明確 にし、有効なブランド戦略が必要だということであろう。 2-7.経営成果の5年前比較 ①年間売上高 図4 100% 90% 25% 80% 70% 3% 11% 60% 50% 20% 10% 0% 24% 22% 40% 30% 21% 22% 11% 9億円7-9億円 5-7億円 35% 8% 9% 9% H20 H25 3-5億円 1-3億円 ―1億円 年間の売上高で見ると、3-7億円という中間層への集中が見られる。33%から59%へ の増加である。一方で、上位層と下位層が減少している。 11 ②生産足数 図5 100% 90% 80% 40万足ー 70% 76% 60% 84% 30-40万足 50% 20-30万足 40% 10-20万足 30% 5-10万足 4% 0% 8% 4% 8% 20% 10% 0% 0% 4% 4% 8% 0% H20 ―5万足 H25 年間の生産足数では、増加している。これと年間売上高の動向をあわせ見ると、ブラ ンド化を図りつつあるとは言え、中間層の製品に留まり、それが生産量としては増加へ 押し上げる効果を果たしてはいるが、単価ではそれほど増加していないということであ る。 ③総利益率 図6 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 5 10 10 15 10 25 35 30 30 30 H20 H25 0-10% 10-20% 30-40% 40-50% 20-30% 12 このことは、上記の図6の総利益率から見ても明らかである。下位層は変わらず、中間 層が増加し、上位層は減少している。 ④経常利益率 図7 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 16 32 11 0 11 11 5 32 26 11 32 16 H20 H25 0-0.9% 1-4.9% 5-9.9% 10-14.9% 15-19.9% 20-29.9% 経常利益率で下位層が大きく増大し、中間層や上位層は、大きく減少している。競争 力の源泉となる総利益率が中位にあり、経常的な収益性では下位に偏ってきていること から、経済全体の景気動向や年次ごとの影響を受け易い構造を有しているといえる。 Ⅳ 調査結果―経営者の認識 1.ケミカルシューズ市場状況に対する認識 1-1・2.リーマンショック前後の業界の厳しさとファッション産業としての発展性認 識 ケミカルシューズ市場の厳しさと発展性に対する認識では、8割の経営者がリーマン ショック後厳しい状況が続いていると感じている。また、ケミカルシューズ産業の今後 について、ファッション産業としての発展性に対しては4割程度の経営者が肯定的に思 っているが、反対に6割の経営者が必ずしもそのように思ってはいない状況である。 13 図8 100% 0% 2% 90% 15% 4% 6% 80% 19% 70% 46% 全くそう思わない 60% それほどそう思わない 50% どちらでもない 40% ややそう思う 62% 30% 非常にそう思う 25% 20% 10% 17% 0% 厳しい状況 ファッション産業 1-3.業界の苦戦理由 図9 経営者 5% 5% 29% 4% 13% 11% 政策 5% 22% 6% 成熟産業 輸入品 問屋・専門店 消費者嗜好 他業界参入 若手人材不足 その他 ケミカルシューズ業界全体の苦戦の理由については、1位が輸入品の流入、2位が優秀 な若手後継人材不足、そして3位が問屋・専門店の問題と認識されている。これらに、4位 の成熟産業化に伴う衰退という回答をあわせると、75%に上っている。後継問題やチャ ネル問題は現状では課題認識に留まり、まだ改善の動きは一部の企業組織に限定される。こ れらは、業界として一部対応できる要因でもあり、今後業界自らの検討が望まれよう。 14 2.ケミカルシューズ産業に対する考え 2-1・2・3. 現状・将来の地域発展への貢献評価と将来依存について 図10 100% 90% 0% 4% 8% 2% 13% 31% 44% 80% 19% 70% 33% 60% 19% 全くそう思わない 50% あまりそう思わない 33% 40% 30% どちらとも言えない 40% ややそう思う 31% 非常にそう思う 20% 10% 10% 0% 4% 地域発展役割 将来の地場産業 ケミカル離脱 図10にあるように、84%の経営者が、ケミカルシューズ産業のこれまでの地域発展への 貢献を評価している。