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鉄道システムの統合,情報化と当社のコンサルティングサービス

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鉄道システムの統合,情報化と当社のコンサルティングサービス
鉄道システムの統合,情報化と当社のコンサルティングサービス
System Integration of IT-Oriented Railway Systems and Related Consulting Services
柳田 啓一郎
藤原 裕二
YANAGIDA Keiichiro
FUJIWARA Yuji
わが国の鉄道は社会のインフラとして広く普及して,文化,経済の発展に大きく寄与し,ヨーロッパと肩を
並べ世界の頂点にあるが,他の産業でもそうであるように,その運営につき経営効率面からの見直しが急務で
ある。一方,IT(情報技術)の急速な進歩・発展により,膨大な情報量を高速,かつ信頼度高く伝送できる今日,
従来の細分化された単位の統合化が容易になり,ナレッジ化されたデータベースを基に経営の飛躍的な効率向
上が可能になった。
このような背景の下,当社は,高品質なソフトウェア及びハードウェアを駆使した鉄道統合システムを,当
社の卓越した IT でもっとも経営効率の良い構成で提供し,経営コンサルタントとしても顧客の事業計画当初か
らそのノウハウを提供して,スピーディな課題解決に貢献する。
Railways in Japan have spread broadly as a social infrastructure and have greatly contributed to cultural and economic
development, ranking at the top level in the world along with European railways. However, there are calls to review railway
operations from the standpoint of management efficiency, in the same manner as other industries. At the same time, the rapid
progress of information technology (IT) has enabled the high-speed and highly reliable transmission of massive amounts of
information. This leads to easy integration at existing subdivided units and makes possible remarkable improvements in
management efficiency based on knowledge databases.
With this as a background, Toshiba is offering integrated railway systems applying our high-quality software and hardware with
excellent IT in the most management-efficient configuration.
Toshiba also assists clients with speedy problem-solving by providing
our know-how as a management consultant from the initial planning stage.
1
まえがき
わが国の鉄道は,鉄道事業者の強力なリーダシップの下
にヨーロッパとともに世界の頂点に立っているが,文化及び
2
鉄道システムの統合
電気鉄道の E&M(Electrical & Mechanical)
システムは,
車両を運行させるための基本システムとして,輸送計画,車
経済発展の態様の違いにより,わが国はビジネス主体,ヨー
両,電力供給,信号,通信,設備管理,検修管理などの各シ
ロッパは観光主体に鉄道が位置づけられたと言える。その
ステム,機器から構成される。
性格から,わが国の鉄道は大量輸送,正確性が特に要求さ
れ,信頼性が高く合理的なシステムが必要である。
また,バブル崩壊以降,企業の体質改善が急務となり,鉄
道事業にも,収益性に優れた経営システムが要求されてい
る。
近年,演算速度が飛躍的に向上したマイクロコンピュータ,
パワーエレクトロニクス分野の大型半導体素子の高速化な
どにより,装置の大幅な小型・軽量・高機能化が進み,更に,
情報・制御機能の集約化が促進されている。
トータルシステム面では,制御単位の集約,機能の整理・
一方,近年の急速な IT の発達により,情報伝達速度・伝
統合が進み,総合監視システム,運行管理システムのような
送量,ネットワーク構築技術が飛躍的に向上し,パソコンが
管理・監視システムと信号・通信システムの統合による機能
オフィスコンピュータに取って代わったように,従来の細分化
の簡素化,地上と車上の情報統合による運行・保守管理の
