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無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病院環境への

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無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病院環境への
技術研究報告第 41 号
2015.10
戸田建設株式会社
無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病院環境への適用に関する研究
その3
窓からの昼光を考慮した被験者実験
STUDY ON APPLICATION IN HOSPITAL ENVIRONMENT OF LED LUMINARIES WITH
SEQUENTIAL RADIO CONTROL
Part3 Subjective experiment considering daylight from window
大島佳保里*1, 村江行忠*2, 鈴木孝彦*3, 森一紘*4, 丹羽啓之*5, 望月悦子*6
Kaori OSHIMA,Yukitada MURAE,Takahiko SUZUKI,Kazuhiro MORI,Hiroyuki NIWA,Etsuko MOCHIZUKI
This paper shows the outline of the subjective experiment on lighting environment of newly developed LED luminaries for
hospital environment with sequential radio control considering daylight from window.
In this subjective experiment, the conditions with different amount of daylight from the window were tested in addition to
the previous experimental conditions evaluated in 2013.
From the results of the experiments, the subjects showed better sleep in the conditions with window compared to that in the
conditions without window. Comparing the results on sunny day and those on cloudy day, the amount of different daylight
from window was different, the concentration of melatonin in saliva on sunny day was higher than that on cloudy day. It was
identified that higher level of light exposure during the daytime had physiological impacts, such as rise in the body
temperature and melatonin suppression in the daytime.
Keywords : Sequential Control, LED Luminaries, Patient Room, Window, Subjective Experiment
時間帯別制御,LED 照明,病室,窓,被験者実験
本報では,追加実験の結果について,窓からの昼
光と睡眠,サーカディアン・リズムの関係に着目し
て考察したので報告する.
1. はじめに
近年,LED 照明の開発・普及に加え,制御・通信
技術の発展に伴い,より簡易に様々な光環境を構築
することが可能になってきた.特にサーカディア
ン・リズムと言われる生体のリズムに大きく影響し
ていると考えられる昼光の変化を模した照明制御が
注目されている.このような照明制御に関して,オ
フィスなどの執務環境においては,心理・生理ある
いは知的生産性において好ましい影響をもたらすこ
とが期待される例えば 1).一方で,住宅や病院など視作
業をともなわない環境においても,
「くつろぎ」や「安
らぎ」を与える効果や睡眠効率の向上などが期待さ
れる 2).
上述の背景のもと,無線技術などを採用すること
により,簡易に連続的な調光・調色制御が可能な,
病院環境への適用を目指した LED 照明システムを開
発した.これまで,システムの概要,待合室やデイ
ルームなど比較的在室時間が短い空間を想定した被
験者実験 3),病室など比較的在室時間が長い空間を想
定した被験者実験 4)について報告した.病室を想定し
た実験では,日中窓のない環境で過ごすよりも,窓
のある環境で過ごした方が夜間の睡眠効率が向上す
るという結果が得られた.そこで,窓からの昼光日
射量を考慮した条件を追加し,再度実験を行った.
2. 実験概要
2.1 実験室
実験は 2014 年 8 月 18 日~29 日の間の 8 日間にわ
たり,戸田建設筑波技術研究所内の実験室 5)にて行っ
た.実験室の平面図と測定機の配置を図‐1 に示す.
2 つの実験室は大きさや内装が等しく左右対称であ
り,二床用病室を模してベッドと机を設置した.天
井には調光可能な 600mm 角の LED 照明器具(白色
4,775
4,775
熱電対
熱電対
色彩照度計
色彩照度計
熱電対
PMV 計
湿度・CO2
湿度・CO2
6,500
PMV 計
熱電対
図‐1 実験室平面図
*1 戸田建設㈱技術開発センター 修士(農学)
Research and Development Center, TODA CORPORATION,M.Agr.
*2 戸田建設㈱技術開発センター 工学修士
Research and Development Center, TODA CORPORATION, M.Eng.
*3 戸田建設㈱技術開発センター 修士(工学)
Research and Development Center, TODA CORPORATION, M.Eng.
*4 戸田建設㈱価値創造戦略ユニット
Value Creation Strategy Unit, TODA CORPORATION
*5 ㈱村田製作所
Murata Manufacturing Co., Ltd.
