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Ⅹ EUの通貨統合

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Ⅹ EUの通貨統合
Ⅹ EUの通貨統合
1.EUの拡大(enlargement/widening)と深化(deepening)
2.欧州通貨制度(European Monetary System:
EMS)
3.最適通貨圏(Optimum Currency Area: OCA)とユーロ
4.EUの経済的収束(convergence)と社会的結束(cohesion)
1
2
1.EUの拡大
•1958年の原加盟国:フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、
ベルギー、ルクセンブルク
•1973年の第1次拡大:イギリス、デンマーク、アイルランド
•1981年の第2次拡大:ギリシャ
•1986年の第3次拡大:スペイン、ポルトガル(12ヵ国)
•1995年の第4次拡大:オーストリア、フィンランド、ス
ウェーデン(15か国)
•2004年・2007年・2013の第5次拡大:東欧8カ国(チェコ・
ポーランド・ハンガリー・スロバキア・スロベニア・エストニ
ア・ラトビア・リトアニア)、地中海2カ国(キプロス・マルタ)=
25カ国+ブルガリア、ルーマニア、クロアチア(28カ国)
3
4
アルザス・ロレーヌ
(フランス語・英語 Alsace-Lorraine
ドイツ語 Elsass-Lothringen)
•フランス北東部のドイツ国境に近いライン川上流のアルザス地域圏とロレーヌ地
域圏の総称。石炭と鉄鉱石を産出するため、しばしばフランス・ドイツ間で紛争勃
発。中心都市はストラスブール。
•1648年(フランス領):三十年戦争の講和条約(ヴェストファリア条約)でフランス領。
•1871年(ドイツ領):プロイセン王国が普仏戦争でフランスに勝利。プロイセンは講
和条件としてアルザス・ロレーヌを国土の一部。
⇒アルフォンス・ドーデ『最後の授業』 (『月曜物語』1873年)の1編。
普仏戦争でフランスが負けたため、アルザスはプロイセン王国領エルザスになっ
て、ドイツ語しか教えてはいけないことになり、アメル先生はこれがフランス語の
最後の授業だと語り、「ある民族が奴隸となっても、その国語を保っている限りは
その牢獄の鍵を握っているようなものだから」とフランス語の優秀さを生徒に語り、
黒板に「Vive La France!」(フランス万歳!)と書いて最後の授業を終える。
•1919年(フランス領):ドイツが第一次世界大戦で敗れると、フランスが講和条件と
してアルザス・ロレーヌの領有を要求して認められた。
•1940年(ドイツ領):ナチス・ドイツが第二次世界大戦で再びフランスを破って、再
度アルザス・ロレーヌを自国に編入。
•1944年(フランス領):自由フランスがパリを奪還して新政府を樹立、この地域から
ドイツ軍を追って再びアルザス・ロレーヌを領有して現行の国境。
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EUの深化
経済統合の5段階(by B.Balassa)
① 自由貿易地域(free trade area)
域内関税・域内数量制限の撤廃
② 関税同盟(custom union)
対外共通関税
③ 共同市場(common market)
域内での生産要素の自由移動
④ 経済同盟(economic union)
域内での経済政策の調整
⑤ 完全な統合(complete economic integration)
超国家的機関による統一的な経済政策
6
対外共通関税(CET)と共通農業政策(CAP)
⇒独工業と仏農業の結婚
•対外共通関税(Common External Tariff)
– 関税同盟(ドイツ工業に有利)
•共通農業政策(Common Agricultural Policy)
– 手厚い農業保護政策(フランス農業に有利)
– 支持価格>市場価格で買い上げ
– 支持価格>輸入価格(国際価格)には輸入課徴金
– 支持価格<輸出価格(国際価格)には輸出補助金
– 「バターの山、ワインの海」といわれる過剰生産
– 1990年代のCAP改革⇒農家への直接所得保障
⇒構造基金・結束基金へ(後述)。
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EUの市場統合(1985-1992)
• 背景:ユーロペシミズム
– 関税同盟と共通農業政策を達成させた60年代は、ECにとって順風満帆な時
代。1973年の石油危機以降、西側世界はスタグフレーションに等しく悩まされ
てきた。しかし、80年代に入って、日本や米国などが国内の産業再編成に一
定の成果を上げ、さらにNIES諸国を含めた新しい国際分業を進展させること
によって再び成長軌道に乗せることに成功したのにひきかえ、ひとりEC諸国
は長期的な停滞から抜け出せないままになっていた。
• 1985年に公表された『域内市場白書』においてリスト・アップされた
282項目(後に整理されて279項目)に上る非関税障壁(NTB)を撤
廃させ、EC加盟12カ国の間でヒト・モノ・カネの自由移動を実現し、
世界最大の単一市場を作り上げること。
• 1992年末までにこれらのうち95%が閣僚理事会で採択され、1993
年1月1日にEC統合が実現。
• これによって、大陸内での移動におけるパスートチェックの廃止、域