された単位の統合が急速に進んでいる。鉄道においても同
合理化などが挙げられる。また,パッケージ化することによ
様に,経営効率向上面からのニーズは大きい。また,経営面
りインタフェースの簡素化,製造に起因する個体差の均質化
からも,データベースを基本にその効果を定量的に評価す
が図れ,よりいっそうの信頼度の向上が可能である。
る手法が定着しつつある。
当社は,社内での業務革新・改善実績に基づき,システム
また,近い将来期待されている,信号システムを車上に搭
載し,車両自身が現在の位置を認識しながら安全を確認し,
インテグレーション技術,IT を駆使して顧客の課題解決に貢
時刻どおりに運転するシステムの実現,更に運行管理機能を
献しており,その一部について以下に述べる。
上位の総合管理・監視機能に統合されれば,鉄道システム
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東芝レビュー Vol.55No.9(2000)
の基本は,電力供給システム,車両システム,駅・基地のイ
より結ばれ,鉄道コミュニティの場が形成される。
特
集
次に,鉄道情報システムの考え方について述べる。
ンフラシステムに統合・集約され,総合管理・監視システム
にコントロールされることになる。各システムとその相関の
コンセプトを図1に示す。
更に,図 1 に示すように,総合管理・監視システムに集約
鉄道情報システム
3
されたデータで O&M(Operation & Maintenance)が実行
近年の IT の革新により,情報の伝達速度・量は格段に向
され,経営に必要な情報が伝達されて経営・情報システム
上し,企業経営の合理化,統合化に大きく寄与している。特
が構築される。また,この経営・情報システムは,それ以外
に,鉄道事業のように諸設備が沿線に分散され,経営情報
の生活サービス事業も包括した他システムとネットワークに
の一元化が強く要求され,今後生活サービス分野を視野に
入れた事業では,今後の IT の活用が経営を左右すると言っ
ても過言ではない。
経営・情報システム
鉄道事業における情報は,中央管理部門の経営・計画情
ネットワーク
報,指令情報,列車の運行情報,駅での業務・接客情報,
駅・乗務区の業務情報,車両基地・沿線制御設備での制
O&M
総合監 視 ・ 管 理 シ ス テ ム
通信
関連グループ企業,外部他機関,他企業など,将来事業化が
システム
運行
管理
電力供給
システム
御・保守情報などであり,経営情報として集約される。更に,
生活サービス
事業
車両
信号
システム
システム
進む生活サービス事業分野とのネットワーク接続が活発に
なっている。その情報と相関を図2に示す。
駅
これらの情報は個々の機能・システムの経営データとして
基地
蓄積されているが,全体システムとしての最適化,IT 化へ向
けての電子化も急務である。すなわち,インターネットを活
図1.鉄道システム統合のコンセプト 従来から構成されている
鉄道システムの機能分担を見直し,構成の簡素化,統合を図るコン
セプトを示す。
Concept of railway system integration
用した切符販売,ホテル/レンタカーの予約,各種商品のオ
ンラインショッピング,乗換え・運賃・時刻案内・列車運行状
グループ会社
経営管理部門
企業データベース
意志決定支援システム
経営情報システム
業務部門共通
人事管理システム
給与計算システム
申請システム
収入情報 経理システム
資産情報
輸送情報
設備計画・工事部門
設備・計画情報
設備管理システム
設備計画支援システム
信号閉そく割り支援システム
列車制御シミュレータ
資産管理システム
人事管理システム
給与計算システム
申請システム
顧客管理システム
収入金管理システム
広告・案内提供システム
事務業務
ソリューション
輸送計画部門
輸送情報
ダイヤ作成システム
運転曲線作成システム
運用計画システム
乗降客推定システム
新規サービス
ソリューション
営業・広報部門
情報提供システム
広告・案内提供システム
座席予約システム
顧客管理システム
収入金管理システム
予約情報
外部情報ネットワーク
案内情報
計画情報
設備・資産情報
設備管理
ソリューション
運転情報
指令所
運行管理システム
運転整理システム
車両指令システム
旅客案内システム
設備保守部門
工事申請システム
現場保全管理システム
資材管理システム
設備管理システム
沿線監視システム
制御情報
収入情報
駅業務
基盤設備
計画情報
輸送実績情報
車両基地
車両管理システム
車両運用システム
構内ダイヤ作成システム
検修作業勤務システム
駅・沿線制御設備
電子連動装置
駅間LAN
電子踏切装置
鉄道業務
ソリューション
列車制御
ソリューション
コンピュータ
ネットワーク
映像通信システム
インターネットシステム
乗務区
乗務員当直システム
勤務管理システム
携帯車掌端末
乗客実績集計
駅収入管理システム
駅遠隔監視システム
保守管理システム
遺失物管理システム
案内情報
収入情報
プラットフォーム
ソリューション
駅接客設備
自動改札機
自動券売機
情報提供装置
オンライン販売端末
ICカード
図2.鉄道情報システムの構成例 鉄道システム及び関連する部門との情報の流れを整理し,当社の提供できる情報システムをまとめた。