しかしながら、今後の貢献可能性については、その貢献のポジテ ィブ評価は64%と20ポイント減少している。 また、今後ケミカルシューズ産業から離脱し、他の産業へシフトすることについては、 50%がそう思ってはいない。しかしながら、33%の経営者が「どちらとも言えない」と しており、この産業の将来性について経営者の事業認識が磐石であるとは言えないであ ろう。 3.会社としてのケミカルシューズ事業継続性 3-1.企業人としての自負 これまで企業人としての自負をもって、ケミカルシューズ産業に関わってきた経営者 15 が92%に上り、ほとんどの経営者が企業人自覚を有して事業経営を進めている。 図11 8% 0% 0% 非常にもっている やや持っている どちらとも言えない 51% 41% さほどもっていない 全然もっていない 3-2.後継者の選択 図12 100% 4% 6.7% 90% 80% 35% 70% 60% 50% 0% 10% 40.0% 閉業 3.3% 6.7% 40% 30% 20% 未確定 外部経営者 幹部社員 50% 子供・婿 43.3% 10% 0% 今回調査 前回調査 事業後継者としては、子供や婿という回答が最も多く、50%を占めている。次に、現 在のところ未確定という回答が 35%となっている。前回調査との比較では、子供や婿 という回答と未確定という回答が同様に多いが、今回調査では子供や婿への集中化が見 られ、法人としての継続性については同族経営の傾向が強くなってきていると言える。 3-3.産業の民族特殊性認識 ケミカルシューズ産業が在日コリアン民族に特殊的な産業であるかと言う質問に対し 16 ては、47%の経営者がそう思ってはいない。逆にそう思っている経営者は30.6%となっ ている。前回調査と比べてみると、逆転しておりもはや明確に在日コリアン産業である という認識は薄れてきている。むしろ、図12に見られるように、民族特殊的というよりは、い わゆる同族経営化へ向かってきているということであると言えよう。 図13 100% 90% 18.4 12.9 非常にそう思う 80% 70% 22.6 28.6 60% ややそう思う 12.9 50% 40% 35.5 30% 20% どちらとも言え ない 22.4 あまりそう思わ ない 20.4 10% 10.2 16.1 全く思わない 0% 今回 前回 Ⅴ 調査結果―マーケティング基本戦略について 1.会社の製品ライン 1-1・2・3・4・5 品質、ファッション性、新製品導入頻度、モデルチェンジ、製品ライン の広さに対する評価 製品ラインに対する評価を製品の品質、ファッション性、そして新製品の導入頻度と いう視点から見た場合には、50-60%程度の高い評価を経営者は持っている。しかし、 定番品のモデルチェンジや製品ラインの拡張については、他の項目に比べて積極的では なく、むしろ消極的な一面を見せている。 17 図14(企業数表示) 100% 90% 1 0 20 2 0 25 6 0 1 8 17 80% 3 11 23 70% 21 60% 50% 低い 20 21 やや低い 20 40% 普通 30% 15 やや高い 11 20% 10% 10 7 4 0% 高い 2 2 1-6・7・8・9・10・11・12事前消費者情報、SNS活用、小売店情報、問屋情報、自社セン ス、流行への対応、取引先対応に対する評価 図15(企業数表示) 100% 0 3 90% 1 2 3 1 3 0 7 0 1 2 4 7 8 80% 70% 2 2 13 22 12 20 18 60% 26 23 13 50% やや悪い 16 普通 40% やや良い 良い 30% 20% 10% 悪い 23 18 23 22 14 15 16 0% 18 製品ラインの中でも事前消費者情報、SNS活用による消費者ニーズの取り込み、小 売店情報活用、問屋情報活用、モノ作りとしての自社センスへの自負、流行への対応、 取引先対応における製配販の迅速性という視点では、経営者は70-90%の間で高い評価 をしている。ただし、SNSによる消費者ニーズの獲得とエンドユーザーのニーズの象 徴である流行への対応では、相対的には低い評価に留まっている。 2.製品の価格体系 2-1.