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IFRS-固定資産に関する考察

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IFRS-固定資産に関する考察
IFRS-固定資産に関する考察
2014/10/28
Crossfields IFRS研究会
Index
1. はじめに
2. 固定資産に関連する基準の体系
3. 固定資産の取得
6. 減価償却
6-1. 減価償却の方法
6-2. 減価償却の単位
6-3. IFRSと日本基準の差異
3-1. 固定資産の取得原価
3-2. 借入費用の取得原価算入
7. 減損
7-1. IFRSと日本基準の差異
7-2. 減損の戻入
4. 資産除去債務
4-1.
4-2.
4-3.
4-4.
4-5.
4-6.
4-7.
定義
引当金との関係
推定的債務
IFRSと日本基準の差異
まとめ
設例
開示
5. 認識後の測定
5-1. 原価モデルと再評価モデル
5-2. 設例:原価モデル
5-3. 設例:再評価モデル
1
All rights reserved Crossfields Co., Ltd. ©, 2014
1. はじめに
本資料ではIFRSの「固定資産」に関して記載しております。
<おことわり>
一部、当方の解釈が入っている部分があるため、今後のIFRSの論議の結果、異なる解釈結果となる
部分も発生する可能性がありますので、ご了承ください。
本資料の内容の複製・転載、および転送を禁じます。
著作権は㈱ クロスフィールドに帰属します。
2
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2. 固定資産に関連する基準の体系
固定資産に関して、IFRSは複数の基準によって規定しており、それらを固定資産のライフサイクル
に当てはめて整理すると以下のようになる。
ラ
イ
固
フ
定
サ
資
イ
産
ク
ル
取得
使用
売却・除却
(認識時点の測定)
(認識後の測定)
(認識の中止)
IAS16「有形固定資産」
・除去費用
・自家建設
・交換による取得
関
連
会
計
基
準
IAS23「借入費用」
・減価償却
・減価償却単位(コンポーネント)
・原価モデル/再評価モデル
・売却
・除却
IAS36「減損」
IAS40「投資不動産」
IAS38「無形固定資産」
IAS17「リース」
IFRS5「売買目的で保有する非流動資産」
※言葉の説明
IAS: International Accounting Standards
IFRS: International Financial Reporting Standards
3
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3-1. 固定資産の取得
~固定資産の取得原価~
固定資産の取得原価について、IFRSと日本基準を比較すると借入費用の取扱いを除き、ほぼ同
様といえる。
論点
購入代価
IFRS
日本基準
資産化適格借入費用の
資産化は必須
資産化適格借入費用の
資産化は任意
IFRS
日本(会計基準)
参考:日本(税法)
• 固定資産の取得原価に含める
• 固定資産の取得原価に含める
• 固定資産の取得原価に含める
借入費用
• 資産化適格借入費用の資産化
は必須
• 資産化適格借入費用の資産化
は任意
• 資産化適格借入費用の資産化
は任意
(法令54、法基通7-3-1の2、
7-3-2、7-3-3の2)
資産除去債務
• 負債計上し、同額を固定資産の
取得原価に含める
• 負債計上し、同額を固定資産の
取得原価に含める
(企業会計基準18号)
• 計上不可
(∵税法的に認められる負債は、
法的に確定した債務のみ)
直接付随費用
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3-2. 固定資産の取得
~借入費用の取得原価算入~
適格資産(意図した使用又は販売が可能となるまでに相当の期間を必要とする資産)取得に充
当した借入金の借入目的に応じて、取得原価に含めるべき借入費用(資産化適格借入費用)
の金額は変動する。
ケース:購入代価100の適格資産を取得した場合
①適格資産を取得する目的で借り入れた場合(紐付き借入)
→対象の借入金および借入費用が特定できる。
紐付き借入金A
100(利率5%)
利率5%
× 100 =
取得原価に含める
借入費用5
適格資産
購入代価
②一般目的(汎用的な使途を目的)で借り入れた資金を適格資産の取得に充当した場合
→対象の借入金および借入費用が特定できない
→資産化率(加重平均利率)を利用
一般目的借入金B
300(利率3%)
一般目的借入金C
200(利率7%)
資産化率4.6%
(300*3%+200*7%)/(300+200)
5
× 100 =
取得原価に含める
借入費用4.6
適格資産
購入代価
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4-1. 資産除去債務
~定義~
1. 「資産除去債務」とは?
