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149K - 国立情報学研究所
研究者から見た オープンアクセス 東京女子大学 坂井典佑 2013年2月19日国立情報学研究所 1 オープンアクセス • 学術情報を(広義) • 査読付き学術誌に掲載された論文を(狭義) 誰もが無料で(インターネット)閲覧可能にすること :wikipedia 広義のオープンアクセス : arXiv 狭義のオープンアクセス : open access journal SCOAP3 : open access journalを財政的に可能にす る国際的運動 2 インターネットと研究情報 • 1970年頃 : preprint(郵送)が最先端の研究情報 • 1980年頃 : 電子メールと電話で研究情報交換 • 1990年 : preprint arXivの出現 インターネットで全世界が対等に研究情報 にアクセスできるようになった 3 arXivの特徴 • • • • • • • • 1990年頃開始 Preprint : 出版前の論文 Preprint depository = 査読がない 情報提供が早い 内容の真偽の保証はない,読者が判断 修正履歴を含めてすべての記録が残る 1990年頃以後の論文はほぼ網羅 物理・数学を中心に広汎な分野をカバー 4 研究者のとってのarXiv • arXivの新着論文チェックから研究者の一日 が始まる • 論文を見つけるには,個々の学術誌を検索 するよりもarXivを検索した方が効率的 • 論文を見る必要が生じるたびにarXivからダ ウンロード(必要になれば印刷する) • 掲載学術誌を検索するのは論文執筆時に文 献引用のため 5 電子化時代の学術誌と図書館 • 1990年以前の学術誌が閲覧可能な図書館は 貴重な存在(arXivで補えない) • 古い学術誌ほど利用可能な状態で保存して 欲しい • 学術誌の電子化は進んだが,利用形態は ハードコピーに比して便利でない場合も多い • コピー・再利用の制限がある場合もある • 契約が途切れると契約していた時期の論文 も見れなくなる 6 arXivと学術雑誌 • 査読システムによる論文の価値保証が重要 • 分野によって微妙な違いもある • 素粒子・原子核・宇宙(理論) : 学術誌投稿の 前にarXivに登録する(文献引用などのク レームを投稿以前に受けられる) • 物性 : 学術誌に受理されてからarXivに送る こともある(特許,出版のpriorityで有利になる こともある) 7 オープンアクセス以前の学術誌 • 従来の学術誌はオープンアクセスでない • 購読料(subscription)型学術誌 投稿料有料型(PTP…) 投稿料無料型(Nucl.Phys.,Phys.Rev…) • 出版社の寡占化と購読料の世界的高騰 • 研究者による電子版のみの学術誌の台頭 JHEP, JCAP, etc 8 オープンアクセス学術誌 • 高額の購読料が学術情報の自由な流通を妨 げている • インターネットを使って誰もが無料で研究情 報にアクセスできることが目標 • 未査読の学術論文のオープンアクセスは arXivで実現できている • 査読付き学術誌でも実現したい • オープンアクセス学術誌のモデルはまだ確立 していない 9 オープンアクセスの2方法 • グリーン: 著者が論文を自分で公開する Preprintでは実現 査読付き雑誌の論文が問題 • ゴールド: 学術雑誌がオープンアクセスになる 出版経費の負担はどこが行うか? オープンアクセス学術誌のモデルは未確立 10 オープンアクセス学術誌の課題 • 学術誌の経費の源:購読料(subscription)と投稿 料(Article Processing Charge) • 誰もが無料で論文をダウンロードできる ー>購読料無料 • 掲載料全額の負担に耐えられる著者は少数 研究情報の発信源を限定することになる 理論分野は特に小規模・零細研究機関が多い • オープンアクセス学術誌の今までのモデル (主要)学術機関(Institutional member)が投稿料 (APC)を負担 11 オープンアクセス運動 • オープンアクセス:研究成果の社会的還元 • 研究成果の学術出版を社会全体として支える仕 組みづくり • 分野によって要求・切実度が異なる • 実験分野 : 巨額の公的投資(企業出資は困難) • CERN(欧州中央素粒子原子核研究所)が主導 する仕組み = SCOAP3 • 審査を通った学術誌にOpen accessを条件に出 版経費を援助する.資金は各国に割り当て 12 PTEPを例として • Progress of Theoretical and Experimental Physics (PTEP) • 湯川博士が1946年創刊したProgress of Theoretical Physics(PTP)の後継誌 • ノーベル賞論文も出版されている • 2012年から日本物理学会が発行 • 素粒子・原子核・宇宙を中心に実験分野含む 13 PTEPの現状 • • • • • • 実験分野の強い希望:オープンアクセス誌 理論分野の強い要請:投稿料(APC)無料 KEK・理研が後援 SCOAP3に選定された 公的支援(オープンアクセス誌支援科研費) SCOAP3は高エネルギー分野の論文のみの支 援(PTEPは約半分) 14 3 SCOAP の時代と課題 • 購読料無料化ー>出版の公的負担に回す (redirection)をどのように具体化するか? • 投稿料無料化と両立できるか • まだ特定の分野に限定されている 高エネルギー以外の分野を含む学術誌は? • 研究者の側からは:「どの学術誌に投稿する か」の理由が希薄化ー>学術誌の存在意義 15