製品の価格に対する考え方 基本的には、通常の値ごろ感のある製品とやや高価格帯の製品を中心として展開され ている。ただし、前回調査と比べると現在は高価格帯と普及品に二分化し、さらには低 価格帯製品を減らし、より高価格な製品の展開への動きが見られる。 図16 100% 90% 10% 6% 80% 70% 高価格 33% 48% 60% やや低価格高 価格 50% 普通 40% 30% 44% 31% 20% 10% 0% やや高価格 低価格 8% 2% 今回 6% 9% 前回 2-2.販売価格の設定方式 販売価格については、図17にあるように競合企業価格を意識する一方で、あまり積極 的に価格戦略を意識した値付けは行われていない。外国製品の流入による厳しい市場状 況を考えたとき、それなりに価格対応を図りつつも、有効な価格戦略が見えてこない状 況におかれているとも言えるだろう。 19 図17 100% 0% 6% 0% 6% 42% 43% 90% 80% 競合企業志向 70% やや競合企業 志向 60% 50% どちらとも言 えない 40% 23% 32% 30% ややコスト上 積み方式 20% 23% 10% コスト上積み 方式 19% 0% 今回 前回 2-3・4.小売の値引き率 図18(企業数表示) 12 11 10 8 6 6 5 4 2 1 2 1 2 3 4 4 0 50%以上 50-30% 市場化すぐ 30-20% 20-10% 10%以下 市場化半年後 市場に導入して直ぐの値引きと半年後の値引きについては、どちらも10%以下が最も 多いが、半年後には30-50%値引きも多くなり、値引き率の分散化が生じている。半年 での半額近い値引き率は、ケミカル・シューズという製品が有する季節性・流行性・ファ ッション性によるものであり、価格戦略展開の難しさの表れでもある。 20 3.販売促進の展開 3-1販売促戦略のタイプ 図19 100% 4% 90% 12% 10% 17% 80% 70% 60% 50% プル志向 46% 38% 40% どちらとも言え ない 30% 20% 10% 0% どちらかと言え ばプル志向 13% 21% 10% 14% 今回 前回 どちらかと言え ばプッシュ志向 プッシュ志向 販売促進戦略において志向される戦略タイプは、あまり明確にプル志向・プッシュ志 向という区分が行われていない。前回調査においても同じような傾向がみられるが、今 回調査の方がその区別においてより減退している。価格戦略については、その有効性は あまり重要視しにくい状況におかれていることでもあるのだろう。これについては、後 述の価格決定権の所在が分散化していることからも想定できることであろう。 3-2・3・4・5.販売促進活動への取り組み 販売促進活動への取り組みにおいて、図20にあるように、広告費については業界慣行 に比べて「少ない」という回答が最も多い。「少ない」と「やや少ない」で60.9%を占 め、逆に「多い」と「やや多い」という回答は、8.7%である。同様にセールスマン数に おいても、「少ない」という回答が最も多く、「少ない」と「やや少ない」で63.0%と なっている。「多い」と「やや多い」は6.5%である。展示会の開催については、最も多 い25社(53.2%)において業界慣行とほぼ同じという評価(「普通」)がなされている。 「多い」と「やや多い」という回答は、12.8%に留まっていると言える。 21 販売促進活動は積極的には行われておらず、展示会への依存が強い業界となっている。 図20(企業数表示) 100% 8 90% 80% 18 16 10 13 8 70% 60% 50% 少ない 25 40% 30% 20% 10% 0% やや少ない 普通 やや多い 14 14 3 1 2 1 5 1 広告費 セールスマン数 展示会頻度 多い 図21 46 43 40 37 34 31 28 25 22 19 16 13 10 7 4 1 0 5 10 15 22 なお、販売促進活動において相対的には重視されている展示会開催であるが、図21に あるように展示会の年間回数は、平均では3.9回、中央値では3回となっている。大体四 半期ごとの展示会や春・夏・秋冬の展示会が毎年開催されているということである。 3-6.