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高大接続改革を追う 第7回 - Kei-Net

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高大接続改革を追う 第7回 - Kei-Net
高 大 接続改革を追う
▶▶▶ 第7回
このコーナーでは、高大接続改革を検討する文部科学省高大接続システム改革会議の動きを中心に、高大
接続改革に関する動向をまとめている。
11 月に行われた第8回の高大接続システム改革会議では、高等学校における多様な学習活動や学習成果を
適切に評価するための具体的な方策、具体的には指導要録や調査書の改善等の在り方を検討する「多面的な
評価検討ワーキンググループ」の検討状況が途中報告された。また、共通テストへの記述式導入の考え方に
ついての案も示された。
12 月に行われた第9回の会議では、大学入学希望者学力評価テストの問題イメージ例(たたき台)が公表
された。そこで今回は、記述式導入の考え方と、問題イメージを中心にレポートする。
大学入学希望者学力評価テストにおける
作問の在り方とは
(ア)問題の質的改善による思考力・判断力・表現力
の重視
(イ)「統合的な思考力や表現力」をよりよく評価す
まず、公表された資料などから、大学入学希望者学力
評価テストで評価する能力についてまとめておこう。
るため記述式を導入
(ウ)英語は、4技能を評価するため民間の資格・試
前提として、これからの大学入学者選抜においては、
験と連携
主体性を持って多様な人々と協働しながら、問題を発見
という3点を挙げた。
し、その解決策をまとめ、実行するために必要な諸能力
それぞれについて具体的に例示されたものを見ていく
を有しているかどうかを評価することが、一層重要にな
と、(ア)では、複数のテキストや資料を提示し必要な
る。そのために、共通テストである大学入学希望者学力
情報を組み合わせて思考・判断させる問題を出題したり、
評価テストにおいては、各教科の知識をいかに効率的に
学んだ内容を日常生活と結びつけて考えさせるような問
評価するかではなく、
題の出題、さらに連動型の選択式問題(注2) や答えが複
①内容に関する十分な知識と本質的な理解をもとに
数個ある問題を出題する、といった内容である。
(イ)では、記述式を導入する意義として、より主体
問題を発見・定義し、
②さまざま情報を統合しながら問題解決に向けて主
的な思考力・判断力、論理的な思考力・表現力、記述に
よる表現力の発揮などが期待されている。そして、共通
体的に思考・判断し、
③そのプロセスや結果について表現したり実行した
りするために必要な諸能力をいかに適切に評価す
テストにおける当面の記述式導入案として、
▶対象については、当面、高校の共通必履修科目が
設定されている「国語」
「数学」とする(特に記述
るかを重視すべき
という考え方を示し、このような能力を働かせることが
必要となる状況を設定し、評価するという観点から作問
式導入の意義が大きいと考えられる「国語」を優先)
▶共通テストとしての採点可能性を高める観点、問
に取り組むべきとしている。
題を解決するための思考・判断・表現のプロセス
現行の大学入試センター試験では、知識の習得状況や
で必要となる能力を評価する観点から「条件付記
「分析的な思考力」については、多肢選択式でも評価で
述式」(解答に当たって一定の条件への適合を求め
きているとしつつも、今後社会で活躍する上で求められ
る力であり、高校教育や大学教育で育成していくことが
(注1)
重要な「統合的な思考力や表現力」
の評価を一層重
る)とする
▶字数については、当面は最大 300 字程度までで検
討
視すべきである、と説明している。さらに、平成 32 年
▶記述式は別の日程で実施することも含めて検討。
度から実施される大学入学希望者学力評価テストの作問
民間との連携で実施を検討している英語と同一日
の留意点として、
程での実施も検討
本文中では高等学校基礎学力テスト(仮称)、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の仮称をいずれも省略している。
(注1)複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめる思考・判断の能力や、その過程や結果を表現する能力。
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Kawaijuku Guideline 2016.1・2
高大接続改革を追う
<図1>「知識・技能」
「思考力・判断力・表現力」とそれらを評価する方法のイメージ例(たたき台)
▶可能な限り民間の力を活用して実施
といった案を示した。さらに、試行も行いながら
<図2>大学入学希望者学力評価テストの条件付記述式の
イメージ例(たたき台)
継続的な検討が必要、としている。
また、
「知識・技能」
「思考力・判断力・表現力」、
解答方法、共通テストと各大学の個別選抜との関
係も示された<図1>。先に述べた「条件付記述
式」は主に思考力・判断力・表現力を評価する問
題として例示されている。その他、記述式として
連動型複数選択+記述問題、短答式などが挙がっ
ており、後述する問題イメージでもこれらが用い
られている。
さらに、「条件付記述式」のイメージ例として
示されたのが<図2>である。
「条件付記述式」
では解答を自由に記述するのではなく、例えば、
思考力・判断力について評価する場合は、あらか
じめ結論(複数の場合もあり)を設定したうえで、
結論を導き出した理由、結論を導き出す思考のプ
ロセス—問題の理解、情報の統合、解決方法の探
(注2)連動型複数選択問題は、選択式だがより深い思考力を問う問題の例として提案されている方法である。詳しい内容はガイドライン 9 月号 8 ページを
参照のこと。
Kawaijuku Guideline 2016.1・2
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<図3>国語において重視すべき学習のプロセスと
評価すべき具体的な能力(案)
索・計画立案、考察過程や考察結果の吟味—を解
答させるという方法だ。
国語は、複数のグラフが出題された問題や