有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去
に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。
2. 会計上の取扱い
負債として認識される資産除去債務の金額と同額を取得原価に含める。
3. 具体例
定期借地権契約で賃借した土地の上に建設した建物等の除去
賃借建物の原状回復義務
石綿障害予防規則等で規定されているアスベスト建材の除去
※補足:税法上の取扱い
資産の解体・除去・現状回復時に損金計上ができる。
6
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4-2. 資産除去債務
~引当金との関係~
IFRSにおいて、資産除去債務はIAS37「引当金、偶発債務及び偶発資産」に従って会計処理がな
される。
資産除去債務の定義
有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関
して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。
資産除去債務の計上
資産除去債務として計上する場合は、引当金の計上要件と照らしてみる。引当金の計上要件を
満たした場合、資産除去債務計上が可能となる。
<引当金の計上要件>
企業が過去の事象の結果として、現在の法的債務、または、推定的債務を有している。
当該債務決済のために、経済的便益を持つ資源の流出が必要となる可能性が高い。
当該債務の金額を信頼性をもって見積もることができる。
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4-3. 資産除去債務
~推定的債務~
資産除去債務の範囲として、IFRSでは「推定的債務」を含めている点が日本基準と異なっている。
推定的債務
次のような企業活動から発生した債務を指す。(IAS37)
確立されている過去の実務慣行、公表されている政策又は極めて明確な最近の文書によって、
企業が外部者に対し、ある債務を受諾することを表明しており
かつ
その結果、企業がこれらの責務を果たすであろうという妥当な期待を外部者に惹起している。
<具体例>
環境に関する基準が無い地域で企業が工場の操業を行い、周辺環境を汚染してきた。
違法性が無かったため、これまでは対応を行ってこなかったが、近年の環境への意識の高まりから、
工場が操業を続けるためには環境浄化を実施する必要があると取締役会が判断し、これを近隣住
民に伝えた。
8
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4-4. 資産除去債務
~IFRSと日本基準の差異~
日本基準はIFRSとのコンバージェンスの一環として制定されたものであり、大きな違いはない。
ただし、各論点ごとに見ると差異が下記のように存在する。
論点
IFRS
日本基準
範囲
• 法的債務
• 推定的債務
・法的債務
割引率
• 負債に内在する特定のリスクを反映さ
せる
・リスクフリーの割引率
変動時(除去債務/割引
率)の対応
• 毎期見直しを行う
• 将来キャッシュフローに重要な変更が
あった場合は見直す
敷金の取扱い
• 取扱いに関する規定無し
• 規定が存在する(適用指針第9号)
時の経過による利息計
上額のPL上の表示
• 財務費用として処理する
• 減価償却費と同じ損益区分として処理
する
※日本においては、「敷金」を原状回復に充当する場合が多いため、適用指針が定められている。
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参考:資産除去債務に該当しない推定的債務
資産除去債務に該当しない推定的債務
推定的債務で引当金の計上要件を満たすもののうち、「有形固定資産の除去」にかかわらないも
のは、どのような会計処理を行うのだろうか?