内国境での通関の廃止、製品基準や安全基準の統一、銀行免許
の統一、付加価値税の標準税率を最低15%に統一などが実現。
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2.欧州通貨制度(European Monetary System: EMS)
• BW体制の崩壊と変動相場制への移行後も、経済的な依
存関係の強い欧州では、域内での固定相場制を目指し、
1979年にEMSが発足。
• EMSの3つの構成要素
① 加盟国の為替レートを一定の変動幅に維持するERM(為替相
場メカニズム:Exchange Rate Mechanism)
② この変動幅を維持するための各種の信用供与と介入ルール
③ EMS参加国通貨を一定の割合で加重平均した通貨バスケット
であるECU(欧州通貨単位European Currency Unit)の創設
1ECU=
0.828DM+0.0885UKL+1.15FF+109LIT+0.286DFL+3.66BF
+0.14LF+0.217DKR+0.00759IP=$1.3002
9
独マルクと仏フランの関係
(1979年3月[ERM]と1996年11月[ERMⅡ])
10
ERMの再調整
• もしも、ある通貨が基準相場の変動幅を維持できないような場合、以下の3つの
選択肢をとらざるを得ない。
①基準相場の再調整
②変動幅の拡大
③最終的にはERMからの離脱
• EMSが発足した1979年から1987年までの間に、基準相場の再調整は11回に及
んだが、その後5年以上の間は、再調整1回のみ。EMSは安定して推移。
• 1992年9月の欧州通貨危機(*) においては、
①イギリスとイタリアがERMから離脱
②数次にわたってERMの中心相場が再調整
③93年8月にはERMの変動幅が2.25%(一部通貨は6%)から一挙に15%にま
で拡大(独マルクと蘭ギルダ-は除く)
• これ以降、ユーロ導入前までの為替レートメカニズムはERMⅡと呼ばれる。
(*) ドイツ統一に伴う財政負担とインフレ圧力から、ドイツが高金利政策を維持し
続け、独マルクが買われ他の弱い通貨(特に英ポンドと伊リラ)が売られた。
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EMSの現実
• もともとEMSは、BW体制が持っていた非対称性(固定相場制を維持するため
に、基軸通貨国であるアメリカは介入義務を負わない)とは異なり、加盟国間で
の対称性(固定相場制を維持するために、全ての加盟国が平等に介入義務を
負う)を目指した。
• しかし実際には、ともに介入義務を負う上下限に達した2ヵ国のうち、下限に達
した通貨国の方が重い調整負担を負うことになった。つまり、下限に達した弱い
通貨国は、自国通貨買いと相手個通貨売りの介入を行わなければならないが、
自国通貨買いはマネーサプライの減少を伴い、相手国通貨売りには外貨準備
の制約に直面するため、やはり金利の引き上げなどの引締政策を伴う。
• 他方、上限に達した強い通貨国は、自国通貨売りと相手個通貨買いの介入を
行わなければならないが、インフレを嫌って、マネーサプライを一定に保つ不胎
化介入を行うと、下限に達した弱い通貨国は一層強い引締政策を行わざるを
得ないのである。
• 現実のEMSにおいては、絶えずマルクが最強通貨であり、EMSが安定的に維
持されたのは、事実上マルクがEMS内のアンカーとなり、ドイツ以外の国が、
事実上ドイツのインフレ率や金利などに合わせることによってもたらされたもの
である。
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3.EUの通貨統合(1989-1999)
• 1992年に市場統合を完成させたEUは、ヒト・モノ・カネ
は自由に域内で移動できる建前になった。
• しかし、当時よく言われるたように、100マルク持ってEU
を一周すれば、両替するだけで50マルクに減ってしまう。
• つまり、ヒト・モノ・カネの自由移動にとって最後の障壁は、
通貨が異なることによる取引コスト(両替手数料など)や
為替リスク。
• ユーロの導入でこうした取引コストは消滅する。また、
ユーロランド内では同一商品が同じ単位で表示されるた
め、価格の透明性が高まり、競争が激しくなる。このよう
にヒト・モノ・カネが自由移動し、単一通貨が導入される
ことによって競争を激化させ、生産性を上昇させる。
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ユーロの登場
• 1999年1月1日:11カ国でユーロ導入(ベルギー、ドイ
ツ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、ルク
センブルグ、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィ
ンランド)のちにギリシャが加わり「ユーロ12」に。
• 2002年1月1日: ユーロの登場、10年以上の準備期
間を経て、12カ国が2002年3月1日に自国の通貨を
永久に放棄し、新しい単一通貨ユーロを採用。
• 2007年1月1日:スロヴェニア、2008年1月1日;キプ
ロスとマルタもユーロを採用、ユーロ圏は計15カ国に
拡大(ベルギー、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、
アイルランド、イタリア、キプロス、ルクセンブルグ、マ
ルタ、オランダ、オーストリア、ポルトガル、スロヴェニ
