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長谷川電気工業所

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長谷川電気工業所
12.株式会社長谷川電気工業所
<企業概要>
社名
所在地
従業員数
創業年
資本金(百万円)
売上高(百万円)
※連結ベース
株式会社長谷川電気工業所
新潟県村上市坂町 1760 番地 1
34 名(2014 年 12 月 15 日現在)※就業人員数
1946 年
48(2014 年 12 月 15 日現在)
800.1
2012 年 7 月
987.9
2013 年 7 月
1120.9
2014 年 7 月
株式会社長谷川電気工業所(以下「同社」という。
)は、新潟県村上市に立地する 1946 年創業
の従業員数 34 名の企業である。電気設備工事・空調設備工事・給排水衛生ガス設備工事などの設
備の企画・設計・施行・メンテナンス等の事業を手掛けている。
12.1 企業設立・事業開始の経緯
同社は、1946 年に新潟県村上市で創業した電気工事や設備工事などを主要業務とする会社であ
り、現代表の長谷川雄一氏は 1990 年から経営に携わっている。発電所など公共事業を中心に受注
していた。具体的には、電気工事(発変電設備、送配電設備、屋内電気設備、屋外電気設備、電気
通信設備、計装設備)、管工事(給排水、上下水道、ガス設備)、設備工事(冷房、暖房、換気設
備、機械設備)等である。
近年では、公共事業が減少し、かつ人口減少を考慮すると民需も期待できない。そこで工事請
負業に加え、電気工事業で感じたニーズを独自製品化する取り組みを 2000 年頃に開始した。ター
ゲットは「エネルギー×IT」である。これにあわせて、経営ビジョンを作りなおした。照明の省エ
ネ等のニーズが高まっていたことから、将来性が見込めるエネルギーをターゲットとした。
その後 2008 年頃に、水冷式空調のポンプをインバータ制御する「Eco Vision」の販売を開始し
た。導入前と比べ、平均 80%の電力使用量削減が可能となる。その他にも電気機器の販売事業、
ESCO 事業(省エネ設備・サービスの提供事業者が省エネ効果に応じて顧客から対価を得る事業)
なども行っている。
なお、1979 年にはグループ会社である株式会社長谷川エンジニアリングサービス、2004 年には
株式会社アビリティサポートセンター、2010 年には株式会社環境経済リサーチを設立している。
尚、株式会社長谷川エンジニアリングサービスは、2004 年に新潟市に移転した後本格的に活動を
始めた。
99
12.2 事業概要
1)Eco Vision
本業である請負での工事業は価格競争に陥ることが多く、また、受注産業の世界であるため、
安定収入を得ることが必要であった。そこで、1)自社から提案できる製品を開発すること、2)安定
収入が得られる事業となること、を目標として掲げた。電気系部門の社員、空調系部門の社員に
加え、新たにソフトウェアに強くプログラミングができる人材を採用し、チームでアイディア出
し・製品開発を行った。また、導入後においても遠隔監視などのサービスを提供することにより
安定収入を得られるようなモデルを構築した。
開発した製品の 1 号案件では、空調設備の施工実績のある既存顧客の特別養護老人ホーム(以
下「特養」
)に無償で設置し、その後メンテナンスまで行った。これにより製品の改善に向けて技
術的な課題等を検証し、製品開発にフィードバックする環境が整った。空調ポンプは特養の電気
需要の 3 割程度を占める。同社によると、一般的な空調ポンプのインバータ化の電気使用量削減
率は 30~40%である中で、同社はインバータを室内環境などに応じて最適制御するプログラムを
作成し、コンピュータ制御することで 90%程度の削減率を実現した、とのことである。
調査⇒設計⇒製造⇒設置工事⇒ソフト調整といった手順で導入され、調査から設計まで 1 ヶ月
程度、製造から稼働まで 3 ヶ月程度と、全体で 4 ヵ月程度を必要とする。センサーを設置して調
査と省エネ計算を行い、採算ラインに乗る場合にのみ販売する。新潟周辺や大規模案件では、社
長はじめ社員が営業活動を行っている。大規模案件としては、病院本部・大手小売チェーンなど
に提案経験がある。本製品は採算性の観点から省エネ改修のみに使用しており、新築工事の際の
提案は行っていない。
全国各地の販路として代理店制度を導入しており、ほとんどのケースで営業のみ代理店が行い
その後は同社が担当している。同社としては、代理店には製造とソフト調整以外の調査、設計、
設置工事も委託したいが、これら機能を全て 1 社で担いうる代理店が少ないうえに、リードタイ
ムが 6 ヶ月と長いことも敬遠されるので、現状では営業のみを代理店が行っているケースが多い。
ビジネスモデルは、1)機器販売モデル、2)ESCO モデルである。全体としては、これまでに 80 件
以上の実績を作っている。売上高に占める比率は 10%~15%程度である。ESCO モデルは、九州の
ファイナンスコンサルタントと協力して行っている。コンサルがプロジェクト単位で資金を集め
ている。事業期間は 5~7 年程度で、一件あたり 2~3 千万円規模である。以前は子会社に保有さ
せていましたが、総額が膨らんだのでファイナンス会社に保有してもらっている。
グループ会社の環境経済リサーチ(株)は Eco Vision の提案の他に、排出権取引のコンサルティ
ング等も手掛けている。排出権取引では、国内クレジット制度のソフト支援事業を活用し企業の
省エネ活動が社会的に評価されるようにしている。
2)電気工事
工場、ビル、ダム、一般住宅などの受変電、照明工事などに加え、仮設電気、電気通信、防災
100