例) 有形固定資産の使用期間中に実施する環境修復費用
<見解>
資産除去債務に関する会計基準では、資産除去債務を有形固定資産の除去にかかわるものと
定義している。有形固定資産の使用期間中に実施する環境修復や修繕は対象とはならない。
したがって、企業が負うべき環境修復に関する債務のうち、
有形固定資産使用終了時に実施する環境修復や修繕にかかわるものだけが「資産除去債務」
に該当し、それ以外のものは「環境修復引当金」に相当すると考えられる。
10
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4-5. 資産除去債務
~まとめ~
資産除去債務・引当金計上要件・会計処理をまとめると、以下のようになる。
日本基準における
資産除去債務
固定資産の除去
に係わる
固定資産の除去
に係わらない
法的債務
引当金の
計上要件を
満たす
推定的債務
引当金の
計上要件を
満たさない
IFRSにおける
資産除去債務
11
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●コラム 赤坂プリンスホテルの解体工事について
<問題提起>
西武HDが保有していた赤坂プリンスホテルの解体工事が、以前話題になった。
(ホテルが建っている土地を自社所有資産と仮定した場合)当該工事に係るコストは、資産除去債務を法的
債務に限る日本基準においては対象外だが、もし西武HDがIFRSを適用していたら、資産除去債務に相当
したのであろうか。
<解釈>
① 赤坂プリンスホテルの建築時点
法的債務、推定的債務いずれも存在しない。
② 赤坂プリンスホテルの営業停止時点
営業停止となったとはいえ、建物自体を解体をすることは決定していないと考えられる。
そのため、法律上の義務及びそれに準ずるものは無いと推測される。
また、推定的債務にも該当しない。
③ 解体のアナウンス時点
建物の解体を取締役会等で決定し、それを社外にアナウンスした時点で「推定的債務」に該当すると思われる。
ただし、アナウンス時に建物を利用していないのであれば、資産除去債務としては認識せず、単純に「引当金」として
計上すると推測される。
(参考)日本基準を適用している西武HDは、解体工事について、以下のように処理している。
②営業停止時点
: 「減損損失」、「事業所閉鎖損失引当金繰入額」による損失計上(2010年3月期)
③解体アナウンス時点 : 前年度に既に引当金計上済のため、特に会計処理はなかった(2011年3月期)
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4-6. 資産除去債務
~設例~
【前提】
有形固定資産の購入価額を 10,000(耐用年数は5年:定額法)
資産除去に係わる費用の見積金額を 1,000
割引率は 5%
有形固
定資産 除去債務
①資産取得時
(借) 有形固定資産
784
10,784
(貸) 未払金
(貸) 資産除去債務
10,000
784
1,000/ (1.05)5
10,784
②初年度末
(借) 減価償却費
(借) 利息費用
2,157
39
(貸) 減価償却累計額
(貸) 資産除去債務
2,157
39
10,784/ 5
784 * 5%
③2年度末
(借) 減価償却費
(借) 利息費用
2,157
41
(貸) 減価償却累計額
(貸) 資産除去債務
2,157
41
10, 784/ 5
(784+39) * 5%
864
10,784
907
10,784
------------------3
------------------3年度~4
年度~4年度省略----------------------年度省略----------------------④5年度末
(借) 減価償却費
(借) 利息費用
2,157
48
(貸) 減価償却累計額
(貸) 資産除去債務
⑤除却時(実際の除却費用は1,200だった)
(借) 減価償却累計額
10,784 (貸) 有形固定資産
(借) 資産除却債務
1,000 (貸) 現預金
(借) 費用(履行差額)
200
13
2,157
48
10, 784/ 5
(952+45) * 5%
1000
10,784
10,784
1,200
1,200-1,000
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4-7. 資産除去債務
~開示~
1.貸借対照表上の表示
(除去債務)
資産除去債務は1年以内に履行が見込まれる場合は流動負債の区分に、1年以内に履行が見込まれな
い場合は固定負債の区分に資産除去債務等の適切な科目名で表示する。
2.損益計算書上の表示
(減価償却費)
除却費用見合いで計上した資産の減価償却費は、対象資産の減価償却費に含めて計上する。
(利息費用)
利息費用は、財務費用として営業外費用の区分に計上する。
なお、日本の会計基準においては、対象資産の減価償却費に含めて計上する。