広告のタイプ 図22 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 4% 12% 38% 12% 12% イメージ訴求型 32% どちらかと言えば イメージ訴求型 どちらとも言えな い 12% 15% 今回 36% どちらかと言えば 機能説明型 機能説明型 8% 前回 広告について、そのタイプは機能説明型が27%、イメージ訴求型が16%、どちらとも 言えないが最も多く38%となっている。広告の打ち方について戦略的な視点はあまり考 慮されていないと言えよう。また、この傾向は、前回調査より進み、前回調査では44% が機能説明型で最も多かったが、このタイプもイメージ訴求型も減少し、ますます広告 の意味づけが明確にされていない状況となってきている。 3-7.重要視されるプロモーション手段 図23にあるように、もっとも重要視されるプロモーション手段は、展示会と営業部隊 である。第1位という回答と第2位という回答が断トツで多く、ほぼ集中している。また、 当てはまらない・販売促進手段として活用していないものは、放送媒体でのコマーシャ ル、そして業界紙が多い。さらにカタログ・チラシも続いている。 図20及び図21にも示されているように、基本的には展示会開催と営業部隊による販売 促進が主であり、その他のプロモーション手段は淘汰されてきているといえる。ただし、 その中でも一部インターネット・ホームページ・SNSの活用に重きを置く企業も24.1% ではあるが、見られる。 23 図23(回答企業数) 重要度1位 ネット 3 CM 01 1 0 9 重要度3位 非該当 13 24 2 1 カタログ 業界紙 4 重要度2位 11 14 5 20 20 営業部隊 19 22 展示会 3 21 5 12 4.流通経路戦略の展開 4-1・2・3・4.流通チャネル上の依存関係 流通チャネルにおいて川下企業への依存度を業態ごとにみると、卸売業者・百貨店・ 専門店チェーン・零細専門店それぞれに50%以上の依存度を示している。中でも、卸売 業者(問屋)への依存は最も大きく、70%を超えている。販路としては、既存チャネル への依存が現状の状況である。ただ、百貨店と零細専門店への依存は相対的には小さい ものとなっている。 図24(回答企業数) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 4 10 7 16 15 12 19 3 7 9 10 16 16 全然頼らない 13 15 18 1 0 11 1 24 さほど頼らない やや頼る 相当に頼る 全面的に頼る 4-5・6・7・8.流通チャネル上の関係性 さらに、流通チャネル川下企業との関係性をみてみると、卸売業者(問屋)との関係 では、共存共栄的な関係が半数近くの企業において見られる。しかし、専門店チェーン との関係では、一部従属的な関係も見られるが、他の川下企業との関係では、共存共栄 的でも従属的でもなく、対等の関係性を維持していることが伺える。 図25(回答企業数) 100% 90% 3 3 80% 7 70% 60% 13 50% 7 14 9 5 2 3 3 18 22 4 1 その他 非常に従属関係だと思う 23 やや従属関係だと思う 40% 30% 16 20% 10% 0% 9 どちらとも言えない 10 6 5 7 10 3 やや共存共栄的だと思う 非常に共存共栄的だと思う 4-9.価格決定権をもつ主体 流通チャネル上で価格決定権を有しているのは、自社という回答が一番多く45%を占 めている。次に、自社と卸売業との話し合いで決められるものが多く、23%を占めてい る。概ね、自社が価格を決めるか卸売業との話合いで決まっていくのが現状である。こ れは上記の図24と25に見られるように卸売業との共存共栄関係をベースに卸売業者に依 存する企業が多いということの表れでもある。 25 図26 10% 23% 45% 18% 4% 自社 卸売業者(問屋) 大手小売企業 自社と卸売業者の相談 自社と大手流通業との相談 4-10.自社にとっての流通マージンの認識 図27 100% 6% 6% 90% 6% 13% 80% 70% 60% 58% 56% 50% 40% 30% 20% 23% 10% 0% 非常に大きい 19% 4% 6% 今回調査 前回調査 やや大きい 普通 やや小さい 非常に小さい 自社にとって流通マージンはどの様に認識しているのかについては、大きいという企 業が27%、小さいという企業が12%、普通と感じている企業が最も多く58%である。