*6 千葉工業大学 工学部建築都市環境学科 教授 博士(工学) Chiba Institute of Technology, Prof., D.Eng
2-1
無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病院環境への適用に関する研究(その3)
表‐1 実験条件
条件
開口率
1
17%
2
8.5%
3
17%
照度
相関色温度
天気
晴
窓からの昼光のみ
晴
7:00-11:00
1200lx
晴
11:00-13:00 1000lx
7:00-11:00
13:00-16:00 600lx
11:00-13:00 4200K
16:00-18:00 300lx
13:00-16:00 4000K
4
0%
5
0%
630lx
一定
6
0%
630lx
一定
7
17%
8
17%
9
17%
10
17%
4600K
-
16:00-18:00 3000K
-
4600K
一定
晴
昼光 + 630lx
昼光 + 4600K
曇
7:00-11:00
1200lx
7:00-11:00 4600K
11:00-13:00 1000lx
11:00-13:00 4200K
13:00-16:00 600lx
13:00-16:00 4000K
16:00-18:00 300lx
16:00-18:00 3000K
晴
曇
□2013/2014 年 ■2013 年のみ ■2014 年のみ
起床
6:00
朝食
8:00
昼食
12:00
OSA 睡眠調査
体温・血圧・脈拍
唾液採取
覚醒度調査
モチベーション調査
主観申告
写真‐1 実験室
(左:開口部あり,右:開口部なし)
夕食 入浴
18:00 19:00
就床 起床
21:00 翌 6:00
実験室
宿泊施設
図‐2 実験スケジュール
LED,アンバーLED 各 320 個)6 台を均等に設置し
た.南に面する実験室の窓は,可動間仕切りを用い
て遮蔽可能である.
~10 は 1 日の積算曝露光量がほぼ等しくなるよう設
定した.写真‐1 に実験室の様子を示す.
実験中は室中央床上 800mm にて水平面照度・相関
色温度(KONICA-MINOLTA CL200,1 分間隔)
,実
験室内の上下温度分布(一室につき高さ 5 点×2 か所,
1 分間隔)
,室中央の被験者の臥位時の体中心高さ(床
上 600mm)にて予測温冷感申告 PMV(B&K 1212,1
分間隔)を計測した.
2.2 実験条件
表‐1 に 2013 年(前報)と 2014 年(本報)の実験
条件を示す.2013 年は条件 1~6 を行ったが, 2014
年は新たに条件 7~10 を加えた.また,2013 年に行っ
た条件 2 ,5 は 2014 年には行っていない.条件 7,
9 は晴天日,条件 8,10 は曇天日に行っており,それ
ぞれ窓からの昼光入射量が異なる.条件 3~5,7~10
は時間帯に応じて(7:00~11:00/11:00~13:00/13:00~
16:00/16:00~18:00)室中央水平面(床上 800mm)に
おける照度・相関色温度が設定条件となるよう,白
色 LED とアンバーLED の出力を 251 段階(0~250)で
組み合わせて変更した 6).条件 3,7~10 では,窓か
らの昼光(照度・色温度)に応じて,5~10 分間隔で
LED の出力を調整した.なお,条件 3 は照度を,条
件 9,10 は色温度を優先して調整した.また,条件 3
2.3 実験手順
実験には健康な男性 4 名(平均年齢 20.8 歳,MEQ
による朝型 1 名,中間型 3 名)が被験者として参加
した.被験者の着衣量は 0.35clo(パンツ,半袖,半
ズボン,スリッパ)
,実験中の活動量は 1.1Met(着席
や軽度のタスク作業など非常に軽い作業)を想定し,
実験室内の予測温冷感申告 PMV が-1.0(やや涼しい)
~+1.0(やや暖かい)となるように室温 26℃,相対
湿度 50~80%に設定した.
実験開始 1 週間前より,被験者には就寝・起床時
刻を統一させた.実験は一般的な入院患者の一日の
2-2
戸田建設株式会社
温度[℃]
スケジュールに準じて行った.図‐2 に一日の実験ス
ケジュールを示す.被験者は 6 時に起床,7 時に 2
名一組で実験室に移動し,8 時に朝食,12 時に昼食
を摂った.18 時に実験室から隣接する宿泊施設へ移
動し,夕食を摂った後,入浴(シャワー)を済ませ,
21 時に就寝した.なお,昼休み(12:00~13:00)を除
き,一日を通して照明器具や携帯電話の画面を見な
いように指示した.また,アルコールやカフェイン
の摂取,喫煙,過度な運動は禁止した.