ア、フィンランド) 。
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最適通貨圏
Optimum Currency Area (OCA)
• 財・サービスおよび生産要素の移動が自由で、個別に独
立の通貨を持ってその価値を変動させるより、域内で固
定相場制あるいは単一通貨を採用することの方が望まし
い経済圏。
• ある国にとって、固定相場制あるいは単一通貨を採用す
ることの便益(為替リスクや取引コストの消滅)が、その費
用(為替レートによる不均衡の調整)を上回る場合に、当該
国は通貨同盟に参加することが望ましいと判断される。
• もともと最適通貨圏の理論は、フリードマン(M.Friedman)等
の変動相場制論者を批判して、1960年代にマンデル(R.A.
Mundell)が提唱したものだが、欧州通貨統合の推進によっ
て近年再び脚光を浴びた。
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例:日本で「円」という単一通貨が使用されていることの意味
①A地域がB地域より物価が高い場合:同じ円という通貨を使用す
ることによって、Aの居住者はBの居住者に対して不公平。こうし
た不公平を解消するには、両地域で違う通貨を使用し、A通貨をB
通貨に対して切り下げればよい。
②A地域がB地域より好況な場合(非対称的な実物[供給]ショックが
生じた場合):同じ円という通貨を使用することによって、地場産業
が好況なA地域では輸出が拡大し、不況業種を抱えているB地域
は不利益を被る。この場合も、両地域が違う通貨を使用し、A通貨
をB通貨に対して切り上げればよい。
• しかし現実にそうなっていないのは、物価の安いB地域から物価
の高いA地域への「財の自由移動」、あるいは不況地域のB地域
から好況地域のA地域への「労働力(生産要素)の自由移動」に
よって、物価や賃金(要素価格)などで「一物一価」が生じるという
暗黙の前提があるからである。この前提の下で、異なる通貨を使
用することによる不便さを回避しているのである。
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最適通貨圏の成立条件
• 通貨同盟を形成しようとする各国間で、非対称的なショッ
クが生じた場合に、為替レートを通じて不均衡を調整す
ることはできないので、為替レート以外の調整メカニズム
が存在することがOCA成立の要件。
• 非対称的な経済ショック:長期(自然失業率水準でGDP
水準が決まる)を考えれば、総需要ショックはGDP水準
に影響を及ぼさず、総供給ショック(生産性ショックや石
油危機など)が非対称的なショックを及ぼす。
①労働力(生産要素)の移動性[マンデル]
②経済の開放度(財市場の統合度)[マッキノン]
③財政移転(など経済政策の協調)[フェルドシュタイン]
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EUは最適通貨圏か?
• The EU has already completed the market
integration and created a single market in 1992,
which meant the framework of the free
movements of goods, money and people within
the region.
• The member countries of the EU agreed to
converge four macro-economic indicators, called
the “convergence criteria”, fiscal deficits, the
rate of inflation, the long-run interest rate, and
the exchange rate, through the Maastricht
Treaty.
18
収斂基準(Convergence Criteria)
1. Annual government deficit must not exceed 3% of GDP.
Total outstanding government debt must not exceed
60% of GDP.
2. Rate of inflation within 1.5% of the three best performing
EU countries.
3. Average nominal long term interest rate must be within
2% of the average rate in the three countries with the
lowest inflation rates (interest rates shall be measured on
the basis of long term government bonds or comparable
securities)
4. Exchange rate stability, meaning that for at least 2 years
the country concerned has kept within the 'normal'
fluctuation margins of the European Exchange Rate
Mechanism (ERM).