総 じて言えば、 流通マージンに対しては特段の不満もないということである。この傾向は、 前回調査と変わらない。 4-11.流通業者からの販売促進協力要請 流通業者から協賛・イベント商品提供・人員派遣等について、あまり要請は見られな い。またこれは前回調査でも同様であったが、今回調査では、非常に少ないという回答 が増えている。 26 図28 100% 90% 80% 70% 60% 53% 62% 非常に少ない やや少ない 50% 普通 40% 30% 20% 10% 0% 27% 4% やや多い 非常に多い 25% 17% 0% 3% 0% 今回調査 前回調査 4-12.流通業者からの販売促進協力要請に対する対応 図29 100% 0% 17% 90% 80% 70% 51% 28% 全く応じない 60% 選別して応じる 50% 40% 20% 28% 17% 17% 仕方なく応じる 慣行通り応じる 30% 20% 10% 0% 11% 10% 今回調査 前回調査 喜んで応じる 流通業者からの販売促進協力要請に対する対応は、28%の企業は応じているが、消極 的対応では71%となっている。ほとんどの企業が、流通業者からの販売促進協力要請に は否定的に付き合っている状態である。この傾向は、前回調査と比べても基本的にはあ まり変わっていない。ただし、選別的に対応する企業が増大していることは、馴れ合い 慣行から脱却してきているということでもあろう。 4-13.流通業者からの市場情報(需要情報・新製品情報)の入手 図30 27 100% 90% 80% 7% 16% 9% 22% 70% 少ない 60% 50% 40% 48% 普通 やや多い 30% 20% 10% 0% やや少ない 38% 25% 13% 11% 多い 12% 今回調査 前回調査 流通業者からの市場情報入手は、積極的には行われてはいない。48%の企業が「普通」 という回答であり、「少ない」という企業29%とあわせて77%が積極的ではない。前回 調査でも同様の傾向はみられるが、流通業者からの情報入手を積極的に活用する企業が 減少してきているのが現状である。 4-14.同業者協働出店の意向 図31 強い やや強い 普通 やや弱い 弱い 出店済み 4% 8% 3% 15% 37% 13% 50% 33% 23% 7% 7% 0% 今回調査 前回調査 同業者による共同出店については50%の企業がどちらでもない状況であり、23%の企 業が強い意向と弱い意向に分かれている。前回調査では、50%の企業が弱い意向であり、 全体としては共同ショップの運営に前向きに変化してきていると言える。 4-15.インターネットショップへの進出意向 図32 28 16% 6% 14% 27% 29% 8% 強い やや強い 普通 やや弱い 弱い 出店済み 新たな販路開拓としてのインターネットショップに対しては、ほどほどの関わりを考 えている企業が最も多く29%であり、35%の企業が消極的である。一方で、16%はすで に出店し、20%は積極的な意向を示している。 4-16.ホームページ・ネットショップ開設の有無 図33 20% 26% 14% 40% HP開設・ネット販売 HP開設のみ 近いうちに開設 必要性感じない ホームページとインターネットショップについては、26%の企業がすでに取り組んで いる。また、ホームページの開設に留まっている企業が40%と最多数を占めている。ホ ームページやインターネットショップに対して、その必要性を感じていない企業も20% と存在している。 4-17.今後の直販志向 図34 29 100% 2% 90% 18% 7% 27% 80% 12% 70% 全然ない 60% 17% 50% ほぼない 43% 迷っている 40% ややある 29% 30% 非常にある 20% 25% 10% 20% 0% 今回調査 前回調査 今後流通企業を通さずに、直接販売する体制作りに前向きな企業は68%である。また 20%の企業は、それを望んでいない。前回調査からは、直販への意向は高まって来ては いることが分かる。 Ⅵ 調査結果―戦略的マーケティングの実施 1.経営資源及び強みについて 1-1.最も重要な経営資源 図35(複数回答実数) 工場施設 在庫 金融資産 ブランド力 業界信用 消費者ニーズ 取引パートナー その他 15 15 13 今回調査 0 1 2 5 6 9 9 10 14 16 21 26 25 27 40 従業員 前回調査 企業の重要な経営資源と考えられているのは、従業員、取引パートナー、業界信用で ある。