Comments
Description
Transcript
鈴木伸幸先生 - 名古屋市立大学整形外科
J. Spine Res. 5:1330-1331, 2014 JSSR-Johnson & Johnson Depuy Spine, Robert Reid 平成25年度 日本脊椎脊髄病学会 第回 Asia Traveling Fellowship 紀行記―韓国,香港訪問記― 平 林 洋 樹 信州大学 整形外科(現所属:丸の内病院整形外科) 鈴 木 伸 幸 名古屋市立大学大学院医学研究科 整形外科分野 このたび第�回 Asia Traveling Fellow として2013年 �月�日より14日まで韓国に,10月27日より11月�日 まで香港にそれぞれ�週間ずつ訪問させていただきま したので報告させていただきます. 韓国:Chonnam National University Chonnam National University(全南大学)の Jae-Yoon Chung 教授のもと手術見学,病棟,外来見学をさせて いただきました. 手術は PLIF,頚椎前方固定,mini ALIF,TES まで幅 写真 研修最終日に修了証書を手に韓国・全南大学ド クターと(最前列左端が鈴木,右端が平林) の広い手術を見せて頂くチャンスに恵まれました. PLIF の際は独自開発の曲がったノミを上手に使い手 早く除圧した後,椎間板の廓清を徹底的に行っていた 無駄なく進められており見習うべきところがたくさん のが印象的で,腸骨からの移植骨を,ケージを挟み込 あり勉強になりました. むようにブロックで�つ入れて骨癒合率を高めていま 手術の合間には,自分が若いころはマイクロの手術 した.術後に PLIF の骨癒合率は君の施設では何%か はまだ誰もやっていなかったので�年かけて全脊椎を 聞かれて95%ぐらいかと思いますと答えたら,「100% 少しずつ,顕微鏡を使って解剖していって手技を身に でなければ意味がない.君たちはそれでいいと思って 付けたなど苦労話も聞かせていただき,非常にために い る の か」 と は っ と さ れ る 一 言 を 言 わ れ ま し た. なりました.そんな非常に厳しくて精力的な Chung Chung 教授は100%にするために実にいろいろな工夫 教授でしたが,手術室には BOSE の大きなスピーカー をされおり,それを続けていることに感心しました. がおいてあり,術中は大音量で BoA や KARA の曲を TES では硬膜外からの止血法の工夫も素晴らしく, かけているので他の科の先生から文句が出ているのだ 金沢大が報告している硬膜外にフィブリン糊を注入す とか,実は奥様はオペラ歌手なので家では K-pop は聞 る方法を少しアレンジしてスポンゼルで押さえながら かないなどと面白い一面もきかせていただき親近感も 注入したり,アビテンにトロンビンをつけて止血した 感じました. り,先が少し曲げてあるバイポーラで椎体後面の静脈 どの先生も親切な方ばかりで脊椎のことばかりでな 叢を面で焼くように止血したりとさまざまな工夫がさ く,韓国での教育,医療制度,医学部のシステムの在 れており,ノミ使いも上手で�時間半で完了してし り方などいろいろな話が聞けて非常に為になりまし まったのには驚かされました.その日の夜に夕食会あ た.また機会があればぜひ訪問させていただきたいと ると聞かされていたので夜中になるなと思っていたら 思います. 午後�時には終わってしまい,逆に時間が余ってしま いました.今までに150例ぐらいの TES をして局所再 発は�例とのことでした.どの手術も非常に手際よく 1330 Journal of Spine Research Vol.5 No.9 2014 香港:The University of Hong Kong Keith DK Luk 教授のご指導により The University of Hong Kong(香港大学)にて研修を行いました.研修病 院 は Queen Mary Hospital と The Duchess of Kent Childrenʼs Hospital でした.各病院の詳細につきまして は昨年の Journal of Spine Research 第巻号1409ペー ジの若尾先生, 萬納寺先生の紀行記をご参照ください. Luk 教授以下香港大学の脊椎ドクターは学会や観光で 日本を何度も訪問された方が多く,非常に親日的な印 象を受けました.研修は主に外来見学,手術見学,回 写真 水上レストランをバックに香港・アバディーン のヨットクラブにて(左から番目が平林, 番目が鈴木) 診への参加でした. 外来ではパキスタンからの移民の,無治療高度脊柱 最終日は翌日が香港整形外科学会ということで,病 変形の少女を即座に早期手術予定にエントリーしてい 棟回診後に学会リハーサルを見学しました.プレゼン て,対応の早さに感心しました.パキスタンでは血統 テーションも質疑応答もすべて英語で,台湾からの留 が汚れるという理由で近親婚が多く,脊柱変形も多い 学生も流暢に応答していました.日本と比較して英語 とのことでした.外来では Luk 教授が香港全土で始 のクオリティーやトレーニングが段違いに洗練されて めた学童側弯検診で,異常を指摘された日本人駐在員 いて,質疑応答している人間が東洋人であっても,欧 の娘さんの受診もありました.英語での問診,診察終 米にいるような気分になりました. 了後にわれわれが日本語で補足説明し,付き添いのお 母さんがびっくりされていました. 手術は頚椎前方手術,頚椎後方手術,腰椎後方手術, Queen Mary Hospital の駐車場にはたくさんの高級外 車(取得税が車両価格の100%かかるのだそうです)が 停まっていて,ドクターのステータスの高さを感じま 胸椎椎体置換術後再手術など,多くの症例を見学しま した.また Luk 教授もわれわれの滞在中にベンツ した.Queen Mary Hospital では各階に手術室が設置さ クーペに乗り換えられ,新しい玩具を手に入れたと, れており,予定手術では同じ診療科が同じ階の手術室 嬉しそうにされていました. を使用するとのことで,非常に効率的だと思いました. 中国本土(メインチャイナ)との交流についてうかが Queen Mary Hospital も The Duchess of Kent Childrenʼs うと,交流はあるものの医師免許や医療行為には制限 Hospital も,病院や設備自体は決して最新式ではなく, があるとのことでした.また中国本土からの移民は受 また手術症例や術式もほとんどがわが国と同様でし け入れているものの,日100人程度で,しかも資産家 た.しかし診断や治療,手術術式に対する洞察力や考 しか受け付けないとのこと.一国二制度を肌で感じま え方は大変参考になりました.さすが多くの英文論文 した. 発表,国際学会発表を行うアジアトップレベルの香港 大学だと感心しました. 韓国全南大学同様に脊椎クリニックの先生方には大 変親切にしていただき,通常の観光では行けないよう 病棟回診では医師,看護師,PT,OT が全員一緒に各 な会員制ヨットクラブやゴルフクラブにまで連れて ベッドを回り,ディスカッションしていました.医療 いっていただきました.また同時期に香港大学を訪れ 従事者間の全てのやり取りが英語で行われていまし ていたオーストラリア,トルコなどからのスパイン た.またわれわれも時々 Luk 教授から質問を受け,日 フェローとも交流し,大いに刺激を受けました. 本での治療に関してお答えしました.高齢者 OPLL の このような貴重な研修機会を与えていただいた日本 脊髄損傷が多いとのことで,検診体制を作らなければ 脊椎脊髄病学会と,快くわれわれを送り出してくれた いけないとおっしゃっていたことが印象に残りまし 同僚と家族に厚く御礼申し上げます.ありがとうござ た. いました. Journal of Spine Research Vol.5 No.9 2014 1331