連動型複数選択問題など3題が例示
こうした考えのもとに第9回高大接続システム
改革会議で示されたのが、
「国語」(国語総合)
「数
、
学」(数学Ⅰ)の記述式問題イメージである。
問題イメージだけでなく、その教科において重
視すべき学習のプロセスと評価すべき具体的な能
力(案)<図3>、解答例も公表された。ガイド
ラインでは紙面の関係で、すべての問題・能力
(案)・解答例を掲載できないが、すでに、文部科
学省ホームページ(注3) に問題イメージ等が掲載
されているので、ご覧いただきたい。
なお、これらの問題イメージは記述式問題の出
題の考え方の方針を示すものとして作成されたも
のであり、直接のモデル問題ではなく、そのまま
出題されるわけではない。その
<問題例1>国語の問題イメージ<例2>
ため、難易度を考慮した問題で
はないという説明があった。
では、具体的に見ていこう。
「国語」は問題イメージが3題
出された。<例1>として示さ
れたのは、
「多様な見方や考え
方が可能な題材に関する複数の
図表や文章を読み、情報を統合
しながら、考え方を構成し表現
する問題」である。
国立教育政策研究所「特定の
課題に関する調査(論理的な思
考)」から一部改題された問題
だ。警察庁事故統計資料を3つ
(発生件数、負傷者数、死者数)
示し、そのグラフを見て、4人
の高校生の話し合いの一部を問
題文として示し、解答させるも
のである。問1は 40 字以内の
記述、問2は 80 字以上 100 字
以内の記述である。
(注 3)文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/12/22/1365554_06_1.pdf
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Kawaijuku Guideline 2016.1・2
高大接続改革を追う
<例2>は「3つの文章で語
<問題例2>数学の問題イメージ
られている状況、問題、解決法
に関する共通点について考察し、
選択式と記述式で構成・表現す
る問題」<問題例1>である。
これは連動型複数選択問題を意
識した作問となっている。この
問題で評価しようとする具体的
な能力として、
ア)与えられた文章や図表等
の中から情報を収集した
り取り出したりする力
イ)文章や図表等の情報を整
理し、解釈する力
ウ)文章や図表等の情報を要
約したり、一般化したり
する力
エ)目的に応じて必要な情報
を見つけ出して文章や図
表等の情報と統合し、比
較したり関連づけたりす
る力
の4つが挙げられている。なお、
A、B、C の 文 章 は 公 表 さ れ て
いない。
<例3>は「1,400 字程度の
(2)以降は次ページに掲載
新聞記事を、一定の目的に添っ
て読み取り、得られた情報を取
たな考えにまとめ、200 〜 300 字で表現する問題」で
数学は数学Ⅰの内容に関連した
三角比を平面図形や空間図形に活用する問題例
ある。新聞記事は公表されていないが、公立図書館に関
数学の問題イメージは1例だった。その問題では、
「事
し、その現状と課題のほか、若者の自立・社会参画支援
象から問題解決に必要な情報や条件を抽出・収集したり、
を推進する場、家庭教育支援のための場、地域の人たち
仮定をおいて考えたりする問題」が出題された。この問
の対話や交流の場としての試みなど、今後の公立図書館
題で評価しようとしている具体的な能力として、
捨選択したり、自分の考え方を統合したりしながら、新
の可能性等に関する記事である。解答には条件が3つ指
定されており、条件1は 200 字以上 300 字以内で書く
こと、条件2は段落構成(2つ)とそれぞれに書くべき
内容の指定、条件3として本文中の引用の場合は「」を
付けることとなっている。
ア)問題文・図形等の事象やその数学的表現から情
報を読み取る力
イ)事象から問題解決に必要な情報や条件を抽出・
収集したり、仮定をおいて考えたりする力
ウ)情報を整理・統合して問題解決の方針を立てる
力
エ)関係や命題等を、適切な数学的表現を用いて表す
力
Kawaijuku Guideline 2016.1・2
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高大接続改革を追う
数学の問題イメージ 続き
オ)数学の知識や技能を用い
て論理的に考察・処理し
て結果を得る力
が示されている。問いの(3)
については、問題イメージと解
答例も掲載した<問題例2と解
答例>。
(3)の解答は1行目
にある AD/BD=(h-g)
/(h-g-d) だ
が、作図や立式ができないと解
答にはたどり着けない問題だ。
なお、「英語」(コミュニケー
ション英語Ⅰ)は、平成 26 年
度「英語教育改善のための英語
力調査事業」の出題問題の中か
ら「参考資料」として2題公表
された。また、英語の民間の資
格・試験との連携については、
「例えば、新センターが基準を
示し、民間が作問(原案)
・実施・
採点を行う体制を検討する」と
いう考えも示された。
第9回の高大接続システム改
革会議でも指摘されていたが、
記述式の採点に当たっては採点
<解答例>
基準の作成が不可欠である。さ
らに、今回示された数学のような問題の場合、
さまざま別解が出てくることが予想される。
記述式の導入の検討に当たっては、採点可能
性を高める方法、採点に必要な十分な期間、
コストなども踏まえた上で実現可能性を検討
することが重要であろう。
今後の予定として、1月以降の会議では大
学入学希望者学力評価テストの実施方法が検
討されるほか、大学入学希望者学力評価テス
トに続いて高等学校基礎学力テストの問題イ
メージも公表される予定だ。そして、年度末
となる3月までには最終報告がまとめられる
予定である。
ガイドラインでは、2016 年度の4・5月
号以降も、高大接続改革について続報をお届
けする予定である。
(図1〜3、問題例1・2、解答例は、第9回高大接続システム改革会議資料より)
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Kawaijuku Guideline 2016.1・2
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