被 験者 は起床 から就 寝まで 1 時間お きに体 温
(CITIZEN 電子体温計 CT422)
,血圧(最高/最低)・
脈拍(OMRON デジタル自動血圧計 HEM-6022)を
測定した.また,曝露照明による生理的影響を調べ
るため,被験者の心拍変動(ユニオンツール心拍セ
ンサ WHS-1),唾液中コルチゾール/メラトニン濃度
を測定した.加えて一日の光曝露履歴を記録するた
めの照度ロガー(データロガー T&D TR-76Ui)を取
り付けた眼鏡,睡眠効率を計測するための携帯式行
動量測定計(Actiwatch,Philips Respironics)を実験期
間中は常時装着した.
実験室滞在中は,8 時から 18 時まで 1 時間おきに
実験室内の温熱環境・光環境に関する主観評価,リ
ラックスの程度を定量的に評価するために感覚時間
の計測(3 分と感じる時間をストップウォッチで計測)
を行い,9 時から 17 時まで 2 時間おきに,モチベー
ションの程度を定量的に評価するため,指定視作業
(ホワイトパズル,迷路,数独)を計 13 分間行った.
評価,計測にかかる時間以外は,読書や雑談をしな
がら自由に過ごした.
宿泊施設は一人ずつ個室で,各室の室温は被験者
自身にエアコンを用いて快適となるよう調整しても
らった.
寝室の照明環境は 20W 電球色蛍光ランプで,
水平面照度 140~170lx(床上 800mm)に設定した.
起床直後には OSA 睡眠調査票(第 2 版)による睡眠
の主観評価を行った後,覚醒度調査として 100 問の
四則演算(5 分間),間違い探し(3 分間)
,数字暗記
(1 分間)を 1 時間おきに 3 回(6 時,7 時,8 時)
行った.
唾液中コルチゾール/メラトニン濃度を測定するた
め,起床時,昼食前,夕食前,就床前の 1 日 4 回唾
液 を 採 取 し た ( Saliva Collection Aid 〈 SCA 〉,
Salimetrics).食事の影響を無くすため,間食は禁止
し,
採取 10 分前には異物混入を防ぐため口を濯いだ.
唾液は 1mL 採取し,冷凍庫で保存した.測定は専用
の キ ッ ト を 使 用 し ( コ ル チ ゾ ー ル : EXPANDED
RANGE High Sensitivity SALIVARY CORTISOL
ENZYME IMMUNOASSAY KIT, Salimetrics,メラトニ
ン : SALIVARY
MELATONIN
ENZYME
IMMUNOASSAY KIT, Salimetrics),説明書に従って
行った.なお,n=2 とし,希釈倍率は 1 とした.
実験室1_温度
実験室2_温度
実験室1_PMV
実験室2_PMV
30.0
+3
25.0
+2
20.0
+1
15.0
0
10.0
-1- -
5.0
-2-
8/21
8/23
8/25
-
-38/29
0.0
8/19
-
予測温冷感申告 PMV
2015.10
8/27
図‐3 温度・PMV
100%
40%
■暑い
■暖かい
■やや暖かい
■どちらでもない
■やや涼しい
20%
■涼しい
■寒い
評価割合
80%
60%
0%
1
3
6
4
7
条件
8
10
9
図‐4 温冷感申告
照度
相関色温度
2000
4000
400
2000
条件 6
6000
800
4000
400
2000
0
2000
1600
0
10000
条件 8
条件 7
8000
1200
6000
800
4000
400
2000
0
2000
条件 9
相関色温度[K]
照度[lx]
8000
1200
相関色温度[K]
0
10000
条件 4
0
10000
条件 10
1600
8000
1200
6000
800
4000
400
2000
0
相関色温度[K]
照度[lx]
6000
800
1600
照度[lx]
8000
1200
0
2000
照度[lx]
10000
条件 3
相関色温度[K]
条件 1
1600
0
6
9
12
時刻
15
18 6
9
12
時刻
15
18
図‐5 照度・相関色温度
条件1
条件7
条件3
条件8
非常に 3
明るい
明るい 2
暗い
非常に
暗い
-2
0.75
0.50
0.25
0.00
-3
8
12
8:00
3.1 実験中の温冷感
図‐3 に実験期間中の実験室の温度と予測温冷感
申告 PMV の変化を示す.外気温が低下した 8/27~
条件6
条件10
1.00
やや 1
明るい
どちら
でもない 0
やや
暗い -1
3. 実験結果
条件4
条件9
快適と回答した割合
技術研究報告第 41 号
14 16
10:00
時刻
18 21
12:00
8
14:00
12
16:00
14 16
18:00
時刻
図‐6 光環境主観評価
(左:明るさ感,右:快・不快)
2-3
18
21
無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病院環境への適用に関する研究(その3)
8/28 で温度や PMV にやや変動が見られたが,おおむ
ね一定の環境に設定できた.