Example of railway information system configuration
鉄道システムの統合,情報化と当社のコンサルティングサービス
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況の情報提供,駅を新しいサービスの場とした生活サービ
システムを提供する。更に,最近一括した対応が要求され
ス事業への対応である。
る O&M の分野も視野に入れ,事業の収益向上に貢献する。
4.2
当社は,情報を経営のナレッジ化(知識化)されたデータ
コンサルティング
ベースとして整理し,種々のソリューション(課題に対する解
前述のように,急速に多様化する事業環境下での事業の
決策)を用意して顧客とともに経営の効率向上を目指してい
方向づけは,いかに的確にかつ迅速に事業の適合性を把握
る。以下に,そのソリューションについて述べる。
できるかが鍵(かぎ)であり,その分野及び関連分野の調
鉄道業務ソリューション 輸送計画,設備計画,車
査・分析,次に事業計画,更に計画に見合ったシンプルな効
両基地,乗務区,駅の業務支援など,現場に密着した支
率の良い体制・仕組み作りが重要である。当社は,当社の
援システムを提供する。
業務革新・改善実績に基づき,顧客の定量的効果を主体に,
列車制御ソリューション 管理・監視システムと信
事業の計画当初から課題の解決に貢献したいと考えてい
号・通信システム,車輌制御・地上情報の統合により,
る。すなわち,事業計画のプロセスである調査分析,計画
運行・保守管理の合理的なシステムを提供する。
策定,システム構築,システム検証,保守に従いコンサルティ
設備管理ソリューション 設備に関するスケジュー
ングを行い,事業の拡大,収益性向上をビジネスのパートナ
ル,履歴などのデータを一元管理し,業務の効率化と
ーとしてお手伝いすることであり,図3にそのコンセプトを
正確化,知識の共有化を図る仕組みを提供する。
示す。
事務業務ソリューション ワークフローシステム,
業務支援パッケージを用意し,データ管理や申請,帳票
お客さまの定量的な効果
作成などを簡素化した事務業務システムを提供する。
鉄道ノウハウ・実績に
基づいた改革・改善
新規サービスソリューション インターネット,モバ
ITを駆使した改革・改善
イル,画像伝送など,最新の IT を用いた新システムを
コンサルティング
提供し,新たな価値の創造を図る。
プラットフォームソリューション 世界標準のコンピ
ュータ機器やネットワーク,システムインテグレーション
調査
分析
手法を提供し,最適なシステム構築を支援する。
4
鉄道システムインテグレーションとコンサル
ティング
事業計画
策定支援
システム
構築
システム
検証
保守
図3.当社のコンサルティングサービス 当社の業務革新の実績
から顧客のメリットを定量的に提示し,経営効率向上のコンサルテ
ィングを行うプロセスの概念を示す。
Consulting services offered
安全で確実な鉄道システムを構築するためには,コアシス
テムが信頼度高く稼働することが基本であり,今後も変わる
ことはないが,近年積極的に展開されている鉄道に関連す
る生活サービス事業を含め,いかに効率良く鉄道システム
がインテグレートされ,収益性高くかつ信頼度高く運用され
るかが大きな課題であると考えている。
また,事業を取り巻く環境はより複雑かつ急速に世界的
5
あとがき
今後,鉄道事業は輸送業と生活サービス業の分野で更に
情報をコントロールし,事業領域の拡大を目指すであろう。
当社は,このような背景の下に,顧客の事業構想,収益計
画段階から IT を十分に活用した種々のソリューションを用
規模で変化し,事業のフィージビリティを的確にかつ迅速に
意し,従来の鉄道システムインテグレーションも含め,ビジネ
把握することがもう一つの大きな課題である。
スのパートナーとして事業領域の拡大,経営効率の向上,収
当社は,この大きな課題に対し,更に充実した鉄道システ
益性改善のお手伝いをしたいと考えている。
ムインテグレーション技術を駆使し,当社の経験・実績に基
づいた経営を含めたコンサルティングを行う。
柳田 啓一郎 YANAGIDA Keiichiro
合管理・監視,電力供給,車両,駅・基地のシステムに統合
情報・社会システム社 交通システム事業部 交通プロジ
ェクトエンジニアリング部部長。鉄道ターンキーシステ
ムプロジェクトエンジニアリングに従事。電気学会会員。
Transportation Systems Div.
され,従来の細分化された機能が集約されると思われる。
藤原 裕二 FUJIWARA Yuji
4.1
鉄道システムインテグレーション
図 1 で述べたように,近い将来の鉄道の基本システムは総
当社は,この観点から,各システムに適したコア技術を開
発,ユニット化して当社の高品質なソフトウェア及びハード
ウェアとして準備し,もっとも効率が良く信頼度の高い鉄道
10
情報・社会システム社 交通システム事業部 交通情報シ
ステム部グループ長。鉄道情報システムのシステムエン
ジニアリングに従事。
Transportation Systems Div.
東芝レビュー Vol.55No.9(2000)
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