設備等の工事を設計から施工・メンテナンスまでトータルで行っている。また、省エネシステム
にも力を入れており、LED 照明や電力の見える化を提案している。
3)設備工事
公共・民間施設の給排水や空調システムを中心に、企画・設計・施工・メンテナンスを行って
いる。空調に関しては、空調省エネシステム『Eco Vision』を取り入れており、これは病院、特養、
大型商業施設等で使用されている水冷式空調設備を対象としている。定量運転している従来のポ
ンプは消費電力のロスが大きくコストを上げる原因であるが、本システムは、ポンプ制御の改善
により消費電力を抑え、空調設備の利用方法を変えることなく、電気料金のコストダウンを行う。
具体的には、従来定量運転していた冷温水ポンプ、冷却水ポンプをインバーター(逆変換器)で
流量制御し、負荷に応じ運転させることで無駄に消費していた電力を大幅に削減する。
システムを遠隔制御することで、リアルタイムデータの取得とそれに基づいた最適制御を行っ
ている。毎日全データをチェックし、改善可能な機器に対しては遠隔でソフトウェアの調整を行っ
ている。インターネットを介しシステムの運転制御ができることで、遠方からでも速やかにメン
テナンスに対応できる。
図 3-24 モニターの通常監視画面
出所)
(株)長谷川電気工業所
Eco Vision に続く主力サービスの一つが、房給排気自動制御システムのエコ・ブレスである。
これは、制御コンピューター(通常 PLC)とインバーター(逆変換器)で給気ファン、排気ファ
ンを制御し給排気のバランスをとるシステムである。これによりエアコンが利きやすく、空調の
ムラがない空間を実現する。
12.3 成功・差別化要因
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同社が成功要因として掲げるのは以下のような項目である。
1)電気・空調両面のノウハウと、IT を用いた両者の融合による開発
同社によると、中小企業で電気工事と空調(管)工事の両方ができ、かつ IT 技術を有する事業
者は少なく、一つの企業でこれらの事業を統合的にできることは強みの一つとなっている、との
ことである。電気の専門家、空調の専門家に加え、IT がわかる人材でチームを組んだことで、新
たな発想を生み出すことができた。プログラミングは、社員間の勉強会等を通じて習得した。
2)既存顧客との接点活用によるニーズ発掘と 1 号案件実施
空調の施工・メンテナンスを行っていた特養からニーズ調査を行い、1 号案件を獲得した。
3)請負型事業モデルから提案型事業モデルへの転換
工事業は受注・請負型ビジネスである。これを、本業と関連する範囲で遠隔監視などの安定収
入を得るモデルに転換していった。
4)全国・海外進出を見越した展開
東京事務所を開設し、東京への事業拡大を狙っていた経緯があり、Eco Vision も当初から東京へ
の展開、海外進出を見越していた。その結果、新潟周辺での小規模な取り組みにとどまらず、全
国的な展開へとつながっている。また、展示会経由で中国西安にも 1 件納入した経験を持つ。2014
年 5 月には中国の西安に進出している日系企業から、現地ホテルの設備の省エネ化を依頼された。
日本で設計とソフト作成を行い、機器は現地製造した。
12.4 事業ビジョン・展望
同社は今後以下のような事業を行おうとしている。
1)Eco Vision 売上の拡大
将来は、工事と Eco Vision などの制御システムの売上比率を、現在の 9 対 1 から、5 対 5 にした
いと考えている。Eco Vision のメンテナンスで安定的な収入を確保し、工事業の需要減少に備える
必要がある。
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2)東京・海外での売上拡大
工事業としては、今後東京における売上の比重を増やしていきたいと考えている。Eco Vision を
顧客接点構築のきっかけとして工事業受注を目指す。
また、海外進出を積極的に展開していく方針である。最近では燃料の高騰を理由に引き合いも
増え、ハワイ、グアム島で視察を行った。ただし、ビジネスモデルも考える必要がある。監視・制
御で稼ぐ、パテントで稼ぐなどいくつかのモデルを検討中である。
12.5 政策への要望
更なる事業展開・収益拡大に向けて、同社が制度・政策への期待として掲げるのは以下のよう
な項目である。
1)1 号案件形成支援
県内では設備工事業として長年の実績があり、一定の知名度があるが、県外では無名であるた
め信用力がない点を課題として掲げている。また、中小企業は販売力がないため、販路を開拓す
るのに多くの時間を要する。同社は、以前排出権取引の国内クレジットの案件を何件か支援した
ことがあるが、今後その海外版である JCM(取引のやり取り等)の支援を実施したいと考えてお
り、政府にはそうした案件の形成支援を期待している。
2)海外展開支援
海外進出しようにも、現地情報を手に入れることが困難で進出先を選ぶことも難しい。ハワイ・
グアム島の引き合いがあった時は、現地の情報も人脈もなくどのように動けばよいかわからな
かった。また、気候条件により削減効果も変わるため、現地に Eco Vision を設置しデータを取得
する際の費用も必要である。現地の省エネ意識や電力事情などの情報も必要である。現地のマー
ケット情報や人脈などの調査を支援する制度の設立・充実を期待している。例えば、JCM(二国間
オフセット・クレジット制度)の FS 調査(実現可能性調査)は有効であり、この制度がより多く
の国を対象に、小規模案件でも活用できるような制度となることを期待している。
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