この傾向は前回調査と変わってはいない。しかし、ブランド力と在庫については 30 今回調査では重要視されるようになり、逆に消費者ニーズは重要視さなくなってきてい る。 1-2.将来の投資分野 図36 工場拡大 倉庫拡大 従業員増員 情報化投資 16% 直営小売店拡大 ネット販売 18% 14% 20% 16% 16% 今後投資すべきと考えている領域は、バランスよく全領域に広がっている。その中で も工場拡大と倉庫拡大は高く、インターネット販売への意欲も見られる。 2.競争政策及び競争環境について 2-1.顧客の細分化認識 図37 非常に進んでいる やや進んでいる 普通 さほど進んでいない 2% 4% 22% 38% 34% 31 ほとんど進んでいない 顧客市場については、細分化が進んでいるという認識を持つ企業が72%と高くなって いる。逆に、進んでいないという認識企業はわずか6%である。 2-2・3.現在の競争相手の認識と今後の競争相手 図38(複数回答実数) 100% 2 6 90% 80% 23 60% 50% 40% 30% 高価格外国企業 23 70% 中低価格の外国生産企業 14 5 4 1 19 11 15 11 今回調査 前回調査 PB大手小売企業 ファッションメーカー 20% 10% 靴生産企業 0% 他ケミカル企業 図39(単一回答企業数) 100% 5% 0% 90% 高価格外国企業 80% 70% 46% 中低価格外国企業 68% 60% PB大手小売企業 50% 40% 12% 30% 20% 20% 10% ファッションメーカー 2% 8% 4% 靴生産企業 12% 15% 0% 今回調査 8% 前回調査 32 他ケミカルシューズ企業 現状で競争相手として考慮すべき点では、図38に見られるように中低価格の外国生産 企業が最も多い。次に靴生産企業、そして他のケミカル企業と続く。前回調査では、中 低価格の外国生産企業がより大きな競争相手として認識されていたが、今回調査では、 相変わらず中低価格の外国生産企業が主たる競争相手ではあるが、競争相手の分散化が 進んできているという事が言えよう。 また、今後最も脅威となり得る競争相手についても図39から明らかなように、中低価 格の外国生産企業が主たる競争相手であることと、競争相手の分散化が今後も進むであ ろうことが認識されている。 2-4.生き残り戦略 図40(回答企業数) 100% 0 1 80% 2 3 1 4 90% 14 21 13 13 全然そう思わない 70% 60% 50% 10 どちらとも言えない 10 20% 10% 0% 17 20 40% 30% さほどそうは思わない 19 16 16 11 7 ややそう思う 1 大量生産 差別化製品 ニッチ市場 高品質・高価格 非常にそう思う 今後、生き残りのためにとるべき戦略としては、客単価が上がる差別化製品への絞込 み、そしてブランド力の向上による高品質・高価格製品への取り組みが、強く希望され ている。また、ニッチ市場への参入も、目標視されている。一方、大量生産体制による 価格競争力の向上については、ほとんどの企業が評価してはいない。 33 3.取引相手との関係性 3-1~11.取引相手との関係性 取引相手との取引関係において、下請け生産企業、卸売業者(問屋)、中小零細専門 店との関係は良好であるという回答が多い。百貨店と大手小売専門店チェーンに対して は、それなりの良好関係と認識してはいるが、相対的には下請け・問屋・中小零細専門 店の方が関係の良好性は高いとなっている。しかしながら、関係の継続希望では、取引 相手による差異は大きくはない。但し、総合的には下請け生産企業と卸売業者(問屋) との関係継続は大きく望まれている。 図41 100% 90% 0 0 1 9 6 0 3 2 1 3 3 2 8 80% 5 3 2 3 12 15 21 19 1 2 11 1 7 4 15 70% 1 2 17 15 12 60% 26 26 50% 19 25 40% 17 19 30% 19 23 16 25 21 20% 14 10% 13 8 4 7 8 2 0% 非常にそう思う ややそう思う どちらとも言えない 12 11 さほどそうは思わない 5 全然そう思わない なお、業界内競合企業との協力体制作りについては、概ねその必要性を認識してはい る。