(履行差額)
履行差額は対象資産の減価償却費に含めて計上する。
但し、当初の除却予定よりも著しく早期に除去することになった場合など、当該差額が異常な原因による
場合には特別損益に計上する。
3.注記事項
資産除去債務は引当金の基準に従うため、引当金で求められている下記情報などが注記情報として必要
・ 資産除去債務の内容
・ 資産除去債務の増減額
・ 予測される履行の時期 など
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5-1. 認識後の測定
~原価モデルと再評価モデル~
認識後の測定方法として、IFRSでは資産の種類ごとに「再評価モデル」も認められているが、
日本基準では「原価モデル」しか認められていない。
IFRS
日本基準
原価モデル、再評価モデルの
選択適用が可
論点
認識後の測定
IFRS
• 原価モデル or 再評価モデル
いずれかを選択
原価モデルのみ適用可
日本(会計基準)
日本(税法)
• 原価モデルのみ
原価モデル
固定資産評価額=取得原価-(減価償却累計額+減損損失累計額)
再評価モデル
固定資産評価額=再評価日における公正価値- (再評価日以降の減価償却累計額+再評価日以降の減損損失累計額)
※再評価時に生じる、帳簿価額と公正価値の差額は、「再評価剰余金(その他の包括利益)」として純資産の部に計上する。
公正価値とは、市場における第3者間の取引価格をいう。
※ただし、再評価モデルを採用している場合は、原価モデルに基づく帳簿価額も開示しなければならない。
→実務負担が重いため、ほとんどの企業が原価モデルを採用している。
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5-1. 認識後の測定
~原価モデルと再評価モデル~
「原価モデル」と「再評価モデル」の固定資産評価額の違いは、下記の通り
原価モデル
再評価モデル
取得原価から減価償却累計額と減損損失累
計額を控除した金額を固定資産評価額とする
固定資産
評価額
固定資産の固定資産評価額を定期的に公正
価値へ引き直す
減価償却累計額
減損損失累計額
固定資産
評価額
取得原価
再評価日以降の
減価償却累計額
再評価日以降の
減損損失累計額 ※1
再評価日における公正価値
再評価日の
固定資産
評価額
再評価実施 ※2
※1 再評価日においては、再評価日以降の減価償却累計額と再評価日以降の減損損失
累計額はともにゼロ円になりますので、固定資産評価額=公正価値になります。
※2 再評価は、再評価が必要な時に行います。したがって、再評価日=決算日となるとは
限りません。
16
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5-2. 認識後の測定
~設例:原価モデル~
原価モデルについて、
「回収可能価額が帳簿価額を上回るケース」と「帳簿価額が回収可能価額を上回るケース」で解説。
ケース ②:
帳簿価額が回収可能価額*1を
上回るケース
回収可能価額(70) < 帳簿価額(100)
ケース ①:
回収可能価額*1が帳簿価額を
上回るケース
回収可能価額(110) > 帳簿価額(70)
会計処理不要
帳簿価額
70
減損損失 30
回収可能
価額
110
帳簿価額
100
回収可能
価額
70
*1 回収可能価額は下記のうち、大きい金額を用いる
使用価値
: 割引後将来CF合計額 (使い続けたらどれだけキャッシュを回収できるか)
正味売却価額 : 売価-売却費用 (売ったらどれだけキャッシュを回収できるか)
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5-3. 認識後の測定
(設例)
取得価額 200
1年目 年度末
減価償却費 20
公正価値
190
~設例:再評価モデル~
耐用年数10年
減価償却費 20/年
2年目 年度末
減価償却費
30
公正価値
130
帳簿価額 180
減価償却
20
再評価剰余金 10
減価償却
30
再評価剰余金 △10
減損損失 △20
公正価値
190
帳簿価額
180
帳簿価額 160
帳簿価額
160
1年目 年度末
公正価値
130
2年目 年度末
減価償却費
20
減価償却累計額
20
減価償却費
30
減価償却累計額
30
減価償却累計額
10
再評価剰余金
10
再評価剰余金
10
減損損失累計額
30
減損損失
20
(B/S)
(P/L)
固定資産
200
減価償却累計 △10
(B/S)
固定資産
200
減価償却累計 △40
減損損失累計 △30
減価償却費 20
再評価剰余金
(P/L)
10
減価償却費 30
減損損失
20
再評価剰余金
18
0
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6-1. 減価償却
~減価償却の方法~
1. 「減価償却」とは?
