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ノルウェー訪問報告 - David`s Harp
ノルウェー訪問報告 ●主がお入り用なのです 2008 年6月末、伊木牧師から一通のメー ルをいただきました。それは、10月にほぼ一 ヶ月間ノルウェーで開催される日本宣教キャ ンペーンに、私たち夫婦を招待讃美奉仕者と してNLM(Norway Lutheran Mission=ノ ルウェー・ルーテル伝道会)に推薦したいと いう内容でした。 お声を掛けていただけたことは大変光栄に 思いましたが、正直そんなに仕事を休める筈 もなく、お断りを返信しようと考えていまし た。しかし、一夜明けると私の頭の中で「人の心には多くの計いがある。主の御旨のみが実現す る。-箴言19:21(新共同訳)-」、「神のなさることは、すべて時にかなって美しい-伝道3:11 (新改訳)-」という二つの御言葉が巡っていました。もしかするとこの招きを断ることは、主に 背を向けることになるのではないかと、ダメもとで職場に長期休暇を申し出ようと決意しまし た。不思議と私には『これが主による計画であるなら、成らないはずがない』という確信が与え られていました。そして職場に休暇を申し出る時、私の頭には聖書のちいロバの箇所が巡って いました。「主がお入り用なのです-マタイ21:3(新共同訳)-」。 ●プロデューサーは主 私には申し出たその日のうちに職場からの許可が与えられ、妻の幸子にも紆余曲折はありな がら、ほぼ2週間後に1ヶ月の有給休暇の許可が与えられました。私たち夫婦は、このことを通 して、日本宣教キャンペーンの真のプロデューサーが主であるとの確信を得た思いがしました。 『主の招きである限り、祝福されない筈がない』と、私たちは準備期間中、何の不安も感じるこ とがありませんでした。 ●歌の準備 早速、夏休みで帰国する直前のインゲル・ ヴァルボ宣教師(松江教会)に連絡を取り、Da vid's Harpオリジナル曲15作品の歌詞をノル ウェー語に翻訳して欲しいと依頼し、そのうち 5曲はノルウェー語で歌えるように翻訳しても らいました。そして、師が再来日された翌々土 曜日の9月6日に蒜山バイブルキャンプ場で 顔を合わせ、竹中兄弟、伊木牧師も一緒にノルウェー語で歌う特訓を受けました。 私たちはヴァルボ先生の歌声を録音して、繰り返し聞きながらノルウェー訪問までの期間練 習を重ねました。 ●ノルウェー国内の旅程 10月2日、NLM日本事務局でマリト・ハウゲン先 生とインゲビョルグ・ヒルドレ先生に出発礼拝の時 を持っていただき、翌10月3日、オステボ先生に関 西国際空港まで送っていただき、ノルウェーへと旅 立ちました。 ノルウェーのオスロ空港ではNLM本部の海外宣 教部長ヤン・サビック先生が私たちを迎えてくださ り、翌日のスピデベルグの日曜礼拝を皮切りに、日 本宣教キャンペーンがスタートしました。 ノルウェーは、面積は日本とほぼ同じですが、人 口は大阪市ほどの約470万人弱しかありません。ま た、首都オスロはノルウェーの南東部に位置する約 60万人の都市で、私たちはそこを出発点として中 部のトロンハイムを最北に、西海岸をモルデ→ベル ゲンと南下、更に北海油田の拠点スタバンガーから 南端のクリスチャンサンを経由してオスロへと帰っ てくるルートで、約30会場を巡る4週間旅をしました。 ●キャンペーン・リレー キャンペーンの期間中、日本ゆかりの 宣教師の方々に通訳していただきなが ら、宣教師家庭を中心にホストを務めて いただき、お宅に泊めていただきました。 だいたい20件ぐらいにお世話になったで しょうか、本当にみなさんには温かく迎 えていただきました。 最も長くお世話になったマグヌス・ソ ルフス先生は、日本宣教が始まって5年 目ぐらいから日本で活躍された方で、当 年とって82歳。ソルフス先生運転の車 に乗せていただき、ホルメストランドを基点に数会場を巡った後に一緒にトロンハイムに飛び、 ほぼ1週間通訳を務めていただきました。 ヒルデグン・ハウゲンさんのご両親のお宅にも2日ほど泊まらせていただき、前NLM在日会 長のボールド・ハウゲ先生のお宅、トーレ・ヨートゥン(ユートン)先生のお宅にも3~4日ほどお 世話になりました。それ以外は、ほぼ一泊ずつ次から次に町を移動しながら、本当に沢山の方 々に食事と宿泊のお世話いただきました。私たちはさながらリレーのバトンのようでしたが、み なさんはバトンの私たちをとても手厚く扱ってくださり、本当に感謝でした。 ●旅の目的 日本宣教キャンペーンは2009年に日本宣教60 周年を迎えることを記念して計画されたものです が、世界12カ国に宣教師を送っているNLMでも、 このような事業は初めての試みだということで、私 たちが訪れることのできなかった会場も含め、日本 宣教を覚えての集会が、ノルウェー全土50カ所で 計画されていました。