図‐4 に各条件における全被験者の温冷感申告の
分布(4 名×1 日 11 回の延べ 44 申告)を示す.条件
8,条件 9 で「寒い」と申告した被験者がいたが,全
条件で 8 割以上が「やや暖かい:+1」~「やや涼し
い:-1」の範囲で申告した.
条件1
条件7
条件3
条件8
条件4
条件9
条件6
条件10
36.0
35.0
開口部あり
34.0
6
3.2 実験中の光環境
図‐5 に条件毎の照度・相関色温度の変化を示す.
各条件 2 日ずつ行ったが,両日ともほぼ同じ設定に
することができた.
図‐6 に光環境の主観評価の結果を示す.なお,図
は 4 人の被験者の中央値を用いている.窓からの昼
光のみである条件 1 では,一日を通して「明るい」
~「非常に明るい」と申告した被験者はおらず,夕
方に「やや暗い」
「暗い」という申告が多かった.窓
があり,人工光を補助している条件では,曇天日(条
件 8,10)に比べ,晴天日(条件 3,7,9)の方が一
日の中で明るさの評価が大きく変化していた.また,
窓がない条件 4 や条件 6 では,一日を通して「明る
い」
「やや明るい」という申告が多かった.快・不快
を問う質問では,条件 8 の朝,条件 3,9 の夕方を除
いて快適であると申告しており,病室の照明環境と
して許容された.
9
開口部なし
12
15
時刻
21 6
18
9
12
15
時刻
図‐7 12:00
体温(被験者
9:00
15:00 H)
18:00
6:00
18
21:00
1.2
600
500
0.8
400
0.4
300
200
0.0
条件 2 条件 3
条件 4 条件 5 条件 6 条件 7 8
0
2014
2014
2014
2014
2014
2013
2013
2014
2013
2014
2013
2013
条件 1
2013
100
-0.4
4
2014
午前中の体温上昇
(6:00-12:00)[℃]
21
条件 9 10
午前中の積算曝露照度
(7:00-12:00)[klx]
体温[℃]
37.0
-0.4
図‐8 午前中の体温上昇と積算曝露照度
1000
800
600
36.0
400
200
条件 1
条件 2 条件 3
条件 4 条件 5 条件 6 条件 7 8
0
2014
2014
2014
2014
2014
2013
2013
2014
2013
2014
2013
2013
2014
2013
35.0
0
条件 9 10
図‐9 就床前の体温と積算曝露照度
条件1
条件7
3.3 体温・脈拍の日内変動
図‐7 に一例として被験者 H の一日の体温の変動
を示す.条件 1,6 を除き,朝低く、夕方高くなるサー
カディアン・リズム 8)が見られた.睡眠数時間前の
入浴は,体温を上昇させ,入眠までの時間を短縮す
る 9).入浴後(19 時以降)
,条件 1,4,7,9,10 で
体温の上昇が見られるが,シャワーの場合は通常の
入浴と比べ,直腸温がほとんど上がらないため 10),
この体温上昇は入浴(シャワー)とは関係はなく,
睡眠に影響しないものと考えられる.