取得原価(または再評価後原価)から残存価額を控除した償却可能価額をその耐用年数にわ
たって規則的な方法で費用配分する方法をいう。
2. 減価償却方法の選択
将来の経済的便益の消費パターンに最も近似する方法を選択する。
定額法、定率法、生産高比例法、など
※ ただし、収益をベースとした減価償却方法は認められない。
3. 償却開始時期
意図した方法で稼働可能となった時点より開始する。
4. 償却方法等の見直しの時期
減価償却方法・残存価額・耐用年数は少なくとも毎期末に見直す必要がある。
5. 償却の終了
認識の中止時点(処分、または、経済的な便益が期待できない状態)
売却目的資産に振り替えた場合には、減価償却を中止しなければならない。
※ 遊休状態でも償却は継続する。
19
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6-2. 減価償却
~減価償却の単位~
1. コンポーネント・アカウンティング
1つの固定資産の中に重要な構成要素を有する場合には
それぞれの構成要素について別個に減価償却を行う必要がある。
2. コンポーネント・アカウンティングの具体例
航空機:
「機体」と「エンジン」を別個に償却
(IFRS)
コンポーネント
(日本基準)
機体とエンジンと
を一体化して償却
(法人税法における耐用年数)
【航空機】
重量で分類
5年から10年
※ 航空機だけでなく、自動車もエンジンと
車体を分けて設定されていない
20
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6-3. 減価償却
~IFRSと日本基準の差異~
減価償却についてIFRSと日本基準の主な差異は下記の通り。
論点
IFRS
日本(会計基準)
参考:日本(税法)
償却方法
• 経済実態に応じた方法を選択
• 明確な規定は無く、法人税法の
規定に依拠するケースが多い
(会計士協会の実務指針におい
ても認められている)
• 建物・無形資産は定額法、その
他は選定可能(選定しないと定
率法)
耐用年数
• 経済実態に応じて見積り
• 対象資産の種類、構造又は用
途、細目ごとに規定あり
残存価額
• 経済実態に応じて見積り(実務
上、通常はゼロ円になると思わ
れる)
• 企業会計原則では、「当該資産
の耐用期間にわたり、定額法、
定率法等の一定の減価償却の
方法によって、その取得原価を
各事業年度に配分する」という
記述のみ。
償却単位
• コンポーネント・アカウンティング
(全体の取得原価に対し、重要
な部分を占める構成部分(コン
ポーネント)について、個別に減
価償却を実施)
資産ごとに
実態に応じた検討が必要
• 備忘価額の1円まで償却可能
• 耐用年数を規定する細目の単位
を償却単位とするのが通常と思
われる
詳細な規定に基づき、
形式的に決定
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●コラム IFRSで定率法は認められるか?
IFRS適用の検討当初は「減価償却方法の「定率法」はIFRSで認められないのではないか?」という議論があっ
た。経団連より2013年6月に公開された「IFRS 任意適用に関する実務対応参考事例」を参考に現在の状況
について確認する。
IFRS適用検討当初の状況
IFRS
日本の状況
減価償却方法は、資産の将来の経済的便
益が企業によって消費されると予測される
パターンを反映されるものでなければならな
い
多くの企業は、法人税法の規定に従って海
外ではあまり採用されていない定率法を使
用して減価償却の計算を行うことが実務慣
行となっていた
定率法は資産の将来の経済的便益が消費されると予測されるパターンを反映していないのではないか?
IFRS財団の見解(2010年11月)
定率法も消費パターンのより良い近似となる場合もある →定率法の容認
① 耐用年数の後半により多くの修繕やより頻繁なメンテナンスが必要となる資産も多い
② ある資産を使って製造される製品の価格が、当該固定資産の耐用年数にわたって低下していく可能性有り
現時点の見解
定率法も減価償却の方法として選択可能
→ 実際に、日本でも適用している企業も存在している
→ 資産の予想使用量が導入当初に比べ相対的に低くなることを根拠としている会社も存在
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7-1. 減損
~IFRSと日本基準の差異~
減損についてIFRSと日本基準の主な差異は下記の通り。
論点
IFRS
認識
(減損が存在して
いるか否か)
いるか否か)
• 資産の回収可能価額(※1)が、 • 資産の割引前将来CFが、帳簿
帳簿価額よりも低い場合は、そ
価額よりも低いなら、減損を認
の差額をもって即時に認識する。 識する。
測定
(減損をいくらで計
上するか)
上するか)
減損損失の戻入
日本(会計基準)
• 資産の回収可能価額(※1)が、
帳簿価額よりも低い場合は、そ
の差額をもって減損損失を認識