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最適通貨圏の内生性
• すでにEUは市場統合を完成させていたが、実際は
労働力をはじめ生産要素の可動性が低いなど、
OCAの条件を欠いていると言われてきた。しかし、
実際にユーロを創出するに当たって重視されたの
は、インフレ率・長期金利・財政赤字・為替レートと
いうマクロ経済指標の収斂(コンバージェンス)であった。
したがって、OCAを形成する理論上の要件は、ユー
ロの創出に即して再検討されねばならない。
• OCA成立の諸条件を外生的に所与として、その諸
条件が変わらないものとして通貨統合の是非を論じ
るのではなく、通貨統合を推進することで、労働力
の移動性が高まったり、財政移転が行われたり、
OCA成立の諸条件が内生的に成立してくる。
20
4.EUにおける社会的結束(cohesion)
ーEUの構造政策(地域政策)-
http://ec.europa.eu/regional_policy/index_en.htm
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/kouzou_s.html
•EUは、深化と拡大を通じた統合を推進する過程
で生じる加盟国間・地域間の経済力・社会面に
おける格差の是正を一つの重点分野として位置
づけ、構造政策(財政的支援)を実施。同政策は、
EU予算のうち共通農業政策(CAP)に次いでEU
総予算の3分の1を占める主要な支出項目。
21
EUの地域格差(一人当たり所得)
A.現加盟国EU15(100)>新規加盟12カ国(38.6)
B.EU加盟15ヵ国(計209地域)の調査
• 209地域平均(100)> 40の低所得地域(70)
• 最高所得地域(inner London[246.3])
=最低所得地域(Ipeiros in Greece[47.3])×5
cf : 日本
最高所得都道府県 (東京) =最低所得都道府県(沖縄)×2
22
EUの地域格差(失業率)
EU15(2001年4月)
• 平均失業率:7.6%
• 女性失業率:9.9%
• 若年失業率:15.1%
B.EU加盟15ヵ国(計209地域)の調査
• 最低失業率地域: ユトレヒト(オランダ) :1.2%
• 最高失業率地域: Reunion in France: 33.3%
• 最高若年失業率地域: Campania in Italy:59.9%
23
EUにおける経済格差の原因
1. Enlargement : the new accession of lowincome states
2. Strict fiscal discipline : government deficit must
not exceed 3% of GDP
3. OCA? One Price? : mobility in the labour
market is severely limited
4. “winner takes all” :
the introduction of the strong Euro
→ intensified competition
→ the negative aspect of economic globalization
24
経済格差を是正することは可能か?
1. Currency devaluation for depressed regions
→no longer a policy option
→the introduction of the Euro
2. Expansionary monetary policies
→no longer a policy option
→the establishment of the ECB
3. Expansionary fiscal policies
→no longer a policy option
→the agreement of the 3% rule
25
どうすべきか?:Cohesion
• These limitations mean that the EU has to try to
eliminate the disparities via EU-wide policies.
• A notion called ‘cohesion’ has been emphasised
as a means of providing a safety net to
accompany the convergence needed to realise
an optimum currency area.
• Cohesion means the social solidarity and the
elimination of disparities, and this notion has
been put into actual practice through the
Structural and Cohesion Fund .
26
構造基金(Structural Fund)
• 地域間格差是正のためのEU委員会から加盟国・地域への補助金
①ローマ条約(1957年):地域格差是正の精神は当初より存在。
②単一欧州議定書(1986):第5章「経済的社会的結束(Economic
and social cohesion)」により条約上の根拠を明確に規定。
③マーストリヒト条約(1992年):1988年には、欧州理事会がそれまで
の連帯基金を改定し、構造基金と改称するとともに大幅な増額。マ
条約においても、構造政策は通貨統合と並び主要課題として位置
づけられ、増額および結束基金の創設。
④アジェンダ2000(1999):散漫に拡大することを警戒し、予算及び運
営についての合理化。
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構造基金の目的と構成
① 欧州地域開発基金(ERDF:European Regional Development
Fund,1975年設立)
生産投資の奨励、地域開発を容易にする社会資本整備によ
る地域不均衡是正。
② 欧州社会基金(ESF: European Social Fund, 1958年設立)
雇用戦略のための拠出。労働者の訓練及び再教育のための
援助。
③ 欧州農業指導保障基金指導部門(EAGGF: European
Agricultural Guidance and Guarantee Fund,1962年設立)
農業構造の近代化援助を実施。
④ 漁業指導基金(FIFG: Financial Instrument for Fisheries
Guidance,1993年設立)
(EAGGFから分離)漁業の近代化促進のための援助を実施。
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結束基金(Cohesion Fund)
• 「1人当たりGNPが域内平均の90%未満の加盟国」かつ
「ユーロ導入(経済収斂基準)達成の計画を持つ国」。具
体的にはギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン
の4ヵ国に対する特定国補助金。
• 使途は、域内全体の利益にかかわる交通ネットワーク
(TEN:Trans-European Networks)及び環境保全。
• マーストリヒト条約により創設され、1993年より実施
• アジェンダ2000(1999):2000~2006の予算として180
億ユーロを計上。
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Winner does not take all
• Anglo-Saxon model of globalization
Winner take all → Income inequality →
The society is jeopardized without a safety net.