図‐8 に午前中の体温上昇(6 時から 12 時)と積算
曝露照度(7 時から 12 時)の関係を示す.なお,体温
は 4 人の被験者の中央値を用いた.また,比較のた
め,2013 年の結果も載せている.2014 年では,開口
部の無い条件 4,6 で体温が低下しており,条件 3 で
最も上昇していた.また,開口部のある条件では,
曇天日(条件 8,10)と比べ,晴天日(条件 7,9)
で体温の上昇が大きくなる傾向が見られた.しかし,
積算曝露照度との関係は見られなかった.
図‐9 に就床前の体温と一日の積算曝露照度の関
係を示す.なお,体温は 4 人の被験者の中央値を用
いた.また,比較のため,2013 年の結果も載せてい
る.積算曝露照度が大きいほど,就床前の体温が高
くなる傾向が見られた.
図‐10 に被験者 H の脈拍の変動を示す.日中の体
温の上昇とともに,脈拍数も増加すると予想してい
たが,そのような傾向は見られなかった.また,条
件による違いも見られなかった.
条件3
条件8
条件4
条件9
積算曝露照度
(7:00-18:00)[klx]
就床前の体温
(21:00)[℃]
37.0
-0.4
条件6
条件10
脈拍数[bpm]
100
90
80
70
開口部あり
60
6
9
開口部なし
12
6:00
15
時刻
18
21 6
9
12
15
時刻
9:00
12:00
15:00
18:00
図‐10
脈拍数(被験者
H)
条件1
条件7
条件3
条件8
条件4
条件9
18
21
21:00
条件6
条件10
唾液中コルチゾール濃度[μg/dL]
2.0
1.5
1.0
0.5
6:00
9:00
12:00
15:00
18:00
21:00
0
6
12
18
時刻
24
6
図‐11 唾液中コルチゾール濃度(被験者 H)
3.4 唾液中コルチゾール濃度
コルチゾールは副腎皮質から放出されるステロイ
ドホルモンで,心理的・身体的な急性ストレスに対
し増加を示す 11).
図‐11 に被験者 H の一日の唾液中コルチゾール濃
度の変動を示す.条件 10 を除き,朝高く,日中低く
なるサーカディアン・リズム 12)が見られた.また,
2-4
戸田建設株式会社
被験者Y.S.
被験者T.S.
被験者H
条件 1
90%
条件 3
0.5
30
100%
0.4
20
80%
10
70%
0.3
0.2
0
条件 1 条件 2 条件 3
0.0
0.6
条件 4
0.5
60
0.4
■条件 1
■条件 7
0.3
■条件 3
■条件 8
30
0.1
0.0
0.6
条件 8
10
0.5
60
0.4
2014
2014
2014
2014
2014
86%
84%
10
20
30
40
唾液中メラトニン濃度
(21:00)[pg/mL]
60
0.1
0
図‐15 入眠までの時間と
メラトニン濃度
条件 10
■条件 6
■条件 10
80%
0
条件 9
-0.4
82%
0.2
0.0
0.6
条件 9 10
88%
20
0
0.3
■条件 4
■条件 9
90%
睡眠効率
入眠までの時間[分]
0.2
0.5
60
0.4
2013
条件 4 条件 5 条件 6 条件 7 8
図‐14 睡眠効率と入眠までの時間
条件 6
条件 7
2013
2014
2013
2014
2013
2013
2014
2013
60%
0.1
10
20
30
40
唾液中メラトニン濃度
(21:00)[pg/mL]
図‐16 睡眠効率と
メラトニン濃度
唾液中メラトニン濃度
唾液中メラトニン濃度
(翌 6:00)[pg/mL]
50
50
40
40
(翌6:00)[pg/mL]
0.3
0.0
12
18
時刻
24
66
12
18
時刻
24
6
図‐12 唾液中メラトニン濃度
唾液中メラトニン濃度平均
(12:00,18:00)[pg/mL]
■条件 1
■条件 7
■条件 3
■条件 8
■条件 4
■条件 9
唾液中メラトニン濃度
唾液中メラトニン濃度
(21:00)[pg/mL]
6
■条件 6
■条件 10
20
15
10
5
0
0
200 400 600 800 1000
日中の積算曝露照度[klxh]
(7:00-18:00)
20
20
10
10
080
0