しかしながら、個別の取引先との関係ではなく、競合企業とした場合には反対意見 が少し目立って存在してはいる。 34 3-12.協力重視企業の今後の共同化内 図42 共同ネット 100% 4 90% 5 6 4 80% 8 3 2 70% 11 7 60% 3 5 50% 11 40% 7 11 5 8 7 30% 20% 4 19 共同店舗 共同海外生産基地 共同海外販売 共同海外調達 共同CM 共同市場調査 共同情報処理 7 10% 共同物流 9 6 今回調査 前回調査 0% 共同販促 共同製品開発 前頁の競合企業との共同化に肯定的な企業において、その共同化の内容については図 42にあるように共同販売促進活動が最も多く、次に共同市場調査と共同海外調達となっ ている。前回調査との比較では、共同販売促進活動より共同市場調査が多数であった。 また、共同販促、共同物流、共同海外調達、共同海外販売が目立って増加している。共 同化の具体化が進み、多様な内容での共同化が実現してきていく時代に突入したという ことであろう。 3-13.生産・組み立てから直販への拡張 今後は、生産・組み立てに留まらず、直接販売までも拡張していくべきと考えている企 業は63%に上る。一方、直販に否定的な企業は8%に留まっている。これからの方向性と しては、直販が一つの有効な方向性であると認識されていることは確かである。 35 図43 4% 4% 38% 29% 25% 非常にそう思う どちらとも言えない 全然そう思わない ややそう思う さほどそうは思わない Ⅶ 調査結果―国際産業協力について 1.海外資材調達状況 1-1.海外資材調達状況 資材の海外調達については、60%の企業が現在多少は行っているという回答である。 現在積極的に海外調達を行っている企業と合わせると、現在では75.6%の企業が海外調 達を行っていることになる。前回調査88%と比べると、この海外調達企業比率は12.4ポ イント減少している。また、なによりも積極的な調達という回答が大きく減少している。 為替や海外国のリスク問題等により、海外調達に依存する一元的な方向だけを求めるの ではなくなってきるということであろう。 36 図44 100% 90% 80% 3.0% 3.0% 6.0% 11.1% 2.2% 11.1% 22.0% 70% 全く考慮していない 60% これから積極的に行うつもりだ 50% これから多少行うつもりだ 60.0% 40% 現在、多少行っている 66.0% 30% 現在積極的に行っている 20% 10% 15.6% 0% 今回調査 前回調査 1-2.海外調達額とアイテム 海外調達額については、単純平均では1億694万円となっている。しかし、一部に大き な取り扱い金額企業も存在し、中央値から見れば、3,250万円となっている。 海外調達アイテムについては、表10にあるように多様化している。特に、底・底材が 最も多く、次にアッパー・アッパー材と生地、そして飾り・装飾品の調達が多く見られ る。 表10 品目 実数 品目 実数 品目 実数 底・底材 6 美錠 2 ウレタン 1 アッパー・アッパー材 4 パーツ 2 金具 1 生地 4 ホットフィックス 1 製品 4 飾り・装飾品 4 ヒール 2 半製品 1 雑材・資材 2 ゴム類 1 37 2.アジア諸国との生産分業体制 2-1.生産面で分業しているアジア諸国・地域 図45(複数回答企業数) 100% 90% 80% 70% 60% 12 3 4 0 50% 40% 30% 11 生産関係なし 0 その他 21 ASEAN諸国 韓国以外のNIES 29 0 7 中国 20% 10% 0% 韓国 4 今回調査 11 前回調査 生産面でのアジア諸国との分業体制は、75%程度の企業がアジア諸国と関係を持ち、 進んでいると言える。その中でも、特に中国との分業体制が進んでいる。前回調査でも 80%近い企業がアジア諸国と生産分業関係をもっており、ASEAN諸国中心であった が、今回調査ではASAN諸国との生産分業体制は減少している。 2-2.資材調達面で分業しているアジア諸国・地域 資材調達におけるアジア諸国との分業体制は、85%程度とかなり進んでいる。その中 心は中国である。