アフリカ諸国や東南アジアに 先んじて日本キャンペーンを開催したことは、NLM がそれほどに日本の宣教に困難さを感じている現 れでもありました。ゲストとして招かれた私たちは、60年に渡る日本宣教のお礼を申し述べると 共に、日本のクリスチャン人口がいまだ1%に満たず、自殺者が後を絶たない実態を訴えながら 更なる宣教への支援を各会場に集われた皆さんにお願いしました。そして、私たち夫婦はDavi d's Harpの曲を、その両方の思いを込めながらノルウェー語で歌わせていただきました。 ●ノルウェーの反応 訪れたどの集会場にも80歳を優に超える方々 がいらして、伊木牧師のメッセージと私の証(あ かし)に、日本宣教が始まった60年前から今日 までを思い起こされ、私たちの姿に宣教の実り を重ね合わせて、涙される方が沢山いらっしゃい ました。また、殆どすべての集会場で、会の終わ りに私たちに近づいて、頬と頬とを合わせ(ノル ウェー風の挨拶)力強く抱擁してくださる方々も いらっしゃいました。きっと彼ら彼女らには、私たちが子の様にも孫の様にも思われたのでしょ う。キャンペーンが進むにつれ各地から「素晴らしい集会だった」、「日本宣教を覚えて更なる 支援をしなければとの思いを新たにさせられた」などの報告がNLM本部に続々と寄せられてい ることを聞かされ、私たちにも励みになりました。 ●おみやげ 日本ゆかりの宣教師の方々に、鳥取教会から のおみやげとしてかめの会作業所製作の”きり ん獅子”と”流しびな”を中央にあしらったテーブ ルセンターをプレゼントしました。皆さん「とても 日本的!」と大変喜んでくださいました。 また、David's Harpからは、お世話になった 宣教師の方々と各会場に対し、オリジナル曲15 曲を収録した音楽CDをプレゼントしました。日 本語で歌った物ですが、ヴァルボ先生翻訳の歌 詞カードをCDジャケットとして同梱していました。そして、著作権者としてCDのコピーを許可し た上で、「コピーを手にした方は幾らでもかまわないので、日本宣教のためにNLMにお献げく ださい」とお願いし、ささやかではありますが、間接的にDavid's HarpがロイヤリティをNLMに 献金させていただく形をとらせていただきました。 ●ノルウェーの実情 西暦1003年にノルウェーは国の宗教をキリスト教(当時はカ トリック)として定め、ルターの宗教改革から約20年後の1537 年にルーテル教会に改宗しています。そのため、今より千年以 前から殆どのキリスト教会はすべて国立で、教会で働く人々は すべて国家公務員でした。公務員批判をするつもりは全くあり ませんが、こうした状態が千年の長きに渡って続いてきた弊害 とでもいうのでしょうか、教会のお役所化が進行していて、伝道 しようがしまいが信徒が減ろうが増えようが給料の変わらない 状態が続くと、危機感とかやり甲斐とか努力・向上しようという 意欲が薄れてしまうのか、ノルウェーにおいて教 会というものが墓地を擁する冠婚葬祭場的な位 置づけとなってしまっていることに、私たちは正 直驚きを隠せませんでした。 そうした実態を目の当たりにすると、今から約 200年前に、ハンス・ニールセン・ハウゲが信徒 運動としてノルウェー各地で祈りの家を拓いてい った背景が、なんだか分かる気がしました。 勿 論、今でも国教会で毎日曜日には礼拝が守られ ていますが、牧師の説教に聖書の内容が語られ ないこともしばしばらしく、熱心なクリスチャンほ ど祈りの家で礼拝を守っているという実態が未だ に存続していました。 NLMは、こうしたハンス・ニールセン・ハウゲ の流れを汲むノルウェー最大の宣教団体として、 祈りの家で礼拝を守り、信仰を守りながら、献げ られる献金によって100年以上に渡り海外伝道を 推し進めてきた伝道会なのです。 私たちは今回各地の祈りの家を訪れたことで、 西日本福音ルーテルの諸教会が、正に祈りの家 を土台として建っているのだということがよく分 かりました。そのキーワードは、ノルウェー国教 会が長い歴史の中で失って来た「牧会」であり、 「信徒の交わり」なのだろうと思わされました。 ●主の召し 最近、国教会が役所的な判断として、 ある一つの決定を下したことで、クリスチ ャン等から神学的判断を曖昧にした国教 会に反発が強まり、最大の対抗馬としてN LMが矢面に立たされ苦悩するということ がありました。その苦悩は未だ結論を得 ず継続していますが、そのような国民的 議論が渦巻く情勢下にあってなお日本宣 教のためにキャンペーンを敢行してくださ ったNLMとNLMに連なる信徒の皆さん に、心から感謝しました。 もしかすると、主はこの様な時期だからこそ、敢えて私たちをノルウェーに送ることを通して NLMとNLMに連なるクリスチャンら一人ひとりに、自身のアイデンティティを再確認させたかっ たのかもしれません。 「教会とは…」、「伝道とは…」、その他多くのことを考えさせられた一ヶ月間でした。 キャンペーンのためにお祈りいただいた方々 に、そして何より主に、心からの感謝を捧げます。 文責:山下 幸子og学