80
30
因子Ⅰ(ねむ気)
40
50
60
因子Ⅱ(睡眠維持)
70
因子Ⅰ(ねむ気)
因子Ⅲ(気がかり)
60
60
(21:00)[pg/mL]
0.1
◆被験者 E
■被験者 F
▲被験者 G
×被験者 H
30
30
40
40
20
20
00
80
80
30
40
50
60
因子Ⅳ(統合的睡眠)
因子Ⅱ(睡眠維持)
7030
40
50
60
因子Ⅴ(寝つき)
70
因子Ⅲ(気がかり)
60
60
(21:00)[pg/mL]
0.2
60
入眠までの時間[分]
被験者Y
唾液中メラトニン濃度
唾液中メラトニン濃度
(21:00)[pg/mL]
メラトニン濃度相対比[-]
メラトニン濃度相対比[-]
メラトニン濃度相対比[-]
メラトニン濃度相対比[-]
0.6
2015.10
睡眠効率
技術研究報告第 41 号
40
40
20
20
00
30
30
図‐13 唾液中メラトニン濃度と日中の積算曝露照度
40
40
50
50
60
60
因子Ⅳ(統合的睡眠)
睡眠感得点
7030
70
30
40
40
50
50
60
60
70
睡眠感得点
因子Ⅴ(寝つき)
図‐17 唾液中メラトニン濃度と睡眠感得点
ラトニン濃度相対比)で示している.被験者 E を除
き,どの条件でも日中低く,夜高くなるサーカディ
アン・リズム 13)が見られた.条件 1 や 3 で、被験者
E 以外にもメラトニン濃度の上昇が翌朝に見られる
被験者がいるが、これは実験初日だったことが関係
している可能性がある。一日の曝露条件がほぼ等し
い条件 3(開口部あり)と条件 4(開口部なし)では,
被験者によって傾向が異なり,条件による差は見ら
れなかった.条件 7 と条件 9 で比較すると,照度・
相関色温度を変動させた条件 9 の方が日中と夜のメ
ラトニン濃度の差が大きくなる傾向が見られた.ま
た,条件 7 と条件 8 及び条件 9 と条件 10 では,晴天
開口部がある条件において,晴天日(条件 7,条件 9)
と比べ,曇天日(条件 8,条件 10)に日中の唾液中
コルチゾール濃度が高くなる傾向が見られた.
3.5 唾液中メラトニン濃度
メラトニンは脳の松果体で生合成され体内に分泌
されるホルモンで,睡眠促進効果などがあると知ら
れている 13).昼間の光曝露により夜間のメラトニン
の分泌促進やサーカディアン・リズム位相の変化が
起こる 14).
図‐12 に条件毎の一日の唾液中メラトニン濃度の
変動を示す.なお,個人差を無くすため,各時刻の
濃度は朝~翌朝の計 5 回の濃度の和に対する比(メ
2-5
無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病院環境への適用に関する研究(その3)
日である条件 7,条件 9 の方が日中と夜のメラトニン
濃度の差が大きくなる傾向が見られた.
図‐ 13 に日中の唾液中メラトニン濃度平均値
(12:00,18:00)と日中(7:00-18:00)の積算曝露照度
の関係を示す.なお,唾液中メラトニン濃度は 4 人
12:00,18:00 の平均値の中央値を用いた.積算曝露
照度が大きくなるほど,日中の唾液中メラトニン濃
度が低くなる傾向が見られた.
量の多い晴天日に,睡眠促進効果があるとされるメ
ラトニンの唾液中の濃度が高くなる傾向が見られた.
また,日中の曝露光量を多くすることで,午前中の
体温上昇や日中のメラトニン分泌抑制といった生理
的影響を与える可能性が示唆された.
謝辞
被験者実験は当時千葉工業大学の米山拓斗氏,濱田祐太
氏,並田麻帆氏の力によるところが大きい.また,ウシオ
ライティング(株)柳下一隆氏にご協力頂いた.記して謝
意を示す.
3.6 睡眠効率と入眠までの時間
図‐14 に睡眠効率と入眠までの時間の関係を示す.
睡眠効率,入眠までの時間は 4 人の被験者の中央値
を用いた.条件 3(開口部あり)と条件 4(開口部な
し)を比較すると,一日の光曝露履歴はほぼ等しい
にもかかわらず,
条件 3 で入眠までの時間が短くなっ
た.しかし,睡眠効率では明確な差は見られなかっ
た.また,開口部からの昼光入射量が異なる条件 7,9
と条件 8,10 では,寝つきまでの時間,睡眠効率,共
に明確な差は見られなかった.