また、前回調査ではアジア諸国との海外資材調達は80%程度であった ので、増加傾向にあると言える。ただ、前回調査では韓国が資材調達国の中心であった が、今回調査ではその座を中国に譲っている。 38 図46(複数回答企業数) 100% 90% 80% 70% 7 3 1 1 7 1 1 2 調達なし 25 9 ASEAN諸国 60% 50% その他 40% 韓国以外のNIES 30% 20% 13 10% 中国 13 韓国 0% 今回調査 前回調査 3.製品の海外輸出状況 3-1.輸出状況 図47 100% 90% 80% 今後全く考慮しない 40% 70% 50% 40% 今後積極的に行うつもり 74% 60% 11% 今後多少行うつもり 19% 現在多少行っている 30% 4% 4% 20% 30% 10% 0% 0% 今回調査 現在積極的に行っている 11% 7% 前回調査 製品の輸出については、現在行っている企業が30%、そして今後の海外輸出意向も含 めると60%に上る。前回調査では、26%の企業が海外輸出意向を持っていたのに比べる と大きく海外輸出が進んでいる。 3-2.輸出対象国・地域 39 図48 韓国 5% 中国 21% 38% 韓国以外のNIES 東南アジア 欧米諸国 5% 24% その他 7% 輸出実績なし 0% 輸出対象の国・地域については、韓国以外のNIESが最も多く、次に中国となって いる。 3-3.輸出金額(平成25年度) 輸出金額については、平成25年度において、平均値では2,078万円となっている。し かしながら、大きな金額の輸出を行なっている企業も存在しているため、実際の業界状 況では中央値の700万円程度の輸出実態であると言える。 4.今後の海外諸国との戦略的提携 4-1・2・3・4.アジア諸国と欧米諸国との競合関係・提携関係 日本の国内市場における競合関係という観点からみると、アジア諸国企業との関係で はそれほど競争的にはならないという企業が65%程度と多い。逆に欧米諸国企業とは競 争的になるという企業が相対的には多く見られる。 また、日本の国内市場における資材調達や生産面での協力関係という観点から見ると、 アジア諸国企業との生産・資材調達におけるパートナーシップでは多くの企業でそれほ ど進むとは考えられてはいない。むしろ、欧米諸国とのパートナーシップかについては 好意的に考える企業が多い。 図49 40 100% 90% 80% 1 3 4 7 11 3 4 8 70% 19 60% 50% 15 非常にそう思う ややそう思う 23 どちらとも言えない 40% 25 30% 20% 8 12 さほどそうは思わない 5 16 10% 6 0% 全然そう思わない 7 2 2 すなわち、欧米諸国企業とは競合する一方で、友好関係も結ぶ傾向を示している。ア ジア諸国企業とは競合しない一方で、友好関係も結びにくい傾向を示していると言えよ う。これは、高品質・ブランド品への転換を志向しつつ、アジア諸国との連携は様々な リスクが存在し困難性を伴うことを表していると言えよう。 Ⅷ 結びに変えて 最後に、全体を通して言えることをまとめておきたい。 (1)業界としての競争力が弱まってきており、ある種の保守的・ルーチン的対応 に留まり、革新性は弱いといえる。 (2)課題認識は自覚されているが、学習と行動へのプロセスへ進んでいないと言え る。学習モデルが回りきれていない。 例:経験学習モデル(経験→省察→概念化→実践) (3)マーケティング戦略が明確に認識・自覚されて展開されているとは言い難い状 況にある。 (4)戦略的マ-ケティングの展開において、思いと行動のアンバランスが存在して いる。 (5)海外との連携は進んでいるが、相手が変化してきている。此処 10 年では中国 中心の海外連携であるが、実態としてのそれであって、将来方向性としてはブ ランド力のある欧州企業との競合と連携を視野に入れている。実態と将来展望 41 についての乖離が、まだまだ大きいといえる。 参考文献 西村順二・高龍秀・崔相鐡(2003)「神戸地場産業復興のための経営的課題ーケミカルシュー ズ産業を中心にー」『甲南大学平生太郎基金科学研究報告書 年度』第 4 巻 2000-2001 下、pp.641-700。 西村順二(2015)「地域中小企業における産業集積と市場の関係性に基づく成長戦略―ケ ミカルシューズ産業の事例研究―」 『甲南経営研究』56-1、pp.25-47。 42