する。
• 戻入あり。
∵経済的便益の回復を財務諸
表に反映するため
• なお、のれんは戻入はなし。
• 戻入なし。
∵上記のように、減損について
慎重な認識を行っているため
参考:日本(税法)
• 基本的に認められていない。固
定資産の評価損が損金算入さ
れるのは、以下のケースのみ。
①災害により著しく損傷したこと
②1年以上にわたり遊休状態にあ
ること
③本来の用途に使用することが
できないため他の用途に使用さ
れたこと
④所在する場所の状況が著しく
変化したこと
⑤会社更正法等による更正手続
きの決定等で評価換えをする必
要が生じたこと
※1 回収可能価額 … 使用価値 と 正味売却価額 のいずれか大きい金額
使用価値
… 割引後将来CF合計額 (使い続けたらどれだけキャッシュを回収できるか)
正味売却価額 … 売価-売却費用 (売ったらどれだけキャッシュを回収できるか)
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7-2. 減損
~減損の戻入~
IFRS特有の処理である減損戻入は、減損損失認識時と同様に、まず回復の兆候があるかどう
か検討した上で、回収可能価額を計算するというプロセスを踏む。
回収可能価額の回復の兆候
外部の兆候、内部の兆候
兆候あり
過年度における見積りの変更となる
→新たに入手可能となった情報に基
づいた再見積りが必要
回収可能価額の再計算
簿価<回収可能価額
減損戻入の計上
減損しなかった場合の簿価を上限に
戻入れる
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(参考)減損会計の適用事例
会社(
会社(期)
減損内容 抜粋
ポイント
シャープ
(2012年3月期)
「遊休状態にあり、将来使用見込がなくなった当社葛城工場における薄膜太陽電池の生産設
備等の帳簿価額を、回収可能価額まで減額し、当連結会計年度に当該減少額(6,656百万
円)を減損損失として特別損失に計上している。」
有価証券報告書より
・内部要因(遊休設備)
神戸製鋼所
(2014年3月期第
1四半期)
当社は、本日開催の取締役会において、鋼材事業の上工程生産体制変更による構造改革の
実行を決定いたしました。平成29 年度を目処に、神戸製鉄所の上工程設備を加古川製鉄所
に集約し、神戸製鉄所の高炉をはじめとする上工程設備を休止いたします。
これに伴い、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、神戸製鉄所の上工程の当該休止
予定設備について、回収可能価額を著しく低下させる変化が生じ、減損の兆候が認められるこ
とから、回収可能性を検討した結果、減損損失を計上する見込みとなりました。
「固定資産の減損損失の計上に関するお知らせ」より
・内部要因(生産体制の変更)
大日本コンサルタ
ント
(2013年6月期)
「当社の持分資産であります大阪支社社屋について、大阪支社の移転に伴いこれまで社屋とし
て使用してまいりました資産グループについては売却を基本方針としているため、資産グループ
の帳簿価額を正味売却可能価額まで減損処理を実施し、減損損失として79,162千円を特別
損失に計上いたしました。」
「固定資産の減損損失の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ」より
・内部要因(資産用途の変更)
パナソニック
(2012年3月期)
半導体の生産設備、及び、薄型テレビの特許権及び生産設備を減損計上した。
「デバイス社の半導体事業及びAVCネットワークス社の薄型テレビ事業において、急激な価格低
下に伴い収益性が悪化したことにより、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当
該減少額を減損損失(71,614百万円)として特別損失に計上したものです。」
「なお、回収可能価額は正味売却価額により測定しており、鑑定評価額等に基づいた時価で評
価しています」
有価証券報告書より
・外部要因(製品価格の低下)
日本電気硝子
(2012年3月期)
「プラズマディスプレイ(PDP)用ガラス製造設備に関して、平成24年3月期連結決算において
約180億円の固定資産の減損損失を計上する見込みです。 PDP用ガラス事業は、第3四半
期(平成23年10月1日~12月31日)以降、需要が急減し厳しい事業環境が続いています。
当社は、生産の合理化を図り、採算の改善に取り組んできましたが、PDP用ガラスの需要は減
少方向にあり、また、太陽電池用基板ガラスなど、上記設備を共用する事業はあるものの、たち
まちに稼働の減少を補うことは困難であるなど、今後とも投下資本の回収を見込めないことか
ら、対象設備の帳簿価額を全額減損処理するものです。」
「固定資産の減損損失計上に関するお知らせ」より
・外部要因(製品需要の減少)
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