図‐15 に就床前の唾液中メラトニン濃度(21:00)
と入眠までの時間の関係を示す.就床前の唾液中メ
ラトニン濃度と入眠までの時間には関係性は見られ
なかった.
図‐16 に睡眠効率と起床時の唾液中メラトニン濃
度(翌 6:00)の関係を示す.起床時の唾液中メラト
ニン濃度が大きくなるほど,睡眠効率が高くなる傾
向が見られた.
参考文献
1) 一般社団法人日本建築学会 建築の原点に立ち返る-暮
らしの場の再生と革新 東日本大震災に鑑みて(第二次
提言),Vol. 128, No. 1650, pp.62-63,2013
2) DIN SPEC 67600, Biologically effective illumination –
Design guidelines, 2013
3) 村江他 無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病
院環境への適用に関する研究 その1 照明システムの
概要と光環境の変化に対する被験者実験, 戸田建設技
術研究報告, 第 39 号, pp.1-1-1-6, 2013
4) 村江他 無線による時間帯別制御を行う LED 照明の病
院環境への適用に関する研究 その2 病室を想定した
被験者実験と消費エネルギー予測, 戸田建設技術研究
報告, 第 40 号, pp.1-5, 2014
5) 村江他 オフィス空間を対象とした室内環境制御に関
する研究 その1 実験室の概要と換気量制御に関する
検討, 戸田建設技術研究報告, 第 38 号, pp.3-1-3-6,2012
6) 望月他 無線による時間帯別制御を行う LED 照明環境
の評価, 照明学会全国大会学術講演梗概集 , 講演
No.5-26, pp.9-16, 2013
7) 小栗 OSA 睡眠調査票の開発-睡眠感評定のための統計
的尺度構成と標準化-, 精神医学, 27, pp.791-799, 1985
8) G,Kelly,ND Body Temperature Variability (Part 1) :A
Review of the History of Body Temperature and its
Variability Due to Site Selection, Biological Rhythms,
Fitness, and Aging, Vol.11, No.4, pp.278-293, 2006
9) T, Kobayashi et al. Effects of a hot bath on the sleep onset
process, in Proc. ICHES’05, pp.12-15, 2005
10) Lee et al. Physiological functions of the effects of the
different bathing method on recovery from local muscle
fatigue, J Physiol Anthropol, Vol.31, No.1, pp.26-1-26-6,
2012
11) 井澤他 唾液中コルチゾールによるストレス評価と唾
液採取手順, 労働安全衛生研究, Vol.3, No.2, pp.119-124,
2010
12) Jung et al. Acute Effects of Bright Light Expore on
Cortisol Levels, J Biol Rhythms, Vol.2, No.3, pp.208-216,
2010
13) 高雄 生物時計に対する光の作用機構, 照明学会誌, 第
96 巻, 第 10 号, pp.694-699, 2012
14) 小崎 日中の光とサーカディアンリズム, 照明学会誌,
第 96 巻, 第 10 号, pp.700-703, 2012
3.7 睡眠主観評価
図-17 に唾液中メラトニン濃度と OSA 睡眠調査票
による因子Ⅰ~Ⅴの睡眠感得点の関係を示す.なお,
因子Ⅰは翌朝,因子Ⅱ~Ⅴは就床前の唾液中メラト
ニン濃度との関係を調べた.主観評価(睡眠感得点)
と生理指標(唾液中メラトニン濃度)が一致してい
れば,因子Ⅰでは負の関係,因子Ⅱ~Ⅴでは正の関
係が見られるが,このような関係が見られたのは因
子Ⅰだけであった.他の因子では被験者によって傾
向が異なり,条件による明確な差異は見られなかっ
た.
4. おわりに
病室を想定した実験室にて,窓からの採光と人工
照明の光量,光色変化が在室者に与える心理的・生
理的影響を検証した.空間の照度,相関色温度をほ
ぼ等しく設定した場合は,日中窓のある環境で過ご
した方が,入眠までの時間が短くなった.窓からの
採光量が異なる晴天日と曇天日では,窓からの採光
2-6
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