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超小型レーザディスプレーのための3原色光合波器の研究

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超小型レーザディスプレーのための3原色光合波器の研究
平成 23 年度福井大学研究育成経費
研究育成経費
平成23年度福井大学研究育成経費「競争的資金獲得を目指す研究」
超小型レーザディスプレーのための3原色光合波器の研究
研究代表者: 勝山 俊夫(工学研究科・教授)
概
要
超小型のレーザディスプレーは、携帯型レーザプロジェクターや、めがね型網膜
走査ディスプレーに代表されるように、次世代のディスプレーとして期待されている。このようなディ
スプレーの実現には、3原色のレーザビームを合波する超小型の合波器の実現が必須である。
このため、光導波路を用いる構造を基本とし、「方向性結合器」と呼ばれる構造を用いた3原色合波
器を検討した。その結果、青色光を伝搬する導波路の2つの「方向性結合器」の間に、赤色光の導波路
の「方向性結合器」を置くという新しいアイデアにより、赤、緑、青の光の合波効率を、それぞれ 100、
97、92%と極めて高くできることが分かった。この合波器の大きさは 0.06×6 mm と、従来に比べて大
幅に小型化され、かつ集積化されているため、経時変化が少なく、超小型レーザディスプレー実現の鍵
技術になると期待される。
関連キーワード
光合波器、レーザディスプレー、光導波路、3原色、方向性結合器
研究の背景および目的
近年、ディスプレー分野の発展は著しく、FPD
(フラット・パネル・ディスプレー)画像プロジ
ェクター等、様々なディスプレーが用いられるよ
うになってきている。このような中で、超小型の
レーザディスプレーは、とくに今後の発展が期待
されている。例として、携帯電話に組み込んだレ
ーザディスプレー(携帯型レーザプロジェクター)
は、壁などに画像を投射することによって、どこ
でも誰でも簡単に、拡大された画像を見ることが
できる。また、めがね型網膜走査ディスプレーは、
網膜に直接画像を走査するためスクリーンの必要
が無く、超大型の画面もバーチャルに見ることが
でき、次世代のディスプレーとして期待されてい
る。
しかしながら、これらの超小型レーザディスプ
レーは、赤、青、緑の3原色レーザビームを、光
合波器を用いて1本のビームにし、走査投影する
必要があるが、これらの光合波器は、ミラー等の
光学部品を組み合わせて作製しているため、超小
型化の点で難点がある。
このため、我々は、光導波路を用いた集積光回
路で、この光合波器を作製する検討を開始した。
従来、このような導波路型光合波器は、光通信用
に様々な形が実現しているが、3原色のレーザ光
は、それぞれの波長が大幅に異なっており、波長
間隔の小さい従来の光通信用合波器の考え方を転
用することができない。このため、様々なアイデ
アを検討し、それらの構造の光伝搬の様子をシミ
ュレーションによって解析することにより、合波
効率がよく、かつ小型化が可能な3原色の合波が
できる構造を見出すことができた。
このような超小型の高性能3原色合波器は、超
小型レーザディスプレーの重要な鍵技術であり、
この合波器を用いて、超小型レーザディスプレー
の実現が大幅に早まることが予測できる。その結
果、新たなディスプレーの出現によって、コミュ
ニケーションを含む社会生活の様態が一変し、よ
り安心で安全な社会を実現することができると考
えられる。
研究の内容および成果
1.合波器の基本構造
3原色合波器として、光導波路を用いる構造を
基本とし、合波効率がよく、合波器のサイズが小
さくできる構造として、導波路から別の導波路へ
光を乗り移らせる機能をもつ「方向性結合器」と
呼ばれる構造を用いることとした。
SiO2 に Ge をドープしたものを想定している。ま
た、コア層の高さを横幅と同じに設定した。
2.導波路構造
検討した導波路の断面構造は、横方向、縦方向
共にシングルモード条件を満たす必要があるため、
図1に示す埋め込み型導波路を採用した。
クラッド層は、基板と同じ SiO2 で、コア層は
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10μm
図1.赤、緑、青の光導波路断面構造
競争的資金獲得を目指す研究
緑色光
青色光
合波光出力
方向性結合器2
方向性結合器1
方向性結合器3
赤色光入力
青色光入力 緑色光入力
図3.赤、緑、青色光のそれぞれの光伝搬の様子
図2.光導波路からなる3原色合波器
本助成による主な発表論文等、特記事項および
競争的資金・研究助成への申請・獲得状況
「主な発表論文等」
1) Ryuji Morimoto, Yoshiaki Kakinoki, Yuya
Kato, and Toshio Katsuyama, “ Compact
red-green-blue multiplexer with a waveguide
structure ” , 17th Microoptics Conference
(MOC’11), Sendai, Japan, H-69 (2011)
2) 加藤裕侑也, 柿木良明, 森本竜治, 勝山俊夫,
“Whispering Gallery Mode を用いた三原色対応
合波器の提案”, 平成 23 年度応用物理学会北陸・
信 越 支 部 学 術 講 演 会 , 金 沢 歌 劇 座 , 18p-E-08,
2011-11
3) 柿木良明, 加藤裕侑也, 森本竜治, 勝山俊夫,
“三原色対応 Y 分岐光導波路の高性能化”, 平成
23 年度応用物理学会北陸・信越支部学術講演会,
金沢歌劇座, 18p-E-09, 2011-11
4) 森本竜治,加藤裕侑也, 柿木良明, 勝山俊夫,
“レーザーディスプレイ用導波路型 RGB コンバ
イナー”,第12回レーザー学会「レーザーディ
スプレイ技術」専門員会,大阪大学待兼山会館,
2012-01
5) Ryuji Morimoto, Yoshiaki Kakinoki, Yuya
Kato, and Toshio Katsuyama, “ Compact
red-green-blue beam combiner with a
waveguide structure”, The 1st Laser Display
Conference (LDC ’ 12), Yokohama, Japan,
LDCp7-12 (2012)
「競争的資金・研究助成への申請・獲得状況」
NEDO、JST 関連の研究助成を申請準備中。
-25-
研究育成経費
赤色光
3.具体的な合波器構造と特性
図2に示すように、青色光を伝搬する導波路の
2つの「方向性結合器」の間に、赤色光の導波路
の「方向性結合器」を置くという新しいアイデア
に基づき、構造の設計を行った。
その結果、赤色光、緑色光、青色光の合波効率
が、それぞれ 100、97、92%という極めて高い合
波効率が得られることが分かった。図2は、それ
ぞれの光が、導波路をどのように伝搬しているか
を示したもので、下側から入射した3色のそれぞ
れの光が、上側の中心の1本の導波路に合波され
ていることが分かる。
このように、方向性結合器型と呼ばれる構造を
基本とすることによって、高性能で超小型の合波
器ができるとの結論を得ることができた。検討の
結果、従来の合波器のサイズが数センチメートル
のオーダーに対して、今回の合波器のサイズは、
縦横のサイズが 6×0.06 mm 程度と、2桁程度の
大幅なサイズダウンができることが示された。ま
た合波効率が平均で 96%と見積もられ、合波のと
きの光損失も少なくできることが示された。この
ように、今回検討した合波器は、従来に比べて大
幅に小型化されており、かつ集積化されているた
め、経時的な特性の変化がないという特長を有す
る。
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