• EU model of globalization
Balancing convergence with cohesion
The economy should be revitalized through
application of market principles, but a lot of care
should be taken that the reforms do not destroy
the social system itself.
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(付論)東アジアにおけるFTAの現状と経済的効果
日本の自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)と
経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)
に関する情報
・経産省
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/index.html
・外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/
・農水省
http://www.maff.go.jp/sogo_shokuryo/fta_kanren/fta_kanren.htm
31
世界のFTAの現状(METIの資料)
32
日本のFTAの現状(METI資料)
33
FTA急増の背景
①WTO交渉に参加する国、交渉分野の増加により多くの
時間がかかる
⇒早く自由化の成果をあげるためには、近隣諸国との
FTA/EPAを同時に進めていった方が望ましい。
②情報化の進展・輸送コストの低下・途上国の経済発展
⇒近隣諸国との国境を越えた貿易・投資の国際的分業
の重要性。
③外圧としてのFTA
⇒新興工業国や途上国の自由化を促す手段として、
FTAを利用。
34
FTAの経済的効果
• 静学的効果
•貿易創出効果:域内の関税引下げに伴い域内貿易が拡大す
る効果(+)
•貿易転換効果:域外国からの低コストな輸入が、域内国から
の高コストな輸入に転換される効果(-)
•交易条件効果:域外国からの輸入量減少⇒輸入価格の低下
(域内国には+、域外国には-)
• 動学的効果
•市場拡大効果:FTA締結によって、規模の経済や最適立地が
実現される効果
•競争促進効果:域内の安価な産品の流入や外資系企業の参
入などによって競争が促進され、効率性が改善される効果
35
貿易創出効果と貿易転換効果
FTA締結後
B国 ($600)
貿易転換効果
貿易創出効果
輸出($600)
A国 ($1,000)
C国 ($400)
輸出($800)
関税率100%
FTA締結前
36
貿易創出効果と貿易転換効果
P
S
b+d:貿易創出効果
e:貿易転換効果
関税
PC+t
P
B
PC
FTA締結前
a
b
c
d
FTA締結後
e
D
37
貿易創出効果と貿易転換効果
A国(自国)、B国(FTA締結後に域内国)、C国(FTA締結後に
域外国)。
PC<PB<PA
•当初、関税(従価税)tを課してC国から輸入。
PC+t<PB+t<PA
①
•B国とFTAを締結し、B国に対する関税を撤廃すると、B国
から輸入。
PB<PC+t<PA
②
①と②を比較すると、
消費者余剰の増加:a+b+c+d
生産者余剰の減少:-a
(b + d) – e
完全収入の減少 :-(c+e)
貿易創出効果 貿易転換効果
38
FTAの問題点
①貿易創出効果/貿易転換効果:特定の国との間の貿易障壁を撤廃することによっ
て、該国との貿易が拡大する(貿易創出効果)一方で、域外国には差別的な対応を
とることによって、貿易が歪み、FTA締結国でさえも、経済的な損失を被る可能性
(貿易転換効果)。
②スパゲティ・ボウル現象:FTAを締結した相手国経由で第三国の商品が低関税(無
税)で入ってくることを阻止するため、 FTAは原産地規則を設定し、域内国が原産
地であることが表示されている製品にのみ低関税を適用。
(a)各々のFTAは異なる原産地規則を設定しているため、多くの国が多くの国と
FTAを結べば、さまざまな原産地規則が複雑に絡み合い、 原産地証明を取得する
ための手続きが煩雑になり、経済的費用が累積的に増えてしまう状況。
(b)域内原産と認定されるためには一定の加工を域内で行う必要があるため、域内
での部品・中間財の調達が過剰になり、同部門での貿易転換効果が生じる可能性。
③積み石(building block)/躓き石(stumbling block):貿易自由化の最終的な目標は、
相互に差別的措置のない、多国間の貿易自由化(WTOの下での自由化) 。FTA交
渉が継続されることで、最終的に多国間の自由化が実現される場合、FTAは多国
間の自由化へのbuilding block(積み石)。逆に、多くの国がFTAレベルで自由化交
渉に止まり、多国間の自由化のスピードが遅くなるような状況のとき、FTAは多国
間の自由化へのstumbling block(躓き石)。
39
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